ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

10 / 75
第1章 非日常編③(おしおき編)

『うぷぷぷ…お見事大正解ー!!『超高校級のパティシエ』近藤夏美サンを殺した殺意まみれのクレイジーサイコクロは…一匹狼気取りぼっちDQNネーム野郎の『超高校級の操縦士』狗上理御クンでしたー!!』

モノクマとモノハムが、勝利した俺たちを祝福した。

…いや、嘲笑ったと言うべきか。

二匹のぬいぐるみは、ケタケタと笑いながら高らかに投票結果を発表した。

俺の目に、投票結果が焼印のように刻み込まれる。

…俺が、狗上に投票したから、こんな結果に…

『今回は、クロの狗上様以外は、全員満場一致で狗上様に投票ちていまちた!いやあ、仲間をあっちゃり見殺ちにちゅるなんて…皆様も意外と薄情なんでちゅね!ちなみに、クロの狗上様は、近藤様に投票ちてまちたー!』

 

 

…誰も、反論できなかった。

認めたくないが、モノハムの言う事は正しい。

俺は、俺たちは…『全員のため』『真実を確かめるため』という綺麗事を免罪符に、狗上を生贄に差し出したんだ。

最初から、こうなる事は分かっていた。

それでも、いざ現実を突き付けられると、受け入れられない自分がいる。

俺は、覚悟が足りていなかったんだ。

その覚悟が足りるほど、俺は非情になれなかった。

 

 

 

…人を見殺しにするという覚悟が。

 

 

 

「おい、狗上…お前、なんでこんな事したんだよ!!?」

玉木が、狗上に言葉を投げかけた。

「お前…この4日間で、変わったじゃねえかよ!最初は誰の事も信用してなかったのに、近藤の飯食って、一緒に海行ったりして…捜査や議論だって、力を貸してくれたじゃねぇか!!…なんで、お前が近藤を殺したんだ!お前は、仲間を殺すような奴じゃなかっただろ!!」

 

「うるせえ!!!」

 

「ひっ…!?」

いきなり狗上が怒鳴り声を上げ、猫西がビクッと身体を震わせた。

「テメェらに何がわかんだよ!!いきなり後ろから襲われて殺されそうになった俺の気持ちがよ!!なあ、わかんのかよオイ!!わかんねえよな!?」

「狗上…」

 

「…おい、綿埃。結局、スイーツが犬を狙った理由って何だったんだ?」

神城が、モノクマに質問を投げかける。

『綿埃って何だよ!それってボク達の事!?呼び方酷くない!?』

『まあまあ学園長、落ちちゅいて…』

『おっと、ごめんごめん。じゃあ、近藤サンの動機を説明しちゃうね!近藤サンは、知っての通り鶏肉アレルギーだったから、みんなのうちの誰かを殺して帰郷しようとしていたのです!…そこで選ばれたのは、なななんと!狗上クンでした!』

「…なんで狗上が狙われたの?」

『…それはね、殺しやすかったからだってさ!』

「殺しやすい…どういう事?狗上君は、このメンバーの中では体格は圧倒的に有利だし…警戒心も強いし…むしろ殺しにくかったんじゃないの?」

『あのでちゅね、殺しやちゅいっていうのは、何も物理的な意味だけぢゃないんでちゅよ!狗上様は、猜疑心が強く、誰の事も信用ちようとちまちぇんでちたよね?近藤様が頑張って作った料理も、殆ど食べなかったちょうぢゃないでちゅか。だから、この中では一番罪悪感を感ぢぢゅに殺ちぇるって近藤様は判断ちたようなのでちゅ。』

「それに、狗上様の猜疑心の強すぎる性格は、一周回って逆に利用し易いですしね。」

「ふーん、だからリオンにいは狙われたんだー。」

 

『全く、体格差も考えずにお粗末な作戦で狗上クンを殺そうとしてたなんてさ、逆によくあんな愚策で人を殺せると思ったよね!おつむが全部スポンジケーキでできてんじゃないのかな?死んで当然、同情の余地無しです!うぷぷぷぷ!!』

「そうだ、俺は悪くねえぞ!!全部、あのチビが悪いんだ!!アイツが俺を殺そうとしなきゃ、こんな事になんなかったんだからよ!!あれは正当防衛だよ正当防衛!!俺は無罪だ無罪だ無罪だ無罪だ無罪だぁああああああああああああ!!!」

「狗上君…!」

完全にただの屁理屈だ。

今の狗上には冷静さの欠片もなく、奴はただ感情に任せて怒鳴り散らしていた。

狗上の剣幕に気圧されて、俺は何も言い返せなかった。

…俺の隣に居た、ソイツを除いては。

 

 

 

 

 

「人を殺しといて、イイワケするんだ〜?」

 

アリスは、無邪気な笑みを浮かべながら狗上の顔を覗き込んで言った。

「…はっ?」

「あーちゃん知ってるよ。セートーボーエー?って、自分が殺されそうになったから仕方なく相手を殺して自分を守る事でしょ?…でもさ、どんなにいい人ぶってても、ケッキョクは人殺しに変わりないよね!」

「違う!!俺は、アイツに襲われたから…」

 

 

「ふーん。でもさ、サイシュー的にナツねえを()()()()()リオンにいでしょ?」

 

 

「ッー!!」

「ナツねえがリオンにいを殺そうとしてた事なんてどうでもいいよ。結果的に、人を殺したのはリオンにいなんだから!」

「お、俺は…」

「…狗上さん、本当に殺意は無かったのですか?」

「は…?」

「狗上さん、貴方程の身体能力であれば、近藤さんから自分を守る方法は幾らでもあった筈です。それに、肋骨に罅が入る程無抵抗の女性を何度も蹴り付けるという行為は、どう考えても正当防衛の範囲を超えています。これでもまだ言い逃れをするのは、流石に苦しいと思うのですが。」

ジェイムズが冷静に狗上を諭す。

「う…うるせぇ!!殺されかけた事もねェくせに、偉そうな口利いてんじゃねえよ!!俺は無罪だっつってんだろうがよ!!勝手にゴチャゴチャほざいてんじゃねえ!!!」

 

「…この期に及んで、まだ自分を庇護するつもりか?」

 

気がついたら、口が動いていた。

狗上の言い分もわかる。

いざ自分が死ぬってなったらこうなるのは当然だ。

…だけど、だからってそれが許される事とは思えなかった。

こんな生半可な覚悟しか無い奴に近藤が殺されたというのは、納得できなかった。

納得なんて、したいわけがなかった。

「自分の行動に責任を持たないからこうなるんだ。そもそも、お前が近藤に、みんなにもっと信用されていたらこんな事にならなかったんじゃないのか?全部、軽率に行動したお前が悪い。自分の行動一つ一つに全てを懸ける覚悟が無いなら、最初から殺人なんて犯すな。」

自分でも、最低な事を言っているのはわかっていた。全部、俺の自己満足だ。

それでも、人の命は、こんな簡単に奪われていいものじゃない。

その事を、狗上に訴えたかった。

「…お、お前らに何がわかんだよ!!俺があの時どんな気持ちだったか、お前らに…」

「わかるわけないじゃん。バカなの?死ぬの?ってかさ、リオンにいはナツねえを殺して、あーちゃん達を全員殺して生き延びようとしたわけじゃん?それなのにさ、自分が死ぬってなった途端にギャーギャー言うの?それってさ、ツゴー良すぎじゃない?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさーい!!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!おい、バカ女、サッカー野郎、猫女!!誰でもいい、こいつら今すぐ黙らせろ!!!お前ら全員耳障りなんだよ!!俺は無罪だっつってんだろうがぁああああああああ!!!」

 

『黙るのはオマエの方だよ、バーーーカ!!』

 

さっきまで傍観していたモノクマが、ついに口を開いた。

 

「なあ、おい、俺は悪くないよな…?悪いのは全部、あのチビだよな…?」

『はぁ?何言ってんの?オマエが悪いに決まってんじゃん。バカなのかな?』

「は?は?え?おい、ちょっと待て!!なんで俺が悪いんだよ!!俺は殺されかけた被害者だぞ!!あれは正当防衛だ!!俺は悪くない!!」

『黙らっしゃい!!!』

「ッ!!」

『ホント、オマエしつこいよ!人を殺した時点で、罪に重いも軽いも無いの!いい加減認めなよ、このゴミクズ。』

『ちょうでちゅ!狗上様は、近藤様を殺ちた立派な人殺ちでちゅ!ちょれ以上でも以下でもありまちぇん!』

「ふざけんな!!こんなの無効だ、今すぐ処刑をやめろ!!こんな裁判、不成立だぁあああああ!!!」

『あの、もう無駄口は無視ちゅる方向でいいでちゅかね?』

「…え。」

『もう時間が押ちておりまちゅので、早くおちおきを開始したいのでちゅ!わぢゃわぢゃ、オイラ達が貴方の戯言に耳を傾けて差ち上げる義理なんて無いのでちゅ!』

「ま、待ってくれよモノクマ!」

『ほえ?玉木クンどうしたの?』

「…確かに、こんな事になったのは、狗上の軽率な行動のせいかもしれねえけど…けどよ、今回は仕方なかったんじゃないか!?俺だって、同じ立場だったら近藤を殺しちまってたかも知れねえし…だから、何も狗上を殺さなくても…」

 

『ふーん。…投票の時は狗上クンを見殺しにしようとしたくせに、今更いい人面するんだ?』

「ッー!!…け、けど…」

『けどもでももhoweverもないの!っていうか、ぶっちゃけ殺人の動機とかどうでもいいんだよ!そもそも学級裁判でクロになった奴をおしおきするってルールだったわけだし、ちゃっちゃとおしおき始めちゃうよ!』

『狗上様、最期に、5日間を共に過ごちたお仲間達に言い残ちておく事はありまちゅか?』

「い、いやだああああああああああああああああああああああ!!!死にたくない死にたくない死にたくない!!!うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

狗上は、叫びながら裁判場から逃げ出した。

靴が脱げ、躓いて転びながらも、死に物狂いで裁判場から遠くへ逃げようとしていた。

その姿は、あまりにも見苦しかった。

『うっぷぷぷぷ!!おお、無様無様!!逃すわけないでしょ、バーカ!!』

『逃げ切れば時間が何でも解決ちてくれるとでも思ってるんでちゅか?本当、最近の若者はこれだから…みっともないでちゅね!』

『それでは、今回は『超高校級の操縦士』狗上理御クンのために!!スペシャルなおしおきを用意しましたっ!!ではでは、おしおきターイム!!』

 

モノクマの席の前から、赤いスイッチがせり上がってくる。

モノクマはピコピコハンマーを取り出し、ハンマーでスイッチをピコッと押す。

 

 

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

イヌガミくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

狗上は、逃げようと走るも、首をアームで掴まれて引きずられる。

何か喚いているようだが、おしおきはモニター越しで、狗上の声は俺たちに届く事はなかった。

しばらくして、狗上の首を掴んでいたアームは、その手を離した。

アームから解放された狗上は、ジェットコースターのような乗り物に乗せられた。

コースターに設置されたディスプレイには、文字が表示されていた。

 

発車まであと10秒

安全ベルトを装着してください

 

次の瞬間、狗上の体はベルトで拘束される。

狗上は、不安そうに周りを見渡す。

どうやら、周りはトンネルのようだった。

コースターは、レールの上で静止している。

そこに、点検係の格好をしたモノクマとモノハムが、誘導灯を持って現れた。

モノクマが誘導灯で指した先に、ポップな文字が映し出された。

 

 

 

ノンストップ!絶望超特急の旅

 

【超高校級の操縦士】狗上理御 処刑執行

 

 

 

次の瞬間、コースターの上に設置された信号機の一番左のランプ点灯し、1秒毎に右隣のランプが点灯する。

三つ並んだランプの、一番右のランプが赤く点灯した瞬間、コースターが発進する。

モノクマとモノハムは、手を振ってコースターを見送った。

コースターは次第に加速し、ディスプレイに文字が現れる。

 

1st STAGE 普通コース

 

コースターが加速し終わり、速さが一定になる。

しかし、ほとんど整備されていないレールの上をコースターが走り、車体がガタガタと大きく揺れる。

目の前のレールが二方向に分かれ、左側のレールには、5枚程度設置された円形の刃物が高速回転をしている。

このままでは、コースターごと刃物の餌食になる。

どうにかしようともがいた狗上は、ちょうど手元にレバーがあるのに気がついた。

身体は拘束されていて動かないが、右腕だけは動かせる。

狗上は、レバーを思い切り右へと引いた。

するとコースターは右へと傾き、右のレールへと車線変更した。

狗上が一安心していると、ディスプレイの画面が切り替わる。

 

2nd STAGE 快速コース

 

コースターが加速し始め、1回目の加速よりも短い時間で加速する。

加速と振動の衝撃で、狗上は苦悶の表情を浮かべる。

身体のあらゆる所が内出血しており、痣となっていた。

次は、今にも落下しそうな剣山付きの重石がセットされたコースだった。

今度は、左に舵を切って罠を回避する。

次の瞬間、重石が落下した。

罠を避けた狗上は、安堵の表情を浮かべた。

すると、またディスプレイの画面が切り替わる。

 

3rd STAGE 特急コース

 

コースターが急激に加速する。

狗上は目や口から血を垂れ流し、充血して赤く染まった白目をひん剥いていた。

もう、狗上は意識を失っていた。

今度は、クロスボウが大量にセットされたコースだった。

ギリギリのところで目を覚ました狗上は、急いで右に舵を切る。

しかし、舵を切るのが少し遅れたため、矢を何発か喰らった。

狗上は、矢が身体を穿つ激痛で、顔を歪めた。

しかし、狗上の身体はすでに満身創痍で、もう叫ぶだけの元気はなかったようだ。

それでも、またディスプレイの画面が切り替わる。

 

FINAL STAGE 超特急コース

 

コースターは容赦なく加速し、ついには超音速まで達する。

その加速に比例するように、狗上の身体に膨大な量のダメージが蓄積されてゆく。

狗上はもう、虫の息だった。

全身の骨は折れ、身体中のあらゆるところから血を吹き出していた。

目は充血し、口からは血と吐瀉物が混ざり合った何かが溢れ出ていた。

そして、それに追い討ちをかけるように、目の前に信じがたい光景が広がる。

コースターの数百m先は、レールが途中で切れており、その下にはマグマが煮え滾っていた。

その数十m先には、レールの続きが敷かれた岸があった。

狗上は覚悟を決め、レバーを思い切り前に押した。

するとコースターは加速し、空中に飛び出した。

コースターは空中に投げ出されながらも、加速を生かして向こう岸へと進んでいく。

あと少しで、岸に辿り着く。

 

…が、岸だと思って突っ込んだのは、向こう岸の絵がリアルに描かれた鉄壁だった。

超音速で空中を進む車体は勢いよく鉄壁に激突する。

コースターの車体と狗上の体は、バラバラに砕けた。

そしてついに、

 

 

落ちた。

 

 

マグマは白煙を上げながら、狗上を飲み込んでいく。

狗上の最期の顔は、絶望で染まっていた。

そして、鉄壁の後ろからヘルメットをかぶったモノクマが現れ、呆れたようにため息をつく。

鉄壁の裏には、

 

工事中につき運行中止

 

と書かれていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオオオオオオオイ!!!エクストリィイイム!!!』

『いやあ、やっぱりこれが一番でちゅね!アドレナリン500%でちゅ!!』

モノクマとモノハムは、上機嫌でモニターを見ていた。

…狗上が死んだ。

目の前で、二度も人が殺された。

しかも今回は、郷間の時とは比べ物にならない程残酷な方法で。

俺は、目の前の惨劇に戦慄し、頭が真っ白になった。

「あびゃー!!リオンにい、死に方えっぐ!!あーちゃんこんな死に方したくないよぉ!」

「…フン、下衆が。」

「狗上さん…」

「畜生…狗上、なんでだよ…!」

わざとらしい驚き方をするアリス。

真っ青な顔をしながらも、平気な振りをする森万。

俯きながら仲間の死を悔むジェイムズ。

悔しそうに拳を握りしめる玉木。

「あっ、ああああ…狗上君が…」

「マジかよ…こんな残酷な方法で殺されんのかよ…!?」

「…外道ですね。」

「狗…上…先輩…そんな、嘘っスよね…?」

目の前の惨劇に狼狽る猫西。

処刑の恐怖に怯える神城。

モノクマ達に対して怒りを露わにする速瀬。

目の前の出来事を受け入れられずにいる小川。

「い、狗上氏が…!わ、吾輩は…吾輩は…」

「…嘘でしょ。」

「狗上さんが…どうして…!」

「…ホント悪趣味。」

パニックになる織田。

ただ呆然と立ち尽くすリタ。

泣き崩れる床前。

モニターから目を逸らす射場山。

それぞれが、目の前の惨状に対して反応をした。

 

…俺たちに突きつけられた現実は、あまりにも残酷すぎた。

未だに、狗上の死を受け入れられない自分がいる。

『うぷぷぷ!オマエラ、なんでお通夜みたいなテンションなわけ?ほら、せっかく問題児が消えてくれたわけだし、もっとアゲてこうよ!』

『ちょうでちゅ!皆様、狗上様とは大ちて仲良くなかったんでちょう?どうちて今更ちょんなリアクチョンちてるんでちゅか?』

「ふざけんな!!…お前らが、お前らのせいで、狗上は…!」

モノクマとモノハムの耳障りな発言に、玉木の中では怒りがこみ上がっていたようだった。

玉木は、モノクマ達に詰め寄り、拳を握りしめながら二匹を睨んでいた。

『そう言われてもなぁ。アレは、狗上クンが勝手にやった事だし?ボクは、ただクロを処刑しただけだもんねー。』

「…お前ら、絶対許さねえからな!!」

『おやあ?玉木クンてば、なんか殺る気満々じゃん!ほらほら、そこで睨んでばっかいないで、かかってきなよ?無能キャプテン君?』

「なんだと…!」

『わわわ!?ちょっと、何煽ってるんでちゅか!』

『いーじゃん。どうせ何もできないよ。…だって、何もできなかったせいで、大事な仲間を三人も死なせちゃったんだもんね?』

「この野郎!!」

玉木が、モノクマを殴ろうと、拳を振りかぶる。

「おい、やめろ玉木!!」

 

ゴッ

 

気がついたら、身体が動いていた。

俺は、モノクマ達を庇って、玉木に殴られた。

左頬に、痛みが走る。

俺はそのまま吹っ飛ばされて尻餅をついた。

『キャー!本当に殴ってくるとは思わなかったよ!菊池クンサンキュー!ってか大丈夫?顔腫れてない?』

「き、菊池…!?」

玉木が一瞬怯んだ。

その瞬間、ジェイムズが玉木を羽交い締めにした。

「おい、ジェイムズ!何すんだよ、離せよ!!」

玉木は、ジェイムズの拘束を振り解こうと暴れる。

「らしくないですね。貴方のような聡明なリーダーが、こんな愚行に走るなんて…一旦、頭を冷やして下さい。」

「…!」

玉木は、我に返った。

「…悪い。…俺、なんか熱くなってたみたいだな。ごめん。」

「貴方は、私達のリーダーです。こんな所で失う訳にはいきません。」

「…そうだな。悪かったよ。」

玉木は、深く頭を下げた。

「目ェ覚めたかよ、玉木。」

「菊池。俺、ついカッとなって…本当にごめん。…あと、ありがとう。俺の事、庇ってくれて。」

「いいよ別に。俺はただ、お前が馬鹿な事をして死ぬのを見たくなかっただけだ。」

「本当にごめんな。…大丈夫か?いや、大丈夫じゃねえよな。」

「いや、いいよ。そんな事より、お前が殺されずに済んで、本当に良かった。」

「菊池…」

『ねえ、何男同士でイチャイチャしてんの?…オマエラ、もしかして付き合ってんの?』

『いちゅまでも茶番に付き合わちぇないでくだちゃい。こっちも忙ちいんでちゅ。』

「君たちの都合なんて知ったこっちゃないよ、この人でなし。」

『うっわー、猫西サン辛辣!ボク泣いちゃうよ?』

「勝手に泣けば?」

『うっわ!射場山さんまでそんな事言っちゃうんだ!ふーんだ、もうボク知らないもんね!スロットのメダルは好きに持っていってどうぞ!!気分悪いから帰る!!プンプン!!』

「どんな気まぐれっスか。」

モノクマは、頭から漫画の吹き出しのような湯気を出しながら去っていった。

『わわわ、学園長!まだ皆様にお知らちぇがあるでちょうが!』

「はぁ!?おい綿鼠!今なんつった!?知らせって何だ,教えろ!!」

『…ああ、学園長の代わりに、オイラがお伝えちておきまちゅ。』

 

 

 

『…実はこのコロチアイ合宿、世界中に生中継ちゃれておりまちゅ!』

「んなッ…!!」

『いやあ、こういう刺激的なゲームを求める変態様って、結構多いんでちゅよね。おかげで視聴率バッチリでちゅよ!』

「そんなの、信用できっかよ!!お前らが嘘ついてるんじゃないのか!?」

『やでちゅよ、オイラみたいなえげちゅない程のピュアハムチュターが、嘘なんて吐くわけ無いでちょうが!』

「後付けルール押し付けといて、何言ってんだよ…」

「そんな…じゃあ、そういうゲームを望んでる人達のために、私達は殺し合いをさせられてるって事…!?」

『まあ、一ちゅ目はちょうでちゅね。ちょういう変態様が喜ぶような刺激的な企画をちゅれば、お金がガッポガッポ入ってくるのでちゅ!オイラお金大好き!まあ、ただ単にオイラ達が、こういうコロチアイが大好きっていうのもありまちゅけど。』

「クソッ、このクズが!!」

「…あの、今一つ目は、って仰いましたよね?まだ他にも、このゲームには目的が?」

『うっわあ、速瀬様勘良ちゅぎ!…ちょんなに知りたいでちゅか?』

「当たり前だろうが!!さっさと教えろ!!綿埃!!」

『じゃあ…』

 

 

 

 

『教えまちぇん!!!』

「んなっ…」

「はぁああああ!?ふざけんじゃねえ!!この私をおちょくりやがって!!」

「そーだよ!!あんまりあーちゃんの事バカにすると、激おこぷんぷんマルゲリータだぞ!!」

『このコロシアイの真の目的をお話ちちゅるにはまだ早いでちゅ!ちょのお話ちは、人数が2、3人くらいになったらお話ちちまちょうかね?ぴきゃきゃ!』

「うーん、じゃあそれまであーちゃん達はコロシアイをしなきゃって事だよね?あーちゃん、みんなを殺してまでそんな事知りたくないなぁ。」

『えっ、ちょっち方面っちゅか!?コロチアイをちゅる方ぢゃなくて!?…まあいいでちゅ。ちぇいぢぇい頑張ってくだちゃいな。ちょれぢゃ、またお会いちまちょう!とうっ!!』

モノハムは席から飛び降り、去っていった。

こうして、命懸けの学級裁判が終わった。

…胸糞悪いエンディングだった。

近藤だって、狗上だって、死にたくないっていう思いで自分なりに足掻いたというのに。

郷間も、俺たちのために怒ってくれたのに。

…その思いを、モノクマ達は踏みにじった。

全ては金儲けのため、そして自分達の娯楽のために。

 

「ハッ、くだらねえ。私もう帰る。」

「ちょ、ちょっと…神城さん…」

「あ?んだよ、地味のくせに、この私に指図する気か?」

「あ…えっと…そういうわけじゃ…」

「だったら黙ってろ、愚民が!私は、テメェらみたいな愚民と同じ空間で息をしてるだけで不愉快なんだよ!じゃあな!」

神城は、一人でエレベーターに乗り込んだ。

裁判場内には、再び静寂が訪れた。

「ねえー、あーちゃん喉乾いちゃった。冷たいクリームソーダ飲みたいな〜。みんなもそろそろ戻ろうよ〜。」

口を開いたのは、アリスだった。

「アリス先輩、この状況でよくそんな事…」

「このジョーキョーって何?そこでいつまでも突っ立っててもさ、三人が帰ってくるわけじゃないでしょ?」

「お前…!」

「だったら、落ち込んでる時間なんて無いよね?今日死んじゃった三人はダメだったけど、あーちゃんたちは生きてるんだよ?だったら、がんばって生きなきゃって思わない?」

「…!」

「…そうですね、いつまでも落ち込んではいられません。行きましょう。」

アリスの言葉をきっかけに、全員がエレベーターの中へと移動した。

 

一日で、三人も仲間を失った。

何も出来なかった。してやれなかった。

もう、これ以上仲間が死ぬのは嫌だ。

二度とこんな裁判、開かれるべきじゃないんだ。

もう、これで最後にしよう。

…志半ばにして死んでいった、三人のためにも。

俺は、強く心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

第1章『命を侵されている』ー完ー

 

 

 

 

コロシアイ合宿生活 残り13名

 

 


 

 

 

 

 

「いっやぁ、初っ端からエキサイティングなショーだったね!久々に、生きてるって実感したなあ。あの映像だけで、ご飯百杯はイケちゃうね!」

「…そうですか。」

「あ?んだよ、乗り気じゃねえな。もっとアゲてこーぜ!」

「…。」

「おやや?どうしたんスか?自分の顔になんかついてるっスか?」

「…いえ。さっきから、口調が一致してないんで。混乱するんで、統一してもらえませんか?」

「ふふふ、だって…こうやって喋っておかないと、万が一貴方が裏切った時、正体を言いふらされてしまうではありませんか。」

「…信用できませんか?」

「んー、まあ…そういうわけじゃないけど…言っちゃえば保険だよね、保険!僕ちゃんは、万が一の事も考えてリスクマネジメントしているのだ!!」

「そうですか。…ところで、本当に約束は守ってくれるんですよね?」

「あたぼうよ!!俺は、ダチとの約束は死んでも守るぜ!!」

「…あなたが裏切らないという保証は?」

「だーっ、もううっせぇな!!下っ端は下っ端らしく、俺の言う事聞いときゃいいんだよ!んな事より、例の件についてなんだが…」

「例の件…あなたが言ってた計画ですか。」

「そうそう。そろそろ役者も揃う事だし、次の段階に進めちゃおっかな〜?あ、ちゃんと準備はしてあんだろーな!?」

「はい、予定通り進行中です。」

「フン、それなら一安心だな。引き継ぎ、見張りとゲームの準備の方は頼んだぞ。」

「わかりました。」

 

 

 

 


 

「…あら?外が騒がしいわねえ。アタシ抜きで楽しそうな事やってんじゃないでしょうね?そんな事してたら、アタシもう激おこぷんぷんマルビナス諸島よ!」

 

「…っていうか、アタシはいつになったらここから出して貰えるのかしら?あーあ、早く外に出たいわぁ。うふふふ…」

 

To be continued…




【論リゾこぼれ話】

いやあ、今回は理御クンがクロだったわけですけれども。
実はですね、結構おしおきシーンには拘りました。
理御クンの死に方には、実は意味があります。
壁に衝突、空中を飛ぶ乗り物、マグマ。
勘のいい方なら、これらから、理御クンがドローンを使って証拠を隠滅しようとしてた時の状況と似ているという事が想像できると思います。
まあ言ってしまえば、「お前が操作ミスったせいで壊れたドローンの立場考えてみろよ!」って事なんですが、実は、もう少し深い意味があるんです。
いい加減な使い方のせいで物をダメにし、調子が悪くなったからと言って捨てたという人はいると思います。
理御クンのおしおきは、まさにそれを再現しています。
乱暴に扱われ、使い物にならなくなり、最後には用済みになって捨てられる。
お前がぞんざいに扱った物と、お前の価値に大差なんてない。
お前なんて所詮はその程度の存在だ。
そういうメッセージが込められております。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。