Guilty Crown Bonding the Voids   作:倉部改作

51 / 53
これが、俺たちの素晴らしい友情の終わりだな。


seventeenth

### insert scrooge 8

 

 桜が舞い散る中。プレゼントの攻撃を、俺達が呼び出していたヴォイドたちが妨害し続けている。プレゼントは焦る。

「なぜだ。どうやって、ヴォイドが意志なんか……」

 キャロルが俺の元へやってくる。

「これは、子供たちなの……」

 俺はあたりを見つめながら、告げた。

「ああ。だがやはり、この桜が降ってきてからだ」

 そしてその桜に触れる。しかしそれはヴォイドエフェクトとなって消えていく。

「つまりこの世には……」

 キャロルの言葉を俺は補完する。

「生まれることは叶わないだろうな」 

 キャロルは俯いた。 

「じゃあこの子たちは、どうして……」

 俺はおもむろに答えた。

「まだ、俺たちには、やるべきことがあるからだ」

 彼女の手を、俺はとった。彼女は驚いて俺を見上げる。

「キャロル。母親は、相応しい人間がなるものじゃない。相応しい人間に、母親がなるもの。そうだろう?」

 彼女は呆然としていた。俺は続けた。

「まずは、子供たちに相応しい人間になろう」 

 彼女は笑う。だが、その瞳からは涙が溢れて、彼女は涙を拭う。

「まったく、素敵なレディーに出会ったみたいね」

「ああ。自慢のな」

 そして、俺はキャロルと手を繋いで、その右腕を掲げる。

「プレゼント。これで終わりだ」

 すると、ヴォイド達は一斉にプレゼントを拘束していく。彼女は完全に動けなくなった。俺とキャロルは手を繋いだまま、彼女のもとに歩んでいく。

 プレゼントは俺たちを見据える。

「僕を、殺すのか……」

 俺は答える。

「あきらめるな。俺の子供達は結晶世界から、俺たちにそう言った」

 呆然とするキャロルに、俺は言った。

「お前も、もう茎道の束縛はない」

 プレゼントのヴォイドによる拘束は、俺の意思に関わらずに完全に解かれ、彼女はひざまづく。プレゼントは疑問を隠せないまま、周囲を見渡す。ヴォイド達は雪のように吹雪きながら消え去り、遠く、遠くへと飛んでいく。子供の笑う声が離れていく。俺は彼らの向かう空を見上げながら、告げる。

「子供たちもお前を殺さず、解放した」

 そして、プレゼントに手を差し出した。彼女は、俺を呆然と見つめている。

「はぐれ者同士でも、繋がりは繋がりだ」

 ふ、とプレゼントは笑う。

「なんだよ、そりゃ……」

 彼女は何度も、顔を拭う。そしておもむろに手をとった。なんども拭っていたはず彼女の頬には涙が溢れていている。

「ありがとう。スクルージ、キャロル」

 キャロルは笑う。

「でもわすれないで。この人はお姉ちゃんのスクルージなんだからね」

 プレゼントも応じる。「いつか絶対、振り向かせてみせるさ」

 そんなことを言いながら、俺たちは三人で手を繋いだまま、空を見つめる。これが、過去《パスト》が、子供達《BridgeBaby》がくれた、素敵なクリスマスの贈り物(ギフト)だった。

 十年前、一瞬だけ見えた子供達を思い出す。

 お前たち。俺たちがあの結晶世界に辿り着くまで、待っていてくれ。

 

 

 

### 11

 

 桜の花弁が舞っているなか、僕は涯のもとへと向かう。倒れて血を流す涯を、真名お姉ちゃんは膝枕している。その横には、壊れた真名お姉ちゃんのヴォイドがあった。いのりが、供奉院さんが、雅火さんが、律さんがやってくるなか、僕は微笑んでいる涯と真名おねえちゃんをみつめる。

「涯……お姉ちゃん……」

 横にいる真名お姉ちゃんは笑う。

「なんで私たちを心配してるの……」

 でも、と僕はいうのに、涯も笑っている。

「それでいい、集。そういうお前で……」

「そうね」

 真名お姉ちゃんもそう言って微笑んでいる。強烈な違和感に、僕は訊ねた。

「待ってよ。どうしてそんなふうに……」

 お姉ちゃんは答える。

「あなたたちが、世界を救った。結末を変えようとする意志《Sense》が世界を包んで、私たちを超えた。これは偶然じゃない」

 そして、真名お姉ちゃんは、涯をみて呆然とするいのりの頬に、触れた。

「みんなが、あなたが、確かに繋いだ未来よ……いのり」

 いのりは目を見開く。その瞳から、涙がこぼれる。

 どうにか、僕は訊ねる。

「もしやりかたを変えたら、別の結果もありえたの……」

 涯は笑う。

「すべては結晶世界に収束《convergence》する。この世界の理《ことわり》だが、何もしないことの……理由にはならない。お前も、いのりも、亞里沙も、そうだったんだろ」

 供奉院さんは、涙を流す。

「馬鹿……あなたが、そんなことをしてるから、私はただ……」

「繋いだ。甘えるのが、上手になったじゃないか……」

 亞里沙さんはわなわなと震え、やがて彼に触れて、泣き出してしまう。僕はなんとか訊ねる。

「これが僕たちの知らない運命なの?」

 涯は笑う。「好きに呼べ」

「君たちにとっては?」

 真名お姉ちゃんが朗らかに答えた。

「悲願よ。かつて私の託した願いを、決して諦めなかったんだから」

 そして真名お姉ちゃんは、雅火さんと律さんをみやる。

「あなたたちになら、任せられる。あなたたちには、大切な人を守る能力があるわ」

 雅火さんや律さんもまた、涙ぐむ。

 言葉を失っている僕に、涯は言った。

「世界に絶望した俺たちではなく、希望を探し、繋ぐお前たちが残る。それこそ、適者生存だと思わないか?」

 虚を突かれた僕を見ながらも、涯は、僕の右手を握った。

 涯の右手からヴォイドエフェクトが溢れる。そして僕の右手に収束し、王の能力が再びこの手に戻ってきた。涯は呟く。

「王の能力。お前に、本物の指導者(shepherd)に相応しい力だった」

 何度も首を振る。

「君が、何もできなかった僕を導いてくれたんじゃないか」

 涯は目を見開く。意外だったと、そう言わんばかりに。やがて笑って言った。

「これが、俺たちの素晴らしい友情の終わりだな」

 僕は泣きながら言った。

「僕には再開《reloaded》したばかりだ!」

 彼の体は、真名とともにゲノムレゾナンスに包まれていく。そして遠くを見つめる。徐々に茜色に向かおうとする空を。

「この先は、世界を繋いだあとの危険な世界だ。きっと気にいるさ。これは、結晶世界を超えた壮大な過去と未来の物語だ」

 僕は訊ねる。

「誰の物語だ」

 涯は答える。

「おまえたちのだよ。今はその中間地点にいる。いつか、収束点《convergence》で会おう」

 そうして、涯と真名はヴォイドエフェクトの波に消え去っていった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。