ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第2章(非)日常編③

合宿7日目の朝。

今日も、モノハムの不快な声がホテル全体に鳴り響く。

…うるさい。少しは静かにできないのか。

廊下を彷徨いていると、後ろからアイツが話しかけてきた。

「サ、ト、シ、ちゃんっ!」

「うぉあっ!?」

「もう!いい加減慣れなさいよ!!」

「…どうした?」

「ねえ、サトシちゃんどうせ暇でしょ?今日の朝ごはんは、二人で作らない?まだみんな起きてないみたいだし。」

「…え。でも、俺は料理は…」

「いいから!二人でおいしい朝ごはん作りましょうよぉ!アタシが手取り足取り教えてあげるから!」

「…はあ。」

俺と鈴木は、レストランに向かった。

 

 

ーレストランー

 

「さてと、じゃあ早速お料理しましょうか。やっぱり、朝はパンケーキで糖分摂らなきゃね〜。あ、パンケーキくらいなら作れるわよね?粉混ぜて焼くだけだし。」

鈴木はそう言うとエプロンをつけて、手を洗って手拭いで拭いた。

…近藤にやったエプロンと、郷間にやった手拭いだった。

「おい、お前…それ…」

「ああ、これ?空き部屋入ったら置いてあったのよ。気に入っちゃったからネコババしちゃった♡」

「…。」

…ふざけるな。

それは、近藤と郷間にやったプレゼントだ。

間違っても、お前が持っていていい物じゃない。

俺は、怒りを隠し切れなかった。

「えぇ!?ちょっと、なんで怒ってんの!?アタシ、なんかサトシちゃんを怒らせるような事した!?」

「…空き部屋に置いてあったからって、盗むのは良くないと思う。」

「えー。だってぇ。貼り紙に、ご自由に持っていってくださいって書いてあったもん!ほら、そんなに怒った顔してると、パンケーキがまずくなっちゃうわよ!お料理ってね、その時のコンディションがすぐに味に出ちゃうんだから!」

鈴木は、両手で無理矢理俺の口角を上げた。

「さっ、そうと決まれば咲良ちゃんのお手軽クッキングのお時間よ♡サトシちゃんは初心者だから、アタシが教えてあげるわ。まず、薄力粉とお砂糖とベーキングパウダーを、よく混ぜて…って!なんで混ぜるだけでそんな全身真っ白になんのよ!!あと、牛乳と粉類の混ぜる順番が逆!!」

「…悪い。間違えた。」

「んもう!最後まで聞いてからやりなさいよ!」

「…わかった。」

「粉類全部混ぜた?じゃあ、次は牛乳と卵とサラダ油入れて、ダマにならないようによく混ぜて。」

「こうか?」

「ちょっとちょっと!!なんで混ぜるだけで袖が生地まみれになるわけ!?あと、グチャグチャ混ぜすぎ!それじゃあ、焼いた時にうまく膨らまないわよ!もっと、切るように混ぜなさいよ!」

「切るようにって…どうやるんだ?」

「あーっ、もう!ちょっと貸しなさい。こうやるのよ。」

鈴木は、プロのような手つきでボウルの中身をサクサクと混ぜる。

粉が、粘りすぎず均等に混ざる。

「簡単でしょ?やってみて。」

「…ああ。ちゃんと見てたから俺でもできるぞ。」

グッチャグッチャベッチャベッチャ

ボタボタボタボタ

「ちょっと!口では得意げに言ってる割にはできてないじゃないの!!中身こぼしすぎ!ああ、もう!あとはアタシがやっとくから、出来上がった生地を焼いてみて頂戴!」

鈴木がボウルを取り上げた。

…俺、そんなに下手だったか?

「じゃあ、弱火でフライパン温めて、温まったら軽く油ひいて、生地をおたまで流し込んで頂戴。ひっくり返すタイミングは、アタシが言うわ。」

「なんだ、それくらいだったら俺にもできるな。」

ジュウウウウ…

「ちょっとぉ!!アタシ、弱火でって言ったわよね!?なんで思いっきり強火で焼いてんの!?」

「えっ嘘!?」

「バカなの!?ああもう、焦げちゃってるじゃないの!!しかも、生地入れすぎ!!これじゃあひっくり返せないじゃないのよ!!」

「矢継ぎ早にケチつけんな!!さっきから文句ばっかで…わがままかよお前!」

「わ、わがまま!?勝手に我流で進めちゃうサトシちゃんに言われたくないわよ!」

「んだと…このオカマ野郎!!」

「言ったわねこのもやし野郎!!」

 

バンッ

 

厨房の入り口から、思いっきり壁を叩く音が聞こえた。

振り返ると、射場山がいた。

「…うっさい。」

射場山は、ドス黒いオーラを放ちながら、鬼のような形相で俺たちを睨んだ。

「…はい、すんません。」

「菊池。あんた、食べ物無駄にしすぎ。これ以上は見てらんないから厨房から出てって。」

「…はい。」

「…鈴木。あとは菊池の代わりに私がやる。」

「そ、そうね…それがいいかもね…」

俺も鈴木も、射場山の剣幕に気圧されていた。

俺は厨房から追い出され、二人は黙々とパンケーキ作りを始めた。

俺は手持ち無沙汰になったので、とりあえず粉まみれになったトレーナーを着替えに部屋に戻った。

俺がレストランに戻った時には、人数分のパンケーキが完成していた。

「わーい!!いい匂い〜♡今日は、もしかしてパンケーキ!?」

「そうよぉ。主にアタシとユミちゃんで作ったの。まあ、数枚誰かさんがダークマターにしちゃったけどね〜。」

鈴木が、俺を見ながら言う。

「おい、お前ら俺が作ったやつも食えよ。頑張って作ったんだから。」

「やだ!!こんな漆黒のパンケーキ食べたら、あーちゃん体が真っ二つになって時が止まっちゃうんですけど!?」

「わざわざブラックホールに喩えるとか、性格悪いなお前。」

「…悪い、菊池。親友としてすげぇ言いにくいんだけど…俺は遠慮しとくわ。」

「た、玉木!?」

「じ、自分も遠慮しとくっス…」

「ふわぁ。僕も食べたくないですぅ。」

「吾輩も遠慮させていただくであります。」

「フン、見ているだけで吐きそうだ。」

「誰が食うかこんな産業廃棄物!!」

「そんなに言う程か!?」

「あ、私は食べてみたいかな。」

「わ、私も…」

「本当か!?そう言ってくれるのはお前らだけだよ!ほら、どんどん食え!」

「アヤカちゃん、ナギサちゃん!わざわざこんなメシマズ男を甘やかさなくていいのよ!それで死んじゃったら洒落になんないでしょ!」

結局、俺のパンケーキを食べてくれたのは、猫西、床前、ジェイムズ、速瀬の4人だけだった。

「…(この前食べたお饅頭よりは)美味しいですよ。」

「カークランド先輩、何スかその不自然な間は。」

「…フブキちゃん、よくこんなブラックホール食べれるわね。」

料理に練乳ぶっかける奴に言われたくない。

「『食え』とのご命令を承りましたので。」

「いや、そんなに律儀に守んなくていいのよ?自分の健康が第一なんだし。」

みんな、俺のパンケーキを毒か何かみたいに言いやがって。

確かに多少焦がしちまったけど、そんなにまずいわけ…

 

…。

…。

…。

…みんなゴメン。俺、料理の腕上げとくわ。

 

朝食の後は、自由時間となった。

俺は、郷間の部屋に行った。

 

 

ー『超高校級の庭師』の個室ー

 

部屋は、この前入った時とほとんど変わらない様子だった。

「…あ。」

机の上を見てみると、作りかけの小さな家があった。

…そういえば、小人用の家作るって言ってたっけ。

コイツ…本当に作ってたんだな。

俺は、溢れ出る涙を拭って、時計を机に置いた。

「…ごめんな。お前は勇気を出してみんなを解放してくれようとしてたのに、俺は勇気が出なかった。…安らかに眠れよ。」

部屋を出ようとした時、棚の隅に花瓶が置いてあるのに気がついた。

…あの花の生け方…床前が置いていったのか。

アイツ、三人が死んだ時、誰よりも悲しんでたからな。

それでも、アイツは立ち直ろうとしていた。

…それに比べて、俺は弱い人間だ。

何が『超高校級の弁護士』だ。仲間一人護れず、いつまでも一人で引きずってる癖に。

俺も、アイツみたいに、強くならないといけないんだ。

俺は、決意を固めた。

 

 

ーフロントー

 

ロビーのフロントに行くと、何人かが集まっていた。

玉木と、速瀬と、射場山と、鈴木だった。

「どうした?」

「…これ見ろよ。さっき置かれたらしいんだが。」

玉木が指を差した先には…

 

3人のしおりと、金属バットと工具セットと菌の培養キットが置かれていた。

その横には、血文字で『ご自由にお使いください』と書かれた札が置いてあった。

「…なんだこれ。」

「…見ての通り。」

「いや、そういう事聞いてるんじゃなくて。」

「亡くなられた方のしおりと凶器ですね。…そういえば、貼り紙に『しおりと凶器は回収した』と書かれておりましたね。恐らく、ここから自由に持って行って使え、という事なのでは?」

「ふぅん、なるほどねぇ。」

「ナメやがって、また俺たちに殺し合いをさせる気か!クソッ!!」

…ここに凶器があるのか。

もし、誰かがここから凶器を持ち出したりなんて考えると、不快な冷たい空気が背中の側を流れた。

…もう二度と、モノクマ達にあんなゲームをさせちゃいけないんだ。

 

 

ーモノクマーメン遺跡ー

 

心の整理をするためにも、俺は遺跡に向かった。

重い足取りで最奥の部屋へ向かい、重い扉を開ける。

 

「…あれ?…死体が、無い…?」

そこには、近藤と郷間の死体どころか、血の一滴も落ちていなかった。

「どういう事だ…?誰かが片付けたのか…?」

『ズバリその通ーり!!』

今度は、正面からモノクマが現れた。

「うおぁあっ!!?」

『ちょっと!ビビりすぎ!!オマエが背後から現れんのやめろって言うから、わざわざ正面から出てきてやったのにさ!』

「それはそれで慣れてないからビックリしたんだよ!」

『はぁ!?ワガママだなオマエ!!』

「うるせえな!…はあ、それで?ここの掃除はお前がやったのか?」

『その通り!だってさ、いつまでもこんな所に死体なんか置いといたら、気持ち悪いでしょ?と言うわけで、処分させていただきました!』

「…その死体は、一体どうしたんだ?」

『うぷぷ…回収した後、焼却炉にブチ込んで発電機の燃料にしちゃったよ。』

「んなっ…!」

『近藤サンも郷間クンも本望だったんじゃないの?お仲間が生きるための糧になれてさ!』

「ッ、お前…!」

『ねえねえ、今どんな気持ち?お仲間を燃やして作った電気で生活してる気分は?』

どこまで悪趣味な野郎だ。

人の死をバカにしやがって。

俺は両手を固く握りしめた。

「…お前、覚えとけよ。」

『ほぇ?』

「ここから出たら、絶対ブッ潰してやる。」

『うぷぷ…できるといいね!その前に、誰かに殺されちゃわなきゃいいけど。』

モノクマは、左目を赤く光らせながら不気味な笑みを浮かべた。

『じゃ、引き続き、みんなで仲良く楽しい合宿生活を送ってね〜!』

モノクマは、陽気に去っていった。

「クソッ、舐めやがって…」

部屋から出ようとした時、花束とジュースの缶が置かれているのに気が付いた。

「…あ。」

花とジュースの缶が、1ミリのズレもなくきっちり左右対称に置かれている。

この置き方は、床前じゃないな…

そこへ、俺が想像した人物が、花束とジュースを持って現れた。

 

「…速瀬。」

「…菊池様も、ここにいらっしゃいましたか。」

「なあ、これ…速瀬が?」

「…ええ。」

速瀬は俯いて、次の言葉を発した。

「…私は感情表現が苦手ですので、このような場合、どのような顔をすれば良いのか理解出来ません。ですが私自身、お三方が亡くなられた事は、大変気の毒に思っております。…私は、人の幸福を共に喜んだり、不幸を共に悲しんだりする事が出来ません。…皆様が、当たり前のようになさっている事なのに。私に感情があれば、皆様のお痛みを理解して差し上げられるのに。…私に出来る事は、こうして毎日お三方へのお供物を用意する事だけでございます。」

「…速瀬、お前は自分が思ってる程薄情なヤツじゃねえよ。」

「…はい?」

予想外の返答だったのか、速瀬は少し驚いた表情を見せた。

「こうやって毎日花とジュースを持ってきたり、みんなのために真剣に悩んだりするヤツが、無感情なわけあるかよ。少なくとも俺は、お前が俺たちの気持ちを理解しようとしてる事も、お前が冷たいヤツじゃないって事も知ってる。だから、お前はそのままでいればいいんだよ。」

「…有り難うございます。」

速瀬は、うっすらと笑みを浮かべていた。

「ほらな、やっぱりちゃんと感情あんじゃねえか。」

「私、今そんなに可笑しな顔をしておりましたか?」

「ニヤニヤしてたぞ。」

「ニヤニヤって…言い方が宜しくないですね。微笑んでいた、の間違いでしょう。」

「ムキになってんじゃねえか。」

「…。」

 

ゾワッ

 

「!!?」

「…どうかなさいましたか?」

「…ああ、いや…ちょっと寒気が…」

「お身体が冷えたのでは?あまり長居も宜しくないでしょう。そろそろ、ホテルに戻りましょう。」

「…そうだな。」

…なんだろう。

今、どこからか視線を感じた。

それも、監視カメラやモノクマ達のものじゃない…

明白な『殺意』を持った誰かの視線だった。

…そんな、俺達の中に、本気で誰かを殺そうとしてる奴がいるって事か…?

一体誰が、何の目的で…

 

 

ーレストランー

 

レストランでは、猫西と織田と鈴木が昼食の準備をしていた。

…今日の昼食はオムライスか。

で?アイツらは一体何やってんだ?

「これで完成っと。」

「猫西氏!!重要なトッピングを忘れておりますぞ!!」

「え?何それ。」

「『萌え』であります!!」

「も、萌え?」

「猫西氏、今は何も言わずにこのネコミミをつけて、手でハートマークを作りながら『おいしくなぁれ』と言ってみてくださいませ!」

「やるわけないでしょそんな恥ずかしい事!」

「あら。アンタ、動画やテレビの前ではアイドルの真似事を平気な顔してやってるじゃない?」

「営業用です!あれはカメラが回ってるから…」

「…カメラなら回っておりますぞ。」

「なんか違う!監視カメラで見られてるからいいって問題じゃない!」

「つべこべ言わずにやりなさいよ。アタシ,アヤカちゃんのかわいい所見てみたいわ。」

「猫西氏のッ!ちょっといい所見てみたいッ!それネコミミネコミミネコミミ!!」

「イッキみたいなコールすんな!!…わかったよ、やればいいんでしょやれば!!」

猫西は、ネコミミをつけてポーズを決める。

「…お、おいしくなぁれ…」

猫西は、羞恥のあまり耳まで真っ赤になっていた。

「ドヒャー!!猫西氏の、恥じらいの『おいしくなぁれ』頂きましたぞ!!」

「キャーかわいい!!アタシ、これをおかずにご飯100杯イケちゃうわ!!」

「あ゛あああああああ!!!はっず!!穴があったら入りたい!!っていうかもう誰か穴掘って!!」

…やめてやれよ。猫西の奴、もうトマトみたいになってんぞ。

まあ、さっきのは可愛かったけど…って!俺は一体何考えてんだ!

 

そんなこんなで、昼食が完成した。

全員がレストランに揃い、席に座った。

「わーい!!今日はオムライスだー!!いっただっきまーす!!」

「おや、中々美味ですね。」

「ムフフ、それもそのはず…今日のオムライスは、ただのオムライスではありませぬぞ!!」

「…ふわぁ。見た所、変わった所はありませんけどぉ?」

「今日のオムライスは、猫西氏の『萌え』入りであります!!」

「も、萌えっスか…?」

「成程…道理で美味しい訳です!」

「うぇすにゃんの萌え入りオムライスおいしい〜!」

「そう言いながら人参とグリンピースを人の皿に避けんのやめろよ…おい鈴木!お前もかよ!!」

「アタシ、人参とグリンピースはどうしても嫌いなのよぉ〜。」

「やめてくれます!?俺だけチキンライスと人参とグリンピースの比率がおかしい事になってるから!!…ったく。」

俺は、オムライスを口に運んだ。

「…お、美味ェな!」

「本当!?…えへへ。」

猫西は、髪の毛をいじりながら照れ臭そうにしていた。

いや、そんなに嬉しいのかよ。

 

全員が、昼食を食べ終わった。

その後は、自由時間となった。

「…さてと。この後はどこに行くかな。」

とりあえず、水族館に行ってみる事にした。

 

 

ー水族館ー

 

水族館には、様々な種類の海の生物が水槽の中に入っていた。

「…デケェ。」

目の前の巨大な水槽には、大きなサメが泳いでいた。

見たところ、ホホジロザメだろうか。

俺が中央の巨大な水槽を見ていると、後ろから森万に話しかけられた。

「フン、貴様がここに来るとはな。」

「びゃっ!!?」

サメを見ている最中に後ろから話しかけられたので、変な声で反応してしまった。

「…驚きすぎだろう。そんなにサメに集中してたのか。」

「わ、悪い…」

「貴様、なぜここへ来た?」

「な、なぜって…ただ、気分転換にでもって思ったんだが…そう言うお前は?」

「フン、いい質問だな。実は今、サイキックショーの準備を進めているのだ。」

「サイキックショー?」

「明日の午後10時に開演予定だ。俺の鮮やかなる超能力に酔いしれるがいい。」

「いや、酔いしれるも何も、行くと決めたわけじゃ…」

森万は、手作りのビラを俺に渡した。

…まさかコイツ、これを全員に配ってるわけじゃないだろうな。

「なあ、森万。お前、これまさか…」

「フッ、そうだ。全員に配っているが?それがどうした。」

嘘だろ!?マメだなお前!!ってかコイツどんだけ暇人なんだよ!!

「森万さ〜ん!!」

奥の通路から、ジェイムズが走ってきた。

…なんでコイツベネチアンマスクつけてんだよ。

「おう、Mr.K。どうした?」

Mr.K?コイツ、ジェイムズにあだ名つけてたのか。

「そろそろ打ち合わせの時間ですよ!持ち場に居ないから探しに来たんです!」

「フッ、それは悪かった。今向かう。先に準備を進めていてくれ。」

D`accordo(了解)!」

なんでイタリア語なんだよ。

ジェイムズは元気良く返事をすると、通路の奥へと走っていった。

…アイツ、何と言うか…賢いバカなんだな。

「なあ、今のは一体…?」

「フッ、アイツは俺の一番弟子だ。俺のショーの助手をしてくれる。」

いつの間にか助手に昇格してるし…なんなんだ一体。

「ついでに、二番弟子のミスAもいるぞ。」

…アリスの事か。何やってるんだアイツ。

「フッ、明日のショーを楽しみにしているがいい。」

「…ああ、わかった。行くよ。」

…ここまで自信満々に言っといて誰も来なかったら、コイツ泣きそうだしな。

行っといてやるか。

 

ゾワッ

 

「!!!」

…まただ。

また、殺気を感じた。

…偶然、じゃないよな。

まさか、俺を殺す気なのか?

俺に生きていられたら困る奴がこの中にいるって事か…?

…いや、考えすぎか。

今のはなかった事にしておこう。

いちいち反応してたら、精神的に疲れるしな。

 

 

 

「…今回の犠牲者は、もう決まったかな?…全ては、あなたのために…」

 

 

 

その後はホテルに戻って、床前に押し付けられた本を読み進めた。

内容は、面白くもつまらなくもない…ありふれた恋愛小説だった。

一冊読み終わる頃、夕食の時間になった。

「…そろそろ行くか。」

 

 

ーレストランー

 

「あら、サトシちゃん!ご飯にする?お風呂にする?それとも、ア、タ、シ?」

「レストランに来てる時点で後者二つは無えだろ。」

「あら。冷たいのね。アタシ泣いちゃうわよ?」

「勝手にしてくれ。」

鈴木がビンタの手を構えだしたので、咄嗟に話題を逸らす。

「今日の夕食はなんだ?」

「…うふふっ、今日はアタシのお手製料理よ♡味わって食べてね♡」

「お前一人で作ったのか?」

「そうよぉ?」

…鈴木が一人で作った飯か。

少し嫌な予感がするな。

俺は、席について目の前の料理を見た。

「…なんだこれは。」

「イチゴとアスパラのサラダよ。」

「…これは?」

「鴨肉のみかんソース煮込み。」

「…これは?」

「ビーツとココナッツのスープ。」

「なんでそういう果敢なメニューばっかり選ぶんだよ!!スイーツ食いにきたわけじゃねえんだぞ!!」

「酷いわ。全部アタシの得意料理なのに。」

「お前なぁ…普通の飯は作れないのかよ。」

「うっさいわね!ブラックホールパンケーキ作った誰かさんに言われたくないわよ!!」

「はあ…ったく。」

まあ、料理に練乳ぶっかけるヤツだからな。最初から信用はしてなかったが。

全員が揃い、席に座った。

「…いただきます。」

正直箸が進まなかったが、渋々料理を口に運んだ。

「…は?」

え、いやいやちょっと待て?

普通にすごく美味しいんですけど!?

なんで!?なんであの組み合わせでここまで美味しくなるかな!?

チラリと正面を見ると、鈴木がドヤ顔していた。

ムカつくなコイツ。

クッソ…これじゃあ、俺が勝てる要素無えじゃねえか。

まともな料理を作る気があるって点だけは、俺の方がマシだと思ってたのによ。

俺も、料理の腕上げとかねぇと…

 

全員が、夕食を食べ終わった。

俺は、みんなに一つ提案してみた。

「…なあ、みんなに提案があるんだが。」

「おう、なんだ菊池?」

「…いや、フロントに凶器が置いてあったろ?…それで対策をしなきゃと思ったわけだが…心得に、『フロントの凶器を持ち出してはいけない』っていうルールを追加しねぇか?」

「えー!?またルール追加ー!?あーちゃん、ルールに縛られんのきらーい!!」

「そぉ?アタシは逆に束縛されると興奮するけど…ンフフ♡」

「…鈴木さん、しれっとそっち方面に持ってくのやめましょうよ。…うーん。私は全然いいんだけど、それって意味あるのかなぁ。だって、前回もルールを破った人がいたせいであんな事になっちゃったわけじゃん?」

「…ご、ごめんなさい…」

「いや、いいよ。床前さんは無実だったわけだし、もう終わった事だよ。今してるのは、今後の話。…ルール作るのはいいけど、それをみんなが守ってくれなきゃ話にならないよね?」

「確かに…全員がルールを守るという保証が何処にもありませんからね。」

「これ以上私を束縛するようなら、テメェらギッタギタに踏み潰すぞ!!」

猫西と速瀬と神城は、ルールを追加する事に否定的だった。

「…フン、何も無いよりはいいんじゃないか?誰も信用できないのが、一番良くない状態だ。信用できない奴を絞り込むという意味でも、ルールはあるに越した事はないと思うがな。」

「…まあ、多少は抑止力になるでしょうね。」

「自分は変な気起こさない自信ありますし…いいと思うっスけどね。」

「わ、私…前回、皆さんとの約束を破ってしまって…もう信用されないんじゃないかって思ってましたけど…でも、もう一度皆さんがお互いを信じ合えるようにしたいです!」

森万、ジェイムズ、小川、床前は、ルールの追加に肯定的だった。

…マズいな。自分で話題を振っといてなんだが…意見が割れてしまった。

「…じゃあ、多数決とったらどうですかぁ?」

リタが、唐突に解決策を提案した。

「うし、じゃあ多数決とるぞ。」

全員が、自分の意見を言った。

その結果、こうなった。

 

ルールを追加する派…菊池、玉木、森万、ジェイムズ、小川、織田、鈴木、床前

追加しない派…アリス、猫西、速瀬、神城、リタ、射場山

 

「…じゃあ、多数決の結果、ルールを追加する事になった。みんな、ルールを守るように心がけてくれ。」

「はぁい。」

「ご命令を承りました。」

「うん。ルールが決まったなら、ちゃんと守らないとね。」

「こ、今度こそちゃんと守ります…!」

「あ、いけね!言い忘れるとこだった!!あーちゃんからテーアン!!」

アリスが、元気良く手を挙げた。

「…どうした?」

「せっかくプールが解放されたわけだしさ、明日プール行こうよ!!」

「あ、いいねそれ!」

「楽しみです!」

…おい、ちょっと待て。話が勝手に進んでないか?

俺は泳ぎは得意じゃないから、遠慮させて貰いたいんだが…

「あ、いや…俺はちょっと…」

「あら、もしかして、サトシちゃん泳げないの〜?うふふ。」

「なっ…」

「うっわー、サトにい泳げないのー?…そういえば、海行った時も乗り気じゃなかったもんねー。うっわ、だっさ〜!」

「あっはははは!!モブの奴、およ…泳げねぇのかよ!!あっはははは!!ダッセェ!!!」

「これは吾輩も勝てるかも知れませぬな!」

 

プチン

 

俺の中で、大事な何かが切れた。

「お、泳げないとは一言も言ってねえだろうが!!」

「あー、ムキになった。ガキ臭いぞサトにいー!!」

「フン、威勢を張っても碌な事が無いぞ。」

「…森万君、そのセリフ思いっきり自分に返ってるからね。」

「威勢だと!?そんなの、やってみなきゃわかんねぇだろ!…よし、じゃあこうしよう!明日、誰が一番早く泳げるか、勝負しようじゃねえか!!」

「…先輩それ、自分で自分の首絞めてません?」

「同感。やめといた方が賢明だと思うわ。」

「うるせぇ!やると言ったらやる!!」

「…ありゃりゃ。こりゃあ、テコでも動かないっスね。」

「おもしれぇ!菊池、俺は参加するぞ!!」

「すごく面白そうです!私も参加させて頂きますね!」

「え…ちょっと、二人とも?やめといた方がいいんじゃないの?これ、絶対後で言い出しっぺの菊池君が後悔するパターンだからさ。」

「フッ、面白い…せいぜい喚いてろ、雑魚共が。」

「ヒキオタの底力を発揮する時であります!!」

「うふふ…サトシちゃんがそこまで本気なら、付き合ってあげてもいいわ!」

「なんでみんな乗り気なのかな!?ねえ、誰か止める人いないの!?」

「おにーさん達盛り上がってるね!じゃあさじゃあさ、あーちゃん達は女子同士で勝負しようよ!」

「あ、あーちゃん!?」

「はっはっは!!勝つのはこの私に決まってんだろうがよ!!」

「…ご命令とあらば。」

「なんか、この空気で参加しないのは逆にダサいっスよね。」

「…私は別にどっちでも。」

「ふわぁ…最後まで寝ちゃわないようにがんばりますぅ…!」

「…わ、私は…皆さんが参加するなら…」

「あー、もう!結局全員参加する事になっちゃったよ!…もう!参加すればいいんでしょすれば!」

「わーい!うぇすにゃんもキョーエーするんだー!」

こうして、全員でプールに行く事になった。

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