Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

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じゃあ、握手。これで、仲直りな。


eleventh

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 ユウは鞭のヴォイドを引き抜きながら、私へ向かって攻撃を繰り出してくる。私はそれらを避けながら、銃弾を撃ち込む。けれど彼もまた銃弾を避けて、鞭は私へと迫ってきた。

 危ない。

 それに対抗するように、黒いシュタイナー、ダリルは自分のヴォイドの万華鏡を盾のように展開して、私を守ってくれた。

「イデオローグ、無事か!」

 私は頷く。ダリルは自分のヴォイドを解除し、銃弾を放つ。ユウは軽々と避けながら、

「ヴォイドゲノムエミュレーション。優秀なパイロットが使えばここまで拮抗できるものなのですか」

 ですが、といいながら彼はさらに別の人からヴォイドを引き抜く。それは円盤のような一対のヴォイド。

「所詮使えるのはひとつのヴォイドだけです!」

 ユウはヴォイドを投げ飛ばしてくる。私はひとつの円盤をかわし、ダリルも万華鏡を起動して、それをユウへと弾き飛ばす。ヴォイドは壁に激突し、破壊される。すると、ヴォイドを引き抜かれた人はキャンサー化し、崩れ落ちる。ダリルは舌打ちする。ユウはすかさず双剣を別の人から引き抜き、私へと迫ってくる。早い。ダリルが入り込む隙もなく、私は銃を投げ捨てて彼の懐に入り、その剣を握る手首を握り込む。

「一方のあなたは、力もなくしてほとんど丸腰だ。その肩にかかったシェパードのコートは、あなたに王の能力は与えてくれませんよ」

 私は言葉に窮する。

 なにか。なにか彼に対抗する一瞬の隙が必要だった。

 その時、上空で何かの爆発が起きた。ユウが呆然と上を見上げたその隙に、私は彼を投げ飛ばす。その隙を狙うようにダリルは銃弾を放った。避けながら着地したユウは、空を見上げて笑っている。

「まさか、あの生贄の橋から帰還するとは……」

 その時、金髪の女性が落ちてきた。そして彼女も上空を見上げている。

 そして、私のヴォイドを握った真っ白な涯と、かつての私も落ちてきていた。

 かつての私は、桜満真名はバレリーナのような紫色の装束を身に纏っていた。私に気づき、睨みつけてくる。

「あなたのせいよ……あなたが、世界中に希望なんか見せるから……」

 その時、私の目の前にふたりの人が降りてきた。一人は背が高く、真っ赤なコートにフードを被っていた。もうひとりは、華奢な背中で、青い髪だった。そして彼女は振り返ってくる。そして笑った。

「久しぶり。私のかわいい妹よ」

 私は誰なのか理解し、呟いた。「キャロル、お姉ちゃん……」

 キャロルは笑った。

「妹の危機に参上したわ」

 フードの男の人が言葉を挟む。

「成り行きだろ」

「いいじゃんスクルージ……」

 そして、スクルージと呼ばれたフードの男の人の手には、剣が握られていた。それはユウの武器のような螺旋をまとっている。私は呟く。

「ヴォイド……まさか、王の能力を……」

「俺が、この形式の王の能力のオリジナルだからな」

 スクルージはそう答え、その剣を涯へと向ける。

「そのコピー品は、臆病なお前には使いこなせない」

 涯は真名のヴォイドをスクルージに向けた。

「世界を解放するためなら、俺は臆病で構わないさ」

 そしてスクルージは涯へと飛び出す。私はその隙に乗じて、もう一つの拳銃を集のコートから引き抜き、ユウへと撃つ。そうして再び戦いは再開される。

 集のもとへたどり着くために。

 

 

 

### 6

 

 先に行くぞ、桜満集。

 その声で目覚めた時、そこは夢の中で訪れる場所だった。

 そこにはヴォイドエフェクトで編み上げられた光の柱があったが、静かに消え去っていく。そして空が茜色に染まっていることに気がついた。

 廃墟と化した建造物には、至るところに氷のような結晶が茜色に輝く。汚れた地面にもまた、野花のように結晶が咲き乱れている。その世界はまるで、彼女の瞳のような真紅だ。

 僕は幻想の廃墟を進む。そうして丘のふもとにたどり着き、足を止めた。

 その丘のてっぺんに、桜色の髪の少女がいた。けれど、歌は聞こえない。

 僕はその少女のもとにたどり着くと、その青い瞳で見つめてくる。彼女に向かって、僕は言っていた。

「なんで君は、戻ってきたんだ……」

「あなたも、ずっと会いたがっていたでしょ」

 そう言ってただ優しく微笑む彼女を見た僕は、なんとか言った。

「会いたかったよ」

 膝から崩れ落ちる。気づけば、泣いていた。

「でも、君を救うためには、これしかなかったんだ」

 僕は顔をあげて訊ねていた。

「みんなが、君を利用した。君のくれたもので、人を傷つけた。君の贈り物を、否定した。なのになんで!」

 その時、この世界でもなお、太陽は昇る。彼女はかがみこみ、僕の頬を撫でる。涙を拭うように。

「いのりさんが、その答えをみせてくれるわ」

 青い瞳の彼女を見つめ、僕は呟いていた。

「君は、誰だ……」

 そのとき、集と祭の記憶が去来する。それは、優しい王様という本。祭はビーチで話していた。

「その王様は、とても優しくてね、みんなにお金をあげたり、土地を譲ったりしていたら……とうとう、国がなくなってしまったの。王様は、みんなに怒られちゃうの……」

 大島の僕の家で、小さな祭は、その本を開いている。そして言った。

「集にそっくり」

 小さな僕は、首を傾げている。

「そうかなあ……ぼく、こんなにやさしくなれないよ……」

 でも祭は、自信を持って告げた。

「なれる!」

 

 僕は現実の世界に目覚めていく。その目の前には、祭がいた。さらに亞里沙や律、雅火も。

「集!」「王子様!」「桜満くん!」

 祭が微笑む。「おかえり、集」

 僕は呆然と訊ねる。「いのりが、来る……彼女の声が、近くに聞こえる……」

 亞里沙さんが答える。

「私たちが彼女を迎え入れたのよ。この世界を、もう一度繋ぐために」

 僕は周囲を見渡す。そこには今、誰もいない。その疑問に答えるように、雅火さんは答える。

「いま、王の能力を持った男の人が、ここにいた人たちを引きつけて下の階に向かった。とにかく逃げましょう」

 律さんが僕の拘束を解こうと何度も枷を叩いている。

「くそっ、これもヴォイドの力なの……取れないじゃん……」

 亞里沙さんもなんとか動かそうとしている。

「まずいわね。近くまで音が聞こえてきたわ……」

 そうやって必死に僕を逃がそうとしてる彼女たちに、僕は訊ねた。

「なんでだ……」

 彼女たちは顔をあげる。

「いっつもそうだ。なんで君たちはそんなに優しくなれるんだよ。僕は君たちにたくさん、ひどいことをしてきたのに」

 その時、祭が静かに答えた。

「違う。あなたはひどいことをしてるふりをしてただけ」

 僕は言葉に窮する。そして彼女は告げた。

「ほんとうにひどいことをしてたのは、私」

 呆然とする僕に、彼女は言った。

「集。私は、十年以上前からの、あなたの幼馴染」

「大島にいたってこと……」

 彼女は頷く。

「あなたをヴォイドの力で封じるために」

 全員が、動きを止めた。祭は微笑む。僕は訊ねる。

「まさか、僕が十年前から先の記憶をなくしていたのも……」

 彼女は頷いた。

「全てを知ることは、死を意味する。あなたのお父さんの言葉」 

 僕はその言葉に、固まっていた。彼女の表情はやさしい。

「あなたのことを、楪さん、真名さんと同じくらい知ってる。あなたと一緒に、ずっと遊んでいたんだもの」

 その時の記憶が流れ込んでくる。一緒にトリトンと一緒に砂浜で遊んでいたあのときのことを。

「集。私ね。運命なんか捨てて、あなたとずっと一緒にいたかった。でも、遅かった。あなたに気持ちを伝えようとしたその日、ロストクリスマスは起きた」

 戦いの轟音が聞こえる中、彼女は続けた。

「あの時から、あなたの中から私を消すしかなかった。そして、楪さんの姿を借りて、あなたの夢の中に訪れることしかできなくなって……」

「まさか、夢の中のいのりは、君だったのか……」

「時々ね」そういって、祭は微笑んでいる。けれど、目が潤んでいる。

「けれどあなたの真名さんの、楪さんへの願いは癌《キャンサー》のように広がった。集はますますあの人の影を追い続けた。私をみることなんか、結局なくて……」

 そう言いながら、彼女は溢れる涙を何度も拭う。でもね、と祭は言う。

「私が間違っていた。気持ちをひとこと伝える勇気があれば、よかったのに……結局、みんなの顔色を見てばっかりで、こんな時まで隠すことしかできなくって……」

 そう言って、彼女は泣き出してしまう。僕はなんとか言った。

「ごめんね、祭。ごめん……」

 それでも彼女は首を振った。彼女は笑っている。

「それでもあなたは優しいままだった。私の大好きな、あなたのまま。だからあなたの願いが繋がって、世界を動かそうとしている」

 その時、僕の体の拘束が、突如として解き放たれ、亞里沙さん、雅火さん、律さんはふわりと浮き、祭壇から離れさせられる。その感触で、雅火さんはふと呟いた。

「颯太……」

 僕は祭に支えられ、ひざまづく。その時、僕の持っていた端末で通信が起動した。応答すると、颯太の声が聞こえた。

「おまえの母さん、ほんと美人だったな……」

「颯太、ヴォイドを使ったのか……」

「今更だろ?俺だって、この体と、谷尋と、お前の母さんの力を借りりゃ、二十四区全部こじ開けるのなんか簡単だったさ」

 僕はその言葉に強烈な悪寒が走った。

「そんな使い方……まさか……」

「いいんだよ。俺たちのよく知る、かっこいい去り際だろ」

「仲直りもしてないのに!」

 その時、ひざまずく僕の目の前に、颯太がいる。

「じゃあ、握手。これで、仲直りな」

 そして、彼は立っていて笑って左手を差し出す。僕は左手を取り、涙をこぼしながら立ち上がる。けれど颯太は笑って、ヴォイドエフェクトと共に消え去った。

 

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