Guilty Crown Bonding the Voids 作:倉部改作
### insert inori 5
私たちが駆け上がったその先に、巨大なコンソールたちが見えた。春夏さんが告げる。
「中央作戦司令室よ。ここからなら、最上階へも直接……」
その時、春夏さんは視線を上へと見上げる。その先には、誰かがエレベーターで登っていっている。春夏さんはその名前を告げた。
「嘘界さん……」
そのとき、今まで通ってきたルートの全てが閉鎖されていく。私たちは身構える。声が響いた。
「ようこそ。桜満真名。並びに、その従者のみなさん」
アルゴが吠えた。
「従者じゃねえ、仲間だ!」
そしてアサルトライフルを撃つ。けれどその銃弾は別のものへと当たり、やがて反射される。全員が、遮蔽物へと隠れた。運悪く、ふゅーねるに当たってフローターが外れていく。
「ふゅーねる!」
「桜満真名。あなたと話さなければいけないことがあります」
そして、床が振動し、上へと登り始める。エレベーターが起動したのだ。
睨みつける私に、ユウは笑いかけてくる。
「ずいぶん素敵な表情になりましたね。愛の力、というやつですか」
私は拳銃を取り出し、ユウへと構える。
「集を返して」
「それはできません」
私は訊ねた。
「今まで一度も答えてくれなかったけれど。ユウ。あなたは、誰……」
ユウは答える。
「僕は、桜満集という終局《オメガ》の集合体と対となるもの。ダァトの始祖《アルファ》。あなたに触れた、はじまりの人間の集合体です」
私は思い出す。いまの人類とそう代わりのない姿で私に触れた、はじめの少年を。その表情を読み取ったのか、
「思い出してくれたようですね」
私は銃の安全装置《セーフティ》を外す。彼は臆することなく続ける。
「あなたは見事、その行動の果てに崩壊しかかった世界をゲノムレゾナンスで繋ぎ上げた。ゆえに私は桜満真名、あなたに問いたい。あなたと、その
私は答える。
「それが、集の本当の願いだったから」
「そう。私たちダァトは、シェパードたちは、世界をひとつするという未来を想像し続けた。ですがその果てにあるのは、集や涯の見せた、結晶世界です。我々には、あの誰もいない世界の未来しか、存在しない。あれが、あなたの目指す未来です」
そのとき上昇は止まった。そこにはたくさんの人たちが並んでいる。彼はその人たちのもとへ飛んでいく。
「桜満真名。解放されかかっているこの世界で、結晶世界へと逆行するあなたの願いを、ここで剥奪します」
ユウはたくさんの人の中から、ヴォイドを引きずり出す。
そこで私は銃を構える。
その反対側で、何かが蠢いているのに気がついた。それは、巨大なエンドレイヴ。それをみた黒いシュタイナー、ダリルが告げた。
「ゲシュペンスト……」
ご名答。その声と共に、嘘界と呼ばれた人が現れる。
「ヴォイドゲノムエミュレーションにさらに最適化した、究極のエンドレイヴです」
ダリルが応じる。
「そんなにヴォイドにこだわって……」
嘘界はええ、と肯定する。
「私はね、見たいんですよ。あの不可思議かつ崇高な光を。きっとあの光の向こうには、真理がある。そのためになら、私はなんだってしてきたんですよ」
綾瀬の白いシュタイナーが、嘘界に向かってヴォイドゲノムエミュレーションを起動し、突進する。
「一生語ってなさい!」
嘘界は巨大なエンドレイヴ、ゲシュペンストに守られるように抱えられる。
「このおてんばさん!」
しかしゲシュペンストは高速で突進され、六角形のエレベーターの縁から落ちていく。その時ダリルは呟く。
「やっぱ今まで見てきた中で、あいつが最速だ……」
その隙に乗じて、春夏さんはバイクを走り出す。それと共にエンドレイヴパイロットの護送するトラックもアルゴや大雲さんを乗せて走り出した。
「いのりちゃん、先にここの制御室に向かうわ!集のお友達が待ってる!」
私は頷く。バイクのサイドカーに乗る倉知さんが、バイクを阻もうとする兵士を撃ち抜いていく。
「俺たちはあの太眉だな」
目の前にいるユウは、不敵に笑っている。
### insert scrooge 4
俺たちは、茜色の空へと突然できた巨大な光の柱を見上げていた。その先では、魂の国の主人、集を中心にしてヴォイドエフェクトが解き放たれ続け、全員が動けなくなっていた。俺は呆然と呟いている。
「これは、一体……」
「地獄に垂れる、蜘蛛の糸。にしては、太いよね……」
その時、パストの声が聞こえた。
「私のインスタンスボディを使って。私たちの橋《BRIDGE》を、守って」
その時、横にいたキャロルが答える。
「パスト、なの……」
その時、外にいる真名が忌々しく呟いた。
「もっとも力があるからといって、目覚めさせたことが間違いだった」
そして、彼女はキャンサー結晶を作り出す。
「子供と一緒に、眠ってなさい!」
その時、何かが光の柱を駆けて飛び出していく。プレゼントのキャンサー結晶は、弾き飛ばされた。そして周囲へ、大量のキャンサー結晶を生み出し、集を守るように繭が生まれていく。その繭を作り出すキャンサー結晶は、見覚えがあった。俺は呆然と呟いた。
「
そして、俺は光の柱を見つめた。そして、その先の空へと。
だが、俺は手を握りしめる。
「なぜだ。なぜ、子供たちが……」
その時、キャロルはふう、と大きく息を吐く。見つめる俺に向かって、いつもの調子で笑って言った。
「わかるでしょ。あの子たちは、生まれたがっているのよ」
俺は目を見開いていた。そして、自分の右手を見つめた。
「俺は、父に相応しくは……」
その右手を、キャロルは握りしめた。
「いい、スクルージ。父親は、相応しい人間がなるものじゃない。相応しい人間に、父親がなるものなのよ」
俺は呆然と、キャロルを見つめていた。キャロルは笑う。
「行きましょう」
その時、光の柱から、集が落ちていく。彼は眠っているようだった。
落ちていく集に、俺は告げた。
「先に行くぞ、桜満集」
そして、キャロルへと向き合う。彼女は訊ねた。
「スクルージ。あなたはその手で、何を求めるの」
俺は答えた。
「償いを」
そして、光の巨大な柱へと手を触れた。
俺たちの体は、崩壊したパストを媒介に、ゲノムレゾナンスによって形作られていく。
そして、俺とキャロルは臨場する。
目の前のプレゼントは呆然としている。
「馬鹿な……」
キャロルは俺に向かって言った。
「スクルージ。お願い。私たちを使って」
俺はキャロルの胸へと、右手を伸ばす。そして、キャロルの胸から、巨大な剣が生み出され、それを引き抜く。そして、天上に突き上げ、宣言した。
「俺たちは、淘汰されない。ここで未来に繋ぐために」