ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

23 / 75
第3章(非)日常編②

【超大学生級のオネエ】鈴木咲良クンの弱み

 

『超大学生級のオネエ』鈴木咲良クンの正体は、元『超高校級の死神』伏木野エカイラクンです!

 

 

 

…嘘だろ?

そんな…

鈴木が殺人鬼だったなんて…

この事は、本人に確認すべきか…?

いや、でも…

 

ピンポーン

 

「!!?」

思わず、飛び上がってしまった。

…ドアの向こうに誰かいるのか。

俺は、恐る恐るドアを半分だけ開けてみた。

「…?」

そこには、

 

右手にナイフを持った鈴木が立っていた。

「ヒッ!!?」

俺は、思わず尻餅をついた。

「…あれ?サトシちゃん?どうしたのそんなにビビっちゃって。」

「ど、どど…どうしたもこうしたもねぇよ!なんでナイフなんて持ち歩いてんだよ!それ、一体どうする気だ!?」

「…ああ、これ?」

鈴木は、左手に持っていた皿を差し出して言った。

「梨剥いたんだけど、サトシちゃん食べる?」

…は?

梨…?

「…ははっ、なんだよ…ビビらせやがって。紛らわしい事すんじゃねぇよ。」

「アラヤダ。ごめんね〜。脅かすつもりはなかったんだケド。」

「大体、こんな状況でナイフを持ち歩くなんてどうかしてるだろ…」

「ごめんってば〜。もう一個あるけど、良かったら剥いてあげましょっか?」

「…いや、遠慮しとくよ。」

「ふーん。そうなの。」

鈴木は、ユラユラと身体を揺らしながら、俺の部屋に入ってきた。

…入れてやるなんて一言も言ってないんだが。

すると鈴木は、いきなり予想外の質問をしてきた。

「ねえ、サトシちゃん。…アタシの弱み、見たでしょ?」

「…いや?見てねぇけど?」

俺は、咄嗟に嘘をついた。

…もし弱みを握っている事がバレたら、何されるか分からないからな。

「…ふぅん、ホントに見てないんだ〜。」

 

「じゃあ、アタシの弱みがなんなのか…今ここで教えてあげましょうか?」

「ッ!!?」

鈴木は、持っていた果物ナイフの刃先を俺に向け、ゆっくりと俺に近づいてきた。

弱みを教えるって、コイツ何する気だ…?

まさかとは思うが、今ここで俺を殺したりとかはしないよな…?

「はあ、…やっぱり見たんじゃない。アタシの弱み。」

鈴木は、ナイフをしまい、ため息をついた。

「…え?」

「サトシちゃんさ、今身構えようとしたでしょ。…普通、いきなり刃物向けられて凄まれたら何も出来なくなるわよ。」

あれ?俺…もしかして、カマかけられてた…?

しまった。まんまと嵌められた。

…まずいな。コイツに、俺が弱みを知ってる事がバレてしまった。

「…ねえ、そんなに冷静に状況を分析できるって事は、アンタやっぱりアタシの弱みを知ってるんでしょ。…ねえ、なんでさっきは知らないなんて嘘ついたの?」

…ここは、正直に話すか。

「…俺はただ、あんなものを信じたくなかっただけだ。だが、あえて聞かせてもらう。…お前は、『超高校級の死神』だったのか…?」

 

 

「ですけど?」

…え?

…。

…。

…え!?

ちょっと待て、前にもこんな事あったけど、コイツ色々あっさり認めすぎだろ!

…なんというか、情報を引き出すまでの駆け引きとか全然ねぇよな!?

聞いたこっちが調子狂わされるんだが…

「こういう事言っちゃうと、仲間外れにされそうだったから黙ってたのよ〜。あー、やっと吐き出せた!ねえ、サトシちゃん…」

「ま、待て!ちょっと頭の中整理するから、5秒くれ!」

「…ちょっと、どうしたの急に。」

 

正直、全然頭がついてこれてねぇけど…

少し頭を冷やして、冷静に考えてみるか。

…認めたくはなかったが、やっぱり鈴木は『超高校級の死神』エカイラで間違いないだろう。

そしてどういうわけか、その事をみんなに黙ってたと…

「…よし、少し頭の整理ができてきた。…お前は、本物のエカイラで、それをみんなには黙ってたと…そういう事でいいんだな?」

「ええ、そうね。」

「…一応聞くが、なんで黙ってた?」

「えー、だって、みんなだって殺人鬼と一緒に合宿なんてしたくないでしょ?アタシがエカイラだって言ったら、ハブられると思ったから黙ってたワケ。」

…コイツ。

「なんで人を殺してたんだ。…お前、一体なんなんだ。」

「アタシはエカイラちゃんだって言ってるでしょ?人を殺したのは、そうねぇ…ウザかったから?」

コイツ、よくそんな外道な事を平気で言えるもんだな。

「ああ、別に何もしてない一般人をいきなり殺したりとかはしてないわよぉ〜。ただ、クスリとか人とかを売りさばいたりとかしてたオジサンとかをサクッと殺っちゃったり〜」

「もういい。…お前は、今は誰かを殺す気はねぇのか?」

「ええ。今言っても説得力無いかもしれないけど、アタシ、みんなとは仲良くしたいと思ってるのよん?アタシはみんなの事が大好きだもの♡…第一、人を殺したのがバレたらおしおきされちゃうものね〜。」

今更何を言っているんだコイツは。

そんな事を聞かされて、仲良くしろというのは無理があると思わないのか。

「…今は誰も殺す気が無いと分かっただけでも十分だ。」

「うふふ、もちろん、サトシちゃんの事もだーい好きよ?」

「やめろ。…ところで、お前は誰の弱みを見たんだ?」

「ああ、それね。アタシは、ケンタロウちゃんの弱みを見たわ。」

「…へえ。」

織田の弱みを見たのか。

内容までは知ろうとは思わねぇけど、誰が誰の弱みを知ってるのかくらいは知ってて損はないな。

「ケンタロウちゃんのエッチな本の隠し場所は、本棚の裏らしいわよ。」

はっ!?

何勝手に人の弱みを言いふらしてんだコイツ!!

「誰が言えっつった!?」

「アラヤダ。知りたいのかな、って思って。」

「簡単に言いふらすなよ…お前の弱みじゃねぇんだぞ。」

「そうねえ。次からは気をつけるわ〜。」

「次からじゃ遅えよ。」

「キャー、ごめ〜ん♡」

「…はあ、なんかお前と一緒にいると疲れるな。そろそろ出て行ってくれないか。」

「えー、サトシちゃんのケチー。」

鈴木…もとい、エカイラは不満そうに俺の部屋を出て行った。

「…なんなんだよ、アイツ…」

 

部屋の外に出ると、全員が弱みを見終わったらしく、みんな部屋の外を歩いていた。

「…まさか、アイツがエカイラだったなんて、誰も思わねぇだろうな。」

「サトにい!!」

後ろからクソガキが話しかけてきた。

「…なんだ。」

「あのね、あーちゃん、サトにいのヒミツ見ちゃったんだ!!」

…何?

俺の弱みを…?

マズいな…コイツ、絶対言いふらすぞ…

「おい、声がデカい。あんまり無闇に人の弱みを…」

「サトにいは中2までバタ足すらできなかったってマジ!!?」

「だから声がデカいっつってんだろ!!もう喋んな!」

ふと目線を上に上げると、射場山が白い目で俺を見ていた。

織田は、俺の事を小馬鹿にしたような目で見ていた。

言っておくがお前の弱みも、人の事をバカにできねぇからな!?

…そしてお前は視線が冷たすぎんだよ、射場山。

チクショウ…俺の印象最悪じゃねぇか。

せっかく高校に上がるまでにはなんとかカナヅチを克服したのによ。

まさかこんな所で黒歴史を掘り起こされるとは思わなかったぞ。

なんて事してくれたんだ、このクソガキ。

「えへへ〜。」

えへへじゃねえよこの野郎…

よくも俺の黒歴史を言いふらしやがって。

ガキだからって、許される事と許されない事とあんだろうが。

お前はもう二度と口を開くな。そうすりゃ全員笑顔だ。

…しかし、この後どうしようか?

こんな状態で、誰かと一緒に行動するなんて、それこそ地獄でしかないんだが。

…とりあえず、人が集まらなさそうな水族館にでも行ってみるか。

 

 

ー水族館ー

 

水族館にある巨大な水槽は、水を入れ替えられて綺麗な状態に戻っていた。

サメも、ここで森万が死んだ事を忘れたかのように、呑気に泳いでいる。

森万羅象なんて人間は、最初から存在しなかったと言わんばかりに、全てが元通りに戻っていた。

「…ん?」

ふとステージを見ると、花束が置かれていた。

多分、床前が置いたんだろう。

…やっぱり、全てが元通り、ってわけにはいかないよな。

「…お前の無念は、絶対に晴らしてやる。」

俺は、そう心に決め、水族館を後にした。

 

その後は、売店に行った。

裁判でゲットしたメダルをマシーンに入れてガチャを回す。

中から、マジック用のコインに万年筆、ゲーム機、そして桜のペンケースが出てきた。

…自分で持ってても使わねぇんだよなぁ。

誰に渡すかな。

 

俺は、その後美術館に向かった。

…さっきの公開処刑の件と言い、やっぱり今は誰とも一緒に行動したくねぇんだよな。

できれば、絵でも見て心を落ち着けたいものだ。

 

 

ー美術館ー

 

…。

なんだこれは。

 

美術館には、絵画や彫刻が展示されていた。

肖像画と銅像以外は、どれも有名な作品の顔をモノクマやモノハムに変えたものだった。

心を落ち着けるどころか、吐き気しか催さない。

…アイツら、どこまで要らない事をすれば気が済むんだ。

「…あ、あの…」

後ろから声が聞こえたので、振り返って確認した。

後ろには、床前がいた。

「…床前か。どうした?」

「…!」

床前は、いきなり泣き出した。

「えっ…おい、どうしたんだよいきなり。俺、何か変な事したか?」

「…いえ、気付いて貰えると思わなかったので…つい…」

声に気付いただけで嬉し泣きするって…どんだけ今まで無視されてきたんだよ。

「おい、わかったからもう泣くなよ。」

「はい…すみません、私…影薄いし…声が小さいから、すぐに忘れられてしまって…こんなにすぐに気付いていただけたのは、初めてで…すごく嬉しくて…つい、感情が溢れ出てしまいました。」

「それは別にいいけどよ…とりあえず、一回落ち着けよ。」

「…はい。わかりました。」

「…よし、じゃあ聞くけど…お前も、ここに暇潰しに来たのか?」

「は、はい…暇潰しでここに来ただけだったんですけど…菊池さんに会えたので、ラッキーでした。」

床前は、嬉しそうに言った。

…そこまでラッキーな事かなぁ。

適当に彷徨いてたら、誰かしらには会うだろ。

…床前も、こんなふざけたゲームに巻き込まれて、心細くなってたって事なのか?

「…あ、そうだ。そういえば、さっきガチャでゲットしたんだけど…」

「はい、なんでしょうか…」

「これ、やるよ。」

俺は、床前にペンケースをプレゼントした。

「…え?いいんですか…?」

「俺が持ってても使わねえし、お前が持ってたほうがいいだろ。」

「…いえ、でも…この前のプレゼントのお礼もまだ出来てないし…」

「そんなのいいから、気に入ったなら受け取ってくれよ。」

「そんな…私なんかより、他の皆さんに…」

「なんだ、要らないのか。気にいると思ったんだけどな…」

「いえ、全然そんな事無いです!すごく嬉しいです!…でも、本当にいいんですか!?」

「お前もしつけぇな。さっきからやるって何回も言ってるだろ。」

「…あ、ありがとうございます…大切に使わせていただきますね…」

「まあ、別にどっちでもいいけど…あれ?この前やったワッペン、つけてるのか。」

「は、はい…最初は汚してしまうのが嫌でなかなかつけられなかったんですけど…これをつけていれば、菊池さんに気付いていただけるかと…」

そこまで言ったところで、床前は急に顔を真っ赤にした。

『しまった』と言いたげな様子だった。

「…気づく?俺、お前の事を無視した事あったっけ?むしろ、他の奴の方が…」

床前は、俺が何もわかってない事に対して、安堵しているようにも、残念に思っているようにも見える表情をした。

…気づくってなんだよ。全く心当たりねえんだけど。

「…そうですか。…えっと、あの…」

床前は、何か言いたそうだった。

…何を言いたいのかは、大体察しがついた。

「…なあ、良かったら一緒に暇潰さないか?この前読んだ本の話でもしてさ。」

床前は、とても嬉しそうな表情をした。

「…は、はい…!私で良ければ…!」

 

それから、俺たちは二人でこの前読んだ本の話や、中学時代の話などをした。

床前は、あまり自分の話はしたがらなかったが、俺の話は面白そうに聴いてくれた。

…普通、俺が話そうとしたら大抵の奴は逃げるぞ?

今思えば、小坊の頃から『妖怪ロンパ小僧』って下級生にあだ名付けられては街中の住民に言いふらされたりしてたっけ。

「…俺の話なんか聞いても、面白くないだろ?なんでそんなに笑ってんだ?」

「…いえ、本当に面白かったので…あの、不快…でしたか?」

「いや、別に全然そんな事は無いんだけど…お前、変わってるな。」

「…そ、そうですか?私は、菊池さんとお話しできて楽しかったですよ…?」

今までそんな事を言われた事がなかったので、逆に調子が狂った。

…いや、別にだからって逃げられんのが嫌じゃないっていうわけではないんだが。

「…ふふっ、菊池さんとこんなに楽しい時間が過ごせるなんて、ラッキーでした。」

「『超高校級の幸運』だけにってか?」

「…。」

床前の顔が暗くなった。

…しまった。つい、軽率な発言をしてしまった。

そうだった。コイツは、自分の『才能』が嫌いなんだった。

「…ごめん。今のはデリカシーなさすぎたな。…大丈夫か?」

「…菊池さん、私の心配なんてなさらないでください…こうなってしまったのは全て、私のせいなんです。」

「なっ…」

「私の『才能』のせいで、皆さんが亡くなったんです…私が幸福になればなるほど、他の皆さんが亡くなっていく…」

「おい、もうやめろ!お前のせいじゃない。自分を責めるな!」

「いいえ、全部私のせいです。私の『才能』は、皆さんを不幸にするんです。…それなのに、本物の『幸運』を手に入れれば人が死ぬってわかっているはずなのに、それでも私は幸せでいたいって思ってしまうんです…!…だから、私みたいな最低な人間は、生き残っちゃいけないんです。…こんな事なら、近藤さんが殺される前に死んでおけばよかった…!」

 

「いい加減にしろ!!」

「!!」

「さっきから聞いてりゃ、全部自分のせいだのみんなを不幸にしているだの好き勝手言いやがって…挙句の果てに、死んでおけばよかっただと!?ふざけんなよ!言っておくけどな、お前が死んだところで、こうなる事は避けられなかったんだよ!」

「でも、私は生きてちゃ…」

「生きてちゃいけねぇ奴なんて、いるわけねぇだろ!それがたとえ殺人鬼でも、人の命を平気で粗末にするバカでもな!」

「私は、生きてるだけで周りを不幸にするんです…!」

「そんなのただの偶然に決まってんだろ!仮にお前の『才能』が本物だったとしても、誰もお前のせいだなんて思ってない!だからもう自分を責めるな!」

「…こんな私でも、幸せになっていいんですか?」

「当たり前だろ!」

「…ありがとうございます。」

床前は、泣きながら微笑んでいた。

「…私、自分の『才能』も、自分の事も嫌いだったんです。でも、あなたのおかげで、少しだけ…生きていたいって思えました。…ありがとうございます。」

「…別に、俺は何もしてねえよ。ただ、これ以上仲間が死ぬのを黙って見ていられなかっただけだ。」

「…ふふっ、私…菊池さんのそういう所がす…」

そこまで言ったところで、床前は顔を真っ赤にした。

「…そういう所が、なんだ?続きを言えよ。」

「な、なんでもないです…!忘れてください…!」

床前は、俺をポカポカと叩いた。

「おい、痛…くはねえけど、やめろよ。っていうか続き話せよ、気になんだろうが!」

「きゃっ!?」

「おわっ!?」

俺が肩を掴むと、床前が急に転んだ。

つられて俺も転んだ。

 

ドサッ

 

俺は、床前に覆い被さる形で倒れた。

「痛って…おい、大丈夫か…」

右手に、柔らかい感触があった。

「…。」

恐る恐る見てみると、俺は右手で床前の胸を掴んでいた。

床前は、顔を真っ赤にしながら涙目で俺を見ている。

俺は、反射的に土下座をした。

「ごめん!!本当にごめん!!ごめんなさい!!」

「…あ、えっと…その…足元を確認しなかった私のせいですから…」

「いえ、全部俺のせいです!!誠に申し訳ございませんでしたァ!!」

俺は、地面に額を擦り付けて全身全霊の土下座をした。

俺とした事が、不可抗力とはいえ女子にセクハラしてしまった。

これじゃあ、織田以下…いや、織田なんかよりよっぽど屑野郎じゃねえか。

俺の額は擦れようとなんて事はないが、床前は、好きでもない男にいきなりこんな事をされて傷ついたに決まっている。

俺が額から血が出る程土下座しても、絶対に許される事じゃない。

「あっ…えっと、菊池さん…もうよしてください。菊池さんは、私のドジに巻き込まれただけで、何も悪くないです…」

なんて優しいんだ床前は。

こんな最低のセクハラ野郎を許すばかりか、庇ってくれるというのか…

天使…いや、女神かこの人は。

 

俺が女神(とこまえ)の慈悲に感動していると、いつの間にか夕食の時間になっていた。

「き、菊池さん…もうそろそろ、行きましょう。」

「…そうだな。」

 

《床前渚の好感度が上がった》

 

 

ーレストランー

 

レストランには、すでにみんな集まっていた。

「あれ?菊池先輩に床前先輩じゃないっスか。珍しい組み合わせっスね。…二人とも、なんかあったっスか?」

「…ああ、いや?別に…」

床前の顔をチラッと見ると、さっきのハプニングが思い出されてしまった。

…柔らかかったなぁ。

ーって、俺はなんて想像をしているんだ!?

女神(とこまえ)に許してもらえた後でこんな想像するとか、それこそ本物の屑じゃねえか!

…クソッ、あまりにも不潔すぎる想像をしてしまった。

もうマトモに床前の顔見れねぇよ…

「…菊池さん、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」

床前、お前はなんていい奴なんだ。

…それに比べて俺は…今すぐにでも消えたい。

「アラ?サトシちゃんどうしたの?早く食べないと、冷めちゃうわよ。」

「…ああ、そうだな。…いただきます。」

全員で夕食をとった。

「あー、ねえねえそういえばさ、エカイラって誰なんだろーねー!?」

「この中にいると言う話でしたけれど…」

「ああ、それね。アタシよ。」

…。

…。

…。

…えっ!!?

「…と、いうと?」

「アタシが、元『超高校級の死神』エカイラよ。みんな、これからはアタシの事、『エカイラちゃん』って呼んで構わないわよ♡」

「お前かよ!!?」

玉木と小川と神城の怒涛のツッコミが、レストラン中に響き渡る。

…そりゃそうだ。

いくら隠し通せなくなったからって、いきなり白状する奴があるか。

「…え、ちょっと待ってよ…じゃあ君は,ネットの噂通り殺人鬼なの…?」

「ええ、そうよ。気に入らない人間は、何人も殺してきたわ。あ、もちろん、みんなの事は殺さないわよ?エカイラちゃん、みんなの事大好きだもん♡」

「信用できるか!!」

「まあ、殺人鬼宣言した後で人殺したら真っ先に疑われておしおきされることぐらい、鈴木さんもわかってるだろうし…そこだけは信用してもいいんじゃないかな?」

「や〜ん、アヤカちゃん優しい〜♡アタシ嬉しすぎて泣いちゃう〜♡」

…ダメだ、やっぱりコイツといると疲れる。

 

全員が夕食を食べ終わった後は、みんな話し合っていた。

「ねえねえ、あーちゃんからテーアン!!この後さ、みんなで温泉行こーよ!」

「いいっスねそれ!後で全員で行きましょう!」

「…あ、私行きたいです…。」

「…ん。」

「ふわぁ…」

「フン、私は女神のように寛大だからな!たまにはテメェらのような愚民に合わせてやらんでもない!!」

お前、本当は一緒に行きたかったんだろ。

「うぇすにゃんはー?」

「あー、私はいいかな。あんまり広いお風呂だと逆に落ち着かないんだよね、私。部屋のお風呂に入ろっかな。」

「ふーん。じゃあ、6人で行くぞー!!」

女子は、みんなで温泉に行くのか。

俺も後で行ってみようかな。

 

 

ー温泉ー

 

「おや、菊池さん。こんばんは。」

男湯から、浴衣を着たジェイムズが出てきた。

「こんばんはって…ついさっきまで一緒にレストランにいたけどな。お前は、もう温泉に入ったのか?」

「ええ、お先に上がりました。…私、つい日本式のお風呂に興奮してしまって…走り回っていたら、転んでしまいました。」

ジェイムズは、手当てをした膝を見せた。

風呂上がりのせいか、絆創膏が真っ赤になっている。

「…お前、それ大丈夫なのか…?どう見てもその絆創膏じゃ間に合ってねえだろ。」

「これしか持ち合わせておりませんでしたので…」

「へえ、そうなんだ…」

「菊池さん、ここのお風呂は素晴らしかったですよ!これぞ日本の銭湯、という感じでした!…つい、テンションが上がりすぎて走ってしまうくらいfantasticでした!」

「それは楽しみだな。…でもあんまり風呂場で走らない方がいいと思うぞ。」

「反省しております。えっと…てへぺろ、です。」

反省してねぇじゃねえか。

…今まで勘違いしてたけど、ジェイムズって意外と子供なんだな。

そこへ、何故か風呂敷を顔に巻いて、泥棒のような格好になった織田が、カメラを持ちながら男湯へ入っていった。

「おや、織田さん!どうかなさったのですか?」

「シーッ」

織田は、人差し指を口に当てた。

そして、俺達が黙ると、男湯の方へと手招きした。

「…おい、どうしたんだよ織田。」

「シッ、声が大きいですぞ、菊池氏!」

「お前こそ、そんなヒソヒソ声で何やってんだ?」

「…ムフフ、それは…覗きであります!」

「の、覗きィ!?」

「シーッ!!声が大きいですぞ!」

「ですぞ、じゃねえよ!何しようとしてんだよお前!男としてやっていい事とやっちゃダメな事とあんだろうが!」

「…nozokiですか。日本の漫画で何度か読んだ事がありますが…あれは、日本の文化なのでしょうか?」

「違う!断じて違うぞジェイムズ!だから早まんな!!」

「ムフフ、カークランド氏よ。我が国の事をもっとよく知るいい機会ですぞ。吾輩に協力しなされ!」

何変な事吹き込んでんだ!

お前はもう黙ってろ!

「はい、勉強させて頂きます!」

お前もお前でピュアすぎんだろ!

もう少し疑う心を持て!

「あら。アンタ達何やってんの?」

後ろから、エカイラが話しかけてきた。

「す、鈴木氏!?」

「アラヤダ。もうエカイラちゃんって呼んでもいいって言ったじゃない?」

「…そうですか、では…エカイラちゃんさんも、お風呂に入りに来たのですか?」

「エカイラちゃんさんって!どっかのユ●セフの大使じゃないんだから!普通に呼んで頂戴!…って、話が逸れたわね。ええ、アタシもお風呂に入りに来たのよ。…アンタ達こそ、こんなところでコソコソ何やってんの?」

「…えーっとな、「nozokiです!I am studying Japanese culture(日本の文化を勉強しているところです)!」

「んなぁ!?カークランド氏!?何言いふらしてるんです!」

「…アラ、そういう事なの。…ジェイムズちゃんも、変な事吹き込まれて大変ねぇ。」

「…あれ?怒らねぇのか?」

「うふふ、いいじゃないそういうの。青春っぽくて。アタシも参加させて貰おうかしらん?」

嘘だろ!?

「まあ、エカイラちゃんさんもお仲間ですね!なんだか心強いです!」

「ムフフ、4人集まれば、敵などおりませぬぞ!」

…4人?

いやいや、聞き間違いだろ?

「…おい、まさかとは思うが、俺もパーティーに入れられてたり…なんて事はないよな?」

「何を言っているのでありますか!ここまで付いてきたのです、菊池氏も共犯ですぞ!」

…。

…。

…。

 

う そ で し ょ ?

 

「さあ、そうと決まれば作戦会議よぉ〜!ケンタロウちゃん、何か策はあるの?」

「もちろんであります、付いて来なされ!」

織田は、俺たちを露天風呂の方に引っ張っていった。

「…こんなところに連れてきて、どうするの?」

「ムフフ、この仕切りの向こうは、女湯になっているのであります!隙間からうまく覗けば…」

「これです!これこそが私の求めていた“aoharu”です!」

「…多分違うと思うぞ。」

「うふふ、ここまで来たら、楽しませて貰うわよぉ〜!」

コイツら、平気でこんな犯罪紛いに手を染めやがって…

後でどうなっても知らないぞ…って、俺もそんな事言えない立場だった。

「…くっ、湯気が邪魔であります!…もう少し…」

織田が、竹の仕切りに顔面を押し付ける。

…凄いな、コイツの執念。

「見え…」

 

ズヌッ

 

「!!?ぎゃあああああああああ、ああああああ!!目が、目がぁああああああ!!」

いきなり織田が目を押さえて転げ回った。

「キャアアアアアア!!ケンタロウちゃーん!!」

「織田さん!しっかりして下さい!まだバ●ス言ってませんよ!」

恐る恐る仕切りの隙間を見ると、射場山が鬼のような形相でこちらを睨んでいた。

よく見ると、人差し指をこちらに向けている。

その瞬間、織田が何をされたのかを全て理解した。

「ああん、もうバレちゃったわ!ここは退散よ!」

「えええ!?もう行くんですか!?まだaoharu出来てません!」

「今はそれどころじゃないわ!ほら二人とも、急い…で…」

エカイラが振り向くと、そこには玉木がいた。

「…なあ、お前ら何やってんだ?」

玉木は、笑顔で話しかけてきた。

「え、えーと…夜風を浴びに…」

「全部見てたぞ。…もう一度聞くぞ。…ここで何してた?」

玉木は、笑顔で一歩ずつ近づいてくる。

だがその笑顔には、怒気が宿っていた。

「…な、なあ玉木…俺たち親友だろ?…は、話せばわかるって…」

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

ーレストランー

 

俺たち三人は、主に玉木と射場山にボコボコにされたのち、キツい説教を喰らった。

「…最低。」

「やっぱサトにいはハンザイシャヨビグンだったんだー!!」

「ふわぁ…みんな変態ですぅ。」

「ホント、何考えてるんスかね…」

「ケッ、テメェらよくも私の神聖な体を見ようとしやがったな!?この罰当たり供が!!」

「…あ、えっと…」

「…お前ら、これに懲りて二度とやるなよ。」

「はい…すいません…もう二度としません…」

「ね…ネバーギブアップ…で…ありま…す…」

「アララ、完膚無きまでにボコられちゃったわね〜。」

エカイラは、あれだけ殴られたにもかかわらず、ヘラヘラしていた。

…よくこんな状況で笑えるよな。

コイツのメンタルは鋼鉄で出来てんのか?

「あの、玉木さん、射場山さん…皆さんはただ、aoharuしようと…」

「また変な事吹き込まれて…」

「…反省しろ。」

ポコンッ

「Ouch.」

玉木は、ジェイムズの頭に軽くゲンコツを入れた。

…え?それだけ?

お前ら、なんでジェイムズには甘いんだよ!?

年下だからか?天然だからか?それとも両方か!?

クソッ、理不尽すぎんだろ!

乗り気じゃなかった俺でさえ散々な目に遭ったのによ…

「え?何?みんなどうしたの?」

猫西が、レストランに入ってきた。

「こ、猫西氏!?」

「実は、かくかくしかじかで…」

玉木が、事情を全部説明した。

「…君たちさ、いい加減にしなよ。マジで。」

…呆れられてしまった。

 

 

ー個室ー

 

なんか、今日はエカイラの件といい、ハプニングや覗きの件といい、どっと疲れたな…

今日はもう寝るか。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。