Guilty Crown Bonding the Voids 作:倉部改作
### insert inori 10
身動きの取れない私のもとへ、真名はやってくる。紫のバレリーナの装束を纏う彼女は、告げた。
「そのマフラーやコート、あげく王の能力を手にしただけで、集みたいになれると思ったの」
私は歯を食いしばる。
そう。私は集のように、なれない。ここが、私たちの収束点《convergence》。
そのとき、遠くから声が聞こえた気がした。彼の、優しい声が。
気づいて。
そのとき、集と目があった。その目は互いを認めるため。彼は微笑んだ。
そして彼は、結晶を徐々に破壊しながら、私へと手を伸ばしている。
それで、思い出した。私がどうやって、王の能力を託されたのかを。
もう一人の私は、私の前に辿り着いた。
「どうして私は、あなたは、言葉さえあれば寄り添えると思ったの」
真名は、結晶を作り出していく。
「さようなら、私のなかの、ばけもの……」
彼の伸ばされた右手は、ヴォイドエフェクトで輝き始める。まるで、オオアマナの純白さを目指すように。
私は、集へと手を伸ばした。その声は思いを伝えるため。
「集。とって。私は……」
そして、彼と私の間に、ヴォイドエフェクトが繋がる。
その手は大事な人と繋ぐためにある。
「私は世界を繋ぐ、
集の目が、見開かれた。その瞬間、なぜか私を中心に、ヴォイドエフェクトが溢れた。そして真名の作り出した結晶の全てが破壊され、それはまるで粉々の雪のようになっていく。その吹雪が、私の目の前にいた真名と、そして涯をも吹き飛ばす。呆然とその雪を見つめて気がついた。それは雪ではない。かつて私が降らせた、ヴォイドエフェクトの桜だった。
空を見上げると、禍々しい紫の光の柱は、一瞬にして真っ白な光の柱へと変わっていた。その空の先には、極光《オーロラ》が輝く。ターコイズグリーンに。
遠くにいた亞里沙さんも、雅火さんも、律さんも解放されていた。律さんと雅火さんは呆然と空を見つめながら、けれど亞里沙さんは自分の持っていた端末に目を落とし、呟いていた。
「ゲノムレゾナンス通信が、復活していく……」
それに、彼は答えた。
「いまの僕といのりこそが、はじまりの意志だからね」
目の前に、集がいた。視力を失ったはずのその左目は開かれ、極光《オーロラ》と同じ色に輝く。そして、私に差し出される右腕を、そして彼の頬をみて、呆然とした。結晶の腕は、白金の腕へと変わっていた。彼の頬は、白金に包まれている。そして傷も、全てがヴォイドの白金で塞がれていた。私はその手を取り、立ち上がる。そして、私は彼に抱きしめられた。
「いのり。ごめん。ありがとう」
私は彼にしがみつく。涙が溢れて、止まらなかった。そして、彼の首をみた。私の作り続けた傷は、今もアザとなって残り続けていた。私は桜吹雪が私たちを守る中で、彼にコートをかけ、そして、マフラーをかける。かつて彼がそうしてくれたように。集は訊ねてくる。
「寒くないの?」
私は答える。
「もう、寒くない」
集は微笑んだ。
そして、集は立ち上がろうとする涯へと向く。涯がうめいた。
「いったい、何が……」
その時、声が響いた。
「ねえ、涯。あなたにも聞こえるでしょう。私たちを許してくれた人たちが、慕ってくれた人たちの声が……」
涯が周囲を見渡しながら呟く。
「祭か……」
私は周囲を見渡す。けれど、彼女は見当たらない。
「楪さん。あなたと集の記憶を縛った私はもういない。けれど、いまだけは集とともにある」
それで、私は思い出す。十年前、集とともに遊んでいた、栗色の髪の女の子のことを。
「あなただったの……」
彼女の声は告げた。
「集。もうあなたひとりでは、王の能力は使えない。けれど、みんなでなら使える。あなたはついに、王の能力の真髄に到達したのよ」
集はうなずく。そして、私に背を向けながらも言った。
「世界はひとつになった。不甲斐ない僕を、橋《BRIDGE》にして。それでもこの景色が、君がずっと願い続けてきた未来なんでしょ。いのり……」
その背中を見つめ、私は呆然と思う。
ずっと、彼が追いかけてくれた。だから気づかなかった。
小さかった彼の背中は華奢ではあったけれど、頼もしくなっていた。彼は桜吹雪のなか、背を向けたまま、私にこう言った。
「待たせたね……」
また涙が溢れてしまう。彼こそが、この世界の収束点《convergence》。わたしのずっと願い続けた、優しい
### insert haruka 6
私たちが制御室に辿り着いた時、そこは計算機たちの息づく音しか響いていなかった。その中でも、いつかいのりちゃんが降らせてみせた桜吹雪のようなヴォイドエフェクトは流れ込んできている。
四分儀さんが、無線で連絡が入る。
「こちらのクラッキングシステムは制圧完了しました。桜満博士。あとはお任せします」
ええ。私はそう答え、通信を終了した。
私はその中心にあるコンソールにたどり着く。その画面上で、エンドレイヴのプログラムが動いていることがわかった。そして、よく知る彼の息遣いを感じた。
「兄さん……ここで、あなたは世界を救おうとしたのね……」
私は、そのモニターに優しく触れる。
「まかせて。あなたの願いを、玄周さんと目指した未来を、今度こそ私たちがつくりあげるわ」
### insert scrooge 7
なぜか、桜が舞い散っている。そのなかでプレゼントの攻撃を何度もかわしていた俺は、疲弊していた。プレゼントは迫る。
「諦めなよ、スクルージ!」
プレゼントの攻撃をかわし、どうにか下がっていく。
「君は子供達に必要とされていない!君の子供たちも、もうここにはいないだろ!」
言葉に窮する俺に、プレゼントは結晶の追撃が追いついた。俺は氷のようなキャンサー結晶に絡め取られた。
「スクルージ!」
同時に、キャロルも結晶に絡め取られた。俺は息が上がっていた。プレゼントは、悠然とキャロルに歩み寄ってくる。
「まずは、スクルージと別れの挨拶の時間だ。キャロル」
俺はプレゼントを睨みつける。
「まだだ、まだ、俺たちには、やるべきことが……」
プレゼントは笑う。
「それは、残念だったね」
プレゼントが、キャロルへと手を伸ばしてくる。
キャロルの瞳は、もはや昏い。一切の抵抗をみせようともしなかった。
もうだめだ。
そう思った瞬間だった。声が聞こえた。
「あきらめないで」
俺は、プレゼントは、キャロルは、声の元へと見上げる。そこから、荊のような結晶が再び出現し、プレゼントを絡め取ろうとする。そして、いくつものヴォイドたちが、プレゼントへと飛ぶ。そして自分たちの元へもやってきて、プレゼントの結晶を、切り落とす。俺は呆然としていた。
「お、お前たち、なのか……」
### insert ayase 6
空も見えないこの聖樹の閉鎖空間のなかで、桜が舞い散っている。
その中でエンドレイヴたちは斬り合いを続けていた。私のシュタイナーのブレードと、ゲシュペンストのキャンサーのブレードがぶつかり合う。
「このゲノムレゾナンス!やはり桜満集くんですね!そうです、これですよ、これこれ!」
ゲシュペンストの力は強まり、私は吹っ飛ばされる。なんとか空を滑空し、体勢を整える。が、エンドレイヴに繋がっていて、脳が揺れらされる。その隙に乗じて、浮遊するゲシュペンストは突っ込んできた。危ない。
そう思った瞬間、目の前に黒いエンドレイヴがいた。そのエンドレイヴが万華鏡を起動し、なんとか押さえ込んでいる。そのゲシュペンストに張り付いたダリルはシュタイナーとともに振り返ってくる。
「しっかりしろ!今ならヴォイドの力は、俺たちも使える!」
「でも、私のヴォイドは空を飛ぶことしか!」
ツグミが答えてくれる。
「ネイ!直接接続型のヴォイドゲノムエミュレーションが全てじゃないわ!このエンドレイヴでヴォイドゲノムエミュレーションを使うのは、綾ねえだけじゃない!」
え、と言ったその時、四分儀が無線で伝えてくる。
「いまです、ツグミ!」
「綾ねえ、おまたせ!」
その時、私の白いシュタイナーからビッドが二つ、分離する。そして、それは浮遊しはじめる。
「私も戦う!リモートの制御は任せて!」
私は笑う。
「こういうのは、もっとちゃんと言っとくもんよ!」
嘘界は、ゲシュペンストは笑い、ヴォイドを起動していく。
「殺せるんですか、あなたたちに!」