ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第1章(非)日常編③

目を覚ますと、時計は6時50分を指していた。

合宿生活の二日目が始まった。

「痛て…」

顔に痛みが走ったので、鏡を見てみた。

「!!?」

俺の顔の左側に、くっきりと子供の足跡のようなものが付いている。

俺は、振り返って床を見た。

床には、クソガキがうつ伏せになって寝そべっていた。

クソガキの髪には、カーペットの繊維が絡まっている。

「…まさか、ベッドからソファーまで寝たまま転がってきたのかコイツ…どんだけ寝相が悪いんだよ。」

やっぱり、こんな事なら泊めてやるんじゃなかった。

 

シャワーを浴びて、私服に着替えた。

「もう7時か…ん?」

カーペットがめくれて、モノクマメダルが出てきた。

「こんなところに隠れてたのか。」

早速、メダルを拾った。

 

『オマエラ、おはようございます!!起床時間です!!』

耳障りな声が響いた。

その声で起きたのか、もう一つの耳障りな声が聞こえた。

「ふぁああ…よく寝た!!…ん?サトにいどったの?そんなミナミゾウアザラシの尾ヒレで引っ叩かれたみたいな顔して。」

お前に蹴られたんだよ!!

「ってか、なんであーちゃん床で寝てんの!?はっ!!まさかサトにい…」

「俺じゃねえ。お前が勝手に寝ぼけて落ちたんだろ。」

「あー最悪!!サトにいのせいで、体がホコリまみれ!!」

「俺のせいにするな。」

「どう考えたってサトにいのせいでしょ!!あ、そうだ!あーちゃん着替えるから、部屋から出てって!」

「…俺の部屋なんだが。」

「何?まさか覗く気…」

「…散歩行ってくる。」

いくら相手がクソガキとはいえ、冤罪で変態のレッテルを貼られるのは御免だ。

「何だよ!!ちょっとはあーちゃんにキョーミ持てよ!!」

…なんなんだ。

 

さてと。

どこに行こうか?

…コイン拾ったし、売店に行ってみるか。

売店に行くと、既に先客がいた。

床前と神城だ。

床前は、棚の上の方を見上げながら立ち止まっている。

「どうかしたのか?」

「あ…えっと…これが欲しいんですけど…」

床前は、上の方を指差した。

指を指した先には、イヤホンがあった。

なるほど、届かないのか。

「私の部屋のイヤホン、壊れちゃって…新しいのを売店から持って来ようと思ったんですけど…」

「これか?ほらよ。」

イヤホンの箱を手に取って、床前に渡す。

「あ…ありがとうございます…」

ふと疑問に思った。ここには、伸縮自在の脚立があったはずだ。それを使えば、俺が来るのを待つ事無かったのに。

「なあ、どうして脚立を使わなかったんだ?」

「えっと…使おうとしたんですけど、先に神城さんが使ってて…用が済んだら貸すようにお願いもしたんですけど…すみません、気づいて貰えなくて…」

 

床前が後ろの方に目をやると、神城が脚立の上に乗っていた。

床前は影が薄いからな…神城の性格から考えて、一緒に売店にいる事すら気付いてない可能性も高いか…

「ふはははははははは!!!高所というのは、私にこそふさわしい場所だ!!愚民共を見下すのにちょうどいいな!!」

どう見ても遊んでるよな…

そんなお遊びで脚立占領すんなよ。

「おい、神城!!」

「ん?ああ、誰かと思えばモブか!!それと…えっと…ソイツは誰だ?」

「は?」

コイツ、もしかしてここに来てからずっと床前に気付いてなかったのか?

「マジかよ…メンバーの存在ごと忘れるか普通…」

「菊池さん…いいんです、慣れてますから…」

「そんな事より、愚民風情がこの私に何の用だ!!」

「…お前なあ、脚立はみんなで使うものなんだから、用が無いなら使うんじゃねえよ!」

「愚民が私に命令するな!!今から、この脚立は私の物になったんだから、どう使おうと私の勝手じゃねえかよ!!」

話にならない。

「…はあ。」

「ふはははははは!!ついにこの私に屈服したか!!それでいい、愚民は賢く美しいこの私にひれ伏せていればいいんだよ!!」

『神城様!!迷惑行為はやめてくだちゃい!!』

いきなりモノハムが現れ、神城の頭をポコン、と叩いた。

「き…貴様…!?齧歯類の分際で、今この私を…殴ったのか!?愚民風情が、この私に気安く触るな!!」

『あわわわ…!?オイラはただ、不良生徒を注意ちようとちただけなのに…!?も、モノクマ学園長〜!!』

『呼ばれて出てきてうぷぷぷぷ!!みんなの学園長、モノクマだよ!!』

モノクマがいきなり現れた。

『神城サン、みんなの迷惑になる行動は控えてよね!コロシアイ以外のゴタゴタなんて、正直見たくないんだからさ!』

「フン、愚民の都合なんて知ったこっちゃねえ!!目障りな熊め、早く消え失せろ!!」

『…しょうがないなあ。そんな不良生徒には〜。』

 

『テッテレー!!ガトリングガン〜!!』

モノクマが、ガトリングガンの銃口を神城に向ける。

『ボク言ったよね?共同生活をしろって。ちゃんと仲良く生活できないなら、蜂の巣になってもらうよ!!』

「はぁ!?ふざけんなよ!!なんで私が貴様なんかに殺されなきゃなんないのよ!!」

『本当は、こんな死に方して欲しくなかったけど…でも、モラルに欠ける言動をする輩には、おしおきが必要だよね!…3、2』

「ふ、ふん!!今日は、特別に貴様ら愚民に合わせてやろう!!私の寛大さに感謝するんだな!!」

ガトリングガンにビビっただけだろ。

『えー。ここではボク達の方が立場が上なんだけど…まあ、仲良く生活する気になってくれたんだったら良しとしましょう!こんなところで死なれたらつまんないもんね!』

『くれぐれも、二度とこんな事ちないでくだちゃいね!』

モノクマとモノハムは去っていった。

 

「ふはははははは!!愚かな綿埃共め、ついにこの私にひれ伏したか!!」

自分から降参しといて何言ってんだコイツ。

「…まだ朝なのに疲れた。」

「だ、大丈夫ですか…?」

「ああ、別に…疲れるのは慣れてるからな。」

「あ…えっと…その…さっきは、ありがとうございました…」

「?…あ、ああ… …」

「…?」

箱を持っていた床前は、違和感を感じたのか、すぐに箱を開けた。

「どうした?」

「…あ。」

箱の中には、イヤホンと一緒にモノクマメダルが入っていた。

「おお、さすが『超高校級の幸運』…」

「そんな…私は、抽選で選ばれただけですよ…」

床前は、メダルを持った手を俺の方に差し出した。

「…あの、これ…受け取ってください。」

「え?いや、お前が見つけたんだからお前が持っとけよ。」

「この箱を取ってくださったのは、菊池さんです。菊池さんが持っていてください。」

「…いいのか?」

「はい、さっきのお礼です。」

「ありがとう。…じゃあ、俺はガチャ引いてくるから。」

「は、はい…では、また後で…」

俺は、ガチャを引きに行った。

今回は、赤い手拭いと、高級感のあるメガネ拭きが出てきた。

「…誰に渡そうかな?」

ふと見上げると、視界に時計が映る。

時計は7時45分を指していた。

「あっ、もうこんな時間だ。そろそろレストランに行かないと。」

俺はレストランに向かった。

 

「おっ!菊池っち!今日は珍しく早いね!」

「…まあ、否定はしないけど。朝食はお前が作ってくれたのか?」

「そうだよ!今日はね、洋食にしてみたよ!」

テーブルには、朝食が並べられている。

スクランブルエッグからは、バターの芳香が湯気と共に舞い上がり、室内を包んでいた。

だがその幸福感も、あの忌々しいソプラノヴォイスによってかき消された。

「おまたセントビンセントおよびグレナディーン諸島!!」

「あ、あーちゃん。席取っといたよ。私の隣来る?」

「わーい!!うぇすにゃんの隣ー!!…あれ?サトにいどったの?そんなカスピ海の水面に叩きつけられた後エベレスト山の頂上で天日干しされたみたいな顔面して。」

どんな顔面だ。

「よっしゃ!!じゃあ、全員揃ったし飯にするか!!」

「あーちゃん、もうマリアナ海溝並みにお腹空いてるんですけど!!」

「わかったわかった。…それじゃ、いただきまーす!!」

各々が朝食を食べ始めた。

狗上は、パンとヨーグルトだけで済ませていた。

…いけ好かない野郎だ。少しは近藤を信用してやればいいのに。

 

朝食が終わった後は、自由時間となった。

「よお、論。」

「…郷間か。どうした?」

「ちょっと、兄弟同士で話し合わねえか?」

「…構わないが。」

「うっし!じゃあ、後で俺の部屋来いよな。」

郷間に言われるまま、俺は郷間の部屋に向かった。

 

 

『超高校級の庭師』の個室

 

「…ほう。」

さすがは『超高校級の庭師』の個室、と言ったところだろうか。

バルコニーには樹木が植えられており、花壇や盆栽がセットされている。

室内にはなぜか水車と小さな木があり、本棚には庭の手入れに関する本が並んでいる。

「…こんなものセットされても、俺は庭になんて興味無いんだけどな。この木を切り倒して、家を建てたりしたいもんだぜ。」

「一本だけじゃ無理だろ…小人用の家でも作る気か?」

「おお!それいいな!よっしゃ!じゃあまずは、ノコギリ用意しねえとな!」

俺が冗談で言ったのを、郷間は実践しようとしていた。

…純粋というか、バカというか…。

「郷間、せっかく部屋に呼んでもらったんだ、俺から渡したいものがあるんだが。」

「なんだ?なんかくれんのか?」

「…ほら、これ。汗かいたりするだろうから、使うだろうな、って思って。」

俺は、郷間に手拭いを渡した。

「えっ、いいのか!?」

「ガチャの景品だ。…良かったら使ってくれ。」

「ありがとな!!」

郷間は、嬉しそうに手拭いを受け取った。

「いやあ、俺も貰ってばっかじゃ悪いよな…お前なんか欲しい物あるか?」

「…いや、特に。…じゃあ、お前の話を聞かせてくれるか?」

「そんなんでいいのか?」

「ああ、話してくれるか?」

「あたぼうよ!ちゃんと聞いてろよ?弟!」

…やっぱり俺は弟なのか。

「じゃあ、お前の過去について詳しく教えてくれるか?」

「いいぜ!俺の家は、代々続く大工の一家で、俺の親父も大工なんだ。俺は、親父を尊敬してる。親父みたいなすげぇ大工になるのが、ガキの頃からの夢だったんだ。でもある日、お袋に庭の掃除をしろって言われて仕方なく庭掃除をしてたら、それを近所のジジイに見られちまってよ。そのジジイは、世界中で注目されてるプロの庭師でよ、そいつにいい才能持ってるって言われて、半ば強制的に弟子入りさせられたんだよ。それで、気がついたら『超高校級の庭師』として希望ヶ峰にスカウトされてたってわけよ。…他のみんなと違って、俺はやりたい事で才能を認められたわけじゃないから、それがコンプレックスなんだよな。」

…そういえば、本当は庭師になりたかったわけじゃないって言ってたな。

「逆に言えば、お前は自分自身も知らなかった才能を開花できたって事だろ?…夢ばっかり追いかけてても、報われない事もある。そんな時、それ以外で目指せるものを見つけるのって、そう簡単に出来る事じゃない。そういう意味では、お前は凄い奴だと俺は思うぞ。」

「…そうか。そうだよな。なんかゴメンな!俺らしくなかったよな!よっしゃ、じゃあ気を取り直してジャンジャン話すぞ!」

「お前、なんで合宿に参加させられているのか、心当たりは?」

「んー、無えな。希望ヶ峰の入学式に参加しようとしてたら、森の中で寝てたな。」

「なるほど、やっぱりみんな同じか…じゃあ、ここから出たら何したい?」

「そうだな、まずは家族のみんなに会いてえな。でも今は、お前らが俺の兄弟だ。俺を兄貴だと思って、どんどん頼れ!」

「…はは、相変わらずお前らしいな。じゃあ趣味とか特技とか、あとは好きなものとか教えてくれるか?」

「趣味かあ。やっぱ、親父の手伝いとか…あとは体鍛えたりとかだな。好きなものは、建築だ!」

「…ありがとう。お前の事をよく知れたよ。」

「おう。今度はお前の話を聞かせてくれよな、弟!」

俺は、郷間の部屋を後にした。

 

《郷間権蔵の好感度が上がった》

 

「…さてと、次はどうしようかな?」

俺は廊下を彷徨いていた。

「あっ、先輩!!」

後ろから、小川の声が聞こえた。

「こんなところでバッタリ会うなんて、奇遇っスね!」

「…そりゃあ、ホテル内を彷徨いていれば誰かしらには会うだろ。」

「にしし!!それもそうっスけどね!!…どうっスか?ちょっとお話しないっスか?」

「…そうだな、俺もお前に渡したい物があるしな。」

「え?何スか!?楽しみっス!!じゃあ、自分の部屋に来てくださいよ!!」

小川は俺の手を引っ張って、部屋まで連れてきた。

 

 

『超高校級の演奏家』の個室

 

「ここが自分の部屋っスよ!」

「…おぉ。」

個室には、何種類もの楽器が置かれていた。

壁には音楽家の肖像画が飾られており、本棚には楽譜や音楽史の本が並んでいる。

面白い事に、ベッドやソファーには体重をかけると音が鳴る仕組みが施されている。

「…ここにある楽器、全部演奏できんのか?」

「もちろん!『超高校級の演奏家』ナメないでくださいよ!!」

小川は、自慢げに言った。

「それはそうと先輩、渡したいものって何スか?」

「…そうだったな。はい。」

俺は、小川にハーモニカを渡した。

「え!?これ本当にいただいちゃっていいんスか!?結構高級そうだけど…」

「音楽に疎い俺が持ってるより、お前が持ってた方がいいだろ?受け取ってくれよ。」

「そういう事なら、ありがたく頂戴するっス!」

小川は、上機嫌でハーモニカを受け取った。

「その代わり、お前の話を聞かせてくれないか?」

「了解っス!!」

「まず、お前はなんで『超高校級の演奏家』になったんだ?」

「んー…やっぱり、楽器が好きだからっスかね。自分は、ピアニストの両親の間に生まれて、物心ついた時から楽器を演奏してたっス。楽器を弾くのが楽しくて、ずっと続けてたんスよ。自分、やるって決めた事には一直線になっちゃうタイプっスから。他に趣味も特技も無かったし…楽器だけが、自分を熱中させてくれてたっス。そしたら、いつの間にかそれが『才能』になって、『超高校級の演奏家』として希望ヶ峰学園にスカウトされたっス。」

一直線にやりたい事に突き進んだ結果、それが『才能』になった。

…そう思うと、小川ってある意味郷間とは真逆のタイプなんだな。

「…ありがとう。そうだ、お前はなんで合宿に参加させられてるのか、心当たり無えか?」

「無いっスね。入学式に参加しようと、校門をくぐったところで意識が飛んで、気がついたら港の近くで寝てたっスよ。…犯人は、自分らをここに閉じ込めて、何が目的なんスかね?こんな大規模な事すれば、警察が動きそうな気がするっスけど…新手の愉快犯っスかね?」

「目覚めた場所は違うが、やっぱり大体みんな同じか…ありがとう。何かわかった事があれば、教えてくれ。」

「了解っス!!」

「お前、何か外に出たらやりたい事とかあったりするのか?」

「そうっスね…今回の合宿の思い出を、曲にしてCD出したりとかっスかね?…なーんつって、にしし!」

「…お前らしいな。あと、趣味とか特技とか…好きな物とかあれば教えてくれ。」

「もちろん楽器っス!!っていうか逆に、それ以外無いっスよ!!」

「…シンプルでいいな。」

「褒め言葉いただきました!ありがとうございます!!」

「…お前さ、メンバーの中では割と常識人だろ?疲れたりとかしないのか?」

「そりゃあ疲れますよ。特にアリス先輩やカークランド先輩は、ツッコミどころが多すぎてツッコミ疲れするっス。…厄介なのはカークランド先輩っスね。アリス先輩は狙ってやってる節があるからまだしも、カークランド先輩は無自覚でやってますからね。天然インテリとか、誰得なんでしょう。」

「…お前も苦労してるんだな。」

「お互い様っスよ。…先輩こそ、アリス先輩と一緒にいてよく今まで正気でいられたっスね。」

「わかってくれるか!?」

「ええ。自分も、アリス先輩みたいな人に何度も振り回されてきましたし。」

俺たちは互いに愚痴り合った。

抱えていたものを話したおかげで、スッキリした。

「おっと、そろそろ昼飯の時間だな。」

「そうっスね。一緒に行きましょうよ。」

「だな。」

俺たちは、レストランに向かった。

 

《小川詩音の好感度が上がった》

 

「近藤。今日の昼飯はなんだ?」

「見ての通りだよ。いっぱい食べてね!」

昼食も、昨日の夕食みたいに豪華な食事が並んでいた。

「なんで菊池君と小川さんが一緒にレストランに来たの!?」

猫西が驚きながら言った。

床前は、俺を悲しそうな目で見た。

…俺、なんかまずい事したか?

「いや、なんでって言われても…普通に部屋で愚痴り合ってただけだよな?」

「そうっスね。別にそれくらい普通っスよね?」

「あっそう!!」

猫西は、頬をフグのように膨らませていた。

「なんで怒ってんだよ。」

「別に怒ってませんけど!!」

「あー、そういう事っスか。」

小川は、全てを察した様子だった。

「いやー、菊池先輩とは性格的に合わなかったっスよ。話してみてわかったっスけど、絶対付き合いたくないっスね〜。全然タイプじゃないし。まあでも、社交辞令っスよ、社交辞令!」

何を言っているんだコイツは。

さっきまであんなに楽しそうに話していたくせに、酷い言い様だ。

しかも、コイツの言葉を聞いた途端に、猫西も床前も安心してるし…なんなんだ一体。

「…それじゃ、上手くやってくださいよ。」

小川は、ニヤニヤしながら席についた。

上手くやるって、何の事だ?

席に座っていた玉木が話しかけてきた。

「よっ、ニクいね!色男!」

「…は?何の事だ?」

「…え?嘘だろ!?今の流れでわかんなかったのか!?」

「全く。…さっきからなんなんだ?おかしいぞお前ら。」

「…っはー、お前、それでよく今まで弁護士やってこれたな。」

「は?どういう事だよ、なんか知ってんのか?教えろよ。」

「やなこった。俺から言う事じゃねえよ。」

「何だよ…お前、そんなケチな奴だったか?」

「ケチで結構。ほら、飯食うぞ。」

「やっほー!!おくれてやってきマスタースパーク!!…あれ?サトにいどったの?モーリシャスドードーが節分の日にブローニングM2重機関銃喰らったような顔面してさ。」

「…どんなデンジャラスな鳩の豆鉄砲の喰らい方だよ。…実はな、かくかくしかじかで…」

全てアリスに話した。

「…うん、それは500億%サトにいが悪いね!!」

「そんなに!?」

「ホントベンゴシ失格だよねー。失業したらどうすんの?豪華客船に乗って、地下行くの?」

「なんで豪華客船で負ける前提なんだよ。っていうか、俺そこまで金に困ってねえし。」

「君たち、ギャンブル漫画の話で盛り上がってないで早くウチのご飯食べなよ。冷めちゃうよ。」

「はーい!いただきまーす!!」

 

昼食が終わった後は、自由時間になった。

「…そうだな、まずは遺跡の探索にでも行ってくるか。」

俺は遺跡へと向かった。

 

 

遺跡

 

遺跡は全て石造りで、古代都市のような風景が広がっていた。

石の壁の隙間に、モノクマメダルが挟まっていた。

メダルを回収しつつ、遺跡の奥へと進んでいった。

一番奥まで進み、石の扉を開くと、中は黄金で埋め尽くされていた。

「すげぇな。…これ、全部純金か?」

部屋の中央には、モノクマの顔のツタンカーメンもどきのミイラと、その横に設置されたモノハムの顔のアヌビスもどきの黄金像があった。

…これ、エジプト神話とツタンカーメン王への冒涜じゃないのか?

よく見ると、ミイラの下に宝箱があった。

開けてみると、モノクマメダルが3枚入っていた。

「…いくら黄金で埋め尽くされていても、売りつける相手がいなきゃ価値が無いのと一緒だな。メダルだけ貰っていくとするか。」

俺はメダルをポケットに突っ込んで黄金の部屋から出た。

部屋を出ると、速瀬が立っていた。

「…おや、中に誰かいるとは思っておりましたが…貴方でしたか。」

「速瀬か。後で、二人でゆっくり話さないか?…渡したいものもあるしな。」

「…承知しました。では、14時に私の部屋までいらしてください。…できれば、5分前に来て頂けると有り難いのですが。」

「わかった。5分前だな。次はちゃんと来るよ。」

俺は、遺跡の外へと出て、ホテルに戻った。

ホテル内の談話室で適当に時間を潰した後、速瀬の部屋に向かった。

 

 

『超高校級の秘書』の個室

 

「ここか。」

俺は部屋をノックして、ドアを開けた。

「…13時48分26秒。やればできるじゃないですか。…部屋をノックしてからドアを開けるまでの間隔も、配慮が行き届いていらっしゃいます。さすがは、『超高校級の弁護士』を名乗るだけの事はありますね。」

「まあ、クソガ…」

速瀬が俺を睨む。

「…アリスがいないからな。」

「言葉遣いが汚いのが気に障りますが…それ以外は及第点ですね。どうぞお掛け下さい。」

「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

高級感のあるソファーに座って、部屋を見渡した。

部屋の至る所に時計があり、本棚には商業や政治についての本が並べられている。

デスクの上の筆記用具は全て高級品だ。部屋の隅には、観葉植物が植えられた植木鉢が置かれている。

「さて、そろそろご用件を伺いましょうか。」

速瀬はテーブルの、俺が座っている場所の近くに淹れたての紅茶を置いた。

「ああ、ありがとう。…えっと、これをお前に渡したかったんだ。」

俺は、メガネ拭きを速瀬に渡した。

「…これを、私に?」

「ああ。よかったら使ってくれ。」

「…有り難うございます。大切に使わせて頂きますね。」

「気に入ってくれたんならよかった。そうだ、この機会にもう少し話さないか?」

「畏まりました。何からお話しましょう?」

「そうだな、じゃあ、なんでお前は『超高校級の秘書』になったのか、教えてくれるか?」

「承知しました。…私の父は、とある中小企業の社長でした。決して裕福とは言えない家庭でしたが、私は父を尊敬しておりました。しかし、父は私が幼い頃に亡くなりました。聞いた話によると、詐欺の被害に遭って多額の借金を抱え、首が回らなくなって自殺したそうです。私は、父が遺したものを守るために、社長を継いだ兄の秘書になりました。それから数年後、会社は大企業へと成長し、私は県知事から秘書のオファーを頂きました。私は、喜んで承諾しました。県知事ほどの方にお仕えする事ができるのですから。そして、県知事の秘書を務めてから2年後、『超高校級の秘書』として希望ヶ峰学園にスカウトされました。…これが、私の過去です。」

「そうか…話してくれてありがとな。」

「教えて欲しいとのご命令を頂いたので。」

「別に命令じゃねぇけど…じゃあ、なんで合宿に参加させられてるのか、心当たりは?どうやってここに来た?」

「…さあ。希望ヶ峰学園の入学式会場に行くため、校門をくぐったところで意識を失い、気がついたらテラスの椅子に座って寝ておりました。今回の合宿は、私は『超高校級狩り』による計画だと睨んでおります。」

「『超高校級狩り』…?」

「希望ヶ峰学園の生徒は、『超高校級』の才能故に、犯罪組織に拉致されて裏社会に高値で売り飛ばされたり、嫉妬の対象となって虐殺されたりなどといった事件に巻き込まれる事が多いそうです。そういった者達を、多くの方々はこう呼びます。『超高校級狩り』と。」

「『超高校級狩り』、か。もしそんな奴にここに連れてこられたとしたら、厄介な事になりそうだな。」

「他にご質問は?」

「そうだな、えっと…じゃあ、外に出られたら何がしたい?」

「そうですね、まずは知事にお会いしたいと思っております。今まで私を雇ってくださったご恩を返さなければ。」

「そうか。…じゃあ、趣味とか特技とか…あと、好きな物とかあるか?」

「趣味、ですか。読書と音楽鑑賞ですね。特技は、情報処理とスケジュール管理でしょうか。好きな物は、小説ですね。」

「なるほどな。ありがとう。お前の事をよく知れたよ。」

「礼には及びません。また何かご用があれば、何卒。」

「それじゃ、そろそろお暇しようかな。また後でな。」

俺は、速瀬の部屋を後にした。

 

《速瀬吹雪の好感度が上がった》

 

俺は海辺を散歩した後、売店に向かい、ガチャを引いた。

「…4枚か。何が出るかな?」

今回は、赤い装飾の付いた十字架のペンダント、花札、小鳥のワッペン、美少女フィギュアが出てきた。

「おっと、そろそろ飯の時間だな。」

俺はレストランに向かった。

 

「やっほー!菊池っち!ご飯できてるよ!!」

今回も、俺の期待を裏切る事のない豪華な食事だった。

…よく毎回こんなに作れるよな。

その後、アリス、狗上、リタ、神城が来て、各々が食事を始めた。

相変わらず、狗上は近藤が作った料理を食べなかった。

…いつか体壊しても知らないぞ。

 

食事の後は、自由時間となった。

部屋に向かおうと曲がり角を曲がると、森万と出会した。

「…フッ、誰かと思えば菊池か。」

「…。」

「おっと言うな。お前の考えはわかっているぞ。さしずめ、話をする相手を探している、と言ったところだろう?俺は超能力者だからな、人の心を読むなど容易い事だ。」

そりゃあ、こんな時間帯に個室のある廊下を彷徨いてる奴は、話し相手を探してる奴しかいないだろ。

「…すごいな。その通りだよ。なあ森万、良かったら俺の話し相手になってくれないか?」

「フン、いいだろう。…貴様と話をすれば、いい事が起こりそうだからな。」

…コイツ、ペテン師のくせに、俺がプレゼントを持ってる事に勘付いてやがる。

「俺の話を聞きたければ、部屋まで来い。」

「わかった。」

俺は、森万に言われるがまま個室に向かった。

 

 

『超高校級の超能力者』の個室

 

「…へえ。」

いかにも、という感じだった。

部屋全体が黒い布で覆われており、星座の写真や水晶などが飾られていた。

部屋の本棚には、超能力や黒魔術の本が並んでいる。

「フッ、どうだ俺の部屋は。」

…よくこんな痛々しい部屋で生活できるな。ダサすぎて見ていられない。

「…いいんじゃないか?個性的で。」

「フッ、お世辞は結構だ。そんな見え透いた嘘が俺に通用すると思ったか。」

チッ。

「それはそうとお前、俺に渡したい物があるんじゃないのか?」

「…エスパーかよお前は。ほらよ。」

俺は森万に、厨二臭いペンダントを渡した。

「…ほう、悪くない。ありがたく受け取るとしよう。」

森万は早速ペンダントを付けた。

痛い痛い痛い!!自分で渡しといてなんだが、痛すぎるから今すぐ外せ!!

「どうした?お前、どこか怪我してるのか?さっきから痛がっているが?」

心を読むな!!痛いって物理的な意味じゃねえし!!

「フッ。いいなこれ。お前、俺の好みをわかってるじゃないか。エスパーの才能あるぞ。」

「…そりゃどうも。」

「なんだ貴様、俺の過去が知りたいのか?いいだろう、教えてやる。」

いきなり語り出したぞコイツ…

「俺は、幼少の頃から超能力の天才でな…ありとあらゆる学者達が、俺をペテン師と言って調べたが、最後は誰もが俺の超能力の前に屈服した。しかし、特別な力を持つというのは、必ずしもいい事ばかりではない。中学校では、俺の超能力を恐れる者達によって随分と迫害されてきた。」

単にお前がイキってるだけの貧相な陰キャだったからパシリにされてただけじゃないのか…?

「だが、俺は『超高校級の超能力者』として希望ヶ峰学園にスカウトされた!!世界が、俺の力を認めたのだ!!ふはははははは!!」

いくら未来を約束されている希望ヶ峰学園に入学できたからって、大袈裟すぎだ。

「さてと、昔話はこの辺にして、次は合宿に参加した経緯と犯人の心当たりを教えてやろう。俺は、入学式に参加しようとしたら、気がついたら遺跡にもたれかかって寝ていた。俺たちを閉じ込めた犯人は、恐らく秘密結社『モノミナティ』の仕業と踏んでいる。ククク、奴らめ…『超高校級』の俺たちを利用して、世界征服を企んでいるようだな。」

今適当に考えたろ。イルミナティをちょっといじっただけじゃねえか。

モノクマだからモノミナティか、超能力には恵まれてもネーミングセンスには恵まれなかったようだな。

「フッ、まあ…この話はこの辺でいいだろう。外に出たら何がしたいか…ねえ。ククク、決まっている。まずは『モノミナティ』を壊滅させて、世界を救うのだ。これも、強大な力を持って生まれた者の宿命…」

勝手にベラベラ喋るなコイツ。

「次は趣味と特技と好物か。フン、そんなに俺に興味があるならそう言えばいいのに。」

さっきからお前が自分で話してるんだろうが。

「フッ、趣味は、力を高めるための修行だ。特技はもちろん超能力、好物は最初の人間達が口にした、赤き衣を纏いし知恵の果実だ。」

リンゴの事だろ。いちいち回りくどい言い方するな。

「フン、俺の凄さを少しは体感できたか?今日はここまでにするとしよう。では、また明日。」

…あれっ?結局、俺ほとんど何も話してなくね…?

 

《森万羅象の好感度が上がった》

 

俺は森万の部屋を出て、自分の部屋に戻った。

「…はあ、今日も疲れたな。寝るか。」

俺は風呂に入って、そのままベッドで寝た。

「…ああ、ここに来て初めてのベッド…」

クソガキに楽しみをとられた分、感じる幸福感は倍になっていた。

俺はフカフカのベッドに癒されながら眠りについた。

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