コロシアイ合宿生活3日目。
俺は、7時前に目を覚ました。
クソガキや半分色違いのぬいぐるみに起こされる事なく、心地の良い朝を迎えた。
だが、快適な朝の時間も、束の間の幸福だった。
『皆様、おはようごぢゃいまちゅ!!7時でちゅ!!起床のお時間でちゅ!!今ちゅぐ全員起きてくだちゃい!!』
日替わりでローテーションするな。鬱陶しい。
俺はハムスターの気色悪い声のせいで憂鬱な気分のまま身支度を終えた。
散歩をして暇を潰した後、レストランに向かった。
レストランには、すでに近藤、玉木、速瀬がいた。
「おう、菊池!」
「おや、貴方でしたか。」
「おっ!菊池っち珍しく早いじゃん!!でもまだ朝ご飯の用意ができてないから、ジュースでも飲んで待っててよ。」
「俺も何か手伝おうか?」
「ダメ!!ウチにはウチのこだわりがあんの!!手出しは許さないよ!!」
「ああ、そう。」
俺は野菜ジュースを飲みながら近藤が朝食を作り終えるのを待った。
しばらく待っていると、郷間、ジェイムズ、床前、猫西の順にレストランに来た。
「おう、お前もう来てたのか、論!!」
「珍しくお早いですね、菊池さん。」
「…あ、菊池さん…おはようございます…」
「おはよー、みんな!ラッキー…菊池君の隣に座るチャンス…!」
次に射場山、小川、織田、森万が来た。
「あれ?先輩?今日は早いっスね。」
「むむっ!?見た事ないメンツでありますぞ!!」
「フッ、ホテルに貴様の気配を感じないと思ったら…もう着いていたのか。」
最後にリタ、神城、狗上、アリスが来た。
「ふわぁ…僕まだ眠いですぅ…」
「ふははは!!おいスイーツ、今日の朝飯も期待してるぞ!!」
「おまたセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ!!早くご飯食べよー!!」
各々が朝食をとった。
「おっ、美味えなこれ!!」
「…お魚♡」
「どんどん食べてね!!」
やはり、今日も狗上は近藤の料理を食べなかった。
「…あんた、いつまでそうやって意地張ってるつもり?…体調崩して死にたいわけ?」
珍しく、射場山が発言した。
「うるせぇ。俺の勝手だろ。」
「…ちゃんと食べないなら、レストランから出てってくれる?食欲失せる。」
「…チッ。」
狗上は、一人でレストランから出て行った。
「ねえ、射場山っち。さすがに言い過ぎじゃない?ウチだって、狗上っちがご飯食べてくれないのは嫌だけどさ…」
「…私、食事のありがたみがわからない奴嫌いだから。」
「まあそうだけど…」
…射場山って、無口だし言動が冷たいからわかりにくかったけど、意外と熱血っぽいとこあるんだな。
レストラン内が重い空気になる中、アリスが手を挙げて発言した。
「ねえ、みんな!あーちゃんからテーアン!!後でさ、みんなで海行かない?」
「…海か。いいね!」
「たまには、こういう楽しみも必要っスよね〜。」
「確か、ビーチの更衣室に水着があった気が…」
「よっしゃ!!今日は思いっきり遊ぶぞ!!」
全員で海に行く事が決まった。
食事が終わった後は自由時間となった。
海に行くまでにはまだ時間があったので、まだ話をしてない奴と話す事にした。
「…なあ、織田。この後、一緒に話さないか?」
「吾輩は、美しいレディとしか話したくないであります。」
「美少女フィギュアあるよ。」
「話をしましょう!!とりあえず、吾輩の部屋まで来てください!!」
チョロいな。
『超高校級の漫画家』の個室
「…うへぇ。」
個室の中には、美少女フィギュアが山ほど置いてあった。
ほとんどの家具や壁には、アニメキャラの美少女の絵かグラドルの写真で埋め尽くされていた。
机の上には漫画を書く上で必要な道具がそろっており、本棚には漫画が並べてあった。
「いかがでしょう!?吾輩の聖地は!!」
…性地の間違いだろ。なんだこの煩悩剥き出しの気持ち悪い部屋は。
「…いいんじゃないか?個性的で。」
「むむっ!?わかっていただけたでありますか!?」
「ま、まあ…」
「そういえば、フィギュアはどこにあるんです!?同志よ!!」
勝手に同志扱いすんな。
「そうだったな。ほらよ。」
「こ、ここここれは…!!『魔法少女 窓から☆マギカ』の激レアフィギュアではありませぬか!!ど、どこでこれを…!?」
「ガチャでゲットしたんだ。欲しいならやるよ。」
「あっ、有り難き幸せ…!!」
織田は、フィギュアを抱きしめていた。
「な、なあ…俺は、お前と話したくてここにいるんだが。」
「左様でありました!!菊池氏、吾輩に聞きたい事があれば、なんでも言ってくだされ!!」
「ええと…じゃあ聞くが、お前はなんで『超高校級の漫画家』になったんだ?」
「それは、『超高校級の同人作家』に影響を受けたからであります!!彼の描く同人誌に強く惹かれ、吾輩も作品を描いて、認められる人間になりたいと思ったのであります!!…そうすれば、美しいレディも振り向いてくれるかもしれないでありますし…ぐへへ…」
「脱線するな。」
「…ゲフンゲフン、失敬。それで、漫画を描き始めたのであります。最初は、どの出版社に持ち込んでも相手にされませんでしたが、ある日突然思い付いて一気に描きあげた読み切りが、大手出版社から高い評価を得まして…それから、その出版社での連載が決まったのであります!!そして、吾輩は『超高校級の漫画家』として希望ヶ峰学園にスカウトされたのであります!!尊敬する先輩と同じ高校に通えるなんて、夢のようでした!…これが、吾輩の過去であります。」
「なるほどな…じゃあ、なんで合宿に参加させられてるのか心当たりは?」
「むむむ…申し訳ございませぬ、全くありませぬ。ただ、入学式に参加しようとしたら、気がついたら観覧車の中で寝ていた事しか…」
「ここに来た時の経緯は大体みんな同じか。…お前、趣味とか特技とかあるか?好きな物もあれば教えてくれ。」
「もちろん、漫画であります!!読むのも描くのも、好きでありますし、得意であります!!…好きなものは、美しいレディであります。…ぐへへ。」
気持ち悪っ
「へえ。お前、ここから出たらやりたい事とかあるのか?」
「…菊池氏、それは死亡フラグであります。」
「じゃあお前は、自分が夢を話したところで死ぬと思ってるのか?」
「ぐぬぬ…死にたくないであります。」
「じゃあ話したっていいだろ。…何がしたい?」
「…ムフフ、ここから出たら、アニメと漫画をレンタルしまくって、美しいレディをナンパしまくるであります!!」
やめとけ。どうせ不審者扱いされて通報されるのがオチだ。
「へえ。」
「…菊池氏は、さっきから吾輩に喋らせてばっかりであります!!もっと話しませぬか!!例えば、女性陣の中では誰が気になってるとか…!!」
「変態トークに俺を巻き込むな。…別に、誰が好きとか無えよ。」
「左様でありますか。ちなみに、吾輩の最推しは猫西氏であります!APP18以上はあるあの美貌…これだけは、他の女性陣は勝てませぬな!!…ただ、アリス氏や近藤氏のロリ体系や神城氏の爆乳も捨てがたいであります!アンカーソン氏や床前氏の隠れ巨乳も尊いですな!」
マジかよ。コイツ最低だな。
こんなの、女子に聞かれたら殺されるぞ。
…そろそろ引き上げないと、コイツの事が嫌いになりそうだ。
「…じゃあ、俺はそろそろ行くわ。ありがとな。色々話してくれて。」
「えっ、もう行くのでありますか!?まだまだ女性陣の魅力を語り足りないであります…」
「また今度な。」
ドアを閉めた。
《織田兼太郎の好感度が上がった》
…アイツが、あんなに変態だと思わなかった。
そうだ、口直しにジェイムズの所にでも行くか。
「なあ、ジェイムズ。」
「おや、菊池さん。どうかされましたか?」
「ちょっと、一緒に話さないか?」
「ええ、勿論!私で良ければ、是非!…そうだ、私の部屋にいらしてください。そこでお話しましょう?」
「ああ、そのつもりだ。」
俺は、ジェイムズの部屋に向かった。
『超高校級の大学教授』の個室
「ここが私の部屋です。」
「…すごいな。」
扉側とバルコニーのある窓側以外の壁が一面本棚になっており、本棚は全てありとあらゆる学術書で埋め尽くされていた。数学や物理学から、哲学や宗教学まで、ほぼ全ての学問のジャンルが網羅されており、書かれている言語も日本語や英語、フランス語や中国語など様々だ。筆記用具や家具は全て超高級ブランドで、全て左利き専用になっている。部屋の説明書きは、全て英語で書かれている。
「この部屋、とても配慮が行き届いていると思いませんか?私、ここに住みたいくらいです。…少し部屋が狭いのが難点ですが。」
…これで狭いって、どんな豪邸に住んでたんだよお前は。
「それで菊池さん、お話と云うのは?」
「そうだったな。…使うかどうかわからんが…はい、これ。」
俺はジェイムズに花札を渡した。
「え?これを、私に?本当に頂いても宜しいんですか?」
「ああ。受け取ってくれ。」
ジェイムズは花札を受け取ると、目を輝かせながら言った。
「ありがとうございます!!…これが日本のカードゲーム…花札…文献で読んだ事はありますが、実物を見るのは初めてで…早速、遊んでみたいのですが…お相手、お願いできますか!?」
「あ、いや…俺はちょっと…」
「そうですか…では、他の方に聞いてみますね!」
ジェイムズは、本当に純粋な奴だ。
…織田も少しは見習って欲しいものだ。
「なあ、ジェイムズ。いくつか聞いていいか?」
「ええ、なんでも聞いてください。」
「じゃあ聞くが、お前がここに来るまでの過去を教えてくれるか?」
「はい。…私は幼い頃から学問が好きでしたので、毎日学術書に触れていたら、学校の勉強では足りなくなってしまいました。自分の知識欲を満たすために進級を繰り返していたら、大学を卒業し、博士号を取ってしまいまして。ですから、今度は人に教える事で、より学問を深く理解したいと思いました。そして試験に合格し、晴れて大学教授になりました。私が14歳になってから暫くして、日本の希望ヶ峰学園から『超高校級の大学教授』としてスカウトされました。両親には猛反対されましたが、両親の反対を押し切って、私は希望ヶ峰学園に進学する事を決めました。日本という素晴らしい国で高校生として過ごせるなんて、夢のようでした。残念ながら日本での高校生生活はしばらくお預けとなってしまいましたが、こうして『超高校級』の皆さんと一緒に合宿ができるなんて、毎日がお祭りのような気分です!」
「なるほどな。お前、ここに来るまでの経緯とか、合宿に参加させられてる心当たりとかは?」
「経緯、ですか。ええと…確か私は空港のホテルから直接希望ヶ峰学園に向かい、入学式に参加するために校門を潜りました。そこで意識を失い、気がついたら診療所のベッドで寝ていました。」
…やはり、ここに来るまでの経緯はみんな同じか。
「心当たりについてですが、これと同じような状況を文献で読んだ事があります。」
「何!?詳しく聞かせろ!!」
「予告なしに無人島に隔離し、外からの情報を完全に絶った場合、人は一体どうなってしまうのか、という実験についての文献です。結果は、被験者の殆どが殺し合いを始め、結局最後まで正気を保っていられたのは僅か数人だったそうです。」
「俺たちは、犯人に実験されてるって事か?」
「まだ確証は持てませんが。」
「…わかった。ありがとう。…なあ、ところで一つ気になってたんだけど…お前って、意外と超能力とかそういうの、信じるタイプなの?」
「私は、超能力は存在すると考えていますよ。超能力について本気で研究している学者もいますし…マサイ族の驚異的な視力だって、考えようによっては超能力ですよね?」
「ま、まあそうだけど…」
「現在の科学では解明できない事を無かった事にして、表面上の科学の万能性を示すのは、はっきり言ってナンセンスです。『かもしれない』という視点を持たなければ、本当の意味での科学の進歩などできないのですよ。」
…無闇に超能力を信じているわけじゃなくて、超能力が存在すると仮定して、それを裏付けるために森万に無茶振りしてたって事か。
そう考えてみれば、ある意味学者らしい考えだな。
「なるほど。…ところでお前、ここから出たらやりたい事とかあるのか?」
「…そうですね。まず、日本に観光に行ってから帰国し、合宿と日本の旅行で学んだ事を元に、エッセイを書きたいです。もちろん、皆さんにもお配りしますよ。」
「へえ、楽しみだな。」
「一冊当たり10£になります。」
「金取んのかよ!!」
「ええ、まあ。売り出そうと思っていたので。」
「…はあ。じゃあ、なんか趣味とか特技とか…あとは好きな物とか教えてくれるか?」
「そうですね…趣味と特技は、学術書を読む事でしょうか。好きな物は、日本と紅茶です。好きな日本人は、菅原道真と、うぇすにゃんさんと、舞園さやかさんです。」
「お前、サヤカーだったのかよ。」
「はい、新曲のCD買いました!彼女達、very cuteですよね!えっと、日本語では『萌える』って言うんでしたっけ?」
「猫西のファンだったのは意外だけど?」
「はい、私も彼女のフォロワーなんですよ。チャンネル登録もしてますよ〜。」
「へえ。ありがとう。…なんかお前、面白い奴だな。」
「え?私、コメディアンではありませんけど?」
そういう意味じゃねえよ。
「じゃあ、また後でな。」
「はい。今度は、菊池さんのお話も聞きたいです。」
「ああ。」
俺は、ジェイムズの部屋を出て、ビーチに向かった。
…何ていうかアイツ、『お嬢様』なんだよなぁ。…男だけど。
《ジェイムズ・D=カークランドの好感度が上がった》
「きゃっほーい!!海だー!!」
アリスは、相変わらずハイテンションだな。
幼児体型のくせに、背伸びしてビキニ着てやがる。
…俺は、海はあんまり好きじゃないんだがな。
泳ぐの得意じゃないし、体格も貧相だし…何より。
「わぁ、キレイ!!」
「あっ、向こうに屋台みたいなのがあるよ!ウチがお昼ご飯作るね!」
「…こ、近藤さん、今日もよろしくお願いします。」
「ふはははは!!海よ!!今から私が入る事を感謝しろ!!」
「神城先輩は相変わらずっスね。」
「…眠い。」
…目のやり場に困る!!
なんで女子って、あんな露出度が高い格好できるんだ!?見てるこっちが恥ずかしい!!
「サトにい、何考えてんの?まさか、あーちゃんのビキニ姿見てコーフンしてんの?」
「するか。お前が着るには100億年早えよ。」
「キャー、サトにいのエッチ!ハンザイシャヨビグン!!」
ぶん殴りてえ。
ジェイムズと玉木と森万は、向こうで何かやっているようだ。
「森万さん、見てください。ウミウシですよ〜。可愛いでしょ?」
ジェイムズが、ウミウシを捕まえて見せびらかしている。
…よくあんな物素手で触れるよな。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!?」
森万は、後ろに大きくジャンプして、砂浜の上をスライディングする。
「おや。今のは、何ていう超能力ですか!?もっと見たいです。…ほら!」
「…やめてやれ。見てて可哀想になってきた。」
「?」
「お前、やっぱ天然鬼畜だよな。」
「見てください!口から大量の泡を吹き出しました!蟹に擬態する能力ですかね?」
「多分違う。早く診療所に連れてってやろうぜ。」
「はい…。」
ジェイムズと玉木が、森万を診療所に運んでいく。
…何をやっているんだあそこは。
「ムフフ。やはり海は最高ですなあ。レディ達の水着姿…ぐへへ、鼻血が…」
織田がニヤニヤしながらカメラを構えていると、背後に棒を振りかぶった射場山が立っていた。
ゴッ
射場山が振り下ろした棒が織田の脳天に直撃し、織田は気絶した。
「…不潔。」
「汚物は消毒しなければいけませんね。」
速瀬は、気絶した織田を海に放り込む。
…おいおい、そんな事したら死ぬだろ。
こんな所で帰郷する気か、あいつら…。
こんなやり方で誰かが帰郷する所なんて、俺は見たくなかったぞ。
その近くでは、郷間が狗上を誘っていた。
「おい、理御!!お前も混ざれよ!!」
「ケッ、クソが。下の名前で呼ぶんじゃねえよデカブツ。オロすぞ。」
「そんな冷てぇ事言うなよ兄弟!!」
「…チッ。」
そんなこんなで、各々が海で遊んで一日を過ごした。
織田は、かろうじて生きていた。
意外としぶといなアイツ。
遊び終わってから夕食まで、まだ時間があった。
「…ビーチでも2枚メダルゲットできたし…ガチャ回しに行くか。」
売店に行き、ガチャを回した。
今回は、ヒツジのぬいぐるみとラジコンが出てきた。
「…ガチャ回してるんですかぁ?…ふわぁ。」
後ろから、リタが話しかけてきた。
「リタか。お前もガチャ回しにきたのか?」
「違いますぅ…僕は、ただの暇潰しですよぉ。寝ちゃうと、夕食までに起きられなくなっちゃうので…こうして、適当に歩いて暇を潰しているのですぅ。」
「なあリタ、この後時間あるか?」
「ありますぅ…」
「一緒に話さないか?俺も、お前の事をよく知りたいし。」
「…長話は得意じゃないので、寝ちゃうかもですけど…それでも良ければ…」
「ありがとう。場所はどこがいい?」
「僕の部屋に来てください…ふわぁ。」
「わかった。」
俺はリタの部屋に向かった。
『超高校級の外務大臣』の個室
「…へぇ。」
さすがは『超高校級の外務大臣』の個室、と言ったところか。
本棚には、各国の資料や新聞が並べられており、部屋の壁には世界地図が広げられている。
さらに、部屋にはリタのために安眠グッズが揃えられているようだ。
「ふわぁあ…話ってなんですかぁ?」
「これを、お前に渡したいと思って。」
俺は、リタにぬいぐるみを渡した。
「これを、僕に…?ふわぁあ…ありがとうございますぅ。」
リタは眠そうにぬいぐるみを受け取った。
「リタ、この機会だから、いくつか質問してもいいか?」
「はい…寝ないように頑張りますぅ。」
「お前は、なんで『超高校級の外務大臣』になったんだ?」
「ふわぁ…僕の両親は、仕事のために海外を飛び回っていたので…その影響で、僕自身も海外の文化に触れる事が多かったのですぅ。それで色々お勉強してたら、王国の中では一番外交に詳しくなって…それで、外務大臣に任命されて、『超高校級の外務大臣』として希望ヶ峰にスカウトされたのですぅ。ちなみになんですけど、僕の国の王女様も、希望ヶ峰の留学生なんですよぉ。」
「なるほどな。ここに来るまでの経緯とか、合宿に参加させられてる事についての心当たりとかはわかるか?」
「わかんないですぅ…寝ちゃって、全部忘れちゃったので…ふわあ。」
寝て全部忘れただと…?それって、外務大臣として致命的じゃないのか…?
「…そうか。お前、ここから出たらやりたい事とかあるか?」
「…おうちでいっぱい寝たいですぅ。」
それって、ここから出なくてもできるよな。
「…へえ。じゃあ、趣味とか特技…あとは好きな物とかあれば、教えてくれ。」
「趣味はお昼寝…特技は、外国語とお昼寝…好きな物はお昼寝ですぅ。」
「そうか。そういえばお前、ジェイムズとはここに来る前から知り合いだって言ってたな。」
「ジェイムズとは…僕が仕事で訪れたイギリスでたまたま知り合って…それ以来、たまに連絡とかするようになったのですぅ。」
「へえ、なるほど。…話してくれてありがとな。」
「Zzz…」
「寝てんじゃねえか!!ほら、飯食えなくなるぞ!!起きろ!!」
「Zzz…」
「クソッ、ダメだ…全然起きねえ…」
結局、リタを起こすのに30分かかった。
「はぁ、はぁ…」
「すみません…いつの間にか寝ちゃいました…」
「ほら、もう飯の時間だ、行くぞ。」
「はぁい。」
俺たちは、二人でレストランに向かった。
《リタ・アンカーソンの好感度が上がった》
レストランには、既に全員集まっていた。
…なぜか猫西と床前は不機嫌そうだった。
俺たちは、近藤が作ってくれた食事を食べた。
「おっ、狗上。今日はお前も食うんだな。」
「…あのチビに毒を盛る度胸が無えのがわかったからな。悪いかよ。」
素直じゃないな、アイツ。
食事の後は、自由時間となった。
今回も、誰かと話してみようかな。
「なあ、床前。」
「は、はい…私ですか?」
「お前以外に床前っていう名前の奴いねえだろ。…この後、時間あるか?」
「えっ、あ、ありますけど…」
「二人で話さないか?」
「えっ!?え、ええと…」
「ダメか?」
「い、いえ…ダメとか…全然そういうんじゃない、です…どっちかっていうと、むしろ…」
「むしろ、何だ?」
「い、いえ!なんでもありません…!」
「…そっか。じゃあ、この後話そう。場所はどこがいい?」
「えっと…その…わ、私の部屋とか…どうですか?」
「いいのか?」
「はい、お待ちしていますね。」
「ああ。また後でな。」
俺は、部屋に戻ってシャワーを浴びた後、床前の部屋に行った。
『超高校級の幸運』の個室
「約束通り、来たぞ。」
「…はわわ…」
床前は、なぜか急に泣き出した。
「おい、どうした?どこか痛いのか?それとも俺、なんかまずい事した?」
「い…いえ…私、約束してもすぐに忘れられてしまうので…ちゃんと約束を守ってくださったのが、嬉しくて…」
約束守っただけで泣くとか…今までどんだけ約束すっぽかされてきたんだよ。
床前の影が薄いのか、人間関係に恵まれなかったのか…或いはその両方か。
「おい、もうわかったから、泣くなよ。」
「はい…ご心配おかけして、すみません…。…ここが、私の部屋です。」
床前がドアを開けた。
女子の部屋って感じだった。
壁や家具はパステルカラーで統一され、ベッドにはひよこのぬいぐるみが置いてある。
妹の部屋もそうだったけど、女子ってぬいぐるみが好きなのか…?
「すみません…散らかってる部屋で…」
「全然そんな事無いけど…そうだ、床前。お前に渡したい物があるんだ。気に入るかどうかわかんないけど…良かったら受け取ってくれ。」
俺は、床前にワッペンを渡した。
「…え?こ、これを…私に…?」
「気に入らなかったか?」
「…いえ、私…家族以外の人からプレゼント貰った事ないので…嬉しくて…ありがとうございます…」
床前は、泣きながらワッペンを受け取った。
「わ、私…このプレゼントのお礼は必ずします。私に出来る事があれば、なんでも言ってください。私…菊池さんのためなら、なんでもしますので。」
「…そうだな、じゃあ、お前の話を聞かせてくれるか?」
「…わ、わかりました。」
「まずはお前の、ここに来るまでの過去を教えてくれ。」
「は、はい…ですが…一つだけ約束してもらえませんか?」
「何だ?」
「本当の私を知っても、今まで通りの態度で私に接してください。…ご、ごめんなさい。厚かましい、ですよね…」
「何言ってんだ。態度を変えるも何も、お前はお前だろ。それ以上でも以下でもない。今から話すことが何であれ、その事に変わりは無え。」
「…ありがとうございます。では、話しますね。…私…抽選で『超高校級の幸運』に選ばれたって言いましたよね。」
「言ったな。」
「…違うんです。本当の私を知ったら気味悪がられると思ったので、皆さんの前ではそう言いました。『超高校級の幸運』って、毎年一人平均的な高校生が抽選で選ばれるんですけど…ほとんどの『超高校級の幸運』は、本当にたまたま抽選で選ばれただけの、普通の高校生です。…でも、ごく稀に、本物の『幸運』がいるんです。」
「『本物』の幸運…?」
「はい…『幸運』という才能を持った高校生です。人を幸運にする才能、逆に人の運気を奪って自分だけが幸運になる才能…私の場合は、
『不運を代償に本当の幸運を引き寄せる才能』です。」
「どういう事だ…?」
「例えば、インフルエンザで修学旅行に行けなくなった事で、ハイジャックされた飛行機に乗らずに済んだり…森で迷子になった時、落とし穴に落ちたおかげで見つけてもらえたり…足を怪我して入院した事で、抱えていた病気が発見されたり…私の身の回りでは、そういう事がよく起こるんです。」
「…不幸中の幸いってヤツか。お前は、それを引き起こす才能を持ってるんだな。」
「はい…でも、『不幸中の幸い』が起こると、必ず誰かが死ぬんです。ハイジャックされた飛行機の中で乗客が殺されたり、私が病気の手術を受けている間に他の患者さんの容態が悪化して亡くなってしまったり、迷子になった私を助けようとした救助隊の方が、足を滑らせて落とし穴に落ちて、打ち所が悪くて亡くなってしまったり…『不幸中の幸い』が起こってから3日以内に、私の『幸運』のせいで誰かが死ぬ…小学校では『死神』なんてあだ名をつけられてましたね…」
ふと、『超高校級の死神』エカイラが頭に浮かんだ。
…いや、まさか。床前が殺人鬼なわけ…ないよな。
「だから、中学校の時は、出来るだけ人との関わりを避けて過ごしてきました。…そのせいで誰からも気付いて貰えなくなってしまいましたけど。でも、ある日『超高校級の幸運』に選ばれた事で、また死人が出てしまったんです。…私の才能が、誰かを殺しているんです。こんな呪われた才能、幸運でも何でもない…もう、私のせいで誰かが死ぬのは嫌なんです…!」
「考えすぎだ。お前が殺したわけじゃない。全部、ただの偶然だ。偶然お前にちょっとした不運が起こって、その直後に偶然幸運が起こって、偶然3日以内に誰かが死んだ。お前が呪いだと思ってるのは、全部偶然の重なりだ。だからもう、自分を責めるな。」
「…はい、ありがとうございます…」
「話題を変えよう。お前、ここに連れてこられる前は何をしてた?」
「ええと…入学式に参加しようと、校門をくぐろうとして…気がついたら、遊園地のコーヒーカップの中にいて…」
ここに来るまでの経緯はみんな同じか。
「ありがとう。…そうだな、お前、ここから出たらやりたい事とかあるか?」
「…え…ええと…その…」
「何だ?」
「…や、やっぱりなんでもありません…」
なんなんだ一体。猫西も同じような事言ってたしな…
「まあ、言いたくないなら別に…じゃあ、趣味とか教えてくれるか?あと特技とか好きな物とか…なんでもいいぞ。」
「ええと…読書です。好きな物は、桃と小鳥、です。」
「そうか、今日はありがとな。色々話してくれて。」
「は、はい…こちらこそ、ありがとうございました。」
「そろそろ10時だし…俺行くわ。じゃあ、また明日な。」
「はい、おやすみなさい。」
俺は、床前の部屋を後にした。
《床前渚の好感度が上がった》
俺は部屋に戻った後、すぐに眠りについた。
こうして、合宿生活3日目が終わった。