『うぷぷぷ…お見事大正解ー!!『超高校級の幸運』床前渚サンを殺したのは『超高校級の死神』伏木野エカイラクン、そしてそのエカイラクンを殺したのは…なななんと!頼れるリーダーの皮を被った快楽殺人犯、『超高校級のサッカー選手』玉木勝利クンでしたー!!』
『なななんと!今回は、クロの玉木様も含めて、満場一致でエカイラ様と玉木様に投票ちていまちた!いやー、被害者・犯人不明トリックとは!ちてやられまちたよ!』
「ふふ…はははっ…あーあ、負けちまったよ。もうちょい騙せると思ってたんだけどなー。」
勝利は力尽きたのか、濁った瞳で上を見上げながら乾いた声で笑っていた。
「玉木さん…どうして…なぜ貴方がこんな事を…!」
「…そんなに知りたいか?」
「…え。」
勝利は、大きく息を吸った。
そして、ジェイムズを睨みながら言った。
「そんなに知りたきゃ教えてやるよぉおおおぉおぉおおお!!!」
「か、勝利…!?」
「俺があのキチガイ共に協力する事に決めたのは、今回配られた動機がきっかけだった。…見ろ。」
勝利は、自分のしおりを俺達に見せた。
そこには、信じられない物が映っていた。
第1位『超高校級のサッカー選手』の恋人、姫月小美サンの現在は!?
姫月小美サンは、3年前に死亡している。『超高校級の絶望』によって追い詰められ、最期は恋人である玉木クンに助けを求めながら、鈍器で頭を潰されて死亡した。
「これを見た時、俺は全てに絶望した。小美は、俺にとっての最後の希望だった。小美は生きて俺の帰りを待ってくれている。そう信じてたから、ここまで生きられた。何があっても、耐えられると思った。だがもうアイツはこの世にいない。俺がのうのうと合宿やってる間に、アイツはどこの誰かもわからねェような奴等に殺されてたんだ。俺は、生きる意味を奪われた。…いや、違うな。俺に生きる意味なんて最初から無かったんだ。小美が死んだ今、俺にとっては、思い出も、友情も、そして未来も、何もかもが無意味だ。…だから、お前ら全員を道連れにして、全部終わらせようとしたんだ。」
「おい…待てよ勝利…!」
「…論、今更俺に何か言いたい事でもあんのか?」
「お前、どういう事だよ!?話が違うじゃねえかよ!!小美ちゃんはまだ生きてて、外の世界でお前の帰りを待ってるんじゃなかったのかよ!?お前、俺にそう言ったよな!?それともなんだ?俺に嘘をついたってのか!!?」
「…。」
「おい!!なんとか言えよ!!」
「そう言うしかなかったんだよ!!!」
「!!!」
勝利は、証言台を叩きながら大声で叫んだ。
「しょうがなかったんだよ!!何も知らねェお前が、友達面してヘラヘラと色々聞いてくるから…あの場で小美が死んでたなんて…もう俺に生きる糧がなかったなんて、言えるわけねえだろ!!?」
勝利は足音を立てながら俺の方へと歩き、胸ぐらを掴んだ。
「ぐっ…」
「だから、それを悟られないように必死こいて平気なフリしてたんだよ!!俺はな、あの時何も知らねェで幸せそうに妹自慢してるお前を、殺したくて殺したくて仕方がなかった!!」
…!!
そんな。
親友同士、信頼し合えてたと思ってたのに。
それは俺の一方的な思い込みで、勝利にとっては、俺は仲間でも親友でもなかったっていうのかよ…
そんなの、あんまりだろ…!
「テメェとの仲良しごっこも、もう今日で終わりだ。…もう永遠にお前と話す事もないだろうな。あばよ
「玉木さん!今すぐ菊池さんに謝ってください!!」
「…謝る?何を?」
「…ッ!菊池さんは、貴方の事を大切な親友だと思っていらっしゃったんですよ!!?私…いや、リタさんやアリスさんだって、貴方の事を頼れるリーダーだと思い、心から尊敬していました!!貴方はいつだって私達を正しい方向に導き、仲間として、クラスメイトとして信頼してくださった…でも、それも全て嘘だったのですか!?貴方にとって、私達は無意味な存在だったと仰るのですか!!?」
「…そうだよ。俺には、小美が全てだった。アイツが死んだ今、お前らに何の価値もない。だから、ヘラヘラ笑って幸せそうにしてやがる目障りなお前らを、全員ブチ殺してやりたかったんだよ。だって、おかしいだろ?何の罪もない小美がどこの馬の骨かもわかんねぇような奴らに無残に殺されて、クラスメイトを何人も殺して世界をメチャクチャにしたお前らが孤島でのうのうと生き延びてるなんてよ。俺はな、エカイラの『協力すれば俺以外の全員を殺せる』っていう話に乗って、お前らに裁判で間違えさせて、全員をおしおきで死なせるつもりだったんだよ。無論、その後は俺自身も死ぬつもりだったけどな。でもアイツら、アリスと菊池を生き残らせるために俺を裏切りやがったんだ。あーあ、人間、絶望のドン底に突き落とされると逆に笑っちまうもんだなぁ。お前らが全員死ねば、少しは気が晴れると思ってたのによ。」
『そんな、酷い…!』
「酷い、か。クラスメイトを何人も殺して、学級裁判では狗上や速瀬、猫西に神城、そして俺…何人も見殺しにしてきたくせにその事にすら気付けてないお前らの方がよっぽど酷くてイカれてんだろ?」
「…。」
「お前ら、自分達の立場分かってんだろ?俺達は、人を殺したくてたまらない異常者で、救いようのない極悪人で、『超高校級の絶望』だ。この事実は、たとえ記憶が消されようと、今更どんなに反省しようと覆らない。俺達は、どんなに事実に抗おうと、真っ当に生きる事なんて絶対にできやしねェんだ。」
勝利は、口の左端を吊り上げて言った。
「…だって、どんなに善人ぶったところで、心の奥底では『絶望』が渦巻いてんだからよ?」
「ッ!!」
「俺達は、今まで仲間の死を悲しみつつ、心のどこかでその『絶望的なシチュエーション』を望んでたんだよ。今までの殺人が何よりの証拠だ。菊池。お前は、殺人を止めたいって言ってたくせに、特に何も行動を起こさなかったよなァ?」
「…。」
「…止められなかったんじゃない。
「…黙れ。」
「お前ら、なんでここにいるんだ?今まで生き残ってきたんだ?仲間を信頼していたから?誰にも殺されず、真実を見極められるだけの実力があったから?『絶望』に押し潰されずに人間性を保てたから?…それとも、なんとしてでも生き残りたいっていう強い思いがあったから?…どれも違うな。
「黙れ。」
「いい加減認めろよ。俺達は、モノクマやモノハムと何ら変わりはない…このコロシアイ合宿こそが、俺達のために用意された最大最高のエンターテインメントだったんだよ!!」
「黙れ!!!」
俺は、証言台を叩いて怒鳴った。
「菊池さん…!」
「俺はいい。俺が今まで死んだ奴らに何もしてやれなかったのは事実だ。…けど、アリス達の事までバカにするな!!コイツらが、コロシアイを望んでただと!?そんなわけねェだろ!!いくらお前でも、みんなを悪く言うのは許さねェぞ勝利!!」
「はぁ?何キレてんだお前?俺が言ったのはただの事実だろ?事実にキレるとか、カッコ悪すぎだろ。」
「…っ。」
「おい、なんだよその顔は。」
「…お前の事は、親友だと思ってたのに。」
「そうかよ。俺は、お前を殺したくてたまらなかったけどな。何も知らねえくせに、ヘラヘラ笑って友達面しやがって…うざってェんだよ!!」
「玉木さん!!」
「お前は黙ってろボンボンが!!本当はクラスメイトを平気で見殺しにするようなイカレ野郎のくせに、虫も殺さない聖人を気取りやがって…気持ち悪いんだよテメェ!!」
「…ッ!!」
「はぁ、もういいよ。どっちみち俺は死ぬつもりだったんだ。テメェらに負けたのは癪だけどな。…モノクマ。始めてくれ。」
『おやあ?随分と潔いですね!こっちとしては、もっと泣き喚いたり逃げ回ったりして欲しかったんだけど。まあいいや!それでは、今回は『超高校級のサッカー選手』玉木勝利クンのために!!』
「あばよ。クソ野郎共。」
勝利の首に、アームのようなものが取り付けられる。
そして、そのままどこかに引きずられる。
「勝利!!」
『スペシャルなおしおきを用意しましたっ!!』
俺は、勝利の腕を掴んだ。
だが、アームの引きずる速度は思った以上に速く、俺は振り落とされた。
「待っ…!!」
勝利は、そのままどこかに引きずられて、暗闇の中に消えていった。
俺は必死で追いかけた。
転んで地べたに這いつくばっても、それでも行かせまいともがいた。
だが、その抵抗は無意味に等しかった。
『ではでは、おしおきターイム!!』
モノクマの席の前から、赤いスイッチがせり上がってくる。
モノクマはピコピコハンマーを取り出し、ハンマーでスイッチをピコッと押す。
GAME OVER
タマキくんがクロにきまりました。
オシオキをかいしします。
そのまま引きずられた玉木は、何かに首を鎖で繋がれる。
玉木があたりをキョロキョロと見回すと、そこはサッカーの会場のようになっていた。
玉木の首を繋いでいたのは、サッカーのゴールネットだった。
すると画面が切り替わり、タイトルが浮かび上がる。
PK ー10 絶望に沈む星
【超高校級のサッカー選手】玉木勝利 処刑執行
会場に設置されたパネルに、文字が表示される。
10回防げたら帰郷!!
玉木は、自分の置かれている状況を確認すると、目の前にいるユニフォームを着たモノハムを睨んだ。
会場の端には、ベンチに座った監督モノクマがニヤニヤしながら玉木を見ていた。
モノハムは、足を思い切り後ろに振り上げると、ゴールネットめがけて足元のサッカーボールを勢いよく蹴った。
玉木は、ボールを難なく防いだ。
パネルに、9と表示される。
まずは1球目。
モノハムは、次に低めのボールを放った。
玉木は、これも難なく防いだ。
パネルに8と表示される。
これで2球目。
次は、玉木の身長より高いボール。
これも防いだ。
パネルには7と表示される。
3球目。
次は、ネットのスレスレを狙ったボール。
玉木は、持ち前の瞬発力を活かしてこれも防いだ。
鎖で首を繋がれてはいるが、あまり行動範囲は制限されていない。
長年サッカーをやってきた玉木にとって、今やっているのはお遊びに等しかった。
パネルには6と表示される。
4球目。
モノハムは、ニヤリと笑って思い切り足を後ろに振り上げた。
そして、渾身の一撃を放った。
ボールは、高速で回転し、予測不能な軌道を描きながらネットめがけて空中を進んだ。
玉木は、持ち前の動体視力でボールを完全に見切った。
そして、最小限の負荷でボールを防いだ。
それでも、重い一撃を喰らった衝撃で、腕の骨が悲鳴を上げる。
パネルには5と表示される。
これで、5球目を防いだ。
すると、モノハムは、オロオロとうろたえながらベンチのモノクマの方へ走っていった。
モノハムは、泣きながら事情をモノクマに説明していた。
モノハムの話を聞いたモノクマは、ベンチから立ち上がり、玉木の目の前に飛び出してきた。
するとモノクマはニヤリと笑い、バズーカ砲を構えた。
照準を合わせ、バズーカ砲を放つ。
玉木は、バズーカ砲から放たれたサッカーボールを防ごうとする。
その瞬間、モノクマがニヤリと笑い…
ゴッ
重い音が鳴り響いた。
玉木は、一瞬何が起こったのか理解できていなかった。
気がつくと、右腕が消し飛んでいた。
「あ゛ぁああああああああああああぁあああああああ!!!」
あまりの激痛に、玉木は白目を剥きながら叫んだ。
モニターに4と表示される。
これで6球目。
これを、あと4回耐えなければならない。
その瞬間、玉木の顔は絶望に染まった。
だが、モノクマは一切容赦しない。
また一発、サッカーボールの塗装がされた砲丸が放たれる。
今度は、左脚が吹き飛んだ。
「あ゛っ、あ゛ぁあああああああああぁああああ!!」
モニターに3と表示される。
これで7球目。
モノクマは、クスクスと笑いながらまたバズーカ砲を撃った。
今度は左腕。
亜音速の砲丸が、玉木の腕を粉々に砕き、塵に変える。
「あっ…あ、あああっ…!!」
両手と左脚を失った玉木にはもう、大声を上げる元気もなかった。
モニターに2と表示される。
これで8球目。
モノクマがバズーカを構えた、その時だった。
「ぐっ…がぁっ…おい゛、テメ゛ェら゛、聞ごえでるか…!?」
玉木は、大量の出血で意識が朦朧とする中、声を振り絞って叫んだ。
「おでは…デメェらを皆殺しにじようどじだ…おでは、『超高校級の絶望』だ。それ゛は、おでが一番よぐわがってる…げどな、心のどこかでは、こんだゴロジアイ、終わりにじだいど思っでだんだ…!ぞれは、床前や…エガイダも…ぎっど同じだ…!」
モノクマは、バズーカ砲を放った。
玉木の左腕が消し飛んだ。
「ぎっ、ぐぅうっ…!」
四肢を全て失った玉木は、ゴールネットに宙吊りになった。
断面から噴き出た血は下の芝生を緋く染め、おしおきの悲惨さを物語っていた。
モノクマは、ニヤニヤしながらバズーカ砲の照準を合わせる。
モニターに1と表示される。
これで9球目。
あと1球で、おしおきが終わる。
「だがら…!ゴロジアイはデメェらが終わらぜど…!どうぜ、おではここで殺ざでる…だがらデメェだに教えでやる…!こどゴロジアイの黒幕の正体を…!」
モノクマは、最後の球を放った。
「ごのゴロジアイの黒幕はぁあ゛ああぁああ!!」
「ぎっ」
ゴシャッ
鈍い音と共に、玉木の頭が消し飛んだ。
ピーーーーーーーーーーーーーーッ
ゲーム終了を告げるホイッスルが、会場全体に響き渡った。
玉木は、10球全てをその体で受けた。
そこには、鎖で繋がれた胴が、血を垂らしながらぶら下がっていた。
モノクマとモノハムは、それを見てゲラゲラと笑っていた。
モニターに文字が表示される。
チャレンジ失敗!!
表示されたのは、そのたったの9文字だった。
『イヤッホォオオオオオオオオイ!!!エクストリィイイム!!!いやぁ、ボクとした事がうっかりマイクオフにするのを忘れてて、声が丸聞こえになっちゃってたよ!正体バラされるんじゃないかってめっちゃヒヤヒヤしたぁー!!』
『ぴきゃきゃ、殺ちゅのが間に合って良かったでちゅ!あとちょっと遅かったら、この後のゲームが台無ちになってたところでちた!』
「そんな…!玉木さんが…!」
『もうやだ…こんなの、あんまりだよぉ…!』
「…カツにい。」
ジェイムズは、左手で顔を押さえながら泣いていた。
リタは、その場で蹲って泣いた。
アリスは、その場に崩れ落ち、涙を零していた。
「あ…あああ…」
おい…嘘だろ?
勝利が…なんで勝利が死んだ…
アイツは、俺にとって一番の親友だったのに。
…嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
「う゛っ、ぅあ゛ぁあああああぁあああああああああぁああああああああああああぁああああああああああああああ!!!」
モニターに駆け寄り、裁判場の中心で泣き叫んだ。
なんでだよ。
なんでアイツが、あんな目に遭わなきゃいけなかった。
…全部俺のせいだ。
俺が、あの時アイツの心の傷に気付いてやれなかったから。
あの時、気付いてやれていれば。
止めてやれていれば。
信じさせてやれていれば。
…勝利の言う通りだ。
俺が、何もしなかったからみんな死んだ。
勝利を殺したのは、俺だ。
俺の甘さが、アイツを死に追いやったんだ。
「うぁあ゛ぁああああああぁあああああぁああああああああああぁああああああ!!!」
俺のせいだ。
俺のせいだ。
俺のせいだ。
…死んじまえ。
死んじまえ。
死んじまえ。
死んじまえ。
死んじまえ。
「やめて!!!」
ビシッ
「あ。」
左頬に痛みが走る。
…痛い。
俺を叩いたのは、アリスだった。
「このバカちんが!!死んで楽になろうなんてそんなバカげた事、許されると思ってんのか!!サトにいには、ハナちゃんがいるんでしょ!?ハナちゃんに会うために、絶対にみんなでここを出るんでしょ!?なのに、何勝手に死のうとしてんだ!!サトにいが死んで何になるっていうの!?『みんな』の中に自分が含まれてないとでも思ってんのか!!自分で言った事くらい、最後まで責任持てよバカヤロー!!」
「…!」
そうだ。
俺には、まだ帰りを待ってくれている人がいた。
俺を支えてくれる仲間もいる。
それなのに、俺は勝手に諦めて、自分の責任から逃げようとしていた。
「ごめん…俺、サイテーだ…そんな事も忘れてたなんて…」
「ほら!!わかったら立つ!!」
「…うん。」
…あ。
冷静になって、初めて気がついた。
顔に、何かが伝っている。
頭に、変な音が鳴り響く。
…痛い。
痛い、痛い…
これが、生きてるって事なのか。
「サトにい、おデコから血出てるよ。私、優しいからこれ貸してあげる。使いなよ。」
アリスは、ポケットからハンカチを取り出して俺に差し出した。
「…ありがとう。」
「全く、サトにいはホントに困ったさんだね!いきなり床に頭ガンガン叩きつけて、血がボタボタ出ても全然やめないんだもん!ビックリして、つい止めに入っちゃったよ。」
「そうだったのか…」
あの時は、自暴自棄になって完全に思考を止めてたから、あんまり記憶が無いな…
『あーあ、全く!止めないでよアリスサン!今いいとこだったんだから!!』
『ちょうでちゅ!ちぇっかくトチ狂った菊池様を見て、二匹でゲラゲラ笑ってたのに!オイラ達の楽ちみを奪わないでくだちゃい!』
『そのまま出血多量と脳震盪でポックリ逝ってたら面白かったんだけどね!』
「テメェら…!」
『悪趣味すぎて吐き気がします…!』
『それより、アリスサン。兄貴がサッカー野郎に殺されたってのに、随分と余裕だね?』
「…兄さんと過ごした時間が短かったからっていうのもあるのかもしれない。それに、あの火事を計画したのが兄さんだって知った時、思ったの。きっと兄さんは、このコロシアイを終わらせるためにあんな事をしたんだって。それだけじゃない。ナギねえも、カツにいも、このコロシアイを終わらせたいと思って行動したんだ。私は、3人の想いを無駄にはしたくない。だから、みんなで生きてここを出る…!」
『っへー、くっさいくっさい長台詞だね!『絶望』になり損なった兄貴と、『希望』になり損なった妹…オマエラは、兄妹揃って出来損ないだったよね!』
『ぴきゃきゃ、アナタ達は、『超高校級の希望』でも、『超高校級の絶望』でもない…二人合わせて『超高校級の失敗作』だったんでちゅよ!こんな面白い事ありまちゅか!?』
「…失敗作でもいい。完全じゃなくたっていい。それでも私は、私達は…『絶望』になんか負けない。もう、絶対に諦めない!!」
『うぷぷ、よくそんな大口が叩けたもんだよね。ホンット三流政治家の演説くらい心に響くわー。』
『ぴきゃきゃ、学園長!ちょれはちょっといいちゅぎでちゅ!』
『うぷぷ!だって事実じゃん!ま、勝手に死んだヘッポコ内通者とポンコツ失敗作とイカレ殺人鬼の事はもう忘れましょう!オマエラ、ホントよく頑張ったよ!まさか、ボク達でもわからなかった犯人を見つけちゃうなんてさ!オマエラには花マルをあげましょう!』
『ぴきゃきゃ!雑魚の割には頑張ったぢゃないでちゅか!実に天晴れでちゅ、皆様!ご褒美に、またメダルあげちゃいまちゅ!』
「あの、ところで…」
『ん?なあに、カークランドクン?』
「もう、生き残りが4人になってしまいましたが…これでもまだコロシアイを続けろと仰るのですか?それに私達はもう、どんなに動機で揺さぶられても、誰かを殺したりなんてしません。正直、もうコロシアイを続けるのは不可能だと思うのですが…」
『うっぷぷ!だよねー!オマエラ4人がどんなに自分の身に危険が迫っても人一人殺せない小心者だって事は、この3週間を通してよーくわかりました!これ以上コロシアイ合宿生活を続けても、お互いに時間の無駄だよね!そこで、次のゲームの説明をしちゃいまーっす!!』
「次の…ゲーム?」
『そういえばさっき、この後のゲームがどうのこうのって言ってましたよね…僕達に、また何かさせる気ですか?』
『んー、まあ、何かさせるっていうか…させない、って言った方が正しいかな?』
「…何かを、させない?」
『そっ!オマエラはもう、
えっ…!?
なんだその新しいルールは…!
今まで散々コロシアイをさせといて、今更コロシアイをするなだと…!?
「おい、なんだそのルール!!」
『あれ?なあに菊池クン?もしかして、キミ的にはコロシアイを続行したかった?』
「んなワケねえだろ!!気になるのは、その先だよ!!コロシアイをしたらダメなら、何をすればここから出られるんだよ!?」
『うぷぷ、それも説明するから急かさないでよ!オマエラには、ズバリ!ボクの正体について議論してもらいます!!』
「貴方の正体は、嫌嶋隆尋なんでしょう?それで答えは出たではありませんか。」
『そういう事を言ってるんじゃねーよ!!言ったろ?ボクは、オマエラと一緒に合宿してたって。つまり!オマエラのうち誰かが、このゲームを裏で動かしてた黒幕って事だよ!』
『ヂュバリ!皆様には、合宿参加者17人のうち、誰がこのコロチアイの黒幕だったのかについて議論をちていただきまちゅ!』
『それだけじゃないよ!オマエラが明らかにすべき議題は3つ!一つは、この合宿の黒幕は誰か。そして、その目的とは何か。そして!オマエラは果たして、本当に生きてここから出たいのか!この3つについて議論してもらって、その答えによってはオマエラを解放するよ!ただし、間違えたり最後の選択を誤ったりしたら、全員もれなくおしおきだけどね!』
それはいつもと変わらないのか…
『タイムリミットは、きっかり24時間!オイラ達は、アナタ達が知りたい情報を手に入れるために、この島の全てのエリアを開放ちまちゅ!コロチアイ以外の行動は、全く制限ちゃれまちぇん!24時間経ったら、この場所で学級裁判を開きまちゅ!ちょちて、ちゃっき言った3ちゅの議題について、議論ちていただきまちゅ!ちょれまでに、必要な情報はこの島中を探索ちてかき集めてくだちゃいな!』
『うぷぷ、最後の学級裁判、せいぜいがんばってね!それじゃ、まったねー!!』
『最後の裁判で、また会いまちょう!もち正体を当てられたら、ちょの時は生身で登場ちてあげまちゅよ♪ぴきゃきゃ!では、ご機嫌よう!』
モノクマとモノハムは、大量のスロットのメダルを残して去っていった。
「最後の議題は、黒幕探しか…」
「私達17人の中に黒幕が…その話は、本当なんでしょうか…?本当に、私達の中に嫌嶋隆尋が…?」
「信じられないような話だけど…でも、そうとしか考えられないよね?だって、この島の生き残りは、私達しかいないんだもん…」
『本当に、黒幕を見つけるなんて事できるんでしょうか…?3週間もいて、本名以外の手がかりが何も掴めていないのに…』
「弱音を吐いている時間は無い。絶対に全ての真相を明らかにして、みんなでここを出るんだ。」
「そうですね。こんな所で時間を浪費しても、その分は返ってきません。皆さんで、手分けして手がかりを探しましょう!」
『はい…!ここまで来て全滅なんて、嫌です!』
「うん…!絶対に、全部解き明かすんだ…!」
第5章『アンハッピーレクイエム』ー完ー
コロシアイ合宿生活残り4名
「…もう少しだから。…絶対に、ボクが全部終わらせてみせるから。だから、もう少しだけ待ってて…⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。」
To be continued…
っはー、ついに5章が終わった。
あとは最終章を書くだけなりよ。