ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第2章 非日常編③(おしおき編)

『うぷぷぷ…お見事大正解ー!!『超高校級の超能力者』…もとい、『超高校級のペテン師』森万羅象クンを殺したイカレ殺人犯のクロはー…完璧秘書の皮を被った、神経質サイコ女の速瀬吹雪サンでしたー!!』

『今回、クロの速瀬様は織田様に、ちょちてちょれ以外の皆様は満場一致で速瀬様に投票ちてまちた!!お見事でちゅよ、皆様ー!!』

「うっ、うううううう…ごめんなさい…ごめんなさい…」

速瀬は泣きながら、誰に向けたものかもわからない謝罪の言葉を繰り返していた。

「…速瀬さん、どうしてこんな事を…?」

「そうです、速瀬さん…貴女はいつでも正しかった。常に最善の行動を執り、私達の為に尽くして下さいました。そんな貴女が、如何して道を踏み外してしまったのですか…?」

『うぷぷ!ボクが説明してあげるよ!』

「モノクマ…!」

『ポチッとな、でちゅ!』

モノハムが、手元のリモコンを押すと、天井からモニターが出てくる。

…まるで、俺が動機を見せられた時のように。

『ねえみんな。なんで速瀬サンが、こんな愚行に走ったのか知りたいでしょ?その答えは、全部速瀬サンの動機DVDにあるよ!』

「速瀬さんの…動機DVD…?」

『ちょれでは…VTRチュタート!!』

モノハムが再びリモコンを操作した。

モニターの電源が付き、映像が映し出される。

 

 

 


 

 

 

『超高校級の秘書』速瀬吹雪サンの動機映像!

 

劇場のようなイラストが描かれた画面が映し出された数秒後、映像が映る。

映ったのは、荘厳な雰囲気を醸し出している部屋だった。

部屋の中に、中年男と20代後半くらいの男がいる。

中年男の方は、見覚えがある。

確か、県知事だ。

恐らく、速瀬は以前この男の秘書をしていたんだろう。

『吹雪、希望ヶ峰での生活はもう慣れたか?お前の事だから、知事と俺の事を心配してるんじゃないかと思ってな。安心しろ、お前の心配は、今の所全部杞憂だろうから。』

『速瀬君、君が居ない間の私の秘書は、君のお兄さんに代わりをして貰う事になった。彼は非常に優秀でね。私達の事なら、心配は要らないよ。』

『そういう訳だ、吹雪。お前は、何も心配しなくていい。俺達の心配なんかせずに、希望ヶ峰で友達と仲良くやってくれればそれでいい。俺もみんなも、お前の事を応援してる。』

『速瀬君、希望ヶ峰学園を卒業したら、是非ともまた私の秘書になってくれないか。君に頼みたい仕事が山ほどあるんdddddddddd…ザザッ…あるnnnnnnnnnn…ザッ…ザザッ…ザザーーーーーーーーーーーーーーッ』

 

ザザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

急に映像が乱れた。知事の声は壊れたラジオのように繰り返され、不気味なノイズが混じる。

映像に無数の筋のようなものが映り、映像が乱れる。

やがて映り込んだ筋が画面を埋め尽くし、砂嵐になる。

砂嵐だった映像が元に戻った。

 

「ーーーーーーーーーーえ。」

 

映し出されたのは、変わり果てた街だった。

建物は破壊され、信号機や街灯は全て消え、街はたった二色を残して、それ以外の色彩を全て失っていた。

一色は破壊された街や空模様の灰色、もう一色は、辺りに散る大量の血の緋だった。

街中を彷徨くモノクママスク達が、次々と罪の無い一般市民を虐殺していく。

そんな中、街の中央にある、一際大きく、高級感のある建物が映し出された。

モノクママスク達は、警備員や建物内の人間を次々と殺し、ついには最奥の部屋へと辿り着く。

『貴様ら、一体何者だ!!こんな事をして…一体何が目的だ!!…知事、ここは私に任せて、お逃げ下さい!!』

秘書が、モノクママスク達を足止めする。

しかし、モノクママスクのうちの一人が、知事の方へと向かう。

『知事、危ない!!』

 

ザクッ

 

『…あっ、』

秘書の肩に、斧が振り下ろされる。

肩からは大量の血が吹き出し、部屋の壁を緋く染める。

秘書は、肩を押さえながらその場に倒れ込む。

『は、速瀬君…』

モノクママスク達が、知事を取り囲む。

 

『やめろ…貴様ら、何をする…市民の皆様に、速瀬君に何をした…私をどうする気だ…やめろ、やめてくれ…あ゛あああああああああああああああ!!!』

次の瞬間、画面が真っ赤になる。

 

ブツンー

 

そこで映像が途切れ、劇場の画面に戻る。

劇場にモノクマが現れ、不快なダミ声で喋り出す。

『市民からの信頼が厚く、人徳に優れた県知事に絶大の信頼を置かれ、さらには亡き父の会社を継いだお兄様から大いに期待されていた速瀬吹雪サン!しかし、彼女の守るべき知事と市民達、そして最愛のお兄様に何かあったようですね!?では、ここで問題!果たして、この腑抜けなオッサンと無能な秘書、そして民度の低い市民達は一体どうなってしまうのでしょうかッ!?正解発表は、『帰郷』の後で!!』

 

 

 


 

『速瀬サンは、自分の兄と市民達を救うために自らの手を汚して『帰郷』しようとしていたのでしたー!!いやはや、守るべき物が多すぎるのも困り物だよね!』

「そんな…!」

「ひでぇよ…こんなのアリかよ!!?」

「うーん、これは、クロにならざるを得ないよね…だって今助けに行かなかったら、自分の故郷がなくなっちゃうもん。もし私が速瀬さんの立場だったら、やっぱりクロになっちゃってたかな…」

「まさか、速瀬さんがこんなに大きな物を抱えていたなんて…速瀬さんが早まってしまったのも、無理はありません。…私達は、そんな事とは露知らず、速瀬さんを追い詰めてしまっていたのですね。」

「ごめんなさい…ごめんなさい…私は…どうしても、故郷を…皆様を守りたかった…」

 

「あのさ、なんでみんなブキねえを庇うの?意味わかんなくない?」

 

「…どういう意味だ。」

「故郷のためだかなんだか知らないけどさ、結局はただの人殺しじゃん。ブキねえがやった事に、それ以上も以下もないよ。あーちゃんがブキねえの立場だったら、タショーのギセーを出してでも、自分のメーヨは自分で守り抜くけどなぁ。」

「お前…それ以上言ったら、たとえガキだろうとなんだろうと、許さねェぞ。」

「うっわ!なんでサトにいが怒ってんの!?こっわ!!」

『ぴきゃきゃ。アリチュ様の言う通りでちゅ。故郷の為だとか、家族の為だとか,ちょんなのはただの人を殺ちゅという最低な行為を正当化ちゅる為の言い訳なんでちゅ!』

「…モノハム教頭、一つ伺っても宜しいですか?」

『ん?なんでちゅか?カークランド様?』

「速瀬さんは、何故森万さんを殺害したのですか…?森万さんに、何か怨みでもあったんですか…!?」

『ぴきゃきゃ…ちょれは、本人から聞くのが一番いいんぢゃないでちょうか?』

『そういうわけだよ、ほら、早く話してあげなよ!』

モノクマとモノハムが、速瀬に話をするように催促する。

速瀬は、泣きながらも冷静さを取り戻し、話し始めた。

「…私は、動機DVDを見た瞬間、人を殺す事を決意しました。知事と兄…そして、故郷を救う為には、何としてでも此処を出なければならないと思いました。…そこで私は、森万様を殺害する事に決めました。」

「速瀬さん、貴女が、私達を犠牲にしてでも護りたかった物がどれ程価値が重い物かは、承知しているつもりです。それ程の物を危険に晒されて、殺人を決意してしまった事は、責めるつもりはありません。ですが、どうして…どうして森万さんでなければならなかったのですか!!?彼に怨みでもあったのですか!!?」

ジェイムズは、証言台を叩きながら、速瀬に怒鳴りつけた。

速瀬は、言いづらそうに、重い口を動かして言った。

「…私の父は、私が物心付くか付かないか位の頃に、多額の借金を抱えて自殺しました。…後で聞いた話に拠ると、詐欺に遭ったそうです。私の父は、詐欺師に殺されたんです。森万様…彼も、人を欺いていたという点では、父を殺した者達と同類でした。私は、彼に父を殺した者達を重ね、彼に殺意を抱いてしまいました。」

「そんなの、只の私情じゃないですか!!森万さんは、貴女の勝手な私怨の所為で殺されたんですか!!?」

「おいジェイムズ、最後まで速瀬の話を聞けよ…」

「…私は、森万様を殺害する為に、男子更衣室で待ち伏せていました。…彼は、私に気付きました。」

「え…?」

…森万は、速瀬の存在に気付いていたのか…?

気付いていたなら、なんで黙って殺されたんだ。

「彼は、私に向かってただ一言、こう仰ったのです。」

 

「…『救えるといいな』と。」

「…え。」

「私は、その言葉を聞いた瞬間、全てを理解しました。彼が私の気持ちを知っていた事も、私の気持ちを汲んで、自分の命を私に譲ろうとして下さった事も。だから、彼を殺害したんです。」

「では、森万さんは、わざと貴女に殺されたという事ですか…?一体、どうしてそんな事を…私の知る彼は、そんな方ではありません!」

『うぷぷ…知りたいよね?なんで森万クンが、速瀬サンに殺されたのか。その答えは、森万クンの動機DVDにあるんだな!』

『はいでちゅ!』

モノハムは、リモコンを操作した。

モニターに、映像が映る。

 

 

 


 

 

 

『超高校級のペテン師』森万羅象クンの動機映像!

 

劇場のようなイラストが描かれた画面が映し出された数秒後、映像が映る。

映ったのは、小さな孤児院のような施設だった。

施設の前には、子供達が並んでいる。

『おにーちゃん、きぼーがみねのにゅーがくおめでとう!』

『おにーちゃんは、どんなにつらいことがあっても、ちょーのーりょくでみんなをえがおにしてくれる、わたしたちのヒーローだもんね、にゅーがくできるってしんじてたよ!』

『おにーちゃん、きぼーがみねににゅーがくしたら、ぼくたちとははなればなれになっちゃうけど、げんきでね!』

『ぼくたち、おっきくなったらおにーちゃんとおなじきぼーがみねにいきたいんだ!そしたら、みんなdddddddddd…ザッ…みんnnnnnnn…ザッ…ザザッ…ザザーーーーーーーーーーッ』

 

ザザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

 

急に映像が乱れた。子供の声は壊れたラジオのように繰り返され、不気味なノイズが混じる。

映像に無数の筋のようなものが映り、映像が乱れる。

やがて映り込んだ筋が画面を埋め尽くし、砂嵐になる。

砂嵐だった映像が元に戻った。

 

「ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

映し出されたのは、変わり果てた孤児院だった。

建物全体が真っ赤に染まり、窓ガラスや家具が破壊されている。

建物内には、モノクママスク達が土足で彷徨いていた。

よく見ると、床に子供の死体が転がっている。

それも、一人や二人じゃない。数十人はいる。

モノクママスクのうちの一人が、生き残っている子供を捕まえた。

『いやだ、いやだあああ!!だれか、たすけてよぉお!おにーちゃん!』

 

グシャッ

 

モノクママスクが子供の頭に鉄パイプを振り下ろすと、子供の頭は呆気なく潰れ、脳漿を吹き出した。

『きゃああああああああ!!!』

また別の子供が、モノクママスクに取り囲まれる。

…おそらく、今叫び声を上げた少女が、最後の生き残りだ。

『いやだ…やめて…だれか、たすけて…おにーちゃああああああああ』

 

パァン

 

ビシャッ

 

空気が破裂するような音と共に、壁に血が飛び散る。

次の瞬間、画面が真っ赤になる。

 

ブツンー

 

そこで映像が途切れ、劇場の画面に戻る。

劇場にモノクマが現れ、不快なダミ声で喋り出す。

『産まれた時から過ごしてきた孤児院で、子供達と共に幸せに暮らしていた森万クン!彼の自称超能力者という設定は、子供達を喜ばせるためのものだったんですねぇ。しかし、子供達の身に何かあったようですね!?では、ここで問題!この孤児院は、間もなく潰れてしまうのですが、その理由とはッ!?正解発表は、『帰郷』の後で!!』

 

 

 


 

「そんな…こんな事って…」

『森万クンは、この映像を見て、どうやら生きる気力を失くしてしまったようですね!?だから速瀬サンにわざと殺された、という事だったのだー!!』

「そんな、嘘だろ…?」

あれ程、ショーの最中には生き生きしていたアイツが。

本当は、もう生きる気力を失くして、ただ誰かに殺されるのを待っていただけだったっていうのか…?

そんなの、信じられるかよ。

「…森万様の衣服に、お手紙が入っているのを見付けました。」

速瀬は、折り畳まれた手紙を開いて、俺達に見せた。

 

 

 

この手紙を読んでいるあなたへ

 

あなたがこの手紙を読んでいるという事は、俺はもうこの世にいないという事でしょう。

まず、あなたに告白しておきたい事があります。

それは俺が、今までみんなを騙していたという事です。

俺が騙してきたのは、みんなだけではありません。

友達を騙し、学者達を騙し、大勢の人達を騙しました。

俺は、誰かにとっての『希望』になりたかった。

だから、大勢の人達を騙す事にしました。

でも、俺にとっての『希望』は、もうどこにもない。

だから俺は、自分の命をあなたに託す事にしました。

俺を殺して、外の世界に行き、救いたいものを救ってください。

俺の犠牲が、あなたにとっての『希望』である事を願っています。

最後に、俺の親友のカークランド君には、『騙して悪かった』と伝えてください。

 

森万羅象ヨロズより

 

 

 

「…これが、事件の真相です。」

「…そんな、そんな事って…」

「ヨロズ…?え、何この最後のやつ。」

『ちょれは、森万様の本名でちゅ。森万様は、名前もちゅけられぢゅに、ご両親に、孤児院に置いていかれたちょうでしゅ。『ヨロヂュ』というお名前は、孤児院の院長に名付けられた名前だちょうでしゅよ。ちょの後彼は、施設の子供達を喜ばちぇるために超能力者を騙り、『森万羅象』と名前を変えて、世界中にその名を轟かちぇたのでちゅ。』

『うぷぷぷ…理由がなんだろうと、ウソはダメだよね!同情の余地なし、死んで当然のクズだよ!』

「…。」

『おやぁ?カークランドクン、どったの?お友達が死んだのがそんなにショックだった?…それとも、今まで自分を騙してたこと?』

『ぴきゃきゃ、ちょんなに気を落とちゅ事ないでちゅよ!ヨロヂュは、ぢゅっとアナタを騙ちて、心の中ではバカにちてたのでちゅから!』

「…知ってましたよ。」

『知ってた?何が?』

「森万さんが…いえ、ヨロズが、超能力者ではない事は知っていました。」

…え?

…知ってただと?

「ジェイムズ…お前、アイツの事信じてたんじゃなかったのか…?」

「…私が、そこまで馬鹿正直に見えますか?彼が、今まで嘘を吐いていた事は、初めから分かっていましたよ。」

『嘘つけ!知ってたなら、なんで騙されたフリしてたワケ!?』

「…彼は、最期までその嘘を貫き、私達の『希望』であろうとしていました。…だったら、それに付き合って差し上げるのが親友としての礼儀と言うものでしょう…?」

「…!!」

ジェイムズは涙を堪えながら、声を絞り出すように語った。

「モノクマ学園長、彼は()()()()()()()です。彼をペテン師呼ばわりする事は、この私が許しません。」

「ジェイムズ、お前…」

『くっさ。オマエの友情ごっこなんてどうでもいいんだよ!そんな事より今は、クロの速瀬サンをおしおきしなきゃいけないんだからさ!』

『ちょうでちゅ!オイラ達は、アナタ達より500那由多倍忙ちいのでちゅ!アナタ達の茶番になんて付き合ってる時間はミヂンコの毛程もないんでちゅよ!罪人には凄惨な死を!おちおきタイムでちゅ!』

「おい、待ってくれよ…今回は、仕方なかっただろ…?何も殺さなくてもいいだろ!」

『ねえ、玉木クン。そのくだり、飽きたんだけど。』

『自分は速瀬様に投票ちたくちぇに、何を今ちゃらわめいてるんでちゅか?』

「それは…速瀬が、まさか故郷を守るために森万を殺したなんて思わなかったから…」

『ちょんなの、ただの言い訳でちゅ!全く、最近の若者は、『知らなかった』『こうなると思わなかった』で済まちぇようとちゅるんだから、ホント良くないでちゅよ!』

「お前ら…!!」

『さーてと、速瀬サン。何かみんなに言い残しとく事はない?』

「う…ううう…ごめんなさい…森万様…折角私に命を譲って下さったのに、無駄にしてしまいました…」

『それでは、今回は『超高校級の秘書』速瀬吹雪サンのために!!スペシャルなおしおきを用意しましたっ!!ではでは、おしおきターイム!!』

 

モノクマの席の前から、赤いスイッチがせり上がってくる。

モノクマはピコピコハンマーを取り出し、ハンマーでスイッチをピコッと押す。

 

 

 

 

 


 

 

GAME OVER

 

ハヤセさんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

 

速瀬の首が、アームのようなもので掴まれて、上へ上へと引っ張り上げられる。

やがて速瀬を引っ張っていたアームが止まり、周りの景色が変わる。

どうやら、会社の事務室のような空間らしい。

サラリーマンの格好をしたモノクマが、デスクの上のカップラーメンの蓋を開け、熱湯を注ぐ。

そこで画面が切り替わり、タイトルが現れる。

 

 

 

時をきざむ少女

 

【超高校級の秘書】速瀬吹雪 処刑執行

 

 

 

画面が切り替わり、アームで吊し上げられた速瀬が映る。

速瀬を吊し上げていたアームが移動し、巨大な砂時計の上に固定される。

砂時計には砂が入っておらず、代わりに風車のような形状の刃物が、砂時計のくびれたガラス管の上部に取り付けられている。

速瀬は、今から自分の身に何が起こるのかを悟り、顔面蒼白になって冷や汗をかいていた。

モノクマがカップラーメンの蓋を閉じて、上に割り箸を置くと、モノハムが砂時計のスイッチを入れた。

すると、刃物が火花を散らしながら高速回転し、アームがゆっくりと下へ降りてゆく。

速瀬の体が、少しずつ刃物に近づいていく。

…そして。

ついに、爪先が刃物に触れた。

刃物は速瀬の足を切り刻み、肉塊に変えた。

緋い鮮血が砂時計の中に飛び散り、ガラス管の下部に落ちる。

速瀬は、足を失った激痛に顔を歪める。

それでもアームは容赦無く下降し、ついには膝下まで肉塊と化す。

流れ出た血が、ガラス管の下部に落ちていく。

アームは、止まること無く下降していく。

即死させないように、ゆっくりと。

速瀬は、もがき苦しみ、体を揺らして暴れ、助けを求めるかのように叫んだ。

だが、厚いガラスの中の声は、外に届く事はなかった。

モノハムは、何もせずにただ砂時計を見ていた。

モノクマは、身体をリズミカルに揺らしながら、待ち遠しそうにカップラーメンを見ていた。

 

下半身が全て肉塊と化し、速瀬は意識を失う。

砂時計のガラス管の下部に血が溜まる。

すると、アームに電流が流れ、速瀬は再び意識を取り戻す。

また苦痛を味わう事となった速瀬の顔は、絶望に染まっていた。

意識を失っては電流で強制的に意識を取り戻させられる、の繰り返しだった。

電流と刃物のオンパレードの末、速瀬はついに息絶えた。

アームが下降し、腹、胸、首と次々と肉塊と化していき、ついには全身が切り刻まれ、最後の一滴の血が下部に落ちた。

砂時計の下部には、見慣れた緋い液体が溜まっていた。

まるで、砂時計の砂が全て落ち切ったかのように。

それを見たモノクマは、急いでカップラーメンの蓋を開き、割り箸を割る。

そして、速瀬の死を嘲笑うかのように、カップラーメンを頬張った。

砂時計の中に残ったのは、大量の緋い液体と、速瀬吹雪()()()肉の塊だけだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

『イヤッホォオオオオオオオオイ!!!エクストリィイイム!!!』

『ぴっきゃっきゃ、やっぱりコレはいちゅ見ても飽きまちゃんね!』

…また一人、仲間を失ってしまった。

俺達は、速瀬が処刑されるのをただ見ている事だけしか出来なかった。

「いや…嘘でしょ…速瀬さんが…!もうやだよ…こんなの、あんまりだよ…!」

「あああ…そんな…速瀬さんが…速瀬さんが…!」

「…速瀬さん。」

「速瀬先輩が…速瀬先輩が…」

「クソッ!!なんでまたこうなっちまうんだよ!!」

「うげぇえええ…マジかよ…」

「にゃあああああああ!!!ブキねえ殺され方グッロ!!あーちゃんはああはなりたくないよぉ〜!」

「ホント、ゲスい事するわね…」

「そんな、…速瀬が…!」

「…悪趣味。」

「うぎゃああああああ!!速瀬氏ぃいいいいい!!!」

『おやあ?みんな、そんなに速瀬サンがジュースになったのがショックだった?』

『皆様、何か肝心な事を忘れていまちぇんか?』

「肝心な事…?」

『速瀬様は、ヨロズ様を殺ちた立派な殺人犯だったのでちゅ!悪人が裁かれて死んだんだから、もっと喜ぶべきでちゅ!』

「ふざけんな!!お前らに、速瀬の何がわかる!!速瀬と森万の命を弄びやがって…!」

『うぷぷ…何がわかる、だって?少なくとも、たった一週間かそこらしか速瀬サンと過ごしてないオマエラよりは十分速瀬サンの事をよく知ってるつもりだったんだけどなぁ。』

「何…?」

『うぷぷ…ボク達はね、オマエラの事をよく知ってるんだよ?好きな食べ物や家族構成から、経験人数やホクロの数と位置までなーんでもね。』

「はぁああ!?テメェ、勝手に私の事を調べやがったのか!?気色悪りい、プライバシーの侵害で訴えるぞ!!」

『何言ってんの?オマエラが勝手に教えてくれたんじゃん。』

「何…!?」

勝手に教えただと…!?

そんな馬鹿な話があるか、俺は、モノクマに個人情報を話した事なんかねぇぞ…?

あれ…?待てよ?

そもそも、なんでコイツは俺の家族の事を知ってたんだ…?

あの動機DVDは、俺の家族の事をよく知ってなきゃ作成できないはず…

「ねえ、私達が君達に勝手に話したってどういう事?」

『ちょれを知ってる人が、アナタ達の中にいるはぢゅでちゅ。ちょの人に聞けばわかるんぢゃないでちゅか?』

俺達は、一斉に鈴木を見た。

鈴木は、視線を向けられると、咄嗟に天井をを見上げながら口笛を吹いた。

『それにしても、オマエラ今回も本当によく頑張ったよ!ご褒美にメダルあげるよ!みんなで仲良く分け合ってね!それじゃ、まった『学園長!』

『のわぁ!?ビックリすんなぁ、急に大声出さないでよね!このポンコツハムスター!!』

『ひぃいいいい!?ごめんなちゃぁい!学園長が、皆様にお話をちぇずに退場ちようとなちゃっていたので、止めた方がいいと思いまちて…』

『オマエのせいで、話そうと思ってたけど話す気失せた!』

『宿題か!ちょんなワガママ言わないでくだちゃいよ!オイラの仕事量が増えるぢゃないでちゅか!!』

『仕事量?何それ!力×距離?』

『合ってるけど違いまちゅ!』

『じゃあ、ボクは眠いからもう帰る!あとよろしく!』

『あああ、ちょっと〜!学園長〜!!』

モノクマは、モノハムの制止を無視して去っていった。

『あうう…結局こうなるんぢゃないでちゅかぁ。パワハラでちゅ、ブラックでちゅう…』

「で?なんなんだよ、話って!!くだらねぇ事だったらキ●ワイプで顔面の凹凸を削ぎ落とすぞ!!」

『ひいいい!?やめてくだちゃいよ神城様!キム●イプで強引に擦られると、結構痛いんでちゅよ!ちゃんと話ちまちゅから、キムワ●プの刑は勘弁でちゅ!』

「だったら早く話しなよ…」

『ちょうがないでちゅね、特別にお話ちて差ちあげまちゅ。』

 

 

 

『…実は、皆様の中に、『超高校級』の才能を偽っている方がいらっちゃいまちゅ。』

「!!?」

『ちょちて、ちょのうちの一人は…『超高校級の死神』伏木野エカイラ(フシギノ エカイラ)様でちゅ!』

…え?

ちょっと待て。

頭がこんがらがってきた。

どういう事だ…?

エカイラが実在して…しかも、俺達の中にいるっていうのか…?

「ねえ、今『そのうちの一人』って言ったよね?他にも、本当の才能がわかってない人が何人もいるって事?」

『ちゃあ?ちょれはまだ言う事ができまちぇん!…でちゅが、ちょうでちゅね…実は、もうひとちゅお伝えちておく事があるので…ちょれで判断ちてみては?』

「もう一つ…?」

『ヂュバリ!!皆様の中に、オイラ達の用意ちたスパイがいまちゅ!!』

…。

…。

…は?

「スパイって…どういう事だよ!?」

『ちょのままの意味でちゅ。カメラとかおちおきの舞台のチェッティングとか、チュムーヂュにコロチアイが進むようにゲームを内側から調整ちたりとか、絶賛お役立ち中でちゅ!』

「テメェ!そんな事をわざわざ教えて、一体何がしてェんだよ!?」

『オイラ達はただ、より絶望的なコロチアイを望んでいるだけでちゅよ。…ちょれでは、オイラはこの辺で。またお会いちまちょう!』

モノハムは去っていった。

「クソッ、あの野郎…好き勝手言いやがって…!」

「おい、スパイって一体誰だ?エカイラはどいつの事だよ?今ここで白状しやがれ!!名乗り出ねェなら、ギッタギタに踏み潰すぞ!!」

「神城先輩、落ち着いてくださいよ。そんなんで名乗り出るわけないっス。」

「うるせぇ!!さてはテメェがスパイか!!?」

「ち、違うっスよ!」

「…あらら。ダメだこりゃ。」

「にゃははー!こわーい!あーちゃん殺されちゃうかもー!」

この一日で、あまりにも多くの事が起こりすぎた。

…森万が速瀬に殺された。

その速瀬は、残虐な方法で処刑された。

…そして今、俺達の中にスパイとエカイラがいる事が明かされた。

正直、頭も心も全くついて来れていない。

二人の死を悲しむ時間すら、俺達には用意されていなかった。

それでも俺達は、前に進み続けなきゃならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章『だれかの希望になれたなら』ー完ー

 

 

 

 

コロシアイ合宿生活 残り12名

 

 


 

 

 

 

 

「いやあ、今回もハラハラドキドキの学級裁判だったね!」

「…そうですね。」

「おやあ?どうかなさいました?何か、考え事でもしていらっしゃるのですか?」

「…いえ、なんでもありません。」

「あー!!隠し事したな!?いーけないんだ、いけないんだ!!せーんせーに言っちゃーお!!」

「…いちいち口調変えるの、やめて貰っていいですか?正直聞いてて疲れます。」

「あ、ごめごめ。じゃあ今からやめるわ。」

「案外あっさりやめるんですね。」

「うん。口調変えてもあんま意味ない事に気付いた今日この頃のオレ。」

「…はあ。」

「それにしても、オマエ本当に優秀だよね!やっぱ、オマエを選んで正解だったよ。」

「…それはどうも。そんな事より、約束はちゃんと守ってくださいよ?」

「あーあー、わかってるって!『彼』の事なら、ボクがなんとかしとくから!じゃあ、引き続き、スパイの方よろしくね〜!」

「…分かりました。」

 

 

 

…正直、コロシアイなんてどうでもいい。『彼』をあんな目に遭わせた『アイツ』も、いつか殺す。

でも、今は『彼』のために、仕方なく『アイツ』に従っている。

これだけ『彼』のために頑張ってるんだもん、少しは認めてくれるよね?

『彼』のためなら、なんだってできる。…いや、なんだってする。

 

 

 

 

 

あなたがいれば、どんな世界でだって生きてゆける。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『超高校級の???』の個室

 

「いっやあ、まさか才能を暴露されちゃうとはね。折角今まで隠し通してきたのにさ。今までの苦労返せよ。って言って帰ってきたら苦労しないんだけど!」

 

「…さーてと、次の生贄はだーれだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…




【論リゾこぼれ話】

今回は、吹雪ちゃんがクロでしたね。
今回のおしおきシーンも、拘って執筆させて頂きましたでござるよ!
実はですね、まあ言わなくてもわかると思いますが、『刻む』という言葉が、時間と身体、両方にかかっていました。いわゆる掛け言葉ってヤツです。(ん?ちょっと違う?)
身体を刻みながら時を刻む、洒落の利いたおしおきでしょ。
そして、今回のおしおきのキモは『時間』です。
今まで、異常なまでに神経質に時計を気にしていた吹雪ちゃんが、自ら時計になったわけです。
自分の残りの寿命の『3分間』を計るための道具にされる…ある意味、彼女にぴったりのおしおきだったんじゃないでしょうか。

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