仮面ライダーゼロワンX―イレギュラープログライズキー― 作:K/K
内閣官房直属対人工知能特務機関。通称『A.I.M.S』
ヒューマギアの人工知能特別法違反を取り締まる権限を持ち、主に暴走したヒューマギアを対処することを仕事としている。
彼らは今日もまた暴走したヒューマギアと戦いを繰り広げる。
◇
ヒューマギアが暴走。その情報が届き、現場へと駆け付けた『A.I.M.S』。
そこではトリロバイトマギアたちが武器を持って一般市民を追い掛けていた。
専用車両から共通のマスクと防護アーマーを付けたA.I.M.S隊員たちが降り、一般市民を守る様に一列となってライフルを構える。
その後方に立つ二人の人物。隊員服とアーマーだけを付けマスクは被っていないウェーブがかった髪の険しい顔付きの男性と、場違いなスーツ姿の長い黒髪の女性。
男性の方はA.I.M.Sの隊長である不破諫。女性の方は技術顧問兼特殊技術研究所最高責任者である刃唯阿。
「撃て!」
巻き込まれる人々が居なくなると、不破の指示は指示を飛ばし、隊員たちは一斉に銃撃を行う。
連続する銃音。次々とトリロバイトマギアに着弾するが、トリロバイトマギアの進行を遅らせる程度の効果しかなかった。
「殺人マシン共が……!」
不破は隠し切れない怒りと共に吐き捨てるとある武器を取り出す。
大きめだが短い銃口。反対に青と黒の色が施された銃身は長めで幅が有り、撃鉄に当たる位置にはスロットが設けられている。A.I.M.Sで開発された拳銃であり限られた者しか使用の許されないエイムズショットライザー。
ショットライザーを構え、狙いを定めると不破は引き金を引く。
対ヒューマギア徹甲弾が撃ち出され、暴走するトリロバイトマギアの頭を打ち抜き、ライフルでは倒せなかった相手を一撃で沈黙させる。
すぐさま銃口を別のトリロバイトマギアに向けるが、不破が引き金を引く前にトリロバイトマギアの頭部が撃ち抜かれる。
不破が横目で見ると、同じくショットライザーを構えて引き金を引いた刃が映る。
「余所見をしている場合か? 不破」
クールな面持ちのまま二体目のトリロバイトマギアを撃ち抜く刃。不破は鼻を鳴らし、目の前のトリロバイトマギアへ集中する。
十数秒後。全てのトリロバイトマギアは不破と刃によって破壊された。
だが、その直後、新たなマギアが姿を現す。
緑と黄緑色をした菱形の頭部。両手に鎌を持っている。腹部にはゼツメライズキーがセットされたゼツメライザーを装着。
「出やがったなぁ!」
不破の声に怒気が増す。少年の頃にヒューマギアに襲われたことでそれがトラウマとなり、ヒューマギアに対し憎悪を滾らせる不破。人を襲うヒューマギアという存在が、彼のトラウマを強く刺激し、怒りを無尽蔵に生み出させる。
昆虫の絶滅種『クジベローサ・テルユキイ』のデータを宿したマギア──ベローサマギアは、両手の鎌を振り、そこからエネルギーで作られた鎌を放つ。
素早く引き金を引いた不破と刃の弾丸が、鎌に当たり軌道を逸らす。鎌は近くの電柱を簡単に切断してしまった。
不破たちは鎌を狙った銃口をベローサマギアに向ける。その時、刃の耳に付けてあるインカムに通信が入って来る。
「──何だと!?」
「どうした!?」
「……別の場所でもヒューマギアが暴走し始めた」
「何ぃ……」
「そこではまだ市民の避難が完了していない」
刃から齎された新たな情報に対し不破は──
「刃! こいつらを連れてその現場へ向かえ!」
「お前一人で残るつもりか!?」
「つべこべ言っている暇はねぇ! 早く行け!」
迷いも躊躇いも無く不破は言う。
その言葉に、刃は冷静な表情に初めて悩む様な険しさを浮かべたが、すぐに元の顔付きに戻る。
「分かった。全隊員は私に付いてこい!」
刃の指揮に隊員たちは揃った動きで車両の中へ戻っていく。一切の淀みの無い動き。不破はそれを薄情とは思わない。A.I.M.Sの隊長として訓練が身に染みついている隊員たちを寧ろ誇らしく思う。
それを手助けする為に、不破はベローサマギアを銃撃して牽制する。
刃は去り際に一言残す。
「──死ぬなよ」
「当たり前だ」
刃とA.I.M.Sの隊員たちは、不破の残して新たな現場に走っていった。
残された不破はベローサマギアを睨む。その眼光は飢えた狼そのもの。
「お前の様なヒューマギアは、俺がぶっ潰す!」
不破は銀色のベルトを取り出して腰に装備。そして腹部中央にあるバックルにショットライザーを装着する。
更にもう一つ懐から取り出す。青い外装に狼が描かれたプログライズキー。
不破はプログライズキーのスイッチを押す。
『バレット』
起動するシューティングウルフプログライズキー。音声直後、不破はプログライズキーを両手で握る。
「おおおおおおおお!」
正式な認証が無ければロックされたままのプログライズキーを力任せで無理矢理開こうとする。常人ならばまず不可能。これを可能とさせるならば──
「うおおおおおおおおお!」
──不破という男は常識外の人物であることの証明である。
力でプログライズキーを電子キー状態にした不破は、ショットライザーのスロットにプログライズキーを挿し込む。
『オーソライズ』
プログライズキーの認証が完了。
『カメンライダーカメンライダーカメンライダーカメンライダー』
繰り返される待機音。
不破はショットライザーを外し、銃口をベローサマギアに定め──
「変身!」
──掛け声と共に引き金を引いた。
『ショットライズ』
撃ち出され弾丸は、一直線にベローサマギアへ向かう。咄嗟にそれを避けたベローサマギア。間を置かずに来た背後からの衝撃にベローサマギアは顔から地面に倒れる。外れた筈の弾丸が軌道を変え、戻って来たのだ。
その弾丸は、今度は不破に向かって飛ぶ。
不破は弾丸を避けず、拳で迎え撃つ。
弾丸が不破の拳を受けた瞬間、弾丸に内蔵された各装備が展開。不破の全身にも各装備を受け入れる為に赤い光でモールドが形成される。
強化アーマーを装着されていく不破。右半身は青、左半身は白の色が異なるボディーアーマー。白いマスクに水色の複眼。マスクを縁取るのは青と赤が混じった鬣型のパーツ。
『シューティングウルフ!』
「ふん!」
変身完了と同時に不破、ではなく仮面ライダーバルカンがショットライザーで銃撃を行う。
『弾丸を放ち更なる高みへ』
その言葉を体現するかの様に銃撃をしながら突撃するバルカン。ベローサマギアは放たれた弾丸を撃ち落としていくが、一発一発が重いせいで姿勢が崩されていく。
二発目を撃ち落とし、三発目も撃ち落とそうとするが上手く当てることが出来ず、腕が跳ね上がり、後方へよろめく。
その間に距離を詰めたバルカン。ベローサマギアも鎌を振り下ろそうとするが、ショットライザーの引き金を引く方が速く、胴体に四発撃ち込まれ、血の代わりに火花を撒き散らす。
ふらつきながらも鎌を振ろうとするベローサマギア。その手首に銃底が叩き込まれて鎌を落してしまい、追撃の前蹴りがベローサマギアの胸部を蹴り付ける。
そして、すかさず銃撃。損傷を負っている胴体に五発の弾丸を浴びせた。
大きなダメージを負い、ベローサマギアの動きが鈍る。止めを刺そうとバルカンはスロットに手を伸ばすが──
銃声。伸ばした手をその音へ向ける。アーマーの上を弾丸が滑っていく。
「僕の友達は壊させないよー」
「お前……! 滅亡迅雷の……!」
ボロボロのフード付きの衣服の青年が、拳銃を構えながらヘラヘラと笑っていた。不破は憎悪を滾らせながら彼を睨む。
青年の名は迅。滅亡迅雷.netのテロリストであり、彼もまたヒューマギアである。
「ここでぶっ潰してやる!」
殺気を込めショットライザーを向けるバルカンであったが、そこにベローサマギアが飛び付き、バルカンを羽交い締めにする。
「離せ! くそ! 離せぇぇぇ!」
振り払おうとするが、ベローサマギアの拘束から抜け出せない。
「ありがとー! じゃあ、行くよ?」
迅は左右非対称のバックルを取り出す。足場板の様な凹凸の付いた外装、バックル右側面にはトリガーがある。
滅亡迅雷.netが使用する変身ベルト──滅亡迅雷フォースライザー。
迅はフォースライザーを腹部に当てる。内側に棘が付いた帯が伸び、フォースライザーを固定する。
『ウィング』
迅もまたプログライズキーを持ち、そのスイッチを押して起動させる。以前はゼロワンが所持していたプログライズキーだが、迅が奪い自分の物とした。
プログライズキーをフォースライザーにセット。
「変身!」
トリガーを引く。
『フォースライズ』
フォースライザーのジャッキがプログライズキーのロックを強制的に解除し、プログライズキー内のライダモデルを呼び出す。プログライズキーから現れたのは、隼のライダモデル。
『フライングファルコン!』
隼は迅を抱き締める様に羽を閉じる。ライダモデルは分解され、各部の装甲へと変化。羽の中にいたジンはピンクのボディスーツを纏い、各アーマーと迅は黒いバンドによって繋がっており、それが縮むと縫い合わせる様にマスクやアーマーが迅の体に張り付いた。
『ブレイクダウン』
不要な箇所を省き、重要な箇所だけ防護する最小限の装甲。翼を広げた隼の形をしたアシンメトリーの鋭利な仮面に青緑の鋭角な複眼。
この姿こそ、迅の変身した姿、仮面ライダー迅である。
みすみす変身を許してしまったバルカンは、八つ当たりでもするかの様に手首を限界まで曲げ、背後に居るベローサマギアを撃つ。
顔面に銃弾を受け、ベローサマギアの拘束が緩むとすかさず肘で脇腹を打ち、敵を突き離す。
「むー! 友達に酷いことするなー!」
子供の様に起こると、迅は背部の翼を広げて飛翔。
音速を超える速度でバルカンに迫り、翼でバルカンを斬り付ける。
「ぐあっ!」
背中を斬られたバルカン。だが、踏み止まってショットライザーで迅を狙う。
幾つもの弾丸が迅を襲うが、迅の速度を読み切れず全て外れてしまう。
そこに襲い掛かるベローサマギアの鎌。今までのお返しと言わんばかりバルカンの胴体を斬り付けた。
「ぐはっ!」
二連続でまともに攻撃を受けてしまったバルカン。だが、敵は攻撃の手を緩めない。
「もーらい!」
空中で最高速度に達した迅は、速度を一切落とさないまま体勢を変えると、急降下してバルカンの胸部に両足を叩き込む。
「がっ!」
音速超えたスピードに百キロ近い体重が加わった全力の蹴りを受け、バルカンは吹っ飛び、地面を転がっていく。強化アーマーの耐久値の限界を超えてしまったせいで変身が解除されてしまった。
「やった! いえーい! 僕らの勝ちー!」
迅は、無邪気に喜んでベローサマギアの両肩をポンポンと叩く。
「くっ! こ、この……!」
胸を押さえながら不破は立ち上がろうとする。
「無駄だよ。じゃあ、やっちゃって」
迅が指示すると、ベローサマギアは鎌を構え──
『カバンストラッシュ!』
──飛んできた光刃が直撃して飛ばされる。
「ああ!? 大丈夫!?」
ベローサマギアに駆け寄る迅。
「無事!?」
「飛電の社長か……」
窮地に現れたゼロワンに、不破は苦虫を嚙み潰したような表情となる。
「もう少し、助かったー! って顔出来ないの?」
「生まれつきこういう顔だ……!」
認めている部分もあるが相容れない部分もある為、複雑な関係である両者。
「あー! ゼロワン! よくも友達を……!」
「お前! 今度こそ俺の鳥ちゃん返して貰うぞ!」
「やだよ。これは僕の」
「そっちが鳥ちゃんなら、こっちは鳥さんだ!」
「あっ」
ゼロワンが出したのは前に見せた謎のプログライズキー。迅の目がそれに釘付けになると思いきや──
「うん?」
──突然、ジンが周囲をキョロキョロと見渡し始める。何かを探している様子。
「うん。分かった。そこだ!」
迅が翼から羽を飛ばす。ゼロワンの位置とは全く異なる方向。だが、ゼロワンは焦る。
「イズ!」
何故か迅は、イズが身を隠していた場所を正確に見抜き、そこへ攻撃を行った。
結果、迅が放った羽が壁に着弾し、爆発。壁の陰からイズが倒れ込む。それと同時に手に持っていたアタッシュケースを放してしまう。
「イズ! 無事か!?」
「大丈夫です、或人社長。損傷はありません」
「良かったー……」
イズが無事であることに安堵するゼロワンだったが──
「やったー! 手に入れたー!」
イズの手放したアタッシュケースを迅が手にしていた。
「あっ!」
「この中にもあのカッコイイ、プログライズキーが入っているんでしょ?」
「何でそれを……」
「教えて貰った。ねー?」
迅がアタッシュケースに話し掛ける。
「これ、全部貰ってくよー」
迅はアタッシュケースを握って飛び上がる。
「させるか!」
不破がショットライザーで撃つ。弾丸はアタッシュケースを掠め、それによって留め具を破壊。空中で中のプログライズキーがばら撒かれる。
「ああ! 落ちちゃった!」
急いで戻ろうとする迅だが、良く見るとアタッシュケースに残っているプログライズキーがいくつかある。
「うーん」
迅は悩んだ結果、落としたプログライズキーを回収するのを諦め、残りを拠点に運ぶことに決め、この場所から飛び去ってしまった。
「返せー!」
ゼロワンは叫ぶが、当然迅が戻って来ることは無かった。
後に残されたのはベローサマギアのみ。
それを見て構えるゼロワンだったが、不破の怒声が飛ぶ。
「引っ込んでろ。こいつを倒すのはA.I.M.Sの仕事だ!」
「でも──」
聞く耳を持たず、傷付いた体でも戦おうとする不破。ふと、不破の目にある物が入ってきた。
迅が落としたプログライズキーの一つ。描かれているのは動物の横顔だが、不破の知っているものとはかなり異なる。
「借りるぞ」
「え! ちょっと!」
不破はそのプログライズキーを拾い、スイッチを押す。だが、反応は無い。
「何だこれは、壊れているのか!」
「それ、まだ使えないプログライズキーなんだよ!」
「だったら──」
不破はプログライズキーを両手で無理矢理開き始めた。
「ああ! そんな乱暴な!」
「うおおおおおおおおお!」
気迫の雄叫びと共に、不破はプログライズキーを力尽くで開いた。
「或人社長」
「何?」
「どうやら、今ので彼は目を覚ましたみたいです」
「へ? 目を覚ました?」
「不破諫さん。今ならそのプログライズキーが使用出来る筈です」
イズに言われ、不破はスイッチを押す。
『スパーク』
言った通り、プログライズキーに反応があった。
不破はショットライザーにプログライズキーを挿す。
『オーソライズ』
カメンライダーという待機音を聞きながら引き金を引く。
「変身!」
『ショットライズ』
撃ち出される弾丸。だが、それは途中で形を変えた。茶色の装甲に円形の両肩。肩から伸びる太く逞しい両腕。長く赤い鼻筋に鮮やかな青色の顔。
それは、マンドリルという猿に酷似していた。尤も、本物はこんなメタリックな見た目では無いし、大きさも三メートルも無い。
マンドリルに似たロボは、見定め様に不破を見つめたかと思えば、いきなり拳を振り上げる。
突き出される豪腕。だが、不破は逃げるどころか自分もまた拳を繰り出した。
ぶつかり合う拳と拳。マンドリル型のロボはニヤリと笑い、その体をアーマーへと変換させる。
『スパーク・マンドリラー!』
両肩の円形の装甲。腕を補強する太いガントレット。白のマスクを囲うのは茶と赤と青が入り混じる円筒状のパーツ。
『雷王の拳は豪速に達する』
宿した力が如何なるものかを、最後の一文としてバルカンへ送られる。
バルカンはショットライザーをベローサマギアに向け、撃つ。
放たれたのは弾丸では無く、電気の球体。紫に輝きながら放電するそれが、ベローサマギアに触れると、激しく感電させベローサマギアの体から黒煙を上がらせる。
三度引き金を引くと三発の電気球が撃たれ、感電して動けないベローサマギアに着弾。激しい電撃を浴びせる。
四度の電撃で動けなくなるベローサマギア。
バルカンはショットライザーをベルトにセットした後、プログライズキーのスイッチを押して引き金を引く。
『スパークブラストフィーバー!』
両手を組み合わせ頭上に掲げると、それを鉄槌の様に地面へ振り下ろす。両手が地面を叩くと巨大な電気の球体が発生し、ベローサマギアへ向かって行く。
電気の球体にベローサマギアが触れる電気の柱となってベローサマギアを拘束。そこへ、バルカンが駆けていき、高速回転する右拳によってベローサマギアの胴体を貫く。
スパーク
ブラストフィーバー
爆散するベローサマギア。その爆炎を間近で受けるバルカンであったが、無傷であった。
バルカンを囲む様にして燃え上げるマギアの残骸。バルカンの複眼にその炎が映り込む。まるでバルカンに宿る尽きることの無い怒りを映すかの様に。
◇
「滅ー! いいもの手に入れた!」
拠点へ戻って来た迅は、早速新しく手に入れたプログライズキーを自慢する。
彼が話し掛けている人物は、着物の様な裾や袖の広がった黒い衣服にヘアバンドを被った男。
滅亡迅雷.netの滅であり、迅と同じヒューマギアである。尤も、迅は彼によって造られたヒューマギアであり、父に当たる存在であった。
「ほう?」
迅のプログライズキーを興味深そうに見る。
「あのね! この子たち! 僕たちの友達になってくれるんだって!」
三つのプログライズキーを見せながら迅は嬉しそうに笑う。
「それはつまり、人類を滅亡させる手助けをしてくれるということか?」
彼らにしか聞こえない答えが返って来る。
「いいだろう。我々、滅亡迅雷.netはお前たちを歓迎する」
滅は三つあるプログライズキーの内、一つを手に取る。
「迅。後はお前が使っていい」
「いいの!? やったー!」
迅は喜びながらプログライズキーを両手に持つ。滅もまた同じ様にプログライズキーを持ち、スイッチを押す。
「全てはアークの意思のままに」
「これからよろしくねー!」
『ブーメラン』
『アイス』
『バーニング』
続きは未定です。連休なので書けました。
誰がどれを使うかは直感的なイメージです。