Guilty Crown Bonding the Voids 作:倉部改作
### insert scrooge 8
桜が舞い散る中。プレゼントの攻撃を、俺達が呼び出していたヴォイドたちが妨害し続けている。プレゼントは焦る。
「なぜだ。どうやって、ヴォイドが意志なんか……」
キャロルが俺の元へやってくる。
「これは、子供たちなの……」
俺はあたりを見つめながら、告げた。
「ああ。だがやはり、この桜が降ってきてからだ」
そしてその桜に触れる。しかしそれはヴォイドエフェクトとなって消えていく。
「つまりこの世には……」
キャロルの言葉を俺は補完する。
「生まれることは叶わないだろうな」
キャロルは俯いた。
「じゃあこの子たちは、どうして……」
俺はおもむろに答えた。
「まだ、俺たちには、やるべきことがあるからだ」
彼女の手を、俺はとった。彼女は驚いて俺を見上げる。
「キャロル。母親は、相応しい人間がなるものじゃない。相応しい人間に、母親がなるもの。そうだろう?」
彼女は呆然としていた。俺は続けた。
「まずは、子供たちに相応しい人間になろう」
彼女は笑う。だが、その瞳からは涙が溢れて、彼女は涙を拭う。
「まったく、素敵なレディーに出会ったみたいね」
「ああ。自慢のな」
そして、俺はキャロルと手を繋いで、その右腕を掲げる。
「プレゼント。これで終わりだ」
すると、ヴォイド達は一斉にプレゼントを拘束していく。彼女は完全に動けなくなった。俺とキャロルは手を繋いだまま、彼女のもとに歩んでいく。
プレゼントは俺たちを見据える。
「僕を、殺すのか……」
俺は答える。
「あきらめるな。俺の子供達は結晶世界から、俺たちにそう言った」
呆然とするキャロルに、俺は言った。
「お前も、もう茎道の束縛はない」
プレゼントのヴォイドによる拘束は、俺の意思に関わらずに完全に解かれ、彼女はひざまづく。プレゼントは疑問を隠せないまま、周囲を見渡す。ヴォイド達は雪のように吹雪きながら消え去り、遠く、遠くへと飛んでいく。子供の笑う声が離れていく。俺は彼らの向かう空を見上げながら、告げる。
「子供たちもお前を殺さず、解放した」
そして、プレゼントに手を差し出した。彼女は、俺を呆然と見つめている。
「はぐれ者同士でも、繋がりは繋がりだ」
ふ、とプレゼントは笑う。
「なんだよ、そりゃ……」
彼女は何度も、顔を拭う。そしておもむろに手をとった。なんども拭っていたはず彼女の頬には涙が溢れていている。
「ありがとう。スクルージ、キャロル」
キャロルは笑う。
「でもわすれないで。この人はお姉ちゃんのスクルージなんだからね」
プレゼントも応じる。「いつか絶対、振り向かせてみせるさ」
そんなことを言いながら、俺たちは三人で手を繋いだまま、空を見つめる。これが、過去《パスト》が、子供達《BridgeBaby》がくれた、素敵なクリスマスの
十年前、一瞬だけ見えた子供達を思い出す。
お前たち。俺たちがあの結晶世界に辿り着くまで、待っていてくれ。
### 11
桜の花弁が舞っているなか、僕は涯のもとへと向かう。倒れて血を流す涯を、真名お姉ちゃんは膝枕している。その横には、壊れた真名お姉ちゃんのヴォイドがあった。いのりが、供奉院さんが、雅火さんが、律さんがやってくるなか、僕は微笑んでいる涯と真名おねえちゃんをみつめる。
「涯……お姉ちゃん……」
横にいる真名お姉ちゃんは笑う。
「なんで私たちを心配してるの……」
でも、と僕はいうのに、涯も笑っている。
「それでいい、集。そういうお前で……」
「そうね」
真名お姉ちゃんもそう言って微笑んでいる。強烈な違和感に、僕は訊ねた。
「待ってよ。どうしてそんなふうに……」
お姉ちゃんは答える。
「あなたたちが、世界を救った。結末を変えようとする意志《Sense》が世界を包んで、私たちを超えた。これは偶然じゃない」
そして、真名お姉ちゃんは、涯をみて呆然とするいのりの頬に、触れた。
「みんなが、あなたが、確かに繋いだ未来よ……いのり」
いのりは目を見開く。その瞳から、涙がこぼれる。
どうにか、僕は訊ねる。
「もしやりかたを変えたら、別の結果もありえたの……」
涯は笑う。
「すべては結晶世界に収束《convergence》する。この世界の理《ことわり》だが、何もしないことの……理由にはならない。お前も、いのりも、亞里沙も、そうだったんだろ」
供奉院さんは、涙を流す。
「馬鹿……あなたが、そんなことをしてるから、私はただ……」
「繋いだ。甘えるのが、上手になったじゃないか……」
亞里沙さんはわなわなと震え、やがて彼に触れて、泣き出してしまう。僕はなんとか訊ねる。
「これが僕たちの知らない運命なの?」
涯は笑う。「好きに呼べ」
「君たちにとっては?」
真名お姉ちゃんが朗らかに答えた。
「悲願よ。かつて私の託した願いを、決して諦めなかったんだから」
そして真名お姉ちゃんは、雅火さんと律さんをみやる。
「あなたたちになら、任せられる。あなたたちには、大切な人を守る能力があるわ」
雅火さんや律さんもまた、涙ぐむ。
言葉を失っている僕に、涯は言った。
「世界に絶望した俺たちではなく、希望を探し、繋ぐお前たちが残る。それこそ、適者生存だと思わないか?」
虚を突かれた僕を見ながらも、涯は、僕の右手を握った。
涯の右手からヴォイドエフェクトが溢れる。そして僕の右手に収束し、王の能力が再びこの手に戻ってきた。涯は呟く。
「王の能力。お前に、本物の
何度も首を振る。
「君が、何もできなかった僕を導いてくれたんじゃないか」
涯は目を見開く。意外だったと、そう言わんばかりに。やがて笑って言った。
「これが、俺たちの素晴らしい友情の終わりだな」
僕は泣きながら言った。
「僕には再開《reloaded》したばかりだ!」
彼の体は、真名とともにゲノムレゾナンスに包まれていく。そして遠くを見つめる。徐々に茜色に向かおうとする空を。
「この先は、世界を繋いだあとの危険な世界だ。きっと気にいるさ。これは、結晶世界を超えた壮大な過去と未来の物語だ」
僕は訊ねる。
「誰の物語だ」
涯は答える。
「おまえたちのだよ。今はその中間地点にいる。いつか、収束点《convergence》で会おう」
そうして、涯と真名はヴォイドエフェクトの波に消え去っていった。