Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

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epilogue

### epilogue

 

 僕は太陽の光を受けながら、机で寝そべっている。

 いのりの歌を、僕はAirPodsProをつけて聴き始める。平穏な世界。天国に限りなく近い場所。僕は窓の外を見つめる。外にはもう、装甲車も、戦車も、エンドレイヴいない。わずかに残されたGHQの兵士たちだけが、警棒だけを持って立っている。

 特殊毒液災害対策局《アンチボディズ》は葬儀社の公表と共に、その問題行動の全てを公開され、世界中からのバッシングの末に解体された。彼らは、その名前で二度と立ち上がることができなくなった。

 葬儀社が、いつかこの日本を解き放つ日は訪れるだろう。

 僕はチャットツールを見つめる。戸籍上の僕の親、そして、セフィラゲノミクス勤めの春夏宛に送ったメッセージは了承されていた。インターンの終了。僕はもうあそこには、用事もなかった。道化師の役目は、あの戦いの中で変わってしまったのだ。

 端末から、たくさんの論文を、記事を、僕は見つめる。けれど、僕は、自分のiPhoneでジョークアプリケーションを起動していた。あの廃校舎のiMacで映し出されていた3Dモデルが表示されてきた。

『あなたの色相は、非常に健やかであることを示す、ターコイズ・グリーンです』

 夢の世界で会ったとき彼女の瞳の色だと、僕は微笑む。アプリケーションは、続けた。

『あなたの好きな相手の色相は、チェリーブロッサム・ピンクです』

 僕は、その表示されたモデルの桜色から思い出す。彼女の髪の色だ。

 僕は六本木から出る時に聞こえたあの曲を聴き続ける。葬儀社の人たちと、いのりと作り上げた、この、天国の片隅で。

 いつか僕は裁かれるだろう。いつか僕は自分の死をもって、この外なる王の能力を消さなければならないだろう。けれど今だけは。彼女の声を聴きながら、そう思った。

 そのとき、チャイムが鳴る。僕は名残惜しいままにAirPodsを取る。そして、忌々しく担任を見つめた。彼は、黒板に何かを書きつける。

「平常心」

 そして、どこか当たり障りのないことを話し続けた。僕にとっては、そんなものは自分を苦しめていたものでしかなかった。そして、置いてきてしまった。彼女と共にいた、あの廃校舎に。地下道に。そして、六本木に。そう思いながら、僕は顔を伏せる。

 そうして話し終わると、担任は、転校生を紹介する、と言いだした。

 こんな時期に急だな、と思った。入って、と担任がいうと、少女は教室に入ってきた。

 制服からもわかる、モデルと言って通せるスタイルの良さ。そして、長い髪を束ねていた。そう。チェリーブロッサム・ピンクの髪を。

 彼女は自らの名前を告げる。「楪、いのりです」

 僕は即座に立ち上がる。そうすると、彼女は僕を向き、じっと見つめてきた。整った目鼻立ち。絹のように流れる桜色の髪。そして、紅玉を彷彿とさせる、輝く瞳。

「うそ、でしょ……」僕はそう言っていた。

 彼女は首を傾げて、答えた。

「ほんとだよ」




ギルティクラウンと出会ってその最終話を見届けたとき、私はこの物語をつくりなおすという目標を立てました。

どうにか登場する彼らが幸せになってほしかった。そんなエゴから、私の旅は始まりました。

あるときに4年の総括として、LOPをつくりあげました。私はそのときやるべきすべてを果たして、目標を達成しました。私の旅はそこで終わったと思っていました。

しかし今読めば、荒削りで、いくらでも直すところが出てくるものです。どこに飛ぶかもわからない物語を必死に書いていたわけですから、もう少しなんとかなるんじゃないか、といまの多少冷静な私はぼんやり思ったわけです。私の旅は、気づけば始まっていたのです。

そんな自分の作品を読み直すきっかけを得られたのは、もう一度書き直したいと思うきっかけを得られたのは、この4年間、LOPへ感想を届けてくれた方々のおかげでした。ありがとうございます。

そして、この作品が生まれたのは、ギルティクラウンをいまもう一度書き直したいと仕事納めの時にぼやいていたときに、年末年始で一緒にやろうと背中を押してくれた、友人のおかげでした。ありがとうございます。

とはいえ、LOPで40万文字を超えてしまっていた以上、この1週間で書ける範囲は限られていました。そこで今回は、1話と2話を、それらしくまとめることに、力を尽くすこととしました。

LOPと比べたら、ずっと集は弱い人間になりました。逃げたり、怖がったり、泣いたり。けれど、彼の真の強さは、あの原作の集の強さは、きっとそんな、自分にとっては大きな大きな問題に向き合って、葛藤するからこその優しさでできているんじゃないのか。そんなことを思いながら、私はこの物語を書き続けてきました。

気づけば8年。この物語が、いまのわたしの全力です。
そして、こうして8年間、いつまでも私の心のどこかに在り続けた、ギルティクラウンという物語に、感謝を申し上げます。ありがとうございます。

そして、ここまで読んでくださった皆様。ありがとうございます。
ギルティクラウンをまた思い出すきっかけとしていただければ、幸いです。

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