Guilty Crown Bonding the Voids 作:倉部改作
### insert tugumi
綾ねえが顔を伏せって泣いている中。私は、モニターに映っていたミサイルたちが飛び出していくのを眺めていた。そして、空で爆発が連続で鳴り響く。
そして、レーダー上に映っていた大量の爆撃機や戦闘機、艦隊の反応が悉く消えていくのを見つめている。
私は、呆然とつぶやく。
「そんな。敵戦力が壊滅していく……」
### insert inori 8
夜明けの中。爆発が鳴り止んで静寂に包まれたとき、涯はつぶやいた。
「これで、偽善者との戦争は終わりだ」
目の前で起きた破壊に、私は言葉を失っていた。けれどどうにか、絞り出す。
「どうして、こんなことを。集も、涯も、いい子だったのに……」
その時、ユウが歩いてやってくる。
「彼らは救世主《ヒーロー》ではありません。我々を解き放つ悪魔の王。人類の敵」
そして、さらに爆発が響く。降りて行った壁の向こうで、巨大なキノコ雲が立ち上り、涯と座り込んだ集はそれを背負っている。
「
「そんな……」
同時に、懲罰部隊の人たちは、全員結晶化していく。
私は呆然と呟く。
「こ、これは……」
涯は答える。
「よほどのことがなければ起きる話ではないんだがな。ヴォイドが粉々に壊れれば、その持ち主も死ぬんだ」
彼らが嘆きながら、崩れ去っていくのを私はみつめている。
涯は突然ふらつき、私や集のいない方へと血反吐を吐いた。けれどその血は地面に辿り着いたその瞬間、結晶化して消えてしまう。涯はつぶやいている。
「たった一回で、これなのか……」
優しく声をかけられる。
「いのり……」
私はみつめる。そこには、仮面をつけず、優しく笑っている集がいた。
「これでわかっただろう。王の能力は、結局僕たちには使いこなせない。でもこれで、世界が君たちを傷つけることは、もうないだろう……」
私は訊ねていた。
「あの結晶を作るんじゃなかったの……」
私はようやく思い至る。
「まさか、この時のために全部……」
笑う集。
「全ては、決まっていたことだったんだ。あんな結晶の世界は、ずっと先のことなんだ」
### insert arisa 2
私はクレーターの中心で起きている惨状を見つめながら、思い出す。それは、二十四区から天王洲に帰ってきた時のこと。
桜満くんに連れ戻された今の家は、流石に涯の時のようなスイートルームとは違ってはいたけれど温かみのある室内だった。私がソファに座ると、仮面の桜満くんは告げる。
「無事でよかったです」
「無事も何も、あなたの差し金と涯から聞いたわ」
私は睨みつける。仮面の王子様に。
「涯は世界を解き放つって言ったけど、いったい何をするつもり……」
桜満くんは仮面越しに答える。
「戦争です」
「え……」
「世界中が、東京にいる僕たちを殺そうと準備している。だから、戦うんです」
「そんなことしたら、楪さんたちが繋いできた世界はどうするの!」
「だから、あなたの出番なんですよ。僕のように世界を殺す側もいれば、あなたのように世界を繋ごうとする人もいる、と」
私は桜満くんを見据える。
「それが、あなたが仮面で表情を隠している理由なのね……」
彼は平坦な調子で言う。
「嘘を隠すのが下手と言われてしまいまして」
「まず嘘をつくのがいけないのよ!」
彼は確かに、と言いながら、外の結晶の世界をみようと、窓へと歩みを進めていく。その背中に私は言う。
「楪さんは、きっとあなたを許してくれないわよ」
彼は、振り返ってくる。
「いいんです。それが、彼女を解き放つのならば」
私は怒りに任せて言う。
「楪さんを笑わせるために生きてきた道化師《clown》として、最低の仕事ね。桜満くん」
彼はこともなげに、こう言った。
「甘んじて受け入れます」
### insert inori 9
キノコ雲を背負い、右腕を抱える集は、続けた。
「僕と涯は考えていたんだ。いかなる権力とも、いかなる世界とも、無縁に暮らす力を君たちに与えようと。みんなをヴォイドで武装させ、君たちと戦うことを畏れさせる理由を施し、いかなる種類の支配からも、守ってみせると。そうして僕たちは誓った。この世界に、神亡き時代を作り上げるんだって」
そして集は、夜明けのこの世界で言った。
「それがこの、
朗らかな集の表情に、私の頬には涙が伝っていた。私は激昂した。
「こんなもの、私はほしくなかった!」
彼は、
「でも、君はこれで自由だ。静かに、誰にも邪魔されずに、永遠に過ごすんだ。あの大島で」
そして、こう言った。
「さよなら、いのり……」
集は涯の手を借り、そして肩を貸りて、去っていく。ユウも、ヴォイドによる拘束を解きながら歩き去っていった。
そして大量のエンドレイヴたちも、どこかに消えていく。魂館くんは他のエンドレイヴに捕らえられ、亞里沙さんも、雅火さんも律さんもまた、涯や集と共に去っていく。
私たちは取り残された。この、集に、天に見放された世界で。
私は彼の血の跡を見つめる。
そしてただ、泣くことしかできなかった。