ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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2月22日は理嘉ちゃんの誕生日です!
理嘉ちゃんハピバ!!


第3章(非)日常編④

合宿生活12日目。

今日も朝っぱらからモノクマの不愉快なダミ声が部屋中に響き渡った。

…毎日毎日ローテーションでフルボリュームの放送かけやがって、うるせぇんだよアイツら。少しは生徒の鼓膜の心配もしたらどうだ。

…って、怒っても仕方ないか。

さてと。レストランにでも行くか。

俺は、朝の支度を簡単に済ませ、レストランに向かった。

 

 

ーレストランー

 

「アラ、サトシちゃんいらっしゃい。」

厨房では、エカイラが朝食を作っていた。

…またマニアックな料理を作る気か?

「おはよウルトラ美少女あーちゃん参上!!」

「い゛っ!!?」

クソガキがレストランの中に駆け込み、テーブルの上に飛び乗ろうとした。

 

ゴツンッ

「にゃぶっ!!」

厨房からお玉が飛んできて、クソガキの額に勢いよく当たった。

「ぶにゃっ!!」

クソガキは、そのまま地面に落ちた。

「にゃううー…痛いなぁー!全く、誰だよ!お玉なんて投げたの!あーちゃんのマウナ・ケア山並みにベリーキュートなおでこにアザが残ったらどうすんだボケ!!」

「コラァ!土足でテーブルに乗るんじゃないわよ!!」

厨房から、エカイラが怒りながら出てきた。

「さ、さくらちゃん!?」

「もうエカイラちゃんでいいって言ったでしょ?って!そんな事言いに来たんじゃ無いわよ!!アンタ、何土足でテーブルに飛び乗ろうとしてたの!?殴るわよ!?」

「まだ飛び乗ってねーぢゃん!!『殴るわよ』って、もう殴ってんぢゃん!!」

飛び乗る寸前だったから防いだんだろ。

「ほら、ふざけてないで朝ごはんの準備手伝いなさいよ!」

「あーあ、全く…天使遣い荒いよね!エカイラちゃんは!」

なんで自分で自分を天使って言ってるんだ。

「…おい、この皿はここでいいのか?」

「ちょっとちょっと!なんでそこに置くワケ!?普通ここでしょお!?バカなの!?死ぬの!?」

エカイラは、俺から皿を奪い取ると、別の場所に置き直した。

「ね!?こっちの方が見栄えが良く見えるでしょ?」

「いやわかんねぇよ。」

俺が朝食の準備を手伝っていると、みんな集まってきた。

「おっす、おはようお前ら。」

「おう、おはよう玉木。」

「おはよう、菊池君、あーちゃん、伏木野さん。」

「おはようっス先輩方。」

「お、おはようございます…」

「ムフフ、いい朝ですね!」

「おはようございます!皆さん!」

「ふわぁ…まだ眠いですぅ。」

「…ん。」

「はーっはっは!!おいテメェら!!この私が来てやったぞ!さっさと跪け豚共!!」

「…神城さんは朝から元気だねぇ。」

「…よし、準備は大方終わったな。じゃあ全員集まった事だし、食うか。」

「そうっスね。」

「おい、ちょっと待て。今日の朝食の当番は誰だ?」

「アタシよ。」

「はあああああああ!!?おい、ふざけんな!オカマテメェ殺人鬼なんだろ!?まさかとは思うが、毒とか盛ってんじゃねぇだろうなぁ!?」

「ど、どどど毒ですと!?」

「…織田君、ビビり過ぎだよ。」

「ちょっと!まさか、アタシの事疑ってるワケ!?」

「当たり前だろうが!!逆に、こんな逃げ場のねぇ所に殺人鬼がいるってのに、一緒にワイワイやってる方がおかしいだろーがよ!!」

「…まあ、それは否めないっスね。」

「酷いわ!みんなしてアタシを疑って!失礼しちゃうわプンプン!」

エカイラは、乙女チックな口調とは裏腹に、指をボキボキと鳴らしながらドス黒い殺気を放っている。

…完全に、これは人を殺るヤツの目だ。

そこへ、玉木とジェイムズが仲裁に入った。

「おい、お前らやめろよ!エカイラはそんな事しねぇよ!!」

「皆さん、一旦落ち着きましょう。…大丈夫です、エカイラちゃんさんは、恐らく何もしていません。」

「カツトシちゃん、ジェイムズちゃん!」

「おい帽子!一体何の根拠があってそんな事ほざいてんだ!あまり私を愚弄するようなら、タマだけ抉り取って帰国させんぞ!!」

「神城先輩、下品だからやめてくださいよ…」

「別に貴方の言う事を頭ごなしに否定する訳ではありません。ですが考えてみて下さい、神城さん。もし、仮にエカイラちゃんさんが初めから私達を殺す気で紛れ込んだなら、とっくに何かしている筈です。…皆さんも、一度エカイラちゃんさんを信じてみては?」

「…そうだね。カークランド君の言う通りだよ。伏木野さんの正体がわかったからって、今更警戒するのもおかしな話だよ。」

「フン、貴様ら愚民の分際で、ここまで私に楯突くとはいい度胸じゃねえか!…だが、そういうバカは嫌いじゃねぇ。特別に、貴様らの意見を採用してやろう!!ほら、私に感謝し、崇め、そして媚びろ!!この私の女神の様な寛大さに、感激の涙を流してもいいんだぞ貴様ら!!」

神城は、大人しく席に座った。

…案外素直なんだなコイツ。

そんなこんなで俺たちは各自席に座り、エカイラが作った朝食を食べた。

…悔しいが、エカイラの飯は美味かった。

いちいちドヤ顔すんなよムカつくな。

 

全員が朝食を食べ終わると、自由時間になった。

…さてと、まずはどこに行くかな。

「サトにいー!!」

後ろから、クソガキに勢いよく押された。

「うわっ!?」

「暇だ!!構え!!」

…そんなに堂々と言う事じゃねぇだろ。

もっと遠慮がちに言えよ。

「…急に構えって言われてもな。」

「じゃあ、あーちゃんのゲボクになるか、あーちゃんのドレーになるか、選ばせてやる!あーちゃんは優しいからね!」

それ実質一択だろ。

「そんな生意気な口利くなら、遊んでやんねぇぞ。お前の為に割いてやる時間なんてコンマ1秒もねぇんだ。」

「ふーんだ!!サトにいのドケチ!!エロガッパ!!もういいもんね!サトにいがナギねえにエッチな事したの、みんなに言いふらしちゃうから!!」

はっ!?

「じゃあね、ハンザイシャヨビグンさーん!それじゃあトンズラスタコラサッサ〜!」

「おい、待てコラ!」

「ほえ?何だよサトにい!!さてはオメーストーカーだろ!?ケーサツにゆっちゃうぞ!」

「うるせぇ!そんな事より、なんでお前がその事知ってんだよ!」

「え?ホントにしてたの?」

「えっ…?」

「うっわー!!ホントにしてたんだー!!さすがハンザイシャだねー!!引くわー!」

…えっと、俺…もしかして今、カマかけられた?

うっっっわ!!クッソ、やられた!!

俺とした事が、こんなクソガキに嵌められるとは…!

「ねえねえ、サトにい。この事をみんなにバラされたくなかったら、どうすればいいのかな?)

「くっ…一緒に遊ばせてくださいお願いします!」

「うんうん、いい子いい子。特別に、君をあーちゃんの遊び相手に任命してしんぜよう!」

 

ふ ざ け ん な

 

…っていうか、前にもこんなパターン無かったか?

「さーて、じゃあサトにい!遊園地に行くぞ!」

俺は、クソガキに引っ張られて無理矢理遊園地に連れて行かれた。

 

 

ー遊園地ー

 

「じゃあまずは、ジェットコースターに乗るぞ!」

…嘘だろ?

アレに乗るのか?

いや、だって途中レールが無ぇし、高さが普通のヤツの3倍はあるぞ。

…あんなの、普通建設規定に引っかかるだろ。

あんなの乗ったら気絶どころじゃ済まないぞ?

クソガキは、俺の袖を引っ張って、ジェットコースターの列に並んだ。

…列に並んだっつっても、前にいるのはモノクマとモノハムのバカップルだけだけど。

『怖くなったらいつでもボクにしがみつきな。』

『や〜ん、モノクマキュンイケメンでちゅ〜♡』

…見てて吐き気しかしない茶番を延々と見させられた。

なんでコイツらこんないらん事しかしないんだ?

「おい、サトにい!次だぞ!」

クソガキは、どんどん前に進んでいく。

そこへ、ヘルメットを被ったモノクマが現れた。

『やっほー!オマエラ、モノモノランドの絶望コースター、楽しんでいってね!』

…なんだその客ウケ悪そうな名前。

『えーと?二名様でよろしいですか?』

「…おい、ちょっと待て。俺は…」

「うん!いいよー!早く出発させてー!」

クソガキは、俺の意見などお構い無しにジェットコースターに飛び乗った。

「おい、勝手に乗るんじゃ…」

『早く乗って!出発できないでしょ!』

「うっ!?」

いきなりモノクマに尻を蹴られ、無理矢理ジェットコースターに乗せられた。

『じゃあ安全レバー装着しまーす!』

モノクマは、コースターのレバーを下げた。

 

ガチャン

 

「おい、ちょっと待て。乗るなんて一言も言ってねぇぞ。これ早く外せ!おい!」

『うぷぷ…それじゃ、行ってらっしゃーい!』

「おい、俺の話を聞け…」

俺が言い終わらないうちに、ジェットコースターが勢いよく発車した。

そして…

「…ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

コースターがいきなり急降下した。

身体が浮き上がるような感覚を覚え、今朝食った物が全部出そうになった。

それから後の記憶は、あまり無い。

 

「…あー、死ぬかと思った…」

俺は、ふらつきながらコースターから降り、その場に倒れ込んだ。

「…きゃはは!あー、楽しかった!…あれ?サトにいどうしたの?そんなマリアナ海溝に突き落とされて、そのままエアーズロックの上で干物にされたゾンビみたいな顔して。」

どんな顔面だ。

お前のせいで、寿命が10年縮んだぞ。

「じゃあ次はアレだ!!」

クソガキは、フリーフォールを指差した。

「…マジすか。」

俺は、また三途の川を見るのか。

もういい加減にしてくれ。

俺の身体が全力で危険信号を出している。

これ以上は本当に命が保たん。

っていうか、なんでお前はそんなに元気なんだよ。

 

結局、その後3つくらいアトラクションに乗せられた。

その度に俺は綺麗な川を見ては意識を失った。

…逆に、ここまで生きていられたのが奇跡なんじゃないかって思う。

そんな危険なアトラクションを連続で体験したにもかかわらず、クソガキは平気な顔をしてドタドタと走り回っていた。

「あー、楽しかった!!サトにい、あーちゃんと遊べて楽しかったか!?」

「…ええ、そりゃあもう。」

「じゃあ、またヒマになったら構えよな!」

クソガキは、俺を置いて遊園地を出て行った。

…なんなんだアイツは。

 

《アリスの好感度が上がった》

 

…さてと、クソガキから解放された事だし、次はどこに行こうか?

「…あ。」

俺は、ガチャで万年筆をゲットしたのを思い出した。

「…速瀬の部屋に行くか。」

 

 

『超高校級の秘書』の個室

 

速瀬の個室は、前とほとんど変わらなかった。

…だが、何故か前より広く感じる。

ついこの前まで、生きていたはずなのに。

このソファーに座りながら、昔話をしてくれたのに。

速瀬が居ない。

もう、アイツはこの世の何処にも存在していない。

「…速瀬、ゆっくり休めよ。」

俺は、内ポケットから万年筆を取り出して、机の上に置いた。

「…あ。」

机の上に、アルバムが置いてあった。

「悪いな速瀬。ちょっと見るぞ。」

俺は、アルバムを開いた。

アルバムには、幼い頃の速瀬の写真が挟んであった。

速瀬の家族も一緒に写っている。

どれも、無邪気な笑みを浮かべた速瀬の、幸せそうな写真だった。

…なんだよ、感情が無いって言ってたけど、ちゃんと笑えてるじゃねえかよ。

「…速瀬、もしみんなでここを出られたら、お前が守りたかったものは俺たちが救ってやる。だから、安心して眠れ。」

なんとしてでも、今生き残っているみんなでここを出る。

そして、今まで死んでしまったみんなの分まで、俺たちで大切な人達を守るんだ。

俺は決意を固め、アルバムを閉じようとした。

「…あ、いけねぇ。」

うっかりアルバムから写真を落としてしまった。

「…あ。」

俺は、落ちた写真を見た。

そこには、5人の高校生が写っていた。

一人は速瀬、一人は森万だった。

だが、残りの三人は、俺が全く知らない三人だった。

どうやら、地図のようなものを作成している速瀬の前で、森万が手品を披露し、それを女子生徒二人が驚きながら見ている写真らしい。

そして、もう一人の男子生徒は、速瀬に茶を淹れてやっているようだ。

「…あれ?」

何故か、男子生徒の顔にだけは見覚えがあった。

「なんか…この顔、どっかで見た事あるんだよな…どこだったかな?」

思い出そうとしても、頭に靄がかかって思い出せない。

「ん…?」

写真の裏に、何か書いてあった。

 

 

速瀬ちゃんへ

タカヒロより

 

 

…なんだこれ?

タカヒロ…?

もしかして、この男子生徒の名前か?

一体、この写真はなんなんだ…?

 

『有り得ない、なんて事は有り得ないよ。』

 

…まただ。

また、頭の中で声が響いた。

こんな台詞を、どこかで聞いた事あったか…?

じゃあこの『声』は一体…?

記憶に矛盾する写真といい、まだわからない事だらけだ。

モノクマは、残り3人になったら話すと言っていたが、そんなのを待つくらいなら、俺たちが謎を解き明かしてやる。

俺は、アルバムを机の上に戻し、速瀬の部屋を出た。

「…腹、減ったな。」

そういえば、もう昼飯の時間だ。

今日の昼飯はなんだ?

楽しみだな。

 

 

ーレストランー

 

厨房では、射場山と小川が昼食を作っていた。

「小川、何作ってんだ?」

「蕎麦と出汁巻き玉子っスよ。」

…おおう。これはまた美味そうな。

「俺も手伝うよ。」

「…。」

射場山が俺を睨んだ。

…厨房にすら入れて貰えないのか俺は。

「わーいお昼ごはーん!!え、今日はおそば!?やったー!」

「ふわぁ…おそば、ですかぁ。ちょっと…」

「…あ、成程。」

リタは、少し嫌そうな顔をしていた。

…蕎麦嫌いなのかな。

ジェイムズは、なんでリタが嫌がってんのか知ってるっぽいけど。

そんなこんなで、全員が集まって席に座った。

「いただきます。」

ズゾゾゾゾ…

蕎麦をすすり始めた途端…

 

Be quiet(静かにして)‼︎」

 

リタは、今まで聞いた事無いくらい大きな声で叫んだ。

「…アラ?リタちゃん?どうしたの?」

リタは、不機嫌そうに俺の方を睨んできた。

え?俺何か変な事したか?

「…ああ、皆さん、知らない方もいらっしゃるかと思いますが…実は、欧米諸国では麺を啜るという行為は、マナー違反なんですよ。彼女は、それで不愉快に感じたようです。」

ジェイムズが、リタの言いたい事を代弁してくれた。

…ああ、なんだ。そう言う事だったのか。

まあ、何が良くて何がマナー違反かは、国によって違うよな。

「あ、そうだったんスか。だったら別のメニューにすれば良かったっスね。」

「…なんかごめんなさぁい。でも、ちょっと耐えられないですぅ…」

「あ、じゃあこうすればいいんじゃない?」

猫西が、ティッシュで耳栓を作ってリタに渡した。

「これで、音を気にせずに食べられるでしょ?」

「ああ…なるほど、猫西は頭いいですね。」

「いや、それ程でも…」

リタは、耳栓を耳に詰めた。

「あ、これで大丈夫ですぅ。」

…どうやら、周りの音が聞こえなくなったらしい。

ああ、やっと食える。

俺なんか、麺を麺つゆの中に落としたまま呆然としてたから、すっかり伸びちまってるよ。

こうして、全員が昼食を食べ始めた。

 

 

昼食が終わった後は、12時になるまで部屋で待機していた。

 

ヴーッ

 

ちょうど12時になり、動機が送られてきた。

俺は、恐る恐る動機を見た。

…今日は、誰の弱みだ?

 

 

 

 

 

【超高校級のサッカー選手】玉木勝利クンの弱み

 

『超高校級のサッカー選手』玉木勝利クンは、人を殺した事があります!

 

 

 

…え?

 

そんな、嘘だ。

玉木が、人を…殺した?

いや、違う。そんな訳ない。

アイツが、人を殺す訳がない。

きっと何かの間違いだ。

 

ピンポーン

 

インターホンが聞こえたので、ドアを開けた。

そこには、玉木がいた。

「玉木…?どうしたんだ一体。」

「…ああ、今日はお前の弱みを見ちまってな。…だから、その事について二人で話そうと思ったんだけど…」

「そうか、そういう事なら俺の部屋で話そう。」

俺は、玉木を部屋に入れた。

玉木に本当の事を聞くなら今しかない。

…でも、本当に聞いていいのか?

「…それで?俺の弱みを見たって言ったよな。」

「ああ。お前が、中学までカナヅチだったっていう内容だった。…本当なのか?」

「ああ、本当だよ。恥ずかしい事にな。」

「あはは、人には誰にでも秘密の一つや二つあるし、そこまで恥ずかしがる事ないだろ。」

「まあ、そうだけどよ。」

「…だって、お前の弱みなんて、まだ可愛いもんじゃねえか。」

え。

まさか、玉木は本当に人を殺した事があるとでもいうのか…?

いや、そんなはずはない。

俺はいてもたってもいられなくなり、ついには思い切って聞いてしまった。

「…なあ、玉木。」

「おう、なんだ菊池?」

「実は俺、お前の弱みを見たんだ。」

「…へえ、奇遇だな。…なんて書いてあった?」

「お前が人を殺した事があるって。…本当なのか?」

「…!」

玉木はやはり、『なんで知っているんだ』と言いたげな顔をした。

玉木はゆっくりと俯くと、か細い声で言った。

「…ああ。本当だよ。俺は、中学の頃親友を殺した。」

「えっ…」

「…でも、俺が直接手にかけたわけじゃない。厳密に言えば、殺したというよりは、親友が死ぬ原因を作っちまったんだ。」

「それって…」

「…今から順を追って話す。…俺には、小学校の頃からの親友がいたんだ。ソイツは、ちょっと抜けた所があってお調子者だったけど、いつも明るくて、俺を笑わせてくれてたんだ。中学に上がってからは、ソイツが引っ越して学校は別々になったけど、手紙とか電話とかで連絡取り合って今まで通り仲良くやってたんだ。…あの時までは。」

「あの時…?」

「ソイツ、いじめられてたんだよ。同じ部活の先輩にな。でも、俺はその話を信じられなくて…だから、『一度その先輩と話し合ってみたらどうだ』って電話でアドバイスしたんだ。…そしたら次の日の夜、電話がかかってきたんだ。」

「…電話?」

「…『今までありがとう』。たったそれだけだった。…その一言が、俺が聞いたアイツの最後の言葉になっちまったんだ。」

「まさか…」

「…次の日の朝、家で死んでたんだよ。聞いた話によると、部屋で首を吊って自殺したらしい。」

「そんな…」

玉木の口からは、信じがたい真実が語られた。

俺は、なんて言葉を返せばいいのかわからなかった。

「アイツは、俺のアドバイス通り、先輩に話をしに行ったんだ。そしたら、こっぴどくいじめられて…それで、自殺を決意したらしい。…俺が余計な事を言わなければ、アイツは死ななかったかもしれないのに。アイツは、俺のせいで死んだんだ。俺が、アイツを殺したんだ。」

「それは違うぞ。」

「…え?」

「お前がそんな事を言わなきゃ、その友達が死ななかったかどうかなんて、今となっちゃ誰にもわからない。…結局、死ぬ事を選んだのはソイツだろ。お前は何も悪くねぇよ。」

「…菊池、俺…わかんねぇんだよ!なんでアイツが死ななきゃならなかったのか…!」

「玉木、…友達の事は、残念だったな。…けど今は、その友達のためにも、お前が生きなきゃダメだろ。」

「菊池…お前…」

「生きて、みんなでここを出るんだよ。その友達には、その後で謝ればいい。今すべき事を考えろ。お前が、今までそうしてきたように。」

「…そうだな。悪い、今のは完全に俺らしくなかったな。」

「全くだよ。お前は、俺達のリーダーだろ?しっかりしてくれよ。」

「リーダーって…お前が勝手に決めたんだろ?」

「いや、他のみんなも、みんなお前がリーダーだと思ってるけど?」

「…マジかよ。あはは、そりゃあこんな所で死ねねえよな。…わかったよ、菊池。俺は、生きてここを出るよ。もちろん、お前も一緒にな。…力を貸してくれるか?」

「ああ、もちろん。」

俺達はお互いに笑い合いながらハイタッチをした。

「あー、なんか話したらスッキリしたわ。ありがとな、菊池。」

「それはお互い様だろ?こっちこそ、お前と話ができて良かったよ。…また、二人で話しような。」

「ああ、楽しみにしてる。」

玉木は、俺の部屋を出た。

…そういえば、合宿生活がスタートしてから一番初めに話をしたのは玉木だったな。

俺が今一番仲良いのも、アイツだしな。

アイツといると、絶対に全員で生きてここを出たいっていう強い思いみたいなものが湧き出てくるんだよな。

…これが、希望ってヤツなのかな。

 

《玉木勝利の好感度が上がった》

 

玉木と話した後は、展望台に行ってみた。

「…探索の時以来だな。確か、ここから眺める景色が絶景なんだよな。」

俺は、展望台に登った。

 

 

ー展望台頂上ー

 

「…うわ、結構高いな。」

「あれ?菊池君?」

ベンチに座っていた猫西が、話しかけてきた。

「…猫西、お前ここにいたのか。」

「うん。ここからの景色が綺麗でさ。ほら、夕方の時間帯って、ちょうどここから夕焼けが見られるでしょ?」

「…そうだな。方角的には…ここから見るのが一番よく見えそうだな。」

「でしょ?…ねえ、せっかくだし、ちょっとお話しようよ。」

「…そうだな。」

俺は、ベンチに腰掛けた。

すると、猫西がいきなり俺の右手を握ってきた。

「なっ…」

「えへへ、温かい?」

猫西の手は、思ったより柔らかくて温かかった。

つい、手を強く握り返してしまった。

「…あれ?意外と積極的じゃん。」

猫西がニヤニヤしながら言った。

「うるせぇな!ってか、お前は織田と付き合ってんじゃねえのかよ!?俺とこんな事してていいのか?」

「え?織田君とは付き合ってないよ?」

「…へ?」

「織田君とは、ゲームとかアニメとかの話で盛り上がってただけだよ。織田君そういうの詳しいから、一緒に話してて楽しいんだよね。…変態だけど。」

「へえ…」

あれ?なんで俺は安心してんだ?

…あ、カップルがまだ誕生してなかったからか。

織田にだけは先越されたくなかったもんな。

「あ、そうだ猫西。」

「なあに菊池君?」

「お前にプレゼントしたい物があるんだ。」

「え!?なになに?」

「…お前なら、気にいるんじゃないかと思ってな。良かったら使ってくれ。」

俺は、ゲーム機をプレゼントした。

「え?私に?」

「そうだ。お前、ゲームとか好きだろ?」

「うん、すごく嬉しい!ありがとう!」

猫西は、満面の笑みを浮かべた。

…コイツ、やっぱり可愛いな。

って、俺は何オッサンみたいな事考えてんだ。

「あ、これ対戦できるよ。ねえ菊池君。一緒にやろうよ。」

猫西は、俺にゲーム機を差し出した。

…たまには息抜きも大事かもな。

「おう、勝負だ、猫西!」

こうして俺達はゲームで対決をした。

 

 

ー3時間後ー

 

「喰らえ!!論・破・砲!!」

「フフン、甘いよ菊池君!」

「何っ!?フェイントだと!?」

「トドメだよ!喰らえ、百花繚乱拳!!」

「じゅ、16連打だとぉう!?…え、ちょっと待って、もう俺のライフが…」

「えいっ☆」

「ぐはぁっ!!」

「えへへ、これでまた私の勝ちだね!」

「くっ、お前強すぎんだろ!ちょっとは手加減しろよ!」

「あはは、菊池君。君がそれを言うのはどうなの?」

「うっ…」

結局、30回くらい勝負したけど、一回も勝てなかった。

さすがは『超高校級の実況者』だな。ゲームの腕はプロゲーマー級だ。

「菊池君、今日はありがとう!とっても楽しかったよ。」

「あ、ああ。俺も、お前とゲームできて楽しかったよ。」

ボロクソに負かされたけどな。

「あのさ。」

「?なんだ。」

「えっと…また、一緒にゲームしたりとか、お話したりとかしようね?」

「ああ、待ってろ!次やる時までに、腕上げとくからな!」

「あはは、楽しみにしてるよ。」

「…おっと、そろそろ飯の時間だな。」

「えっ、もうそんな時間!?急がなきゃ!」

俺たちは、急いでレストランに向かった。

 

《猫西理嘉の好感度が上がった》

 

 

ーレストランー

 

「ごめんお待たせ〜!」

「あー、うぇすにゃんやっときたー!!」

「悪い、待たせた。」

「別にサトにいの事は待ってないし。外で女郎グモ食べてろ!」

うるせえクソガキ。

「お二人共、食事の準備は出来ていますよ。早くお席にお座り下さい。」

今日の食事当番は、ジェイムズとリタか。

…ほう、今日はビーフストロガノフか。美味そうだな。

「では、皆さんお揃いのようですので、そろそろ頂きましょう。」

「そうだな、いただきます。」

俺達は、ジェイムズ達が作った夕食を食べた。

今日の夕食も、とても美味かった。

これは明日も楽しみだな。

 

全員が食事を終えた後は、自由時間になった。

…さてと、風呂入りに行くか。

俺は、銭湯に向かった。

 

 

ー銭湯ー

 

「…なんだ、やっぱり先客がいたか。」

籠に衣服が入っていた。

既にエカイラが入っていたようだ。

俺は、脱いだ服を籠の中に入れ、露天風呂に行った。

 

 

ー露天風呂ー

 

「夜風が気持ちいいな…」

「アラ、サトシちゃんいらっしゃい。」

既に風呂に入っていたエカイラが話しかけてきた。

「うふふ…ねえ、二人っきりね。」

「…気色の悪い事言うな。」

「アラヤダ冷たいわねぇ。せっかくだし、仲良くしましょうよぉ〜!」

エカイラは、身体をくねらせながら俺にべったりとくっついてきた。

「おい、やめろよ。俺にそっちの趣味はないぞ。」

「アラヤダ、サトシちゃんったらツンデレなのね〜!大丈夫よ、優しくしてあげるから♡さあ、新しい扉を開きましょぉおお〜!!」

「ぎゃあああああ!!来んな来んな来んな!!一生開きたくないわそんな扉!!」

「うふふ、待て待て〜♡」

「待ちませーん!!」

俺は、その後もエカイラと地獄のような鬼ごっこを続けた。

危うく襲われそうになったが、なんとか貞操は死守した。

疲れを取るために風呂に来たってのに、逆に疲れたぞ。

その後は、部屋に戻ってベッドに入った。

…全く、散々な一日だった。

 

 


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