『うぷぷぷ…お見事大正解ー!!『超高校級の漫画家』織田兼太郎クンをブチ殺した愚かな殺人犯のクロはー…悲劇のヒロイン気取りの偽善者、『超高校級の実況者』猫西理嘉サンでしたー!!…いやあ、今回はクロでさえ自分が殺したのを知らなかった殺人だったわけだけどね、実に面白かったよ!オマエラホント頑張ったよね!』
『でも、今回は満場一致ではなかったんでちゅよね〜。』
『そうそう!クロの猫西サンが自分に投票したのはちょっと意外だったけど…それより玉木クン、小川サン!!オマエラさ、クロが猫西サンだってわかってて床前サンに投票するとか、どういうつもり?オマエラの命だけじゃなくて、みんなの命が懸かってるって事、ちゃんと自覚してる?』
「自分は…自分は、猫西先輩がクロだなんて思いたくなかったんス!!」
『いや、認めろよ。織田クンを殺したのは、猫西サンなんだよ!』
「違う!…だって、あんなの不可抗力だろ!!殺人を計画したのは床前じゃねえか!!だったら、クロは床前だろ!!」
「…玉木さん。残念ながら、今回は猫西さんがクロです。」
ジェイムズは、うつむきながら悔しそうに言った。
「なんでだよ!?猫西が織田の手を離しちまったのは、どう考えても床前のせいだろ!!だったら床前がクロになるべきだろうが!!」
「…あのね、玉木さん。私はあくまで殺人を
床前は、不敵な笑みを浮かべながら余裕綽綽と玉木を煽る。
…悔しいが、床前の言う事は正しい。
このゲームのルールの性質上、今回の裁判で床前を裁くことはできない。
床前は、そのルールを利用して、猫西に織田を殺させた。
猫西は、最初から床前の掌の上で転がされていたんだ。
「床前…お前、よくも織田と猫西を…!テメェだけは絶対許さねェ!!」
「あら。許さないなら、どうしますか?私を殺して、実行犯としておしおきされますか?ん?」
「テメェ…!!」
玉木は、床前を殴ろうとした。
だが、床前の前に立ちはだかるヤツがいた。
…猫西だった。
「玉木君、もうやめて。」
「猫西…お前…!」
「…全部、床前さんの言う通りだよ。私は、織田君を殺して、それを忘れちゃってたんだ。…許される事じゃない。だから、今回の裁判は、私がクロにならなきゃいけなかったんだよ。」
「違うっス!先輩は、何も悪くないっス!!」
「クソッ…チクショウ!…なんで、なんでこうなっちまうんだよ…!」
『うぷぷ、ズバリ教えてあげます!どうしてこうなってしまったのかをね!』
「何…!?」
『織田クンは、オマエラの読み通り、自殺しようとしていたのです!それも、自分の勝手な思い込みでね。そのおバカな行動のせいで、彼の愛する人がクロになっちゃうとも知らずにさ!そして、そんなバカを助けようとしたのが猫西サンでした!でも、どっかのメス豚の作った薬を盗んだ床前サンに邪魔されて、その手を離しちゃったんだ!そして、その薬の副作用のせいで、猫西サンは自分がクロだって事も忘れてのうのうとシロのフリをして学級裁判に参加してたってワケ!!…いやあ、まさか人を助けようとした結果、逆にその手で殺しちゃうなんてさ、ホント皮肉だよね!』
『ぴきゃきゃ…あちょこで織田様を見捨てていれば、少なくとも自分がクロになる事はなかったのに…世の中、正義が必ず勝ちゅとは限らないんでちゅよ!時には、人を踏み台にちゅる冷酷ちゃも必要なのでちゅ!』
「うるせェ!!黙れ!!!」
俺は、ありったけの声で叫んでいた。
「猫西が織田を助けようとした事は、たとえ何があろうと、絶対に間違ってない!猫西の、仲間を助けようとした勇気を、優しさをバカにするんじゃねェ!!」
『菊池クン、オマエホント口だけだよね。そんな事言ってはいるけどさ、オマエ猫西サンに投票してんじゃん!』
「ッ…!!」
そうだ。
俺は、猫西の命よりもみんなの命を選んでしまった。
これだけは、俺が今更何を言おうと揺るがない真実だ。
「お、俺は…」
「モノクマ、やめて。菊池君は何も悪くない。菊池君は、あーちゃんや玉木君…みんなの事を守ろうとしただけなんだよ!」
「猫西…俺は、お前に投票したんだぞ…?なのになんで…」
「…菊池君。みんなの事を守ろうとした君の判断は、たとえ誰がなんと言おうと、絶対に間違ってないよ。だから、私なんかのために自分を責めないで。」
「お前…一体何を…!」
「悪いのは、全部私だ。だから、私が裁かれなきゃいけない。…そうでしょ?」
『おやおや、随分と潔いでちゅね!こっちとちては、もっと醜くのたうち回って欲ちかったんでちゅけど…まあいいでちょう!おちおきをはぢめちゃいまちゅよー!』
「…最後に、1つだけお願いがあるの。」
『ほぇ?何?』
「私はおしおきを受ける。それはもう受け入れた。…その代わり、ここにいる私以外のみんなと、外にいるみんなの大切な人達には何もしないであげて。」
「おい、やめろよ…何言ってんだよお前…!」
『うん、いいよ。…ただし、オマエが大人しく死ねば、だけどね!』
「…わかった。早く始めて。」
「おい…何言ってんだよ…1人で勝手に死のうとするなんて…そんなの、絶対に許さねェぞ!!」
「そうだ!!こんな裁判、無効だ!!今すぐおしおきをやめろ!!」
「そうっス!こんな理不尽な結果、認めないっス!!」
『うるせぇよバーカ!!誰かを殺したクロはおしおきって言ったじゃん!例外も特例もエクセプションもないの!!とにかく、とっととおしおき始めたいからこれ以上の反論は無視するよ!』
『アナタ達の戯言に付き合っていられる程、オイラ達も暇ぢゃないのでちゅ。わかったら、大人ちくお席にお戻りくだちゃい!』
「おい、テメェふざけんな!!そうだ、おい猫西!俺達が時間を稼ぐから早く行け!!港にクルーザーあったろ、それ使って島の外に逃げろ!!」
「そうっス!!早く逃げてください!!」
「おしおきなんて、受ける必要はありません!!私達の事はいいですから、早く行って下さい!!」
俺、玉木、ジェイムズ、小川がモノクマ達に立ち向かった。
歯向かったら、俺が死ぬかもしれない。
…でも、何故か恐怖は沸き起こらなかった。
それよりも、こんな理不尽な結果を許すわけにはいかなかった。
覚悟はできている。殺すなら殺せ。
その代わり、俺達の仲間は絶対に逃す。
猫西が死ななきゃいけないのが運命だとするなら、そんな運命、俺達がねじ曲げてやる!
『ちょっと、オマエラ何その反抗的な態度!!ふーんだ、もういいもんね!オマエラがその気なら、ボクだって本気出しちゃうぞー!!』
『ぴきゃきゃ…本当に、皆様がちょろいもちょろって不良生徒で、オイラは悲ちいでちゅ。…仕方ありまちぇんが…貴様ら全員ここで死ねぇえええええええーい!!!』
モノクマとモノハムの目が赤く光り、爪が伸びる。
「上等だコラ!!やれるもんならやってみろ!!テメェらの相手は、俺達だ!!」
「おい猫西!!早く行け!!」
「菊池君、もういいよ。…みんなも、こんな私なんかを、命を懸けて護ろうとしてくれてありがとう。…嬉しかった。」
「おい、何言ってんだよ…早く逃げろよ…!逃げてくれよ…!」
「…でも、ごめん。私は、逃げるつもりはない。私が逃げれば、みんなが死ぬ。それに、みんなの大切な人達に何かされるかもしれない。それだけは、絶対にあっちゃいけないんだ。だから私は逃げない。」
「そんなの、俺達がなんとかする!何もお前が死ぬ事ないだろ!!」
猫西は、静かに首を横に振った。
「とにかく私は、みんなに迷惑かけてまで生き延びようとは思わない。私は、織田君を殺した大罪人だ。だから裁きはちゃんと受けるよ。」
「違う…お前は…」
「短い間だったけど、君達と過ごした時間はすごく楽しかった。…ありがとう。」
「やめろ…頼む、そんな事言わないでくれ…!」
猫西は、俺の肩に手を置いて言った。
「菊池君、私は君の事が好きだよ。」
「…え。」
「…最後に、これだけは伝えておきたかった。…じゃあね。」
猫西は、それだけ言い残すと、モノクマ達の方へ歩み寄った。
「…ねえ、もうやめて。私がおしおきを受ければ、みんなには何もしない約束だったでしょ。」
『猫西サン!キミなら逃げないと思ってたよ。オマエラも彼女を見習って、反抗的な態度は慎むように!』
「やめろ…やめてくれ…!」
『それでは、今回は『超高校級の実況者』猫西理嘉サンのために!!スペシャルなおしおきを用意しましたっ!!』
「バイバイ、みんな。」
「嫌…いやあ…!!先輩が…!」
「…やめろ。」
『…ではでは、おしおきターイム!!』
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
モノクマの席の前から、赤いスイッチがせり上がってくる。
俺は、モノクマに向かって突進した。
だが、間に合わなかった。
モノクマはピコピコハンマーを取り出し、ハンマーでスイッチをピコッと押した。
GAME OVER
コニシさんがクロにきまりました。
オシオキをかいしします。
猫西の下の床が開き、猫西は下に落ちる。
猫西は下へ下へと落ちていく。
そして、着地した。
着地した場所は、パステルカラーの壁で、部屋中にぬいぐるみや化粧セットなどが置かれた部屋だった。
猫西は、部屋の椅子に座らされ、椅子に拘束される。
猫西は、不安そうに周りを見渡す。
すると画面が切り替わり、タイトルが浮かび上がる。
聖宮炎上ガール
【超高校級の実況者】猫西理嘉 処刑執行
部屋の中に、ボディビルダーのような姿のモノクマと、給食当番の格好をしたモノハムが、巨大な管付きのアルミ鍋とカセットコンロを運んできた。
モノハムは、『火気厳禁』と書かれたドラム缶を持ってきて、鍋の中に中身を注ぐ。鍋は、ドラム缶の中の真っ白な液体でいっぱいになった。
モノハムはカセットコンロのダイヤルを回した。コンロが点火して鍋が熱せられ、鍋の中身があり得ない速度で沸騰する。
鍋の中身は、ブクブクと泡立ち、白煙が上がっている。
するとモノクマは、透明な管のついた筒を取り出し、猫西の口に無理矢理突っ込んだ。
そして、管の端を鍋の管に結合した。
その瞬間猫西は、自分の身に何が起こるのかを悟り、顔面蒼白になってカタカタと震えた。
モノクマは、鍋の管に取り付けられたハンドルを高速回転させる。
その瞬間、鍋の中の大量の白濁液が一気に管の中を通り、猫西の口の中に注がれる。
猫西は、超高温の液体によって身体中に大火傷を負い、悶え苦しむ。
猫西は白目を剥き、汗が大量に噴き出す。
口や鼻からは、白濁液と血が混ざった液体が大量に溢れ出した。
拘束を解こうと暴れるも、拘束具は頑丈に固定されており、ビクともしない。
どんなにもがこうと、マグマのように煮えたぎった白濁液は、容赦無く体内に注がれていく。
そしてついに、鍋の中身が全て放出された。
猫西の周りは、部屋を埋め尽くす程の白濁液で染まっていた。
猫西の目は虚ろになっており、もう意識があるのかもわからない状態だった。
だが、これだけでは終わらなかった。
マッチョモノクマは、部屋の隅に置いてあった釘バットを手に取り、猫西の顔面目掛けてフルスイングした。
猫西は抵抗する術もなく、バットを顔面に喰らった。
顔は殴られた衝撃で潰れ、バットと床には返り血が飛び散る。
モノクマは、これだけでは満足できなかったのか、猫西をバットで何度も殴る。
殴れば殴るほど、バットと猫西の体が赤く染まる。
猫西の顔は、誰だかわからない程に変形し、両サイドに結った髪もほどけ、全身ボロボロになる。
トドメと言わんばかりに、モノクマは渾身の一撃を喰らわせた。
そして、バットをフルスイングした勢いで、近くに置いてあったキャンドルにバットが当たり、キャンドルが床に落ちる。
キャンドルの火が白濁液に点火し、部屋は怒涛の勢いで燃え広がる。
それを確認したモノクマとモノハムは、猫西を置いて急いで撤収した。
部屋全体が燃え広がると映像の範囲が広まっていき、部屋の外の映像が映し出される。
猫西が処刑された部屋があると思われる城は燃え上がり、朱い炎が夜空を照らす。
その様子を、森の影から、パーカーを羽織ったモノクマがスマホで撮影する。
そして、『殺人鬼の家にリア凸したらまさかの大炎上なうw』と書き込み、写真と一緒に発信した。
『イヤッホォオオオオオオオオイ!!!エクストリィイイム!!!いやあー、ゾクゾクしちゃうね!』
『ぴきゃきゃきゃきゃ!これだけハデにおちおきちたら、視聴率アップ間違いなちでちゅね!』
「ぁああああ…そんなぁ…猫西先輩が…!」
「クソッ…チクショウ…!!なんで…なんでだよ!」
「そんな…猫西さんが…!」
「にゃあああああああ!!うぇすにゃんがぁあああ!!もううぇすにゃんチャンネル見れないよ〜!」
「…本当、毎度毎度懲りもせずにいい趣味した事するわね。」
「…最低。」
「嘘でしょ…猫西が…!」
「ひぃいいい!マジかよ…たまたま殺っちゃっただけでここまでされんのかよ…!」
俺達はまた、仲間が処刑されるところを見ることしかできなかった。
…猫西が死んだ。
あまりにも理不尽な最期だった。
その死は、アイツが犯してしまった過ちに比べ、あまりにも残酷すぎた。
なんで…織田を助けようとしたアイツが、俺達を庇ってくれたアイツが、こんな方法で殺されなきゃならなかったんだ。
俺は、織田と猫西の命を弄んだモノクマ達と床前が許せなかった。
…だがそれ以上に、猫西を助けられずに、逆にアイツに助けられた自分が、何より許せなかった。
『おやあ?菊池クン、なんでそんなに泣いてんの?惚れた女がブッ殺されたのがそんなにショックだった?』
「…え。」
モノクマに言われて初めて気がついた。
今まで、自分でも気付いていなかった。
俺は、誰よりもみんなの事を考えていたアイツに、いつの間にか惹かれていたんだ。
…でもアイツは、もうこの世の何処にもいない。
今更気付いたって、どんなに後悔したってもう遅い。
俺がアイツに甘えていたからこんな事になったんだ。
俺の甘さが、アイツを殺したんだ。
『いやあ、それにしてもオマエラホントによく頑張ったよ!ご褒美にメダルはあげるから、好きにシェアしてね!』
『ぴきゃきゃ、ではまたお会いちまちょう!』
モノクマとモノハムは、陽気に去っていった。
俺は、猫西が居なくなってしまった事で空いた心の穴を、いつまでも塞げずにいた。
…だが、こんな状況で1人だけ笑うヤツがいた。
「…うふふ、ふふふ…あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
床前は、今までに聞いた事もないような大きな声で高笑いしていた。
「お前…何が可笑しくて笑ってんだ!!」
「…うふふ、なんで笑ってるのか、ですって?…そんなの、愉快だからに決まってるじゃないですか。」
床前は、狂ったような笑みを浮かべて言った。
「…本当、最高の気分ですよ。菊池さんにすり寄ってくる邪魔な虫が計画通りに消えてくれたんですから。…うふふ、やっぱり私と菊池さんは、運命で結ばれているんですね♡」
「お前…何言ってんだよ!?」
「…簡単な話ですよ。私にとって、猫西さんがクロとして処刑されるのが、私にとっての『幸運』だった。だから、そうなるように彼女の運命を操ってあげたんですよ。」
「お前にとっての…『幸運』…だと…!?」
「ええ。そうです。…では、菊池さんに問題です。なんで猫西さんは、死ななきゃいけなかったんだと思いますか?」
「そんなの、わかるわけないだろ…!アイツは、誰よりもみんなの事を想ってた。なのに、なんでアイツが殺されなきゃならなかったんだよ!!」
「…うふふ、答えは簡単です。」
「…彼女が、菊池さんに恋心を抱いていたからです。」
…は!?
そんな、さっきのアレはそういう意味だったのか…?
俺はてっきり、likeの方だと思ってたぞ…
「嘘だろ…?アイツが、俺の事を…?」
「いや、アンタそれ今更だから。逆に、あれだけ好意寄せられて、よく今まで気づかなかったわね。」
「サトにいはドンカンのキワミだね〜。」
そんな…じゃあ、俺は今まで…
「彼女もかわいそうでしたよね。菊池さんが鈍すぎるせいで、最後の最後まで結ばれなかったんですから。…まあ、それも私にとってはラッキーだったんですけど♫」
「どういう意味だ!?」
「菊池さん。私は、あなたの事を心の底から愛しています。私は、あなたと私が結ばれればそれはどんなに幸せな事だろうかと毎日そればかりを考えていました。…でも、そのためには、あなたにすり寄る他の女が邪魔だったんです。だから、私は猫西さんを殺す事に決めました。」
床前は、裁判場の席の周りを回りながら言った。
「…でも、そんな時、私は猫西さんに話しかけられたんです。もちろん彼女は、私が菊池さんを好きだって事は知ってましたから、私に対して嫌味の一つや二つ言いに来るんだろうなって思ってました。…いや、むしろそっちの方がまだ良かったのかな?…でも、彼女はとんでもない事を言い出したんです。ねえ菊池さん。彼女がなんて言ったと思いますか?」
「…知るかよ。」
「『お互い頑張ろうね』ですって。…彼女は、私の菊池さんへの恋心を知った上で、私の事も応援してくださったんです。」
「…だったら、なんで…!」
「だって、ムカつくじゃないですかぁ。」
…は?
「人を殺して楽しんでる私に、最初から勝ち目なんてない事はわかってました。猫西さんは見た目が良くて、気配りもできるので、菊池さんは絶対猫西さんの方を気に入るだろうな、とは思ってましたよ。実際、その通りでしたしね。…そんな状態で優しい言葉なんてかけられたら、彼女との差が浮き彫りになるだけじゃないですか。…だから私は、猫西さんをクロにしたんです。」
「なんだと…!?」
「…要するに、私と菊池さんが結ばれるという私にとっての『幸運』が叶うためには、彼女は
「なんだそのゴミみてぇな理由は!!昼ドラの女優みてぇな事してんじゃねえぞこのクソビッチが!!」
「あなたにだけは言われたくないですよ神城さん。耳障りなので黙っててください。」
床前に睨まれると、神城は大人しくなった。
「…とにかく、私は賭けに勝ったんです。そのおかげで、菊池さんと私の恋路を邪魔する魔女は自滅してくれましたよ。これでもう、私は菊池さんのモノ…うふふ、私ったら、なんて幸福なんでしょう!!」
「頭おかしいだろお前!!」
「やだなあ、菊池さん。私、これでもずっといい子を演じてきたつもりだったんですよ?おかげで、目障りな駒達はみーんな私の思惑通りに動いてくれてましたよ♡」
…駒だと?
まさか、コイツが今まで人を殺してきたのは、全部ゲームだったとでもいうのか…?
「ふざけんな!!!」
「きゃっ!?」
俺は、床前の胸ぐらを掴んで拳を振りかぶった。
そして…
「ッ…!!」
…殴れなかった。
コイツは、みんなの命を弄んだ屑だ。
それでも、女に手をあげるのは、俺のプライドが許さなかった。
「まあ紳士♡…私、ますます菊池さんの事が好きになっちゃいました。」
「…クソッタレ!!」
「…あの、一つ宜しいですか?」
ジェイムズが手を挙げて発言した。
「…なんですか?私は今、菊池さんとお話しているんですけど。」
床前が、舌打ちをしながら面倒臭そうに聞いた。
「さっきからずっと伺おうと思ってタイミングを見計っておりましたが…織田さんのしおりに表示されていた猫西さんの弱みって、床前さんが用意したんですよね?」
「…ですけど?…言いたい事があるなら早くしてください。」
「あのしおりの機能だけでは、あの様な物を作成する事は不可能です。貴女は何故、あの様な物を作成出来たのですか?」
…あ。
そういえばそうだ。
あのしおりには、最低限の機能しか無い。
あれだけの機能で、モノクマに配られた『弱み』のダミーを作成する事なんて、不可能なはずなんだ。
「ああ、なんだ。その事ですか。…それは、」
「私が、モノクマ学園長達の内通者だからですよ。」
…。
…。
…。
は?
「お前が、内通者…だと…?」
「ええ、そうですよ。私が内通者でーす。」
「にゃあああああああああ!?ナギねえがクマちゃんのスパイだったの!?嘘でしょぉ!?」
「嘘じゃないです。監視カメラの設置や動機の作成等、色々頑張ったんですよ?…全ては、」
「菊池さん。あなたのために。」
「…俺?」
「え!?スパイがサトにいのため!?ちょっとマヂゆってることがイミフ!一体どゆこと!?」
「…単純な話です。私は、どうしても菊池さんの事だけは守りたかった。だから、一番菊池さんの事を守りやすいポジションを確保するために、自ら学園長達に売り込んだんです。…私だって、菊池さんを裏切るのは心苦しかったんですよ?でも、仕方ないじゃないですか。だって、この世界で一番優先されるべきものは、愛なんですから。」
「愛…?」
「そうです。菊池さん、私はあなたの事を、世界中の誰よりも愛しています。私は、あなたのためならなんだってします。あなたが生き延びるためなら、私は喜んで敵に魂を売ります。あなたを殺そうとする者がいるなら、喜んで殺します。…そして、あなたが私に死ねと言うのなら、私は喜んで死にます。私は、あなたが喜んでくれるなら、何もいりません。あなたにだったら、たとえ何をされたとしても、私にとっては幸せなんです。」
床前は、俺の腕を掴んで無理矢理自分の手を握らせた。
「ーーーーーッ!!?」
「気持ち悪りぃ…!」
「引くわー。」
神城とアリスは、顔を青白くしながら声を漏らした。
「…触んな!!」
俺は、床前の手を振り解いた。
「菊池さん、もしかして、私は邪魔ですか?だったらいつでも言ってくださいね。喜んで死にますから。」
「床前さん、そんなのは愛じゃありません!!
ジェイムズが声を張り上げて言った。
「…あら、ではあなたの言う愛は、きっと愛ではありませんね。」
「どういう意味ですか!?」
「…その人のためなら、なんだってするのが愛です。私は、菊池さんのためならなんだってできるんです。だって、私は菊池さんの事を愛してるから。」
「…アンタ、絶対いい死に方しないわよ。」
「ご忠告ありがとうございます、エカイラさん。そして耳障りなのでこれ以上話さないでください。…さて、菊池さん。目障りなゴミも消えてくれた事ですし、これから二人でお話でもしませんか?」
「…チッ、付き合ってられっかよ。」
俺は、一人でエレベーターに乗り込んだ。
「あら、菊池さん。どちらに行かれるんです?」
「…気分悪いから部屋に戻って寝る。」
「あら。もうお戻りになられるんですか?でしたら、言い争いで喉が疲れているでしょうし、ハーブティーでも淹れましょうか?私の部屋に、安眠効果のあるハーブがあるんですけど…」
床前は、ズカズカとエレベーターの中に入ってきた。
「うるせェ、ついてくるな!!」
「菊池さん…」
「…今すぐ俺の視界から消えろ。そして二度と俺の前にその面を見せるな!」
「きゃっ!」
俺は、床前をエレベーターの外へ突き飛ばしてエレベーターを作動させた。
…最悪の気分だ。
織田が死んだ。
猫西は、俺が想いを伝える事も、俺がアイツの想いに気付く事もないまま処刑されてしまった。
そして、今まで仲間だと思って信頼していた床前が実はモノクマの手先で、しかも人の命を平気で弄んで楽しむ異常者だった。
織田と猫西は、最期まで床前の操り人形だった。
織田は、床前のシナリオ通りに偽物の弱みに騙されて自殺を図った。
猫西は、そんな織田を助けようとした優しさを床前に利用され、織田殺しの罪を着せられた。
…二人だけじゃない。今までに死んでしまった奴等は、みんな床前の掌の上で転がされて殺された。
全ては、あの女の自分勝手な殺人欲求を満たすための茶番劇に過ぎなかった。
『世の中、正義が必ず勝つとは限らない』
…まさにその通りだ。
自分の正義を貫こうとした猫西は織田を殺したクロにされて、みんなを欺いて散々弄んだ床前はのうのうと生きている。
良く生きれば報われるなんて、そんなのはただの幻想だと思い知らされた。
真実は、時には虚構以上に醜く、理不尽で、そして残酷だ。
…俺は、こんな歪んだ真実に、どう向き合ったらいいんだ。
答えは見つからないまま、俺は部屋に戻ってベッドに横たわっていた。
第3章『人生最後の告白を』ー完ー
コロシアイ合宿生活残り10名
「…いっやあ、床前のヤツ流石に調子に乗りすぎっしょ!まあ、アイツは色々優秀だから、特別に目を瞑ってあげるけどさ。これ以上引っ掻き回されると、正直興醒めなんだよなー。…んー、まあでもアイツの仕事ぶりを考えたら、まだ泳がせといた方がこっちにとってはプラスだよね。…菊池クンの事が大好きすぎるヤンデレの変態っていうのが玉に瑕だけど。…さーてと、そろそろボクの出番かな〜?」
To be continued…
【論リゾこぼれ話】
今回は、まさかの理嘉ちゃんがクロでしたね!
そして渚ちゃんの豹変っぷり…w
だんだん狛枝臭が漂ってきたので、これからは敬意を持って『トコマエダ様』と呼ばせて頂きます。
下はトコマエダ様のステータスです。
トコマエダ様
レベル999
論破力0.8コマエダ
ウザさ1.2コマエダ
狡猾さ0.9コマエダ
狂気10コマエダ
うーん、手強い。
さて、理嘉ちゃんのおしおきですが、これはちょっと拘らせて頂きました。
もうお気づきの方が殆どでしょうが、今回のおしおきはピンク要素アリです。
苦手な方は見ない事をお薦めします。
まず最初のアツアツ地獄ですが、アレは、(お察しください)の隠喩表現です。
次に釘バットですが、あれはネット用語の『叩く』を意味しています。
そして、最後の炎は、ネット用語の『炎上』です。
つまり、あれはネットアイドルの売春行為がバレてネットで散々叩かれまくった挙句大炎上、というストーリーを(物理)で再現しているわけです。
論クンの前でそんなストーリーの再現をさせられる事自体、彼女にとっては耐えがたい仕打ちだったのではないでしょうか。