最近スランプ気味で、なかなか書けませんでした。
遅れてゴメンナサイ。
そして現る無断編集常習犯☆
ートイレー
「…ん。」
あれ…?
私、確か論さんを狙う変態共と戦っていて…
それで…
「!?」
ちょっと、何これ!?
ロープで縛られてて動けないんだけど!
あと、何故か身体が塩まみれになってるし!?
…あの変態共の仕業ね。絶対許さないから。
「…ブッ殺す。」
ーレストランー
合宿15日目の朝。
俺は、思い足取りでレストランに入り、声を振り絞ってみんなに挨拶した。
「みんなおはよう。」
「おう、おはよう菊池!」
「おはようございます。」
「アラ。おはよ。」
「おはようっス。」
「ふわぁ。」
「…ん。」
「朝から汚ねぇ面見せんな!!」
「おっはー!!」
…良かった。
みんな返してくれた。
「…あのさ、みんな昨日は本当にごめん!みんなに迷惑かけた上に助けてもらっちまって…」
「先輩、早く朝ご飯食べないと冷めるっスよ?」
「サラダのドレッシング、どれにしますか?」
「おい、菊池。早く座れよ。」
「いや、みんな昨日は…」
「あー、もううっさいなぁ!そーゆーのいいから!」
「えっ…でも…」
「アラ。食べる気無いならアタシが食べちゃうわよ〜♪」
「やめろ!!」
俺は席に座り、エカイラが食べようとした俺の朝食を奪い返して食べた。
「…あ。」
「アラ。ちゃんと食欲あるじゃないの。」
「いや、今のは…」
「なーに暗い顔してるんスか、先輩!」
「そうだぞ!お前らしくないな!」
「みんな…俺、みんなに酷い事したのに、怒ってないのか…?」
「何言ってるんスか、最初から怒ってないっスよ。菊池先輩が、自分らのためを思ってあんな事をしたのはわかってましたから。」
「逆に、嫌いな相手に対してあんな演技が出来るのは凄いと思います。私だったら、床前さんと一緒なんて絶対耐えられませんよ。」
「お前ら…」
責められるどころか、みんな俺の気持ちをわかった上で今まで通り接してくれた。
…こんなクソみたいなデスゲームに巻き込まれて、ロクな事がないと思ってたけど、ひとつだけ良かった事があった。
俺は、コイツらと出会えて、本当に良かった。
「…ありがとう、みんな。本当にごめん。」
「あー、もう謝るのはナシっス!!」
「…ん。」
「…あれ?そういえば、床前は?」
「ああ、ナギサちゃんならトイレに閉じ込めたわ。」
「あと、盛り塩も盛っておきました!悪霊退散!彦麿です!!」
「…も、盛り塩…」
何やってんだよコイツら。
絶対床前ブチ切れてんだろ。
まあでもアイツを自由にしたら何しでかすかわかんないし、俺的には助かったと言えなくはないのか。
…とりあえず、朝飯だけは持って行ってやるか。
ートイレー
個室に入ると、床前が便器に縛り付けられていた。
どういうわけか、身体が塩まみれになっている。
『あと、盛り塩も盛っておきました!悪霊退散!』
…ああ、そういえばそうだった。
「あっ、論さん!無事で何よりです!私がいない間に、皆さんに何かされていたらどうしようかと…」
コイツ…こんな状況でよく人の心配ができるな。
「飯だ。」
「わぁ、私のためにわざわざ持って来てくださったんですね!嬉しいです!」
「お前、塩まみれだぞ。待ってろ。今全部払うから。」
流石に塩まみれのままは色々とマズいからな。
ロープだけは絶対に解かんがな。
「ありがとうございます。ついでに、このロープ解いてくれませんか?」
「嫌だ。」
「…はい?論さん、今なんと…」
「嫌だっつったんだよ。お前みたいな頭おかしい奴を自由にしたら、何しでかすかわかったもんじゃねェ。」
「え!?ちょっと待ってください。なんでそんな事言うんですか?論さんは、私の事を愛して…」
「そんな訳ないだろ。俺は、お前をその気にさせておけばみんなを守れると思ったからお前のご機嫌を取ってただけだ。そうじゃなかったらお前みたいな人殺し、好きになるわけないだろ。」
「じゃあ…あなたが私にかけてくださった言葉は、全部嘘だったんですか…?」
「ああ。俺はな、お前の事が死ぬほど嫌いなんだよ。わかったら二度と俺達に関わるな。」
「そんな…あ、わかった!私がいない間に、皆さんに唆されたんですよね!?そうですよね!?」
「うるせェ。人の事を唆してんのはお前の方だろ。二度と口を開くな。」
「論さん…そんな、嘘です…!正気に戻ってください!!」
「…正気じゃないのはアンタの方でしょ?」
「…エカイラ。」
「あ、あなたは…よくも私を論さんから引き剥がして、論さんを唆しましたね!?」
「はぁ?アンタ何言っちゃってんの?」
「とぼけないでください!!あなた達が論さんを唆して、ひどい事を言わせるように仕向けたんでしょう!?そうですよね論さん!?私の事、本当は愛しているんでしょう!?」
「…。」
俺は、静かに首を横に振った。
「論さん、どうして…」
「いい加減現実見なさいよ。アンタ、フラれたのよ。」
「勝手な事言わないでください!!あなた、今すぐ黙らないとすぐに死ぬ事になりますよ!?」
「フン、檻の中のライオンなんて、いくら吠えようと怖くないのよ。そこで大人しくしてなさい。さ、こんなメンヘラ女ほっといて行きましょサトシちゃん。気分転換にカラオケにでも行きましょ。」
「そうだな。」
「ちょっと!待ってください!!エカイラさん、論さんに何かしたらただじゃおきませんからね!」
俺達は、床前をトイレに置き去りにして、カジノに向かった。
「…あのオカマ、後で絶対殺す。」
「全く、菊池クンの事になると目の前が見えなくなるの、キミの悪い癖だよ。だからキミはこんな事になったんだよ。」
「!?」
「やあ、笑っちゃうくらい無様だね、床前サン。助けてあげようか。」
「あ、あなたは…!」
「シー。あんまり大きな声出さないでよ。ボクは、いない人間なんだからさ。」
「…無駄口はいいです。何の用ですか?」
「いやあ、こっちとしてもさ、キミにはまだ内通者を続けて貰いたいんだけど、キミ暴走しがちだから、ちょっと今のままじゃ任せられないんだよね〜。」
「じゃあ、例の約束は取り消しって事ですか?それなら、今ここであなたを殺します。」
「…いんや、逆だよ。キミに、お願いがあって来たんだよね。」
「お願い…?」
「うん、お願い。今まで通りボクの協力者としてコロシアイを円滑に進めてほしいんだ。」
「…それは、あなたの態度次第ですね。…見返りは?」
「そうだね、菊池クンの命を保証してあげるのは当然として、例の物を見せてあげる。これでどうだい?」
「…本当に、約束は守ってくれるんですか?」
「そうしたいと思ってるよ。…あ、わかってると思うけど、もしこれ以上ゲームをブチ壊すようなら、今の話はなかった事になるからね。」
「…わかりました。とりあえず、反省したので助けてくれませんか?」
「オマエ、言ったな?また菊池クンと変な事しようとしたり、今回みたいにヘマやらかしたらおしおきするかんな!?」
「…はぁい。」
「よろしい。じゃあ、助けてあげるよ。…引き続き、スパイの方よろしく〜。」
「はい、わかりました。」
ーカジノー
俺達は、カジノにあるカラオケボックスに入った。
「お待たせ〜♪」
そこには、すでにみんな集まっていた。
…コイツら、待ち合わせしてたのかよ。
「さーてと、じゃあパーッと歌っちゃいましょっか。まず誰から歌う?」
「そりゃあもちろん菊池先輩からっスよ!」
「えっ、俺…?」
そんなに歌は得意じゃないんだがな…
俺は、勧められるまま歌った。
「先輩、結構うまいじゃないっスか。」
「そ、そうか…?」
「はーい、じゃあ次はあーちゃん!!」
アリスは、マイクを手に取って大きく息を吸った。
エカイラは、それを見て咄嗟に耳を塞いだ。
「…エカイラ?」
「みんな、耳を塞いでおいた方がいいわよ。」
「はぇ?」
曲のイントロが始まった。
そして…
「ボエーーーーーーーーーーーー!!!」
「ーーーーーーーッ!!?」
クソガキの喉からは、その見た目からは想像もつかないほど禍々しい歌声が放たれた。
地獄のような歌声に、鼓膜が悲鳴を上げた。
ディスプレイにヒビが入り、テーブルの上に置いてあるドリンクが腐っていく。
小川に至っては、あまりの酷さに失神していた。
なんだコイツ!?
音痴にも程があんだろ!?
「ふわぁ…なんかデュエットしたくなりましたぁ。」
リタがマイクを握り、一緒に歌い出した。
歌声の禍々しさがさらに増した。
二人は、鼓膜を抉るような不快極まりないハーモニーを奏でた。
コイツもかよ!!?
もはや拷問じゃねえか!!
「どうだ、あーちゃんのビセーに酔いしれたか!?」
「…だ、誰か…助け…」
「あれ?みんなノびてんじゃん。あー、多分あーちゃんの声が、キゼツするほど清らかだったからだな!うん!」
「ふわぁ…眠い…」
「おい、どけ!次は私の番だろうが!!」
「おや、次は神城さんですか。」
「ふはははははははははははははは!!!私の美声に酔いしれろ愚民共!!!」
曲のイントロが始まった。
神城は、曲の歌詞をガン無視して、ただ自分の素晴らしさをアピールするだけの替え歌を歌い始めた。
なんだコイツ!!?
自分大好きすぎかよ!!
もはやナルシストなんて生易しい次元じゃねェからな!?
他の奴らを見てみると、全員必死で笑いを堪えていた。
「じゃあ次はアタシね。」
エカイラはマイクを手に取り、歌い始めた。
…コイツ、メチャメチャ上手いな!!
聴いていて惚れ惚れする歌声だった。
「伏木野先輩、上手っスね!」
「エカイラちゃんさん流石です!」
「アラ、嬉しいわ。次は誰歌うの?」
「じゃあ次は俺だな!」
今度は、玉木が歌った。
…くっ、さすがはイケメン様だ。
結構上手いじゃねえかよ。
「玉木先輩も上手っスね!」
「そうか?ありがと。じゃあ次は誰歌う?」
「では、次は私が参りましょう。」
ジェイムズが歌い始めた。
…コイツ、やっぱりドルオタなんだな。
歌ってる曲が全部可愛らしいアイドルの曲だ。
しかも歌っててなぜか様になるのが腹立つ。
「ふふっ、楽しかったです。次は誰が歌いますか?」
「じゃあ、そろそろ自分が行くっス。」
次は小川が歌い始めた。
小川は、今までの奴らの中で一番上手かった。
「おぉ…」
俺は、思わず聴き入ってしまった。
「…どうっスかね?」
「Brilliant‼︎素晴らしいです小川さん!!ずっと聴いていられますね!!」
「そ、そうっスか…?なんか恥ずかしいっス。」
小川は、照れ臭そうにソファに座った。
…コイツ、褒められ慣れてないのか。
「じゃあ最後は射場山先輩っスね!」
「えっ…いや、私はいい。」
「遠慮すんなって!ほら!」
「いや…でもホントに歌下手だし…」
「大丈夫だって。多分下の奴らが2人いるから。」
「…菊池先輩、サラッとアリス先輩達の事ディスりましたよね?」
「仕方ない。ただの事実だ。」
「見事な開き直りっスね!」
「ねえ、こういう場なんだし、せっかくだから歌ってみましょうよ。ね?」
「…じゃあ、一曲だけ…」
射場山は、恥ずかしそうに小さな声で歌い始めた。
歌い方はぎこちなかったが、音痴というわけではなかった。
…なんだよ、普通に歌えてんじゃねえか。
「…羞恥で吐きそう。」
「射場山先輩、上手じゃないっスか!」
「同感です!全然下手じゃないですよ!」
「…そ、そう…?」
射場山は、恥ずかしそうにソファに座った。
それから、俺達は2時間ほどみんなで歌った。
「みんな、楽しかったよ。ありがとな。」
「先輩が元気になってくれたなら何よりっス!」
「じゃあそろそろお開きにして、お昼にしましょうかね〜。」
エカイラは、レストランに向かった。
…今日は何作ってくれんのかな。
楽しみだな。
ーレストランー
「…は?」
嘘だろ。
なんでお前がここにいるんだ。
「論さ〜ん♡」
「お、お前…!!なんでここにいんだよ!?」
「うふふ、愛の力ですよ。言ったでしょう?私、論さんのためならなんでもできちゃうんです。」
「お前ッ…」
「というわけで、脱出させていただきました。皆さん、仲良くしてくださいね?」
「ふざけんじゃねえ!!神である私の前にその汚ねェ面晒すな!!テメェなんか二度と便所から出てくんじゃねえよクソ便器が!!」
「やだなぁ、私はまだ身も心も清いままですよ。…あなたとは違ってね♪」
「テメェ、踏み殺すぞ!!」
「あら、いいんですか?私を殺したら、おしおきされちゃいますよ?」
「…クソがッ!!」
「…お前、何の用だ。」
「あら、論さんから私に質問してくださるなんて、嬉しいです!」
「ナギねえ、まさかあーちゃんたちをコロスケぢゃないだろうな!?」
「それを言うなら殺す気、ですね。」
「あ、そーだった。あーちゃん間違えちった☆」
「…うふふ、愚問ですね。あなた達の事は、確かに殺したい程嫌いですけど…でも、今のところは殺しませんよ。」
「なんで!?」
「実は、ちょっとメタい話になっちゃうんですけど、ちょっと調子に乗りすぎちゃったせいで、視聴率が今ガタ落ちなんですよ。だから、これ以上勝手な行動はしません。私、いい子だからちゃんと反省してます。…と、いうわけで、これからは皆さんとそこそこ平和にやっていくつもりですので、よろしくお願いします。」
「ウソクセェな!!そんな事言って私達を唆す気だろ!?キナ臭せェんだよテメェ!!臭せェのはテメェの割れ目だけにしやがれこの乳首レーズン垂れ乳女が!!」
「どうやらあなたは、頭だけではなく口も悪いようですね。そんな汚い言葉を聞かされている論さんがかわいそうなので、今すぐ黙りなさい。」
「ひぃいい…!」
神城の奴、意外とビビりなんだな。
「さて、では全員揃った事ですし、食事にしましょうか。エカイラさん、準備できてますか?」
「…。」
「あら?無視ですか?酷いですね。…まあ、あなたの声なんて聞きたくもないんですけど。では私はここに座りますね。」
全員が床前の近くを避けて座った。
「あれ?皆さん、私から離れすぎじゃないですか?もっと近づきましょうよ。私、皆さんともっと仲良くしたいです。」
「…どうせ、内心では俺達と近づきたくないって思ってんだろ?」
「ああ、なんだ。バレてましたか。…やれやれ、やっぱり本性は隠しておくべきでした。…あ、そうだ。また以前の引っ込み思案に戻って差し上げましょうか?」
「それはそれで今更ですよ。」
「ですよね。やっぱり、本当の自分を周りに知られていると結構不便なものですね。」
…やっぱりコイツは何を考えているのか全然読めない。
よく今まで本性を隠して正常者のフリをしていられたな。
気味の悪い女だ。
「ごちそうさまでしたっと。皆さん、これから予定とかあるんですか?」
「…。」
「尽く無視ですか。私、悲しいです。」
床前は、嘘泣きをしていた。
「おや、大丈夫ですか床前さん。私のハンカチ使いますか?」
「ジェイムズ!…そんな奴の嘘泣きに騙されんな。」
「えっ、あ…嘘泣きだったんですね。」
「なーんだ、バレてたんですか。まあ、皆さんに心配してもらっても全然嬉しくないんですけど。」
じゃあなんで嘘泣きしたんだよ。
「ましてや、カークランドさんみたいなおバカさんになんて、死んでも同情されたくないですよ。」
わざわざ心配してくれた奴に向かってその態度かよ。
相変わらずふてぶてしい女だ。
「…まあ、今のがガチ泣きだったとしても、無視すればいいと思うけどね。」
「エカイラさん酷いです。仲良くしましょうよ。」
「今更図々しすぎんのよアンタ。」
「トイレと盛り塩の事は全部水に流しますから。ね?」
「トイレだけに!?」
言うと思ったぞクソガキめ。
全員が昼食を食べ終わった後は自由時間となった。
「…さてと、売店でガチャでも引くかな。」
俺は売店でガチャを引いた。
今回は、扇子と指揮棒が出てきた。
「後で誰かにプレゼントしてみようか。」
ーコンサートホールー
コンサートホールに行くと、そこでは小川がピアノを演奏していた。
あまりの心地の良い音色に惚れ惚れとした。
音楽に疎い俺でも、小川の演奏が『超高校級』だって事はわかる。
…あの音痴二人組の死神の歌声とは大違いだ。
俺は、小川に拍手を送った。
「あ、先輩!」
「凄かったぞ、今の演奏。」
「そうっスか?ありがとうございます。」
「ところで、なんでここで演奏を?」
「ああ、せっかくコンサートホールがあるから、ちょっと楽器を弾いてみたいな〜って思ったんスよ。にししっ。」
「へえ…」
「先輩、せっかくだしちょっとお話しないっスか?」
「いいぞ。俺も、お前に渡したい物があるしな。」
「えっ、また何かくれるんスか?なんか、貰ってばっかりで申し訳ないっス…」
「そういうのいいから、受け取ってくれよ。」
俺は、小川に指揮棒をプレゼントした。
「えっ、これを…自分に?」
「嫌なら無理に受け取る事ねえけど…」
「いやいや!そんなわけないっス!ありがとうございます!」
良かった、気に入ったみたいだ。
「…なあ、小川。なんの話をしようか?」
「んー…そうっスね、床前先輩の話とか…」
「え、おいおい…なんでアイツの話?どうせなら、他の話しようぜ?」
俺は、小川が冗談を言っていると思って、笑いながら話題を変えようとした。
「真面目な話っスよ。」
小川は、真顔で言った。
「あ、ハイ…すいません。」
つい敬語になっちまった。
「はぁ…今まで先輩の元気が無さそうだったから話すのを遠慮してたっスけど…いつかは話そうと思ってた事なんで、今この場を借りて話をさせてもらうっス。大丈夫っスよ。床前先輩なら、今玉木先輩とアンカーソン先輩が一緒にいるっスから、聞かれる心配はないっス。」
「お、おう…それで、話って…」
「…先輩、床前先輩の事で、ちょっとでも嫌な事あったら自分に相談してくださいね。」
「えっ…」
「そんな驚く事じゃないっスよ。プレゼントのお礼っス。愚痴くらいは聞くっスよ。…それに、床前先輩が菊池先輩に付き纏うのは、多分自分にも原因があるんじゃないかって思ってるっスから。」
「…お前に…?一体どういう事だよ…?」
「自分、床前先輩があんな風になるまでは、床前先輩の恋愛相談に乗ってたんスよ。自分、床前先輩があんな人だと思ってなかったから、菊池先輩と床前先輩の恋を応援したいなって思って…菊池先輩の事いろいろ喋っちゃったっス。もし、床前先輩のストーキングを自分が手伝っちゃってたんじゃないかって思って…だからこの場を借りてお話をしたのは、まあ言い方はアレっスけど…要は、先輩に罪滅ぼしがしたかったんスよ。」
「お前のせいじゃねえよ!みんなそうだよ。床前の事を、あんな奴だと思ってなかったんだ。…少しドジで引っ込み思案だけど、優しくてみんなの事を第一に考える奴だと思ってたのに。なんであんな事に…」
「先輩、自分にできる事があったら何でも言ってくださいね。自分、何があっても先輩の味方っスから!」
「小川…」
「今まで、自分は床前先輩の恋路を応援してたっスけど…今度からは、全力で阻止するっス!!さとなぎカップルなんてクソくらえっス!!」
小川から、真っ赤なオーラが湧き出てくる。
コイツも、床前の事で相当ストレス溜まってたのかな。
「先輩、絶対に床前先輩なんかと付き合っちゃダメっスからね!あんな人、本気で先輩の事を愛してなんかないっス!!」
小川は、俺の目を見て言った。
「その人のためならなんだってできるのが愛っス。…床前先輩は、菊池先輩を束縛しているだけで、全然愛してないっスよ!だから、床前先輩が何をしてこようと、先輩は言う事を聞く必要はないっス!」
「でも、アイツがイカれてるのはお前も知ってるだろ?アイツが何をしてくるかわかんねぇぞ。」
「ここに『超高校級』が何人いると思ってるんスか!自分らをナメないでくださいよ!たかが『幸運』なんかには負けないっス!!」
「…頼もしいな、小川は。」
「えへへ…全然そんな事ないっスよ。」
「いや、お前は凄いよ。…ありがとな。なんか元気出てきた。」
「それは何よりっス!あ、そうだ!景気づけにもう一曲演奏するっスよ!」
小川は、さっきとは別の曲を演奏し始めた。
さっきの落ち着いた雰囲気とは対照的に、明るくダイナミックな曲調だった。
俺は、小川に拍手を送った。
「ありがとうございます。…あ、先輩も一曲弾いてみます?」
「え?なんで俺が弾くんだよw」
「いいから、一曲だけ弾いてみましょうよ。」
「いや、俺全然弾けないんだけど…」
「きらきら星とかは簡単っスよ。一緒に弾いてみましょうよ。」
「じゃ、じゃあ…」
俺は、小川と一緒にきらきら星を演奏した。
最初はぎこちなかったが、演奏するうちに俺も少しずつ上手くなった。
「先輩、筋がいいっスね!…自分より才能あるっスよ。」
「そんな事ねえよ。『超高校級の演奏家』のお前に勝てるわけねえって。」
「いや、自分は弟切さんの代わりにスカウトされただけだし…才能なんて全然ないっスよ。」
「でも、お前はずっと楽器を続けてきたんだろ?夢を一途に追いかけられるって、それだけで凄い才能だと思うぞ。」
「えへへ…ありがとうございます。」
小川は、照れ臭そうに俯いた。
「あっと、長居しすぎちまったな。そろそろ玉木とリタが心配だ。」
「そうっスね。」
俺達は、コンサートホールを後にした。
《小川詩音の好感度が上がった》
「小川、今玉木達はどこにいるんだ?」
「えっと…美術館で床前先輩を足止めして貰ってるっス。」
「じゃあ早く行かないと…床前に何かされてたらって思うと、気が気じゃねえよ。」
「同感っス。急ぎましょう。多分、長くは足止めできないっス。」
俺達は、急ぎ足で美術館に向かった。
ー美術館ー
「あれ…?いない…どこだ?」
「あ、先輩。もしかして、ここじゃないっスかね?」
小川は、地下フロアにあるアトリエを指差した。
「…だろうな。行こう。」
俺達は、アトリエに入った。
「は!!?」
ちょっと待って!?
なんで全員いんの!?
「あら、論さん!来てくださったんですね!」
「おい!!なんで玉木とリタ以外の奴までいんだよ!?」
「にゃーっはっは!実は、みんなでお絵かき対決をしてたんだよ!!」
「は?お絵かき対決?」
「ふわぁ…みんなで菊池の似顔絵を描いてたんですぅ。」
そう言うリタの持っていたスケッチブックには、単調な線で俺の似顔絵が描かれていた。
さほど上手ではなかったが、特徴は捉えていてどこか味のある絵だった。
所謂、ヘタウマというヤツだ。
「…ん。」
射場山のスケッチブックには、端の方に細い線で小さく似顔絵が描かれていた。
シンプルで可愛らしい絵柄だった。
…普通に上手いし、もっと自信持って描けばいいのに。
「あーちゃんの絵も見ろ!!これが二十一世紀のシャガールの実力だ!」
自分で自分をシャガールって言うな。シャガールに謝れ。
…どれ、見てやるか。
「…は?」
そこには、鼻毛がボーボーに生えており、タラコのような唇から汚い形の歯が飛び出ており、さらには汚らしい無精髭が生えたオッサンがクレヨンで描かれていた。
「おい、俺の似顔絵を描いてたんじゃなかったのか?」
流石に、これが俺の顔じゃない事くらい、俺でもわかるぞ。
「うん、そうなんだけどさー。なんか途中で田吾作おじさんの顔が思い浮かんじゃって。気がついたら田吾作おじさんになっちゃってた。まあでもサトにいの顔ってこんな感じじゃん?」
ふざけんなクソガキ!!
なんで人の顔を描いてる途中でオッサンの顔になるんだよ!!
これのどこが俺に似てんだよ!!全然似てねぇし!!
っていうか田吾作おじさんって誰!?俺の知らない人間が普通に会話の中に出てきて怖いんだけど!!
「おい愚民!!特別に私の絵も見せてやろう!!」
別に見たくないです。
…ん?
なんだこれ。
美化して描かれた神城の足元で、棒人間が踏み台にされている。
「あの…神城様、もしやこれは…」
「ん?モブ、貴様の絵だが?愚民なんて、みんなこんな感じだろ。描いてやったんだから感謝しろ。」
えぇ…
俺の扱い雑すぎやしませんかね…
棒人間ってお前…
「うふふ、できたわ。」
「完成です!」
エカイラとジェイムズのスケッチブックには、非常に繊細なタッチでデッサンが描かれていた。
「おぉ…」
二人とも、絵上手いな。
本職の織田には及ばないものの、この上手さなら十分食っていけるんじゃないか?
「論さん、私も完成です!…私の画力では、論さんの素晴らしさを十分に再現できませんでしたが…」
「うげっ…」
床前のスケッチブックには、少女漫画に出てきそうな美少年が描かれていた。
周りにバラ咲いてるし…特徴は掴んでるから辛うじて俺だってわかるけど、いくらなんでも盛りすぎだろ。もはや別人じゃねえか。
こんだけ美化して描かれたら、逆に肩身が狭いんだが…
「あの、床前…お前これ…美化が過ぎないか?」
「美化?私はただ、見たままを描いただけですよ?むしろ、論さんの魅力をうまく再現できなくて残念です。」
マジかよ。
コイツ、もう病気だろ。
「おい、菊池、小川!お前らも描けよ。」
「え、自分もっスか?」
「いや俺もかよ!自画像なんて描いたことねえよ!」
「対決なんだから描けコノヤロー!!」
俺は、クソガキにスケッチブックを押し付けられて渋々自画像を描いた。
「…まあ、こんな感じか。」
「おや、菊池さんお上手ですね!」
「ホント。料理の才能は壊滅的なのに、絵の才能はあるのね。」
「う、うるせェな!!」
「おや、小川さんも完成したようですね。」
小川も?どれどれ…
…うーん、お世辞にも上手いとは言えない絵だな。
「す、すいません…自分、絵の才能はからっきしで…」
音楽も絵も同じ芸術だから、小川も絵心があるとばかり思っていたが…同じ芸術でも、やっぱり得手不得手は分かれるんだな。
「よっしゃ!俺も完成だ!!」
お、玉木も完成したみたいだな。
まあ、玉木は完璧エリートのイケメン様だから、さぞ上手く俺を描いてくれてんだろ…
…は?
おい、ちょっと待て!!
なんだその悍ましいナニカは!!
「やー、ちょっと鼻高くし過ぎたかな?」
いやいやいや!!もうそんなレベルじゃねえから!!
何この化け物!?人間を描いたとは思えないんだが!!
あまりの酷さに、俺は卒倒しそうになった。
…まさか、ここで玉木の意外な弱点が明らかになるとはな。
「あ、もうこんな時間っスか。そろそろ夕飯にしませんか?」
「だな。」
俺達は全員美術館を出て、レストランに向かった。
今日は、射場山が夕飯を作ってくれた。
夕飯を食い終わった後は、部屋に戻って時間を潰した。
…やれやれ、今日も疲れる1日だったな。