ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

60 / 75
森万クンと同票だったので、間に本編の執筆を挟まずに2人分投稿する事にしました。
皆さん投票ありがとうございました!


番外編② 合宿編

5月15日。

俺達は今、モルティオバ島に向かうクルーズ船に乗っている。

俺が窓の外を眺めていると、男子生徒が話しかけてきた。

「いんやぁ、それにしてもさぁ。ボク達だけでリゾート地を貸し切りとか、さすがは希望ヶ峰学園って感じだよね。ねえ、菊池クン。」

前髪に羽根のような白いメッシュが入った、黒髪ショートボブ。

そして、少女のような顔立ちのこの男は、確か俺のクラスメイトだった奴だ。

だが、不思議な事に俺はコイツの顔を見るのは初めてだった。

「…ごめん、誰?」

「えぇ!?俺の事知らないの!?嘘でしょお!?」

そう言われても、知らんものは知らん。

「『明日ノ泡沫』って知らね?俺の主演作品なんだけど。」

「…ああ!!お前、『超高校級の俳優』タカヒロか!!」

「ザッツライ!!」

思い出した。

確かコイツは、気弱な名探偵から嘘吐きの総統まで、ありとあらゆるキャラクターを熱演した天才役者だ。

『明日ノ泡沫』は、親の愛を失って非行に走った主人公の少年が、警察に追われて故郷から逃げ出した先で出会った耳の聞こえない少女に惹かれていくという内容の映画だった。

タカヒロは、最後の主演作品である『明日ノ泡沫』で主人公を演じ、その演技力が話題となって、その映画は興行収入トップ5まで上り詰めたんだったな。

でも、もう何年も前の映画で、最近ではほとんどその名前を聞かなくなった。

俺だって、言われなきゃ気がつかなかった。

「菊池クン、クラスメイトの顔覚えてないとかゲロヤバなんだけど!」

「悪い。最近お前の顔を見てなかったからな。…っていうか、今まで一回も学校に来なかったろ?」

「ああ、そういやそうだね。いやあ、実はボク体調がそんなに良くなくてさ。今まで低血圧気味で学校来れてなかったんだわ。今回は、センセー達と上手いこと交渉して、特別に合宿に参加できる事になったんだ。というわけだからヨロシク〜♪」

「…なあ、一個いいか?」

「ん?何?」

「…お前、そんなビジュアル系のキャラだったっけ?」

「ああ、実はボク、自分のキャラが中々定まらんのよね。今までは真面目ちゃんキャラだったから、これからはビジュアル系で行こう、的な?というわけだから、これから仲良くしよーぜ!!アハハハハ!!」

「痛い痛い痛い!やめろっての!」

タカヒロは、思いっきり俺の背中を叩いてきた。

なんだコイツ。馴れ馴れしすぎだろ。

「あ、ボク、そろそろ部屋に戻んないとなんだよね。じゃあまた後でねー♪」

「…あ、ああ…」

タカヒロは、颯爽と俺の部屋から出て行った。

 

それから数分後、ドタドタと足音を立てて、クソガキが部屋に入ってきた。

「サトにいー!!」

「…うるせぇな、静かにしろ。」

「ねえねえ、あーちゃんここ行きたいんだけど!!」

クソガキは、パンフレットに載っている遊園地を指差して言った。

「…しおりに決められた予定が全部書いてあるだろ。それに従って動くんだよ。」

「えー!?サトにいのドケチ!!いいもんね、じゃあサトにい抜きで3班のみんなと遊ぶから。」

「は!!?」

おいちょっと待て。

どういう事だ?

班の他の奴らは、遊ぶ気満々なのか!?

「おい、なんで勝手に遊ぶって話になってんだよ!?俺にそれを言え!!」

「え?何?サトにい、のけ者にされてさみしいの?」

「そうじゃねえよ!!なんでスケジュール組んだ俺の許可なく勝手に決めてんだって言ってんだよ!!」

「いいじゃん。遊ぶ派がタスーハなんだし!そんなに遊ぶのが嫌なら、サトにいだけ仲間外れにしちゃうぞ〜?」

俺以外の全員遊ぶ気満々なの!?

もう俺の勝ち目0じゃねえか!!

「ああもう!!スケジュール組み直せばいいんだろ!?一日だけフリーの日作ってやるよ!!その代わり、他の日のスケジュールを詰めるけど、文句は受け付けねぇからな!!」

「わーい!!サトにい太っ腹ー!クソデブー!!」

「もうそれ貶してんじゃねえか!!あと俺はデブじゃねえよ!!」

「あ、そうだ!!あーちゃん他の班にトツゲキしてくるよ!!」

「おい、迷惑だろ!!こっちが恥ずかしいからやめろ!!」

「とりゃー!!」

「あ、おい待てコラ!!」

「待たねーわよ!!それっ!!」

クソガキは、部屋の外へと飛び出した。

「…はあ。」

 

俺は、クルーズ船の中を彷徨いた。

「お、誰かと思えば、菊池じゃねえか!!」

「えっと、確か1班の…玉木、だったよな。」

「おう、俺の事覚えててくれてたのか!」

「…まあ、入学から1ヶ月経ったしな。クラスメイトの名前は9割くらいは覚えたよ。」

「ボクは残りの1割なんだ〜。へ〜。」

「うわぁっ!!?」

後ろからタカヒロが睨んできた。

「タカヒロ、お前もいたのか。」

「えぇ〜?みんな酷くね?ボク、そんなに影薄かったかしら?」

「悪かったって。」

「別に怒ってませんよーだ。」

「っていうか、お前部屋に戻らなきゃいけないんじゃなかったのかよ。」

「あ、そうだった。じゃーね。」

タカヒロは、部屋に戻った。

「…なんなんだ、アイツ。」

「そうだ菊池。俺の班見て行くか?」

「え、いいのか?」

「ああ、他のみんなも結構メンバー交換したりしてるしな。」

「あ、じゃあお言葉に甘えて…」

俺は、玉木の部屋に入った。

「あ、菊池っち!いらっしゃい!」

「あ、えっと…近藤。」

「菊池っち、ウチの名前覚えててくれたんだね!!」

「…まあな。」

「よお、論!来てくれたのか!!」

「…玉木の野郎、また他の班の奴部屋に入れたのか。」

部屋には、郷間と、えっと…コイツ、苗字なんだっけ。

名前は覚えてるんだよな。確か、女みたいな名前だったような…

「郷間に…えっと、理御。」

「うるせぇ。下の名前で呼ぶんじゃねぇよクソが!!ブッ殺すぞ!!」

「ヒッ!?」

りお…目の前のガラの悪い男は、いきなり俺の胸倉を掴んで捲し立ててきた。

うわっ…どうしよう。

怒らせると厄介な奴を完全に怒らせちまった。

「おい、理御!論がせっかく来てくれたのに、その態度はねぇだろ!」

「うるせェ郷間!!テメェまで下の名前で呼んでんじゃねえよ!!テメェら全員ブチ殺してやる!!」

あああ…火に油を注ぐようなマネすんなよ。

ちょっと待て、コイツの苗字なんだったっけ?

…あ、思い出した!

「悪かったよ狗上!!…もう下の名前で呼ばねえから、一旦落ち着け。」

「…チッ。」

あ、良かった。名前合ってた。

「もう、狗上っちは喧嘩っ早すぎ!ウチの新作スイーツでも食べて、気分落ち着けな!」

「うっせぇ。甘いモンを食う気分じゃねえっつってんだろ。」

「…いいから食え。」

「むぐっ!?」

近藤は、狗上の口に無理矢理手作りの菓子を詰め込んだ。

「…う、うま…い…」

ドサッ

「リオォオオオオオオン!!!おい理御!!大丈夫かしっかりしろォ!!」

嘘だろ!?

美味さで気絶しただと!?

さすがは『超高校級のパティシエ』…!

「狗上っち、ウチのお菓子が美味しすぎて気絶しちゃったみたいだね。そこら辺に休ませてあげよう。」

「だな。」

「菊池っちもウチのスイーツ食べる?」

近藤が、さっき狗上の意識を奪ったスイーツを差し出してきた。

美味そうなスイーツの香りが漂ってくる。

だが、合宿前にコイツみたいに気絶したら洒落にならん。

「いや…さっき部屋の菓子食っちまったし、遠慮しとこうかなぁ…?」

「え?菊池っち、あのお菓子食べたの?アレはダメだよ!あんなの、不味すぎて話になんない!!」

え?そうか?普通に美味かった気がするけど…

「あれはね、安くて質の悪い材料特有の味を、大量の甘味料と香料でごまかしてるんだよ!あんなの、お菓子って呼ぶのもスイーツに失礼だよ!」

そこまでボロクソ言う程か…?

ああ、コイツあれか。

天才タイプにありがちな、凡人の感覚を理解できないヤツか。

「あんなので満足しようとしてたなんて、許せない!!ウチ、あんなのに負けたくない!!絶対にウチのスイーツ食べてもらって、本物のスイーツを体に叩き込んでやるんだから!!」

あ、これマズいぞ…

競争心に火をつけちまった。

これは地獄の果てまで追われるパターンだな…

「え…遠慮しときます…俺、そもそも甘い物はそんなに好きじゃないんで…」

「問答無用!!いいから食えー!!」

「ぎゃあぁああああああああ!!!」

それから俺は近藤に腹がはち切れる程たらふくスイーツを口の中に詰め込まれた。

「うぷ…も…もう…くえ…ね…」

「サトシィイイイイイイイイ!!!」

「おい、近藤。やめてやれ。それはもう拷問の域に達してるぞ。」

グッジョブ玉木。

危うく三途の川を渡るところだった。

「菊池、今日はありがとな。また俺達の班に遊びに来いよな。」

殺されかけるから永遠に来たくないです。

俺は、玉木達の部屋を後にした。

 

「…散々な目に遭った。まさか合宿初日に殺されかけるとは思わなかったぞ。」

クルーズ船内のフリースペースに行くと、速瀬と射場山と織田が何かを話していた。

…何やってんだアイツら?

「…はい、すみません。二度としません。」

「誠意が足りませんね。」

「…ん。やり直し。」

「んなッ…!!そんな殺生な…!!」

「…お前ら、何やってんの?」

「き、菊池氏…!ちょうどいいところに…!実は今、速瀬氏と射場山氏にイジメられ…」

「黙れ。」

「ぎゃふっ!!」

「…織田様が女子の着替えを覗こうとしていらっしゃったので、私達は彼に制裁を加えておりました。」

織田のヤツめ…またくだらない事を…

79期生きっての女傑2人を同時に怒らせるとか、コイツある意味勇者だな。

「い、射場山氏…なぜ…」

「うるさい。黙れゴミが。あんたの反省が足りないからお仕置きしてるんでしょうが。…いい加減反省しな。」

「くっ…!」

射場山が織田の顔を踏みつける。

織田は、踏みつけられながらも鼻息を荒くしながら上を見上げた。

…コイツ、まさかスカートの中を見ようとしてるのか?

どんだけエロに執着してんだよ。

すると、織田は残念そうな表情で言った。

「…なんだ、短パンでありましたか…」

それを聞いた瞬間、射場山の顔に青筋が立ち、ドス黒いオーラが放たれた。

「…は?」

射場山の殺意が膨れ上がっていくのが肌で感じられる。

「…速瀬、悪いけどこの生ゴミ見張っといて。私、部屋に荷物取りに行ってくるから。」

「畏まりました。」

射場山はその場を速瀬に任せると、フリースペースを後にした。

…アイツ、荷物を取りに行くって…一体何を取りに行く気だ?

「くっ…ストッキングが邪魔で見えませぬ…」

マジかコイツ。

速瀬のスカートも覗く気か。

…それにしても、射場山の奴遅いな。

一体何を取りに行ってんだ?

 

「…流石に遅いですね。」

「だな…」

噂をすれば影とはまさにこの事だろう。

俺達が射場山の話をしていると、フリースペースにドス黒いオーラが近づいてくるのを感じた。

…この気配は、もしや…

恐る恐る外を見ると、射場山が猟銃を持ってフリースペースに向かっていた。

 

う そ だ ろ ! ?

 

射場山は、フリースペースに強引に押し入ると、猟銃を織田の頭に突きつけた。

「…死ね。」

「ひぃいいいいいいいい!!!え!?ちょっと待って!?なんで吾輩、殺されそうになっているんでありましょう!?ちょ、速瀬氏も見ていないで助け…」

「射場山様、証拠隠滅は此方で済ませておきます故、お撃ち下さい。」

「…ん。」

「嘘でしょ!?ちょっ、マジで誰か助けて!!この人たち本気で吾輩を殺す気なんですけど!?」

「ちょちょちょ!おい、射場山!!何やってんの!?」

「…ん。見ての通り。」

「そうじゃなくて!!…それ、まさかとは思うけど弾入ってないよな?」

「ん。安心して。ちゃんと実弾入ってるから。」

どこが安心なんだよ!?

殺す気満々じゃねえか!!

俺はこんな所でクラスメイトが帰らぬ人となるのを見たくなかったぞ!!

「おい、射場山!!さすがにやりすぎだろ!!実弾はマズいって!!」

「き、菊池氏…!!」

「…この船、頑丈らしいから実弾じゃ穴開かない。沈まないから大丈夫。」

「そういう問題じゃねえよ!!スカートの中覗かれたくらいで人を殺すな!!」

「…私、思った事はすぐに行動で示すタイプだから。」

「すぐに行動で示しすぎだろ!!」

もはや誰も手をつけられない状況の中、救世主が現れた。

「…射場山さん。学生が猟銃など持ち歩いてはいけません。こちらで没収させていただきます。」

艶のある長い黒髪に、ダークブラウンの瞳を持ったこの女性は、嫌嶋(ヤジマ)幽禍(ユウカ)。俺達の担任だ。

確か、この人自身希望ヶ峰の71期生で、『超高校級の生徒会長』としてスカウトされてたよな。

嫌嶋先生は、射場山の猟銃を素早く没収した。

…凄いなこの人。

「今回は厳重注意に留めますが、以後気をつけて下さい。」

「…ん。」

「た、助かったであります…」

「…それと織田君、今すぐ私の部屋に来なさい。学生とはどうあるべきか、丁寧に叩き込んであげます。」

嫌嶋先生は、織田を引きずってフリースペースから去っていった。

「えっ!?ちょっと待って!?吾輩、被害者なんですけど!?ちょっ、やめ…誰か助け…」

嫌嶋先生は、織田を部屋の中に引きずり込んだ。

「ぎゃああぁああああああああああ!!!」

…思い出した。

嫌嶋先生は、その厳しさ故に『超高校級の拷問官』とも呼ばれてたんだった。

…ある意味、射場山と速瀬より怖いな。

「…じゃあ俺はこの辺で失礼させてもらおうかな…?」

俺は、走ってその場から逃げ出した。

 

「…なんだったんだあのカオスは。」

「菊池先輩!」

「…小川。どうした?」

「アンカーソン先輩見てないっスか?さっきから姿が見えないんですけど…」

小川は、確かリタと同じ班だったよな。

アイツが行方不明だと…?

「いや?知らねえけど。」

「…やっぱり見てないっスよね。変な事聞いてごめんなさいっス。ありがとうございました。」

「待て。俺も一緒に探すぞ。」

「え!?いいんスか!?」

「困った時はお互い様だろ。」

「あ、ありがとうございます!」

こうして、2人でリタを探す事になった。

「おいリタ!?どこにいるんだ返事しろ!!」

「アンカーソン先輩!!自分らの声が聞こえてたら返事してくださいっス!!」

「…廊下にはいないみたいだな。」

「そうっスね。」

俺達は、リネン室を通り過ぎようとした。

「…?…おい、小川。」

「はい、なんスか先輩?」

「お前、この部屋調べたか?」

「いや…さすがにそんな所にはいないだろうと思って、まだ探してないっス。…勝手に入っていいんスか?」

「言ってる場合か。リタが助けを必要としてるかもしれないんだぞ。」

「そうっスね。入りましょう。」

俺達は、リネン室の中に入った。

「!!?」

リネン室には、シーツが雪崩のように積み重なっていた。

「なんだこれは!!?」

「先輩!!あれ!!」

小川は、雪崩の下あたりを指差した。

雪崩の下からは手がはみ出していた。

「菊池先輩…これ、アンカーソン先輩の手じゃ…」

「リタ!!おい、大丈夫か!?しっかりしろ!!今助けるぞ!!」

「先輩、自分も手伝うっス!!」

俺達は、シーツの山をかき分けてリタを救出した。

リタは、雪崩の下で倒れていた。

意識はないようだった。

「おいリタ!大丈夫か!?」

俺は、リタの肩を揺すった。

しかし、いくら揺すっても目を覚さない。

「…先輩、これはもう…」

小川は、リタに近づき、そして…

「起きろ!!!」

大きな掛け声とともにリタの脳天にチョップを喰らわせた。

「ひゃあっ!!?マカンゴ!!?」

リタは、ようやく目を覚ました。

「あぅう…頭のてっぺんが痛いですぅ…」

「おいリタ、なんでお前こんな所にいたんだよ。」

「ふわぁあ…えっと、シーツを探しに来たんですけど、一枚取ろうとしたら全部落ちてきちゃって下敷きになっちゃいましたぁ。それで、眠たくなっちゃったのでそのまま寝ちゃったみたいですぅ。」

嘘だろ!?

雪崩の下敷きになったまま寝たのか!?

ある意味すげぇなコイツ。

「ふわぁ…なんか眠くなってきちゃったので、寝ていいですかぁ?」

「お前…今この状況でよく言えるな。」

「アンカーソン先輩は当分は一人で行動しちゃダメっス。」

「ふわぁい…ごめんなしゃい…」

「先輩、すいませんね。はた迷惑な班員のせいで…」

「まあ、無事なら良かったけどよ。心配して損したじゃねえか。」

小川は、リタを連れて部屋に戻った。

…もうやだ。このクラス、すでにカオス…

俺は、リネン室を後にした。

 

「…はあ。」

「菊池君!」

後ろから猫西が声をかけてきた。

…なんか、こういうザ・美少女って感じの奴と話すと、緊張するんだよな。

「…おう、猫西か。どうした?」

「いや、見つけたから呼んでみただけ。」

「…なんだそれ。」

「ねえ、大丈夫?なんかやつれてない?」

「ああ…このクラスがちょっとカオスすぎてな。うちのクラス、79期生の中でも濃い奴の寄せ集めだろ?」

「ああ…わかる。ホント、毎日大変だよね。」

「わかるか!?」

「まあ…自分で言うのもなんだけど、私うちのクラスじゃ結構空気読める方だと思うからね。」

「…お前はな。」

「ねえ、それより、こんな所で何してるの?」

「別に何もしてねぇよ。ただ、他の班のヤツはどうなってるのかなって思って見て回ってるだけだ。」

「ふぅん。」

「お前も暇潰し?」

「まあ、そんなとこ。」

「理嘉ちゃーん!!早くおいでよー!!」

後ろから女子生徒の声が聞こえてきた。

「あ、ごめん。私、呼ばれてるみたいだから行くね。じゃあね。」

猫西は、声の方へ走っていった。

「ごめーん!!今行くー!!」

…猫西、たった1ヶ月しか経ってないのにすごい人気だな。

さすがは、話題沸騰中の人気実況者だな。

やっぱり人の注目浴びる奴っていうのは、生まれながらにそういう才能を持ってるものなのかな。

 

考え事をしながら歩いていると、射場山達がいたところとは反対側のフリースペースでジェイムズと森万が何かやっているのが見えた。

…アイツら、まだ入学から1ヶ月しか経ってないのに、かなり仲良いよな。

付き合ってるんじゃないかっていう噂も聞いたぞ。

それにしてもアイツら何やってんのかな?

俺は、物陰に隠れて2人の様子を見ていた。

「今日は、超能力の系統についての講座だ。」

「はい、師匠!!」

うわぁ…なんだあれ。授業してるよ。

しかも、いつの間にか師匠に昇格してるし。

「今日は、お前の内に眠る力の系統を見分けようと思う。」

「師匠!一体どうやって系統を見分けるのですか?」

「フッ、これを使う。」

森万は、ワイングラスをテーブルに置き、中にミネラルウォーターを注ぎ始めた。

…おい、ちょっと待て。

なんか嫌な予感がするぞ。

「フッ、なみなみと入れたら、上に葉を一枚置く。」

やっぱりだぁあああああ!!

やめろやめろやめろ!!

色んな所から怒られるぞ!!

「フッ。さあ、力を込めてみろ。」

「はい!むむむ…」

ジェイムズがグラスに向かって念のようなものを送ると、葉っぱが動き出した。

「フッ、貴様は操作系か。」

「そうなんですか。」

クルーザーに乗ってるからだろ。

っていうかサラッと怒られるような事言うな!!

「…何ッ!?水が溢れただと!?これは強化系の反応…両方現れたという事は、貴様特質系か!!」

「な、何ですって!!?」

違います。クルーザーの揺れのせいです。

バカなのかコイツら。

「フッ…まさかこんな所でとんでもない才能の持ち主に出会うとはな。まあ、俺様程ではないが。開花させずに腐らせるには惜しい才能だ。今日から、本格的なレッスンを始める。ついてこれるか!?」

「はい!!宜しくお願いします師匠!!」

ああ、もう完全に信者じゃねえかアイツ。

入学当初は、気高くて聡明な美少年だと思ってたのによ。

もはや二枚目通り越して三枚目だよ。

森万も森万で、来日して日の浅いジェイムズに変な事教えんなよ。

「フッ、じゃあまずは波を放ってみろ。」

「はい!波ァーーーーーーーッ!!!」

やめろ!!

マジで色んな所から怒られるぞお前ら!!

どうなってんだ俺のクラスは!!

まともな奴は小川と玉木と猫西しかいねぇじゃねえか!!

「フッ、戦闘力5万か。ただの人間の割にはいい線いってはいるが,まだまだ俺様の域に達する事は不可能だ。…だが、俺と一緒に修行をすれば、この合宿が終わる頃には戦闘力は10倍になっているだろう。厳しく鍛えてやる!!」

「はい、ご指導宜しくお願いします師匠!!」

なんなんだアイツら。

あの二人、クラスの中でもトップ5には入るカオスさだぞ。

ジェイムズなんて、理性的で貴族らしい気品があって、それでいて人当たりがいいところを尊敬していたのに。今じゃ森万信者の超能力バカじゃねえか。

…うん、今のはきっと見間違いだな。見なかった事にしておこう。

俺は無言でその場を後にした。

 

「ぎゃあああぁあああああああああぁああああああああああ!!!」

男子生徒の声が響いた。

…何事だ?

俺は恐る恐る様子を見に行った。

声がした部屋を見てみると、大量のキスマークがついた男子生徒が倒れていた。

違うクラスの男子だったが、見るからにボロボロで目も当てられない。

「…だ、誰か…た、助け…」

男子生徒は、満身創痍になった身体を引きずって逃げようとしていた。

「ちょっとぉ!アタシの誘いを断るってどういう事!?全く、ツンデレなんだから!!」

部屋の奥から、エカイラが現れた。

…ああ、アイツが犯人か。

あのオカマにやられたんだな、ご愁傷様。

って!何落ち着いてんだ俺は!!

コレ、見つかったら次は俺が標的にされるぞ!!

童貞より先に処女を失ってたまるか!!

…そうだ、このゴミ箱の影に隠れてよう。

その場しのぎにはなるはずだ。

「アラ?今、いい男の気配がしたんだけど…気のせいだったかしら?」

部屋から出てきたエカイラが、キョロキョロと周りを見渡す。

そして、俺がいる方とは反対側に歩いて行った。

…気付かずに行ってくれたみたいだな。

「…危なかったぁ。」

しかし安心も束の間、厄介なヤツが廊下を歩いてきた。

「ふはははははははは!!!おい、エキストラ共!!私のために道を空けろ!!ほらほらどうした!!私の姿を見られたんだから、感激の涙を流してもいいんだぞ愚民共!!ふはははははははははははは!!!」

チッ、神城…こんな時に、これはまた厄介な奴が現れたな…!

「ん?どうしたモブ?こんな所で何亀みてぇに蹲ってんだ?」

チッ…そのまま素通りしていればよかったものを、コイツ無駄に目ざといな…!

「シーッ!!」

頼む、あまり騒がないでくれ!!

「はぁあ?おいモブテメェコラ!!まさかとは思うが、私の声がうるさいって言いたいわけじゃあねェよなァ!!?」

そのまさかだよ!!頼むから黙っててくれ!!

「テメェ如きが神に対して文句を言う気か!!?ふざけんなゴルァ!!土下座しろ!!デコから血ィ出るまで地面にデコ擦り付けろ!!」

なんか怒ってるし!!

もう黙れ!!黙っててください!!じゃないとあの怪力オカマゴリラが…

「…あら。クレハちゃんじゃない!ねえ、ここら辺でいい男見なかった?」

あぁああああああああああ!!!

だから黙れって言ったじゃん!!

ヤバいヤバいヤバい!!見つかったら掘られる!!

「…んぁあ、なんだ貴様か。いい男?そうだな…それほど良くはないが、今ここにモブが蹲ってんぞ。」

こぉおおおおじろぉおおおおおおおお!!!

お前何密告してんだコラァ!!

「アラ♡サトシちゃんってば、こんな所にいたのね。」

「はは…あはは…」

「うふふ♡怖がらなくても大丈夫よ。優しく抱きしめてあげるわよぉおおおおお!!」

「全ッ力で遠慮させていただきます!!」

俺は、ダッシュで逃げ出した。

「ンフフ、全く、サトシちゃんてばツンデレなんだから♡待ちなさーい!!」

「待ちませぇえええん!!」

俺は全力疾走したが、やはり筋肉おばけには勝てなかった。

もう少しで追いつかれるというところまで距離を詰められてしまった。

その時、

「こっちです!」

いきなり部屋の中に引きずり込まれた。

「うおっ!?」

「アラ?サトシちゃん?」

 

「…いてて。」

「大丈夫ですか、菊池さん。」

「お前は…確か床前、だったよな?」

「あら、私の名前を覚えていてくださったんですね!嬉しいです!」

…そこまで喜ぶほどの事か?

「悪いな床前。匿ってもらっちまって。」

「いえいえ、全然構いませんよ!」

俺は、部屋を出ようとした。

「え?あれ!?開かない!?」

いつの間にか部屋のドアが開かなくなっていた。

「おい、どうなってんだよコレ!!」

「…うふふ。ねえ、菊池さん。私、菊池さんの事が好きになっちゃったみたいなんです。」

え!?ちょっと待って!?このタイミングで告白!?嘘だろ!

「あなたがあまりにも魅力的すぎるから、今日もつい追いかけちゃいました。」

「…お、追いかけてたって…まさか、船に乗り込んだ時からずっと尾行してたのか…?」

「はい♡ずっとあなたの後ろにいました。」

嘘だろオイ!!

コイツ、見た目は普通の女子高生だと思ってたのに、中身はストーカーだったのかよ!?

「ねえ菊池さん。せっかく2人きりになれたんです。2人で愛し合いましょう。…菊池さん、いえ、論さん!」

ヤバいヤバいヤバい!!

コイツ、エカイラ以上にヤバい奴じゃねえか!!

クソッ、ドアが開かなくて逃げられない!!

このままだと、コイツに何かされる…!

 

ガチャッ

 

いきなりドアが開いた。

「…あ?」

「…嫌嶋先生!」

「一部屋だけ鍵が壊れていたようなので、何事かと思えばやはり貴女でしたか床前さん。部屋の鍵を壊し、異性を部屋に連れ込み不純異性交友など…不健全極まりないですね。後で私の部屋に来なさい。」

「…。」

床前は先生を睨みつけると、部屋から逃げ出した。

「あっ!コラ!!待ちなさい!!」

先生は床前を追いかけた。

「…とりあえず、助かったのか…?」

 

…やれやれ、合宿初日にこんなにトラブルに巻き込まれるとはな。

79期生は、希望ヶ峰学園の歴史上一番ヤバい奴が多い学年だって噂だけど…

せっかく憧れの希望ヶ峰学園に入学できたってのに、なんでこんな目に合わなきゃいけねえんだ。

「…先が思いやられるな。」

 




そういえば前回の猫西ちゃんの番外編で料理の実況書いたんで、全員の料理能力と得意料理を発表します。

菊池
・見た目…−50点
・味…−50点
・得意料理…ブラックホールパンケーキ
アリス
・見た目…0点
・味…0点
・得意料理…卵かけご飯
玉木
・見た目…75点
・味…80点
・得意料理…カレー、唐揚げ
近藤
・見た目…100点
・味…100点
・得意料理…ドーナツ、シチュー
猫西
・見た目…90点
・味…95点
・得意料理…アクアパッツァ、パエリア
速瀬
・見た目…95点
・味…95点
・得意料理…煮物、おせち
ジェイムズ
・見た目…100点
・味…90点
・得意料理…パイ料理、プディング
リタ
・見た目…45点
・味…10点
・得意料理…ミックスジュース
小川
・見た目…75点
・味…70点
・得意料理…味噌汁
郷間
・見た目…60点
・味…60点
・得意料理…炭火焼
織田
・見た目…50点
・味…50点
・得意料理…オムライス
床前
・見た目…80点
・味…90点
・得意料理…すき焼き、煮物
狗上
・見た目…45点
・味…55点
・得意料理…野菜炒め
森万
・見た目…65点
・味…75点
・得意料理…肉じゃが、卵焼き
射場山
・見た目…85点
・味…80点
・得意料理…煮物、煮込みうどん
神城
・見た目…95点
・味…5点
・得意料理…宮廷料理
エカイラ
・見た目…25点
・味…95点
・得意料理…グリーンカレー
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