ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第3章(非)日常編⑤

合宿生活13日目。

今日もいつも通り、モノハムの不快なモーニングコールで起こさた。

アイツら、毎日毎日ホントいい加減にしろよ。

朝っぱらから気色悪い放送かけやがって、そろそろストレスで精神病むぞ。

俺は、身支度を済ませてレストランに向かった。

 

 

ーレストランー

 

…最悪だ。

なんでよりによってアイツしかいないんだ。

「おっすサトにい!!今日もあーちゃんのイータカリーナ星雲並のスーパー美少女っぷりに癒されに来たのか!?でも、あーちゃんスマイルは有料だぞ!残念だったな!このエロガッパめ!」

別に金払ってまで見るもんじゃねえし。

いちいちムカつくガキだな。

「…おい、まさかとは思うが、今日はお前が朝飯作んのか?」

「あったり前じゃーん!見てろサトにい!男はみんなあーちゃんのまな板ショーに釘付けだぞ☆」

その言い方卑猥に聞こえるからやめろ。

「さーてと、じゃああーちゃんのカンタンクッキングの時間だよ!目玉ひん剥いてその目に焼きつけるんだぞ!」

クソガキは、包丁を両手に持って振り回し始めた。

危なっかしすぎて目を離せない。

…もう別の意味で釘付けだよ。

「まずは一品目!」

クソガキは、生米を碗の中に入れると、その上に思いっきり生卵を叩きつけた。

…おい、ちょっと待て。まさか、これって…

「はいできた!!あーちゃんシェフ特製の地中海風卵かけごはんだよ!」

は!?

おい、どこが地中海風なんだよ!

簡単クッキングにも程があんだろうが!

あと生米はねぇわ!せめて炊けよ!!

人間の食い物を作る気あんのかコイツ!!

「じゃあお次は二品目〜♪」

クソガキは、鍋の中に水と鍋の素を入れ、さらに板チョコとフランスパンを入れて混ぜ始めた。

頼む。もうやめてくれ。

「はい完成!あーちゃんシェフ特製の地中海風アホスープ!」

絶対地中海風って付ければいいと思ってんだろコイツ。

もうどう見てもアホスープじゃなくて阿保スープだろ。

「はい続けて三品目〜!」

…ああ、この地獄は一体いつまで続くんだろうか。

だが、案外それはすぐに終わりを迎えた。

「…え。」

厨房の奥の部屋から、食材を持った床前が出てきた。

厨房での惨劇を目の当たりにした床前は、顔面蒼白で、その場に立ち尽くしていた。

「床前…?お前、ずっとそこにいたのか?」

「あっ、き…菊池さん…えっと、そうです。…皆さんの朝ご飯を作ろうと思って、食材を取りに行ったのですが…どうやらアリスさんに、私の事を忘れられてしまったみたいで…厨房に戻ろうとしたら、既に使われてて…アリスさんには、一緒にお料理するように言ったんですけど…」

何?このクソガキ、床前の事を忘れてやがったのか。

「おいコラアリス!!」

「にゃああ!?うるさいぞサトにい!!あーちゃんの、クレオパトラもシットするエレガントなコマクが破れたらどうしてくれんの!?」

「そんなの知った事か!それよりお前、床前の事忘れてたんだろ?」

「…はっ!!」

クソガキは、急に思い出したような表情をした。

…コイツ、本当に忘れてやがったのか。

「はっ、じゃねえだろ!早く床前に謝れよ!床前がかわいそうだろうが!」

「き、菊池さん…もういいです…私の存在感が無いのが悪いんです。」

「良くねぇだろ!お前、何度も何度も忘れられて、悔しくないのかよ!?」

「…えっと、でも…」

「でもじゃねえ!自分の事を忘れられてんだから、怒っていいんだよ!…お前は、もっと自分に正直になれよ!」

「…自分に、正直に…?」

「そうだよ。みんなに無視されたら、不満をぶつけてみろ。そしたら、何か変わるかもしんねぇぞ。」

「…わ、わかりました。やってみます…」

「うっわ!なーにが『もっと自分に正直になれよ』だ!くっさ!!一週間履き古した靴下にクサヤとシュールストレミングブチ込んでピータンの汁に5度漬けしたんじゃないかってゆーくらいくっさいわ!!」

どんだけ臭いのかが絶望的に分かりにくい。

…っていうか、厨房で食欲失せるような事言うな。

「おい、まだ床前に謝ってないだろ。早く謝れ。」

「あ、そうだったそうだった。ナギねえ、ごみーんに☆」

「…あ、えっと…もう気にしてませんから…それより、早く朝ご飯作らないと…」

「じゃあ、俺はこのガキ見張ってるから、床前は朝飯作っててくれよな。」

「あ、おいコラ何してんだサトにい!!まだあーちゃんのカンタンクッキング終わってないんだけど!おい、聞いてんのかこのヘンタイ!アンポンタン!潰れアンパン!!」

「黙れ。いいから来い。」

俺は、クソガキを厨房から引きずり出した。

 

しばらくして、みんながレストランに来た。

「おはよう、お前ら。お、今日の当番は床前か。」

「あーちゃんもいるぞ!」

「…アンタ何もしてないじゃない。」

「…あまりにも危なっかしいから、俺がクビにした。」

「ああ、なるほど…っていうか、サトシちゃんも人の事言えないわよ?」

「…うっ。」

そうだった。そういえば俺も、アリスの事をバカにできないレベルのメシマズだった。

「み、皆さん…朝ご飯の準備ができました…」

「よし、じゃあ全員揃ってるみたいだし、朝飯にするか。」

全員で床前の作った朝食を食べた。

薄味だったが、普通に美味かった。

 

朝食が終わった後は、自由時間となった。

…動機が配られるまでは暇だし、売店にでも行くか。

 

 

ー売店ー

 

売店は、相変わらず品揃えが豊富だった。

ふと、右手の商品棚が視界に入ったので、近くにあった箱を手に取ってみた。

箱には、『極薄!モノクマ印の0.01mm!』と書かれていた。

…見てはいけないものを見てしまった。

俺は、箱を静かに元あった場所に戻した。

…うん、俺は何も見なかった。そういう事にしておこう。

俺がその場を立ち去ろうとすると…

「おい、モブ!」

「ひっ!?」

目の前に、神城が立ちはだかった。

「こ、神城…」

「様をつけろ!言われなきゃわかんねぇのかこの愚民が!!」

「…神城様。こんなところで、一体何の用で?」

「フン、愚民には分からんだろうな!!私は、薬の材料を取りにきたんだよ!!」

「薬…?一体、なんの…」

「決まってんだろうが!このクソみてぇな状況をパーッと忘れさせてくれるクスリだよ!!」

…は?

おい、それってドラッグじゃないのか?

「おい、まさかクスリに逃げる気か!?そんなのダメに決まってんだろ!!」

「はぁ?テメェ何言ってんだ?まさか、この私がシャブに逃げるとでも思ってたのか!?ハッ、だとしたらテメェの脳ミソの出来はアリ以下だな!!」

「…違うのか?」

「…フン、睡眠薬だよ睡眠薬。愚民があんなグロい死に方した後じゃ、ロクに快眠出来ねぇからな。オマケに、直前に体験した事を一時的に忘れさせる効果が出るように調合しようと思って、その材料を探しに来たんだよ。」

…神城の買い物カゴには、大量の薬の材料が入っていた。

どう見ても、1人分の薬を作る量じゃない。

…もしかして、コイツ…みんなの分も作ろうとしてるのか?

みんなの心が壊れないように、コイツなりに色々考えてるんだな。

「あぁ!?何見てんだよ。このエキストラが!!」

「…いや、別に。ただ、張り切ってるなって…」

「フン、愚民が軽々しく口を開いてんじゃねえ!!それ以上薄汚い目と口を開くようなら、爪と肉の間にプレパラートブチ込むぞ!!」

恐ろしいな。

コイツの事はあまり刺激しない方が良さそうだ。

「…おい、愚民。今日は私は機嫌がいい。特別に、私が薬を作る所を間近で見せてやろう!!今すぐ診療所に来い!!」

「いや、でも俺は…」

「なんだ貴様。まさかとは思うが、モブキャラの分際で、この私の誘いを断ろうなんざ考えてんじゃあねえよなぁ!?私が来いっつったら来るんだよ!わかったかモブ!!」

「…はい。」

「よろしい。じゃあついて来い。この私の世紀の大発明をその目に焼き付けられる事をありがたく思うんだな!」

「…は、はあ…」

俺は、神城の薬の調合を間近で見ることになった。

 

 

ー診療所ー

 

「…うわ。」

診療所は、完全に神城好みにカスタマイズされていた。

…こんな所に過激なプレイの道具置くなよ。

一体、誰に使う気だ…?

「よし、じゃあ早速神の儀式を始めるぞ!!」

神城は、近くにあった椅子に座ると、早速薬の調合を始めた。

正確かつスピーディーに、薬の材料を混ぜていく。

「どうだ私の神の手捌きは!!」

「…さ、さすがですね。」

「ふははははははは!!いいぞ!!もっと褒め称えろ!!この私に跪け!!そして媚びろ!!神である私を崇め、酔いしれろォ!!ふははははははははははは!!!」

神城は、無駄口を叩きながらも、1ミリの狂いもなく材料を混ぜる。

喋っててよく手元狂わないよな。

「あ、あの…」

「なんだモブ。くだらねぇ事なら言わなくていいぞ。神は愚問が嫌いなんだ。」

「…神城様の才能って、外科医でしたよね…薬剤師の才能もあったんですか?」

「はっはっははははは!!当たり前だろうが!!この私を誰だと思っていやがる!!全知全能の神、神城黒羽様だぞ!!図が高いわ愚民風情が!!」

よく恥ずかしげもなく自分の事を神だなんて言えるな。

…だが、どうやらその全知全能の神様でも、モラルと国語力には恵まれなかったようだな。

「おいモブ!!」

「は、はいなんでしょうか?」

「…なんか、ちょっとモチベ折れそう。なんかおもしろい事やれ。ほら、早く。」

は!?

何急に無茶振りしてくれてんのコイツ!!

っていうかそんな事してる暇があるなら薬の調合に集中しろよ!

…あ、ダメだ。コイツ、メチャクチャ器用だから会話してても手元狂わないんだった。

「どうした?早くやれ。」

「…では、謎かけを…ええと、希望ヶ峰学園とかけまして、砂糖とときます。…その心は、どちらも『てんさい』が多いです。」

「つまらん。0点。」

えぇ…

「このポンコツがァ!!」

ゴッ

「ぐほぁッ!!」

神城は、近くに置いてあったロウソク立てで俺の頭を殴った。

…どうやらこの神様は、鈍器選びのセンスには非常に恵まれたようだ。

「よし、できたぞ。見ろ!!これぞ、神の薬だ!!名前は…そうだな、クレハミンXとでも名付けるか!!どうだ私の作ったクレハミンXは!!ふははははははは!!」

まだ使ってもいないのに感想を求められたんだが。

「…え、えーっと…」

ゴッ

「い゛ッ!!?」

いきなり神城に殴られた。

「な、なんで…」

「…プッ、あっははははははは!!!ダッセェ!!チョーウケるんですけど!!あ、ヤベ…ツボに入った…ブフッ…あははははははは!!!」

俺の醜態がツボに入ったらしい。

神城は、腹を抱えて転げ回りながら大爆笑していた。

…もしかして俺、気分で殴られた?

「ヒィ、ヒィィ…ちょっと待って…超腹痛てェ…ぷくくっ…ふふっふふふふっはははははははは!!」

いつまで笑ってんだコイツ。

「はー、こんなに笑ったの久々だわ。愚民のくせに私を笑わせるなんて、大したヤツだな!芸人の才能あるぞ貴様!」

「は、はあ…どうも。」

さっきの謎かけは酷評だったけどな。

もうお前のツボがわかんねぇよ。

 

ゾワッ

 

「!!!…誰だ!?」

またあの殺気を感じた。

俺は即座に振り向いたが、後ろには誰もいなかった。

「なんだ?どうしたモブ。誰もいねぇじゃねえかよ。…さてはテメェラリってんだろ?」

「いや…ただ、ちょっと寒気を感じて…後ろに誰かいるんじゃないかと思ったんですけど…」

「なんだそういう事か。…寒気に効く薬を出してやろうか?フン、どうしても薬が欲しいなら、跪いて地面に顔面を擦り付けろ!!そうしたら薬を出す事を検討してやらん事もないぞ!!」

「…え、遠慮しときます。」

「はぁあ!?なんだテメェ!!エキストラの分際で、神である私に逆らう気か!!もしテメェがその気なら、タマ引きちぎってホルマリン漬けにすんぞ!!」

じゃあどうすればいいんだよ。

俺に逃げ場は無いのかよ。

「お、俺急用ができたんで…それじゃあ!」

「あっ、テメェ待てコラ!!誰が逃すかよ!!」

『でちゅー!』

そこへ、モノハムがやってきた。

「んなっ…またテメェか!!齧歯類の分際で何の用だ!!」

『ぴきゃきゃ、菊池様と神城様が、面白ちょうな遊びをちてたので、オイラもまぢぇてもらいに来たのでちゅ!』

「遊びだぁ!?テメェに付き合ってる時間はねぇんだよ!!」

『神城様とかけて、忌み数とときまちゅ!ちょの心は!?』

「はぁ!?なんだそのわけわかんねぇ質問!!」

…忌み数?確か、4とか9とか不吉とされててよく飛ばされる数字だよな。

…あ、わかったかもしれない。…でも、絶対言ったら神城に殺されるから黙っておこう。

「綿埃の分際で気安く私の名を口にするな!!」

ああ、モノハムの言いたい事がわかる気がする。

『おやおや?もちかちて、わからないんでちゅか?』

「ンなわけねぇだろ!!バカかテメェは!!私は全知全能の神だからな。もちろん答えはわかってはいるが、即答したら貴様がかわいそうだから、あえて言わないでやってんだよ!!どうしても答えを言いたいなら、さっさと言ってみろ!!」

この口ぶりは、絶対答えわかってないと思う。

『ぴきゃきゃ、ちょの心は、どちらも『間』が抜けている…ちゅまり、マヌケでちゅ!ぴっきゃっきゃ!』

あーあ、言っちゃったよ。

「んなっ…!貴様、綿埃の分際で…今、この私をマヌケと言ったのか…?…ブッ潰す!!ギッタギタに切り刻んで家畜の餌にしてやる!!」

コイツ、煽り耐性なさすぎだろ。

『あわわわ!?教頭への暴力はルール違反でちゅよ!?』

「うるせぇ!!神を愚弄した事を後悔させてやる!!」

神城は、怒り狂ってモノハムを追いかけ回した。

…モノハム、珍しくグッジョブ!

そのまま神城を煽っててくれ、俺はそのスキに逃げる!

俺は、診療所から全力疾走して逃げ出した。

 

《神城黒羽の好感度が上がった》

 

 

ーレストランー

 

ああ、神城のせいでエラい目に遭った。

レストランに駆け込むと、中では猫西と織田が何かやっていた。

机の上にノートを広げて二人で何か描き込んでいる。

「ここは、こういう感じで…」

「むむっ、なるほど…さすが猫西氏であります!」

「お前ら、何やってんだ?」

「あ、菊池君。今ね、織田君と一緒に、アニメのコンセプト考えてたんだよ。」

「コンセプト…?お前ら、もしかしてアニメ作るのか?」

「ご名答であります!!実は先日猫西氏と、ここから無事に出られたら、アニメを共同制作しようという話になりましてな!」

「へえ…今どんな感じになってるのか、ちょっと見ていいか?」

俺がノートを見ようとすると、織田が取り上げた。

「菊池氏!!けしからんですぞ!!完成してからのお楽しみであります!」

「…そ、そうなのか。悪い。」

「菊池君、完成したら見せてあげるから。だから、なんとしてでも全員で生きてここを出ないとね!」

猫西が俺の手を取り、笑顔で言った。

「…ああ!」

「お、お二人共!!吾輩を忘れるなど言語道断でありますぞ!!」

「あ、ごめんね。…ほら、織田君も一緒に!」

「なっ、猫西氏…!そんな大胆な…!」

猫西は織田の手を取り、三人で手を重ね合った。

織田は、何かブツブツ言っている。

「うへへへへへへへ…猫西氏の手…柔らかくてスベスベしておりますなぁ。」

気色悪っ。

あと手つきがいやらしいぞお前。

猫西、お前もそんなに満面の笑み浮かべてないで、嫌なら嫌って言っていいんだぞ。

「菊池君、織田君、約束だからね!」

「…ああ。約束だ。必ず、生きてみんなで帰郷する。」

「当然であります!猫西氏との約束とあらば、吾輩は絶対に生きてここを出ますぞ!!」

良かった。

みんな、俺と同じ気持ちだ。

今度こそ、みんな信じ合える。

みんなでここから脱出して、早くこんな糞ゲー終わらせるんだ。

 

ゾワッ

 

「!!!?」

…まただ。

またあの殺気を感じた。

しかも、今までで一番強い憎悪を孕んでいる。

誰だ…?誰が、何のために俺を殺そうとしてるんだ…?

「菊池君、どうしたの?手、震えてるけど。」

「…なんでもねぇよ。」

「むむっ、さては、猫西氏と手を繋げた嬉しさのあまり震えているのですな!?」

「うるせぇ。今更だっての。」

「い、今更…とな!?さ、さては…今までに、手を繋いだ事が…?」

「向こうからだったけどな。」

「えへへ…」

「んなぁっ!!そ、そんなバカな…!」

すげぇショック受けてる…

なんか申し訳ないな。

「あ、そろそろお昼の時間だね。お昼ご飯作らないと。今日は私作るから、二人とも手伝って。」

「おう、わかった。」

「喜んで!!吾輩、猫西氏のために命を懸けてお手伝いしますぞ!!」

「別に命懸けなくていいから…」

こうして、三人で昼飯を作った。

 

《織田兼太郎の好感度が上がった》

 

そうこうしていると、全員がレストランに集まってきた。

「わーい、お昼ごはんだ〜!!」

「アリスさん、走っては危ないですよ。」

「お、今日の昼飯の当番は猫西か。」

「クッソ…あの齧歯類め…絶対許さねェ…!この私をコケにしやがって…!!」

「…すごい圧っスね、神城先輩…」

神城はまだやってたのか。

「よし、じゃあ全員集まった事だし、飯にするか!」

全員が自分の席に座り、昼食を食べた。

今日は、猫西の手作りチャーハンだった。

…なんでどいつもこいつも料理上手なんだよ。チクショウ。

全員が昼飯を食べ終わった後は、各自部屋に戻った。

これから、4つ目の弱みが明かされる。

…今日は、一体誰の弱みを見ることになるんだ…?

 

 

ー個室ー

 

ちょうど12時になり、動機が配られた。

俺は、ゆっくりと画面をスクロールした。

そして、ついに動機を見る時がやって来た。

…今日は、誰の弱みだ?

 

 

 

 

 

【超高校級の弓道部】射場山祐美サンの弱み

 

『超高校級の弓道部』射場山祐美サンは、左目の視力がほとんどありません!

 

 

 

 

何…?

射場山は左目が見えないだと…?

そんなバカな話あるか。

だって、アイツは寸分の狂いもなく的を射抜く『鷹の目』だぞ…?

…今まで、片目が不自由な事を隠してたっていうのか?

俺は、直接本人に確認する事にした。

俺は、射場山と話すため、エリア中を探し回った。

 

 

ー売店ー

 

射場山は、売店のベンチに座って本を読んでいた。

そういえば、5日目もここで話してたな。

ここがお気に入りの場所なのかな。

「…いた。」

俺は、早速射場山に話しかけた。

「…なあ、射場山。」

「…何。」

「ちょっと話いいか?」

「…はあ、どうせ私の弱み見たんでしょ。」

「え、なんで知って…」

「3日前も、おとついも、昨日も聞かれた。まあ、どうせそれ以外の用で私に話しかけるような物好きなんていないだろうけど。」

うわぁ…すげぇ卑屈。

「そんな事無いと思うぞ。そんなに自分を卑下するな。」

「…じゃあ何?あんたは、別の用で私に話しかけたわけ?」

「うっ…」

慰めたそばから痛いところ突いてくるな、コイツ。

「…ほら、やっぱりね。…はあ、別にここには私達以外誰もいないし、言いたい事があるならさっさと話せば?」

本当に聞くのか…?射場山が誰にも言いたくないような弱みを、今ここで…?

でも、これ以上話を先延ばしにしても仕方がない。

俺は、思い切って射場山に聞いた。

「あの…射場山、お前…左目が見えないって本当なのか…?」

射場山は、無言で俺を睨んできた。

…やっぱり、聞いたらマズかったか?

「…ホント。」

「えっ…」

「…中2の時、ちょっとした事故に遭って入院して…その時、目が覚めたら左目が見えなくなってた。…幸い、右目まで失明せずに済んだから、あんまり生活には困ってないけど…弓道の腕は、前よりは落ちた。前の状態に戻そうと頑張ったけど、やっぱり元通りってわけにはいかなかった。」

「そんな…なんでその事を今まで黙ってたんだ?」

「…同情されたくなかったから。もし言ったら、軽々しく『かわいそう』って言われると思った。それが気に入らないから、今までずっと隠してた。」

「いや、でも何かしら困る事とかあるだろ…」

「私は、目が不自由なのを言い訳にして周りに助けて貰おうなんて思ってないから。…話はそれだけ?」

射場山は、本を閉じてベンチから立ち上がり、その場を去ろうとした。

「…おい、待てよ射場山!」

 

俺は、射場山の左手を掴んだ。

「ちょっと、なんなのあんた…」

俺は、振りかぶっていた拳を、射場山の顔目掛けて振り下ろした。

「…!!」

次の瞬間、俺は空中に浮いたかと思うと、地面に叩きつけられた。

「ぐはっ!!」

「…いきなり襲ってくるなんて、どういうつもり?」

「…ほらな。やっぱり見えてないから反応が遅れただろ。」

「ーッ、だから何?バカにしたいわけ?こんな状態の私の攻撃もかわせなかったくせに、よくそんな…」

「お前、意地張りすぎなんだよ。困った事があれば、誰かに助けてもらえばいいじゃねえか。なんでもかんでも一人で抱え込もうとしてんじゃねえよ。」

「…そんな甘え、許されない。」

「何固くなってんだよ。たまには甘えたっていいじゃねえかよ。お前が困ってたら、俺が助けてやる。他のみんなだって、きっとお前の力になってくれる。だから、辛くなったら俺に言ってくれよ。」

「…今の私に投げられてるようなヤツに、私の事を助けられると思えないんだけど。」

「うっ…そ、それは専門外なんだよ!そういう事はエカイラに言えエカイラに!」

「結局丸投げしてんじゃん。…でも、少し肩の荷が降りた。…ありがと。」

「別に、俺は当たり前の事しか言ってねぇよ。」

でも、射場山の緊張を少しでも解けたなら、俺が言った当たり前の事も、意味があったに違いない。

俺は、射場山が少し微笑んだのを見て、つい笑顔が溢れてしまった。

「…何ニヤニヤしてんの?キモいんだけど。」

「うるせぇな!別にニヤニヤしてねぇよ。お前こそ、いつもそんなに笑ってねぇだろ?」

「は?意味わかんない。別に笑ってないし。」

「何ムキになってんだよ。」

「…ホント、あんたといると調子狂う。」

俺達は、二人でベンチに座りながら話をした。

射場山は、口調こそキツかったものの、普段は絶対に見せないような表情を見せた。

…最初は無口な奴だと思ってたけど、意外と可愛いとこあるんだな、コイツ。

…って、俺は一体何考えてんだ。

織田じゃないんだから、女子の前で変な事考えんなよ俺…!

 

その後も、射場山としばらく話をした。

結局、あれから30分くらい話したのかな?

「ありがとな、射場山。色々話してくれて。お前と話せて楽しかったよ。」

「…ん。」

射場山は、分かりやすく照れた。

コイツ、意外と顔に出やすいタイプなんだな。

「…こっちこそ、色々今まで言えなかった事とか言えた。…ありがと。」

「いいよ、礼なんて。また一緒に話そうな。」

「…ん。」

 

《射場山祐美の好感度が上がった》

 

「…さてと、次はどこに行こうかな?」

俺は、ベンチから立ち上がり、その場を去ろうとした。その時だった。

 

 

「誰か助けてぇえええええええええ!!!」

 

 

「!!?」

展望台の方から、声が聞こえた。

「ねえ、今の声…まさか…」

「ああ、猫西の声だ。展望台の方からだな、急ぐぞ!」

俺と射場山は、全力で展望台へと走った。

まだ、助けられるかもしれない。

これ以上、仲間を死なせるわけにはいかないんだ…!

…頼む、無事でいてくれ…!

俺は、まだ猫西が生きていると信じて、ただ展望台へと一直線に走った。

 

 

ー展望台ー

 

「おい、射場山!お前は、下にいてくれ。俺が上を見てくる。」

「…ん。わかった。」

俺は、展望台を登った。

…まだ、無事だよな?

約束したもんな?

お前は、こんな所で死ぬわけないよな…?

登るたびに、少しずつ不安が募る。

それでも、俺はただ信じて登るしかなかった。

そして、展望台を登り切った。

…そこには。

 

 

 

「…猫西!!」

展望台の床の端に横たわっている猫西がいた。

見たところ、外傷はない。

「猫西!!おい、大丈夫か!?しっかりしろ!!」

俺は、ひたすら猫西の肩を揺すった。

頼む、生きていてくれ…俺を、絶望させないでくれ!

「…う。」

猫西が目を覚ました。

「…あれ?私、なんでここで寝てたんだっけ?」

「猫西…よかった!どこも怪我してないよな?」

「…う、うん。ちょっと頭がぼんやりするけど…大丈夫みたい。」

猫西は、立ち上がると周りを見渡した。

「…うん、やっぱりなんともな…」

猫西は、急に固まった。

「ん?どうした?」

 

 

 

『オマエラ、死体が発見されました!!展望台前までお集まりください!!』

 

 

 

…え?死体だと…?

展望台前って…ここじゃねえか。

でも、猫西は生きてるし…だったら、一体…?

「…き、菊池君…あれ…」

猫西は、顔面蒼白になって、展望台の外を指差していた。

「…?」

展望台の外を覗き込むと、そこには…

「…え。」

…嘘だ。

そんなはずがない。

お前が死ぬわけないよな…?

お前、生きてここを出るって言ってたじゃねえかよ。

なんで、なんでお前がこんな事になっちまったんだよ…!

その嘆きは、決してソイツに届く事はなかった。

目の前の残酷な現実は、容赦無く俺の幻想を嘲笑うかの如く打ち砕いていく。

見慣れた緋色は、眼球に絡みつくかのように、俺の目に飛び込んでそして刻まれた。

まるで、今までの思い出を、約束を、全て否定するかのように、ソイツは全身バラバラになって転がっていた。

なんでお前が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級の漫画家』織田兼太郎は、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロシアイ合宿生活 残り11名

 

 

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