Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

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ninth

 

### insert tugumi

 

 綾ねえが顔を伏せって泣いている中。私は、モニターに映っていたミサイルたちが飛び出していくのを眺めていた。そして、空で爆発が連続で鳴り響く。

 そして、レーダー上に映っていた大量の爆撃機や戦闘機、艦隊の反応が悉く消えていくのを見つめている。

 私は、呆然とつぶやく。

「そんな。敵戦力が壊滅していく……」

 

 

 

### insert inori 8

 

 夜明けの中。爆発が鳴り止んで静寂に包まれたとき、涯はつぶやいた。

「これで、偽善者との戦争は終わりだ」

 目の前で起きた破壊に、私は言葉を失っていた。けれどどうにか、絞り出す。

「どうして、こんなことを。集も、涯も、いい子だったのに……」

 その時、ユウが歩いてやってくる。

「彼らは救世主《ヒーロー》ではありません。我々を解き放つ悪魔の王。人類の敵」

 そして、さらに爆発が響く。降りて行った壁の向こうで、巨大なキノコ雲が立ち上り、涯と座り込んだ集はそれを背負っている。

黙示録の獣達(THE BEASTS)

「そんな……」

 同時に、懲罰部隊の人たちは、全員結晶化していく。

 私は呆然と呟く。

「こ、これは……」

 涯は答える。

「よほどのことがなければ起きる話ではないんだがな。ヴォイドが粉々に壊れれば、その持ち主も死ぬんだ」

 彼らが嘆きながら、崩れ去っていくのを私はみつめている。

 涯は突然ふらつき、私や集のいない方へと血反吐を吐いた。けれどその血は地面に辿り着いたその瞬間、結晶化して消えてしまう。涯はつぶやいている。

「たった一回で、これなのか……」

 優しく声をかけられる。

「いのり……」

 私はみつめる。そこには、仮面をつけず、優しく笑っている集がいた。

「これでわかっただろう。王の能力は、結局僕たちには使いこなせない。でもこれで、世界が君たちを傷つけることは、もうないだろう……」

 私は訊ねていた。

「あの結晶を作るんじゃなかったの……」

 私はようやく思い至る。

「まさか、この時のために全部……」

 笑う集。

「全ては、決まっていたことだったんだ。あんな結晶の世界は、ずっと先のことなんだ」

 

 

 

### insert arisa 2

 

 私はクレーターの中心で起きている惨状を見つめながら、思い出す。それは、二十四区から天王洲に帰ってきた時のこと。

 

 桜満くんに連れ戻された今の家は、流石に涯の時のようなスイートルームとは違ってはいたけれど温かみのある室内だった。私がソファに座ると、仮面の桜満くんは告げる。

「無事でよかったです」

「無事も何も、あなたの差し金と涯から聞いたわ」

 私は睨みつける。仮面の王子様に。

「涯は世界を解き放つって言ったけど、いったい何をするつもり……」

 桜満くんは仮面越しに答える。

「戦争です」

「え……」

「世界中が、東京にいる僕たちを殺そうと準備している。だから、戦うんです」

「そんなことしたら、楪さんたちが繋いできた世界はどうするの!」

「だから、あなたの出番なんですよ。僕のように世界を殺す側もいれば、あなたのように世界を繋ごうとする人もいる、と」

 私は桜満くんを見据える。

「それが、あなたが仮面で表情を隠している理由なのね……」

 彼は平坦な調子で言う。

「嘘を隠すのが下手と言われてしまいまして」

「まず嘘をつくのがいけないのよ!」

 彼は確かに、と言いながら、外の結晶の世界をみようと、窓へと歩みを進めていく。その背中に私は言う。

「楪さんは、きっとあなたを許してくれないわよ」

 彼は、振り返ってくる。

「いいんです。それが、彼女を解き放つのならば」

 私は怒りに任せて言う。

「楪さんを笑わせるために生きてきた道化師《clown》として、最低の仕事ね。桜満くん」

 彼はこともなげに、こう言った。

「甘んじて受け入れます」

 

 

 

### insert inori 9

 

 キノコ雲を背負い、右腕を抱える集は、続けた。

「僕と涯は考えていたんだ。いかなる権力とも、いかなる世界とも、無縁に暮らす力を君たちに与えようと。みんなをヴォイドで武装させ、君たちと戦うことを畏れさせる理由を施し、いかなる種類の支配からも、守ってみせると。そうして僕たちは誓った。この世界に、神亡き時代を作り上げるんだって」

 そして集は、夜明けのこの世界で言った。

「それがこの、天に見放された世界(アウターヘヴン)

 朗らかな集の表情に、私の頬には涙が伝っていた。私は激昂した。

「こんなもの、私はほしくなかった!」

 彼は、怪物(BEAST)は、それでも微笑んむ。

「でも、君はこれで自由だ。静かに、誰にも邪魔されずに、永遠に過ごすんだ。あの大島で」

 そして、こう言った。

「さよなら、いのり……」

 集は涯の手を借り、そして肩を貸りて、去っていく。ユウも、ヴォイドによる拘束を解きながら歩き去っていった。

 そして大量のエンドレイヴたちも、どこかに消えていく。魂館くんは他のエンドレイヴに捕らえられ、亞里沙さんも、雅火さんも律さんもまた、涯や集と共に去っていく。

 私たちは取り残された。この、集に、天に見放された世界で。

 私は彼の血の跡を見つめる。

 そしてただ、泣くことしかできなかった。

 

 

 

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