第2章(非)日常編①
『ウチのお菓子食べて元気出しなよ!』
『ここにいる奴は、みんな兄弟だ!!よろしく頼むぜ、弟に妹!!』
『あー、かったりい…』
聞き慣れた声が聞こえる。
後ろを振り向くと…
『うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ…』
『ぴきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ…』
耳障りな甲高い声が二つ、鳴り響く。
そこにはナイフを胸に刺された死体、無数の槍が刺さった死体、バラバラに砕けて灼けた死体が転がっていた。
死体が目を開き、こちらを向いた。
死体が口を開いて、掠れ声で叫んだ。
オ マ エ ノ セ イ ダ
…そうだ、俺があの時何もしなかったせいで…
俺のせいで…
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「…ッはッ!?」
周りを見渡すと、俺の部屋だった。
さっきまでの死体は無く、俺はベッドで横になっていた。
…夢か。
合宿6日目の朝。
昨日あんな事があって、心身共に疲弊しているはずなのに、いつもより早く目が覚めた。
…最悪の目覚めだった。
朝の支度を済ませて、俺は部屋を出た。
散歩をした後、レストランに向かう。
レストランに入ると、既に何人か集まっていた。
「…おはよう。」
「おう、菊池。おはよう。」
玉木が返事を返した。
手には、今日の朝食と思わしき皿を持っている。
「…お前もしかして、朝飯作ったのか?」
「いや、ほとんど俺は何もしてねぇよ。厨房で速瀬、猫西、ジェイムズ、射場山、床前の5人が朝飯を作ってんだ。俺はその手伝いだよ。」
…早起き組は朝から料理か。
「…そっか。今までは近藤が作ってたもんな。これからは、飯は全部俺たちが作るんだな。」
「…。」
玉木の顔が曇った。
…しまった。
つい、言ってはいけない事を言ってしまった。
「あっ、悪い…」
「…いや、いいんだ。」
そこへ小川、織田、森万が来た。
「おはようございます、先輩方。」
「おはようございます、同志よ。」
「ああ、三人ともおはよう。」
「フン、菊池に玉木か。…そういえば、カークランドはどこに行った?今朝、姿を見なかったが。」
「ああ、ジェイムズなら、厨房で飯作ってるよ。」
「ほう…アイツが料理か。フッ、楽しみだな。」
…こいつらなんだかんだ言って仲良いな。
しばらくして、リタ、神城、アリスが来た。
「ふわぁ…おはようございますぅ。」
「ハッ、私に跪け!愚民共!!」
「やっほー!!おはヨークシャー・テリア!世界が羨むスーパー美少女あーちゃんが来たよ!!」
…朝からハイテンションだな、こいつ。
昨日あんな事があったのに、もう忘れちまったのか。
「皆様、食事の準備が出来ました。」
「やったー!!早く席座ろー!」
全員が席についた。
…空席が三つ、そして、それぞれに花の入った花瓶が置かれていた。
「…これは?」
「…あ、えっと…私が置きました。…その、私が亡くなった方たちにしてあげられる事は、これくらいしかないと思って…」
「…あ、そうっスよね。もう近藤先輩も、郷間先輩も、狗上先輩も、いないんっスよね。」
「…。」
それ以降、全員が言葉を発さなくなった。
…思い出してしまった。
そうだ。昨日、俺たちの仲間が三人も死んだんだ。
みんな、本当は生きたかったはずなのに。
あんなゲームさえ無きゃ、今頃ここに集まって、全員で飯を食ってたはずなのに。
重い空気の中、ソイツは口を開いた。
「なんかさー、この空気ブラックホール並みに重くない?タイクツだから、あーちゃん歌っちゃお!」
…は?
何を言ってるんだコイツは。
「パンのおかわり自由だしっ♪ジュースも飲みホウダイ〜♫レストランは〜サ〜イ〜コ〜ッ♬」
クソガキは、くだらない歌を歌い始めた。
「…アリス先輩?何スかそれ…」
「ん?ああ、これ?あーちゃんがサクシサッキョクした、『飯処』ってゆー歌だよ!あーちゃん、ヴィヴァルディ並みに音楽のセンスあると思わない?」
「思いません。ヴィヴァルディを舐めないで下さい。」
おい、ツッコミどころズレてるぞ。
「ふーんだ、センスない人の言葉なんて聞きたくないですよーだ!あーちゃんは、聞きたい人のためだけに歌うからね!じゃあ次は、『宿屋』ってゆー歌ね!」
「…あんた、頭おかしいの?なんでこんな状況で歌ってんのよ。」
「ほぇ?」
射場山が、苛立ちながら言った。
「…ホント、空気読めない奴嫌い。子供だからって何してもいいわけじゃないでしょ。」
「射場山さん…ちょっと言い過ぎじゃない?」
「…じゃああんたは、昨日の事を忘れたわけ?それなのに、こんなふざけた事をしてるコイツの神経がおかしいって言ってるの。」
「きのうの事って?きのうはきのう、きょうはきょうでしょ!いつまでもネチネチしなーいの!」
「…あんた、本気で言ってる?昨日あんな事があったのに、それを忘れて歌うなんて、信じらんない。」
…全員、口には出さなかったが、多分射場山と同じ意見だ。
こんな状況で、ふざけられる訳がない。
もしふざける奴がいたとするなら、それは近藤や郷間、そして狗上に対する冒涜だ。
「きのうあんな事があったから、歌ってるんだよ。」
アリスは、射場山の顔を覗き込みながら言った。
「ユミねえはさ、誰かが死んじゃったら、その人のために悲しむのがレーギだって思ってるみたいだけどさ、あーちゃんはちょっと違うんだよね!」
「…あんた、バカにしてるの?」
「ううん、全然?あーちゃんだって、死んじゃったみんなの事を忘れたわけじゃないよ。だって、人は死んじゃったら二度と生き返らないもんね。」
「何が言いたいわけ…?」
「二度目はない人生だからこそさ、思いっきり楽しんじゃおって事!死んじゃった人はそれまでだけど、生きてさえいればウルトラハッピーなんて、いつでもやってくるんだよ!それを台無しにしちゃうなんてさ、死んじゃった人へのレーギでもなんでもなくない?そんな事に時間をローヒするくらいだったら、あーちゃんは一秒でも長くふざけるよ!」
…クソガキの言葉は、存外深く突き刺さった。
人は、死んでしまったらそこまでだ。
だからこそ生きてる俺たちは、前に進み続けなきゃならない。
その事を、コイツは一番よくわかっていた。
わかっていたから、ふざけて場を盛り上げようとしていたんだ。
それが、俺たち、そして死んだ仲間への、コイツなりの礼儀だったんだ。
「…あー、今の俺らしくなかったな!悪い悪い!ほら、早く食わねえと、飯が冷めちまうよ。」
玉木が、気持ちを切り替えて、元気に振る舞った。
「そうですね…アリスさん、その歌、後で教えて下さい。デュエットしましょう。」
「先輩、それを言うならトリオっスよ。自分も混ぜてくださいよ。」
「おっ、この歌の魅力に気づいた!?しょーがないなぁ、じゃあ特別に教えてあげるよ!」
場の空気が、明るくなった。
…まさか、クソガキに励まされる日が来るとはな。
「ほら、射場山も!いつまでも暗い顔してないで、朝飯食え!」
「…。」
玉木の言葉に眉をひそめながらも、射場山は箸を持った。
…俺もそろそろ食わねぇとな。
俺は、朝食を口に運んだ。
…さすがに近藤までとはいかなかったが、店出せるくらい美味かった。
あいつら、料理得意だったんだな。俺も見習わないと…
全員、食事が終わった。
俺と玉木、小川、織田、森万で皿洗いをする。
小川は、楽器を鳴らすようにリズミカルに皿を洗っている。
…織田は、手つきがいやらしいな。見てて吐き気がする。
意外にも、玉木と森万の手際が良かった。
「いやあ、今日の朝飯美味かったな!」
「…玉木、お前結構手際いいな。」
「そうか?まあ俺、部活の合宿とかでしょっちゅう飯作ってたからな。」
「…へぇ。森万、お前も結構手際いいな。」
「フッ、当然だ。」
「…お前、もしかしてちゃっかり料理できたりする?」
「フン、まあ…少し齧ってはいる程度だ。」
「…へ、へぇ。」
俺は、声を震わせながら言った。
「…菊池先輩、どうしたんスか?…もしかして、料理できないんスか?」
「あっ、えっ…うん。」
いきなり小川に見破られて、ぎこちない返事をしてしまった。
「情けないでありますね、このメンツだと、料理できない派は少数派でありますぞ。」
「…うっ。…まあ、飯はロボットが勝手に作ってくれてたしな。」
「ふぁッ!!?おま、どんなハイテクな家だよ!」
「いや、別に…妹がちょっと家を改造しただけだけど。」
「妹!?先輩の妹さん、どんだけすごいんスか!?」
「…なあ、今のでピンときたわ。…お前の妹、『菊池破奈(キクチ ハナ)』だろ。」
「なんで知ってるんだ?」
「いや、逆に知らないのおかしいからな?中1の時点で既に希望ヶ峰へのスカウトが決まってはいるが、『超高校級の優等生』『超高校級の生徒会長』『超高校級の工学者』『超高校級の数学者』などなど、希望ヶ峰にスカウトできる才能が多すぎて、偉い先生方がどの才能でスカウトしようか頭を悩ませてるっつー噂だぞ。」
「…なんか、自分の事褒められてるみたいで照れるな。」
「先輩じゃないっスよ。」
皿洗いが終わって、席に戻った。
『うぷぷ…全員揃いましたね…?』
不愉快な声と共に、二匹のぬいぐるみが姿を現した。
『呼ばれて出てきてなんとやら〜!』
「別に呼んでねぇよ。…失せろ。」
『わわわっ!?菊池様、辛辣でちゅね!君は善良なる優等生だって信ぢてたのに!』
『そーだそーだ!そんな態度とってると、ボク怒っちゃうよ!お前ら、クマ当たり悪すぎ!』
『ハム当たりも悪いでちゅよ!』
「…うるせぇ。昨日の事、忘れたとは言わせねぇぞ。」
『あれは、後先考えないバカ共が勝手にやった事だし?ボク達知らないもんねー。』
「なんだと!!」
「おい、玉木、落ち着けって…!」
『だってそうじゃん?殺すも殺さないもオマエラの自由だったわけで、
「…そうなるように仕向けたのは、全部君たちだよね?近藤さんたちは、君たちのくだらないゲームに巻き込まれただけだよ!」
『やだなぁ、別にボク達は、きっかけを作っただけだもんね!だってさ、いくら食べられないものがあったとしても、自分が手を汚す以外にその状況をどうにかする方法はいくらでもあったはずじゃん?近藤サンが
『猫西様も不良の仲間入りでちゅか!?オイラ悲ちいでちゅ…』
モノクマ達は、ヘラヘラしながら俺たちを挑発した。
『ちょんな事より、皆様にお話ちちたい事がありまちゅ!』
「話って何だ、綿埃共!くだらねぇ事だったら引きちぎんぞ!!」
『や、やめてくだちゃいよぉお…!オイラたちはただ、皆様に有益な情報を与えに来ただけでちゅよ〜!!』
「その話が有益である保証は?いつも、碌な話をなさらないではありませんか。」
『速瀬サンまで!?みんな冷た過ぎ!マイナス273度かよ!!ボクそろそろ怒るよ!!』
「…そんな事より、早く本題入ってくださいよ。」
『いけね。そうだったそうだった。じゃあ、早速本題に入っちゃうよ!』
『前回、学級裁判を頑張ったオマエラへのご褒美だよ!新しくエリアを解放したから、確認してみてね!』
しおりを確認すると、マップに新たなエリアが増えていた。
「更衣室とプール、スポーツセンターに水族館…あとは図書館か。」
「フン、どうせ殺人現場を増やしただけだろう。」
『ヂャッチュライ!!皆様には、新ちく解放したエリアで、ぢゃんぢゃん殺ちまくって頂きたいのでちゅ!』
『今回も、エクストリームな事件を期待してるよ!それじゃあね!』
モノクマとモノハムは、それだけ言って帰っていった。
「…とりあえず、エリアの探索始めるか。」
しおりにざっくりと目を通してから、提案してみた。
「そうですね…今回は、グループ分けはこんな感じで宜しいですか?」
速瀬がサラサラと紙に書いた。
更衣室 男子…菊池様 女子…私
プール…森万様、カークランド様、小川様
水族館…アリス様、猫西様、アンカーソン様
スポーツセンター…玉木様、織田様
図書館…神城様、射場山様、床前様
「わーい!水族館〜!あーちゃんお魚大好き!!しかも、またうぇすにゃんと一緒だー!」
「またまたよろしくね、あーちゃん。」
「…ふわぁ。眠いですぅ…。」
「フン、またカークランドと一緒か。」
「はい、宜しくお願いしますね。」
「先輩、ちゃんと見張ってますからね。」
「ぬぁああああああ!!!速瀬氏!!なぜ吾輩のグループに、レディがいないのでありますか!!しかも、よりによって
敵と書いてイケメンと読ませるな。
「…日頃の行いのせいだろ。織田、お前は俺と行動な。」
「ぬぁああああああああ!!!」
「…ねえ、コイツどうにかならなかったわけ?」
「ふはははははははは!!!私に媚びろ!!愚民共!!おい無口、地味、私のために身を粉にして働け!!」
「…あ…えっと…」
「しょうがないだろ。どっかのグループには入れてやんねぇと。神城は頭は良いし、図書館の探索で役に立つかもだろ?」
「はっ、おいサッカー!!なんで私が探索に協力する前提なんだ!!」
「…やってらんない。」
…射場山と床前は苦労しそうだな。
「じゃあ、とりあえず解散にする?」
「そうですね。…では、皆様は各エリアの探索に向かって下さい。」
俺たちは、そのまま解散した。
ー男子更衣室ー
「…ここが更衣室か。」
青い男子マークが描かれたドアの前に立つが、開け方がわからない。
「…これ、どうやって開けるんだ?」
『ズバリお答えしましょう!』
「うおっ!?」
後ろから、いきなりモノクマが現れた。
『ちょっと、ビビりすぎじゃない?』
「…その現れ方、心臓に悪いからやめろよ…」
『じゃあ、もっとやろーっと。』
…コイツ。
『菊池クン、ドアの開け方がわからないって言ってたね?ドアの右側をよく見てごらん?』
「…バーコードリーダーみたいなのが設置されてるな。」
『自分のしおりを、そこに置いてみてよ。』
「…こうか?」
ポゥン…
変な音と共に、扉が横にスライドした。
「開いた…」
『そう、この更衣室は、電子しおりによってのみ開閉が可能なのです!そこにしおりをセットすると、生徒の情報が読み込まれて、ロックが解除される仕組みだよ!』
なるほど、破奈が作った機械の劣化版か。
『ああ、そうそう。ちなみになんだけど、仮に男子更衣室のリーダーに女子の、女子更衣室のリーダーに男子の個人情報が読み込まれた場合、即座に上にあるガトリングガンが火を吹くからね!風紀を乱すような行動は許しません!!』
…物騒だな。
だが、織田あたりにはちょうどいいかもな。
「話はそれだけか?とっとと失せろ。」
『うっわ!せっかく親切に説明してあげたのに、辛辣ゥ〜!もう怒った!!ボク帰る!!』
モノクマは頭から湯気を出しながら去っていった。
…中を探索するか。
中には、ロッカーとダンベルやベンチプレスなどのトレーニング器具が置かれていた。
…そして壁には、グラビアアイドルの顔をモノハムにしたクソコラ画像のようなものが貼られていた。
相変わらず、余計な事しかしないのかこいつら。
気持ち悪すぎて吐き気しかしない。
「…特に目ぼしい物も無いし、そろそろ行くか…」
カタン…
ロッカーの方から、音が聞こえた。
「…?中になんか入ってるのか…?」
ま、まさか死体が入ってたりしないよな…
恐る恐る音がしたロッカーを開けると…
全身黒ずくめの男が、ロッカーの中から俺を睨んでいた。
「おわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああ!!!?」
俺は、突然の出来事に思わず腰を抜かして、大声で叫んだ。
部屋中に、二つの叫び声が響き渡る。
「ぎゃあああああああああ!!し、しししし…死体ぃいいいいいいい!!!」
「きゃああああっ、って!!誰が死体よ!!」
…ん?
見ると、ロッカーの中の男が、俺同様腰を抜かして叫んでいた。
俺は冷静さを取り戻し、目の前の男に歩み寄る。
2m近くあるロッカーにギリギリ入るくらいの長身、右目が隠れるほど長く艶のある漆黒の前髪、吸い込まれるような漆黒の瞳とは対照的に真っ白な肌をした美青年だ。
…だがよくよく見てみたら、化粧をしていたり、爪に黒いマニキュアを塗っていたり、右耳にピアス開けてたり…おかしな格好をした男だ。
「なあ、アンタ一体…」
「ヒィイイ!!ちょっと、なんなのよぉお!!いきなりロッカーが開いたと思ったら、急にどデカい叫び声が聞こえて…ビックリするじゃないの!!」
「それはこっちの台詞だ!!アンタこそ、なんでロッカーに入ってたんだ!!死体かと思ったじゃねぇか!!心臓に悪い現れ方すんな!!」
「知らないわよぉ!!アタシだって、気がついたらここに…あれ?」
男は、俺の方をじっくりと見つめる。
「アンタ、もしかして…」
男がいきなり俺の手を掴んで、嬉しそうに燥ぐ。
「ヒッ…!?」
「サトシちゃんじゃな〜い!!久しぶり〜!元気してるぅ〜?」
「は、ぁああ…?」
「あ、そうだ!カツトシちゃんは?ゴンゾウちゃんは?リオンちゃんは?ナツミちゃんは?みんな元気?」
「えっ、ええ…?」
突然の出来事に、俺は混乱して、間抜けな返事をしてしまった。
どうやら、この男は俺の事を知っているらしい。
俺の事だけじゃない…この合宿の参加者全員の事を知っていた。
…だが、俺はこの男を全く知らない。
「もうっ、心配してたんだからね!乙女心を傷付ける男はモテないわよ、プンプン!!」
「おいおい、ちょっ、待て待て待て!!」
「ん?どうしたのサトシちゃん?」
「どうしたのって…そっちは俺らの事色々知ってるみたいだが、俺はアンタの事なんて全然知らないぞ!?」
「ふぇええええええ!!?嘘でしょぉおおお!!?アタシの事、忘れちゃったの!?うぇええええん、覚えてないなんて噓よぉおおおお!!!」
男は、わざとらしく泣き出した。
…なんかデジャヴだな。
「どう言う事だ…?俺らは、アンタの知り合いだったのか?」
「そうよ?アタシ、みんなとずっと仲良くしてたのよ!この前だって、二人でアツい夜を過ごしたじゃない。ウフフ…♡」
「はっ!?お前、俺の記憶が無い間になんて事してんだ!!俺の身体に何をした!!」
「今のは冗談よ。」
「紛らわしい事言うな!!」
…全く、一瞬俺の貞操が奪われたと思ったじゃねえか。
「…はぁ、じゃあ…アンタは俺の事知ってるみたいだから、自己紹介はいらないな。…アンタ、名前は?」
「えー…そんな事も忘れちゃったの?ショックー。…まあいいわ。教えてあげる。」
「…アタシの名前は鈴木咲良(スズキ サクラ)。『超大学生級のオネエ』よ。」
【超大学生級のオネエ】
「…『超大学生級』?『超高校級』じゃなくて?」
「そうよ?アタシ、こう見えても大学生なのよ!」
「…アンタ、今いくつだ?」
「あら、乙女に年齢を訊くなんて、失礼な男ね。…と、言いたいところだけど、教えてあげる。今は18よ。今年19になるわね。」
…大学1年生か。
「ウフフ…わざわざアタシを助けてくれるなんて、嬉しい♡…やっぱりサトシちゃんとアタシは、運命の赤い糸で結ばれてるのね♡」
「気色悪い事言うな。俺はそっちの趣味は無い。」
「つれないわねぇ。」
「流石に、アンタをずっとここに置いておくわけにはいかないからな。…行くぞ。」
「行くってどこに?」
「レストランだよ。そこに、みんなと一緒に集まる事になってる。」
「ふーん。」
俺は、部屋を後にする。
…が、鈴木が付いてきていない。
「…何やってんだ?早くレストラン行くぞ。」
「あぁん、サトシちゃん!待ってェ!」
「…なんだ。」
「サトシちゃん、よく見て?アタシ、動けないのよぉ〜!」
「…あ。」
鈴木の手足は、手錠で拘束されている。
「ちょっと待ってろ。何か外す物持ってくるから。」
売店に向かい、ペンチを持って更衣室に戻る。
「…お待たせ。ちょっとじっとしてろ。今鎖を切ってやる。」
「あぁん、ありがと♡」
パチン
パチン
二つの鎖が切れた。
「ふぅ〜、やっと自由に動けるわぁ。んー、自由っていいわねぇ。」
「じゃあ、動けるようになった事だし、レストランに向かうぞ。」
「ガッテン承知の助〜♡」
俺と鈴木は、レストランに向かった。
ーレストランー
レストランには、すでに探索を終えたみんなが集まっていた。
「みんな、お待たせ。」
「おう、菊池…と、その人は誰だ?」
「キャー!カツトシちゃんじゃな〜い!!お久しブリリアント・カット〜!」
「えっ、えぇっ…?」
「何と言うか…個性的な格好をされた方ですね。」
「キャー!もしかして、ジェイムズちゃん?大きくなったわね〜!このままじゃ、アタシ背抜かれちゃうかも〜!」
「はて…何処かでお会いしましたか?」
「えぇえ!?もしかして、みんなもアタシの事覚えてないのぉ!?イヤ〜ン、ショック〜!」
「みんな
「…ああ。さっき初めて会った。…だが、コイツ曰く、俺たちは初対面じゃないらしい。」
「そうよぉ!みんな、あんなにアタシの事『咲良ちゃん』って呼んで慕ってくれてたのに!」
「ふーん。じゃあさくらちゃん。」
「さくらちゃんじゃなくて咲良よ!!さくらちゃんだと、オーガちゃんになっちゃうでしょ!?」
「どっちでもいいっつーの!あーちゃん漢字苦手なんだよ!!察してよ!!」
「ちょっとは勉強しときなさいよ!!」
二人が喧嘩を始めた。
「…あの、先ずは貴方のお名前をお伺いしても?」
「あ、そうね。みんなはアタシの事知らないんだもんね?じゃあ、自己紹介しましょう。」
「はじめまして。…本当は、はじめましては少しおかしいんだケド。アタシは鈴木咲良。『超大学生級のオネエ』よ。」
「『超大学生級』の…」
「オネエ…?そんな才能、初めて聞いたっス…」
「…私、実物のオカマの方は初めて見ました。私の家の近所には、生息していらっしゃらなかったもので…」
「ジェイムズちゃん!!人を珍獣みたいに言わないで頂戴!!生息って何よ生息って!!あとアタシはオカマじゃなくてオ・ネ・エ!!そこんとこ、間違えないでよね!!」
「どっちも同じようなもんだろうがよ、オカマ野郎!!」
「…黒羽ちゃんちょっと歯ぁ食いしばりなさ〜い?」
「…あの。」
「うるせぇ!!愚民が気安く私の名前を呼ぶな!!」
「アンタいっつも頭が高すぎなのよ!!」
「…えっと、」
「オカマ野郎!!」
「うっさいわね虐めっ子!!」
「おい、二人とも。そろそろやめろ。床前が話したそうにしてるぞ。」
「あっ、ナギサちゃんごみんに〜!気づかなかった〜!」
「鈴木、お前なぁ…」
「菊池さん、いいんです。慣れてますから…」
「ナギサちゃん、話したい事ってなぁに?」
「えっと…今、『超大学生級』って仰いましたけど…鈴木さん、もしかして希望ヶ峰学園の卒業生なんですか…?」
「そうよ。アタシは、希望ヶ峰に通ってたわ。この前卒業したけど。」
「えっ、さくらちゃん今いくつ!?」
「あら。全く…乙女にそんな質問するなんて、失礼な娘。…まあでも、教えてあげるわ。…18よ。」
「…普通に考えたら大学1年生か。そうなると、私達が入学するちょうど数日前に卒業したって事か…鈴木さん。あなたは、どうして私達の事を知ってるんですか?仮にあなたの話が本当だったとして、希望ヶ峰での、私達との接点は無いですよね?」
「…ああ、気づいちゃった?うぇすにゃん?」
「…理嘉です。本名、猫西理嘉って言います。」
「あ、そうだったわね。アヤカちゃん。」
「鈴木さん、どうしてあなたが私達の事を知ってるのか、教えてくれませんか?」
「んー…それはね〜、ちょっと言わない方がいいかしらね〜。」
「はぇえ!?ちょっとー!ちゃんと説明しろよー!!さくらちゃんのバカー!!アンポンタン!!オカマオーガ!!」
「誰がオカマオーガよ!!全部忘れたアンタ達が悪いんでしょうが!!それとアタシは『さくら』じゃなくて『咲良』だし!!オカマじゃなくてオネエだし!!ちゃんと覚えときなさいよ!!」
「…まぁ、仰って頂けないのであれば仕方ありません。今無理して問い質す事では無いでしょう。」
「やー、さすがフブキちゃんは話がわかるわねぇ!」
「…その代わり、私は貴方の事を全く信用出来ません。その事は、ご承知置き下さい。」
「…辛辣ゥ。」
『やっほー!!みんな元気ー?』
『またまた出てきたでちゅ!!』
忌々しいぬいぐるみ共が、姿を現す。
「あっ…!アンタ達!!」
鈴木は、モノクマ達を指差して言った。
「…鈴木、知ってるのか?」
「…思い出したのよ。知ってるも何も、アタシ、コイツらにロッカーに閉じ込められたのよ!!」
『うぷぷ!ご機嫌麗しゅうオカマ野郎!シャバの空気を吸えて良かったね!』
「誰がオカマ野郎よ!!オネエだっつってんでしょ!!」
『まあまあ、あんまり怒ると、お肌に悪いでちゅよ?』
「くっ…」
そこはあっさり退くのか。
「で?君たち、一体何の用なのさ!またくだらない事言いに来たわけ?」
『くだらないなんてとんでもない!ボク達は、鈴木クンの合宿への参加を認めに来たんだよ!!』
「合宿?何よそれ。アタシに何をさせる気?」
『オイラ達は、入ってくる人達はウェルカムなのでちゅ!鈴木様、これをお受け取りくだちゃい!』
「あら。何これ。スマホ?」
『ちょれは合宿のしおりでちゅ!合宿生活で必要になるから、絶対になくちゃないでくだちゃいね!』
『じゃっあねー!』
「あっ、おいこら待て!!」
モノクマ達は、大事な事を言わずに去っていった。
「ふーん、合宿ねえ。随分と勝手な事してくれるじゃない。…まあでも、面白くなるんだったらアタシは大歓迎よ。」
…面白い?
このゲームが、面白いわけがない。
鈴木はまだ、何も知らないんだ。
このコロシアイ合宿という地獄を…
コロシアイ合宿生活 残り14名