まあ、あの情報量で100%状況を正確に推測できる人間なんているわけないですしねw
【神城黒羽編】
私の人生の主人公は、私じゃなかった。
私に自由なんて無かった。
私は、ずっと孤独だった。
私の父親は財閥の御曹司で、私の母親は異常なまでに面子に拘る人間だった。
そんな二人の間に、私が産まれた。
最初は、二人とも優しかった。
私に、最大限の愛情を注いでくれた。
…でも、幸せは永くは続かなかった。
今までの平和な日常は、ある日突然終わりを告げた。
きっかけは、私がまだ3歳の頃、たまたま興味本位で父の部屋の部屋にあった古い本を読んだ事だった。
それは、父が学生時代に勉強で使っていた本だった。
そして、たまたま見つけた別の本を開いて、その本に落書き感覚で書き込みをした。
本で読んだ事を使ったパズルのような感覚で、全部のページに落書きをした。
ただの気まぐれでやった事で、この事が私の人生を壊すきっかけになるなんて思いもしなかった。
ある日、父がたまたま私が落書き帳にしていた本を見た。
その時の父の顔が青ざめていたのは、今でも覚えている。
後で知った事なのだが、私が落書き帳にしていたのは、父が入れなかった一流大学の過去問だったそうだ。
私が気まぐれで書いた落書きが、全部問題の模範回答だったというのだ。
その日から、両親の、私を見る目が変わった。
私は、3歳で大学の入試問題を解いた天才児として世間から注目を浴びた。
『神童』『百年に一度の鬼才』などと呼ばれ、もてはやされた。
でも、まだ幼かった私にとっては、称号なんてどうでも良かった。
私がえらい子だから、きっとお父様とお母様は私を可愛がってくれる。
…そう思っていたのに。
ある日、私は父に呼び出された。
私は、父に自分専用の勉強部屋をプレゼントされた。
部屋には大量の参考書が積まれていて、窓は鉄格子が取り付けられていた。
私はそこで父に一枚のプリントを渡された。
そして、「これができたらご褒美をあげる」と言われた。
私は、父に褒めてもらいたい一心で、プリントの問題を解いた。
全部できたら、父は褒めてくれた。
私は、それが嬉しかった。
…その日から、地獄を見る事になるとも知らずに。
その日から、私は毎日勉強部屋に閉じ込められ、ひたすら勉強をさせられた。
そして、毎日一枚、テスト問題が渡された。
これも後で知った事なのだが、私が毎日解いていたプリントは、研究機関に提出するためのサンプルだったらしい。
私の両親は、大金と引き換えに私の知能を向上させる手伝いをするという取引をその研究機関と交わしていたのだ。
私はそんな事とは知らず、ただ両親に褒めて貰いたい一心で、毎日テストを頑張った。
しかし、ある日を境に両親の態度が急変した。
両親は、私がいくらテストでいい結果を残しても、全く褒めてくれなくなった。
私は、両親の反応が見たくて、テストでわざと一問だけ間違えた。
すると、父は鬼のような形相で私を殴った。
まだ幼かった私は、なぜ自分が殴られたのかわからなかった。
私がいい子にしていなかったせいだ、そう思うことしか出来なかった。
実はこの時両親は、巨万の富に目が眩み、私の事などどうでも良くなっていたのだ。
父が私を殴ったのは、金儲けの道具が使い物にならなくなる事を恐れたから。
そこからは、ただの地獄だった。
私は、行動の一切を制限され、家から一歩たりとも出る事は許されなかった。
そして、部屋に軟禁され、四六時中勉強をさせられた。
拒否したり、文句を言ったりしたらその日は食事を貰えなかった。
優しかった両親は、少しでも私に落ち度があるとすぐに私を怒鳴った。
でも、それもこれも全部私がいい子じゃなかったから。
私がもっとちゃんといい子にすれば、きっと優しいお父様とお母様に戻ってくれる。そう信じていた。
私は両親に認められたくて、私は国家試験に合格し、医師免許を取得した。
その時から、やっと両親は私を人間として見てくれるようになった。
私は、『いい子にならなきゃ』と思って、医者として最善の結果を残せるように努めた。
そして私は、ある日とある患者の手術を担当した。
その患者は、治療法が見つかっていない不治の病に侵されていた。
私は、『成功したらいい子になれる』という思いだけを胸に、最善を尽くした。
その結果、1時間のオペで患者は完治した。
私は、患者の親族から感謝され、世間からは賞賛された。
でも、私にとってはどうでも良かった。
両親が喜んでさえくれれば。
両親は、とても喜んでくれた。
私を、『自慢の娘』だと言ってくれた。
でも、その時は気付いていなかっただけで、両親が賞賛していたのは私じゃなくて私の『才能』だった。
中学3年生になったある日、私は希望ヶ峰学園から『超高校級の外科医』としてスカウトされた。
その日から、両親は、今までより一層厳しく私を叱るようになった。
その時は、食事以外はほとんど勉強漬けの毎日だった。
『私達に恥をかかせるな』『希望ヶ峰に入学するからには、常に一番を取れ』『お前には期待しているんだ』
それが両親の口癖だった。
私には、人としての人生を歩む自由なんてなかった。
私は、ただの『道具』だ。
しかし、ある日突然日常が壊れた。
両親が、自家用ジェットの事故で亡くなった。
私でも治せないような重傷だった。
私は、両親からの束縛から解放された。
初めて『普通の』中学生を見たとき、私は気付いた。
凡人達は、私のように世間から賞賛されるような功績を一つも残していない。
それなのに、毎日友達と楽しそうに遊んだり、親と楽しそうに話しながら食事をしたり…
アイツらは、私のずっと欲しかった物を全部持ってる。
私は、その時疑問に思った。
私は、今まで何のために生きてきたのだろうか。
私は、別に医学に興味があったわけでも、医者になりたいわけでも、人を救いたいわけでもなかった。
『いい子』になりたかったから。
そうすれば、両親は私を愛してくれると思っていたから。
でも、実際に私が手に入れた物は、欲しくもない称号、薄っぺらい賞賛、それだけだった。
私を本当の意味で愛してくれる人は、もういなくなってしまった。
両親が亡くなって初めて、私は気付かされた。
私の今までは、全くの無意味だったって事に。
私は、生きる理由を失った。
いや、私の生きる理由なんて最初から何も無かった。
私は、自分で命を断とうとした。
その時、たまたま映ったテレビ番組が視界に入った。
それは、発明家の才能を持つ女の子が、周りの人間を罵倒しながら面白おかしく事件を解決していくドラマだった。
彼女は、圧倒的な才能を持っていて、私に無い物を全部持っていた。
彼女は、私の理想だった。
私は気付いた。
本当に幸福になるべきなのは、果たしてどちらなのだろうか。
才能を持つ者が不幸になって、凡人が幸福になる世の中なんて、絶対間違ってる。
なぜなら、強い者が弱い者を淘汰し、支配し、搾取する。それがこの腐った世界の、唯一にして絶対のルールだから。
支配しなければ、誰かに支配される。
だったら、私は支配する側になろう。
私ならできる。
だって、私は『神童』…いや、私自身が神そのものなのだからな!!
視界に上下に黄色と黒のバリアテープが貼られたような映像が映り、一昔前のファミコンのゲームのゲームオーバー時のような音楽が流れる。
そこへ、ヘルメットを被ったモノクマとモノハムが現れる。
『残念ながら、神城黒羽サンの、『夢』と呼べる欲望は何一つ見つかりませんでした!!』
『ぴっきゃっきゃ!まことにもうちわけごぢゃいまちぇーん!!』
「…!!?」
…夢か。
クッソ、変な夢見た。
…夢が無い、か。
当たり前だろう!!私は神なのだからな!!
夢なんて物は、欲深い愚民が抱き、しがみつくための幻影なんだよ!!
神である私がそれを持たないのは、当然だろう!!ふははははははははははは!!!
…そうだよな?
ーパーティー準備ー
私は、騒音の提案でパーティーの準備を手伝った。
無論、神である私が手伝う義理など無かったのだが、私は寛大だからな!!
パーティーの準備中、私は見た事のない部屋が出現しているのに気がついた。
「なんだぁ?この扉が無え部屋は。おい、無口、騒音!ちょっとこっち来い!!…早く来いっつってんだよ愚図が!!」
ったく、遅えなぁ…何やってんだよアイツら!この私が早く来いつってんだよ!秒で来いよ!
お、やっと来やがった。遅えんだよクソが!!
「…何。」
「ふははははははははは!!私は天才だからな!!昨日までカジノになかった部屋を発見したぞ!!」
「…ず、随分とご機嫌っスね。」
「ふはははは!!ほら、早く入れ愚民共!!」
「あの、先輩…もしかして、自分らが呼ばれたのって…囮っスか?」
ギクッ…
「囮とは人聞きが悪いぞ、騒音!!貴様らは、神である私のためにその身を懸けられるのだぞ!!これほど名誉な事はないだろう!?この私に感謝しろ!!ふははははははは!!!」
「…はあ、そんな事だろうと思ったわよ。言い出しっぺのあんたが最初に入りなよ。」
「な、なんだと…!?貴様、神に向かってなんだその口の利き方は!!」
「あんたは別に神じゃないでしょ。いいから黙って入んな。」
「…うぅ。」
クソッ、私は神なんだぞ!?
なんでこんな事しなきゃなんないんだよ!
部屋の中は赤一色で、並んだ座席に私達そっくりの17体の人形が並べられていた。
そして、部屋の天井にはモニターが取り付けられていて、手前には一丁の拳銃が置いてある。
…チッ、悪趣味なマネしやがって。
一体何が狙いだってんだ。
「んだぁ?この部屋!!おい、出てこい綿埃!!」
『ちょっと!何その呼び方!!酷くない!?』
「ヒッ!?」
綿熊は、人形達の後ろから出てきた。
『呼ばれて出てきてなんとやら〜!モノクマ学園長参上〜!…で?何か用?』
「『何か用?』じゃねえんだよこのバカが!!んだよこの部屋!!説明しろ!!」
『うぷぷ、ここは新しくオープンしたプレイルームだよ!そこの拳銃で、人形をバンバン撃っちゃってね!頭とか心臓とかの急所に当てれば、高得点がゲットできるよ!面白いゲームでしょ?』
「ケッ、クソゲーの間違いだろ!!」
『一言二言多いよオマエ!!…あ、ちなみになんだけど、この部屋注意事項がいくつかあるから耳かっぽじってよく聞いてね!』
「注意事項?何スか?」
『ズバリ、このプレイルームは、一度入ったらその日はもう入ってはいけません!』
「んだよそのルール!!なんでそんなルール作ったんだよ!!」
『無双させないためだよ!一日に何回もプレイしたら、そのうちコツ覚えて無双しちゃうでしょ?つまんないんだよそんなの!!人形の姿勢とか配置とかは毎日変えてるから、新鮮な気分でゲームを楽しめるわけ!』
ンだよそれ。
「…もし2回目に入ったらどうなるの?」
『うぷぷ、その時はね、部屋中にセットされたガトリングガンが火を吹いてオマエラの身体を貫くよ!』
ケッ、悪趣味な野郎だぜ。
『さてと、1個目の注意事項はこの辺でいいかな。2個目の注意事項は、『清掃時間』です!』
「清掃時間?」
『この部屋は、23時から0時の間まで、清掃のためロックがかかります!その間に、部屋の中をリセットするわけ!ちなみに、プレイルームの清掃は全部この建物に内蔵されたAIが管理してるよ!』
なるほどなー…
『ちなみに、人形は清掃時間に関係なく毎回自動でリセットされるからね!』
「…なるほどね。注意事項はそれだけ?」
『うーん、まあそうだね。』
「じゃあ早く消えて。」
『辛辣だなぁ、射場山サンのバカ!もう知らない!!』
綿熊は、サ●キのセリフを丸パクしながら去っていった。
「…ホント、目障りなクマね。」
「フン、動いて喋る公害だなアイツは!!」
「二人ともすごい言いようっスね…」
私達は、部屋の探索を始めた。
ふと、気になった。
私は、騒音と無口に質問した。
「…なあ、貴様ら。…貴様らは、人生の目標とかあるか?」
「…何、その質問。」
「いいから質問に答えろ。」
「…えっと…笑わないでよ?…私、弓道で世界一になりたいの。…でも、今はそんな大それた事が言える程技量がないし、日々鍛錬あるのみ、ってところかしら。」
「自分は、偉大な演奏家になって、自分を弟切さんの『代わり』としか考えていない人達を見返してやる事っス!まあ、そのためにはやっぱり努力が必要だなって思って、毎日楽器を演奏してるっスよ!まあ、楽器を演奏するのが楽しいっていうのもあるんスけどね!」
「…そうか。」
なんだ、コイツらの眼は。
私より才能無いくせに、生き生きしやがって。
私だって、本当はお前らみたいに…
…ああクッソ!
イライラすんなぁ…!
「…貴様らはいいよな。何よりも夢中になれる物があってよ。」
「何言ってるんスか!羨ましいのはこっちの方っスよ!もし自分が神城先輩みたいな圧倒的な天才だったら、きっと世界の見え方とか全然違ったんだろうなって思うっス!自分は、先輩の事尊敬してるっスからね!」
ふざけんな。
なんでお前はそんな事を言うんだ。
やめろ。
やめてくれ。
私の生き方を否定するな。
私を馬鹿にするな。
…黙れ。
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ
黙れ!!
…殺す。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
「…。」
「…そうかよ。」
「?」
「んだよ。ジロジロ見てんじゃねえよ。…どうした?」
「…いえ、別に。」
「あ、そうだ。私はちょっとまだここで調べたい事があるから、貴様らは先に部屋を出てろ。」
「えぇえ…横暴っスよ神城先輩…」
「…呼び出しといて、それはないよな?」
「うるせぇな、一人じゃねえと集中できねえんだよ!いいから出てけ!神である私の邪魔をすれば、天罰が下るぞ!!」
二人は、しぶしぶ部屋から出て行った。
…よし、行ったな。
決めた。
私はあの二人を殺す。
私は、私の生き方を否定したアイツらを許さない。
許せなかった。
私よりはるかに劣った奴が幸せそうに生きているというだけで虫唾が走る。
不愉快で仕方なかった。
私は、アイツらを殺して外に出る。
アイツらを殺したら、他の奴らも一緒に見殺しにする事になるが、そんな事どうでもいい。
私は、たとえこの手を汚そうとも、汚水を啜ってでも絶対に生き残ってやる。
生き残って、私の生き方は間違っていなかったんだと証明してやる。
夢なんてくだらない物のために生きたところで、結局は叶わずに散るのがオチだ。
そういう奴らは、所詮搾取される側だ。幸福に生きる資格なんて無い。
私が、私だけが、この世界を支配するのにふさわしい!!
なんとしてでも生き残って、私一人が新世界の神となるのだ!!
ふははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!
ー女子トイレー
うまくプレイルームから人形を盗み出せた。
これで射場山祐美を殺す準備はできた。
あとは小川詩音を殺す準備だ。
売店で必要な材料は買ったし、これで電磁石を作って…
よし、できた。
これを天井にセットして、鉄球をくっつけて…
これでよし。
超音波の発生装置付きのスイッチは、壁に固定して…
タイマーをセットしてっと。
できた。あとは時間が来るのを待つだけだな。
ー厨房ー
さーてと、アイツらに食わせる用のデザートを作ってっと。
本来、神である私が料理をするなど、有り得ない事なんだがな!!
…私1人が生き残るためだ、仕方ないだろ。
ーパーティー本番ー
「ふははははは!!!貴様らに特別に、私が作ったデザートを食わせてやろう!」
よし、射場山祐美はちゃんとデザートを食ったな。
…まあ、食わなかったとしても、プランBは用意してあるんだがな。
あとは…
「おい、騒音!私は1階のVRで遊んでくるぞ!!」
「あ、はい。楽しんでくださいっス。」
出来るだけ空気の読める奴にアピールして…
私は、そのまま1階に向かった。
ー1階 VRルームー
丁度いい場所に、人一人分入れるスペースがあって良かった。
私は、隠していた人形を取り出し、イスに座らせ、VRゴーグルを装着させた。
これで、傍から見たら私がVRで遊んでいるように見える筈だ。
そして、人形と一緒に隠していたレインコートと手袋を回収して、VRルームを後にした。
私は、物陰に隠れてタイミングを待った。
…そろそろ、アルコールが効いて喉が渇く頃なんだが。
私が1階を見張っていると、ついに射場山祐美が1階に降りてきた。
…来た!
私は、奴がプレイルームの前を通り過ぎる瞬間、飛び出して奴の背後に迫った。
私は、射場山祐美の左目の視力が無い事を知っていた。
だから、左側から襲って部屋の中に突き飛ばした。
そして、奴は私が食べさせたアルコール入りデザートのせいでふらつき、まんまと罠にかかった。
…悪いが、私が生き残るためだ。
「死ね。」
ドカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ
…。
目の前で、人が死んだ。
それなのに、なんでだ?
心が全く痛まない。
…いや、それどころか…
ウッヒョオオオオオオオオオオオオ!!
やってやったぜ、あースッキリした!
さっきまで、何か心にモヤみてぇなモンがかかってたけど、今ので全部綺麗さっぱり消えたぜ!
…しかし、想像以上にグロいな。
んなモンずっと見てられるモンじゃねえな。
…おっ、時間だ。
そろそろ清掃時間が始まるぞ。
ドアが閉まり、中で清掃作業が始まった。
私は再び物陰に隠れて、レインコートと手袋を身につけて時間が経つのを待った。
ー1時間後ー
よし、やっと終わったか。
死体の偽装工作だが…出来るだけ短時間で終わらせねぇとな。
最短で10分ってところか。
私は、急いで死体を担いで、元々座っていた人形を放り投げ、死体を椅子に座らせた。
…分かってはいたが、やっぱ死体って思ったより重いんだな。
だが、ここまでで5分か…我ながら上出来だ。
計画は順調のようだ。
私は、レインコートを脱いで、全速力でVRルームに向かった。
ーVRルームー
…よし、誰も居ないな。
私は、急いで人形のVRゴーグルを外し、レインコートや手袋と一緒に人形を窓の外の排水溝に投げ捨てた。
この排水溝、かなり深くて降りる方法が無いから、ここに捨てれば証拠を隠滅出来るだろう。
そして、いつ誰が私の姿を目撃してもいいように、人形を座らせていた椅子に座った。
…よし、ここまでで10分…そして、私の姿は誰にも見られていない…
私が椅子に座って一息ついたその時…
「ぎゃわあああああああああああ!!!」
小川詩音の声だな。
…チッ、アイツ、先に死体を発見しやがったか。
まあいい。ここまで来れば、成功したも同然だ。
私は、プレイルームに向かった。
ープレイルームー
ここからは、いかに演技を貫き通せるかだな。
私は、何も知らずにたまたま死体を発見したシロ…
その役を、演じ切るんだ。
「んだよ、るっせぇなぁ…おい、どうし…!!」
…おーおー、想像以上に驚いてくれてるねぇ。
腰まで抜かしちゃってさ。
まあ、せいぜい今のうちに怯えておけばいいよ。
だって、次に死ぬのはお前なんだからな。
…おっと、これ以上近づいたら、私も撃たれ兼ねんな。
「何事だ!?」
モブ…もとい、菊池論が愚民共を連れて来た。
「遅せェぞ愚民共!!今まで何やってたんだよ…!」
私が指を差すと、菊池論は部屋の中を覗き込んだ。
おお、コイツ、ついに死体を見やがったな。
これで3人が死体を見たっつー事か。
…よし、そろそろだな。
『オマエラ、死体が発見されました!!カジノ1階のプレイルームにお集まりください!!』
アナウンスを聞いた愚民共が、わらわらとプレイルームの中に入り、死体を目撃した。
おお、愚か愚か。
「にゃあああああああああああああ!!!?ゆ、ユミねえ!!?」
「そんな…嘘だろ…!?なんで射場山が…!」
「キャアアアアアア!!!ゆ、ユミちゃん!?」
「射場山さん…!」
「あらあら、また殺人が起こってしまいましたね。」
「リタはまだ来ねェのか!?」
「…寝てるんじゃないですかね…寝てくるって言ってましたし…」
「クッソ、アイツ、こんな時に何やってんだよ!」
…ククク、愚民共がわめいておるわ。
いいぞ、せいぜい今のうちにわめけるだけわめいておけ!
貴様らは、私の天才的な策に嵌ってここで死ぬんだよ!!
…おっと、いけねぇ。
つい、ニヤけちまうところだった。
ここで笑ったら、演技がバレちまうもんな。
…っと、そろそろ時間だな。
「菊池先輩!落ち着いて…ん?」
お、気付いたか。
ククク、作戦は成功だ。
コイツは耳が良いからな。
この前、たまたま超音波を嫌がるそぶりをしていたのを思い出して、コイツを殺すためのエサとして使ってみたんだが…
効果は抜群のようだな。
どうやら、ちゃんと女子トイレから流れる爆音の超音波に気付いたようだ。
あの時、アイツの行動をちゃんと分析しておいて正解だったよ。
「にゃあっ!?」
「どうしましたか小川さん、アリスさん?」
…ん?
なんだ、子供にも聞こえているのか。
…クッソ、私とした事が、とんだ計算違いだ!
まさか、小川詩音以外に超音波が聞こえる奴がいたとは…!
このトリックは、いずれバレるだろうな…クソッ、どうする!?
「…何か変な音が聞こえませんか?」
「…いや、別に?強いて言うなら、ゲーム機の音が少し響いてるくらいか…」
「にゃああああ!!キモチ悪ーい!!何この音!!」
…って、私は何を焦っているんだ。
トリックがバレたところで、私が殺ったっつー確たる証拠が見つからなきゃ、コイツらが私を犯人に出来ねぇのは一緒じゃねえか。
私とした事が、こんなくだらない事で動揺するとはな。
危うく、せっかく演技をキメてた顔が崩れる所だった。
ここでバレたら、それこそ一巻の終わりだ。
とにかく今は、演じ切る事だけ考えろ。
「ちょっと気になるっス。確かめに行ってくるっス!」
「あ、おい待て!小川!」
小川詩音は、菊池論の制止を振り切って女子トイレに向かった。
ククク、バカめ。
貴様を殺すための罠とも知らずに、自分からまんまと殺されに行くなんて。
やはり、ターゲットにコイツを選んで正解だった。
テメェみたいなバカなお人好し、ハナから生き残る資格なんざねぇんだよ!!
わかったら、大人しく死んどけバカが!!
ー10分後ー
「…あれ?おかしいな…アイツ、戻ってこないぞ…?クソッ、小川まで何やってんだよ!」
「あの、私達も確かめに行ったほうがいいんじゃないでしょうか?」
「…だな。床前、アリス!お前ら一緒に来い!それ以外の奴はそこで待ってろ!」
「了解です論さん!」
「なんであーちゃんまでー!?」
モブ、サイコ女、子供の3人が女子トイレに向かった。
私達は、プレイルームの前で待たされた。
「大丈夫でしょうか、3人共…」
「そう信じるしかねぇだろ、ジェイムズ!」
「それはそうなんですけれどね…」
ククク、コイツら、どこまでバカなんだ。
誰も私を疑わねえ!
…いや、違うか。
私の演技の才能が天才的過ぎるんだな。
もし、私が医師免許を取る代わりに芸能界に入っていたら、今頃は『超高校級の女優』と呼ばれていただろう。
全く、我ながら、自分の才能の素晴らしさが逆に恐ろしいよ。
『オマエラ、死体が発見されました!!カジノ1階の女子トイレにお集まりください!!』
フン、やっとアナウンスが流れたのか。
愚民共が、わらわらと女子トイレに向かっておるわ。
私も、愚民共と一緒に女子トイレに行かねばな。
ー女子トイレー
女子トイレに行くと、そこには案の定小川詩音の死体が転がっていた。
クク、ハハハ…
アーッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
やってやったぞ!!ざまぁみろ!!
2人も殺っちまうと、一周回って逆に清々しいな!!
どうだ見たか!!
やっぱり、私は間違ってなかったんだ!
夢なんてチンケなモンに縋ったって、結局はこのザマだ!
愚民のクセに、調子に乗るからこうなるんだよ!
少しは思い知ったか!!
そうだ、私は何一つ間違っていない!!
なぜなら、私だけが唯一絶対に正しい存在…すなわち神なのだからな!!ふははははははははははははははは!!!
…私は、何も間違ってない…よな?
「あーあ、殺っちゃったよ。なーにが私は悪くない、だ!全部オマエが悪いに決まってんだろバーカ!!本当に一番許されないのは、オマエの方なんだよ!こんだけ才能に恵まれておいて、人をバカにする事でしか自分を大きく見せられないなんて、アーカワイソ!偉そうにしてたけどさ、結局は誰かに構って欲しかっただけなんじゃん!それ以外の生きる理由を一切持たずに生きてきたなんてさ、それこそただの時間の無駄だよね?自分の人生にウンザリしてたんでしょ?だったら最期くらい逃げんなよ。意気地なし。」
「ねえみんな、コイツらの共通点、何かわかったかな?…くだらない事に拘って人生を浪費する、身の程知らずの愚か者だよ。もっと賢く生きる事なんて、いくらでもできたはずなのにね!いい加減、自分の立場をわきまえなよバカ共が。…あ、もう死んでたか。」
前も後書きで書いた事がありますが、神城ちゃんは中学と高校でかなり見た目が変化したキャラです。
中3までは、親の影響もあってか、割と清楚系のキャラでした。
ギャル系のファッションは高校生になってからです。
自分を縛る物が無くなったからハジケちゃったんでしょうかね。
↓JC神城ちゃんです。
【挿絵表示】
ちなみに、神城ちゃんはサヴァン症候群で、記憶力と演算能力が常人とは桁違いです。
作中二大頭脳派であるジェイムズ君や速瀬ちゃんのようなオールマイティな賢さは無く、特に人の感情を考えたり予測を立てたりするのが苦手な子なので学級裁判等ではバカキャラ扱いされていますが、記憶力と演算能力はこの2人すらも凌駕します。
今回は女の子(特におっぱい要員)が一気に減った回でしたね。
特に射場山ちゃんは結構人気あるキャラだったので、後日作者が死体となって発見されそうで怖いですw