ダンガンロンパリゾート   作:M.T.

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あれだけ外道っぷりを発揮しておいて、圧倒的な票数の床前ちゃんw

床前ちゃんのエピソードは、今までの番外編とちょっと形式を変えました。

サイコパストコマエダ様のエピソード書くの楽スィー!!


番外編⑬ 初恋編

いつも通りの日常。

毎日学校に通っては授業を受けて、の繰り返し。

希望ヶ峰学園での日々も、思ったより平和でつまらない。

でも、ひとつだけ…私の人生で、唯一で最大の楽しみがあります。

「はー、やーっとジュギョー終わったー!」

「ずっと授業受けてたみたいな言い方するな。お前、1時間目からずっと寝てただろ。」

「なにをー!?あーちゃんがずっと寝てたって言いたいのかサトにいテメェコノヤロー!!」

「全くもってその通りだよ。」

「ふわぁ…」

「なんだとー!?そんな事言ったらなー、リタねえだってずっと寝てたぞー!?」

「人を道連れにするな。」

「そうですぅ。責任転嫁なんて、最低ですぅ。」

「なんだよサトにいとリタねえのドケチー!!タラバガニの食べられない部分!!」

「それ、どういう意味なんだよ。全く…」

「ふわぁ…相変わらず褒めてるのか貶してるのかわかんないですねぇ…」

「そうだな。でもリタ、授業中に寝るのはどうかと思うぞ。」

「ふわぁ…すいましぇん…善処しますぅ。」

「そーだぞリタねえ!!寝んなコノヤロー!!」

「お前は人の事言えねえだろ。話がこじれるから黙ってろ。」

「わーヒドイ!!サトにいのバーカ!!みちみちウンコたれ!!」

「食事時に大声でそういう事言うな。汚えなバカ。」

今日も、彼はよく居眠りをする外務大臣と一緒に、なぜか同じクラスにいる子供と喧嘩している。

そんな彼も、魅力的でたまらない。

…いいなぁ。私も、彼に怒られてみたい。

彼に罵ってもらえるなんて、考えただけで夢心地です。

アリスさん、ちょっとだけでいいからそこかわっていただけませんかね?

なーんて言えたら苦労しないんですけど。

 

さてと、ちょうど昼休みだし、ちょっと散歩でもしようかな。

せっかくの昼休みだけど、遊ぶ相手なんて誰もいませんしね。

「ねえねえ、ウチの新作スイーツ食べてよ!」

「お、これはまたうまそうなモン作ったな夏美!」

「チッ…いちいちうるせぇんだよスイーツバカが。」

「おい、そういう事言うなよ狗上。せっかく作ってくれたんだからよ。」

「うるせェサッカー野郎。」

「うまそうだな近藤!俺にも分けてくれよ!」

「うん、いいよー!どんどん食べて!」

今日も、馴れ馴れしいパティシエがみんなに作ったお菓子を見せびらかしている。

私はこの人が作るスイーツに全然興味が無いし、それを食べる人達の幸せそうな顔が正直不愉快だ。

あと見せびらかすのは勝手だけど、ここでやるのは通行の邪魔だから本当にやめてほしい。

「…はあ、あの…」

「お、うまいなコレ!」

「でしょ!?ウチの自信作だからね!」

「ホントか!?すごいな夏美!」

「ヘヘン、ウチも一流のパティシエだからねー。」

「チッ…うるせェなぁ…」

「すみません。通行の邪魔だからどいてほしいんですけど…」

「なあ、これはなんていうんだ?」

「えっとねー、そっちがフレンチクルーラーで、こっちがエクレアだよー。」

「へぇ、そのフレ…なんとか、うまいな!」

「えへへ〜。ねえ、カッちゃん。お味はどうですか〜?」

「俺?ああ、うん。美味いよ。特にこれとか…」

「あ、やっぱり!?それね、一番頑張って作ったんだよ!」

「やっぱりか!?うん、やっぱうめえよ!」

「良かった〜!どんどん食べてね!」

「えっと、すみません。聞こえてないんですか?」

「チッ…ちょっと菓子が作れるからっていい気になって見せびらかしやがって。鬱陶しいんだよテメェ。」

「あっ、狗上っち!今スイーツをバカにしたな!?」

「ああしたよ!俺は別に甘いモンは食わねえからな!!そんなに見せびらかしたいなら、外人かクソガキあたりに食わせておけ!」

「何その言い方!…もう怒った!絶対ウチのスイーツを、おいしいって認めさせてやるんだから!!」

「夏美の奴、急にスイッチ入ったな。」

「ああ…これ、止めた方がいいのか?」

…はあ、やっぱり見えていないのか。

『彼』以外の人間が私を見ているかいないかはどうでもいいとはいえ、ここまで無視をするのはさすがに人格を疑います。

狗上さんは、元々クラスの方にも関心がないからまだ許せるんですけど、玉木さんと郷間さんと近藤さんに関しては、他人には馴れ馴れしいくせに私を全然『見ない』のが腹立ちます。

もはやわざとやってるとしか思えないんですよね。

もう、いっその事『処分』するか…

 

「おい、お前ら。床前が通りたがってるだろ。どいてやれよ。」

 

「…!」

「え、あ、嘘!?床前っち、いたの!?ごめんね気付かなくて!」

「ごめんな床前!俺達、そうとは知らずに出口塞いでたんだな!」

「ごめんな渚!全く気付いてやれなかった!!」

「チッ…いたならいたって言えよ。」

さっきからずっと声をかけてたんですけどね。

なんでこっちが悪者にならなきゃいけないんでしょうか?

「おい、お前ら。いくらなんでもそれはひどいだろ。それ、集団無視だからな?」

「悪い…いたのに気付かなくて…」

「ったく、なんで気付かないんだよ。…あ、床前。大丈夫か?なんか用事あったんだろ?」

「あ、はい…菊池さん、ありがとうございました。」

「いいって。また無視されたら俺に言えよ。」

「…はい。」

やっぱり『彼』は、いつどこで何をしていても魅力的です。

え?私が誰かって?

申し遅れました。

 

私の名前は床前渚。

『超高校級の幸運』です。

唐突ですが、私には想いを寄せている方がいます。

『超高校級の弁護士』菊池論さんです。

これは、私が、彼に生まれて初めての恋をするまでのお話です。

 

 

 

私にはもう、家族と呼べる人はいません。

私の母親は、私が物心つく前に事故で亡くなりました。

私と当時まだ1歳だった弟は、父に育てられました。

私の父は最低な男で、毎日働きもせずに酒とギャンブルに溺れ、借金ばかりしていました。

そして、気に入らない事があるとすぐに私や弟に手を上げました。

学校には行かせてもらえず、食事もろくに食べさせてもらえませんでした。

周りの住民達は見て見ぬフリで、誰も助けてくれませんでした。

地獄のような日々でしたが、ひとつだけ希望がありました。

それは、私の幼い弟でした。

彼は、どんなに自分が暴力を振るわれても、必ず私の事を心配してくれて、私を姉として慕ってくれました。

私にとっては、弟が全てでした。

私は、弟がいたからどんな苦痛にも耐えられました。

弟は、お腹いっぱいご飯を食べる事が夢だと言っていました。

私は、弟の夢を叶えてあげたいとずっと思っていました。

 

ある日、警察に通報した近隣の住民によってついに父の悪行が露見し、父は虐待の容疑で逮捕されました。

その後私達は、心優しい夫婦に引き取られました。

夫婦の間には、高校生の娘がいましたが、彼らは実の娘と私達を分け隔てなく可愛がってくれました。

義姉(ねえ)さんもまた、私達姉弟を本当の弟妹のように可愛がってくれました。

私は、お義父(とう)さんとお義母(かあ)さん、そして義姉(ねえ)さんが大好きでした。

私達は、5人で一緒に幸せに暮らしていました。

しかし、幸せは永くは続きませんでした。

 

 

 

私以外の4人は全員、突然家に押し入ってきた浮浪者に刃物で刺されて殺されました。

幸か不幸か、たまたまかくれんぼで弟と一緒に遊んでいた私だけは見つからず、生き残りました。

私から家族を奪った浮浪者は、警察に捕まった実の父親でした。

彼は、私の母が亡くなった後精神が壊れ、私達に八つ当たりするようになったそうです。

そして、それが原因で豚箱に放り込まれた…だから彼から『幸福』を奪った私達を殺して復讐する気だったそうです。

私は、わけのわからない理由で私の最後の『希望』だった家族を目の前で奪われて、ただ絶望しました。

 

 

 

プツン

 

 

 

その時、頭の中で何か大事な物が切れる音がしました。

そして、今まで止まらなかった身体の震えがピタリと止まりました。

見つかれば殺されるのはわかっているはずなのに、私はいたって冷静でした。

怒り、悲しみ、恐怖…そういった感情が、一切沸き起こらなくなりました。

運が良かったのか、私はたまたまキッチンの戸棚に隠れていたので、中にあったナイフを手に取って…

 

 

 

そこからは、あまり覚えていません。

気がつくと、足元には血塗れの父の死体が転がっていました。

私が握っていたナイフもまた、死体と同じように血塗れになっていました。

反撃されたのか、私も腕を怪我していましたが、全く痛みませんでした。

父の死体をまじまじと見て、私は悟りました。

 

私は、この人を殺したのか。

 

生まれて初めて人を殺した。

その時、私の中で沸き起こったのは、実の父親を殺してしまった事に対する薄っぺらい罪悪感でも、家族の仇を討ったという生温い達成感でもありませんでした。

 

 

 

 

 

なんて美しいんだろう。

 

 

 

 

 

私は、絶望の表情のまま硬直した父の顔に魅了されました。

私は、ずっと嫌いだった父の顔を、ようやく好きになることができました。

今まで満たされなかったものがやっと満たされて、とても幸福な気分になりました。

でも、まだ足りない。

もっと欲しい。

私は、もっと満たされたい。

その日から、私は自分から幸福をつかむために行動を起こしました。

 

私が父を殺した事件については、一家心中という扱いになりました。

私は、家族に死なれた哀れな娘として、里親に引き取られました。

そして、私は表向きは普通の女の子を演じながら、裏では快楽のために無差別で人を殺す殺人鬼と化しました。

ある時はムカつくクラスメイトを皆殺しにするために赤の他人を唆してハイジャックさせたり、ある時は病院にウイルスをばら撒いて他の患者を殺したり、ある時は山の中で迷ったフリをして救助隊を誘き寄せて突き落としたり…

私は、人を殺す度に幸せな気分になり、人を殺す事をやめられませんでした。

偶然をまるで必然のように強制的に引き起こし、引き起こした必然はまるで偶然のように錯覚される。

そんな才能のおかげで、私の犯行は一切露見する事はありませんでした。

そして、運がいいのか悪いのか、里親も含め私の周りの人間はほとんど私に関心を示しませんでした。

誰も、私を疑うことすらしなかった。

誰も、本当の意味で私を見ようとしなかった。

見えていないなら逆に好都合だ。

私は、自分の快楽のためにお前達から一方的に奪い、殺し、絶望に叩き落としてやる。

私1人だけが幸福になるための踏み台にしてやる。

誰も私を止める事なんてできない。

だって、誰にも私の事は『見えていない』のだから!!

 

ある日、私の元に希望ヶ峰学園からの通知が届きました。

私は、79期生の『超高校級の幸運』に選ばれました。

私の里親は、自分の娘が希望ヶ峰の学園生徒として選ばれた事に喜んでいました。

しかし、それはあくまでも『希望ヶ峰学園の生徒の親』だと周りに自慢できるからだとわかり切っていたので、両親が喜んだところで私はちっとも嬉しくありませんでした。…元々この他人(ひと)達の事は大して好きでもなかったですしね。

私にとってこのスカウトはどうでもいい事だったのですが、スカウトを断る事はできなかったので、私は希望ヶ峰学園に進学しました。

私は、この時まだ気付いていませんでした。

私が希望ヶ峰学園にスカウトされたのは、偶然でも幸運でもない。

これは揺るがない必然であり、運命だったという事に。

 

 

 

入学式の日、私は偶然同じクラスの男子生徒とぶつかってしまいました。

 

「きゃっ」

「おっと、ごめん。」

 

見上げると、その人の顔が目に飛び込んできました。

短く切り揃えた黒髪に、猫のようにつり上がった目元、イーグルアイのような灰色の瞳。

太くて薄めの眉毛に、小学生を思わせるような幼い顔立ち。

その顔からは信じられない程男らしくよく通る声。

私は、目の前の男子生徒に魅入ってしまいました。

彼は、私の亡くなった弟によく似ていました。

「す、すみません…」

「あ、ああ。俺も、ちゃんと周り見てなかったからな。悪かったよ。大丈夫か?えっと…」

「あ、床前渚です。『超高校級の幸運』です。」

「へえ、床前、か。俺は菊池論っていうんだ。よろしくな。」

「菊池さん…確か、私と同じクラスですよね?」

「あ、そういえばそうだな。配られた名簿にお前の名前あったよ。」

「覚えててくれたんですか?」

「…まあ、職業柄人の名前は覚えてないと困るからな。一応名簿は覚えたよ。でも、顔まではさすがにわからんな。」

「そりゃそうですよ。今日入学式に参加したばかりなんですもの。」

「そういやそうだな。」

この人は、初対面の私の名前を覚えていてくれた。

もしかしてこの人は…

…いや、そんな訳ないか。

私の事が『見えている』人なんて、いるわけないじゃない。

そんな話をしていると、時間になった。

「そろそろ俺達も行かないとな。」

「あ、はい…」

 

 

ー体育館ー

 

私は体育館に行き、席に座って入学式の開始を待ちました。

式が始まり、学園長が開会の辞を述べると、新入生は出席番号順に名前を呼ばれました。

私も呼ばれるのかと思っていましたが、私の名前は呼ばれず、私の一つ後ろの出席番号の生徒が呼ばれました。

…ああ、またこのパターンか。

存在を忘れられるのは慣れてますけど、こういう大事な式の時に忘れるなんて、人としての常識が欠如しているとしか思えないですよね。

まあ、私が常識を語るのはおかしな話なのかもしれませんが。

次のクラスの出席番号1番が呼ばれる、その時でした。

 

「あの、少しいいですか?」

 

手を挙げて発言したのは、菊池さんでした。

彼が式を中断して何かを言おうとしていたのを見て、体育館中がざわつきました。

「…なんでしょうか?」

傍にいた教頭先生が、学園長の代わりに応対しました。

「僕の聞き間違いだったら申し訳ないのですが…今、僕のクラスの人を1人呼ぶのを忘れていませんでしたか?」

…え。

周りは全員気付かなかったのに、菊池さんは私の名前が呼ばれなかった事に気付いていたんですか…?

「…はぁ、君は何を言っているんだね。さあ、早く式を再開しましょう…」

「…あ。」

「…学園長?」

「すまない、どうやら君の指摘は正しかったようだ。私とした事が、つい呼び間違えてしまったよ。」

「いえ、僕はいいんですけどね。」

「ゴホン、では気を取り直して…『超高校級の幸運』床前渚。」

「あっ、ハイッ…」

私は、予想外の出来事に、つい声が裏返って、うまく返事ができませんでした。

体育館にいた、菊池さん以外は全員『そういやこんな奴いたっけ』という目で私を見ていました。

菊池さんは、後ろを振り向き、右手でサムズアップをしました。

私は、菊池さんがなぜわざわざあんな事を言ってくださったのかわからず、混乱していました。

 

入学式が終わった後、私は菊池さんを探しました。

「菊池さん!」

「おう、床前。なんか、さっきはごめんな?変に目立たせちまって。なんかお前が主役みたいになっちまったな。」

「いえ、そんな…その…さっきは嬉しかったです。ありがとうございました。」

「そっか。嫌じゃなかった?良かったぁ。さっきので嫌われてたらどうしようかと思って正直ちょっと怖かったんだよ。」

「…いえ、嫌いとか…そんなわけない、です…でも、菊池さんはなんで今日会ったばかりの私のために、あそこまでしてくださったんですか?」

「…別に、言いたい事を言っただけだよ。俺、気になった事はなんでもズバズバ言っちまう方だからさ。」

「はあ…」

「あのさ、お前いっつもあんな風に忘れられたりとかしてんのか?」

「え、ええ…まあ…でも、いつもの事ですから気にしないでください。存在感が薄い私が悪いんです…」

「お前が悪いわけないだろ。もしまた誰かに無視されたりしたら、いつでも俺に相談しろよな。すぐに、お前はここにいるんだって言ってやるから。」

「あ、ありがとうございます…」

「あ、それも嫌だったら言えよ?余計な事しようとしてるかもしれないからな。」

「いえ、余計だなんてそんな事…あ、あの…」

「ん?」

「えっと…菊池さんは、ただのクラスメイトになぜそこまでしてくださるんですか?」

「…ただのクラスメイトだから。それ以上の理由がいるか?」

「…!」

 

この人は、今までの人間とは違う。

この人は、私の事を『見てくれている』。

その瞬間、私の中の世界が一瞬で作り変えられた。

今まで無色で平坦だった世界が、鮮やかに色づいて見えた。

そして、身体中が熱くなって、胸の鼓動がガンガンと鳴り響いた。

まるで何かに締め付けられるように、胸の奥が苦しくなった。

それなのに、菊池さんの顔と声が頭から離れない。

なんだろう。

この身が灼かれるくらいに、彼の事が欲しくてたまらない。

もっと私の事を見てほしい。

わからない。

今まで、こんな気持ちになった事がない。

なんだ、私の中で渦巻く、この感情は。

 

「おい、どうした?大丈夫か?」

「あ、いえ…」

「あ、じゃあみんな待ってるから俺もう行くわ。じゃあな。」

「はい、また明日…」

 

前に、こんな状況を絵本で読んだ事がある。

その時は、私は登場人物に全く共感できなかった。

これから先も、共感する事なんてないんだろうと思っていた。

でも、今なら少しわかる気がする。

彼は、まるでその絵本に出てきた王子様のように、私の心を奪っていった。

 

…これが、恋というものなのかな。

 

きっと、私がこの学園にスカウトされて菊池さんに出会ったのは、偶然なんかじゃない。

全部、こうなる運命だったんだ。

私と彼は、最初から運命で結ばれていた。

彼は、私だけの王子様。

もう、他の人間なんてどうでもいい。

彼だけに、私を見ていてほしい。

彼だけに、私の全てを捧げたい。

私は、彼のためならなんでもすると決めた。

彼を守るためにこっそり後ろを歩いたり、こっそり家にお邪魔したりもした。

いつどこで何をしていても、私にとって彼は理想の人だった。

私は、彼のためだけに生き、彼のためだけに死のうと誓った。

 

 

 

ー数週間後ー

 

なんだろう?

織田さん達男子4人が、たむろして話しています。

「ムフフ、吾輩はついに女子更衣室に侵入する方法を思いつきましたぞ!!」

「アラ、ケンタロウちゃん。それはいいのだけれど、ちょっと声が大きいわよ?女子に聞こえちゃうわよ。」

もう聴こえていますよ。

人がいるところでそんな話をするなんて、ただの馬鹿としか思えないのですが。

まあ、私の事が見えていない彼らにとっては、誰にも見られてないと思ってるんでしょうかね。

不愉快極まりないです。

「あっ…吾輩とした事がつい…ムフフ、この方法を使えば、レディの美しいボディを見放題ですぞ!」

「わぁ、最低ですね織田さん!」

「か、カークランド氏…!?今、なんと…」

「最低ですね織田さん!」

「二度同じ事を言えって言ったわけじありませぬぞ!!カークランド氏は仲間だと思っていたのに…!」

「ええ、織田さんは級友ですが、それとこれとは話が別です。紳士たる者、女性に不埒な行為をする事は許しません!」

「フン、そういうわけだ織田よ。俺様も、貴様の作戦には反対だ。」

「そう思いますよね!?森万さん!」

「フッ。」

「そうだ、カークランド氏!!日本文化を学べるチャンスでありますぞ!!」

「えぇ!?それは本当ですか織田さん!?では、私も参加します!」

「カークランドよ。言いくるめられてどうする。」

「あーあ、ダメだコリャ。ジェイムズちゃん。騙されちゃダメよ。」

なんか…もう、やりとりが低次元すぎて見ていられません。

彼らにも、少しは菊池さんを見習っていただきたいものです。

全く、菊池さん以外の男がここまでひどいとは思いませんでした。

「ムフフ、そうと決まれば早速女子更衣室に突撃ですぞ!!」

「まだ何も決まってないじゃない。…はあ、まあいいわ。ここまで来たらアタシも協力してあげるわ。」

「フン、低次元すぎて止める気にもならん。勝手にしろ。」

「皆さん本当にそういうの好きですねー。」

…どうする?

どうせ、声をかけたところで反応してもらえないんだろうし…

いっそ、見えてないんだから、また殺すか…

「なあ、お前ら何やってんだ?」

わぁ、今日も菊池さんは素敵です!

そこら辺の砂利共とは大違いですね!

「き、菊池氏!!」

「あらサトシちゃん。実はね、今ケンタロウちゃんが、女子更衣室に侵入しようとしてたのよ。」

「え、エカイラ氏!!余計な事言わないでくだされ!」

「アラ。いいじゃない別に。サトシちゃんも一応男の子なんだし。」

「それもそうですね!」

「カークランドよ、貴様は一体何を納得したんだ。」

「…あのさ、お前ら、そんな事言っていいの?」

「ん?どういう意味でありますか?ここには、吾輩達男子しかおりませぬぞ!」

「いや、言いにくいんだけど…床前、ここにいるぞ。」

「!!?」

ああ、やっと気付きましたか。

全く、菊池さん越しじゃないと私が見えないなんて、人間として終わってますよ。

まあ、こんな最低な人達に私が見えたところで、それはそれで不愉快極まりないんですけど。

「えぇえええ!!?ナギサちゃん、いたの!?いつから!?」

「…織田さんが、作戦を話し始めたあたりからずっとです。」

「申し訳ございません。てっきり、ここには私達4人だけしかいないものかと…」

「お、俺様の超能力をもってしても存在を察知できなかっただと…!?貴様、まさかステルス能力持ちか!!」

ステルス能力って…

あなた達の目が節穴すぎるだけですよ。

「ぬぁああああああああ!!!わ、吾輩とした事が、一生の不覚…!!まさか作戦を全て聞かれていたとは…!」

「いや、織田。それよりも床前に謝れよ。床前を無視して最低な話してたんだからよ。床前がかわいそうだろ。」

「何をおっしゃいますか菊池氏!!そんな事より、作戦を全部床前氏に聞かれていた事が一大事なのですぞ!!あああ、女子更衣室という禁断の花園へ足を踏み入れるという吾輩の夢がぁあああああ!!!」

「…秘密の花園が如何なさいましたか織田様?」

「はへ?」

「織田先輩、声が大きすぎて廊下にダダ漏れだったっスよ。」

「えーと、つまり…?」

「あんたの最低な作戦は筒抜けって事。…あんた、こんな事をしておいて明日の朝日が拝めると思うなよ。」

「ケッ、私の神聖なる身体を覗こうとした罪は重いぞキモヲタ!!去勢してやるから覚悟しろ!!」

「うーん、織田君。言っちゃ悪いけど、最低だよね?」

「あの、皆さん?ちょっと待ってくだされ…いや、ホントに悪気はなかったっていうか…ただのおふざけっていうか…だからちょっと待っ…ぎゃあぁあああああぁあああああああああああぁああああああああああああぁあああああああ!!!」

織田さんは、女子の皆さんにキツいおしおきを受けました。

正直、この人の事は大嫌いだったのでスカッとしました。

「あらあら、ケンタロウちゃん、血祭りにあげられちゃったわねえ。」

「血祭り?それはどういったお祭りなのですか?」

「…祭りって名前はついてるけど、祭りじゃないぞカークランドよ。」

「うわぁ…えげつねぇ…女子って怖いな…」

「…。」

「あ、床前。なんかごめんな?俺のせいで変な事に巻き込んじまってよ。」

「…いえ、むしろ、ずっと無視され続けていて悲しかったので、菊池さんに気付いてもらえて嬉しかったです。ありがとうございます。」

こんな時でも私の心配をしてくださるなんて、やっぱり菊池さんはその他とは違って素敵です。

「…。」

「どうしましたか菊池さん?」

「お前、そのボサボサした髪をなんとかした方がいいと思うぞ?せっかく顔は可愛いんだからさ。髪型変えるだけでも、無視されなくなるかもしれないぞ。」

「…。」

「あ、いや…俺の個人的な意見だし、別に嫌だったらいいんだけど…」

「貴重なアドバイスをありがとうございます。」

…やっぱり、この髪型じゃダメですか。

確かに今まで、他人の事なんてどうでも良かったので、自分の容姿には無頓着でしたが…

菊池さんに、もっと私を見てもらいたい。

…服装も変えてみよう。

 

 

ー翌日ー

 

「おはよーカッちゃん!」

「ああ、おはよう近藤。」

「…。」

普通は、クラスメイトと挨拶をしながら教室に入るんでしょうけど、私はそんな面倒臭い事はしません。

挨拶をしたってどうせ無視されますし、他人と会話を交わすなんて、ただの時間と酸素の無駄遣いです。

そんな事に時間を割くくらいなら、私は…

 

「おはよう!」

まさか、彼の方から私に挨拶してくださるなんて思っていませんでした。

菊池さんは、笑顔で私に挨拶をしてくださいました。

「あ、え、と…お、おはようございます…」

うまく返せなくて、とても恥ずかしい思いをしました。

挨拶すらぎこちないようじゃ、会話ができない女だと思われてしまいますよね…

「あのさ、一応確認だけど…お前、床前だよな?」

「あ、わ、私の事を覚えていてくださったんですか!?」

「あ、良かった。合ってた。…いや、あまりにも見た目変わったから、別人かと思っちまったよ。やっぱ、お前そっちの方がいいよ。見違えるように可愛くなったな。」

「本当ですか!?ありがとうございます…!」

 

 

 

ねえ菊池さん。私は、あなたがいいと言ってくださったから、今の自分が好きになりました。

あなたが私を見てくださったから、私の中の世界が変わりました。

あなたさえいれば、私は何も要りません。

あなたと一緒なら、私はなんでもできる気がするんです。

あなたは、私の全てなんです。

もう、他の人間なんて要らない。

私は、たとえ何があろうとも、あなたのためだけに生きます。

厚かましい望みではありますが、もしあなたにとって私が要らなくなったのなら、その時は…

 

 

 

 

どうかあなたの手で、私を殺してください。

 




人に恋をした事がないから恋してる人間の心理がマヂでわからなくて
詰んどる\(^o^)/ホント誰か助けて…


【論リゾこぼれ話】

床前ちゃんは、最初からトコマエダ化させるつもりで書いていました。
というのも、床前ちゃんは本性を現す前は、誰にでも優しく接し、引っ込み思案の所謂『天使キャラ』でしたよね。
しかし、僕は思うのですよ。
そんな女いるわけない(笑)と。
表面天使な奴に限って性格は最悪っていうのはよくあるパターンですよ。
前作の相浦ちゃん(ネタバレ注意)といい床前ちゃんといい、天使キャラはみんな本性は闇属性(確信)。
ちなみに、トコマエダ様は虚言癖の殺人依存症です。さらには偏執病でもあり、自分と論クン以外は全員敵だと思い込んでいます。また、自分の理想に対して『そうでないと許せない』というある意味潔癖な部分があるので、少しでも彼女の理想に反する者がいれば徹底的に排除しようとします。…メチャクチャな人格ですね。
ちなみに彼女の桜の飾りですが、桜には人の血を吸って花がピンク色に染まるという都市伝説があります。つまり、この花飾りは、彼女が殺人鬼であるという伏線でした。(わかるかボケナス)

下の画像はずっと出したいと思ってたイメチェン前の床前ちゃんです。彼女は、作中で一番見た目が変化したキャラです。元々周りの目とか気にする子じゃなかったので、髪はボサボサで伸ばしっぱなしでしたが、菊池クンに気に入ってもらうためにイメチェンしました。


【挿絵表示】


声のイメージは、『殺戮の天使』のレイチェルです。
エディがレイチェルの声を『小鳥のような声』と形容していたのを思い出し、『これじゃあ!!』と思って床前ちゃんのICVに千菅さんを選びました。
彼女と床前ちゃんの共通点は、殺人鬼である事、自分を殺して欲しい相手がいる事、自分の理想に対して『そうでないと許せない』という思いを強く抱いている事などが挙げられます。
ついでに言うと、前作の魅神クンのICVの岡本さんは、ザックの声を担当しています。
ヤンデレレイチェルとずる賢いザックwww


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