貞操観念が逆転した女が強い世界で最強の弓使いが無双する話   作:キサラギ職員

11 / 15
野獣と化したエルフ!


11.野獣の群れ

「ほれ!」

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

 一歩踏み込む。相手が慌てて棒を槍の様な動きで繰り出したのを見るや、あろうことか中間を踏みつけてつんのめらせる。襟首掴んで投げる、やっていることは単純ながら、素の力が尋常ではないくらいに強い。投げられた一人は壁にぶつかり無様に気絶した。

 フェンを包囲していた集団は、一分と経たずに壁に叩き付けられるか、殴打されて気を失うかで戦闘能力を封じられていた。

 最後に残ったのは、離れた位置で静観していたエッダのみである。

 エッダは弓を構えていた。

 フェンは、倒れている一人から弓を足で拾うと、矢を番えた。

 

「弓使いか、娘」

「エッダ」

「エッダか。なぜ弓を構えておるのだ」

「試させて」

「あのな、だから説明というのはだな、相手にきちんと意図を伝えるものであってだな」

 

 相変わらず言葉が少なすぎて意味がわからない。フェンはまるで老人のように説教を始めた。

 

「貴方の強さは、町で見て知ってる。でも、強い男なんて、自分で体験しないと信じられない。試させて」

「先手は任せるぞ」

 

 エッダの弓から矢が放たれ、そして空中で火花を散らして落ちた。一本の矢が、矢と向かい合う形で落ちている。

 飛んでいる矢を、空中で正面衝突させて落とす。

 言葉にするならば簡単だが、少しでも狙いが逸れたら成立しない超絶技巧であった。自前でもない弓でぶっつけ本番でやってのけるのは、エッダの人生の中で一人たりとも存在しなかった。

 

「………!」

「おお、矢が切れてしまったようだのぉ、続けろ」

 

 エッダは、矢さえなくなってしまったフェンが弓を構えているのを見ていた。流石にどれだけ強かろうが、矢がないのに矢は飛ばせない。大怪我にならないように、わき腹の辺りに狙いをつけ、放った。

 ―――パァンッ!

 炸裂音。

 

「もろすぎるなこれは……………二回は耐えたからよしとするか」

 

 フェンがのんびり言うと、弦が切れてしまった弓を放り投げた。

 エッダは何が起きたのかわからないという顔をしていたが、振り返って理解した。壁に大穴が空いていた。

 

「見えなかったか?」

「なにをしたの」

「お前さんの矢をな、空中でくるっと回してな、番えて射ったよの。やはり黄竜が入用のようだわ。お前さん、儂の弓を知らんか」

 

 空中で飛んできた矢を突いて一回転させて、弦に誘導させてまた撃ち帰す。なるほど、不可能ではないのだろう。しかし、現実に出来るかは別問題である。

 

(すごい…………本当に人間なの?)

 

 人間としての特徴をしているから人間かと思ったが、あるいは魔族の類もしかすると神であるかもしれない。

 エッダは心臓がドキドキと高鳴るのを感じた。フェンの猛禽類のような鋭く、しかし透き通った茶色の瞳が覗き込んでいた。

 

「お仲間さんを伸してしまったが悪いとは言うまいな。儂は自分から暴れるつもりはないぞ」

「なんで?」

 

 フェンは勝手知ったる我が家のような気楽さで扉をくぐると、外に出て行った。後からエッダが豊かな胸元に手を置きながら追従する。

 

「興味が沸いたのよ。えるふ、なんて種族は一度も見たことがなかったからな。だが、いつまでもここにいるわけにはいかん。いずれは出て行くとも。神都にあやつ………いや、剣術士を待たせている。儂を連れてきた理由はたしか男が足りないからじゃったか」

 

 フェンは気持ちよく伸びているエルフ達を乗り越えて、外に向かっていく。その姿、拉致されてきた人物には到底見えず。

 

「ようは男の種が欲しいのだな」

「うん………」

「くれてやろうか」

「えっ」

「だから、くれてやろうというのだ。欲しいやつを集めろ。お前さんもこい」

 

 動揺を隠せないエッダに、フェンはにやりと口角を持ち上げた。

 

「嫌か?」

「ううん………すっごくいい。抱いていいの?」

「儂が抱くのだよ、娘」

「エッダ」

「お前さんの名は覚えにくい」

 

 

 

 

 

 

 

「いつまで我々はここにいればよいのだぁぁぁぁ!」

「うるさい!!」

 

 一方その頃、アリシアとマリアンヌの二人組みは大木の上の家で暇を持て余していた。

 目が覚めたとき、そこはエルフの里であった。エルフというのは主に森を拠点に生活している少数民族であり、尖った耳と白い肌が特徴とされる。だが人攫いをしているなどという話は聞いたことがなく、何かの陰謀に嵌められたか山賊に襲撃されたのだと思い込んでいたが、平然とした顔で現れたフェンが言ったのだ。

 

『ちと用件がある。数日待っとれ』

 

 フェンが現れた以上、山賊でも陰謀でもないことは明らかなのだが、何もせず滞在できるほど二人の神経は図太くなかった。

 エルフのお世話係がおり、食事はきちんと運んでくれるし、出歩くことも出来るが、肝心のフェンがどこにいるのかを聞いても教えてはくれなかった。

 

「フェンは一体全体何をされているというのだ!! もしかして怪しい黒魔術の被検体に!?」

「フェンがそれを許可するわけないだろ! というかフェンが大暴れしたらこの里なくなっちゃうんじゃないのか!?」

 

 苛立ちを隠せずウロウロしているマリアンヌと、座って腕を組んでむっつりと不機嫌を隠さないアリシア。

 フェンがむざむざやられるとは思えない。そもそも、フェン本人がやってきて数日待ってろと言ってきているのである。

 

「うぉぉぉぉ!」

「うるさい!」

「体が鈍る! アリシアもしろ!」

「鈍るというか………ムラムラというか………! くそぉぉっ!」

 

 で。

 

「全身の筋肉が痛くて動けない………」

「鍛え方が足らないと思うのだ」

 

 一日中筋力トレーニングをしていたのにも関わらずケロリとしているマリアンヌと、全身のだるさと痛さでピクリとも動けずベッドに横たわるアリシア。

 

「戻ったぞ~………なんじゃい、打ち上げられた鯨のような格好をして」

「フェン! これには深い訳が!」

 

 キィと音を立てて扉が開かれると、若干疲労感のある顔をしたフェンが現れた。

 仁王立ちで窓際に立っていたマリアンヌがすさまじい速度でフェンの元に駆け寄っていくのとは対照的に、アリシアは病人のように起き上がった。

 

「一体全体今まで何をしていた………ん?」

 

 そこで二人は気がついた。なにやら、フェンの背中にしがみつくようにしている金髪を後ろで三つ編みにしている、眠たげな目つきの乙女を。

 

「離れんか。暑いじゃろ」

「離さない」

 

 顔を真っ赤にしてフェンの体に顔を擦る姿を見て、アリシアの何かがキレた。筋肉痛の酷い体にムチを打ち、かと思えばベッドから転げ落ちる。

 

「う、うわぁぁぁぁぁん! 私を捨てて新しい女に捕まるなんて!! 酷い男だ! 傾国の美男子だ!!」

 

 アリシアは男泣きもとい女泣きした。

 なんという男だろう。私というものがありながら次に乗り換えるなんてと。魔女もとい魔男。整いすぎた顔が憎さを誘う。

 

「いや別にフェンはアリシアの男でもなんでもな」

「うわぁぁぁん……! ひっく、ひっく」

 

 まさかの大泣きにマリアンヌがドン引きしている。

 フェンは首を傾げていたが、とことこと歩いていくとアリシアの元に屈みこんだ。アリシア迫真のガチ泣きにも動じなかった。

 

「泣くな。女子(おなご)の涙はな、最後までとっておくものだ」

「うぐっ…………そうだな………それにしても、なにをしていたんだ………?」

「ちとな」

 

 フェンにしては珍しく歯切れが悪い答えだった。

 

「暑い、離れよ」

「……うん」

 

 フェンが腕を振るいエッダを引き剥がすと、大あくびをした。

 

「流石に疲れたな。休みをもらうぞ。娘、何か話があると言っていたな」

「エッダって呼んで。休んでからでも構わない。里の長老達と会って貰うのと、あの人と会って貰う用件がある」

「そうかわかった」

「またね」

 

 エッダは名残惜しそうにフェンを見つめていたが、くるりと踵を返して部屋から出て行った。

 

「何の話だったのだ?」

「ん? 里を出て行くにはいくつか条件を飲む必要があってな。用件など飲まなくても出て行くことはたやすいが、それじゃ面白くないじゃろ」

「そうではなくて、何故我々はエルフに捕まったのだ? 捕虜にしては扱いがよすぎると思うのだ」

「ん? なんじゃ、教えてもらってないのか」

 

 怪訝そうな表情を浮かべるマリアンヌにフェンはにやりと笑った。

 

「教育してやった」




そら(種が欲しいって言われたら)そう(抱きまくります)よ

なにがあったのかは18禁版をご期待ください(書くとは言ってない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。