第3章(非)日常編①
森万と速瀬が死んだ。
あまりにも残虐な方法で殺された。
森万は生きる理由を失くし、自らの命を速瀬に譲った。
速瀬は、生きてここを出て故郷を救うために、森万を殺した。
二人とも、いい奴だったのに。
DVDを見るまでは、普通に楽しくみんなで過ごしていたのに。
その全てを否定するかのように、裁判は胸糞の悪い終わりを迎えた。
裁判の後は、みんな部屋に戻った。
誰も、外に出て何かをする気にはなれなかった。
9日目の夜は、何をする事もなく、ベッドの中で横になっていた。
疲れているはずなのに、ほとんど眠れなかった。
俺はベッドの中で、永遠にも感じる数時間を過ごした。
合宿生活10日目。
二人が死んでから最初の朝を迎えた。
俺は重い体を起こし、朝の支度をしてレストランへ向かった。
ーレストランー
レストランには、既にみんな集まっていた。
「…おはよう。」
「…おう、菊池。おはよう。」
「おはよう菊池君。」
「お、おはようございます…」
「おはようございます先輩。」
全員、暗い面持ちだった。
当たり前だ。あんな事があって、暗くならないわけがない。
「はっはっは、愚民共がガン首並べてマイナスイオン放って通夜モードかよ!!私の食う飯だけは不味くすんなよな!」
「みんなごキゲンがピサの斜塔だね!どうでもいいけどあーちゃん本場のジェラートが食べたい!」
「みんな、そんなに暗い顔してちゃお肌に悪いわよ!」
アリスと神城と鈴木は、結構元気なようだが。
「Good morning、Bonjour、Guten Morgen、Buenos dias、Buongiorno 、Chào buổi sáng 、Доброе утро、सुप्रभात、早安、안녕、おはようございます!!」
厨房から出てきたジェイムズは、ハイテンションで朝食の皿を全員に配りながら、一人ずつ違う言語の『おはよう』を言った。
「…あらら?滑ってしまいましたか。大学の生徒達は、元気良く返してくれたんですけどね…でも、まだ色々ネタは有りますから!爆笑必至、大学内でも大人気のネタをお見せして差し上げましょう!」
…何をふざけているんだアイツは。
昨日の事を忘れちまったのか?
お前が一番仲良くしてた森万が死んだんだぞ…?
それなのにお前は、なんでそんなに明るく振る舞っていられるんだよ。
「あの、ヨークシャーテリアっているじゃないですか。その犬が…」
「いい加減にしろよお前!!」
玉木が、勢いよくテーブルを叩いた。
「お前…昨日の事忘れちまったのかよ!?」
「やだなぁ、玉木さん。私、まだ十代ですよ?私の脳はまだボケて等いませんよ!昨日の食事は朝昼晩とも覚えておりますとも!」
「ふざけんな!!忘れてねぇなら、なんでそんなに明るく振る舞えんだよ!?昨日、あんな事があったんだぞ!?」
「昨日は昨日、今日は今日です!気分を切り替えて、今日も一日頑張るぞい、です!」
「お前、何言って…」
「さ、早く朝食を食べましょう。早く食べないと冷めてしまいますよ。」
「いい加減に…あ。」
玉木がジェイムズに詰め寄った。
その時、気付いたようだ。
ジェイムズの両目が、真っ赤に腫れている事に。
リタは、玉木のユニフォームの裾を掴んで言った。
「玉木ぃ…ジェイムズを責めないでください…ジェイムズは、森万が速瀬に殺されて、すごく悲しんでたんですぅ。」
「そうだよ…カークランド君、昨日も寝ずに一晩中泣いてたんだよ。」
…そうだった。
思い出した。
俺達がエレベーターに乗り込んだ後も、ジェイムズは最後まで裁判場に残って泣いていた。
それでも、親友の死を乗り越えて、俺達のために無理して明るく振る舞ってたんだ。
「…悪い。俺、頭に血が上ってたな。よし、気分も切り替えた事だし、朝飯食うぞ!」
「…はい!」
「あらら。まさかジェイムズちゃんに励まされる日が来るとはね。この合宿で、一番成長したのは彼だったのかもね〜。」
全員が、朝食を食べ終わった。
そこへ、2匹のぬいぐるみが現れた。
『やっほー!』
『でちゅ!』
「テメェら、どこから湧いて出やがった!!」
『うわぁ!神城サンひっど!早速ボク達をゴキブリみたいに言っちゃってさ!』
「あまり長居する様なら、イミプロトリンとメトキサジアゾン撒きますよ!!」
『カークランドクンまで!っていうかそれ、ガチのゴキブリ扱いじゃん!』
『酷いでちゅ!オイラ達は皆様のためを思って、有益な情報を与えに来たのに!』
「どうせまたくだらない事でしょ。」
猫西が呆れながら言う。
『失礼な!ちゃんと有益な情報でちゅ!今回も、新たにエリアを開放ちまちた!今回は、展望台と美術館、あとは銭湯でちゅ!』
「え!?マヂ!?ねえねえハムちゃん、おふろって、温泉?」
『もちろん、最上級の温泉を使用ちておりまちゅ!』
「やった!!あーちゃん、温泉大好き!!」
「って、アリス先輩。喜んでる場合じゃないっスよ。」
「ぶー。」
『それともう一つ、オマエラにプレゼントがあります!』
「プレゼント?へえ?何を渡す気?」
『うぷぷ…それはね…『第三の動機でちゅ!』
『オイコラ!オマエほんとに反省しないよね!割り込むなっつってんじゃん!!』
『ひぃいいい…!ごめんなちゃいでちゅうう…』
…第三の動機、だと?
一体どういうつもりだ?
前の2回は、合宿生活スタートから3、4日後に動機を発表されてたはず…
まだ、学級裁判が終わってすぐだぞ?
「それで、動機とは何なのでありますか?」
『うぷぷ…ズバリ、『人に言えない弱み』だよ!』
弱み…?
『みんな、誰にも言えない弱みの一つや二つはあるよね!もしかしたら、無自覚に抱えてる弱みもあるかもしれない…午後0時に、その『弱み』を、それぞれのしおりに送ります!ちゃんと目を通しといてよね?言っとくけど、見ないとかナシだから!』
「はあ!?何よそれ!!」
「つまり貴方達は、私達がその弱みを死守する事で殺し合いが起こる事を期待していると、そう言う事ですね?」
『ちゃちゅがカークランド様!理解が早くて助かりまちゅ!』
「はっ、んだよそんなモン、しおりを全員置きっぱにしときゃあ楽勝じゃねぇか!はー、私天才かよ!!」
「…そもそも、全員がその約束を守るかどうかだけどね。」
「おいテメェら!!もししおりを部屋の外に持ち出したら、メスを爪と肉の間にブチ込むぞ!!」
「結局脅しじゃないっスか。」
『ん?オマエラ、何自分達だけで話を進めちゃってんの?ボク、全員に『弱み』を配るって言ったけど、それが本人のものだなんて一言も言ってないよ?』
…え?
「はあ!?どういう事だよそれ!!」
『今日からは、日替わりで午後0時に誰かの『弱み』を配布ちまちゅ!誰の秘密を見る事になるのかは、ちょの時までのお楽ちみ!』
『うっぷっぷ、ドキドキのロシアンルーレットだね!オマエラ、ギャンブルは好き?』
「貴様ら…」
『それじゃ、まったねー!』
2匹のぬいぐるみは、去っていった。
「…クッソ、好き勝手言いやがって…!」
「玉木君、落ち着いて。いちいちあんな奴らの挑発に乗る事ないよ。」
「…ああ、悪い。」
「…そんな事より、どうする?」
「射場山氏、どうする、とは?」
「…決まってんでしょ。探索よ。」
「た…探索…?動機の話をされた後で、探索…ですか。」
「そんなの、やる気しないわよね〜。」
「うーん、でも12時になるまで弱みは送られて来ないから、それまでに探索終わらせちゃった方がいいんじゃないかな。みんな、誰が誰の弱みを知ってるのかわからない状態で探索するの嫌でしょ?」
「…一理あるな。よし、じゃあ担当決めるか。」
俺達は、それぞれの探索の担当を決めた。
美術館…玉木、アリス、射場山、床前
展望台…俺、ジェイムズ、猫西、小川
銭湯…織田、鈴木、神城、リタ
珍しい組み合わせだな。
猫西はなぜかガッツポーズしてるし…
なんなんだアイツ。
織田が気になってるんじゃなかったのか?
「ムフフ、今回はレディと同じグループになれたであります!!」
「…あら。アタシで良ければ、相手してあげようかしら?」
「え゛。」
「ふわぁ…男湯と女湯の探索は別々ですぅ。…織田、君に逃げ場はなくなったのですぅ。」
「え!?嘘でありますよね!?」
「うふふ、ケンタロウちゃ〜ん♪」
「ぎゃああああああああああああああああ!!!吾輩は食べてもおいしくないですぞ!!」
「んふふ、気にする事ないわよ!アタシ、こう見えて雑食なのよ。ノンケだろうとアブノーマルだろうと美味しくいただいちゃうわよぉ〜!」
「ぎゃあああああああああああああ!!!やめてくだされぇえええええええ!!!」
逃げる織田を、鈴木が追いかける。
…なんか、織田がかわいそうだな。
「あっはははは!!!キモヲタが逃げ回ってやがる!!滑稽だな!!せいぜいやり過ぎてケツの穴使いモンにならなくなんねぇように気をつけろよ!!」
「神城さん、下品だよ。」
「うるせぇ!愚民が私に気安く話しかけんな、猫!!」
「ごめん…」
「うわぁ…このままだと収拾つかなくなりそうっスね。そろそろ探索に移るっス。」
「…だな。」
俺達は、各担当場所の探索を始めた。
ー展望台ー
俺達4人は、展望台に登った。
展望台は、島中を一望できるようになっていた。
望遠鏡やベンチなども設置されている。
「わあ、結構高いね。」
「お二人共、気を付けて登って下さいね。宜しければ、手をお貸ししましょうか?」
「ありがとう。でも自分で登れるかな。」
「自分も、ご心配には及ばないっス。」
「そうですか、では、落ちないように気を付けて下さいね。何かあったら、私が駆け付けます。」
「それは頼もしいっスね。」
…あれ?
二人?
おいジェイムズよ、誰か一人を忘れてるぞ。
…いや、そんな訳ないよな?言い間違えただけだよな?
「俺は?」
俺がジェイムズに聞くと、ジェイムズは少し驚いた表情を見せた。
「あっ…も、勿論菊池さんの事も心配していますよ!何かあれば直ぐに私を呼んで下さいね!」
…コイツ、やっぱり俺の事忘れてやがった。
最初から女しか心配してなかったのかよ。チクショウ。
そんなこんなで、全員が展望台に登り終わった。
「それにしても、いい景色だね。私、ここ気に入ったな〜。」
「同感です。これ程景色の良い場所は、ここ以外には無いでしょうね。」
「自分は、高すぎてちょっと怖いっスけどね。」
「大丈夫です!ファイト一発、ですよ!」
何が大丈夫なんだろうか?
「いやそれもう落ちてるじゃないっスか。なんで落ちる前提なんスか?」
「…おい、落ちるなんて縁起でもない事言うなよ。」
「…ごめんっス。」
「…はあ。」
俺は、展望台を一周し、怪しいところがないか見てみた。
「…ん?なんだこれ。」
床に、一枚の写真が落ちていた。
写真を拾い上げてよく見てみた。
そこには、展望台の上で肩を組みながら自撮りをしている鈴木と郷間と狗上、そして3人の前でしゃがんでダブルピースをしている近藤が写っていた。
明らかに、俺の記憶と矛盾している写真だった。
少なくとも、鈴木はこの3人には、この島に着いてからは会っていないはずだ。
「…なんだこれ?こんな写真、いつ撮られたんだ?」
…そういえば、鈴木は、俺達の事を知ってたらしいけど…
一体、何がどうなってんだ?
「…どうしたんスか?」
3人が、写真を覗き込んだ。
「ああ、いや…この写真、変だと思わねぇか?」
「…あ。確かに。この3人は、鈴木先輩と面識がないはず…それに、このエリアが開放されたのは、今日の事っスよね?」
「そうだね。どう見ても不自然すぎるよね。…一体、どういう事なんだろうね?」
「…取り敢えず、この写真に写っている鈴木さんに、後でお話を聞いてみましょう。」
「だな。他には怪しいところは無さそうだったし、一旦レストランに戻って報告会するか。」
俺達は、展望台から降りて、レストランに向かった。
ーレストランー
「ふー、楽しかったわ♡」
「い…生きた心地がしないであります…」
「あはは、織田君は大変だったみたいだね。」
「こ、猫西氏!」
「よし、全員集まったな。じゃあ報告会するか。…まずは俺らからだな。」
「…美術館には、絵とか彫刻とかがあった。」
まあ、美術館なんだから当たり前だよな。
「…あ、でも…一つ気になる事が…」
「あーちゃん、タイクツすぎてガチの夢の国に行っちゃうところだったよ!!夢の国っていっても、ネズミはいないよー!多分!」
「アンタそれ、よくおしおきされなかったわね。故意の居眠りはルール違反じゃなかった?」
「えへへ…」
「…あ、あの…」
「ふわぁ…探索中に寝ちゃダメですぅ。」
「お前が言うな!!」
「カツにいツッコミのキレがいいね〜!さすがキャプテン!」
「それ、なんか関係あるんスか?」
「…えっと、」
「おい、お前ら。一回静かにしろよ。床前が何か言いたがってるだろ。」
「えっ、嘘!?ごめん、聞こえなかったわ!」
…お前、それ前も言ってなかったか?
どいつもこいつも、なんで床前を無視すんだよ。
「ごめんなさい、私の声が小さいせいですよね…」
「別に俺は気にしてねぇよ。…そんな事より、気になる事って?」
「…えっと、美術館に、私達の肖像画が展示されてたんです。」
床前は、自分のしおりの画面を全員に見せた。
そこに写っていたのは、俺達全員分の肖像画だった。
…うっわ、俺こんなにモブ顔だったか?
自分ではもう少しイケてる部類に入る顔だと思っていたんだが…
こりゃあモテないわけだ。
って、違う。気にするのはそこじゃない。
なんで、美術館に俺の絵があんのかって事だ。
…ここまで繊細なタッチで描かれてるって事は、俺の顔を間近で見ていた奴が描いたって事になるんだろうが…
そもそも、こんな絵のモデルになった事なんてないはずだしな…
一体誰が、いつ描いたんだ…?
さっきの鈴木達の写真といい、謎はより一層深まるばかりだ。
「あーちゃんの絵だー!!やっぱ、あーちゃんは絵でもW2246−0526並にスーパー美少女だね!!」
「ふはははは!!絵の中の私も美しいが…やはり、私の美しさは誰にも表現できんようだな!!まあ、だいぶ甘めに見て50点ってところか!!」
「…そうですかぁ?そっくりですけどぉ…」
「テメェ、愚民の分際で私の美しさを推し量る気か!?身の程を知れ!!」
「ふわぁ…うるさいですぅ。」
「…私、こんなに鼻高いですかね。」
「カークランド氏、それは嫌味でありますか?現実も絵もブサメンの吾輩に対する嫌味なのでありましょう!?」
「はい?どういう意味ですか?」
…ああ、ダメだコイツら。
完全に自分の肖像画の事に興味が移ってやがる。
お前ら、もう少しこの絵に違和感持てよ。
「うーん、不自然だね。」
やっとまともな感想が出てきた。
そうだよ、普通そうなるだろ。
「私、こんな絵のモデルになった事無いんだけどなぁ。」
「ああ、だよな。こんな絵、誰がどうやって描いたんだろうな。」
俺は、席から立ち上がり、猫西のしおりを覗き込むようにして言った。
「ひゃあっ!?み、見ないで!!」
猫西は、顔を真っ赤にしながら跳び上がり、急いでしおりの電源を切った。
さっきまで、普通に織田とかにも見せてたくせに…なんで俺は見たらダメなんだよ。
「え?そんなに見られたくないのか?別に、言ってもただの肖像画だし…ちょっとくらいいいだろ。」
「やだ!!絶対ダメ!!どうしても見てほしくないの!!」
猫西は、顔を真っ赤にしたまま両手でしおりを握りしめていた。
…なんでここまで嫌がるかなぁ。別に如何わしい写真が写ってたわけじゃねぇだろ。
「…まあ、そこまで嫌がるなら無理には見ないけどよ。床前、他に気になる物とかはなかったか?」
「えっと…そうですね、あとは…謎の女性の像があったくらいでしょうか。」
床前は、しおりをスクロールして、別の画像を見せた。
そこには、ツインテールのギャルの像が写っていた。
非常に精巧に造形されたブロンズ像で、まるで生きているかのようにも錯覚した。
像の下部に、名前が彫られているらしいが、写真が粗くてよく見えない。
この女は…一体何者なんだ?
「…江ノ島盾子。」
鈴木が、ボソリと呟いた。
「…え?」
全員が、鈴木に注目した。
「鈴木、お前今何て…」
「え?ああ、この像の下に彫られてる字を読んだだけよ。…ん?どうしたのみんな?アタシ、何か変な事言ったかしら?」
「いやいやこの画像、結構粗いっスからね!?そんなのまかり通るわけないっス!」
「ありゃりゃ。やっぱりごまかせなかったかー。」
「はぁ!?ごまかすって何だよ!!きなクセェなこのオカマ野郎!!さてはテメェがスパイか!?」
「クレハちゃん!!アタシはオカマじゃなくてオネエだって何度言ったらわかるの!?」
…まだ、わからない事は多い。
俺たちがどうやってここに来て、どうしてこんなゲームに参加させられているのかすら、わからないままだ。
今は、何でもいいから情報が欲しかった。
俺は、思い切って鈴木に質問した。
「…なあ、鈴木。」
「ほぇ?なあに、サトシちゃん?」
「単刀直入に聞くが…お前は、一体
「…き、菊池さん…?…一体何を…」
「んー…その質問、どういう意味?」
「そのままの意味だ。お前は、この合宿について、何か知ってるんじゃないか?」
「ちょっと待って。言ってる意味が全然わかんない。ちゃんと説明して?」
「…展望台で、変な写真を見つけた。これ、お前だろ。」
俺は、写真を鈴木に見せた。
「…あー。そうね。確かにアタシね。うん。」
「これを見ても、何も心当たりが無いって言えるのか?…お前、やっぱり何か知ってるんだろ。」
「ええ、知ってるけど?」
は?
え、ちょっと待って。
頭がついてきてないんですけど!
…いや、確かに質問はしたけど…まさかここまであっさり白状されるとは…
なんか逆に調子狂うな…
「ま、待て!…なんであっさり認めた?」
「んー、そんな写真見せられたんじゃ、ごまかしてもムダっぽかったし?だったら認めちゃってもOK的な?」
「的なってお前…」
「でもごめんね。やっぱり、話さない方が身のためだと思うわ〜。」
「はぁ!?どういう事だよそれ!!」
「さあね。少なくともアタシは、なんでアンタ達がここにいるのかも、外の世界で何があったのかも知ってるわ。」
「だったら…!」
「でも、アタシから話す事は何も無い。そんなに知りたかったら、自分で調べてみたら。」
「えー!?そんなのアリー!?さくらちゃんのケチ!!」
「テメェ、やっぱりスパイだったか!!」
「にゃはは、スパイどころか、黒幕だったりしてー!」
「ちょっと、やめてよ三人とも…!こんな時に、疑心暗鬼になるような事言わないで!」
「そうっスよ!ただでさえこれから動機が発表されるっていうのに…もう、この話題はやめましょうよ!」
「…私も賛成。いつまでも、こんな気味が悪い奴の話なんて聞きたくない。」
「ちょっと、ユミちゃんひどくない!?アタシ泣きそうなんだけど!」
「…じゃあ、色々思う所もあるが、とりあえずこの話は一旦なかった事にして…いいよな、菊池?」
「…あ、ああ。」
今無理に聞いても何も出てこないだろうからな。
俺も、情報が欲しいあまり、冷静じゃなくなっていたようだ。
軽率な発言で、みんなを不安にさせちまった。
一旦頭を冷やそう。
「そうだ、神城。お前らの方はどうだった?」
「フン!!私に気安く話しかけんじゃねぇよサッカーバカが!!」
「ふわぁ…広い日本式のお風呂でしたぁ。変わったとことかは特になかったですぅ。」
「男湯も、変わった所は特に無かったわ。」
「ヒッ…」
織田が、鈴木の視線に怯えている。
…さっきは、よほどのトラウマを植え付けられたらしいな。
「なるほどな…じゃあ菊池、お前らの方はどうだった?」
「展望台には、さっき見せた写真が落ちてた。あとは、望遠鏡があったくらいだな。」
「ボーエンキョー!?わーい、あーちゃん後でテンボーダイ行こーっと!!」
「うん、その他には特に報告する事とかは無いかな。…あれ?って事は、報告は全員終わったって事でいいのかな?」
「そうっスね、時間もちょうどいいし…そろそろ昼食にするっスか?」
俺達は、小川の提案で、少し早めの昼食を食べる事となった。
今日も、鈴木の個性的な料理だった。
…コイツ、変なところ攻めてくるくせに、ちゃんと美味く作れてるから腹立つんだよな。
俺の方を見ていちいちドヤ顔してくるのも腹立つ。
チクショウ、人の事をバカにしやがって…
「美味しいですね、鈴木さん。」
「うふふ、ありがと♡ジェイムズちゃんには、特別にアタシの秘密のレシピを教えてあげようかしら?」
「本当ですか!?是非お聞かせ下さい!!」
「…カークランド氏、やめた方がいいですぞ。…下手に手を出すと、喰われますぞ。」
「喰われる…?鈴木さんは、カニバリストなのですか?」
「そういう意味の喰うじゃねえよ!!そんな事もわかんねぇのかよ、間抜けが!!」
「いや、むしろ知らない方がいいんじゃないの?食事中にする話でもないし。」
「ふわぁ…僕としては、ジェイムズには純粋なままでいてほしいですぅ。」
「あの、皆さんは、意味を知っていて仰っているのですよね?宜しければ、私にも教えて頂きたいのですが。」
ジェイムズは、首を傾げながら、無邪気な子供のように質問を投げかけた。
…マジかよ、コイツ…何でも知ってそうな顔して、そういう事は全く知らないんだな。
いくらなんでも無垢すぎんだろ。…何というか、やっぱり箱入りなんだな、コイツ。男だけど。
「カークランド君…教えてあげる代わりに、もう外ではその話しちゃダメだよ。」
「…?はい、分かりました。」
「じゃあ、耳貸して。」
猫西は、赤面しながらジェイムズに耳打ちした。
「…おやまあ、先程織田さんが仰ったのは、そう言う意味だったのですね。配慮が足らず、申し訳ございませんでした。」
流石に、食事の場に相応しくない質問をしてしまった事にはマズいと思ったらしい。
ジェイムズは、深く頭を下げて謝罪した。
「ねえねえ、みんなさぁ、ア●●フ●●クの話してないでさ、早くご飯食べようよ。冷めちゃうよ?」
「ぶふぉあッ!!!」
クソガキの爆弾発言に、つい飲んでいた麦茶を吹き出した。
「うっわ!!きったね!!私の美しすぎる体にテメェの汚物がかかったらどうしてくれんだよ!!」
「…汚い。」
「き、菊池さん…大丈夫ですか…!?」
床前が、ハンカチを貸してくれた。
「…ああ、悪い。ありがとう。」
俺は、床前のハンカチで口を拭いた。
こんのクソガキィイイイイイイイ!!!
なんで人がわざわざ聞こえないように言ったことを、微塵もオブラートに包まずにデカい声で言うんだよ!?
っていうかそもそも、なんでお前みたいなガキがそんな事知ってんだよ!!
もうお前は黙ってろ!二度と口を開くな!
俺達は、なんとも言えない空気の中で、昼食を食べた。
全員の食事が終わり、動機発表の12時まであと30分となった。
食後の後片付けをしていると、猫西がみんなに言った。
「…ねえ、私から、みんなに気をつけて欲しい事があるんだけど。」
「んー?なあにうぇすにゃん?」
「今から動機が配られるじゃない?…その時、見終わるまでは部屋にいてもらいたいんだ。」
「えー!?なんでー!?」
「…誰かが、秘密を覗き見するかもしれないからって事?」
「うん…やっぱりさ、私はみんなの事を疑いたくない。でもさ、何もしないと、何かあった時に、誰かを疑わなきゃいけなくなっちゃうでしょ?…だからお願い。私は、みんなの事を信じたいんだ。」
「そう言う事でしたら、喜んで協力しますよ。」
「そうっスね、その方が安心っスかね。」
「うふふ、アヤカちゃんが言うなら、アタシ喜んで協力しちゃうわ〜。」
「うぇすにゃんがゆーならしょーがないなぁ、あーちゃんも約束守るよ〜。」
「…わ、私も…」
「猫西氏との約束ならば、命懸けで守りますぞ!!」
「…別に、命懸けなくていいけど…みんな、ありがとう。」
「猫西、お前が言うなら協力するよ。」
「菊池君…えへへ、ありがとう。」
猫西は照れ臭そうに言った。
…そんなに嬉しいのかよ。
俺達は解散して、それぞれ個室に向かった。
ちょうど12時になった。
ヴーーーーーッ
しおりからバイブ音が聞こえる。
…ついに来たのか。
『誰にも知られたくない弱み』とやらが…
俺は、しおりを確認した。
…一体、誰の弱みを見ることになるんだ?
【超大学生級のオネエ】鈴木咲良クンの弱み
…鈴木の弱みだと?
アイツ…何か知ってそうな雰囲気だったけど…
もしかして、ここでアイツが何を知ってるのか知れたりしないか…?
俺は、ゆっくりと画面を下にスクロールした。
画面は、空白が続く。
下に動くたびに、心音が大きくなる。
…鈴木の秘密…
一体、アイツは何を知っているんだ…?
「ーえ。」
俺は、思わずしおりを床に落とした。
そこに、信じられない内容が書かれていたからだ。
それが本当だなんて、俺は信じたくなかった。
…そんな、鈴木…
お前は…
【超大学生級のオネエ】鈴木咲良クンの正体は、元【超高校級の死神】伏木野エカイラクンです!