アプリを開くと、裁判場のようなドットの画面が映った。
裁判長の格好をしたモノクマが木槌を叩くと、ポップな文字が現れた。
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キミの気になる話題TOP5!
…は?
なんだ、このふざけた画面は。
ポップな文字の下に、5つの項目があった。
第1位『超高校級の弁護士』の妹、菊池破奈サンの現在は!?
第2位『超高校級の失敗作』伏木野アリスサンの『カムクライズル化』とは!?
第3位『超高校級の絶望』菊池論クンが記憶を消された3年間に犯した罪とは!?
第4位コロシアイ合宿の黒幕、そして合宿の目的とは!?
第5位『超高校級の絶望』、そして『人類史上最大最悪の絶望的事件』とは!?
なんだ、これは…
俺は、5位の話題から順番に見ていく事にした。
第5位『超高校級の絶望』、そして『人類史上最大最悪の絶望的事件』とは!?
『人類史上最大最悪の絶望的事件』とは、3年前に希望ヶ峰学園の本科生によって引き起こされた、世界規模の同時多発テロの総称である。希望ヶ峰学園の78期生として入学した戦刃むくろ、江ノ島盾子らに絶望に落とされた本科生『超高校級の絶望』達は、世界中に絶望を伝染させるため、世界中でテロを起こした。『超高校級』達によるテロの勢いは凄まじく、わずか1年で世界は混沌と化した。2年前に首領である江ノ島盾子が死亡し、『超高校級の絶望』の勢いは失速したが、今も尚『人類史上最大最悪の絶望的事件』は続いており、『超高校級の絶望』に対抗する機関『未来機関』によって取り締められているとされる。
第4位コロシアイ合宿の黒幕、そして合宿の目的とは!?
コロシアイ合宿の黒幕は、希望ヶ峰学園の79期生『超高校級の俳優』嫌嶋隆尋である。『未来機関』第十五支部支部長嫌嶋幽禍の実弟であり、彼女のクラスの生徒でもある。どんな役も100%完璧に熟すという才能の持ち主で、コロシアイ合宿参加者の中に紛れ込んでいる。コロシアイ合宿の目的は不明だが、合宿参加者達に絶望的な死を与える事が目的だと思われる。
第3位『超高校級の絶望』菊池論クンが記憶を消された3年間に犯した罪とは!?
菊池論クンは、床前渚サンを含む、既に絶望に堕とされた『超高校級の絶望』達によって絶望に堕とされ、79期生達を虐殺した。菊池論クンは、当時リゾート地にいた79期生の内、計20名を殺害。その後、嫌嶋隆尋によって記憶を消され、何事も無かったかのようにコロシアイ合宿に参加した。凶器として配ったロープは、当時菊池クンが同級生の殺害に使用していたロープである。
第2位『超高校級の失敗作』伏木野アリスサンの『カムクライズル化』とは!?
アリスサンは、『超高校級の希望』カムクライズルを生み出すための手術に失敗した実験体である。彼女は暴走し、破壊の限りを尽くしたが、今は亡き研究者、嫌嶋狂弌によって無害な人格を植え付けられ、暴走は抑えられたかに思われた。しかし、主人格の暴走を完全に止められた訳ではなく、ふとしたきっかけで暴走するという性質はまだ残っていた。今のアリスサンは、主人格が完全に覚醒するための準備段階にあり、準備段階が完了するまでは目覚める事は無い。
第1位『超高校級の弁護士』の妹、菊池破奈サンの現在は!?
菊池破奈サンは現在、生存している。両親は共に『超高校級の絶望』に殺害されたが、破奈サンだけは『未来機関』に保護された。しかしその後、行方不明となっている。
頭の中が全く整理できていない。
言いたい事は山ほどある。
…でも。
「…良かったぁ。」
破奈が生きていてくれた。
俺はあの時、アイツが死んだんじゃないかと思って怖くなった。
でも、破奈はまだ生きてる。
俺は、その事実があれば、どんなに苦しかろうと生きていける。
俺が20人も殺したという話は、正直信じられない。
もしそれが本当なら、今からでも罪を償いたい。
でもその前に、俺は絶対にここを生きて出るんだ。
俺を待ってくれている妹のために。
ー翌日ー
合宿20日目の朝。
この合宿も、もう20日か…
俺は、レストランに向かった。
「おはよう、みんな。」
「おはようございます論さん!」
「おはようございます、菊池さん。」
「ふわぁ…おはようございますぅ…」
「…。」
「なあ、玉木。どうした?考え事か?」
「あ、いや…なんでもない。おはよう菊池。」
「…?おう。おはよう。エカイラもおはよう。」
「アラ、おはよ。サトシちゃん。」
…良かった。今日は返してくれた。
「なあ、誰が昨日アリスを見てたんだ?アイツ、まだ目を覚まさないのか?」
「…俺が見てたよ。アイツ、まだ目を覚ましてなかったよ。」
「…そっか。それは心配だな。ところでジェイムズ。コユキソウについて、何かわかった事はあるか?」
「ええとですね、今成分を色々と調べている所です。まだデータが少なすぎてはっきりとした事は言えないので、もう少しお時間を頂けませんか?」
「具体的にはあとどれくらいなの?」
「そうですね…最低でも、あと3時間は欲しい所です。」
「…そうか。ありがとな。」
「はい、皆さんのお役に立てるよう、急速かつ正確に調べてデータを集めます!」
「それは頼もしいな。よし、じゃあそろそろ朝飯にしよう!」
「ふわぁい…」
俺達は、席に座って朝飯を食った。
その後は、自由時間になった。
「自由時間か…どこに行こうか?」
『超高校級の外科医』の個室
神城の個室は、2週間前に入った時とほとんど変わっていなかった。
でも、もうアイツはいない。
最初は、傍若無人で尊大不遜な神城の事が心底鬱陶しかったけど、居なくなってはじめて、アイツがどれほど俺達にとって大事だったのかを思い知らされる。
今になって、アイツが恋しくてたまらなくなる。
アイツは、射場山と小川を殺した殺人犯だ。
でも、俺達にとっては大切な仲間だった。
こうなったのは、アイツ自身のせいだけじゃない。
アイツの苦しみに気づいていれば、3人共死なずに済んだのかもしれない。
3人が死んだのは、アイツにとって信頼できる存在でいられなかった俺達全員の責任だ。
俺達全員が、3人を殺したようなものだ。
だけど、どんなに後悔しようと、反省しようと、もう3人は帰ってこない。
俺達は、取り返しのつかない過ちを犯してしまったんだ。
…いや、3人だけじゃない。
今までの犠牲者、そして俺達の同級生だった人達全員だ。
「…ごめんな。神城。信じさせてやれなくて…俺は、生きてここを出るよ。この島で亡くなった人達のために。生きてここを出られたら、必ず償うから。…だから、もう少しだけ待っていてくれ。」
俺は、ネックレスを机の上に置いて、部屋を去ろうとした。
「…あ。」
机の引き出しが、少しだけ開いていた。
閉め忘れか?不用心な奴だな…
俺は、引き出しを閉めようとした。
「…あれ?」
引き出しの中に、違和感を覚えた。
…もしかして。
机の上にあったボールペンを一本取って、引き出しの中の隙間に挿し込んだ。
「…ふっ!」
ボールペンに力を加えた。
すると…
ガコッ
引き出しの板が外れた。
…二重底になってたのか。
板の下には、血で汚れた本があった。
「…薄いな。…Diary…日記か。」
日記は、ページが破れていたり、血で汚れていたりしてほとんど読めなかった。
かろうじて無事なページだけを読んでみた。
5月15日
いずれ迫り来る人類滅亡の危機に備えるため、私は今日から毎日日記をつける事にする。
私は、合宿のために生徒と一緒にモルティオバ諸島に来ている。
ここは、希望ヶ峰学園の生徒の合宿のために学園が買い取った島で、私達以外は誰も居ない無人島だ。
私がこの合宿を企画したのは、いずれ迫り来る『超高校級の絶望』による世界の危機から、生徒達を守るためだ。
ここは、世界地図にも描かれないような小さな離島だし、シェルターとしての設備もある。
何より『未来機関』支部長の私がいる。
少なくとも、生徒達にあのまま学校に通わせるよりかは安全だろう。
2月20日
私は、とんでもないミスを犯してしまった。
まさか、『絶望』の残党が私のクラスに紛れ込んでいたなんて…
私は、奴等にこの島への侵入を許してしまった。
もっと早く気づくべきだった。
全ては、⬛︎⬛︎⬛︎の正体を見破れなかった私の責任だ。
私が開発した⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎も、奴等に奪われてしまった。
恐らく、私はそろそろ奴等に消されるだろう。
でも、ただでは死なない。
生徒達に、私の持つ全ての情報を託す。
アリス、⬛︎⬛︎…あなた達は、絶望に堕とされないで。
日記はそこで終わっていた。
「…。」
この日記を書いたのが、俺達の…担任?
俺達がここに連れて来られたのは、コロシアイ合宿のためなんかじゃなかった。
この人は、俺達を助けるためにこの島に連れてきたんだ。
俺達は、この人に守られていたのか。
「…あ。」
日記の最後に写真が挟まっていた。
写っていたのは、長い黒髪の少女、顔が血の汚れで見えない男と少年、そして何故かアリスだった。
「…アリス?」
まだわからない事だらけだが、俺はなんとしてでも生きる。
今まで亡くなった人達、そして俺達に託してくれたこの人のために。
ー???ー
【エカイラサイド】
アタシは、急にタカヒロちゃんに呼び出されたわ。
ナギサちゃんも一緒にね。
いきなり作戦会議だなんて、なんなのもう!
「ねえ、ナギサちゃん。ご機嫌斜めだけど、大丈夫?」
「うるさいですよエカイラさん。誰のせいで機嫌が悪いと思ってるんですか。汚い手で触らないでください。あと、早く死んでください。」
「うっわ!辛辣!ひどいわナギサちゃん!」
『コラコラそこー!なーにケンカしてんだよ。言い争っていいなんて、ボクは許可した覚えはないぞ!2人とも、裏切り者同士仲良くしようぜ!』
「はあ…言い方に語弊がありますね。私は、論さんのためにあなたに従ってるだけです。」
『あーあ、フられちゃったよ。最近の女の子は気が強い子多いね!』
「そんな事より、本題に入りなさい。」
『おっと。そうだったね。まあ、作戦会議というよりはただのお叱りなんだけどさぁ。』
「お叱り?」
『そ!オマエラさあ、一体どういうつもり?確かに、カムクライズルについて発言する事に関しては禁止してないよ?でも、普通あのタイミングで言う!?おかげでアリスサンがコロシアイに参加できなくなっちゃったじゃないのさ!!ボクが見たいのは、絶望的でエキサイティングでエクストリームなコロシアイなの!!』
「そんな事を私達に言われても困ります。彼女が目覚めてくれれば、より刺激的なコロシアイになるのは間違い無いんだから、良いじゃありませんか。」
『良くねーよ!!アイツがみんなをバッサバッサ殺した所で、ボクはこれっぽっちもエキサイトしないの!!いい!?アリスサンがあんな事になったのは、オマエラのせいだかんな!!責任取って、もし暴走したらオマエラがなんとかしろよ!!』
「あら。随分と偉そうな口を叩くんですね。1回目のコロシアイでは、口火を切ってコロシアイを促す予定が、近藤さんに先越されて『あんな事』をせざるを得なくなったあなたが。自分は計画を失敗させたくせに、私達に八つ当たりするなんて…反面教師ならぬ反面上司ですね。」
『うっさいなあ!ボクも、まさかたったあれだけの動機で本当に殺そうとするなんて思わなかったんだよ!それに、あんなの失敗って言わねーし!!結果的に、エキサイティングなコロシアイになったんだからいいじゃん!!』
…はぁ、アタシ、よくナギサちゃんとケンカしてタカヒロちゃんに怒られるけど…
タカヒロちゃん、アンタも相当よ?
『はぁ、じゃあもうボク知らないから!アリスサンの事は、オマエラがなんとかしてよね!』
「…ねえ。」
『何?まだ何か文句あんの?』
「ホントに、誰一人ここから出す気は無いの?」
『アタリマエじゃん。ボクが嘘ついた事なんてある?オマエラさ、『超高校級の絶望』なんだろ?だったら今更外の世界に未練たらたらなわけ無いよな?』
「…そうね。ごめんなさい。変な事聞いちゃって。」
『ほいじゃ、引き続きコロシアイを円滑に進めてちょうだいね!』
「はぁい。わかりました。」
「…ええ、仰せのままに。」
俺の人生、今までいい事なんて一度もなかった。
地獄って言葉すら生温く聞こえる程に、過酷な日々だった。
先に殺らなきゃこっちが殺られる。
情けをかければ殺される。
そんな毎日だった。
誰も、信用できなかった。
もちろん、自分さえも。
俺は、自分自身に、そしてこの世界に絶望した。
こんな俺に、世界に望みなんて無いと思っていた。
…だけど。
妹だけが、唯一の希望だった。
…なーんてね☆
今のは冗談!
これがアタシの本性なワケないじゃナイ!
だって、アタシは『超高校級のオネエ』で、『超高校級の死神』で、『超高校級の絶望』なのよ!
アタシはアタシ、今やるべき事は、ただみんなを絶望に堕としてあげる事だけなんだから☆
さーてと、気分を切り替えて、大人しくタカヒロちゃんの犬になりましょーっと!
ーレストランー
【菊池サイド】
昼食の時間になったので、俺達はレストランに集まった。
「どうぞ。」
「ありがとうジェイムズ。…ところで、コユキソウについて何かわかったか?」
「ええと…はい。ですが、食事中に話す事ではないので、お食事が終わったら話します。」
「…そうか。」
俺達は、全員席について昼食を食べた。
昼食の後、ジェイムズが話し始めた。
「皆さん、コユキソウの正体が分かりました。」
「ふわぁ、ホントですかぁ?」
「はい、ええと…コユキソウに含まれる成分は、手術でよく使われる麻酔薬と同じ成分や、大麻と同じ成分が含まれている事が判明しました。」
「…つまり?」
「一言で言うと、麻薬です。」
「…アラ。随分と物騒ねぇ。」
そういえば、コユキソウがあった場所に、『病や怪我の苦しみから解放される』って書いてあったけど…やっぱりそういう意味かよ。
マジでアリスに飲ませなくて良かったよ。
カムクライズル化以前に、麻薬でラリったら洒落にならんからな。
「他に分かった事は?」
「ええと…すみません。今の所は、これだけしか分かっていません。」
「なんだ、使えないんですね。あなた。」
「え、そ、そんな…」
ジェイムズは、わかりやすくヘコんだ。
「おい、床前。年下をいじめて楽しいか?ジェイムズは頑張ってコユキソウの正体を突き止めてくれたじゃねえか。感謝こそすれ、責める資格なんて俺達には無いだろ。」
「ごめんなさい論さん!私、そんなつもりは無かったんです!」
嘘つけよお前。白々しいぞ。
ー図書館ー
【リタサイド】
僕は、ジェイムズと一緒にアリスを治す方法を探していますぅ。
とは言うものの、手がかりなんてそう簡単に見つかるもんじゃないですよねぇ…
「アンカーソンさん、そちらはどうですか?」
「ふわぁ…無いですぅ。」
「ですよね…まあ、こんな事前代未聞ですからね。多重人格と昏睡状態に関連する資料は一通り読みましたが、どれもアリスさんのケースに当て嵌まりませんし…仕方ないですね、気長に探しましょう。」
「ふわぁ、そうですねぇ…」
2日間ずっと手がかりを探してますが、収穫は0ですぅ…
僕、こういう作業は眠くなっちゃうから嫌いですぅ…
…ふわぁ。
「おや、アンカーソン様。お疲れですか?」
「…ふわぁい。」
「そうですか。では、一旦休憩にしましょうか。」
「そうですねぇ…」
「では、一度レストランに戻りましょう。」
「ふわぁい…」
ーレストランー
「ふんふ〜ん♪」
ジェイムズが、鼻歌交じりで何か作っていますね。
甘い香りがするし、お菓子か何かでしょうか?
あの人、なぜかお菓子を作る時はご機嫌なんですよねぇ…
女子じゃないんだから…
「お待たせしましたアンカーソンさん!」
ジェイムズは、お茶と一緒にお菓子を持ってきました。
全部手作りですかね…どれも美味しそうですぅ。
…なんか、年下の男子に女子力で負けてるって、ちょっと屈辱的ですぅ。
「では、お菓子とお紅茶を用意した事ですし、早速頂きましょうか。」
「ふわぁ…そうですねぇ…」
出されたお茶とお菓子は、とても美味しかったですぅ。
ジェイムズは、ティータイムの時はすこぶる機嫌が良いんですよねぇ。
小さい子供みたいにはしゃいで…
「…ジェイムズ、口の周りにクリーム付いてますよぉ。」
「え、本当ですか!?私とした事が、お恥ずかしい所をお見せしてしまいました…」
まあ、いつもの事なので恥ずかしくもなんともないんですけど…
「…ふわぁ。」
「…。」
ジェイムズがずっとこっちを見てきますね。
僕の顔に何かついてるんでしょうかぁ?
「?なんですかぁ?」
「…あの、アンカーソンさん。前から一つ気になっていた事があるんですけど…訊いてもいいですか?」
「ふわぁ…なんですかぁ?」
「…私は、貴女に恋をしているんでしょうか?」
「ぶっ!!?」
思わず、漫画みたいにお茶を吹いちゃいましたよ。
「アンカーソンさん!?私の淹れたお茶、そんなに美味しくありませんでしたか!?」
「き、君が変な事訊くからですよぉお…!そんな事いきなり訊かれても困りますぅ!っていうか、自分の事ですよね!?なんで僕に訊くんですかぁ!?」
「すみません…どうしても分からなかったもので、つい…私、貴女と一緒にいると不思議な気分になるんです。なんだか身体中が熱くなって…貴女の事しか考えられなくなって…そして、貴女が他の男性と一緒にいる所を見ると、不安と不快感が混ざったような複雑な気分になるんです。心理学については一通り勉強したつもりでしたが、今までにこんな気分になった事が無いので、私がどうしてこんな気分になっているのか、この気持ちの正体は何なのか分からないんです。…ですので、私なりにこの気持ちの正体が何か考えてみました。…多分、私は貴女に恋をしているのだと思います。」
えぇええええええええええええええ!!?
ちょっと待って、カミングアウトがいきなりすぎて、頭の中がクエスチョンマークだらけなんですけどぉ!?
「え、いやいや、冗談ですよねぇ?」
「私がこの状況で冗談を言うように見えますか?」
「え、いや…婚約者…」
「それとこれとは話が別です。」
はぁあ!!?
「さ、さっきから何をわけのわからない事を言ってるんですか君は!?おかしいですよ!?」
「でしょうね。私自身、正気ではない自覚はありますよ。ですが、そんな事どうだっていいです。私は、貴女の事をもっと知りたい。貴女に対して抱いている感情が何なのかを解き明かしたい。だから、
「その名前で呼ばないでください!!!」
「…すみません。」
「…いえ、こちらこそ、いきなり怒鳴ってすみませんでした。…でも、もう捨てた名前です。やめてください。」
「すみません…私とした事が、つい…無神経過ぎましたね。不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。」
「それと、さっきの話ですが…君の勘違いじゃないですか?君が僕に恋をしているなんて、ありえないです。」
「…そうですか。…そうですよね。変な事を訊いて申し訳ございませんでした。忘れてください。」
「ふわぁい…」
…そうですよ。
ジェイムズが僕に恋をしているわけないじゃないですか。
だってジェイムズは、名家の御曹司で、頭が良くて、ちょっと抜けてる所もあるけど紳士的で…
それに比べて僕は、つり合う所なんて一つも無いし…
…何より、僕の血は穢れている。
僕なんか、本当は生きてちゃいけないんです。
どんな人だって、僕の正体を知れば僕の事を嫌いになる。
…僕の事を好きになる人なんて、いるわけないじゃないですか。
ー談話室ー
【玉木サイド】
「…。」
しおりに書いてあった事は、本当なのか…?
モノクマの言う事を信用するわけじゃねえし、あんなの嘘だって信じたいけどよ…
「おい、玉木!」
「うおっ、なんだ菊池か。」
「大丈夫か?さっきから呼びかけてたんだけど、返事が無かったから…考え事でもしてたのか?」
「…まあ、そんな所だ。」
「…へぇ。なあ、少し話さないか?」
「なんで急に?」
「まあ、暇だっていうのもあるけど…ほら、友情を深めるっていう意味でもさ!なあ、いいだろ?」
「…ああ。いいよ。話そうか。」
俺は、菊池と話した。
菊池は、親身になって俺の話を聞いてくれた。
菊池も、自分の話をした。
菊池の機嫌がいいような気がしたから、少し話題を振ってみた。
「なあ、菊池。」
「ん?どうした?」
「お前、妹の事どう思ってんだよ?」
「ああ、破奈か。なぜか俺にだけは当たりが強いけど、可愛いし頭良いし、メッチャいい子なんだよアイツ!ツンデレってやつだな、うん。」
「…それは良かったな。」
「それでさ、昨日、破奈が生きてる事がわかったんだよ!すげぇ嬉しかったよ。アイツはまだ生きてくれてた!!ここから出たら会うの楽しみだな…」
「…はは、兄妹仲良さそうで何よりだよ。…妹、会えるといいな。」
「ああ、俺は絶対に生きてここから出て、破奈に会うんだ!」
「…そっか。」
「玉木、お前の彼女はどうなんだよ?彼女の事、どう思ってんだ?」
「…ああ、美人だし気が利くし、俺にはもったいないくらいいい奴だよ。アイツ、中学の頃付き合ってから、よく飯作ってくれたりしてたんだよ。」
「…モテる男はいいよな!彼女持ちとか羨ましいわチキショー!俺も彼女欲しい!」
「いや、お前が言うなよ。合宿メンバーの中で一番モテてたくせによ。」
「それはモテたうちに入んねえよ。好きだった娘もあんな事になっちまったしよ…俺、女運なさすぎんだろ。」
「…ご愁傷様。でも、あのサイコパス女の床前に惚れられるって、ある意味神業だよな。」
「それ、褒めてねえだろ〜。」
「ウザ絡みやめろ。酔っ払いのオッサンじゃねえんだから…」
「それで、お前はやっぱ、ここから出たら彼女に会いに行くの?」
「…ああ。昨日、アイツが生きてる事がわかったからな。今は、家のしきたりから解放された喜びでハジけて遊びまくってるってよ。ホント、世界が滅亡しかけたってのに、能天気な奴だよな。」
「マジかよ…お前の彼女、清楚系って言ってなかったっけ?」
「言ったな。…とりあえず生きてたのはよかったけど、ギャルになってたりとかしたら嫌だな…それとも、俺の事はとっくに好きじゃなくなってたりとか…」
「考えすぎだろ。とりあえず今は、外で待っていてくれてる人達のために、なんとしてでも生きてここを出ようぜ!」
「…ああ!」
俺達は、ハイタッチをした。
「ウェーイ!」
「いや、ウェーイって。ノリ軽すぎじゃね?」
「そうか?」
菊池は、ヘラヘラと笑っていた。
…そういえば、もうコイツと一緒にいてもう20日か。
なんだかんだ言って、コイツには一番世話になったな。
「…なあ、菊池。」
「ん?どうした?」
「…俺達、ダチだよな?」
「何言ってんだよ!そんなの当たり前だろ!…っていうかさ、今更だけど、お互い苗字で呼び合うの鬱陶しくね?」
「え、そうか?」
「もうダチなんだし、もうお互い名前呼びでいいだろ、勝利?」
「…ああ、論!」
論に勝利、か。
なんか、いい響きだな。
論といると、なんかチームメイトと一緒にいるみたいな気持ちになるな。
これが友情って奴なのかな。
ーレストランー
【菊池サイド】
夕飯の時間になったので、俺は勝利と一緒にレストランに来た。
「おや、菊池さんと玉木さんが一緒ですか。これで全員揃いましたね。」
「ああ。…あれ?ジェイムズとリタ、お前らなんか席遠くねえか?」
いっつも隣同士で話しながら飯食ってるんだけどな。
「ふわぁ、たまたまそういう気分だっただけですよぉ。」
…まあ、仲良いからって毎日隣の席に座るかっつったらそうでもなかったりするよな。
「まあそういう日もあるか。じゃあ、早く飯食おうぜ、論。」
「ああ、勝利。」
「アラ?サトシちゃんにカツトシちゃん、いつの間にそんなに仲良くなったの?」
「…まあな。」
「玉木さん!論さんに向かってなんて態度を取ってるんですか!!馴れ馴れしすぎるんですよ!!」
「床前、お前は少し黙ってろ。」
「…はぁい。」
全員が座って夕飯を食った。
その後は、自由時間になった。
「ふわぁ…」
ん?厨房にいるのは…リタか?
「なあリタ。そこで何やってんだ?」
「ふわぁ…一応、今日の夜のアリスの看病係は僕なので、夜食を作ってるんですぅ。」
「そうなのか。よし、じゃあ俺も何か作るかな!」
「ふわぁ…菊池、料理できないですよねぇ…」
「ば、バカにすんな!!おにぎりくらいだったら作れるっつーの!!」
「ふわぁ、そうですかぁ…」
「よし、じゃあ早速作るぞ!…ええっと、まずは米からだな。えっと…一合ってどれくらいだっけ?」
「目分量でいいんじゃないですかぁ?対して味変わんないですよぉ。」
「まあ、そうだよな。…あ、そういえば、炭酸水で炊くと旨いって聞いた事あるぞ。」
「ふわぁ、炭酸、ですかぁ。ここに三●矢サイダーがありますけどぉ…」
「まあ、ちょっと甘いけど同じ炭酸で透明だし、大丈夫だろ。」
「ふわぁ、そうですねぇ…」
「うわ、中途半端に余るな…んー…もったいないし、全部入れちまおう!」
「それに賛成ですぅ。」
「それと具か…」
「ふわぁ、とりあえず、ツナ缶を探すのがめんどくさかったので、近くにあったサバ缶を持ってきましたぁ。」
「まあ、似たようなもんだし多分大丈夫だろ。」
「ふわぁ、油を切るってどうやるんですかねぇ…」
「普通に包丁で切ればいいんだろ。」
「なるほど、やってみますぅ。」
ビチッビチッビチッビチッ
「なんか、さっきと全然変わんないような気がしますけど…ちゃんと油は切ったし、このまま調理して大丈夫ですよねぇ?」
「あ、ちょっと待て。食中毒の可能性もあるからな。ちゃんと火は通しとけよ。」
「ふわぁ…どれくらい火を通せばいいんでしょうかぁ?」
「生っぽい部分が無くなるまで強火で徹底的にだ。」
「ふわぁ…」
「お、炊けたな。じゃあ早速握ってくか。…あ、塩だと味気ないだろうし、代わりに醤油で握ってみるか。」
「ふわぁ、それはいいアイデアですねぇ。」
「ん?なんか焦げ臭くないか?」
「…あ、すいませぇん。フライパンの中身、見てませんでしたぁ。焦げちゃってますねぇ。どうしましょうか?」
「まあ、これくらいだったら大丈夫だろ。むしろ、ちゃんと焼かない方がよくねえよ。」
「そうですよねぇ…でも、これどうするんですかぁ?」
「あ、いい事思いついた。」
「ふわぁ、お酢ですかぁ?」
「このサバ缶はちょっと焦げてて苦いから多分アルカリ性だろ?だったら酸で中和すれば大丈夫だ。」
「なるほど、頭いいですねぇ。」
「これを握ってっと…あ、海苔がうまくくっつかねえな。」
「ふわぁ、水飴を使えばよくくっつきますよぉ。」
「それだ!」
「あ、でもちょっと甘くなっちゃいますね。」
「それなら、デスソースでも振りかけとけばちょうどいいだろ。」
「なるほどぉ。…ふわぁ、完成ですぅ。」
「よっしゃ、早速持ってくか。もしアリスが目を覚ましたら、アイツにも食わせてやろう。」
「ふわぁ、賛成ですぅ…」
「おや、お二人とも、何を作っていらっしゃるのですか?」
「ああ、夜食のおにぎりだよ。アリスにも、起きたら食わせてやるんだ。」
「それは良い考えですね!私もご一緒しますね。」
リタとジェイムズとの3人で診療所に向かった。
ー診療所ー
「ふわぁ、アリス。調子はどうですかぁ?…って、あれ?」
「どうした?」
「アリスがいないんですよぉ…」
「本当だ…点滴も外れてるし…目が覚めたから一人でトイレにでも行ってるんじゃねえのか?俺、ちょっと探してくるよ。ジェイムズとリタはそこで待ってろ。」
「畏まりました。」
「ふわぁ…」
「それにしても、アリスさんはどこへ…」
ヒタ…ヒタ…
「!!?」
「ふわぁ…ジェイムズ、どうしたんですかぁ?」
「
「…え?」
ザンッ
コロシアイ合宿生活残り?名
ウチの子のメシウマ四天王
・近藤ちゃん
・速瀬ちゃん
・エカイラ君(ただし見た目はキツい)
・ジェイムズ君
メシマズ四天王
・菊池クン
・あーちゃん
・リタちゃん
・神城ちゃん(ただし見た目は完璧)