ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第5章 【微笑みの情炎】後編

【伏木野エカイラ編 後編】

 

「…さて、と。」

ナギサちゃんを殺したアタシは、ガソリンとナギサちゃんの首を持って教会の地上階に上がったわ。

…と、そうだ。

証拠に、ここにマニキュアを置いておきましょ。

勘のいいサトシちゃんなら、きっとアタシのメッセージに気付いてくれるはずよ。

アタシは、カツトシちゃんをしおりで呼びつけたわ。

『…なんだ。エカイラか。どうした?』

「ねえカツトシちゃん。いきなり変な事聞いちゃって悪いけど、ガールフレンドのコハルちゃん、殺されてたんですって?」

『ッ…!お前…なんでそれを…!』

「アタシを誰だと思ってるの?アンタの事なんて、ちょっと調べればわかるわよ。」

『…で?何の用だ。』

「…アンタ、サトシちゃん達を道連れにして死のうと思ってるんじゃナイ?」

『…。』

「図星ね。あのね、アタシにいい考えがあるわ。」

『…え?』

「ぶっちゃけ、アタシもこんなコロシアイ終わらせたいと思ってたのよ。アンタの望み、叶えてあげるわ。」

『そんな都合のいい話、信用できるかよ。』

「アラ?いいのかしら?この機を逃したら、アンタの望みが叶う事はなくなるわよ?仮にアンタが片っ端からサトシちゃん達を殺していったとしても、裁判でバレるのがオチよ。そんなみっともない事になるぐらいなら、アタシと手を組んだ方が賢明なんじゃナイ?」

『…勝機はあるのか?』

「もちろん。アタシの言う通りにすれば、確実にアンタだけが生き残れるわ。ま、全てはアンタの技量にかかってるんだけど。生き残った後は、死ぬなり脱出するなり好きになさい。」

『…お前、なんで俺にそんな提案をするんだ?』

「言ったでしょ?こんなコロシアイ終わらせたいって。アタシ自身、このコロシアイの被害者なのよ。このコロシアイをブチ壊せるなら、手段なんてどうでもいいわ。理由はこれくらいでいいかしら?」

『…ああ。で?何をすれば良い。』

「とりあえず今すぐ教会に来て頂戴。あ、成功する確率を上げたいなら、アンタが持ってる日本刀を持ってくるといいわよ。くれぐれも、教会に行く所を誰にも見られないようにね。」

『…わかった。』

…これで良しっと。

全員を皆殺しにする手段がないカツトシちゃんにとっては、アタシの誘いを断る理由がないものね。

 

 

ー数分後ー

 

カツトシちゃんは、アタシの読み通り教会に来てくれたわ。

「アラ。案外早かったじゃない。来てくれて嬉しいわ。」

「…来いって言われたからな。」

「あら、素直なのね。…誰にも見られてないでしょうね?」

「…多分。ここに来る途中、十分に注意は払ったからな。」

「よろしい。じゃ、早速計画を始めるわね。」

「…計画?」

「ねえカツトシちゃん。効率よくアンタ以外の全員を殺すには、どうするのが一番賢いかしら?」

「…誰かを殺して、学級裁判で勝つ、か?」

「正解。アンタには今から、人を殺してもらうわ。アタシも協力してあげる。」

「お前の共犯になれって事か?」

「正確には、アタシがカツトシちゃんの共犯になるのよ。証拠は隠滅してあげるから、安心なさい。」

「…。」

「じゃあまず、計画の第一段階ね。カツトシちゃん。服貸して。」

「…え?」

「アンタの服を貸してって言ってるの。靴下と靴もね。全員を殺したいなら、言う通りにして頂戴。」

「…わかった。」

アタシはカツトシちゃんの服を、カツトシちゃんはアタシの服を着たわ。

そして、アタシは十字架をカツトシちゃんに渡して、カツトシちゃんはアタシに日本刀を渡したわ。

「よいしょっと。ちょっとキツいわね。」

「…これに何の意味があるんだ?」

「今からやる計画に必要なのよ。アンタには、アタシの言う通りに殺人事件を起こしてもらうわ。」

「…で、エカイラ。俺は一体誰を殺せばいい?俺とお前が協力したところで、アリスには論が、リタにはジェイムズが一緒にいる時点で完全犯罪なんてできねェだろ。」

「…簡単な事よ。こうすればいいの。」

アタシは、持っていたガソリンの蓋を開けた。

 

そしてそれを、自分の頭にぶっかけた。

 

「…!!?はっ…!?」

「ウフフフ。あーあ。今日が人生最後の日になるなんてね。こんな事ならもっと楽しんでおけば良かったわ。」

「お前、まさか…!」

「やっと気付いた?そうよ。アンタに殺して貰うのは、このアタシ自身よ。アンタには、アタシを焼き殺してもらうわ。」

「…お前、最初からこうする気で…!」

「言ったでしょ?コロシアイを終わらせるためなら、手段は選ばないって。これしか方法が無いわ。さ、早くそこに置いてある宝箱にお入り。アタシの計算が正しければ、建物を燃やす炎と煙で遮られて、監視カメラに映像が映らないはずよ。」

「その後は、どうすればいい?」

「アタシが完全に燃えたのを確認したら、外に出て炎で顔を焼き潰すのよ。手当ての道具なら、箱の中に入ってるわ。」

「…わかった。」

「あら?案外素直に受け入れるのね。顔を焼くなんて、相当痛いわよ?」

「…俺は元々死ぬつもりだったんだ。今更顔を焼くのなんて怖くねェよ。それで全員を道連れにできるならやってやる。」

「ウフフ、いい心がけだこと。さ、時間がないわ。箱の中に入ったらアタシの合図でそのライターを投げて、素早く蓋を閉じるのよ。」

「…ああ。」

カツトシちゃんは、すぐに箱の中を確認したわ。

「ッ!!?なんだこれ!?」

「ああ、ナギサちゃんの首よ。さっき殺してきたの。ナギサちゃんも、黒幕に加担した裏切り者だからね。」

「なんで俺が入る箱の中に…」

「死体アナウンスが流れるようにするためには、3人以上が死体を見ないといけないでしょ?だからその中に入れておいたのよ。」

「…。」

カツトシちゃんは、引きながらも黙って箱の中に入ったわ。

…いい風向きね。これなら、監視カメラには映らなさそう。

「今よ!!」

「ッ!!」

カツトシちゃんは、アタシの合図でライターを投げた。

アタシが浴びたガソリンに、ライターの火が引火する。

一瞬で身体中が炎に包まれて、全身の皮を剥ぎ取られるような痛みに襲われた。

汗は一瞬で蒸発し、熱は肌を抉り、血が止めどなく噴き出す。

肺が熱気でやられて、突き刺すような痛みで息をする事すら苦痛に感じられた。

 

「ッーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

でも、ここで大声を上げるわけにはいかない。

アタシの計画を成功させるためには、アタシはカツトシちゃんになりきらなきゃいけない。

…大丈夫よ。

こんなの、全然…平気よ…!

アリスはきっと、アタシには想像できないような辛くて痛い思いをしてきたのよ。

死ぬよりつらい実験をさせられて、助けも呼べなくて、ずっと一人で…

あの子の痛みに比べれば、炎で焼かれるくらい、苦しくもなんともないわ。

このくらい、耐えてみせるわ…!

 

 

 

全身が焼け、もうどこが痛いのか、顔を伝っているのが血なのか汗なのかすらわからない。

意識が朦朧としてきた。

…これが、死ぬって事なのか。

いざ死ぬってなると、後から色々後悔とか、思い出とか湧いてくるもんなんだな。

…これが走馬灯ってヤツなのかなぁ。

あーあ。今思えば、クソみたいな人生だったなぁ。

生まれてすぐにクソみてェな奴らに売り飛ばされて、わけわかんねェままクソみてェな奴らに買われて、クソみてェな奴らにゴミみてェに扱われて…

何もかもに絶望した俺は、生きる意味すら無いと思っていた。

でも、アリスが…俺の、たった一人の妹だけが唯一の救いだった。

俺は、アリスがいたから生きられた。

結局、最後までアイツに兄貴だって打ち明ける事ができなかったけど、アイツと一緒にいた3年間はすげェ楽しかった。

 

アリス、お前を置いて逝く俺を許してくれとは言わない。

でも、最期にせめて謝らせてくれ。

新しい服や美味い食い物を買ってやったり、一緒に遊んでやったり…

兄貴らしい事を一つもしてやれなくて、ごめんな。

ずっと痛くて苦しかったろうに…助けてやれなくてごめんな。

…人を殺す事しか能の無い、こんなダメな兄貴でごめんな。

 

でも、黙って死ぬわけにはいかない。

アリスのためにも、どうせ死ぬなら最期まで足掻いてやる。

どうか、真実を暴いて、こんなクソみたいなマネをした奴に一矢報いてくれ。

俺にできる事は、このコロシアイを終わらせて、お前を自由にしてやる事だけ…

…それが、俺が今お前に贈る、『希望』っつー最初で最期のプレゼントだ。

 

今まで、こんな俺に生きる意味を与えてくれてありがとう。

最後まで生き延びて、今度こそ誰よりも幸せに、自由に生きろ。

 

じゃあな、アリス。

 

 

 

 

 

俺の、世界で一番かわいい妹…

 

 

 

意識がぼやけて、遠のいていく。

もう、痛みも熱さも、何も感じない。

 

そして、意識が途切れた。

 

 

 

「うぷぷぷぷ…あーあ、死んじゃったよ。『超高校級の死神』も、案外最期はあっけないもんだねぇ。結局妹に何もしてやれないまま、自分の自己満足でおっ死ぬなんて、バッカみたいwww…ま、そんなバカに一杯食わされたボクも、ドジだったんだけどさ!『絶望』になり損なった兄貴と、『希望』になり損なった妹か。双子の兄妹揃ってどっちも出来損ないとか、親の顔が見てみたいね。…あ、もう親も死んでたか。」

 

 

 

 

 


 

【玉木勝利編】

 

俺には生まれつき、心というものがないのかもしれない。

俺は、人生において、何かに夢中になれた事が一度もなかった。

サッカーも、たまたま才能があったから初めて、それが自分を熱中させてくれるものだと自分に言い聞かせて満足しようとした。

空気を読む事はそれなりに得意だったから、サッカーが大好きで、みんなに頼られるリーダーを『演じた』。

…でも、心から俺の心を満たす物は何もなかった。

どんなに努力しても、不思議なくらい達成感というものが全く湧かない。

何をしても、喜ぶ事も悲しむ事もできない。

心の中にあるのは、ただの『無』だった。

だが、そんな俺の無味乾燥な日々は、ある日突然ガラリと変わった。

 

俺が中学に上がってしばらくしたある日、俺の学校に転入生が来た。

小美だった。

名家のお嬢様で、浮世離れした雰囲気の小美を見て、俺は『変わった女だ』と思った。

正直、最初は苦手だった。

顔が良いというだけで周りにちやほやされて、調子に乗っているバカな女だと思った。

コイツも、今までの奴らとなんら変わらないんだろう。そう思っていた。

 

ある日の事、俺が練習のノルマをこなしている時だった。

 

「何をしていらっしゃるんですの?」

 

小美が、俺に声をかけてきた。

俺は、その質問に呆気に取られた。

「…見てわからないのか?」

すると小美は、顔を真っ赤にして答えた。

「も、申し訳ございません。私、あまり外に出た事がないので…庶民の方の遊びという物をあまり知らなくて…」

正直、この時は変な奴だ、と呆れていた。

「…あの、ここで見ていてもいいですか?」

「…別に構わないけど。」

俺が練習している様子を、小美は近くで見ていた。

小美は、自分が練習してるわけじゃないのに、目をキラキラと輝かせながら楽しそうに見ていた。

この時、俺は気づいた。

 

…そうか。この目だ。

俺に足りなかったもの。

俺が、欲しいと思っていたもの。

俺は、俺に無いものを持ったアイツに、いつの間にか惹かれていた。

「…なあ。この町についてよく知りたいって言ってたよな。今度、町回りながら紹介してやろうか?」

「よろしいんですの!?」

「まあ、一応クラスメイトだしな。」

週末、俺は小美と一緒に町を回った。

俺にとっては、見慣れた風景だったが、小美は子供のようにはしゃいでいた。

正直、俺もとても楽しかった。

俺は、小美の事をもっと知りたい。

その目を、もっと見せてほしい。

いつの間にか、俺は小美に夢中になっていった。

でも、平和な日々は永くは続かなかった。

 

俺には、太郎という小学生の頃の親友がいた。

太郎は、抜けた所があるけどお調子者で、みんなの人気者だった。

親友というか、向こうが勝手にそう思っているだけだが、小学生の頃はよく一緒に遊んだりしていた。

中学校は別々になったけど、今でも電話とか手紙とかでやりとりしている。

ある日の晩、太郎が電話をかけてきた。

学校が休みになったから、俺の家に遊びに行きたいという内容の電話だった。

その日はすでに小美と約束があったので断ろうと思ったが、小美が太郎に会いたいと言うので、仕方なく駅に出迎える事にした。

そしてその日、太郎と小美との3人で一緒に遊んだ。

小美は、俺と一緒にいた時より楽しそうにしていた。

今思えば、この時からだったのかもしれない。

俺の中の歯車が狂い始めたのは。

 

ある日、俺は太郎にとんでもない事を聞かされた。

それは、小美の事が好きになったから、仲を取り持ってほしいという頼みだった。

俺は、何年かぶりに本気で『怒り』という感情を抱いた。

いや、それだけじゃない…嫉妬や憎悪、殺意…そういった悪意が、俺の中で渦巻いていた。

小美はもう、俺のものだ。誰にも渡してたまるものか。

そして俺は、最悪の行動に出た。

 

俺はムシャクシャして、太郎の弱みをネット上にばら撒いてやった。

そしたら案の定、太郎は部活の先輩にいじめられた。

太郎は精神的に衰弱していき、ほとんど俺に電話や手紙を寄越さなくなった。

だがある日、太郎が俺に電話をかけてきた。

それは、いじめられているから相談に乗ってほしいという内容だった。

俺は、適当に相談に乗って、適当にアドバイスした。

バカなアイツは、俺がいじめの元凶だとは全く疑わなかった。

そして次の日の晩、また俺に電話をかけてきた。

 

『今までありがとう。』

 

それが、アイツが俺に遺した最後の言葉だった。

 

次の日の朝、太郎は家で首を吊って死んでいた。

小美は、親友の死を悲しみ、泣いていた。

だが俺は、親友が死んだというのに、とても満たされた気分だった。

俺は、小美の泣いた顔に魅了されていた。

 

それからしばらくして、俺は小美と付き合う事になった。

俺にとって、小美は全てだった。

俺を初めて満たしてくれた奴。

俺は、小美のために生きたいと思った。

 

 

 

だが、現実は残酷だ。

小美は、俺が合宿をやっている間に、どこの馬の骨かもわからない奴に殺されていた。

俺は、生きる意味を失った。

小美がいなくなった今、仲間も、思い出も、未来も、全てが無意味だ。

もう生きる事に疲れた。

全てを終わりにしよう。

だが、ただで死ぬのも嫌だ。

…論。アイツは、俺の気持ちを全く考えずに、ヘラヘラ笑って話してきやがった。

アイツがあんな顔をするから、俺は仕方なく話を合わせるしかなかった。

それで勝手に勘違いして、親友だって言ってきやがって。

…殺したい。

俺にとって、お前は親友でもなんでもない。

ただのクラスメイトだ。

…論だけじゃない。

アリスも、ジェイムズも、リタも、床前も、エカイラも、全員殺したい。

何の罪もない小美が殺されて、『超高校級の絶望』のアイツらがのうのうと生き延びるなんて、あっていいわけがない。

…殺す。

アイツらを全員道連れにして、俺も死ぬ。

待ってろ小美。

今、そっちに行くから。

 

エカイラから電話がかかってきた。

「…なんだ。エカイラか。どうした?」

『ねえカツトシちゃん。いきなり変な事聞いちゃって悪いけど、ガールフレンドのコハルちゃん、殺されてたんですって?』

「ッ…!お前…なんでそれを…!」

『アタシを誰だと思ってるの?アンタの事なんて、ちょっと調べればわかるわよ。』

「…で?何の用だ。」

『…アンタ、サトシちゃん達を道連れにして死のうと思ってるんじゃナイ?』

「…。」

『図星ね。あのね、アタシにいい考えがあるわ。』

「…え?」

『ぶっちゃけ、アタシもこんなコロシアイ終わらせたいと思ってたのよ。アンタの望み、叶えてあげるわ。』

「そんな都合のいい話、信用できるかよ。」

『アラ?いいのかしら?この機を逃したら、アンタの望みが叶う事はなくなるわよ?仮にアンタが片っ端からサトシちゃん達を殺していったとしても、裁判でバレるのがオチよ。そんなみっともない事になるぐらいなら、アタシと手を組んだ方が賢明なんじゃナイ?』

「…勝機はあるのか?」

『もちろん。アタシの言う通りにすれば、確実にアンタだけが生き残れるわ。ま、全てはアンタの技量にかかってるんだけど。生き残った後は、死ぬなり脱出するなり好きになさい。』

「…お前、なんで俺にそんな提案をするんだ?」

『言ったでしょ?こんなコロシアイ終わらせたいって。アタシ自身、このコロシアイの被害者なのよ。このコロシアイをブチ壊せるなら、手段なんてどうでもいいわ。理由はこれくらいでいいかしら?』

「…ああ。で?何をすれば良い。」

『とりあえず今すぐ教会に来て頂戴。あ、成功する確率を上げたいなら、アンタが持ってる日本刀を持ってくるといいわよ。くれぐれも、教会に行く所を誰にも見られないようにね。』

「…わかった。」

コイツの事は、全く信用できない。

でも、それしか方法が無いなら、それに賭けるしかない。

失敗したところで、俺はどうなってもいい。

俺は、日本刀を持って、教会に向かった。

 

 

ー教会ー

 

教会には、エカイラが待機していた。

「アラ。案外早かったじゃない。来てくれて嬉しいわ。」

「…来いって言われたからな。」

「あら、素直なのね。…誰にも見られてないでしょうね?」

「…多分。ここに来る途中、十分に注意は払ったからな。」

「よろしい。じゃ、早速計画を始めるわね。」

「…計画?」

「ねえカツトシちゃん。効率よくアンタ以外の全員を殺すには、どうするのが一番賢いかしら?」

「…誰かを殺して、学級裁判で勝つ、か?」

「正解。アンタには今から、人を殺してもらうわ。アタシも協力してあげる。」

「お前の共犯になれって事か?」

「正確には、アタシがカツトシちゃんの共犯になるのよ。証拠は隠滅してあげるから、安心なさい。」

「…。」

「じゃあまず、計画の第一段階ね。カツトシちゃん。服貸して。」

「…え?」

「アンタの服を貸してって言ってるの。靴下と靴もね。全員を殺したいなら、言う通りにして頂戴。」

エカイラは俺の服を、俺はエカイラの服を着た。

「…わかった。」

そして、エカイラは十字架を俺に渡して、俺はエカイラに日本刀を渡した。

「よいしょっと。ちょっとキツいわね。」

「…これに何の意味があるんだ?」

「今からやる計画に必要なのよ。アンタには、アタシの言う通りに殺人事件を起こしてもらうわ。」

「…で、エカイラ。俺は一体誰を殺せばいい?俺とお前が協力したところで、アリスには論が、リタにはジェイムズが一緒にいる時点で完全犯罪なんてできねェだろ。」

「…簡単な事よ。こうすればいいの。」

エカイラは、持っていたガソリンの蓋を開けた。

 

そしてそれを、自分の頭にぶっかけた。

 

「…!!?はっ…!?」

「ウフフフ。あーあ。今日が人生最後の日になるなんてね。こんな事ならもっと楽しんでおけば良かったわ。」

「お前、まさか…!」

「やっと気付いた?そうよ。アンタに殺して貰うのは、このアタシ自身よ。アンタには、アタシを焼き殺してもらうわ。」

「…お前、最初からこうする気で…!」

「言ったでしょ?コロシアイを終わらせるためなら、手段は選ばないって。これしか方法が無いわ。さ、早くそこに置いてある宝箱にお入り。アタシの計算が正しければ、建物を燃やす炎と煙で遮られて、監視カメラに映像が映らないはずよ。」

「その後は、どうすればいい?」

「アタシが完全に燃えたのを確認したら、外に出て炎で顔を焼き潰すのよ。手当ての道具なら、箱の中に入ってるわ。」

「…わかった。」

「あら?案外素直に受け入れるのね。顔を焼くなんて、相当痛いわよ?」

「…俺は元々死ぬつもりだったんだ。今更顔を焼くのなんて怖くねェよ。それで全員を道連れにできるならやってやる。」

「ウフフ、いい心がけだこと。さ、時間がないわ。箱の中に入ったらアタシの合図でそのライターを投げて、素早く蓋を閉じるのよ。」

「…ああ。」

俺は、すぐに箱の中を確認した。

箱の中には、地図と救急箱、そしてどういうわけか床前の首が入っていた。

「ッ!!?なんだこれ!?」

「ああ、ナギサちゃんの首よ。さっき殺してきたの。ナギサちゃんも、黒幕に加担した裏切り者だからね。」

「なんで俺が入る箱の中に…」

「死体アナウンスが流れるようにするためには、3人以上が死体を見ないといけないでしょ?だからその中に入れておいたのよ。」

「…。」

俺は、箱の中に入った。

「今よ!!」

「ッ!!」

俺は、エカイラの合図でエカイラ目掛けて十字架のライターを投げ、急いで宝箱の蓋を閉めた。

ライターの火がエカイラに引火する。

エカイラは、炎を上げながら悶え苦しんでいた。

俺は、宝箱の中から、エカイラと教会が燃える様子を見ていた。

宝箱は、断熱と防火を兼ねた素材でできているらしく、俺は炎の中でも焼ける事はなかった。

そして、エカイラはついに事切れた。

その場に倒れ、ケシズミになった。

俺は、それを確認すると、救急箱を持って宝箱から出た。

「ッ!!?」

宝箱の外は、炎から発せられる灼熱で、今にも焼かれそうだった。

肉が焦げたいやな匂いが教会中に立ち込め、顔に脂が付いて不快な感じがした。

「…。」

俺は、ケシズミになったエカイラの足を踏み潰した。

足は、踏んだだけで簡単に崩れた。

これで、身長を誤魔化せるはずだ。

…あとは。

 

俺は、炎の中に顔と両手を突っ込んだ。

「ッーーーーーーーーーーー!!!」

炎の熱が一瞬で顔中を襲い、顔は融けて爛れた。

顔中を、灼かれる痛みが襲う。

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

 

 

あまりの痛みに、俺は声を上げる事すらままならなかった。

 

「ぎっ…ぐ、うぅう…!」

 

俺は、爛れた両手で救急箱の中の薬を顔と両手に塗りたくり、包帯を巻いた。

薬のおかげで、少し痛みがひいた。

俺は、そのまま教会の外に出た。

「ぐ…」

「エカイラ!?おい、中で何があった!?早く治療しねえと…」

…計画通り。

俺は今から、俺をやめる。

俺は、最後まで『伏木野エカイラ』を演じ切るんだ。

 

 

 


 

俺は、ゴールネットから鎖で吊るされていた。

目の前には、かつて俺の対戦相手だったチームのユニフォームを着たモノハムがいた。

…そうか。

俺は負けたのか。

俺は学級裁判で菊池に負けて、今はおしおきを受けているんだ。

結局、俺は最後の最後までエカイラ達に嵌められた。

あの事件は、最初から俺の事件じゃなかった。

被害者の床前とエカイラこそが、今回の事件の被害者であり、犯人だった。

…あーあ、アイツらを道連れにしてやりたかったんだがな。

でも、どっちみち死ぬ運命だったんだ。

おしおきを受け入れよう。

 

 

会場に設置されたパネルに、文字が表示される。

 

10回防げたら帰郷!!

 

モノハムは、足を思い切り後ろに振り上げると、ゴールネットめがけて足元のサッカーボールを勢いよく蹴った。

自然と、身体が動いていた。

俺は、ボールを難なく防いだ。

パネルに、9と表示される。

まずは1球目。

モノハムは、次に低めのボールを放った。

俺は、これも難なく防いだ。

パネルに8と表示される。

これで2球目。

次は、俺の身長より高いボール。

これも防いだ。

パネルには7と表示される。

3球目。

次は、ネットのスレスレを狙ったボール。

俺は、これも防いだ。

鎖で首を繋がれてはいるが、あまり行動範囲は制限されていない。

長年サッカーをやってきた俺にとって、今やっているのはお遊びに等しかった。

…楽しくてやってたわけじゃないけど、一応サッカーやってて良かったのかな?

パネルには6と表示される。

4球目。

モノハムは、ニヤリと笑って思い切り足を後ろに振り上げた。

そして、渾身の一撃を放った。

ボールは、高速で回転し、予測不能な軌道を描きながらネットめがけて空中を進んだ。

俺は、ボールを完全に見切った。

今まで、この程度の変化球、いくらでも防いできた。

そして、最小限の負荷でボールを防いだ。

それでも、重い一撃を喰らった衝撃で、腕の骨が悲鳴を上げる。

パネルには5と表示される。

これで、5球目を防いだ。

すると、モノハムは、オロオロとうろたえながらベンチのモノクマの方へ走っていった。

モノハムは、泣きながら事情をモノクマに説明していた。

モノハムの話を聞いたモノクマは、ベンチから立ち上がり、俺の目の前に飛び出してきた。

するとモノクマはニヤリと笑い、バズーカ砲を構えた。

照準を合わせ、バズーカ砲を放つ。

俺は、バズーカ砲から放たれたサッカーボールを防ごうとする。

その瞬間、モノクマがニヤリと笑い…

 

 

 

ゴッ

 

重い音が鳴り響いた。

俺は、一瞬何が起こったのか理解できていなかった。

気がつくと、右腕が消し飛んでいた。

 

「あ゛ぁああああああああああああぁあああああああ!!!」

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

モニターに4と表示される。

これで6球目。

これを、あと4回耐えなければならない。

その瞬間、俺は絶望に堕ちた。

…無理だ。こんなの、防げるわけがない。

だが、モノクマは一切容赦しない。

また一発、サッカーボールの塗装がされた砲丸が放たれる。

今度は、左脚が吹き飛んだ。

「あ゛っ、あ゛ぁあああああああああぁああああ!!」

モニターに3と表示される。

これで7球目。

モノクマは、クスクスと笑いながらまたバズーカ砲を撃った。

今度は左腕。

亜音速の砲丸が、俺の腕を粉々に砕き、塵に変える。

「あっ…あ、あああっ…!!」

両手と左脚を失った俺にはもう、大声を上げる元気もなかった。

モニターに2と表示される。

これで8球目。

モノクマがバズーカを構えた、その時だった。

 

「ぐっ…がぁっ…おい゛、テメ゛ェら゛、聞ごえでるか…!?」

 

俺は、大量の出血で意識が朦朧とする中、声を振り絞って叫んだ。

「おでは…デメェらを皆殺しにじようどじだ…おでは、『超高校級の絶望』だ。それ゛は、おでが一番よぐわがってる…げどな、心のどこかでは、こんだゴロジアイ、終わりにじだいど思っでだんだ…!ぞれは、床前や…エガイダも…ぎっど同じだ…!」

モノクマは、バズーカ砲を放った。

左腕が消し飛んだ。

「ぎっ、ぐぅうっ…!」

四肢を全て失った俺は、ゴールネットに宙吊りになった。

断面から噴き出た血は下の芝生を緋く染め、おしおきの悲惨さを物語っていた。

モノクマは、ニヤニヤしながらバズーカ砲の照準を合わせる。

モニターに1と表示される。

これで9球目。

あと1球で、おしおきが終わる。

 

「だがら…!ゴロジアイはデメェらが終わらぜど…!どうぜ、おではここで殺ざでる…だがらデメェだに教えでやる…!こどゴロジアイの黒幕の正体を…!」

 

モノクマは、最後の球を放った。

 

 

 

「ごのゴロジアイの黒幕はぁあ゛ああぁああ!!」

 

 

 

 

 

「ぎっ」

 

ゴシャッ

 

 

 

 

「うぷぷ、あーあ。死んじゃったよ。オマエ、結局何がしたかったワケ?特に一貫してやりたい事もないくせに周りを巻き込もうとするからこうなるんだよ。加害者が被害者に嵌められて一人寂しく死ぬなんて…こんなに滑稽な事って無いよね!」

 

「ねえ、みんな。コイツらの共通点、何かわかるかな?くだらない情に流されて、『超高校級の絶望』になり損なった愚か者達だよ。ホント、死んで当然のドクズ達ばっかりだよね!」




【論リゾこぼれ話】

さーてと、おしおき解説いっきまーす!
今回のクロは、まさかの玉木クンでした!
今回は、彼の才能にちなんだおしおきにしてみました。
実は、玉木クンが小美ちゃんに見せていた練習というのが、PKの練習だったんですよ。
あのおしおきは、恋人に惹かれた日の様子を再現しているわけです。
しかし、当時のようにカッコよく技を決める玉木クンの姿はどこにもなく、大砲で四肢と頭を吹っ飛ばされるという無惨な最期を迎えました。
実は、これは玉木クンの心象の変化を表現しています。
小美ちゃんに出会った当時は精神的に満たされていましたが、最期は全てを失った事で心が壊れてしまいました。その対比を、身体をボロボロにされるというおしおきで表現してみました。
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