ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第3章(非)日常編③

合宿生活11日目。

…昨日のキズがまだ癒えない。

今日も、7時ちょうどになると、モノハムの不快な声が部屋中に鳴り響く。

俺はいつも通り朝の支度を済ませ、レストランに向かった。

 

 

ーレストランー

 

レストランでは、射場山が朝食を作っていた。

射場山は俺を汚物を見るような目で見た。

…いや、本当に悪かったって。

そもそも、俺は巻き込まれただけだし。

だからその目本当にやめて?

そんなこんなで、全員が集まった。

「わーい、朝ごはーん!!」

「今日は射場山さんの手料理?楽しみ!」

俺たちが席に座ったところで、射場山が朝食の皿を机の上に置いた。

「…え?」

なぜか、俺と織田とエカイラの皿だけには、クッキー一枚だけしか乗っていなかった。

「あのー…射場山さん?これは一体どういう…」

「…別に。変態達のために調理をするのが癪だっただけ。」

「い、射場山氏…まさか昨日の事を根に持って…」

「…。」

射場山は、ムスッとした顔をしていた。

「いやいやいや!だからって流石にこれはないでしょ!いい加減許して貰えないのアタシ達は!?」

「い、射場山さん…流石にこれはやりすぎでは…?」

「…じゃあ何?あんたは、コイツらのした事忘れたわけ?」

「そ、それは…」

「ねえねえ、面白そうだから、3日くらいご飯抜きにしてあげたら?」

お前は何を言ってるんだこのクソガキ!

「いいなそれ!!ふはははは!!せいぜい私を楽しませろ愚民共!!」

「ふわぁ…調理する手間が省けますぅ。」

神城さん、リタさん。あなた達まで、俺達に死ねと言うのですね?

「…なあ、お前ら。俺の分分けてやるから、もうあんな事すんなよ。」

玉木が、自分の朝食を俺達に分け与えてくれた。

「…た、玉木…!」

「私の分も差し上げます。どうやら私は、aoharuがしたいが為に最低な行為に手を染めてしまっていたようなので…私も、皆さんの事は責められません。」

なんか、自分は俺達とは違うみたいな言い方してんのが少し腹立つけど…

ジェイムズなりの気遣いと言うことなのか?

「そうっスね。流石にちょっとかわいそうになってきたっス。自分の分もあげるっスよ。」

「わ…私も…」

「しょうがないなぁ、私も分けてあげるよ。」

「…ああ、ありがとう。」

「うふふ、ありがと♡」

「有り難き幸せ…!」

「おいおい、お前ら。あげすぎだぞ。三人だけ多くなっちまったじゃねえかよ。」

「え。じゃあちょっと返して。」

クソガキが、どさくさに紛れて俺の分を取ろうとした。

「何が『返して』だよ。お前からは一口ももらってねぇんだけど。」

「ギクッ…ふーんだ、サトにいのドケチー!!」

何開き直ってんだコイツは。

本当に『ギクッ』って言う奴初めて見たぞ。

 

全員が朝食を食べ終わった。

玉木達が少し分けてくれたおかげで、腹は満たせた。

…この後は自由時間か。

俺はまず売店に向かった。

 

 

ー売店ー

 

持っているコインをマシーンに入れ、ガチャを引いた。

今回は、ガムが出てきた。見たところ、ミント味らしい。

俺は食わねぇし…誰かにあげるか。

…さてと、次はどこ行くかな…

 

 

『超高校級の超能力者』の個室

 

「…悪いな。ちょっと入るぞ森万。」

部屋は、俺がこの前入った時とあまり変わらなかった。

…だが、やっぱりアイツがいないと広く感じる。

「…ごめんな。何もしてやれなくて。安らかに眠れよ。」

俺は、机の上にコインを置いた。

「…ん?」

机の引き出しが少し開いており、中に手紙のようなものが入っているのに気がついた。

「これは…」

俺は、手紙を引き出しから取り出して読んでみた。

 

…う。

手紙は書きかけで、全部英語で書かれていた。

それも、ところどころスペルや文法を間違えている。

これ…もしかして森万が書いたのか?

…一体何のために?

手紙の下の方を見ると、宛名と思われる文字が書かれていた。

「…えっと…」

かろうじて、ジェイムズ・ドイル=カークランドと書きたかったのだろうな、というのは理解できた。

友達の名前のスペルくらい正しく書けよ…

「…あ。」

手紙から視線を離すと、机に和英辞典が置いてあるのに気がついた。

…コイツ、ジェイムズに手紙を書こうとしてたのか。

「あれ?」

手紙の束に、何か挟まっていた。

見たところ、写真らしい。

何枚か挟まっているようだ。

「…?」

一枚ずつ見てみた。

どれも、森万とジェイムズが一緒に写っている写真だった。

だが、一枚だけ違和感のある写真があった。

そこには、三人の少年が写っていた。

一人は森万、二人目はジェイムズ、そして三人目はなぜか俺だった。

「…俺?」

俺は、コイツらと一緒に写真を撮った事は一回も無い。

明らかに、俺の記憶とは矛盾する写真だ。

…そういえば、この前も変な写真を見たな。

 

『…ここに来てから、実はかなり経ってたりして。』

 

…いや、まさか。ありえねぇだろ。

 

『有り得ない、なんて事は有り得ないよ。』

 

「…え?」

なんだ、今のは…

今、頭の中で何か聞こえた気が…

いや、でも…俺は、こんな声聞いたことないはず…

…じゃあ、今のは一体…?

 

俺は、手紙と写真を持ち出して、森万の部屋を後にした。

「…さて。この後はどうするかな。」

俺はまず暇潰しに図書館に行ってみた。

 

 

ー図書館ー

 

「…本でも読むか。」

俺は適当に本を手に取って、椅子に座ろうとした。

「…あ。」

「ふわぁ。」

既に先客がいたようだ。

リタは眠そうにこっちを見た。

「お前もここで暇潰ししてんのか?」

「そんなとこですぅ。」

「そっか。…ここ座ってもいいか?」

「どーぞぉ。」

リタの許可が下りたので、椅子に座った。

「…。」

座って前を見ると、リタが船を漕ぎ始めた。

「…おい!!」

「はっ!…また寝ちゃうところでしたぁ。あんまり寝すぎるとおしおきされちゃいますぅ。」

「…ったく、気をつけろよ。」

俺たちは、図書館で小一時間ほど本を読んだ。

「…。」

「おい、起きろ!」

「はっ!…すいましぇん。」

…何回目だよこのやりとり。

そこへ、モノクマがやってきた。

『やっほー!!オマエラ、こんな所で何イチャイチャしてんの?いやあ、お熱いですねぇ!ヒューヒュー!』

「してねぇし。っていうか、図書館内は私語厳禁だぞ。静かにできないなら出て行け。」

『うわっ!辛辣!そしてド正論!!ボク泣いちゃうよ!?』

「勝手に泣け。…そんな事より、本題に入れ。」

『そうでした。ボクは、アンカーソンサンに注意しに来たのです!』

「ふわぁ…なんですかぁ?」

『キミの場合、わざと寝てるわけじゃないから特別に見逃してあげてるけど、あんまりやり過ぎるとそろそろおしおきしちゃうよ!裁判中も危なかったから、くれぐれも気をつけてよね!』

「ふわぁ…気をつけますぅ。」

『うぷぷ…それじゃあ、楽しいコロシアイ合宿を!』

そう言うとモノクマは陽気に去っていった。

「…ふわぁ、寝ないようにって…どうすればいいんでしょうかね…。」

「…ガムでも噛んでればいいんじゃねえか?」

俺は、持っていたガムをリタにあげた。

「ふわぁ…これで寝ちゃわなくていいですね。ありがとうごじゃいましゅぅ…」

リタは、ガムを受け取ると口に放り込んだ。

「…。なんか、これあんまり好きじゃないですぅ。」

リタは、眉間に皺を寄せて言った。

…ああ、なるほど…ミント味が嫌だったのか。

「でもそれ噛んでれば目が覚めるだろ。」

「…まあ、それはそうですけど…なんか口の中が気持ち悪いですぅ。」

「居眠りするよかいいだろ。」

「…ふわぁ、そうなんですけど…」

「あっ、いけね。そろそろ昼飯の時間だ。おい、行くぞ。」

「ふわぁい。」

 

《リタ・アンカーソンの好感度が上がった》

 

 

ーレストランー

 

レストランに行くと、小川と猫西が昼食を作っていた。

「サトにいの席無いもんねー!」

クソガキが、席を二つ占領していた。

「おい、座れねえだろ。どけよ。」

「やだよーだ!!なんでサトにいのためにわざわざどいてあげなきゃいけないワケ?マヂイミフー!地べたにでも座ればいいでしょー!?」

流石にイラッとしたので、黙って椅子を一つ引き抜き、そのまま座った。

「にゃあああ!何すんだよー!!いきなりイス引き抜くとかヒキョーだぞー!あーちゃんの100不可思議年に一度のベリーキュートな体にアザができたらどうすんの!?世界中の人類が泣いて自殺すんぞ!」

「するか。勝手に人の席を占領するな。」

「ふーんだ、サトにいのスカポンタン!」

誰がスカポンタンだ。

人の席を占領しといて、そんな事言える立場か。

「二人とも、ケンカはダメっスよ。」

小川は、昼食を持って厨房から出てきた。

「…悪い。気をつけるよ。」

「まあ悪いのは5億%サトにいだけど、あーちゃんは優しいから許す事も考えてあげなくはないよ!」

良くて考える止まりかよ。

っていうか、ほとんどお前が悪いだろ。

…あーあ、飯の前に気分を害されちまった。

「先輩、食事の前にそんな顔するのはよくないっスよ。」

「…ああ、悪い。」

…マジか。

俺、そんなに不快そうな顔してたか…?

 

 

飯を食べ終わった後、ちょうど12時になった。

全員が部屋に戻り、動機を確認する。

…今日は、誰の弱みを見る事になるんだ?

 

 

【超高校級の演奏家】小川詩音サンの弱み

 

『超高校級の演奏家』小川詩音サンは、『超高校級の演奏家』として希望ヶ峰学園に進学するはずだった弟切(オトギリ)魅音(ミオン)サンの代わりにスカウトされた生徒です!

 

 

 

…え?

小川が…『超高校級の演奏家』の…代理?

一体、どういう事だ…?

 

秘密を見終わった後、俺は小川に話しかけた。

「…なあ、小川。ちょっといいか?」

「はい、何スか先輩?」

「そうだな…動機に関する話だから、出来れば人目のつかないところで話したいんだが。」

「だったら、自分の部屋に来るっスか?あ、でも、猫西先輩達に見つからないようにしないとっスね。」

「なんで猫西に見つかるとマズいんだ?」

「…。」

小川は、ありえない物を見るような目で俺を見た。

なんなんだよ一体。

「…一緒に話しますから、ついてきてくださいよ。」

「ああ、わかった。」

俺は、小川の部屋に行った。

 

 

『超高校級の演奏家』の個室

 

「…それで、話ってなんスか先輩?」

「ああ、実は俺…さっきお前の弱みを見たんだ。」

「自分の弱みっスか。…何が書いてあったんスか?」

「えっと…確か、お前は『超高校級の演奏家』として入学するはずだった生徒の代わりだって…どういう事だ?」

それを聞いた瞬間、小川は少し驚いたような顔をした。

『なんで知ってるんだ』と言いたげな表情だった。

「…そうっスか。そんな事が書いてあったっスか。」

「…本当なのか?」

「ええ。本当っスよ。本来なら、弟切魅音っていう、自分の友達だった子が入学するはずだったんスよ。」

「友達…?」

「そうっス。自分が通ってた中学校は、数多くの著名なミュージシャンを輩出してきた音楽の名門校なんスよ。自分も、そこで努力を重ねて、中3の時には音楽の成績で、学年で2番目まで上り詰めたっス。でも、どうしても超えられない壁があったんス。」

「…まさか。」

「ええ。自分の学年でのトップはいつも弟切さんだったっス。弟切さんは美人で頭も良くて、楽器演奏の天才で、いつもみんなの憧れの的だったっス。自分にはただでさえ演奏しか取り柄がないのに、それでさえ弟切さんには勝てなかったっス。」

「…ソイツが、俺たちの同級生になるはずだったのか?」

「ええ。自分は弟切さんの事を尊敬してましたんで、弟切さんが希望ヶ峰にスカウトされた時は、『やっぱりすごいな』って思いましたね。彼女は、自分の一番尊敬する親友だったっス。」

「…()()()?」

「…殺されたんスよ。以前から彼女に付き纏っていたストーカーに。」

「えっ…」

「いきなり乱暴されて、顔もわからないくらいメッタ刺しにされて、山奥に捨てられていたらしいっス。…自分は、弟切さんが殺されてしまって、とても悲しかったっス。でもそれ以上に、弟切さんの未来が、自分の知らないどこかの誰かに台無しにされたのが何よりも許せなかったっス。」

「…。」

「そして、さらに許しがたい事が起こったっス。弟切さんが殺されたニュースが流れた次の日、自分のところに希望ヶ峰からの入学通知が届いたっス。」

「…。」

「…自分は、もちろん弟切さんの『代わり』としてスカウトされた事に納得してなかったっスけど…それよりも、自分の親友が、無くなったらすぐに代わりを用意されるような消耗品扱いされた事が許せなかったっス。…これが、自分が抱えていた弱みっスよ。」

「…。」

小川の口から真実が告げられた。

あまりにも理不尽で残酷な真実に、俺は言葉が出なくなっていた。

本来『超高校級の演奏家』として入学するはずだった弟切魅音は小川の中学校時代の親友だった事、その親友がどこぞの馬の骨に呆気なく殺されて今はもういない事、そして小川は亡き親友の代わりとして希望ヶ峰学園にスカウトされた事…

これが、小川が誰にも言えない弱みだというのか…

「…だから、自分は決めたっス。希望ヶ峰で弟切さんの分まで才能を磨いて、いつか自分を『代わり』としてスカウトした学園を見返してやろうって。」

「…小川、お前は…」

「ああ、別に今は落ち込んでないっスよ。弟切さんの身に起こった事は絶対に忘れないし、今でも許せないって思ってるっスけど…それを今くよくよ悩んでたって、仕方ないっス。それより今は、ここからみんなで出るために頑張らなきゃっスよ!」

小川は、さっきまでの暗い表情を一瞬で笑顔に塗り替え、ガッツポーズをしながら元気よく言った。

「…強いな、お前は。」

「えへへ、そんな事ないっスよ。…ただ、平気なフリしてないと心が保たないだけっス。…近藤先輩や郷間先輩、森万先輩があんな事になった時も、自分は何もできなかったっス。むしろ、ああいう時冷静にみんなを導ける菊池先輩の方が強いと思うっスよ。」

「そんな事ねぇよ。」

俺だって、強いわけでも、冷静だったわけでもない。

ただ、死にたくないって気持ちが、3人が死んじまったショックに勝っちまっただけだ。

もしこんな糞ゲーに巻き込まれなかったら、今頃学園で肩を並べながら笑い合っていた仲だったかもしれなかったのに。

クロだった狗上や速瀬とも、もしかしたら友達になれたかもしれなかったのに。

…今となっては、そんな事を考えても仕方ないが。

「あー、やめやめ!この話はもうやめましょう!いつまでも落ち込んでちゃダメっス!みんなで頑張って、ここを出るっスよ!!」

小川は今までの話を全て無かった事にして、元気よく拳を前に突き出しながら言った。

…いいなあ、小川は。

俺は、そんなに前向きになれねぇよ。

…おっと、またマイナス思考になっちまったな。

俺の悪い癖だ。

いい加減直さないとな。

 

ゾワッ

 

「!!!」

「?どうしたんスか先輩?」

「…いや、ちょっと寒気が…」

「もしかして、この部屋寒いっスか?暖房つけましょうか?」

「いや、もう大丈夫だ。ありがとう。」

「…?そうっスか。」

「じゃあ、俺はこの辺で…色々話してくれてありがとな。」

「いえいえ!こちらこそ、抱えていたものを吐き出せてスッキリしたっス!また色々話しましょうね。…あ、猫西先輩達がいないところで。誤解されちゃうっスからね〜。」

「だから、なんで猫西に気を遣う必要があんだよ。関係ないだろ。」

「…はー、先輩はホントダメっスね!女心をまるでわかってないっス!」

「いや、そう言われても…俺は男だしな…」

「そういう所っス!そんなんだから今まで女の子にモテなかったんじゃないんスか!?」

「…うっ。い、今はそれ関係ねぇだろうが!!」

急に痛いところを突いてきたな、コイツ。

「はいはい、じゃあ夕食の時にまた会いましょう。」

「…そうだな。じゃ、また後でな。」

俺は、小川の部屋を後にした。

…また、あの殺気を感じた。

一体誰が、何のために俺を殺そうとしてるんだ…?

「…夕食までまだ少し時間があるな。」

部屋に入ろうとした、その時だった。

 

「うおっ!?」

 

ドアに、花が挟んであった。

見たところ、黒い薔薇らしい。

造花のようだが、花びらが真っ黒であまりにも不気味だ。

「…なんでこんな物がこんなところに?」

わざわざ丁寧に挟んであるという事は、誰かが意図的に置いて行ったんだろうな。

…何か意味があったりするのか?

俺は、花を手に取って、部屋のゴミ箱に放り込んだ。

「…気持ち悪い。」

夕食の時間になるまで、部屋で本を読んで時間を潰した。

 

《小川詩音の好感度が上がった》

 

…そろそろ飯の時間だし、レストラン行くか。

 

 

ーレストランー

 

レストランでは、床前と玉木が飯の準備をしていた。

織田と猫西は、食事の準備を手伝いながら楽しそうに話している。

…やっぱり、コイツらデキてんじゃねえのか?

クッソ、うらやましいなオイ。

「サトにいー!!邪魔だどけーい!!とうっ!!」

「ぐほぁ!!」

クソガキが、いきなり後ろからドロップキックを仕掛けてきやがった。

「痛ってぇ…何すんだこのクソガキ!」

「クソガキって誰の事?あーちゃんはピチピチのフィフティーンだっつーの!!」

「15歳はいきなり人にドロップキック仕掛けたりしねぇよ…お前、本当にいい加減にしろよ…!」

「おい、モブ!!通行の邪魔だ!!そんな所で寝てると踏み潰すぞ!!」

「ぐはぁっ!!」

今度は神城に蹴られた。

…もう、俺の心と身体はボロボロだよ。

「菊池くん、大丈夫?」

猫西は、俺を心配して駆けつけてきた。

「…ああ、なんとかな。」

「…ねえ、今日も顔色悪いみたいだけど、大丈夫?」

「別になんともねぇよ。」

「そっか、なんか困った事とかあったら言ってね。いつでも相談に乗るよ。」

天使か?天使通り越して神なのかお前は?

「…ああ、ありがとう。」

「えへへ…」

猫西は、わかりやすく照れた。

いや、そんなに嬉しいのかよ。

「うぇすにゃん、あんまりサトにいを甘やかすとバカが感染るぞー!!」

誰がバカだコラ。

 

そんなこんなで、全員が集まって夕食を食べた。

シンプルな和食だったが、普通に美味しかった。

全員が夕食を食べ終わり、小川とエカイラが二人で皿洗いをした。

…さて、夜時間まで時間がある事だし、誰と話そうか?

「…あの、菊池さん。少々お時間宜しいですか?」

ジェイムズが小声で話しかけてきた。

「おう、ジェイムズか。どうした?」

「…菊池さんと、どうしてもお話しておきたい事があるのです。動機に関わる事ですので、場所を変えたいのですが。」

「…動機か。なら、少し場所を変えた方が良さそうだな。どこがいいか?」

「宜しければ、私のお部屋にいらして下さい。お話は、そこで。」

…俺にどうしても話したい事って何だ?

まあ、俺も渡したい物があるし…丁度良いと言えば丁度良いんだが。

俺は、ジェイムズの部屋に向かった。

 

 

『超高校級の大学教授』の個室

 

「…で?話って何だよ、ジェイムズ。」

「菊池さん、今日は貴方の弱みがしおりに届きました。」

「俺の…弱み?」

「はい。このしおりによると、菊池さんは中学生の頃は全く泳げなかったそうなのですが…本当ですか?」

…くっ。

なんで2回も記憶の奥底に葬り去った黒歴史を掘り起こされなきゃなんないんだ。

「…本当だよ。バカにされんのが嫌で、中3の時に猛特訓して、なんとか50mは泳げるようにまでなったんだがな。」

「そうなのですか。」

「…それで?俺に話って、それだけか?」

「あ、いえ。私だけ菊池さんの弱みを知ってしまっている状態では不公平だと思います故、私の弱みをお話しする為に貴方を呼び出した次第です。」

「お前の弱み…?」

「私は昨日、自分の弱みを見ました。…何故学園長がそれを知っているのか、という内容でしたが。」

…やっぱり、みんなそうなのか。

そういや、俺が泳げなかった事も、誰にも言ってないはずだしな。

「自分から話してくれるんならありがたいな。…話してくれるか?」

「…はい。私、ジェイムズ・D=カークランドの弱みは…」

 

「希望ヶ峰学園への進学を決意した真の目的は家出だ、という事です。」

…え?

家出?

「家出って…どういう事だ一体?」

「我がカークランド家は、約800年前から続く伯爵一家で、作家や音楽家から軍人までありとあらゆる著名人を輩出してきた一族なのですが、その当主となる者には、幼い頃から帝王学やテーブルマナー等を徹底的に叩き込まれ、代々受け継がれてきた当主としての人生を送る事を余儀なくされます。私の父も、その一人でした。」

「…へえ、それで?」

「私が当主の最有力候補なのです。私の兄は病弱で寝たきりですし、弟もまだ幼く…あとは全員女兄弟ですので。」

「…お前、一体何人兄弟いんだよ。」

「兄一人姉三人、あと弟と妹が一人ずつです。」

多いな。某暗殺者一家かよ。

「なるほどな…お前は、当主になりたくなくて逃げてきたってわけか。」

「まあ、そうなりますね。だって、窮屈じゃないですか。15歳になったら強制的に当主にさせられて、16歳になったら親が決めた相手と結婚させられるんですよ?そんなの嫌ですよ!」

「まあそうだな…ところで、相手はもう決まってんのか?」

「ええ、まあ。その方には何度かお会いした事があるのですが、私はあまり好きにはなれませんでした。」

「…と、言うと?」

「何というか…重い、って言ったら良いのでしょうか?私の事を愛して下さっていますし、悪い方ではないのですが…彼女と居ると、私が疲れてしまいます。嫌いとかそういう事では無いのですけれど…」

なるほどな。だいぶオブラートに包んで言ってるけど、要はタイプじゃなかったって事か。

「…その相手と結婚するのが嫌で逃げてきたのか?」

「そうです。私は、愛の無い結婚なんて嫌です!もっとaoharuしたいです!だから日本まで逃げてきたんですよ!」

「まあ…確かにな。レールを敷かれた人生ほど退屈なものは無いな。」

「そう思いますよね?本当に、あんな仕来りどうかしてますよ!」

「…だったらいっその事、お前が当主になって、ルールを変えちまえばいいんじゃねえの?」

「…!!」

ジェイムズは、驚いた顔をしていた。

「…どうした?」

「…その手が有りましたか。私とした事が、一生の不覚…!」

…そこに気付かなかったのか。

コイツ、意外とアホなんじゃないか?

「…そうだ、ジェイムズ。」

「…はい、なんでしょうか?」

「お前に渡したいものがある。」

俺は、森万の手紙を渡した。

「…この字は、ヨロズの…」

ジェイムズは、手紙を手に取ると、じっくりと読み始めた。

そして、読み終わった時には、目から涙が溢れ出ていた。

「…本当に、人の気持ちも考えないで…勝手な方ですよ。あの方は。…ヨロズ。貴方とは、コロシアイ等という巫山戯たゲームの無い世界で、きちんとした形でお友達になりたかった…そうすれば、もっと二人で楽しい事が出来た筈なのに。…どうしてこんな事に…!」

ジェイムズは、手紙に大粒の涙を垂らしながら泣いていた。

しばらくして、ジェイムズは泣き止んだかと思うと、俺の目を見て言った。

「…菊池さん。ありがとうございました。貴方のお陰で、ヨロズの伝えたかった事を知る事が出来ました。…決めました。私は、彼の為にも、ここから生きて脱出してみせます。勿論、他の皆様も一緒にです。…その為には、貴方の御力が必要です。私に、力をお貸し下さい。」

ジェイムズは、右手の手袋を外すと、右手を前に出した。

「…もちろんだ。俺も、みんなで一緒にここから出たいと思ってる。協力させてくれ。」

俺は、ジェイムズの手を力強く握った。

何故だか、絶対に諦めないという思いが、心の底から湧き上がってきた。

 

「…ありがとな。じゃあ話は済んだようだし…そろそろ部屋に戻るよ。」

「はい。また明日お会いしましょう。おやすみなさい。」

俺は、ジェイムズの部屋を出ようとした。

「…あ。」

俺は、ふとジェイムズに聞きたかった事を思い出した。

「菊池さん?どうかなさいましたか?」

「…あ、いや…お前さ、黒い薔薇の花言葉って知ってるか?」

「黒い薔薇…?なぜそれを急に?」

「あ、いや…ちょっと気になってな。知ってれば教えて欲しいんだけど。」

「…あー、すみません。以前調べた事があったのですが、忘れてしまいました。また今度調べておきますね。」

「そっか、お前も知らないならしょうがないか。…ごめんな、変な事聞いちまって。」

「いえ…こちらこそ、お役に立てず申し訳ございません。」

「いや、もういいよ。明日調べてみるから。…じゃあ、また明日な。」

「はい、おやすみなさい。」

俺はジェイムズの部屋を後にした。

…あの薔薇は、一体どういう意図で置かれたんだ…?

クッソ、そういう知識は全然ねぇからな。

…今悩んでも仕方ない。明日考えるか。

俺は、部屋に戻って、シャワーを浴びた後ベッドに入った。

 

《ジェイムズ・D=カークランドの好感度が上がった》

 

 

 

 


 

「…申し訳ございません、菊池さん。申し上げない方が身の為だと判断し、私は敢えて存じ上げないと嘘を吐きました。この言葉を知ってしまえば、きっと貴方は後悔なさるでしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

「黒い薔薇の花言葉は、『あくまであなたは私のもの』です。菊池さん、呉々も気を付けて下さいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




弟切魅音の名前の由来は、言うまでもなくひぐらしです。
弟切という苗字は、弟切草(花言葉:秘密)からきてます。
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