ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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番外編⑧ 子犬編

俺の名前は郷間権蔵。『超高校級の庭師』だ!

…って言いはしたものの、実は俺は自分の才能に全然納得いってないんだよな。

俺は、庭仕事はそんなに好きじゃねえし…

『超高校級の庭師』じゃなくて『超高校級の大工』になりたかったんだがなぁ。

 

「くぅ〜ん、くぅ〜ん。」

 

下校中、犬の鳴き声が聞こえた。

声がした方に行ってみると、段ボールの中で黒い子犬が寒そうに震えていた。

「なんだお前、捨てられたのか。」

「くぅ〜ん。」

いつもなら、このデカい体格のせいで小動物には逃げられがちだが、コイツは俺から逃げなかった。

「…あれ?なんかこの顔、どっかで見た気が…」

…なんかわかんねえけど、コイツの事は放っておけないんだよな。

でも、うちは動物は飼えねえし…どうすっかな。

 

「あれ?郷間じゃねえか。どうしたんだ?そんなところで。」

 

「ああ、勝利か。実はな、コイツをどうしようかなって思ってよ。」

「子犬?」

「ああ。ここで拾ったんだ。でも、うちじゃ飼えねえし…お前の家、飼えないか?」

「あー、悪い。母さんが犬アレルギーなんだよ。」

「…そっか。悪いな。無理言っちまって。」

「ああ、だったら俺からみんなに言ってみるよ。」

「いいのか?」

「いつまでもソイツを放っておくわけにはいかないだろ!」

「…そうだな。」

「じゃあ早速電話してみるよ。」

「ああ、ありがとう。」

 

「…あー、みんな飼えないってさ。」

「そっか…」

「あ、だったら学校で飼うっていうのはどうだ?」

「学校で?」

「ああ、まずは許可が降りたらだけど…そしたら、学校で飼おうぜ。」

「そうだな!よっしゃ、じゃあ俺は犬小屋作るわ!」

「お、いいなそれ!」

「でも、今日はどうしようもないし…とりあえず、雨で濡れない所まで運ぶか。」

「そうだな。」

 

 

ー翌日ー

 

「郷間!」

「おう、論。どうした?」

「昨日、玉木から子犬の事聞いてよ。さっき先生に相談してみたんだけど…」

「マジか!?ありがとな!で、どうだった?」

「学校で飼っていいってよ。良かったな。」

「ホントか!?っしゃあ!!じゃあ早速、アイツの家を作ってやらねえとな!!」

「やけに張り切ってんな、お前。」

「そりゃそうだろ!犬小屋建てるのなんて、久々だからな!よっしゃ、アイツのために立派な家を作ってやるぞ!」

「お、おう…で?その子犬、今どこにいるんだ?」

「ああ、それなら…」

俺は、論を子犬のいた道まで連れてきた。

 

「あ。」

段ボールの前に、渚がいた。

「さて、サトシ。ご飯の時間よ。」

「ガルルル…」

渚の奴、エサやったのになんか警戒されてないか?

「…床前、お前何やってんの?」

「あ、き、菊池さん。えっと…これは…その…」

渚は、子犬を抱き抱えた。

「ほ、ほら…この子、菊池さんに似てるじゃないですか。だから、なんか放っておけなくて…」

あ…言われてみれば確かに毛の色と目の色が論と同じだし、目つきとか論そっくりだな。

「この子、とってもかわいいですよね。うふふ…ほら、サトシ。こっち向いて?」

渚の奴、コイツに対する愛情ハンパないな。

論の名前付けてるし…

「うふふ、大好きよ。サトシ。」

「!!?」

いきなり論が震え出した。

「?どうした論?」

「あ、いや…ちょっと寒気が…」

寒気?おいおい、大丈夫かよ。

「な、なあ床前…犬に俺の名前つけんのやめてくんない?」

「えー、いい名前じゃないですか。」

「ガルルル…バウッ!!」

「きゃっ!!」

ついに痺れを切らしたのか、サトシ(仮名)が渚の手に噛み付いた。

そして、俺の後ろに隠れて渚を威嚇していた。

「ガルルルル…ワンッワンッ!!」

うわあ…渚の奴、だいぶ嫌われてんな。

コイツ、他の動物にはむしろ好かれる方なのに…

なんでサトシ(仮名)には嫌われてんだ?

「んもう、この子ってば恥ずかしがり屋さんなんだから。」

なんで噛まれて嬉しそうにしてんだ?

っていうか、手から血がボタボタ出てるし…大丈夫かよ。

「…床前,多分恥ずかしがり屋とかそういうんじゃないと思うぞ。…血、出てるけど…ハンカチいるか?」

「ありがとうございます。」

渚の奴、なんでニヤニヤしてんだ?

論の前だと全然キャラ違うしよ。

渚は、もっとこう…大人しいイメージだったんだけどな。

「床前、お前はもうコイツに近づかない方がいいと思うぞ。」

「どうしてですか?」

「だってほら…嫌がってるし、あんまり過保護になりすぎんのもコイツにとってストレスだろ。」

「そういうものでしょうか?」

「そういうもんだ。ここは郷間に任せて、俺達はもう行くぞ。」

「…はぁい。」

「じゃあな、郷間。」

「論、もう帰んのか?」

「ああ。子犬も見られたしな。じゃあな。」

「おう!また明日な!」

論は、渚を連れて帰っていった。

「良かったな、学校の許可が取れたとよ。」

「キャンキャン!」

サトシ(仮名)は、嬉しそうに俺の周りを走り回った。

昨日は元気なさそうだったけど、元気になったみたいで良かったなサトシ。

…あ、いつまでもクラスメイトの名前で呼ぶわけにはいかないよな。

コイツの名前、どうすっかな。

「あ。」

そうだ。論に顔が似てるし、論の苗字から取ってキクにしよう。

「今日からお前も俺の兄弟だ!よろしくな、キク!」

「キャンキャン!」

気に入ったみたいだな!

よっしゃ!そうと決まりゃあ、キクのために立派な小屋を造らねえとな!

材料とか、ホームセンターに行けば揃ってるかな。

 

 

ーホームセンターー

 

ホームセンターの入り口には、吹雪が立っていた。

「おう、吹雪じゃねえか!どうしたんだ?こんなとこで。」

「…郷間様が犬小屋を建てるという話を耳にし、材料の調達等のお手伝いをさせて頂こうと、こちらに向かいました。」

マジかよ。仕事早すぎんだろ。

「郷間様。何か必要な物がございましたら、私にお申し付けください。」

「おう、悪いな。じゃあ…これ買ってきてくれるか?」

俺は、紙に必要な物を書いて吹雪に渡した。

「…畏まりました。」

さてと、俺は俺で必要な道具を揃えないとな。

建築に必要な道具だけは、素人に選ばせるわけにはいかないからな。

俺は、選んだ道具を買った。

「郷間様、ご注文の品を全て買って参りました。」

…おおう。ホントに、仕事早いんだよな吹雪は。

「おう、助かるぜ!ありがとな吹雪!」

「とんでもございません。何か困った事がございましたら、何卒。」

「ああ!」

案外早く買い物が終わったし、早めにキクの家を造ってやれそうだな。

吹雪がいて助かったぜ。

 

 

ー家ー

 

さてと、早速造るか。

…つっても、犬小屋造んのなんて久々だし、時間かかっちまいそうだな。

 

プルルルルルルルル…

 

電話か。

誰からだ?

「もしもし?」

『ゴンゾウちゃん、今から犬小屋造るって聞いたんだけど。』

「ああ。」

『さっき、例のワンちゃんを見に行ったんだけど、ホントにサトシちゃんにそっくりで可愛いわねえ!』

「お、おう。…それで?」

『さっきね、ケンタロウちゃんとリオンちゃんと話してたんだけど…造るの手伝わないかって話になったのよお!』

「マジか!?助かるぜ!今、ちょうど人手が欲しかったとこだからな!」

『ホント?じゃ、今からそっちに向かってもいいかしら?』

「来てくれんのか!?ありがとな!!」

マジかよ!?

エカイラ達が来てくれんのか!

 

 

ー数分後ー

 

「ゴンゾウちゃん!」

「ムフフ、約束通り来ましたぞ郷間氏!」

「…チッ、かったりぃ。」

「おう、エカイラに兼太郎に理御!来てくれたのか!」

「うるせぇ!!下の名前で呼ぶんじゃねえよ脳筋野郎が!!」

「ちょっと、やめなさいよリオンちゃん!!」

「うるせぇ!!テメェも黙ってろ!!殺すぞオカマ野郎!!」

「言ったわね!?アタシはオカマじゃなくてオネエだっつってんでしょうがぁ!!」

「おい、お前らやめろ!!ケンカするために来てもらったんじゃねえんだぞ!」

「…そうね。アタシ、ついムキになっちゃったわ。ごめんなさい。」

「…チッ。」

「よっしゃ、じゃあ明日までに設計図を完成させて、キクの家を造るぞ!」

「キク?何でありますかそれは。」

「キクはキクだよ。アイツの名前だ!」

「アラ、サトシちゃんに似てるからキクなのね。キクちゃんね、キャーかわいい名前!」

「安直すぎやしませぬか?」

「いや、いいんだ。アイツも、この名前気に入ってるみたいだしな!」

…犬のクセにいい名前つけてもらってんじゃねえよ。

「ん?なんか言いましたか?狗上氏?」

「うるせぇ。なんでもねえよキモヲタ。」

「ヒッ…」

なんか、理御がすげえ兼太郎を睨んでっけど…

兼太郎の奴、理御を怒らせるような事したのか?

「よっしゃ!じゃあ早速、設計図を修正してくぞ!とりあえず、ざっくり描いてみたから見てくれ。」

「アラ上手。」

「ふーん。脳筋のクセに、こういう計算は精密なんだな。」

「むむむ…確かに素晴らしいですが…やや芸術性に欠けますな。ここは、もう少し凝った感じにして…」

「そうねえ。ここをもうちょっとこうして…」

「ムフフ、だいぶ芸術的になりましたぞ!」

「おいおい、バカバカバカ!んな造形にしたら、すぐ壊れんに決まってんだろうが!ここをもっと太くして、重心を安定させんだよ!」

「ほう…さすが狗上氏ですな!」

…なんか、3人が設計図に修正を入れ始めたらすげえ事になったぞ。

そりゃあ、3人とも『超高校級』だもんな。

「…っし、まあこんな感じでいいんじゃねえの?」

「すげえな、これ!ありがとな、3人とも!「

「いーえ!じゃ、明日の小屋造りも頑張るわよ!」

「ああ!」

 

 

ー翌日ー

 

「うっし、じゃあ早速建てるか!理御、よろしく頼むぜ!」

「だから名前で呼ぶなっつってんだろ!!」

「うふふ、力仕事は任せて頂戴!」

「ムフフ、外壁のデザインは、吾輩にお任せあれ!!」

4人で小屋造りを始めた。

「…ほらよ。これ、設計図通りに接着しとけ。」

「おう。」

理御の奴、ずぼらに見えっけど、意外と仕事は正確なんだな。

「よいしょっと。ゴンゾウちゃん、ここ置いとくわね。」

「ああ、ありが…!!?」

嘘だろ!?

エカイラの奴、なんで線細いのにこんなに大量の木材と道具を運べんだよ!

「…エカイラ、なんか悪いな。」

「悪いって何が?いい運動になったわ。」

マジかよ…

 

 

ー数時間後ー

 

「よっしゃ、あとは装飾だな。頼むぜ兼太郎!」

「グフフ、任せるであります!」

兼太郎は、猛スピードで小屋をカラフルに塗っていく。

ほんの数分で、芸術的な犬小屋が出来上がった。

「すげえな兼太郎!」

「吾輩を誰だと心得ておりますか!!吾輩は、これでも『超高校級』ですぞ!」

「ありがとな!3人とも!」

「いいってことよ。」

「じゃあ、早速キクを連れてくるぜ!」

俺は、キクが捨てられていた道に行った。

「キク、お前の家ができたぞ!」

「キャンキャン!」

コイツ、何故か俺には懐くんだよな。

「おーしおーし、いい子だな。」

俺は、キクを小屋まで連れてきた。

「キク、ここがお前の新しい家だぞ!」

「キャンキャン!」

キクは、想像以上に喜んでくれた。

「お、そんなに気に入ったのか!良かったな!」

「キャン!」

ここまで気にいるとはな。やっぱり、建てた甲斐があったぜ!

 

 

ー翌日ー

 

次の日、キクの小屋に行くと、ジェイムズと羅象とリタがいた。

「おう、3人とも!キクを見にきたのか?」

「はい!…あ、この子犬、キクさんというお名前なのですね。」

「ああ、俺が名付けたんだ。」

「素敵なお名前です!…しかし、本当に菊池さんにそっくりですね。キクさんは。とても可愛らしいです!」

「ふわぁあ…生まれ変わりかもしれないですよぉお…」

「いや、アンカーソンよ。菊池はまだ生きているぞ。」

「じゃあ、ドッペルゲンガーですかぁ?」

「人ではないのでドッペルフントですかね。」

「ふわぁ…直訳すると、二重の犬、ですかぁ…意味不明でしゅねぇ…」

「…なあ、そのドッペルなんとかってなんなんだ?」

「フッ、ドッペルゲンガー。自分と全く同じ姿形をした幻覚の事だ。」

「へ、へえ…でも、キクはそんなんじゃないと思うぞ。」

「フッ、だろうな。ドッペルゲンガーは、本人が見ると死ぬらしいからな。」

「怖いなそれ。」

「くぅうん…」

「ほら、お前ら物騒な話すんのやめてやれ。ドッペルフントなんて言うから、キクが嫌がってんだろ。」

「郷間さん、貴方キクさんの気持ちが分かるのですか!?」

「わかるっていうか、まあなんとなく…なんか、コイツも俺にはよく懐くんだよな。俺、このデカい図体のせいで動物にはよく逃げられんだけどな。」

「へえ…不思議なものですねぇ。」

「フッ、郷間よ。お前とキクは波長が合うのかもな。」

「は、波長?」

「生物が放っているオーラみたいなものだ。それが合う者同士は、仲良くできるというわけだ。」

「へえ、そうなのか。俺とキクが、ねえ…」

「くぅん?」

「ふわぁ、息ピッタリですぅ…」

「郷間さん、羨ましいです!私も、キクさんをモフモフしたいです!」

「ワンッ!!」

「はは、ジェイムズ。お前、しつこすぎるんじゃないか?キクが嫌がってるぞ。」

「あうぅ…そんなぁ…郷間さんは、普通に触れているのに…郷間さんばっかりずるいです!」

「フッ、カークランドよ。その辺にしておけ。気持ちは分からなくもないが、これ以上やるとそろそろ噛まれるぞ。」

「…あぅ〜」

ジェイムズの奴、完全に落ち込んでんな。キクをモフモフできなかったのがそんなにショックだったのか?

「…きゅう。」

「お、どうしたキク。腹減ったのか?」

「きゅう。」

「フッ、まるでエスパーだな。」

「ふわぁ…なんですかその他人事みたいな言い方はぁ…森万は超能力者なんじゃなかったんですかぁ。」

「…うっ。」

「っつっても、キクはまだ赤ん坊だしな。何あげたらいいのかわかんねえんだよな。」

「郷間さん!私、犬用の粉ミルクを持ってきたんですよ。それをあげてみてはいかがでしょうか?」

「おお、ホントか?助かる。」

「はい!」

…っていうか、なんで持ってるんだよ。

コイツ、もしかして動物大好きなのか?

「という訳で、キクさんにあげてみますね!」

「ちょっと待て、カークランドよ。お前があげたらかえってストレスだろう。」

「えぇ…そんなぁ。」

ガッカリしてんな、ジェイムズの奴。

絶対、隙を見てモフモフしようとしてただろ。

「フッ、油断も隙もない男だな、貴様は。」

全くだよ。

渚とジェイムズはキクに近づかせないようにしなきゃな。

「ほら、キク。メシだぞ。」

「きゅ!」

キクは、ミルクを美味しそうに飲んだ。

「お、うまいか。良かったな。」

「Wow‼︎He is very cute(とても可愛いですね)‼︎」

ジェイムズがスマホで撮影しようとしたので、森万が止めに入った。

「…あ、ゲフン、失礼しました。つい興奮してしまい…」

コイツ、意外と子供なんだな。

「そこまで食欲があるようでしたら、普通のドッグフードでも大丈夫そうですね。」

「そうなのか?」

「はい、明日からはドッグフードを持ってきますね!」

「お、おう…」

コイツ、やっぱりキクの事好きなんだな。

「…きゅう。」

キクは、小屋の中の寝床に戻って寝た。

「お、ミルク飲んだら眠くなったのか。」

「ふふっ、微笑ましいですね。」

「カークランドよ、貴様はキクにストレスを与えすぎだ。」

「あ、はい…ごめんなさい…」

「あはは…」

「Zzz…」

ん?なんの音だ?

明らかにキクの声じゃない、いびきみたいな声が聞こえるんだが…

俺は、小屋を見てみた。

「リタ!!?」

リタは、小屋に顔を突っ込んで寝ていた。

「おい、起きろリタ!!お前、何やってんだよ!?」

「はっ、ユーぺ!!」

なんだよユーペって!

ジェイムズ、お前も何ツボってんだ!

「ふわぁ…ごめんなさい…あまりにも気持ちよさそうだったので、一緒に寝ちゃいましたぁ…」

…一番キクに近づけちゃいけねえのは、案外コイツかもな。

 

 

ー昼休みー

 

「にゃははははははははは!待てーいキク!!かつて、キボーガミネのイダテンとも呼ばれたこのあーちゃんから逃げられるとでも思ってるのかー!!」

アリスが、キクを追いかけて遊んでいた。

「モフモフさせろー!!」

「ワンワンッ!!」

…あ、これ遊んでるんじゃなくて、普通に逃げてたのか。

「にゃあああああああ!キクはやっぱり足速いなー!!あーちゃんはキボーガミネのイダテンなのに!!」

「おい、キク!」

「キャンキャン!」

キクは、しっぽを振って俺の方に走ってきた。

「あー!!ずるいぞお兄ちゃん!!なんでキクはお兄ちゃんにばっかり懐くんだよー!!」

…なんか、ジェイムズも同じような事言ってたな。

でも、本当になんでキクは俺にばっか懐くんだ?

「あーちゃんは、世界がシットするスーパー美少女だぞ!?もっとあーちゃんにキョーミ持てー!!キクテメーコノヤロー!!」

「あはは、みんな楽しそうだね。」

「お、理嘉!お前もいたのか。」

「まあね。さすがに、私はあーちゃんみたいにスタミナないから、見てるだけだったけどね。」

「そうなのか。」

「あははっ、キク君は本当に可愛いよね。」

「うぇすにゃんは猫派じゃなかったのかー!!うぇすにゃんの浮気者ー!!フリンー!!昼ドラの女王ー!!」

不倫って…理嘉は結婚してねえだろ…しかも、昼ドラの女王って…

「私は猫派だけど、犬も好きだよ〜。っていうか、動物はだいたいみんな好きかな。まあ、一番はやっぱり黒猫だけどね!」

「ふーん。」

「…ふふっ。」

「ん?どうした?」

「いや、キク君ってホントに菊池君に似てるなって思ってさ。」

「そうなんだよ!わかってくれるか!?妹!!」

「え、もしかして、キク君って郷間君が名前つけたの?」

「ああ!論にそっくりだから、キクって名前にしたんだ!いい名前だろ?」

「うん、この子にぴったりだね!」

「ぶー。」

アリスは、嫌そうにこっちを見ていた。

「えー。キクって、サトにいにそっくりだからキクってゆーの?」

「ああ、そうだよ。だって、目元とか毛とか論にそっくりだろ?」

「はああああああああああああああ!!?どこが!?全っ然意味わかんないんだけど!!マヂイミフルーツポンチ!!この子と、あんな顔面偏差値40のコンクリに叩きつけた腐ったミカンみたいなヤツを一緒にしないで!!」

く、腐ったミカン…

すごいいいようだな。

「でも、この子、菊池君に似てると思わない?」

「思わないよ!!キクは、サトにいみたいにガンコでケチでエロガッパじゃないもんね!!」

 

 

ー教室ー

 

「ハックション!!」

「…あら、菊池さん。風邪ですか?」

「ああ、ちょっとここ最近冷えるからな…」

「にししっ、誰かが噂してるのかもっスよ?」

「それはねえだろ。」

 

 

ー放課後ー

 

「キク!メシ持ってきてやったぞ!」

キクの返事がない。

さっきはすげえ喜んでたんだけどな。

「…キク?」

「くぅん…」

キクは、小屋の中で寝ていた。

「なんだ、寝てるのか。…って、なんだこれ!?すげえ熱じゃねえか!!どうしよう…とりあえず、黒羽に相談してみるか!!」

俺は、黒羽に電話をかけた。

「おい、黒羽!!ちょっと今すぐ学校に来てくれ!!」

『はぁあああああああああ!!?おいウド!!テメェ、どのツラ下げてこの私に命令してんだコラァ!!』

「キクが…俺の弟が病気なんだよ!!頼む、早く来てくれ!!」

『キクって、例の犬か?…フン!いいだろう!私は神だからな!!この私が来る事を感謝しろ!!ふはははははははははは!!』

「…良かった、ありがとな、黒羽!!」

『フンッ!!』

ガチャッ

「キク、もう少しの辛抱だからな。もうすぐ、医者が来るから…」

 

「もうそろそろ、黒羽が来てくれるはずなんだが…」

「おいウド!!神である私が来てやったぞ!!診るから、そこどけ!!」

「黒羽…!お前、犬の病気とかわかんのか!?」

「うるせぇなウド!!だから今診てんだろうが!!邪魔したら塩化カリウムブチ込むぞ!!」

「お、おう…」

黒羽って、優しいのか怖いのかどっちなんだよ…

「フンッ、ただの風邪だ。薬は飲ませたし、安静にさせてメシと水分をやってれば数日で回復する。」

「そうなのか!?ありがとな、黒羽!!」

「ハッ、せいぜい二度と私を呼ぶ事がないように気をつけろ!!」

「ああ、ありがとな黒羽!」

黒羽は帰っていった。

キク、良かったな。いい医者に診てもらえて。

「くぅ…」

「お、少し楽になったか。」

でも、まだ安心はできねえな。

もうしばらく、キクの様子を見るか…

 

 

ー翌日ー

 

「…う?」

俺は、学校の裏庭で目が覚めた。

…そうだった。俺、キクの看病をしててそのまま寝ちまったんだった。

そうだ、キクは!?

「くぅん…」

キクは、小屋の中で静かに寝ていた。

「良かった、昨日より辛くなさそうだな。」

「…ねえ。」

「うおっ!?」

後ろを振り向くと、祐美がいた。

「ゆ、祐美!?」

「ビックリしすぎ。」

「悪い…祐美は、いつからそこにいたんだ?」

「…さっき来たばっかりよ。ったく…あんた、どんだけキクに夢中なのよ。」

「わ、悪い…コイツ、なんか他人とは思えなくてよ。コイツは、俺の兄弟だ!」

「…他人って、人じゃないけど。…ふぅん、噂通りホントに菊池にそっくりなのね。」

「ああ、特に目とかな!…で、祐美はなんでここに?」

「…ん。これ、いるんじゃないかと思って…渡しに来た。」

祐美は、鞄を俺に渡した。

「これ…中に何が入ってんだ?」

「…ん。…毛布とか、小屋の掃除道具とか、いろいろ。あんた、そういうの用意してなさそうだと思って。…風邪引いてるんでしょ?だったらちゃんと看病しな。」

「祐美!!お前これ、わざわざ用意してくれたのか!!?」

「バカ、声が大きい!キクが起きるでしょ!」

「…あ、つい…ごめんなキク。」

「ったく…」

「祐美、ありがとな!」

「…別に。気にする事ないわよ。たまたま知り合いから譲って貰って、どうやって使おうか悩んでて、たまたまキクが小屋にいたから持ってきただけよ。別に、あんたとキクのために持ってきたんじゃないから。」

どう見てもこれお古じゃねえし、わざわざ買いに行ったんだろ。

祐美は優しいけど、素直じゃないんだな。

 

 

ー昼休みー

 

「うわあ、これが噂のキクさんっスか!噂通り、菊池先輩に激似っスね!!」

「ホントだね!」

「おう、詩音に夏美!お前らも、キクを見にきたのか?」

「はいっス!」

「夏美、それはなんだ?」

「ああ、ウチの手づくりのおやつだよ!ちゃんと栄養バランス考えて作ったからね!風邪ひいてるなら、これが一番だよ!」

キクは、夏美の作ったおやつを美味そうに食っていた。

「お、キク!美味いか?良かったな!」

「え、ホント!?郷間っち、キクっちはウチのおやつ気に入ってる?」

「ああ、すげえ美味いってさ!」

「良かったー!じゃあ明日も作ってくるね!」

「ああ!ありがとな!」

「あ、そうそう!犬って、レゲエが好きらしいんスよ!ミュージックプレイヤー持ってきたんで、キクさんに聞かせたら喜ぶんじゃないっスかね?」

詩音は、曲をかけ始めた。

「お、いい曲だな!」

「でしょう!?自分のお気に入りの曲なんスよ!」

「キャンキャン!」

キクは、嬉しそうに小屋から出てきた。

「お、キク!お前、もう元気になったのか?」

「ワンッ!」

「おお、よかったな!キク、お前もこの曲好きか?」

「キャンキャン!」

「いい曲だよな!?わかってくれるかキク!」

「へぇ…ここまで喜ぶんスね!気に入ってくれたなら何よりっス!自分、明日もここで曲かけるっスね!」

「おう!それは楽しみだな、詩音!」

キクの奴、もうすっかりみんなの人気者だな!

やっぱり、お前をここに連れてきて良かったよ。

 

 

ー翌日ー

 

あれ?

なんか、頭がボーっとすんな。

すげえだりいし…

でも、キクが学校で待ってんだ。早く行かねえと…

「ちょっと、権蔵。あんた、顔色悪いよ。熱測んなさい。」

「お袋!俺、学校に行かなきゃいけないんだよ!」

「いいから測りな!!」

お袋に言われて、俺は熱を測った。

「8度5分!?あんた、この熱で学校行こうとしてたのかい!?」

「お袋!俺、どうしても学校に行きてぇんだよ!!」

「何言ってんだい!この熱で行けるわけないじゃないか!クラスの子にうつしたらどうすんのさ!とりあえず、今日は学校休みな!」

クソッ!

俺が、キクの面倒をみてやらねぇといけねぇんだよ…!

キクが、俺を待ってんだよ…!

 

 

ー翌日ー

 

よし、風邪も治ったし、キクに会いに行くぞ!

昨日学校に行けなかった事、ちゃんと謝らねえとな…!

 

 

ー裏庭ー

 

…キクの奴、いねえな。

まだこんな時間だし、小屋で寝てんのかな?

「おい、キ…」

小屋の中を見ても、キクの姿はなかった。

「キク!?おい、どこ行ったんだよ!!キク!!」

「郷間!…あんた、どうしたの?」

「祐美!キクを知らねえか?キクがいねえんだよ!」

「…ああ、あんたは昨日休んでたから知らないっけ。」

「何がだ!?」

「…キクの新しい飼い主が見つかったのよ。昨日、先輩が連れて帰ってるのを見たよ。」

んだと!?クソッ!なんでこうなっちまうんだよ!

「あ、ちょっと!郷間!」

俺は、学校を走って出て行った。

クソッ、なんでだよ!

黙って連れて帰るなんて…そんなのアリかよ!?

まだ、ちゃんと別れも言ってないし、昨日の事を謝ってねえのによ…!

「…!!」

走っている途中で、黒い犬が視界に入った。

この姿は…キクだ!!

俺は、思わず叫んだ。

「キ…「ラッキー、ごはんの時間だよ。」

…え。

「亜耶、学校遅れるわよ!」

「置いてくぞ〜!」

「あ、うん。ちょっと待って兄ちゃん!今、ラッキーにごはんあげてるから!」

キクは家の中で、俺の知らない女の子があげたエサを食っていた。

…そうだよな。

お前は、あったかい家の中で飼い主に可愛がってもらった方がいいよな。

…それが、お前にとっての幸せなんだよな。

元気でな、キク…いや、ラッキー。

 

「キャンキャン!!」

 

ラッキーは、窓の向こうの俺に向かって吠えた。

 

「…じゃあな。」

 

 

 

これは、俺の兄弟との出会い、そして別れの物語だ。




久々投稿!
郷間君が完全に詩人っぽくなってますね。
キャラ崩壊しちゃってます。
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