Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

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あなたは、優しい王様になれる。


twelfth

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 スクルージとキャロルは、涯と真名と戦っている。

 ユウは私へ向かって双剣の片方を投げ飛ばしてくる。私はすかさず避けるが、その先にいた人に突き刺さり、断末魔とともに結晶化して崩れ去っていく。私はユウの追撃をどうにか銃のフレームで抑え込む。ユウは迫ってくる。

「せっかくシェパードに解放されながら……願いを拒んで、あげく無知な人類、あんな馬鹿共に入れあげて……」

 その時、急に体にヴォイドエフェクトが巻きついていく。私は彼を突き飛ばす。

「違う!」

 ヴォイドエフェクトの力で吹っ飛ばされたユウは呟く。

「その力、ゲノムレゾナンスですか……」

 私は銃を撃ちながら接近する。その瞬間、ダリルが援護射撃してくれて、ユウの動きを阻む。私はダリル隙を見せた彼に、私は銃を撃ち抜く。今度こそ彼に二発確実に当たり、彼は逃げるように飛ぶ。しかし着地がうまくできず、ダァトの人垣に突っ込んでしまう。

 私は銃をリロードしながら、告げた。

「私たちは、他の人のこと、誰も知らないの」

 私は再び銃を構えた。

「みんな、自分の中の醜さと戦って、苦しんで。同じように傷ついて、間違った。それでも集はみんなを、私を、そっと支えてくれたの」

 ユウは、睨みつけてくる。そして、周囲のヴォイドを引き出してきた人たち全てから、ヴォイドが取り出されはじめる。彼らは結晶と共に消えていく。

 そうして生まれたのは、巨大な砲台だった。

 危機を察知したダリルが、私の前に入る。

「逃げろ!イデオローグ!」

 私は、彼のエンドレイヴへと手を触れる。

「いいえ。私は逃げない。ルーカサイトの時と同じ。みんなが、繋がっているから」

 触れた手から、ヴォイドエフェクトが溢れ、ダリルのエンドレイヴ、黒いシュタイナーに漂う。

「なるほどね。これが、あいつの使っていた力か」

 そして、ユウの砲台から、エネルギーが放たれた。

 そしてダリルは叫んだ。

「シュタイナー!俺に、力を貸せ!」

 ダリルの万華鏡は、ユウと彼の生み出した巨大なヴォイドを包み込むように生み出された。そして万華鏡はそのエネルギーを押し返していく。

 ユウは呆然としていた。「そんな……」

 私は、ユウへ告げた。

「集だけが、ずっとそばにいて、みんなを、私を、信じてくれたの」

 そして、私は宣言した。

「だから。今度は私が隣にいる。今度こそあなたを離さない。集!」

 ヴォイドエフェクトが、ダリルのエンドレイヴを包み込む。そのエネルギーは完全に反射された。反射は何度でも繰り返され続けていく。

 その万華鏡の檻の中で、ユウは微笑んだように見えた。

 巨大な爆発が起きた。

 

 

 

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 颯太が消え去ったそのなかで、彼女の声が届いた。そして、下で爆発が起きたように、轟音が響き渡る。

 横にいた祭が訊ねてくる。

「集。いまなら聞こえるでしょう。楪さんの声が。たくさんの人たちの声が。あなたが、真名さんが、楪さんが、ここまで繋いできた世界が……」

 僕は呆然と呟く。

「ゲノムレゾナンス……」

 みんなの様子が、目に飛び込むように僕にはわかった。かつて僕に王の能力をくれたスクルージとキャロルが戦う姿を。谷尋が花音さんと一緒に葬儀社の人たちを援護するのも。ツグミがクラッキングを続ける姿も。みんなが、春夏が、いのりが、ここに向かっているのも。祭は訊ねる。

「集。覚えている……あなたは本来の王の能力を、持っていたことを」

 僕は左手をみつめる。それはかつて、真名お姉ちゃんを殺した力だった。なのに、祭はこう言った。

「私は、あなたを縛る鎖。だからお願い。私の心をとって欲しいの」

 僕は言っていた。

「そんなことをしたら、君は……」

 死んでしまうのに、彼女は僕の左手をとる。そして、彼女は笑う。僕は何度も首を振った。

「やめて、やめてよ祭……僕は君になにひとつ……」

「ううん、集は、私にすべてをくれた。生きる意味を。楽しさを。そして、恋を。だから、それを返すの。優しい王様の、あなたに……」

 不完全なまま、否。本来の王の能力が起動し、祭のヴォイドが取り出されていく。けれどそれは以前のような美しい包帯ではない。ボロボロな、鎖の結晶だ。それが完全でないままに、崩れ落ちていく。

「私はもう、あなたのもの……」

 不完全な鎖が僕の左目の眼帯を吹き飛ばし、左目を、右腕を包んでいく。

「私をつかって。私を通していのりさんとあなたの繋いだ世界をもう一度みて。私のこの手で今度こそ、みんなの手を、いのりさんの手を繋いで。私が、手伝ってあげるから」

 僕の失った左目と右腕が成形された。まるで、かつてからそうであったかのように。そして彼女は結晶化していく。

 その時、魂の国が見えた。その目の前に、祭は立っている。

 彼女が、遠くに向かおうと踵を返す。僕は手を伸ばした。待って。

 それに答えるように、祭は僕へ手を差し伸べてくれる。そして告げた。

「この世界を構成していた生贄で、あなたは世界と繋がり、生贄を糧にあなたの体は蘇った。だから、救いとなって。死者の代弁者として。涙も枯れ果てた生者の希望となる、抵抗者として」

 悔しくて、涙をこぼしていた。彼女の手を見つめながら、僕は完成した右手を、握りしめていた。

 けれど僕は、彼女の手をとった。彼女は微笑んだ。

「あなたは、優しい王様になれる」

 その瞬間、僕を中心に光の柱が立ち登る。

 聖樹のその頂点で、僕は空へと手を伸ばす。届くことのない月へと。そして、空を見上げる。その左目から、涙が流れるのを感じながら、僕は告げた。

「行こう、祭……」

 

 

 

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 ここと同時に、ずっと上の方で、何かの爆発が起きたかのようだった。その視界の先には、光の柱が立ち上っていた。私は呆然と呟く。

「集、なの……」

 何かに気づいたのか、スクルージたちと戦っていた涯と真名は上へと飛び出していく。スクルージがヴォイドを使って止めようとしたけれど、そこでプレゼントが目の前に現れて、彼をキャンサーの剣で貫きながら、そのエレベーターから落ちていく。

「君はこっちだ」

 キャロルは叫ぶ。「スクルージ!」

 彼女もまた、そのエレベーターから飛び降りていった。

 

 そうして、私とダリルは取り残された。そして、ユウも。

 彼の起動した砲台のヴォイドは完全に崩れ去り、ユウもまた倒れていた。

 私は彼の元に歩み寄り、かがむ。

「ごめんなさい、ユウ。私のわがままに、巻き込んでしまって……」

 ボロボロの彼は笑う。

「まったくあなたは、優しすぎるんだ。桜満集も、私も、人類も、あなたのその優しさの中で生まれたんだ」

 そして、彼は右手を私へと差し出す。すると私の右手が結びつき、ヴォイドエフェクトが流れ込んでくる。

「これは、あなたを慕った全てのダァトの願いの結晶。これであなたが、墓守になってください。自らのはじまりに、添い遂げるために……」

 そして、私は理解した。

「王の、能力……」

 ユウは告げる。

「人々の願いを束ね、力として発揮したあなたならば、正しく使える。私以上に……」

 そして彼の体はヴォイドエフェクトとともに消え去っていく。

「抗ってみせてください。我がはじまりの意志。この未来にどうか、溢れんばかりの、呪いと、祝福を」

 私は彼を見送る。その右手で、彼のコートを握る。そしてその右手で、自分の胸に手を当てた。

「いきましょう、ユウ」

 そして、私は自分のヴォイドを引き摺り出していく。

 ダリルは呆然と呟く。

「それが、イデオローグのヴォイド……」

 その大剣は、あまりにも巨大だった。

「この武器は、私の絶望……いいえ、私のエゴ」

 私は立ち尽くすダリルの黒いエンドレイヴへと振り向く。「綾瀬と、ツグミのところへ」

「いいのか」

「全ては、この力が集めてくれる」

「……わかった」

 彼は、エレベーターから飛び降りる。

 私は再び、その聖樹を登っていく。ベツレヘムの星のもとへ。

 

 

 

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 この最上階に、真名が現れる。僕を見つめ、呆然としていた。

「ありえない……」

 遅れて到着した涯が、呟いた。「祭、なんてことを」

 僕は、涯へと結晶の右手を差し出し、告げた。

「涯。僕たちの手で、もう一度世界を繋ごう」

 涯は手に持っていた真名のヴォイドを握りしめる。そして顔をあげる。

「不可能だ!」

 涯は真名のヴォイドを持って、僕へと飛びかかる。僕はそれを間合いを詰めて涯の手首を握り、抑え込む。僕の周囲には、ヴォイドエフェクトがまとっている。涯は忌々しく告げる。

「まさかお前の力……」

「ああ。みんなの心が、流れ込んでくる……」

 世界中の声が聞こえる。誰もが手を合わせ、手を握りしめる。人々は心の奥底に、空に願い続けていた。聖なる夜が、いままでと変わることなく訪れますように、と。

 涯は激昂する。

「この光を見たところで、結晶の世界を見せたところで、世界は理解しなかった!奴らに言葉も願いも、悪意へと堕ちる。お前も理解していただろ!」

「ああ。けれど、僕たちに悪意を向けた人だって、誰かに愛されて、生まれたんだ……」

 僕は涯を投げ飛ばす。涯は遠くへと放り出され、着地する。

 涯は僕を見据えて吠える。

「お前こそが、この世界を終わらせる、名前のない怪物(Monster Without The Name)だ!」

 全てを認めるように、僕は身構え、答える。

「ずっと逃げてきたんだ。でも、僕は……今こそ僕をさらけ出す……」

 そして、僕たちは激突する。

 世界を解き放つために。

 世界を繋ぎ止めるために。

 

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