Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

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サム。お前が俺の代わりに、本物の橋になれ。



ninth

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 私たちは、二十四区の地下経路へと降り始める。そこで供奉院翁の通信が入る。

「儂の孫からの情報によれば、この資源流通経路は作戦直前のため閉鎖されている。敵はここに警備を用意していない。移動可能だとすれば、このエリアだけだ」

 倉知さんが応じる。

「ありがとうございます」

「礼は亞里沙に言ってやれ。我々も国連軍も、ひとつになるためにここまで手をこまねいてしまったのだからな」

「そうですね。世界の運命が。なんて真面目に言うことがあるなんて誰も思ってませんでしたから。終わらせましょう。必ず」

「春夏博士」

 はい、と私は答える。

「茎道の遺産を、特にヴォイドゲノムの研究を引き継いだ者がいるという情報は覚えているな」

「ええ。準備はしてきましたが……」

「言うまでもなかったな。あれだけのことを短期間でこなせるのなら、君たちの障壁に十分なりうる。警戒を怠らないように」

 はい、そう答えると、翁はそれと、と付け加える。

「いままであの手帳を隠していて、すまなかった」

「玄周さんの考えていたことです。ありがとうございました。私をここまで導いてくれて」

「儂とてしょせん子羊に過ぎない。だが、博士の全ては、羊飼い(シェパード)の願いの先にある。彼らの果たせなかった願いを、茎道の意志を、今こそ継いでやれ」

 はい、必ず。そう答え、通信を終えた。私はバイクに載る。そのサイドカーには、ツグミちゃんがいた。

「このプロトコルでいける?春夏ママ」

「そうよ。亞里沙ちゃんが穴を開けてくれたから」

 ありがとう、そういって彼女は立ち上がり、トラックへと戻っていく。

 さらに通信が入る。

「もう随分前になるが。国連でのあの時のこと、本当にすまなかった」

 誰なのか、それで私は理解した。

「いいんです。あなたの懸念は、おっしゃる通りでしたから」

「だが、君たちのつくったゲノムレゾナンス通信が、今の私たちを支えている。だからこそ、私たちも新生国連軍として、答えなければな」

 ありがとうございます、そういう私に、新生国連軍の総司令となった彼は告げた。

「攻撃隊はまもなくポイントデルタに到達する。陽動は我々に任せたまえ」

 そう言って、通信は切られた。

 エレベーターは止まる。全ての音が、静寂に包まれた。

 その先頭に立つのは、ふゅーねるというオートインセクトにフローター機能を搭載し、人を載せられるようにしたもの。その上に立つ、集の葬儀社としてのリーダーのコートを羽織った、いのりちゃんだった。

 彼女は静かに告げた。

「行きます」

 そして、走り出す。私たちも、一緒に走り始める。一対のシュタイナーA9、三台のトラックと共に。

 駆け抜けているとき、四分儀さんが告げる。

「国連軍による陽動により、二十四区側のオートインセクトの起動を確認しました。敵の通信経路は解放されています。やれますね、ツグミ」

 ツグミちゃんが応じる。

「誰に言ってんの!私の本気はちょっとすごいよ!あった、春夏ママのバックドア!」

 四分儀さんがややあって応答する。

「敵オートインセクト部隊の動きが止まりました。あとは国連軍に表立ってがんばってもらいましょう」

 ツグミちゃんがさらに言った。

「前方のドアロック、全部解除!」

 そして、その道の先にあるドアの全てが解放されていく。

 私たちは走り続ける。

 聖樹のその中心へと。

 

 

 

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 二十四区の中心に到達し、ツグミが降りてくる。オートインセクトたちが、周囲の通信設備を探し出し、コネクタを繋げていく。

「それじゃみんな、ここでお別れね」

 その後ろには、四分儀さんもいる。ツグミは私に歩いてくる。

「いっぱい連中の邪魔をして、みんなを安全に誘導するからね」

 私は頷いた。

「よろしくね、ツグミ」

 ツグミは笑う。

「いのりん。ちゃんと集を助けなよ!そんでみんなで、ハッピーエンドだからね!」

 私は微笑んで頷いた。

 そして、その巨大な空間の上へと見上げる。その先に太陽の光はない。

 私たちは、聖樹を登る(rise)ために、走り出す。

 聖樹の頂点に、ベツレヘムの星のもとにいる彼に、たどり着くために。

 

 

 

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 二十四区の中枢、中央司令室の直上の巨大な空間。中枢の祭壇に、僕は立っている。そこで、ひとつの通信が入る。

「涯様。国連軍が二十四区に向けて移動を開始しました」

「いのりだな。葬儀社もいるとみなせ。警戒を怠るな。俺もこれから向かう」

 はい、と返答があり、通信は終わる。

 涯は僕へ、ユウから取り出した弓のヴォイドを向けた。

「時間だ」

 僕は頷く。

「ああ、残念だけど」

 涯は、ヴォイドの矢を引き抜く。撃ち抜かれた僕の体からヴォイドエフェクトが溢れ、それが結晶化し、十字架になっていく。僕はそれに磔にされていく。意識が微睡みつつあった。涯がヴォイドを手放し、ユウへと返しながら告げる。

「いのりがお前を取り戻せば、全てが無意味へと還る。だが、その前にお前からはじまりの意志を全て手に入れることができれば、全てが解決だ。そのとき、お前という存在は消え去るが……」

 祭は俯いていた。そして、遠くから彼女が歩いてくる。バレリーナのような装束をまとった、真名お姉ちゃんだ。

「ごめんね、集。こんなはずじゃなかったのに……」

 僕は首を振る。

「僕のはじめたゲノムレゾナンス通信が、この事態を招いた。僕たちははじめから、繋がっちゃいけなかったんだ」

 全員が俯く。

 遠くにいるパストが、堪え切れず泣き出す。

「いやだ!集は悪くない!」

 僕は彼女に言った。

「ありがとう。母さん……」

 そう言うと、パストは固まった。僕は笑いかける。

「本当の親子に戻れて、うれしかった。今もそう思うよ」

 エンドレイヴから、声が漏れている。

 涯が僕の元へと登ってきた。そして、僕へ向かって手を伸ばす。僕からはじまりの意志を取り出すために。母だった人に、僕は別れを告げた。

「でもこれが、僕が償うべき罪だから……」

 その時、轟音が響いた。目の前には、母さんが、パストのエンドレイヴがいた。涯は遠くに飛んで離れている。そしてパストはエンドレイヴの体を振り回す。

「ちがう!これはわたしたちの罪よ!」

 そして、パストのエンドレイヴから銃弾が放たれ始めた。全員が、その場から逃げ出す。けれど涯は自分からヴォイドを引き抜き、僕へと向けた。それに気づいたパストが、目の前に飛び出してくる。パストは放たれた銃弾に撃ち抜かれた。

 大切な結晶体が、ヴォイドが引き抜かれた。それは、十字架だった。

「母さん!」

 そのとき、エンドレイヴの頭部が、こちらに向いた。何かを言おうとするかのように。

 全てが止まった。エンドレイヴの破片も、涯も、誰も彼もが、止まっている。けれどそのヴォイドから、誰かが飛び出してきた。それは、綺麗な女性だった。彼女は僕のもとへと浮遊して辿り着き、やがて僕のもとにたどり着く。気づけば、僕は涙を流していた。

 その涙を、彼女は拭う。そして、告げた。

「集。すべての想いは、繋がった。だからあなたが本物の、橋の王(BRIDGEBOSS)になるのよ」

 ヴォイドの十字架を、涯はさらに撃ち抜いた。同時に、ぐしゃ、ぐしゃ、エンドレイヴの体は破壊されて、爆発が起きた。

 エンドレイヴの爆発と共に、僕は奈落の底へと落ちていく。

 それは意識の底。真の悲嘆の川(コキュートス)。魂の国だった。

 

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