ドラゴンボール~フリーザの世話役~   作:bridge

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フリーザの世話役

 

 

――フリーザ軍…。

 

 

宇宙にその名を轟かせる、フリーザ率いる大規模な組織であり、数多くの部下を従え、様々な惑星を破壊或いは地上げ行為を繰り返していた。

 

フリーザ軍のあまりの力と規模の大きさから、宇宙の平和を守る銀河パトロールでさえ手に負えず、その悪行を見て見ぬふりをせざるを得ず、界王神等の神々にもその悪名は轟いていた。

 

何十年もの間宇宙のトップとして君臨し続け、確実にその規模を広げるフリーザ軍。そのフリーザ軍には1人、奇妙な人物がいる。

 

戦闘員でもなければ科学者でもない。にもかかわらず、フリーザ軍の王であるフリーザに一目置かれ、果ては不敬とも言える発言でさえ許される人物がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その名はベリブル…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ここは惑星フリーザ。フリーザ軍の総本部のある惑星である。

 

フリーザ軍は定期的に戦闘員、非戦闘員の幹部を集めての定例会議を行っており、戦闘員なら戦果や現在目標としている星の経過報告、非戦闘員なら発明品の制作状況や占領した星の収益の報告がされる。

 

専用の小型ポッドに座るフリーザに対し、戦闘員、非戦闘員の幹部達が各々報告を続け、フリーザは報告を聞いては頷き、時折質問をし、定例会議は続いていった。

 

幹部の報告が終わると、フリーザが今後の方針を口にした。

 

「グルタミ星の進攻に手こずっているようですね。…目障りですね。そろそろ攻め落とすべきだとは思いませんか?」

 

フリーザが幹部達に尋ねる。

 

「ハッ! そのとおりかと!」

 

幹部の1人が賛同する。

 

「では、これより兵士達を動員して直ちに攻め滅ぼします。何か異論はありますか?」

 

再度、フリーザが幹部達に尋ねる。

 

グルタミ星はその星でしか取れない鉱物があり、その希少な鉱物は高値で取引出来る為、かねてより攻略対象にされていた星である。

 

だが、グルタミ星は、過去に何度か攻め立てるも失敗に終わっている。理由は、グルタミ星人の中には高い戦闘力を持つ者が幾人も存在していたからだ。その者達の手によって過去の進攻は失敗に終わっていた。

 

現在、フリーザ軍ナンバー2の戦闘力を誇るギニュー及びギニュー特戦隊は別の星に進攻中で惑星フリーザにはおらず、その後に参加するにしても時間がかかってしまう。ギニュー特戦隊と肩を並べるアボとカドも任務で外している。次いで高い戦闘力を誇るキュイもおらず、せめてギニュー特戦隊の帰還を待ってから進攻を始めるべき、と具申したいのだが…。

 

フリーザは『直ちに攻め滅ぼす』と言った。フリーザは決して暴君でもなければ独裁者でもなく、部下の意見に耳を傾けたり、間違った提案をされても頭ごなし否定せず、失敗した部下にも挽回のチャンスを与える等といった面も持ち合わせている。

 

そんなフリーザが嫌う事の1つに、『自分の決めた決定に異を唱えられる事』である。過去にフリーザの決定に異を唱えた幹部の1人がその場で粉々にされている。隣にいた幹部を巻き添えにして。

 

その為、フリーザの決定には従わざるを得ない。ある程度の失敗には寛容であるフリーザであっても、次に失敗すれば命はない。だが、意見する事も出来ない。幹部達がその決定に了承しようとしたその時…。

 

「それは如何なものでしょう」

 

フリーザからもっとも離れた席に座っていた1人がフリーザの決定に異を唱えた。その者は背丈の小さい、ベリブルと呼ばれる幹部の定例会議に出席している者の中でひと際異彩を放つ者であった。

 

『…っ!?』

 

その瞬間、幹部達が一斉にそちらに向き、息を飲んだ。

 

「我が軍は現在、戦闘力の高い戦闘員は軒並み不在。残った戦力でグルタミ星を制圧するのは困難であるかと。攻め落とすならギニュー特戦隊が帰還するまで待たれるのが定石かと…」

 

尚も進言を続けるベリブル。

 

「…」

 

フリーザがジロリと視線をそちらに向ける。

 

その瞬間、この定例会議に出席していた1人の幹部は悟った。あの者はこの場で殺されてしまうだろうと…。

 

『…っ』

 

幹部達の間で張り詰めた空気が支配する。どうにか巻き添えを食らわないよう立ち回ろうと心の準備を進めていると…。

 

「…ふむ。ベリブルさんがそう仰るならギニュー特戦隊が戻るまで待ちましょうか」

 

と、フリーザは進言を聞き入れたのだった。

 

『(…ホッ)』

 

その言葉と同時に張り詰めたものがなくなり、幹部達は心中で安堵の溜め息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

その後、定例会議はつつがなく進み、やがて終了した。会議が終わり、解散となり、幹部達が退室すると、1人の若手幹部が古参の幹部に尋ねた。

 

 

――先程フリーザ様に意見をしたベリブルとは何者なのかと…。

 

 

フリーザ軍の先代の王であるコルド大王の時代から幹部を務める古株の幹部によると…。

 

 

曰く、フリーザ様の世話役であるという事。

 

曰く、自分が幹部に任命された時には既に存在しており、コルド大王様からも一目置かれていたという事。

 

曰く、幼少のフリーザ様の教育係であったという事。

 

曰く、フリーザ様もベリブル殿を信頼しており、フリーザ軍で唯一フリーザ様の決定に異論を唱える事を許されている存在である事。

 

 

これが、古参の幹部から教えられたベリブルという存在である。その正体を知る者はフリーザ軍におらず、長年、謎に包まれている存在なのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

時はエイジ779。

 

「だらぁぁぁぁっ!!!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!」

 

場所は地球。カカロットこと孫悟空とフリーザが死闘を繰り広げている。

 

かつてナメック星にて致命傷を負わされ、その復讐を果たす為に地球にやってきたフリーザ。だが、その復讐は未来からやってきたベジータの息子であるトランクスに阻まれ、フリーザは無残な死を遂げた。

 

しかし、フリーザ軍の復興を目論む、フリーザ亡き後にフリーザ軍の残党を指揮するソルベとその部下の手によって復活を果たし、フリーザは再びその復讐の為に地球へとやってきた。

 

奇しくも、フリーザとその一味が地球に進攻時、孫悟空とベジータが不在であった為、フリーザの圧倒的な力で地球の戦士達を苦しめるも間一髪の所で孫悟空とベジータが地球へと帰還を果たし、そこから孫悟空とフリーザの戦いが始まった。

 

開戦当初は悟空がフリーザを相手に優勢に戦いを進めていたが、悟空が新たなサイヤ人の力であるスーパーサイヤ人ブルーに変身し、フリーザが新たな変身形態であるゴールデンフリーザに変身し、互いが本気になると、今度はフリーザが優位に戦いを進め始めた。

 

戦いはさらに激しさを増していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「…」

 

悟空とフリーザが激しい戦いをしている最中、フリーザ軍の1人であるベリブルが宇宙船から降り、1人歩いている。

 

ベリブルが歩くその先に、大きな容器に盛られたイチゴサンデーを食べている破壊神ビルスとその付き人のウイスの姿があった。

 

「お久しぶりでございます。ウイス様」

 

「おや? ……これはこれは! ベリブルさんではありませんか!」

 

話しかけられたウイス。スプーンを止め、暫し観察すると、話しかけれた人物の正体に気付いた。

 

「いやいや、どなたかと思ったらまさかベリブルさんだったとは。まさかこんな所でお会い出来るとは! 最後に顔を合わせたのはいつの事だったでしょうか?」

 

「さて……、遠い昔の事過ぎて覚えておりませぬ」

 

久しぶりの再会に喜びを露にするウイス。

 

「…ハグハグ! ……何だ婆さん。今は食事中だ。話なら後にしろ」

 

傍らでイチゴサンデーを食べていたビルスが手でシッシッとあしらいながらベリブルに告げた。

 

「この出で立ち。…そうですか。この方が…」

 

「はい。現在の破壊神であらせられますビルス様です」

 

ベリブルの言葉に答えるようにウイスが説明する。

 

「左様ですか。……フフッ、破壊神も随分と質を下げられましたな」

 

その言葉を聞いてビルスはイチゴサンデーを食べるスプーンを止める。

 

「おい婆さん、ウイスの知り合いだか何だか知らないが口の利き方に気を付けろ。…破壊しちゃうぞ」

 

目を細め、威圧するような視線を浴びせながらベリブルに告げる。

 

「それは失礼致しました。何分歳を取り過ぎました故、つい本音が出てしまいまして…」

 

当のベリブルはビルスの脅しを受けてもどこ吹く風。肩を竦め、薄く笑みを浮かべながら返した。

 

「…そうか。そんなに破壊されたいなら望み通りにしてやろう」

 

その言葉に機嫌を損ねたビルスはスプーンを置き、右の手のひらをベリブルに向ける。

 

「…破壊――」

 

その瞬間、ベリブルは自身の右手の人差し指と中指を揃えて伸ばした2本の指を上に向けて曲げた。

 

 

――ドォッ!!!

 

 

「なにっ!? うおっ!? おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」

 

同時にビルスが何か見えない力で遙か上空へと吹き飛び、やがて見えなくなるまで飛んでいった。

 

「ここではフリーザ様の戦いの邪魔になります故、場所を変えさせていただきます。…それではウイス様。暫しの間、失礼致します」

 

ベリブルは両腕を後ろに組みなおすと、その場から瞬間移動したかのように消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…ぐっ! あの老いぼれぇっ…!」

 

成層圏にまで吹き飛ばされた所でようやく止まったビルス。

 

「呼びましたかな?」

 

直後、そこへ現れるベリブル。

 

「っ! 貴様…、何をした?」

 

「別に、ただあの場ではフリーザ様の邪魔になりますからね。少々強引ではありますが、ここまで御足労頂いた次第でございます」

 

憤怒の表情を浮かべるビルスに対し、相変わらずの薄い笑みを崩さないまま答えるベリブル。

 

「もう許さんぞ…! お前は2度と生まれ変われないよう魂諸共破壊してやる!」

 

全身に力を集めたビルスはベリブルに飛び掛かる。

 

「…いいでしょう。当代の破壊神がどれほどか、拝見させていただきますよ」

 

後ろに組んでいた手を放すと、小さく腕を広げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

両膝に手を置き、肩で大きく息をするビルス。

 

「ハァ…ハァ…、貴様、何者なんだ…!」

 

呼吸がある程度整うと、顔を上げ、ビルスは尋ねた。尋ねられたベリブルは両手を後ろで組んで余裕の表情で佇んでいる。

 

ビルスが先に仕掛け、戦いが始まった。だが、ベリブルはビルスの放つ打撃をことごとく最小限の動きでかわし、いなし、隙を付いて一撃を撃ち込んでいった。どれだけビルスが打撃を放ってもベリブルには掠りもせず、気弾を放っても直前で爆散するか、撃った本人に跳ね返されてしまう。

 

どれだけ攻撃を仕掛けようとベリブルに当たる気配がない。まるで、身体が勝手に攻撃を避けているかのように…。

 

「許さん…! この僕をここまでコケに…! こうなったらお前諸共――」

 

「――ダメですよ」

 

ビルスが再び全身に力を集めようとすると、それをいつの間にか現れたウイスが止めた。

 

「それをしてしまうと地球だけではなく、周辺の星々が破壊されてしまいますからね」

 

「…ちっ」

 

邪魔が入り、舌打ちをするビルス。

 

「それにしても、相変わらずの技の冴えですねぇ。さすが、かつての破壊神候補だっただけの事はあります」

 

「なに!? この婆さん、破壊神候補だったのか!?」

 

ウイスの言葉を聞いて驚くビルス。

 

「えぇ。正確にはビルス様の先代の時代の破壊神候補ですけど」

 

補足するようにウイスが続ける。

 

「昔の話ですよ。…フリーザ様の戦いが気になりますので、これで失礼させていただきます。…それと」

 

ウイスの頭を下げた後、ベリブルはビルスに向き直った。

 

「破壊神であるビルス様に対しての数々のご無礼、大変申し訳ございませぬ」

 

ペコリと頭を下げた。

 

「それでは」

 

そう告げ、ベリブルはその場から消えた。

 

「…あれで破壊神の成り損ねなのか…」

 

「あれでも全力ではありませんよ。破壊神候補として修業されてた時は私でも油断するとヒヤリとさせられましたからねぇ」

 

かつてを懐かしみながら話すウイス。

 

「あいつ、何でフリーザ何かに仕えているんだ?」

 

ふと、そんな疑問が頭に浮かんだビルスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

このベリブルが何故フリーザに仕えているのか、それはそこから100年近く前に遡る。

 

破壊神になるべく修業をしたベリブルだったが、結果は振るわず、破壊神となる事は出来なかった。その後、ベリブルは辺境の小さな星に移り住み、そこで土いじりをしながら余生を過ごしていた。

 

作物や植物を育て、自前の水晶で宇宙の星々の様子を観察しながら数千年…数億年過ごしていた。そんな生活をしていたある日、ベリブルに住まう星にとある来客がやってきた。

 

「ほう? 小さな星だが、なかなか良い星ではないか」

 

一隻の宇宙船が着陸すると、その宇宙船から数人の部下を引き連れて1人の男が現れた。それは、ここ数年、宇宙の星々を荒らしていた宇宙海賊、コルドであった。

 

盗賊家業をしていたコルドとその一味。宇宙を移動中、この星を見つけ、興味本位で着陸したのだった。

 

「私の別荘替わりにするには丁度いいな」

 

過ごしやすそうな環境を見て思わずほくそ笑むコルド。

 

「おやおや、来客とは珍しい」

 

そこへ、ベリブルがやってきた。

 

「貴様、この星の住人か?」

 

「如何にも」

 

「では、この星は今より、このコルドの所有物とする。…私はこれでも慈悲深いのでね。1分ほど、この星から逃げる時間をくれてやろう。それとも、私の下で奴隷として働くか?」

 

コルドと共に傍にいた部下達が下卑た笑い声を上げる。

 

「…やれやれ。突然人様の星に上がり込んだと思ったら、とんだ礼儀知らずときたもんだ」

 

後ろに手を組みながら薄く笑みを浮かべるベリブル。

 

「まずはお前達に、礼儀を叩き込まないといけないみたいですねぇ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「本日は、あなた様の星に無断に降り、あまつさえ無礼な口を聞いてしまい、申し訳ありませんでした…!」

 

地面に両膝を付け、頭を下げるコルド。周囲にいた部下達も同様に土下座の態勢で頭を下げていた。

 

ベリブルは人差し指を下に下げると、コルド一行は一斉に地面に叩き伏せられた。唯一コルドのみが立ち上がり、ベリブルに立ち向かうも手も足も出ず、あっという間に叩き伏せられてしまった。

 

「よろしい。折角来られたのですからお茶の1つでも出しましょう。さあ、中へいらしてください」

 

「は、はぁ、それでは…」

 

言われるがまま、コルド達はベリブルの家に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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家に入ると、人数分お茶を淹れてコルド達に振舞った。

 

「あなた方は最近星々を荒らしまわっている宇宙海賊コルド一行でしたな?」

 

「は、はい!」

 

慌てて飲んでいたカップを置いて答えるコルド。

 

「フフッ、あなた方の事は水晶で見ていたので知っていますよ」

 

「ご、ご存じで何よりで…」

 

「しかし、宇宙最強を自称しながらやってる事がただの略奪とは、みみっちいにも程がありますねぇ」

 

「な、なに…! ……いえ、すいません」

 

一瞬怒りを露にするもベリブルに睨みを利かされ、すぐに怒りを収めるコルド。

 

「それだけの力をお持ちならもう少し野望を大きく持たれたならどうですかな?」

 

「大きく、ですか?」

 

言っている事がよく理解出来ず、コルドは聞き返す。

 

「良いでしょう。この私が、あなたをもっと大きな存在にしてさしあげましょう」

 

そうコルドに告げたベリブル。

 

「フフッ、ちょうどいい暇潰しになりそうだねぇ」

 

と、密かにほくそ笑むベリブルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ベリブルはひとまず、コルド達の活動の拠点とする場所を作る為、とある星を制圧させた。そこは後の惑星フリーザと呼ばれる星となるのだが、そこを拠点として次々と星を占領してまわった。

 

ただ奪い、滅ぼすだけではなく、星を制圧し、管理し、再開発や売買した。見込みがある者はすぐさまスカウトしてコルドの配下に組み込ませた。戦闘員だけではなく、科学者や学者も引き入れ、その規模が膨れ上がると、コルド軍としてコルドに支配させた。

 

もちろん、コルドにも軍を束ねる王となるべくみっちり教育を施し、制度や環境、果ては褒章から給金まで軍レベルではなく王国としての基盤まで創り上げさせた。

 

こうしてベリブルの入れ知恵によって、ものの数年でコルドの名は宇宙全土に轟き、その支配圏を広げていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

コルド軍が勢力を伸ばし始めてから年月が過ぎたある日の事…。

 

「こちらにおいででしたか、ベリブル殿!」

 

拠点の星に建つコルドの城の一角にて、コルドがベリブルを見つけ、声を掛ける。

 

「これはこれはコルド様。私はコルド様の付き人故、もっと威厳を持って話しかけてくだされ。でなければ部下達に示しが付きませんよ」

 

「ハハッ。これは失礼」

 

懐から取り出したハンカチで額の汗を拭うコルド。

 

「…して、この私めにどのような要件で?」

 

「実は、ベリブル殿に1つ、お頼みしたい事がありまして…」

 

「頼み事ですか?」

 

「えぇ、実は――」

 

 

――ゴォォォォォォォォッ!!!

 

 

突如、城の一角で大きな爆発音と震動が響き渡った。

 

「あぁ。またあの子は…」

 

同時にコルドが額に手を当てた。

 

「おや?」

 

窓から外を覗くと、城の一角から煙が上がっていた。

 

「以前に私に子供が産まれた事は話していた思いますが…」

 

「えぇ、存じております。フリーザ様ですね?」

 

「そうです。…で、お頼みしたいのはそのフリーザの教育についてです」

 

「ほう? 教育ですか」

 

「しっかり育てたつもりだったのですが。…何をどう間違ったのか、少々我が儘に育ってしまいまして…」

 

再びハンカチで額の汗を拭うコルド。

 

「ゆくゆくは私の後を継いでこの軍を継がせる事を考えると、今のままでは問題だらけでして、そこで、ベリブル殿にあの子の教育係と世話役を頼みたくここに参った次第で…」

 

「なるほど。…では、フリーザ様のお顔を拝見しに行きましょうか」

 

そう告げると、ベリブルはその場からフッと消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「ひ、ひぃぃっ!!!」

 

1人の兵士が悲鳴を上げる。

 

煙が上がっていた一角。城の壁が一部、消し飛んでいる。

 

「…」

 

その消し飛んだ一角に人差し指を向けている1人の子供。そう、コルドの息子であるフリーザである。

 

フリーザは城を1人見物していると、突如、1人の兵士に指先を向け、指からビーム出して消し飛ばした。理由はただその兵士の目付きが気に入らなかった。それだけであった。

 

「フ、フリーザ様! ご、御自重を!!!」

 

1人の兵士がフリーザに制止を促す。

 

「…お前、ひょっとしてこのボクに指図をしているのか?」

 

ジロリとその兵士に視線を向けるフリーザ。

 

「お前、生意気だよ」

 

制止を促した兵士に人差し指を向けると、指先からビームを放った。

 

「ひぃぃぃぃっ!!!」

 

ビームが放たれると、兵士はその場から逃げ出した。しかし、ビームの方が断然スピードが速く、瞬き間にその兵士に迫り寄った。ビームが兵士に着弾する直前、そのビームは突如として停止した。

 

「やれやれ。あまり城を汚されると後で掃除が大変なのですがね」

 

そこへ、軽く嫌味を言いながらベリブルが現れた。同時に停止したビームが明後日の方向へと飛んでいった。

 

「ひぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

狙われた兵士は四つん這いのままその場を逃げていった。

 

「何だお前は?」

 

軽く不機嫌になったフリーザが尋ねる。

 

「人様に名前を尋ねる時はまず自分から名乗ると教わらなかったのですか?」

 

「聞いているはこのボクだ! さっさと答えろ!!!」

 

完全に怒りを露にしたフリーザが目に血柱を立てながら怒鳴りつける。

 

「…なるほど、コルド様の仰っていたとおり、大層我が儘にお育ちなられたご様子ですな」

 

そんなフリーザを見て軽く笑みを浮かべるベリブル。

 

「お前…! このボクをコケにしているのか!? だったらこの場で粉々に――」

 

次の瞬間、フリーザが何か見えない力で地面に叩き伏せられた。

 

「がっ! お、お前…! このボクに…!」

 

「おや? まだそんな口が利けるとは。これは教育のし甲斐がありますね」

 

地面に這いつくばっても尚も反抗的な態度を崩さないフリーザに関心するベリブル。

 

「ベ、ベリブル殿! …フ、フリーザ…!」

 

そこへ、コルドが慌てながらやってきた。

 

「コルド様。先程頼まれました御子息であられるフリーザ様の教育のお話、しかと承りました。このベリブルめ、コルド様の後継が務められるよう、きっちり教育させていただきます」

 

やってきたコルドに向き直ったベリブルは頭を下げながら先程の頼み事を了承する旨を伝えた。

 

「お前…! 絶対ジワジワと嬲り殺しに…!」

 

「フフッ、まずは口の利き方から教えて差し上げる事から始めなければならないようですね」

 

フリーザの目の前まで歩み寄ったベリブルは薄い笑みを浮かべながらそう告げた。

 

「早速始めさせていただきます。…では、これにて失礼致します」

 

ペコリとコルドに頭を下げると、ベリブルはフリーザと一緒にその場を消え去った。

 

「…フリーザ。逞しく成長するのだぞ」

 

消し飛んだ壁の外から見える星を見上げながらコルドは一人呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

フリーザを連れてコルドが統治する星へとやってきたベリブル。

 

到着して早々にフリーザへの教育が始まったのだが、当初、フリーザはベリブルに反抗し、暴れまわろうとしたが、すぐさまベリブルに仕置きと称して叩き伏せられた。何度も反抗する内に逆らうのは無理と判断したフリーザは隙を見て逃げ出そうとしたがその度に見つかって仕置きをされ、最終的には何をしても無駄と判断したフリーザは素直にベリブルの指導を受けたのだった。

 

教育が始まって3ヶ月程が経過したある日…。

 

「これはこれはコルド様。わざわざここまで御足労いただき、感謝の極みでございます」

 

コルドが公務の合間を縫ってフリーザの様子を見にやってきた。

 

「フリーザの様子を見に来たのだが、…どうでしょうか?」

 

恐る恐るコルドが尋ねると…。

 

「フフッ、さすがはコルド様の御子息でございます。聞き分けの良い御子様であらせられます」

 

嬉々として告げるベリブル。

 

「…ハハッ、良い子ですか…」

 

思わず額の汗をハンカチで拭うコルド。

 

フリーザの我が儘ぶりはコルドが良く理解しており、かつてコルドもベリブルから指導を受けた経験がある為、フリーザがどのように過ごしてきたのか容易に想像が出来てしまった。

 

「御無礼を承知で申させていただきますと、フリーザ様はコルド様を凌ぐ資質を持つ御方。ゆくゆくはコルド様以上の王と成られるでしょう」

 

「そうか! ハハッ、ならば安心してフリーザに王の座を譲る事が出来よう」

 

ベリブルの言葉を歓喜の声を上げるコルド。

 

「おや? コルド様はもう御隠居為されるのですか? お言葉ですが、王位を退かれる程衰えているように見えませぬが?」

 

「えぇ。…ベリブル殿のおかげで我が軍もここまでの規模になりましたが、…やはり私には自由気ままに動く方が性に合っているようでして、息子が産まれたのを機に気ままな隠居生活を送ろうかと…」

 

「左様ですか」

 

申し訳なさそうに語るコルド。ベリブルはただ頷いた。

 

「後一月程あればフリーザ様の教育も終わります故、一月後にフリーザ様をコルド様の下へ送り届け致します」

 

「うむ! 楽しみに待っていますぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

それから1ヶ月が経ち、フリーザの教育を終えたベリブルは当初の宣言通りフリーザをコルドの下へ送り届けた。

 

フリーザの変わりように驚いたコルドだったが、予定通りフリーザに王位を告げる事を宣言し、晴れてコルドは隠居の身となった。

 

王位をフリーザが継いだ事により、コルド軍はフリーザ軍に名称を改め、新たに始動した。

 

ベリブルの指導の甲斐もあり、フリーザはコルドを凌ぐ指導力で支配域を拡大していった。そして遂に宇宙最強の名を手に入れたのだった。

 

フリーザに王位に代わった当初、ベリブルも世話役兼相談役としてフリーザの傍に仕えていたが、その手腕を目の当たりにし、当時、頭角を現していたザーボンとドドリアを自身の代わりとして側近に推薦し、その後は時折定例会議に顔を出す程度に留め、半隠居生活をしていた。

 

順調に勢力を拡大するフリーザ軍だったが、ある日突然、その勢いが止まる事になった。

 

…エイジ762

 

不老不死の願いを叶える為、ドラゴンボールを求めたフリーザがナメック星へと進攻した。同時にドラゴンボールを求めてやってきた地球人とドラゴンボールを巡って争う事となった。

 

ベジータの裏切りが重なり、フリーザ軍の中でも上位の戦闘力を持つキュイ。側近のドドリアとザーボン。地球から救援にやってきたサイヤ人の生き残りの1人である孫悟空の助力もあり、ギニュー特戦隊までもが倒される事となった。

 

その後、ナメック星人であるピッコロを加わったZ戦士達とフリーザが戦闘になり、一時は重傷を負った孫悟空が傷を完治させ、フリーザと交戦。途中、フリーザがその圧倒的な力で悟空を圧倒するも、伝説のスーパーサイヤ人に覚醒した悟空を相手にフリーザは敗北を喫するのであった。

 

悟空に負わされた怪我を癒し、その復讐を果たす為、父コルドを連れて地球にやってくるも、未来からやってきたサイヤ人の血統であるトランクスによって返り討ちとなり、フリーザは死亡。フリーザという圧倒的なカリスマを持つ指導者を失ったフリーザ軍はその勢力を失っていったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

フリーザ死亡の報せを聞いたベリブルはフリーザ軍に興味を失い、人知れず惑星フリーザを離れ、コルドと出会う前に住んでいた星へと戻り、再び隠居生活を始めた。

 

再び隠居生活を初めて17年程の年月が経過したエイジ779。

 

ベリブルの住まう星に一基の宇宙船が着陸した。宇宙船のハッチが開くと、そこから現れたのは…。

 

「これはこれは! 見覚えのある宇宙船でしたので、もしやと思いましたが、やはりフリーザ様でしたか!」

 

「お久しぶりですねぇ。ベリブルさん」

 

「お亡くなりになられたとお聞きしましたが…」

 

「…えぇ。部下のソルベさん達のお陰でこうして生き返る事が出来ましたよ」

 

少々不機嫌な表情で告げるフリーザ。

 

「それは何よりです。…して? わざわざフリーザ様がこの星まで足を運ばれるとは。この私めに何か用でもおありですかな?」

 

「もちろんです。……ベリブルさん。折り入って頼みがあります。この私を、鍛えてはいただけませんか!?」

 

自身の胸に手を当てながら頼み事をするフリーザ。

 

「………よもや、フリーザ様の口からそのようなお言葉が出るとは。…このベリブル、耳を疑いましたぞ」

 

「本来ならそのような惨めな真似はしたくはないのですが、憎きサイヤ人共に復讐を果たすには今の私では不可能であると判断しました」

 

「…確かに、あのサイヤ人達は聞くに、あの魔人ブウを退けたと聞き及んでおります。失礼ながら、今のフリーザ様では埃1つ付ける事も困難であるかと…」

 

ベリブルの単刀直入な言葉に一瞬青筋を立てるフリーザだったがすぐさま平静を保った。

 

「えぇ。…ですので、あのサイヤ人共を超える力を手に入れるべく、こうしてベリブルさんの下に恥を忍んでやって来たのですよ」

 

「左様でございますか。…分かりました。フリーザ様直々の頼み事とあらば、このベリブルめ、不肖ながらフリーザ様の修業にお付き合い致しましょうぞ」

 

「ありがとうございます! ベリブルさん!」

 

「でしたら、ここでは修業を行うには何かと手狭故、場所を変えましょう。…それと、修業は厳しいものとなりますので、お覚悟の程、願います」

 

「……えぇ、よく理解していますよ」

 

フリーザは背筋に冷たいものを感じたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

フリーザの修業も熾烈を極めた。

 

何度もベリブルに倒され、ボロボロにされたが、サイヤ人への復讐を果たす一心で歯を食い縛って修業を耐え抜いた。

 

そして、修業が始まってから4ヶ月後…。

 

「フッフッフッフッフッ、ホーホッホッホッ!」

 

フリーザは高笑いを浮かべた。

 

「お見事でございます。フリーザ様」

 

ベリブルは賛辞の言葉を贈った。

 

全身を黄金色に輝かせるフリーザ。ベリブルとの過酷な修業の末、フリーザは新たな変身形態を取る事に成功した。

 

基本敵な戦闘力を向上に加え、かつての最終形態を超える変身形態を身に着けた事で、フリーザは以前とは比べものにならない程にパワーアップした。

 

「この全身からみなぎるパワー! もはやサイヤ人など目ではありません! 再びこの私が宇宙最強となったのだ!」

 

「仰るとおり。フリーザはかのサイヤ人を超えておられるかと…」

 

「そうでしょう! ならばもう、これ以上トレーニングをする必要はありませんね」

 

フリーザは変身形態を解き、第一形態にまで姿を戻した。

 

「ありがとうございます、ベリブルさん。これでようやくあの憎きサイヤ人共に復讐を果たす準備が出来ました」

 

「もう行かれるので?」

 

「えぇ。サイヤ人共にいつまでも生きていられると寝覚めが悪いですからね。…すぐに血祭りに上げねば…!」

 

かつての屈辱を思い出したフリーザは表情を憤怒のごとく歪ませた。

 

「それでは失礼します。次は吉報を届けに参りますよ! ホーホッホッホッ!」

 

フリーザは宇宙船に乗り込むと、この星を後にしていった。

 

「やれやれ、相変わらずせっかちな御方ですねぇ。私はサイヤ人を『超えた』とは仰いましたが『勝てる』とは申しておりませんのに…」

 

先程見せたフリーザの新しい変身形態には、強大な戦闘力を誇る反面、とある弱点が存在する。ベリブルはその弱点に気付いている為、もう少し修業を続けるべきであると告げようとしたのだが…。

 

「…フフッ、あのプライドの高いフリーザ様の御気性では御忠告しても無駄でしょうな」

 

サイヤ人を超える力を手に入れた事は事実。ならば後はフリーザ次第。

 

「フリーザ様の戦いがどのような結末となるのか、見届けに行くとしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ベリブルは身支度を整え、地球へと向かうフリーザに合流した。

 

フリーザとサイヤ人、孫悟空の戦いはお互いが新たな変身形態に姿を変えると、当初は戦闘力で上回るフリーザが孫悟空を圧倒した。しかし、フリーザの新たな変身形態、ゴールデンフリーザの弱点に気付いた孫悟空は弱点を突く戦い方に切り替えた。結果、戦況はひっくり返り、孫悟空が優勢となった。

 

奇策を用いて1度は孫悟空を追い詰めたが、最後は孫悟空の手でフリーザは再び地獄へと落とされたのだった。

 

フリーザの戦いを見届けたベリブルは元居た星へと戻り、隠居生活を再開した。

 

その後は、隠居生活をしているベリブルの下をウイスが尋ね、8つの宇宙の猛者達が集まり、それぞれ宇宙の命運をかけた力の大会が行われる事を聞かされ、それとなくメンバーに勧誘されるもそれを辞退した。

 

力の大会の様子を水晶で観察している中で、破壊神をも上回る力を持つジレン。そのジレンを圧倒した、フリーザを2度も退けた孫悟空に興味を抱いた。

 

神々でさえも習得するのが困難であるあの身勝手の極意を、領域に足を踏み入れるだけではなく、完成させるまでに極めた孫悟空に…。

 

力の大会で活躍した功績を称えられ、再度生き返ったフリーザの下に合流し、辺境の小惑星バンパでサイヤ人の生き残りであるブロリーとパラガスを見つけ、フリーザ軍に組み込み、その後はドラゴンボールの回収のついでにブロリーの力試しも兼ねて地球へ向かった。

 

そこで戦いながら進化し、遂には破壊神をも上回るまで進化したブロリー。そのブロリーを孫悟空とベジータがフュージョンをし、撃退した。これを見たベリブルは孫悟空だけではなく、サイヤ人そのものに興味を抱いた。

 

「…フフッ、私がここまで興味を持ったのは初めてですね」

 

コルドやあのフリーザ以上に興味の対象となったサイヤ人という生き物。数億年生きてきた中でベリブルがこれまでに滅多に抱かなかった感情である。

 

「孫悟空、ベジータ。…一目、会ってみましょうかね」

 

ベリブルは人知れず、瞬間移動したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





映画を見に行って、『あのフリーザにあんな事言ってよく許されるな…』から始まり、そこから色々想像を膨らませて最終的にこのような形になり、いつか時間があったら書いてみようと思い、昨年と今年の年末年始を利用して書きあげました。

短編としては第3弾で、良い気分転換となりました…(^-^)

ただ、もうちょっとコンパクトに収めたかったと言うのが本音だったりします。まさか、この短編が過去最高の1話の総文字数となるとは…(;^ω^)

願わくば感想をいただければと思います…m(_ _)m

それではまた!
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