ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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第1章(非)日常編⑤

合宿生活4日目。

「…眠い。」

7時前に目が覚めた俺は、朝の支度を済ませた。

7時丁度には、モノクマの耳障りな声が部屋中に鳴り響いた。

小一時間散歩をしてから、レストランに向かった。

レストランに着くと、既に10人集まっていた。

「菊池っちおっはー!」

「おっす、おはよう菊池!」

「おはよう、弟!!」

「菊池君おはよう。」

「お、おはようございます…」

「お早うございます。」

「お早うございます、今日も良い天気ですね。」

「おはようございます先輩〜!」

「おはようございます、同志よ。」

「…おはよ。」

「…ああ、おはようみんな。」

暫くして、残りの5人が来た。

全員が揃ったところで、各々が食事を始めた。

今日は、狗上もちゃんと近藤の飯を食べていた。

 

食事の後は、自由時間となった。

「なあ、狗上。」

「…あぁ?」

「少し、話さないか?」

「…チッ、めんどくせぇ。断る。」

「お前に、渡したい物があるんだよ。それだけでも受け取ってくれよ。」

「…罠とか仕込んでねえだろうな?」

「そんなの仕込んでねえよ。な、いいだろ?」

「…チッ、くだらねえモン寄越しやがったら張り倒すぞ。」

「くだらなくないかは保証出来ねえけど…こんなの、お前なら喜ぶんじゃないかと思って。」

俺は、狗上にラジコンを渡した。

「…。おい。テメェ、これどうした?」

「ガチャでゲットしたんだよ。…気に入ったか?」

「別に、そんなんじゃねえよ。」

完全に、ラジコンに見惚れている。

気に入ったんだろお前。だったらそう言えばいいのに。

「…おい。」

「なんだ?」

「…少しだけなら、話してやってもいい。」

すごく気に入ってんじゃねえか。

「そうか、ありがとう。…じゃあ早速聞くが、お前はなんで『超高校級の操縦士』に?」

「知りてぇなら、まずはテメェの話をしろよ。」

「ああ、悪い…俺は…」

「チッ、クソつまんなさそうだからやっぱいい。」

なんなんだ。このやりとり、なんかデジャヴだな。

「…俺は、ガキの頃から乗り物が好きでよ。整備したり、隠れて運転してたりしてたら、『超高校級の操縦士』としてスカウトされた。それだけだ。」

短いな…もっと、自分の才能についての思いとか努力した経験とか、語る事は無いのだろうか。

「…んだよ。なんか文句あんのか?」

「あ…別に。お前、なんでここにいるのか、心当たり無いか?」

「あるわけねえだろうが。入学式にパッと出て帰ろうと思ってたのによ。気付いたら、石だらけの場所で寝てたしよ。クッソ、なんなんだよ一体。」

石だらけの場所…遺跡の事だろうか?

…やっぱり、ここに来るまでの経緯はみんな同じだな。

「ここから出られたら、何がしたいんだ?」

「決まってんだろ。こんなクソみてぇなマネしやがった犯人をブッ殺す。」

「殺した後はどうするんだ?」

「考えてねえよ。」

「なるほどな。お前、趣味とか、特技とかあるか?」

「…機械いじりだ。」

「好きな物は?」

「機械だよ。…チッ。」

「…そうか。ありがとな。話してくれて。」

「チッ…早く失せろ。」

「あ、ああ…」

 

《狗上理御の好感度が上がった》

 

「…もうプレゼントも無くなったし、まだ行ってなかったハイキングコースにでも行ってみるか。」

ハイキングコースに向かい、歩いているとメダルを1枚見つけた。

さらに歩くと、モノクマ茶屋と書かれた小屋を見つけた。

小屋には饅頭が並べられており、小屋の中には、田舎の婆さんの格好をしたモノクマがいた。

『うぷぷ…よく来たねえ、お兄さん。秘伝のレシピで作ったモノクマ茶屋の自家製モノクまんじゅうだよ。食べていってね。』

饅頭には、モノクマの顔の焼印が押されている。

俺は、一番手前の饅頭を一個取って食べてみた。

…。

まっっず!!!

「ぶふぉあっ!!」

『ちょっとー!何すんだよ汚ねーな!!』

俺は、あまりの不味さに、口の中に含んだものを全て吹き出した。

なんだこれは。

とても人間様が食えた代物じゃない。

近藤の料理で舌が肥えたのを差し引いても、この不味さはもはや殺人級だ。

形容し難い禍々しい風味が、まだ口の中に広がっている。

こんな物を食い物として認めるのは、食に対する冒涜だ。

このリゾート地は、全てにおいて最高級なんじゃなかったのかよ。

俺は、饅頭を地面に叩きつけた。

潰れて花のように広がった汚物をよく見ると、モノクマメダルが入っていた。

「…異物混入じゃねえか。こんなの、この島じゃなかったら店ごと潰れてるぞ。」

『メダルゲットできてラッキーじゃん!!文句言わないの!じゃあ、そんなラッキーな菊池クンには…ジャジャーン!!もう一個プレゼントしまーす!!』

 

う そ だ ろ ! ?

 

『ほら、おいしいおいしいモノクまんじゅうだよ!食べたら天国に昇るような心地になれるよ!うっぷっぷ!』

ガチで昇天するヤツだろそれ。

『とにかく、持っていかないとルール違反とみなすよ!』

結局脅しじゃねえか。

俺は来た道を戻って、ホテルへ向かった。

「おかえりサトにい!!さては、あーちゃんのビューティフルフェイスを拝みに戻ってきたんだな!?あーちゃんったら、美少女すぎて、シットで殺されないかチョー心配!!美しさは罪ってゆーもんね!!」

すぐに殺すとか言い過ぎだ。少しは慎む事を覚えたらどうだ。

「くだらねえ事言ってねえで、早く昼飯を食いに行く支度をしろ。」

「ん!!?サトにい、なんか美味しそうな匂いがする…なんか隠してんの!?」

「別に。さっき、モノクマに饅頭を押し付けられただけだ。」

「え!?おまんじゅー!?あーちゃん食べたい!!」

「やめとけ。食ったら死ぬぞ。」

「あー!わかったー!!そんなこと言って、さてはあーちゃんを騙して一人で全部食べる気だな!?食べたら死ぬとか言っといて、本当はゲロうまなんだ!!そうなんでしょ!?」

なんだコイツ。どんだけ俺が食い意地張ってると思ってんだよ。

「附子じゃねえんだから…そんな事するか。本当にやめとけ。」

「あーちゃん、騙されないもんね!!本当はそのおまんじゅー、すごいおいしいんでしょ!?」

「その逆だ。死ぬ程不味いぞ。」

「ふーんだ!その手には乗りませんよーだ!!さ、カンネンしておまんじゅーよこせ!!」

しつこい。いい加減にしろ。

俺はここまで忠告したんだ、これでどうなっても自己責任だ。

「…本当に食うんだな?」

「うん!!」

「…ほらよ。後悔しても知らないからな。」

「いただきマスカット・オマーン!!」

クソガキは、饅頭をひったくると口の中に放り込んだ。

コイツ、一口で全部食いやがった。

どうなっても知らないぞ。

「まっっっっっず!!!何コレ!?オェエ!!まっず!!え、何この不味さ!!あり得ない!!エンジェルフォール並みに不味いんですけど!?何この腐ったヌートリアの肉をダンプカーで挽肉にしたものをオジサンが3日連続で履いた靴下に入れて下水に一週間くらい漬けた後ガソリンと生ゴミをトッピングしたみたいな味!!これ作ったヤツ、マヂでチョウチンアンコウのチョウチンをノドに詰まらせて死ねばいいのに!!」

…絶望的に分かりにくい例えだが、この汚物を食った身としては、言いたい事はなんとなくわかる。

これは、この世のものとは思えない程おぞましい代物だった。

「てかサトにい!!なんでこんな物押し付けたわけ!?ゴミクソ不味いんですけど!!」

押し付けてない。お前が自分で食ったんだろ。

俺は、ちゃんと忠告をした。それで勝手に食ったお前が悪い。

「でも、そんだけ不味いモン食っとけば、昼飯は一段と美味く感じるだろうよ。ほら、飯の時間だ。行くぞ。」

俺たちは、二人でレストランに向かった。

「おっ、あーちゃん珍しく早いね!菊池っちと一緒だから?」

「ねえ、ナツねえ聞いてよー!サトにいが、あーちゃんにゴミみたいな味のおまんじゅーを押し付けてきたんだよ!?サイアクだよね!?」

「…押し付けてない。コイツが自分で食ったんだ。俺は食うなと忠告した。」

「…どんだけ不味かったの、そのお饅頭。」

「そりゃあもう、地獄のような味だったよ…。」

「はは、見つけても食わねぇようにするわ。」

二人だけ、その饅頭に好奇心を示す奴がいた。

「ふむ…それだけ不味いのであれば、逆に気になりますね。お二人共、どこでそれを手に入れたのか教えて頂けませんか?」

「私も、動画のネタに使ってみたいな…カークランド君、後で一緒に行こう?」

「猫西さんに誘って頂けて光栄です。勿論、一緒に行きましょう。」

…チャレンジャーだな、あの二人。

こんな所で二人一気に脱落とか、洒落になんねえからやめてくれよな…?

そんな話をしていると、全員揃った。

全員で食事の挨拶をし、昼食を食べた。

 

昼食の後は、自由時間となった。

俺はまず、売店に向かい、ガチャを引いた。

今回は、花のブローチと、大きなダイヤモンドの付いたアクセサリーが出てきた。

景品をポケットにしまって戻ろうとすると、射場山と会った。

「…あれ、菊池じゃん。何やってんのこんな所で。」

「ああ…ちょっとガチャを回しにな。」

「ふうん。」

「お前は?」

「散歩。」

「…なあ、射場山。この後時間あるか?」

「なんで?」

「ちょっと、お前の話を聞きたいと思ってな。」

「…人と話するの苦手なんだけど。…まあ、今やる事ないし…いいよ。」

「ありがとう。じゃあ、場所どこにしようか?」

「そこのベンチでいいんじゃない?」

「そうだな。」

俺たちは、売店のベンチに座った。

 

「…。」

「…。」

「…なんか喋ってよ。気まずいんだけど。」

「…ああ、えっと…あ、そうだ。お前にプレゼントがあるんだ。こんなの、どうだ?」

俺は、射場山に花のブローチを渡した。

「…私に?」

「ああ。よかったら受け取ってくれ。」

「…ありがと。」

「なあ、射場山。お前の話を聞かせてくれるか?」

「…プレゼント貰ったし、いいよ。話してあげる。」

「じゃあ聞くが、お前はなんで『超高校級の弓道部』に?」

「…別に、大した話じゃないけど…小さい頃から弓道やってて、それ以外に特技とか無かったから、弓道ばっかりやってたら『超高校級の弓道部』にスカウトされたってだけの話。周りからは『鷹の目』なんて呼ばれたりするけど、それだって弓道ばっかりやってたから自然と目が良くなっただけだし。…みんなそう。私は大してすごい才能を持ってないのに、『超高校級』だってだけでチヤホヤして…ホント口ばっか。私は、何も知らないくせにそうやって表面だけの言葉を並べる奴が嫌いなの。」

射場山は、他人以上に自分に厳しいタイプだ。

何も知らない連中に、結果だけを褒められるのが気に食わないんだろうな。

「射場山。…俺、お前の事勘違いしてたよ。てっきり、孤高の天才って感じだと思ってたんだが…本当は全然そんな事無くて、自分を律してお前なりに必死で努力してたんだな。今の話聞いててよくわかったよ。…けどな、お前の才能は、決して大した事なくなんてないぞ。もっと自分に自信を持ってみろよ。」

「…ん。」

射場山は、照れ臭そうに下を向いた。

「そうだ。ここに来るまでの話とか、聞かせてくれるか?」

「…入学式に参加するために、校門をくぐろうとしてた。…そしたら意識を失って、気付いたらちょうどここで横になってた。」

「ここに連れて来た奴に心当たりは?」

「…無い。あんたはあるの?」

「色んな奴から話を聞いたけどやっぱり、誰が何の目的でこの合宿を主催してるのかはわかんねえままだな。」

「…ふうん。」

「お前さ、ここから出たらやりたい事とかあるのか?」

「…それ、言っていいの?それを語り出した奴が死ぬってフィクションではよくあるパターンだけど。」

「それはフィクションの話だろ?お前は、やりたい事を話しただけで死ぬなんて事、あり得ると思ってるのか?」

「…まあ、そうだけど。…私は、まだ決めてないかな。何をしたいかは、ここを出てから決めたいと思ってる。」

「そっか。見つかるといいな。やりたい事。」

「…ん。」

「じゃあ、趣味とか、好きな物とか教えてくれるか?」

「…弓道。」

「だけ?」

「悪い?」

「…いや、悪かねえけど…」

「…。」

「射場山、ありがとな。色々教えてくれて。」

「…ん。」

俺は、射場山に礼を言って、売店を後にした。

 

《射場山祐美の好感度が上がった》

 

『ピンポンパンポーン!!オマエラ、今すぐレストランに集合してくださーい!!』

…何だ?

今まで何も干渉してこなかったくせに、ここに来て召集…

何を考えているんだ一体。

俺はレストランに向かった。

 

レストランに着くと、既にいつもの10人は集まっていた。

饅頭を食いに行った二人は、なんと生きていた。

「あのお饅頭、大して不味くなかったですね。期待して損しました。」

「だよねえ。動画にするんだから、もうちょっとインパクトがある味が良かったな〜。」

何を言っているんだ。

動画のために不味い物ばっかり食って慣れてる猫西はまだわかる。だがジェイムズよ。なぜお前があのダークマターを完食できたのだ。

「そういえばさ、なんかあの遺跡、変な事すると呪われるらしいよ。」

「…こ、怖いですね…。」

近藤と床前が何か話している。

しばらくして、マイペース5人衆がレストランに来た。

『遅いでちゅ!!皆様が全員集合ちゅるのに30分かかりまちた!!全く、最近の若者はこれだから!!』

『そうそう。今すぐ集合って言われてるんだから、少なくとも10秒後には集まってないとねえ。』

「無茶言うなっス!!」

「ア●ムなら出来そうですけどね。」

「カークランド君、妙にアニメとか色々知ってるよね。」

『コラー!!そこ、脱線しないの!!』

『…学園長、オイラたち、完全にナメられてまちぇん?』

『まあ、ボクみたいなベリーキュートなクマをペロペロしたい気持ちは分からなくもないけど!』

「何の用だ綿埃共!!くだらないことでこの私を呼びつけたんだとしたら、ギッタギタに踏みにじってすり潰すぞ!!」

『へえ、そんな口利くんだ。へえ。ボクは、そういう威勢のいいヤツ嫌いじゃないけどね…うぷぷ!』

モノクマの左目が、朱く光る。

「神城、無闇に刺激するな。下手したら殺されるぞ。」

「…チッ。今だけは、愚民共に合わせてやる。ありがたく思え!!」

『ふう…良かったでちゅ。危うくゲームの駒が減るところでちた。』

「…それで、何なのさ。全員をここに呼び出すなんてさ。」

『…オマエラさあ、もう4日だよ!?なんで誰一人殺してないわけ!?オマエラ、最初はあんなに帰りたがってたくせに、もうどうでも良くなっちゃったんだ!?』

『オイラ悲ちいでちゅ。皆様が、ここまで不良生徒だとは思いまちぇんでちた。』

「君たちさ、ウチらをずっと離島に隔離してふんぞり返ってるみたいだけどさ、そのうち、警察がウチらを見つけるよ!!そうしたら、君たち二匹とも牢屋行きだよ!!」

『警察…?ぴきゃきゃ…皆様、本気でちょんなものをアテにちているんでちゅか?』

「…笑い声『ぴきゃきゃ』なんですね。」

「カークランド先輩、黙っててくださいよ。」

『残念でしたー!!この島には、警察自衛隊海軍空軍だーれひとり来ません!!オマエラは、この島に隔離された事を誰にも知られずに一生過ごさねばなりません!!オマエラってさあ、本っ当に…バカだよねー!!』

「ライア●ゲ●ムのフ●ナガじゃん。」

「黙ってろ。」

「…それで、用件は何ですか?私達を侮辱するためだけに呼び出したわけではありませんよね?」

『オイラ達は、皆様より100京倍忙ちいんでちゅ!ちょんなくっだらないことでわぢゃわぢゃ呼び出ちゅわけないでちょうが!!』

「だったら、早く話せよ。俺らも、お前らのドタバタ漫才に付き合う義理は無い。」

『うぷぷ…では、お話しましょう。ボクね、気付いちゃったんだ!!いくら外に出してあげるっていう条件をチラつかせても、小心者のオマエラには自分に実害の無い他人をいきなり殺すなんて事できないってね!!…足りないものがあったんだよ。』

「…足りないもの?」

 

 

 

動機だよ!!動機が足りなかったんだ。』

 

「動機…だと!?」

『今回、チキンな皆様のために、チュペチャルな動機をご用意ちまちた!こちらでちゅ!!』

モノハムは、クロッシュが被さった皿を持ってきて、クロッシュを開ける。

 

「…チキン?」

モノハムが持っている皿の上には、こんがりと焼かれたチキンが乗っていた。

「…は?なんだよこれ?」

「臆病者だけに、チキンって事?あっはは!そのジョーク、マイナス273.15℃!!」

「絶対零度ですね!」

頭のネジが飛んでる2人が、変なところで盛り上がっている。

「…そこは一体何を盛り上がってるんだ。」

『冷蔵庫の中も確認ちてみてくだちゃい?』

「おわぁあ!?何これ!?冷蔵庫の中が、全部鶏肉になってる!!」

「…ほんとっス。全部カシワになってるっス!!」

「カシワ?柏餅の葉っぱですか?」

「…鶏肉の事だよ、カークランド君。」

『これが動機だよ!ボクは今日から、鶏肉以外の食べ物は一切持って来ないよ!売店のインスタント食品も、全部撤去させていただきました!!』

「くだらねぇ。確かに、毎日鶏肉しか食えねえのはキツいかも知れねえけど…そんなしょうもないイタズラで、俺らが人を殺すと思ってんのか?」

『うぷぷ…殺すよ?早ければ今日か明日にでも、この中の誰かが死体になってるかもね!じゃあね!』

モノクマとモノハムは去っていった。

「…ケッ、好き勝手言いやがって。」

「全くだよ。鶏肉で殺人なんて起こるわけないじゃん。」

「…で、でも、この中に鶏肉が嫌いな人がいたら…」

「だからって、兄弟を殺すような奴はこの中にはいねえ!!」

「近藤さん、美味しいお料理をお願いしますね?」

「任せて!!いくら素材のバリエーションが少なかろうと、それで音を上げるようじゃ料理人失格だっつーの!」

今日は、鶏肉パーティーだった。

材料が一種類しか無かったが、それでも近藤の料理は、俺の舌を全く飽きさせなかった。

 

食事の後は、自由時間となった。

「あと話をしてないのは…」

俺は、ホテル内を歩き回った。

「…いた。おい、神城。」

「あ?なんだモブ。愚民如きが、この私に何の用だ!!」

「神城、お前に渡したい物があるんだ。この後時間あるか?」

「フン、テメェら愚民のために割いてやる時間なんて、1秒も無えんだよ!!…だがまあ、私は女神のように優しいからな。貴様の態度と私への貢ぎ物次第では、貴様と話をしてやらんでもない!!」

「…くっ、お…お願いします神城様。お話を聞かせてください。」

「フン!」

グリッ

「!!?」

一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

次の瞬間、右足の甲に激痛が走る。

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!」

っふぅおぁあああああああああ!!!

痛っっっっっっってぇええええええええええええ!!!

…コイツ、ヒールで人の足を踏みやがった…!

あまりの痛みに、俺はその場で転げ回った。

神城は、俺の顔の前に左足を突き出した。

「フン、愚民には地べたがお似合いだ。貴様のせいで靴が汚れた。…舐めろ。」

「っっっっ…」

「どうした?早く舐めろ。…舐めろっつってんだろうがモブがッ!!」

神城は、俺のプライドをズタズタにへし折ってくる。

「くっ…」

俺は、右足の激痛に耐えつつ、神城に近づいた。

「…おい。テメェ今、私のパンツ見たろ。」

…は?

「テメェ…愚民のくせに、いい度胸してるじゃねえかよ!!この変態野郎!!あぁん!?」

完全に言いがかりだ。

誰がお前のパンツなんか見るか。

「テメェには、キツいおしおきが必要らしいなぁ…立て!!」

「…。」

「オラァ!!」

「ぐっふぅ!!?」

っっっ、痛っっっっっっっっっっっー!!!

あまりの痛みに、俺はその場に蹲り、悶え苦しんだ。

ソイツは、俺の、男の体で一番大事な部分を蹴りやがった。

「フン、今日の私は機嫌がいい。特別に、私の部屋に入れてやる。ありがたく思え!!」

…コイツ、もしかして最初から金的がしたかっただけなんじゃ…。

 

 

『超高校級の外科医』の個室

 

「フン!!どうだ愚民!!私の部屋は!!」

「は…はぁ…非常にエレガントかつマーヴェラスです。さすが神城様のお部屋ですね!」

「ふはははは!!だろ!?もっと褒めてもいいんだぞ!!」

神城の部屋には、あらゆるところに過激なプレイをするための道具が置かれていた。

本棚には、申し訳程度に医学や薬学の本が並べられている。

もう『超高校級の外科医』って言うより、『超高校級の女王様』だろ。

「それで愚民、私に貢物があるって言ってたな!!何が貢ぎたいのか、物によっては受け取ってやらん事も無えぞ!!さっさと見せてみろ!!」

「…お気に召すかはわかりませんが、このような物をご用意させて頂きました。」

神城にアクセサリーを渡す。

「へえ、本物のダイヤじゃねえか。50カラットはあるな。貴様のような愚民がよく用意できたな!褒めて遣わす!!」

「あ…ありがたき幸せ…」

「フン、まあ、私は宇宙より広い心を持ってるからな。貴様の功績を称して、この私が自ら話をしてやろう!!」

「ありがとうございます…」

「おい愚民。足がむくんだんだけど。ちょっと四つん這いになれよ。」

ぶん殴りてえ…

「くっ…こうですか?」

「そうそう。…あー、いいわこれ。おい愚民、今日から貴様を足乗せ係に任命してやろう!ありがたく思え!!」

 

ふ ざ け ん な

 

「あ、ありがとうございます…」

「モブ、貴様に質問する権利をやる。質問によっては、私が自ら答えてやろう。」

「ありがたき幸せ…で、では…神城様は、なぜ『超高校級の外科医』に?」

「ほう…貴様、この私の才能に興味があるのか。いいだろう。特別に教えてやる!!…神が創造した最高傑作は楽園でも、この世界でも、キリストでもない。この私だ!!いや、私こそが神そのものだ!!」

大丈夫かコイツ…一度医者に診てもらった方がいいんじゃないか?

あ、そっか、こいつが医者だった。

「さすが神城様…ですが、俺のような愚民の低脳では、神城様の崇高なるお言葉を理解できませんでした。…もう少し、このモブめにわかるように説明して頂けませんか?」

日本語訳:頭おかしすぎて何言ってんのかわかんないからちゃんとわかるように説明しろ。

「フン、しょうがねえな全く。…私は、生まれた瞬間からその他共とは違っていた。親ですらも、私の前ではただの『その他』に過ぎなかった。そうして15年生きてきてわかったが、この世界の私以外の全ての人間は猿も同然だ。生まれ持った才能が、全てにおいて私より遥かに劣ってるんだよ!…いや、そもそも完全無欠のこの私が、愚民共と比べられる事自体が屈辱なんだよ。私はな、完璧すぎたんだ。あまりにも天才すぎた。私が完璧すぎるが故に、世界が私について来られなかったんだ。常に私は、愚民とは違う景色を見ていた。小銭稼ぎのために医師国家試験を受けてみたんだが、それも余裕でクリアしちまってな。それで、私は『超高校級の外科医』に選ばれたんだよ。全く、愚民風情が私の肩書きを決めるなんておこがましすぎんだろうが!!…でも私は女神のように寛大だからな。仕方ないから、私が愚民共に合わせて『超高校級の外科医』を名乗ってやった。」

あたかも周りが悪いみたいな言い方をしているが要するに、自分が他人に合わせる事が出来なかったから孤立して、結局やりたい事も見つからないまま、適当に選んだ道で『超高校級』という肩書きを手に入れたって事かよ。

希望ヶ峰学園に入るために毎日必死で努力してる奴や、あと一歩で『超高校級』に手が届かなかった奴、進みたい道とは違う才能で『超高校級』に選ばれてもその才能を磨くために切磋琢磨してる奴…そういう奴らだっているっていうのによ。そういう奴らを見下して、適当にやったらなんとなくできたから『超高校級』を名乗るっていうのは、なんかいけ好かないな。

「いやあ、素晴らしいですね、神城様は。さすが、俺らのような愚民とは違った世界を見ていらっしゃいます。このモブめも肖りたいものですなあ。」

「フン、貴様如きがこの私に1ミリでも近づこうなんて、5000阿僧祇年早えんだよ!!」

いちいち癇に触る女だ。まさかたった4日で、本気で殴りたい女が2人も見つかるとはな。

「そういえば、神城様は、なぜこの合宿に参加させられているのか、心当たりは無いのですか?」

「愚民の分際で、私に許可なく話を変えるんじゃねえよ!!」

痛い痛い痛い!!ヒールで踏むな!!

「フンッ、仕方なく愚民共が主催する入学式に、この私が直々に参加してやろうと校門をくぐった途端、意識が途切れて…気がついたら、診療所の診察室に突っ伏していたんだ。しかもその後、たまたまベッドで寝てた帽子と遭遇して…アイツは、なんでこの私にひれ伏さねえ!?まるで自分が私と対等かのような態度で接してきた上に、頭のおかしい言動でこの私を振り回しやがって…本っ当に屈辱!!」

頭がおかしいのはお前の方だろ。自覚しろ。

しかし、コイツもジェイムズの天然発言には勝てなかったか。

「まあどうせ、神であるこの私に、恐れ多くも嫉妬した愚かな塵芥が仕組んだ事だろうな。…だが、自分を『超高校級』などと名乗って、他のクズ共とは違う存在だと錯覚してる愚民共と同じ扱いをされているのが気に食わねえ。」

俺も、お前が仲間に対してそんな事を言うクズだとは思わなかったぞ。

「…おいモブ。もうこの話題は飽きた。次の話題を用意しろ。」

「そうですね…神城様は、ここから出られたらまずは何をするおつもりですか?」

「フン、いいだろう。教えてやる。もちろん、私にこんな屈辱的な仕打ちをしたゴミに制裁を加えに行く。」

「それは素晴らしい事ですね…」

「当たり前だ!…おいモブ、次の話題。」

「ええと、神城様。ご趣味とご特技、あとはお好きな物はなんですか?」

「フン、趣味は、愚民を憐む事。特技は、この私そのもの。好きな物はもちろん、完璧すぎるこの私だ!!」

腹立つなコイツ。

まあ、それは今に始まった事じゃないが。

「なんだテメェ。面白い質問はできねえのか!!つまんねえモブだな!!もういい、早く私の部屋から出て行け!!部屋が汚れる!!」

神城は、俺を部屋の外に追い出した。

…自分から部屋に招き入れておいて、なんだこの女は…。

俺は、部屋に戻って寝る支度をし、そのまま眠りについた。

 

《神城黒羽の好感度が上がった》

 

 

コロシアイ合宿生活5日目

俺は、7時前に目を覚まして、朝の支度をした。

ちょうど7時になると、モノハムの甲高い声が鳴り響く。

…この合宿も、今日で5日目か。

モノクマは、殺人が起こるって言ってたが、そんな事あるはずがない。

…そうだ、今日は、近藤が朝飯を作る所を見に行こう。

この時間なら、まだ作り終えていないはずだ。

俺は、レストランへと向かった。

 

レストランに着いた。

「…あれ?」

おかしい。

普段なら、とっくに近藤が朝飯を作り始めてる時間なんだが。

レストランの照明が点いていない。

「おい、近藤?まだ来てないのか?」

返事はない。

レストラン中を見渡しても、近藤の姿は見当たらない。

…アイツが遅刻するとは思えないんだが。

一応、ホテルの方も見てみるか。

俺はホテルに戻った。

 

「あっ、おはようサトにい!…どったの?さっきまで外にいたの?はっ!まさか!あーちゃんに会いたくなったんだな!?」

「おい、近藤知らねえか?」

「ナツねえ?知らないよ?まだ寝てんじゃないの?」

「…もう飯を作り始めてる時間なんだが。」

「さあ?きっと、カローで倒れたんだよ!ずっとみんなのごはん一人で作ってたもんね!ロードーキジュンホーを守れー!!」

「縁起でもない事言うな。」

 

 

 

 

『オマエラ、死体が発見されました!!モノクマーメン遺跡にお集まりください!!』

 

 

 

 

…え?

嘘だろ?

死体…?

そんな馬鹿な話があるか、殺し合いなんて起こるわけ…

俺は、モノクマの放送を信じられなかった。

それでも、走って遺跡へと向かった。

ぬかるんだ道を駆け抜けて、遺跡の中へと入っていった。

…頼む、どうか嘘であってくれ…!!

そう願いながら、俺は最奥の黄金の部屋の扉を開けた。

そこには…

 

 

 

目を疑う光景が広がっていた。

いいや違う、わかっていたはずだ。

わかっていたはずなのに、俺の頭が、それを受け入れる事を拒んだんだ。

その場に立ち込める腥い匂い。

床に広がる、暗く、それでいて強烈な緋の色。

胸に深く突き刺さった、照明の光を浴びて煌々と輝く緋色に染まった刃物。

ソイツは、電源が切れたかのように全ての活動を停止し、ただそこで無気力に転がっていた。

目の前の光景は、俺に痛烈なまでに現実を突きつける。

まるで、俺たちの日常を、思い出を、希望を…その全てを嘲笑うかのように。

…どうしてお前が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超高校級のパティシエ』近藤夏美は、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コロシアイ合宿生活 残り15名

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