三人、仲間を失った。
でもその翌日、このコロシアイ合宿に新たな仲間が加わった。
…鈴木咲良。奴は一体何者なんだ…?
ーレストランー
「…じゃあ、報告会始めるぞ。みんな、席についてくれ。」
「私に命令するな!」
そうは言いつつ、神城は素直に席に座った。
「ねえ、アタシはどこに座ればいいの?あ、これどこでもいい感じ?じゃあ、適当にそこら辺座るわね〜。」
鈴木は、近藤の席に堂々と座った。
「あっ、そこは…」
「あー、よっこいしょういち。ふーんふーん♪」
床前の静止を聞かずに、鈴木は椅子に座りながら鼻歌を歌う。
「ねえ、アタシ喉渇いちゃった。なんか飲み物無い?あー、でもアタシ苦いの嫌い〜。そうだ、タピオカ無いの?」
ガシャンッ
鈴木が座りながら厨房に体を向けると、肘が花瓶に当たって花瓶が落ちる。
「きゃっ!?ちょっと、何!?うわっ、肘ビシャビシャなんだけど!?ってか、なんでこんな所に花瓶置いてあるのよ!邪魔でしょうが!誰か片付けときなさいよ!!」
ピシャッ
「…いい加減にしてよ!!いくら参加したばっかりだからって、無神経過ぎるよ!」
鈴木の空気の読めない言動に痺れを切らした猫西が席から立ち上がり、鈴木の頬をピシャリと叩いた。
「おい猫西、落ち着け。鈴木はまだここに来たばっかりで、何も知らないんだよ。」
「…ッ、ごめんなさい。私、つい…」
猫西は、鈴木への怒りを抑えながら頭を下げた。
「…え?何?こっわぁ…アヤカちゃん、急にどったの?アタシ、なんかイケナイ事した?」
「…おい、鈴木。お前はしばらく大人しくしててくれないか?みんな、精神的に参ってんだよ。」
「ふぅん。なんかあったのね〜。ご愁傷様〜。じゃあアタシはタピオカ飲んで静かにしてるわ。」
「あー、あーちゃんもタピオカ飲むー!!」
二人は厨房に行った。
「…なんなのアイツ。」
「無神経にも程があるっスよね…」
「あ、あの…皆さん、お花の事なら、心配なさらないでください。私が新しいものを用意しますから…」
「悪いな床前。せっかく用意してくれたのに。」
「そんな、菊池さんが謝る事じゃないです…」
「おまたセント・バーナード!!」
「ごめんなさいね。お話の途中に抜け出しちゃって。我慢できなかったのよ。」
しろよ。
二人がタピオカミルクティーを持って戻ってきた。
「じゃあ、そろそろ報告会とやらを始めましょうよ。あー、タピオカおいしい♡」
「…なんでお前が仕切ってんだ。」
「じゃあまずはサトシちゃん、何があったのか教えてくれる?」
「聞けよ。」
「…更衣室は、しおりをかざして開けるシステムだった。もし女子が男子の、男子が女子の更衣室に入ろうとしたら、ガトリングガンで蜂の巣にされるそうだ。」
「ぬぁあああああ!?では、吾輩達男子は、女子更衣室に入れないと言う事でありますか!?そんな殺生な!!」
「…当たり前でしょ。逆に、そのルールが無かったら入ろうとしてたわけ?」
猫西が呆れながら言った。
「あと、更衣室の中には、トレーニング器具とモノハムのグラビアアイドルのポスターがあった。」
「…あら、そちらは教頭のポスターだったのですか?」
女子更衣室の探索をしていた速瀬が聞いた。
「そちらは、って事は、女子更衣室の方は違ったのか?」
「はい。学園長の顔を貼り付けた男性アイドルユニットのポスターが貼られていました。」
「モノクマ学園長のアイドルユニット写真なんて、誰得なんスかね…」
「それな!!クマちゃんがアイドルとか、ムリムリ!」
「学園長と教頭って、さっきのぬいぐるみの事?」
「そうだ。クマの方がモノクマ、希望ヶ峰の学園長らしくて、ハムスターの方がモノハム、教頭だそうだ。」
「…ふーん。」
「…おや、貴方は、希望ヶ峰学園の生徒だったんですよね?なぜ、学園長先生と教頭先生の事を知らなかったのですか?」
「いや、アタシが通ってた時は、あんなぬいぐるみじゃなかった気が…」
「フッ、まあ、アイツらが本当に希望ヶ峰の教員であるかどうか自体怪しいがな。」
「だよね。嘘ついてるかも…」
「ちょっとちょっと、変な方向に話を持ってかないでよ!混乱するじゃないの!とりあえず、今はクマちゃんが学園長、ハムちゃんが教頭を名乗ってるって事はわかったわ。」
…お前が言い出したんだろ。
「話を元に戻すけど、アタシは男子更衣室のロッカーに閉じ込められてたらしいの。それで、サトシちゃんに助けてもらったってわけ。」
「身長2mのオカマがロッカーに入ってたとか、ある意味ホラーだよね。」
「あーちゃん、ちょっと黙りなさい?」
「はーい!」
「じゃあ、次は森万。報告してくれ。」
「フッ、いいだろう。プールの方は、ウォータースライダーとか波の出るプールとか、色んな種類があったな。」
「後は、水の量を調節する操作室があったくらいですかね…」
「…カークランド先輩、操作室の機械いじりすぎっスよ。出禁にするっスよ?」
「…申し訳ございません。一度やってみたかったもので…」
「子供か!!」
「なるほどね…じゃあ次は、私が話すね。水族館には、色んな種類のお魚がいたよ。真ん中に巨大なサメの水槽があったね。」
「おいしそうだった!!」
「…ふわぁ。」
「なるほどな。じゃあ、次は俺の番か?スポーツセンターには、色んなスポーツができる設備があったぞ。」
「ぐぬぬ…なぜ吾輩が、敵と一緒に好きでもないスポーツセンターの探索などせねばならなかったのか…」
「あはは…日頃の行いのせいじゃないかな?」
「こ、猫西氏…!!」
「おい、神城。次はお前だろ?報告しろ。」
「私に命令するな!!」
「…はあ、私が言う。色んなジャンルの本があった。以上。」
「え、ええと…特に怪しい所とかは無かったですかね…」
「ふぅん。…ねえ、ところで、さっきからずっと気になってたんだけど…」
「なんでゴンゾウちゃんとナツミちゃんとリオンちゃんがいないの?」
「…!」
「さっきから姿を見ないんだけど…探しに行った方がいいんじゃない?」
「…。」
「…あら?みんなどうしたの?アタシ、なんか変な事言った?」
「…だよ。」
「え?何、カツトシちゃん?ちゃんと聞こえるように言って?」
「…死んだよ。…モノクマ達のクソみたいなゲームに巻き込まれてな。」
「え?死んだ?ゲーム?何それどゆこと?これ、合宿じゃないの?ちょっと待って、頭がついてきてないんだけど…」
鈴木は、目を見開いて全員の顔を見た。
「…誰かを殺したクロだけがここから脱出できるが、クロだってバレたら処刑される…そういうゲームだ。」
「ん?じゃあ、ここにいない子達は、全員殺されたって事?ねえ、誰かわかりやすく説明してくれる?」
鈴木は混乱した素振りを見せるが、明らかに声が落ち着いているし、驚き方が嘘臭い。
…コイツ、わざとやってるのか。
「えーっとね、リオンにいは、ナツねえに殺されそうになったからハンゲキして殺しちゃって、おしおきされたの!お兄ちゃんは、クマちゃんに逆らったから、おしおきされちゃったんだよねー!」
…今に始まった事じゃないが、クソガキのテンションの高さには腹立つな…
「…ふぅん。じゃあ、クマちゃんには逆らわない方がいいし、極力人も殺さない方がいいって事?ガッテン承知の助〜♡」
…仲間が死んだと聞かされたのに、なんだコイツの反応の薄さは…
「極力っていうか、絶対だよ!二度とあんなゲーム、行われちゃいけないんだ!」
「…はーい。気をつけるわねぇ。」
鈴木は、みんなから向けられる不満をのらりくらりと躱しながら、口に含んだタピオカをモキュモキュと噛む。
「じゃあ、これで解散って事でいいのかな?」
「そうだな。」
俺たちは解散し、自由時間となった。
…メダル何枚か持ってるし、売店行くか。
ー売店ー
メダルをマシーンに入れて、ガチャを引いた。
…グロテスクな色合いのマニキュアと、飛行機のおもちゃと、木製の家形の時計と、リンゴの形をしたタイマーが出てきた。
誰にプレゼントしようか?
「ねえ、サ、ト、シ、ちゃん!」
後ろから鈴木が話しかけてきた。
「うおっ、ビックリしたぁ。」
「んもう!そこまで驚く事ないじゃない!プンプン!!」
「いや、お前…そのガタイの良さでその言動は、もはやホラーだぞ…」
「酷ーい!!ちょっとでも可愛くなろうと思って、お肌のお手入れと筋トレ毎日やってるのに!」
…絶対それのせいだろ。
オシャレするか鍛えるかどっちかにしろよ…
「ねえ、一緒にお話しない?」
「…生憎その気分じゃない。」
「えぇ〜!?アタシ、サトシちゃんとお話しないと寂しくて死んじゃうんだけど!!」
うさぎかよ。
…ん?なんかデジャヴだな。
「ねえ、いいでしょ?オネエのお、ね、が、い☆」
鈴木は身体をくねらせ、軽く握った両方の拳を顎の下に当て、アヒル口でウインクをした。
気色悪い。せっかくの端麗な顔が台無しだ。
もうすぐ二十歳になる男がしていい仕草じゃない。
「…部屋に戻っていいか?」
「ちょっと!何よそれ!んもう、サトシちゃんのバカぁ!!」
バチン!!
…え?
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
左頬に、バズーカで撃たれたような衝撃が走った。
次の瞬間、俺の身体は空中に浮き、十数メートル離れた所に着地した。
「ぐほぁ!!」
「きゃああああ!!どうしよう…やりすぎちゃった!んもう、アタシのバカバカバカぁ!!いっつもこうなっちゃうから今度こそ気をつけてたのにぃ!!ごめーん、サトシちゃん大丈夫!?」
「…う。」
なんとか生きてた。
顔中が痛い。
これ、下顎骨粉砕骨折しててもおかしくないんじゃないか…?
クソッ…なんて事してくれてんだこの筋肉オバケが…一瞬三途の川見えたじゃねえか。
…まあでも、なんとかこの世に踏みとどまったのは何よりだ。
死因がオネエのビンタだなんて、死んでも御免だからな。
「診療所行く?アタシ、連れてってあげよっか。」
正直コイツに連れてって貰うのは屈辱だが…この重体じゃ、そんな贅沢言ってられなさそうだ。
結局、診療所には鈴木に連れてって貰う事になった。
ー診療所ー
「あぁ?んだよ、モブにオカマじゃねえか。プッ、なんでオカマがモブをお姫様抱っこしてんだよ。ウケるんですけどwww」
「クレハちゃん!急患よ!」
「どうしても私に治療して貰いたかったら、跪け!!この私に媚びろ!!」
「クレハちゃん、サトシちゃんが、大変な事に…すぐに手当てしてほしいの!」
「…あの。」
「貴様がここに連れて来たと言う事は、貴様のせいでこうなったのか?」
「そうよ…こんなつもりじゃなかったんだけど…」
「なんだ?励みすぎてケツの穴ブッ壊れたか?ハッ、お遊びも大概にするんだな。」
「…えっと、」
「そんなジョーク言ってる場合じゃないでしょ!早く手当てしなさいよ!」
「なんだテメェ!私に口答えする気かよ!?」
「…すいません、話を聞いてください…」
「つべこべ言わずに手当てしろって言ってんの!アンタ、それでも医者なの!?」
「…う。」
どうやら、鈴木に運んで貰っている最中に気を失っていたらしい。
俺は、朧に翳む視界の中に、うっすらと映った奴の名前を呟いた。
「…と、こま…え…」
意識がそこで途切れた。
「菊池さん…!」
「んもう!サトシちゃんたら、ナギサちゃんと間違えて…アタシだってば!…全く、なんでナギサちゃんとアタシを間違えるのか…ん!?」
「は!?」
「え!?ナギサちゃんいつからいたの!?ゴメン!!気づかなかった!」
「おい地味!いたならいたって言え!!」
「…すみません、さっきからずっと呼んでたんですけど…気づいてもらえなくて…」
「ゴメーン!!アタシ達、ずっと無視しちゃってた!?…もしかして、なんか言いたい事とかあったりした?」
「えっと…何か手伝える事ないかなって思って…」
「あら、そうなの?じゃあ、一緒にサトシちゃんの手当てしましょっか。クレハちゃんは手当てしてくれないみたいだからね〜。」
「は、はい…」
「は!?え、ちょ、ちょっと待て!!私の仕事奪んなよ!!」
「…結局手当てしてくれる気あるのか無いのかどっちなのよ。」
ー30分後ー
「…う。」
俺は、再び目を覚ました。
白く無機質な天井が、視界を埋め尽くす。
見たところ、ここは診療所らしい。
「あら!サトシちゃ〜ん!目を覚ましたのね!嬉しいわぁ♡さっきはホントごめんね〜」
「菊池さん…よかったです…!」
「…ああ、鈴木、床前…世話になっちまったな。」
「ちょっと!私への感謝を忘れてんぞ!!」
…神城が治療してくれたのか。コイツにも感謝しないとな…
「…ああ、ありがとう。」
「ふははは!!もっと褒め称えたっていいんだぞ!!」
体調が回復してきたので、鈴木の話を聞くことにした。
「なあ、鈴木…さっき、話があるって言ってたよな。ここで話さないか?」
「え?アタシの話を聞いてくれる気になったの?…てっきり、さっきので嫌われたと思ってたのに…うふふ、嬉しいわぁ♡」
これ以上下手な発言したら殺されるからだよ。この筋肉おばけ。
「…まあ、お前の事を知っておかなきゃって思ってな。お前に渡したい物もあるしな。」
「え?渡したいもの!?なになに!?…もしかして、サトシちゃんの…ジュ・ン・ケ・ツ?うふふっ♡」
「黙れ。」
「酷いわぁ。冗談じゃないのよぉ。」
「…お前なら、こういうの気にいるんじゃないかと思ってな。…これ、やるよ。」
鈴木にマニキュアを渡した。
「え!?これをアタシに?…ホントにいいの?」
「…まあ、俺が持ってても使わないしな。」
「ありがと♡」
鈴木は、爽やかな笑みを浮かべた。
…コイツ、やっぱり素材は良いんだな。
大人しくしとけば、間違いなく一流モデルかそれ以上のルックスなんだが。
「なあ、鈴木。」
「なあに、サトシちゃん?」
「お前、もしかして高校時代も同じ才能だったのか?」
「んー…高校時代も、っていうか…アタシ、高校にいた時は『超高校級のオネエ』って呼ばれてたから、そのノリで『超大学生級』って名乗ってるだけよ。まあ、言っちゃえば自称ね、自称。」
「なんで『超高校級のオネエ』に?」
「んー…期待させちゃって申し訳ないけど、特に理由とか無いわねぇ。ただオシャレしたり、雑誌のインタビュー受けたり、女友達とお喋りしてただけなんだけど…気がついたら『超高校級のオネエ』として希望ヶ峰にスカウトされてたわね。…やっぱり、この年代のオネエ自体がマイノリティだから、それで選ばれたっていうのが大きいのかしらね〜。」
…なんだそれ。なんかズルいな…。
「あ。今、なんかズルいなって思ったでしょ。」
ギクッ
「甘いわ!これでもね、毎日オシャレに気を遣ってるのよ!!それなのにアンタ達ときたら、なんでもかんでも『オカマ』って一括りにして…オネエナメんじゃないわよ!!」
…なんか知らんが急にキレられた。
「悪かったって…じゃあ、ここに連れて来られるまでの経緯とか覚えてるか?」
「えー?アタシ覚えてないわ〜。」
「俺たちの事を知ってるらしいが、いつから知ってたんだ?」
「言わなきゃわかんないかしらー?」
コイツ…
…俺は、鈴木に少し気になる事を聞いてみた。
俺たちの事を以前から知っていたなら、もしかしたら知っているかもしれない。
「…なあ、唐突な質問で悪いんだが。」
「なあに?」
「エカイラって知ってるか?」
「…さあ?」
「知らないのか?」
「ええ。知らないわ。何それ?」
「…そうか。知らないなら、別に。」
「あら。そう。」
…やはり、知らないか。
もしかしたら、って思ったんだがな。
「どうしたのサトシちゃん?」
「ああ、いや。…そうだ、お前ここから出たらやりたい事とかあるのか?」
「あら。それ、死亡フラグじゃナイ?…まあいいわ。…そうねえ。特に考えてなかったけど…サトシちゃんのお嫁さんになっちゃおうかしら?うふふ♡」
「それだけは本当にやめてくれ。俺にそっち系の趣味は無い。」
「つれないわねぇ。…今のは冗談よ。…本当は、ここから出たらやりたい事、ちゃんとあるのよ?」
「それを先に言えよ。…何だ?やりたい事って。」
「…家族と一緒に暮らしてみたい。」
「家族と…?どういう事だ?」
「…アタシ、物心ついた時から、親がいなかったの。唯一の肉親の妹も、アタシが兄貴だって知らないし…だから、ここから出たら、家族というものがどんなものなのか、知ってみたいわ。」
「…そうか。会えるといいな。」
「うふふ、ありがと♡…他にご質問は?」
「そうだな…じゃあ、趣味とか特技とかあるか?」
「そうねえ…アタシ、お料理得意なのよ。」
「へえ…得意料理とかあるのか?」
「うーん…グリーンカレーとか、ニシンのパイとか…あとは、パクチーのパスタとかかしら?」
…なんでちょっとマニアックな所狙ってくんだよ。
「他にご質問は?」
「えっと…好きな物とかあったりするか?」
「それはもちろん、サ、ト、シ、ちゃ「ふざけるな。」
「ちょっとぉ!まだ言い終わってないじゃないの!冗談でしょ冗談!」
「お前は冗談が多すぎるんだよ。」
「わかったわかった、真面目に答えるわよぉ!コスメよコスメ!」
「…へえ、なるほどな。…話してくれてありがとな。」
「どういたしまして♡またお話したくなったら、いつでも呼んでね♡」
鈴木は、投げキッスをした。
…やめてくれ。傷に響く。
《鈴木咲良の好感度が上がった》
ちょうど昼食の時間になったので、レストランに向かった。
レストランには、すでにみんな集まっていた。
「先輩、遅かったっスね…って!?なんスかそのケガ!!」
「菊池君大丈夫!?」
「ああ、これはちょっと…」
「うっわ!!何そのケガ!!サトにいロケットランチャーでも喰らった?」
「バズーカかも知れませんよ。」
「あーちゃん!ジェイムズちゃん!酷い言い様だわ!!アタシがサトシちゃんにビンタする時、つい力加減間違えちゃったのよ!」
「…え゛。じゃあこれ、鈴木先輩が引っ叩いてできたんスか?どう見てもビンタのケガじゃないっスけど!?」
「…そういう事だ。コイツ、俺を殺そうとしやがった。」
「…あはは、鈴木さんには失礼な態度とらない方がいいね…」
俺たちは、席に座って昼食をとった。
…鈴木は、反省せずに近藤の席に座っている。
「ん〜、おいしい。これ、誰が作ったの?」
「私です。お口に合いましたでしょうか。」
「フブキちゃんが作ったの?道理でおいしいわけだ。」
「じゃあこっちは?」
「私です。」
「アヤカちゃんもお料理得意なのね〜。…これは?」
「私です。どうですか、お味は。」
「おいしいわ!さすがジェイムズちゃん!…でも、こうした方がもっと美味しいんじゃないかしら?」
鈴木は、料理に思いっきり練乳をぶっかけて混ぜ始めた。
「ふ〜んふ〜ん。こうすると、甘みが出てまろやかになるのよね〜。」
「ちょ、ちょちょちょ!!何やってんの!?さくらちゃん、ベロがバカなの!?」
「あら。おいしいのに。みんなもどう?」
「…え、遠慮しときます。」
「面白そうですね!その発想は無かったです!」
ジェイムズが、鈴木のマネをし出した。
…マジかよ、コイツ。
自分の料理を台無しにされた虚しさとかは無いのかよ。
「…あ、すごく美味しいです!皆さんもどうですか?ほら。」
「そんなゲテモノ食えるか!!」
「そうですか?美味しいのに。」
…意外な発見だったな。
俺は怖くて試せないけど…
食事の後は、自由時間となった。
…まだプレゼントも残ってるし…誰かと話そうかな?
廊下を歩いていると、近藤の部屋が視界に映った。
「…あ。」
ドアの前に立った。
「…開いてる。」
躊躇いながらも、俺は近藤の部屋に入った。
『超高校級のパティシエ』の個室
部屋の中は、5日前に入った時とさほど変わらない様子だった。
…パステルカラーで、明るい雰囲気の部屋のはずなのに、何故か仄暗い。
…そうか。もう、近藤はここに居ないんだった。
あの無邪気な笑顔が、笑い声が、今はもう戻らないものとなってしまった。
…ここから出たらパーティーに誘ってくれるって、約束してたのにな。
「…ごめんな。約束、守れなくなっちまったな。…安らかに眠れよ。」
俺はタイマーを置いて、部屋を出ようと振り返った。
すると、ドアに貼られた紙に気が付いた。
『この部屋は、そのままの状態にして残してあります。必要な資材などがあれば、ご自由に持ち出してください。ただし、しおりと凶器は回収させていただきました。それでは、絶望的なコロシアイライフを。』
…ナメやがって。
俺は、部屋を出てドアを勢いよく閉めた。
どこまで人をバカにすれば気が済むんだ。
ー談話室ー
フロントの横の談話室に行ってみると、不思議トリオ、森万、速瀬、鈴木の計6人が何かやっていた。
「…こうですか?」
「フン、カークランドよ。なかなか筋が良いな。流石は我が弟子だ。」
「本当ですか!?」
「おぉ…すげー!!これがイリュージョンか!!」
「なかなか面白いじゃないの。」
「…私も暇では無いのですが。」
「…ねむ…」
「お前ら、何やってんだ?」
「フッ、菊池よ。いい所に来た。実はな、今超能力講座をやっているところなんだ。貴様も参加してみるといい。」
「…え、遠慮しとこうかな。速瀬、リタ。お前らまでなんでここに?」
「…昼食の食器を片付けていたら、アリス様に此処へ連れて来られまして。…帰るのも無作法だと思いましたので、不本意ながら授業を見学しております。」
不本意って…昼食が終わってから3時間は経ってるぞ?
…速瀬、お前…律儀にも程があんだろ。
「ふわぁ。僕はジェイムズに連れて来られましたぁ。」
リタの方は、眠そうにはしているが、満更でもなさそうだった。
「あ!そうだ!!ツラにい、あれやってよ!!雷斬るやつ!!」
「…え。」
「ああ、戸次鑑連の雷切の逸話ですね。私も見てみたいです。森万さん、お願いできますか?」
「え…、いやあれ、超能力とかそういうんじゃないし…大体、雷なんて斬れるわけ…あ、そうだ!フッ、ふははははは!!残念だったな!!ここの天気は、一週間後まで快晴だ!!雷など落ちん!!」
「…宜しければ落としてみましょうか?」
「…え゛?」
「あら。そんな事できるの?」
「ええ、まあ。一度、大学の講義用に人工雷発生装置を作った事があったので。これで、サイキックショーができますね!」
「え…でも、なんか悪いし…」
「全然そんな事ありませんよ!寧ろ、森万さんの超能力を見られるなら、装置なんて喜んで作りますよ!」
「…嘘だろ?」
「あら。ツラノリちゃん、もしかしてできないの?」
「…は!?で、できないわけないだろう!!俺様を誰だと思っている!!今世紀最大の超能力者、森万羅象様だぞ!!おいアリス、日本刀を貸せ!!雷だろうがなんだろうが斬ってやる!!」
「わーい!!」
「流石です、森万さん!」
「ふわぁ…僕は眠いんで、君達で勝手にやっててくださぁい…(うずうず」
「はぁ…万が一の時のために駆け付けて頂けるよう、神城様にお願いして参ります。」
…もうカオスじゃねえか。
死人出さないように気を付けろよ。
こんなのが死因なんて、洒落になんないからな。
ーレストランー
レストランには、織田と猫西がいた。
「猫西氏!!『窓マギ』の新作ゲームは、もうプレイ済みでありますか!?」
「まあね。でも私、ガチャ運無くてさ…クリアするのに、ほとんど他のプレイヤーさんに頼っちゃったよ。」
「猫西氏の心中、お察しするであります。1日目のガチャでおパンティーを引いた時は…」
「5日も前の事蒸し返さないでよ!!あれはもう無かった事になったでしょ!?…ったく。」
「ところで猫西氏、喉が乾きませんか?吾輩が、何か飲み物を用意しますぞ。」
「本当に?ありがとう。…じゃあ、ミルクティーでも淹れて貰おうかな?」
「了解であります!!この織田兼太郎、猫西氏のために、命懸けて極上のミルクティーを淹れて参りますぞ!!」
「いや、命懸けなくていいから…」
織田が厨房へと走る。
…もしかして、織田は猫西の事が好きなのか?
猫西の方も満更でもなさそうだし…
おいおい、ここに来て早速カップル誕生か!?
それも、よりによって一番無いと思ってた織田が!?
チクショウ!俺だって彼女欲しいよ!
「あっ。」
猫西と目が合った。
…なんだアイツ。急に顔真っ赤にして目を逸らしたぞ。
俺の顔になんか付いてたのか?
ー図書館ー
図書館には、床前と小川がいた。
「床前先輩は、菊池先輩の事どう思ってるっスか?」
「え、ど…どう思ってるって?」
「好きなのかって事っスよ!」
「ふぇえ!?…そ、そんなんじゃありません!…き、菊池さんは…皆さんと同じ、大事なお友達…です!」
「分かりやすいっスね。…あ、噂をすれば本人が来たっスよ。それじゃ、自分は隠れてるんで、あとは頑張ってくださいよ。」
「えぇえ!?ちょ、ちょっと!小川さん!」
「…お前ら、何の話してたんだ?」
「き、菊池さん!?…え、ええと…その…」
「?」
床前は、何か言いづらそうな様子だった。
…よく見たら、小川が陰でニヤニヤ見てるし。
なんなんだ一体。
「…あ、そうだ!この本読みませんか!?私のお気に入りなんですけど…」
床前は、持っていた本を俺に押し付けると、一目散に図書館から逃げ出した。
おい小川、お前はなんで舌打ちしてんだ。
ースポーツセンターー
スポーツセンターには、玉木と神城と射場山がいた。
「お前ら、何やってんだ?」
「おう、菊池か。いや、ここ数日間ずっと運動してなかったから、身体が鈍っちまってな。ここで軽く動いてたんだよ。」
「…ん。」
二人は、キャッチボールをしているようだった。
「ったく、なんで私がこんな事しなきゃいけねえんだ。ケガするかもしんねぇから見てろだと?ハッ、テメェらのケガなんて知った事かよ。」
神城は、舌打ちをしながらベンチにふんぞり返って座っている。
「菊池、お前もやるか?」
「いいのか?」
「…ん。三人になっても、別に。」
「そうだな…俺も最近運動不足だし、混ぜてくれ。」
「おう!」
こうして、三人でキャッチボールをする事になった。
ー30分後ー
「あべしっ!!」
ボールが顔に直撃する。
「…嘘でしょ。なんで今ので当たるの?」
「はっはははははは!!おいモブ!無様だな!!あはははは!!」
「…わ、悪い…ちょっと、疲れてきちまってな。」
「バテんの早すぎだろ。お前、ホントに運動不足なんだな。」
「…う。」
「そろそろ飯の時間だ。レストラン行くぞ。」
「私に命令すんじゃねぇ!!」
「…はあ。」
今日はどっと疲れた。
夕食が終わった後、俺はすぐにベッドに行った。
…合宿生活も、明日で1週間か。