私は、『超高校級の秘書』速瀬吹雪と申します。
希望ヶ峰学園に入学する前は、県知事の秘書を務めておりました。
私が以前お仕えしていた現県知事は非常にお人柄が良く、希望ヶ峰学園からスカウトされた私に学業に専念するように仰ってくださり、お言葉に甘えて高校卒業までの間お暇を戴きました。
現在は何をしているのかと申しますと、高校生生活を送りつつ、学園の皆様を主人だと思い、秘書としての役目を全うしている所でございます。
…現在は12時25分ですか。
この曜日のこの時間は…
「あ、いたいた!おい、速瀬!」
この声は、『超高校級の弁護士』菊池論様でございますね。
菊池様が私をお呼びになると言う事は、恐らく裁判の書類の整理でしょうね。
「どのような御用件でございましょうか?」
「えっとさ、昨日裁判の依頼が来たんだけど…何しろ資料の量がエグいんだよ。なあ、ちょっと資料の整理手伝ってくれねえか?今度何か奢るから!お願い!」
「承知しました。」
「ホントか!?ありがとう!!じゃあ、早速これに目を通して欲しいんだけど…」
「了解しました。…成程。確かに、量が膨大ですね。」
「だろ!?」
「然し…私が見た限り、無駄が多いように思えます。文字量に対して重要な内容があまり書かれていませんね。」
「そうなのか?」
「これなら、要約すれば大分見易くなるかと。」
「マジか!?いやぁ、助かるよ!」
「御礼には及びません。少々お時間を戴いても宜しいでしょうか?」
「もちろん!」
「ありがとうございます。」
私は、菊池様に渡された資料の整理をしました。
量が膨大だったので、流石に1時間程度は掛かってしまいましたが…
「出来ました、菊池様。」
「え、嘘だろ!?まだ1時間しか経ってねぇぞ!?この量を、たった1時間で!?」
「とんでもございません。私の兄は、この半分の時間で仕事を捌きます。」
「…すごすぎて言葉が出ねぇよ。」
言葉が出ない、と仰っていますね。
…まあ、この発言に対して問題点を指摘しても切りが無いので、敢えて発言しないでおきましょうか。
「ホントに全部まとまってる…ありがとな、速瀬!今度何か奢るっつったけど…なんか食いたい物とかあるか?遠慮せず言ってくれ!…あ、ただ超高級フレンチとかはナシな?さすがにそこまで金無えから。」
「そんな厚かましいお願いはしませんよ。私は、菊池様が召し上がりたい物なら何でも構いません。」
「…なんか、そう言われると逆に申し訳ないんだよな。ホントに食いたい物を言ってくれていいんだぞ?」
「いえ、私は菊池様が召し上がりたい物を戴きたいので。」
「そうか…よし!じゃあ次の週末、俺のお気に入りの喫茶店に連れてってやるよ。そこのナポリタンが美味いんだよ!」
「承知しました。その日は予定を空けておきます。」
菊池様の行きつけの喫茶店、ですか。
楽しみですね。
「とーうっ!!」
この声は…アリス様でございますね。
「スーパー美少女天使あーちゃん参☆上!!今、ナポリタンがどうのこうのって聞こえたぞ!!サトにい、さてはあーちゃんに黙ってナポリタンを食う気だな!?ズルいぞサトにい!!あーちゃんにも食わせろ!!」
「なんでそういう話題に関しては地獄耳なんだよお前…悪いが、今は速瀬と一緒に喫茶店に行く約束をしてるんだ。お前はお呼びじゃない。」
「サトにいのドーケーチー!!やーだーやーだーやーだー!!あーちゃんもキッサテンいーきーたーいー!!」
「うるさいなお前…今度行くのは、静かな雰囲気の店なんだよ。お前みたいな公害は店の雰囲気をブチ壊すだけだ。大人しく購買の食い物を食ってろ。」
「菊池様、私は別に構いませんが…」
「ほらぁ!!ブキねえもいいってゆってんじゃん!!連れてけサトにい!!」
「お前は黙ってろ!…速瀬、本当にいいのか?コイツ、めちゃくちゃうるさいぞ?」
「承知の上です。ここで騒がれても、他の方のご迷惑になりますので。アリスさん。その代わり、店内ではお静かに願えますか?」
「わかったよー。あーちゃん静かにするー。」
「信用できねえな。」
「なんだとー!?」
「…それでは菊池様。私はそろそろ次の授業の準備をしなければなりませんので。これにて失礼させて戴きます。」
「おう。」
アリスさんは、何と言うか…賑やかな方ですね。
「…。」
ー放課後ー
授業が終わりました。
17時に玉木様にサッカーの練習試合の助っ人を頼まれておりますので、出来れば早めに校庭に行って準備をしたいですね。
「速瀬さん!」
この声は…床前様ですか。
「床前様。何か御用ですか?」
「あのー、さっき、菊池さんと仲良さそうに話していましたよね?」
「別に、仲良く等…私は、資料の整理を手伝った御礼にと、お食事に誘って戴いたまででございます。」
「それは良かったですね!…私も行きたかったな〜、なーんて…」
「あの、何が言いたいんです?要件を簡潔に仰ってください。私も暇ではございませんので。」
「いえ、ただ楽しそうで良かったですね、と言いたかっただけですよ?それと、お話のついでと言ってはなんですが…」
床前様は、私の目の前で生塵を床にばら撒きました。
「床が汚れてしまったので片付けといてください。私、汚いの嫌いなので、今すぐお願いします。」
「あの、お言葉ですが床前様。私は掃除係ではございません。床前様が汚したのなら、ご自分で片付ければ宜しいのでは?」
「あら。私、口答えしていいなんて一言も言ってませんよ?主の言う事を聞けないような人は、秘書失格ですよね〜?そーんな無能さんを雇った人も、無能さんなんじゃないですかね〜?」
完全に只の屁理屈ですね。
それに何より、私を必要としてくださった方々を侮辱された事が許せません。
ですが、ここで下手に言い返せば、私を必要としてくださった方々の面子を潰してしまいます。
「さーてと、速瀬さん。ちゃんと掃除しておいてくださいね?お返事は?」
「…承知しました。」
「わあすごい!命令さえすればなんでもしてくれるんですね!まるでワンちゃんみたいです!あ、そうだ。レポートも代わりに書いておいてください。今すぐ、お願いしますね?」
「…。」
ー校庭ー
16時48分。
17時に玉木様と待ち合わせの予定でしたが…
床前様に頼まれていた仕事を片付けていたら到着が遅くなってしまいましたね。
「悪い速瀬!待たせたな!」
玉木様がいらっしゃいました。
「お待ちしておりました玉木様。」
「ごめんな、忙しいのに呼びつけちまって。メンバーの奴が急に風邪こじらせて来られなくなっちまってよ。」
「主人をサポートする事こそ、秘書の務めですので。お困りでしたらいつでもお申し付けください。」
「おう、サンキュな速瀬!じゃあ早速なんだけど、助っ人頼めるか?」
「承知しました。」
私は、玉木様の練習試合のお手伝いをしました。
この様な仕事を承る事は珍しいので、上手く熟せたかどうかはあまり自信がありませんが…
「ありがとな速瀬!!お前のおかげでいい練習試合になったよ!」
「とんでもございません。私のした事と言えば、欠員の代理、選手一人一人のプレイスタイルの分析、及びそれに適した練習方法の提案位ですので…」
「いやめちゃくちゃ有能だな!!正直そこまでやってくれると思ってなかったぞ!」
「そう仰って戴けて光栄です。またいつでもご相談ください。…それと、風邪を引いたご友人ですが、しっかりとお体を休めるようにとお伝えください。」
「おう、アイツの事心配してくれてありがとな!アイツにはよく伝えておくよ!」
「では、私はやる事がありますので、今日は失礼させて戴きます。また明日学校でお会いしましょう。」
「ああ、じゃあな!」
ー翌日ー
本日は、12時30分にカークランド様、森万様と化学室で待ち合わせでしたね。
お二人が私をお呼びになるなんて、珍しいですね。
お二人とも、自分の事は極力自分で解決するようになさっている筈…
「おい、吹雪!」
この声は…郷間様ですね。
「郷間様。何か御用ですか?」
「ああ、丁度良かった。ちょっとここの花壇のサイズ測りたいんだけどよ、測るもの忘れちまって…何か持ってねえか?」
「測る物、ですか。」
私は、確かに常にメジャーを持ち歩いておりますが…
これは、兄が私にプレゼントしてくれた物…クラスメイトだとしても、貸すのは気が進みませんね。
「申し訳ございません。私が持っているメジャーは、大切な物なのであまり人に貸したくはないのです。」
「そっか…」
「…宜しければ、私が代わりに測りましょうか?」
「え、いいのか!?」
「はい。これは貸せませんが、代わりに郷間様のお役に立てる方法がございましたらと思ったのですが…」
「マジか!助かるぜ吹雪!ありがとな!」
私は、郷間様に指定された場所を余さず測りました。
「これで宜しいでしょうか?」
「…すげぇ正確だな。しかもこんな短時間で…いやぁ、助かった!ありがとな吹雪!」
「とんでもございません。困った事がございましたら、いつでもお申し付けください。」
さてと…そろそろ授業の準備をしなければなりませんね。
ー昼休みー
「あー、やっと授業終わったー。」
「腹減りー。」
「わーい、やっとお昼だー!!」
「お前はずっと寝てただろ?飯食わなくていいんじゃないか?」
「なんだとサトにいテメェコラ!!こしあんにすんぞ!!ちなみにあーちゃんはつぶあん派だけどな!!こしあん派は全員イチゴの先っちょが目玉に突き刺さって死ね!」
「…言ってる事がカオスすぎてわからんぞ。」
4時間の授業が終わりました。
今日も、この時間帯の教室は騒がしいですね。
12時21分…化学室に向かわなければ。
ー化学室ー
私が化学室に到着してから数分後、カークランド様と森万様がいらっしゃいました。
「お待たせしました速瀬さん。」
「フッ。待たせたな。」
「お待ちしておりましたカークランド様、森万様。本日はどの様な御用件で私をお呼びになったのですか?」
「ええとですね、化学の実験をしたいのですが…この実験、3人以上いないと出来ないんですよ。それで、速瀬さんをお呼びしました。」
「フッ、俺はカークランドの手伝いだ。わざわざ呼びつけて悪かったな。速瀬よ。」
成程、それで私をお呼びになったのですか。
人数だけは、ご自分の力ではどうしようもありませんからね。
「そういう事でしたか。私は勿論喜んで協力しますよ。」
「わぁ、ありがとうございます!」
「では、早速実験の準備をしましょうか。」
「フン。」
私は、お二人の実験を手伝いました。
3人以上いないと出来ない実験とだけあって、複雑な作業が多かったですが、実験はなんとか成功しました。
「わあ、成功です!速瀬さんのお陰です!ありがとうございます!」
「とんでもございません。私は只、お二人に指示された事を実行したまでです。」
「フッ、謙遜などしなくていいぞ速瀬よ。貴様の仕事っぷりは、誰もが尊敬しているのだからな。」
「そうですよ!速瀬さんは凄い方です!私が通っていた大学にも、そんなに仕事の早い方はいませんでしたよ!もっと自信を持ってください!」
床前様に馬鹿にされて以来少々自信を喪失しておりましたので、そう仰って戴けるのは非常に嬉しいですね。
…感情表現が苦手なので、上手く伝える事が出来ませんが。
「そう仰って戴けて光栄です。皆様のお役に立つ為、日々精進して参ります。」
「フン、さすがは『超高校級の秘書』だな。」
「よし、きちんとデータも取れましたし、これで授業に使えますね。」
「…授業?」
「ああ、言っていませんでしたね。実はですね、私は今もインターネット上で授業をしているんですよ。存外これが好評でしてね。その授業の為に、今ここで実験をしていたんです。」
成程、そう言う事でしたか。
それで実験中にビデオを撮っていらっしゃったのですね。
そう言えば、カークランド様は『超高校級の大学教授』でしたね。
「今まで実験をしてきましたが、ここまで綺麗にデータが取れたのは初めてです!速瀬さんのお陰です。ありがとうございます!」
「いえ、そんな…」
「そうだ、授業のレポートのついでに貴女の事を紹介しても良いですか?」
「…え?」
「私の実験に協力してくださった方として、貴女を私の大学で紹介したいのです。…いけませんか?」
「いえ、いけないという訳ではございませんが…私等、とても…」
「フン、謙遜するなと言っただろう。貴様は、人に称賛される資格のある事をしたんだ。」
「…そうですか。では、カークランド様がそうしたいと仰るのなら、是非私を紹介してください。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
ここまで称賛して戴けるとは思っておりませんでした。
人に必要とされるという事は、やはり気分が良いですね。
ー放課後ー
「にゃー!!やっとジュギョー終わったー!!」
「お前は授業受けてなかっただろ。」
「ギ、ギックゥ!!そ、そんな事ないもん!!」
「本当にギクッって言う奴初めて見たぞ。」
本日の授業が全て終了しました。
菊池様とアリス様は、相変わらずですね。
「速瀬さん!」
おや、この声は猫西様ですか。
「如何なさいましたか?猫西様。」
「あのね、ちょっと速瀬さんにお願いしたい事があるんだけど…今日、ちょっとだけ付き合って貰ってもいいかな?」
「御用件にもよりますが…具体的には、どれ位の時間を所要しますか?」
「んーっとね、15分でいいから!お願い!」
「15分、ですか。…畏まりました。」
「ありがとう!あのね、じゃあ早速なんだけど、一緒に屋上に来てくれないかな?」
「屋上、ですか。」
「詳しい事はそこで話すからさ!」
「…はあ。」
屋上…一体、どんな御用件なのでしょうか?
私がお役に立てるような御用件だと良いのですが…
ー屋上ー
屋上には、既に小川様がいらっしゃいました。
「お待たせ!」
「猫西先輩、誰か連れて来たんスか…って、速瀬先輩!?」
「…小川様、如何なさいましたか?」
「あ、いや…まさか猫西先輩が速瀬先輩を連れてくるとは思ってなかったんで、つい…あ、いい意味でっスよ!?」
「小川さん。いい意味でってつけたら、逆に言い訳っぽくなっちゃうよ。」
「え、そうっスか!?ホントにいい意味で言ったんスけど…」
お二人は、一体何の会話をなさっているのでしょうか?
…ところで、屋上に動画の撮影用の機材が置いてありますね。
「あの、これは一体どういう…」
「ごめんね、速瀬さん!急に呼び出しちゃって。実はね、今新しい動画の撮影をしようとしてたところなの!でも、思ったより撮影と編集作業が大変でさ!」
「それで、その撮影のお手伝いをして欲しいって事っス。…頼めませんかね?」
「…成程、そう言う事でしたか。私に出来る事がございましたら、喜んでお手伝い致します。」
「ホントっスか!?ありがとうございます!」
「速瀬さん、ありがとう!」
「具体的には、何をすれば宜しいのでしょうか?」
「あ、えっとね…この機器の調整と、画像の編集をしてほしくて…」
「それならお安い御用です。」
私は、猫西様の動画の撮影と編集のお手伝いをしました。
私の得意分野だったので、想定していたより早く終わりました。
動画の編集は、思ったより楽しかったです。
出来る事なら様々な動画の編集をしてみたかった所ですが…飽くまで依頼を承っていただけなので、我儘は言っていられませんね。
「…出来ました。これでどうですか?」
「嘘でしょ!?まだ5分しか経ってないんだけど!?」
「…何か問題がありましたか?」
「いやいや!全然そんな事ないよ!むしろすごくありがたいんだけどさ!仕事早すぎない!?」
「この短時間でこのクオリティ…まさに神業っスね!」
「そう仰って戴けて何よりです。」
「速瀬先輩、今日は本当にありがとうございました。おかげでいい動画が撮れたっス。」
「うん、すごいよ速瀬さん!ありがとね!」
「ありがとうございます。では、私はこれにて失礼させて戴きます。」
「はい、ではまた明日会いましょう!」
「じゃあね、速瀬さん!」
ー翌日ー
本日は、17時にアンカーソン様と待ち合わせでしたね。
今日は、遅れないようにスケジュールを組んで…
「だぁあああっ、クッソ!見つからねぇ!!」
この声は…狗上様ですね。
如何なさったのでしょうか?
「如何なさいましたか?狗上様。」
「俺のバイクが見つからねえんだよ!!確かにここに停めておいたのに…クッソ、なんでどこにもねェんだよ!!」
バイクで登下校するのは如何なものかと思いますが…
秘書たる者、困っている主人を放っておく訳にはいきませんね。
「あの、宜しければ一緒に探しましょうか?」
「あぁ!?それで点数稼ぎのつもりか!?何様のつもりだテメェ!!…チッ。まあ、このまま探しててもラチがあかねえからな。見つかりゃあなんでもいい。俺のバイクを早く見つけて来い!!」
「畏まりました。」
ー校舎裏ー
…とは言ったものの、見つかりませんね。
これは、誰かに盗まれた可能性が高いですね。
盗難届けを出す事も視野に入れておきましょうか…
…ん?
「ここは、もうちょっと可愛くデコレーションして…で、ここにリボンとラメをつけてあげたら超キュートよ!アンタもそう思うでしょ?クレハちゃん。」
「ぎゃはははははははははははははは!!!クッソダセェwwwクッソ面白えな!!そのセンスマジで最高だなオイオカマ野郎!!」
「だ、か、ら!!アタシはオカマじゃなくてオネエだっつってんでしょうが!!怒るわよアンタ!!」
あれは、神城様と伏木野様ですね。
何をなさっているのでしょうか?
「あの、神城様。伏木野様。」
「アラ〜!フブキちゃんじゃな〜い!!」
「おい、メガネテメェコラ!!神である私に向かってその態度はなんだ!!図が高いぞテメェ!!私の前では、地べたにデコを擦り付けて話せっていつも言ってんだろうが!!」
「申し訳ございません。…ところで、お二人はこんな所で一体何をしていらっしゃるのですか?」
「ウフフ、興味ある?実はね、さっきたまたま乗り物の形をした鉄クズを見つけたのよ!」
「んで、神である私の究極の脳細胞に、その鉄クズを再利用してやるっていう超天才的なアイディアが思い浮かんだってわけだ!!だから今、そこのデカブツキモオカマゴリラと一緒に鉄クズをリサイクルしてたんだよ!!」
「ちょっと!デカブツキモオカマゴリラって!クレハちゃん、アンタそろそろ殴るわよ!?」
乗り物…鉄クズ…もしや。
「お二人とも、その鉄屑とやらを少し拝見させて戴いても宜しいでしょうか?」
「あぁ?なんだ、メガネ。貴様、神である私のデコレーション技術を見たいのか?ふははははははははは!!!そうか!!まあ、そう思うのは当然なんだがな!!私のデコレーション技術は神業…だがそれすらも必然…なぜなら私は神だからな!!どうだ見ろ、これが私の生み出した傑作だ!!ふははははははははははははははははは!!!」
「アタシも一緒にデコったのよ!見てちょうだいフブキちゃん!」
私は、お二人がデコレーションをした鉄屑とやらを拝見しました。
…どうやら、私の嫌な予感は当たってしまっていたようです。
そこには、リボンやラメ、イリデッセントメディウム、スプレー等で装飾されたバイクらしき物が転がっていました。
…恐らく、狗上様のバイクですね。
「あの…確認ですが伏木野様。」
「ん?何?」
「そちらのバイクらしき物は、何処からどの様にしてここへ持って来て、その様なデコレーションをなさったのですか?」
「ああ、えっとね。裏門の前に置きっぱなしにしてあったから、ちょっと貰ってきたのよ。どこの誰が置いたのかは知らないけど、あんな所に置きっぱなしにしておく方が悪いのよ〜♪」
「ふははははははははは!!まったくもってその通りだ!!あんな所に放置してあるって事は、もう鉄クズも同然だろうが!!だから、神である私がただの鉄クズを神が作りし傑作へと生まれ変わらせてやったのだ!!誰が置いたのかは知らんが、この私に感謝し、そして崇拝してもらいたいもんだな!!」
なんと非常識な方々なのでしょうか…
停めてはいけない場所にバイクを停めていらっしゃった狗上様にも落ち度があるとは言え、普通人の乗り物を勝手に盗んでデコレーションしたりするでしょうか…?
これは、お三方で話し合う必要が…
おっと、私が呼びに伺う必要は無かったようですね。
「…誰が誰を感謝し、崇拝するって?なぁ、このクソサド女!!」
「はぁ!?んだよ、誰かと思えば犬!!貴様か!!」
「テメェら、よくも俺のバイクを勝手に盗んで、クソダサい装飾をしてくれやがったな?テメェらまとめてブチ殺してやる!!」
「キャー怖い!あんな所に放置しておく方が悪いのよ!それじゃあトンズラスタコラサッサ〜♪」
「クッソ、なんで私まで愚民に追われなければならんのだ!!」
ああ、もう収拾がつかなくなってしまいましたね。
私の任務は飽くまで狗上様のバイクを見つける事ですので、そろそろお暇しましょうかね。
ー昼休みー
授業が終わりました。
久々に仕事が無い昼休みですが…
何もする事が無いとなると、却って落ち着きませんね。
「ぎゃぁああああああああぁあああああああぁあああああああああぁああああああああああああああああ!!!」
この声は織田様ですね。
如何なさったのでしょうか?
ー更衣室前ー
織田様の声がした場所へと向かうと、そこには射場山様がいらっしゃいました。
「…射場山様。」
「…ん。速瀬…」
足元を見ると、汚物…基、全身を殴打された織田様が転がっていました。
「あの、これは一体どの様な状況ですか?」
「…コイツが性懲りもなく女子更衣室に入ろうとしてたから、こうやって制裁を加えてた。反省してないみたいだから、いつもより50回多く殴った。」
「成程、そう言う事でしたか。」
「ね゛、ネ゛バー…ギブ…ア゛ップで…あ゛、り゛ま゛…ず…」
織田様は、ボコボコにされても尚心は折れていらっしゃらないようですね。
そのゴキブリ並にしぶとい根性は、最早尊敬の域にまで達します。
「ば、ばや゛ぜ…じ…ば、ばがばい゛を゛、だずげ…」
…ですが。
「織田様。貴方のなさっている事は犯罪です。貴方には今から、罰を下します。これから先、真面な人生を歩めると思わないでください。」
「…え゛?」
学園の秩序を乱す者には、たとえ主人としてお仕えしているクラスメイトであろうと容赦は致しません。
堕落した主人を律するのもまた、秘書である私の役目です。
秩序を乱し、女子生徒の皆様を辱めようとした罪、きちんと償って戴きましょうか。
「…ねえ、コイツ、あと何百発殴ればいいと思う?」
「そうですね…只殴るのも良いですが、モーニングスター等を使うのは如何でしょうか?刺と遠心力により、攻撃力が増加します。」
「いいねそれ。コイツ、結構しぶといから一発くらいだったら多分死なないよ。」
「それか、針を爪に刺していくのは如何でしょうか?攻撃力は低いですが、とても痛いので拷問向きです。これで心を折るというのもありだと思うのですが。」
「…ん。それもいいね。うん、じゃあ両方やろう。」
「畏まりました。」
「じゃあ、速瀬はそっち側お願い。私は頭をカチ割るから。」
「承知しました。」
「え…!?ちょっと待ってくだされ!!いくらなんでもさすがにそれは死にますぞ!!何2人で怖いガールズトークで盛り上がってるんでありますか!!2人とも我輩を殺す気…ちょ、本当にやめて…ぎゃああああぁああああああぁあああああああああぁああああああああああああああああ!!!」
ー数分後ー
「…ふぅ。」
意外と楽しかったですね。
私とした事が、つい興奮してやり過ぎてしまいました。
飽くまで織田様を律する為にやった事なのに、私自身が楽しんでしまいました。
…もう、原型を留めていませんね。
どうやって処分しましょうか…
「ねえ、速瀬。」
「はい、如何なさいましたか射場山様?」
「あんたはさ、私が困ってる時とか、相談に乗ってくれて…それで、全然無理に干渉してきたりとかしないから、あんたといると…一番安心できる。…ありがと。」
「とんでもございません。何かお困りでしたら、遠慮せず私にお申し付けください。私に出来る事なら、何でもお手伝いしますので。」
「…ん。」
私の趣味を押し付けるのは非常に烏滸がましいのですが、射場山様は一番趣味や考え方が私に合っています。
私自身、射場山様と一緒に居る時が一番心が落ち着くので、射場山様にその様に言って戴けたのは嬉しかったですね。
これを機に、彼女と親睦を深めたいですね。
…私とした事が、私情が表に出てしまいました。
皆様のお役に立つ事が、私の使命です。
ー放課後ー
16時59分。
アンカーソン様との待ち合わせまで、あと1分ですね。
…然し、当の本人がいらっしゃらないのは、一体どういう事なのでしょうか?
「…ほら、リタっち!ちゃんと歩いて!」
「…くぅ。」
アンカーソン様は、近藤様と一緒に教室にいらっしゃいました。
「…おや、私はアンカーソン様と待ち合わせをしておりましたが…近藤様もご一緒ですか?」
「うん、まあね。…ほら、リタっち!リタっちが速瀬っちを呼んだんだから、起きてよ!」
「はっ!ウポンゲ!…ふわぁ、すみませぇん…また寝ちゃいましたぁ…」
「それで、一体どういった御用件でございますか?」
「ふわぁ…えっとぉ、授業の内容でちょっとわからないところがあったのでぇ、解説してほしいのですぅ…」
「ウチも、ちょっと今日の授業が全然わかんなくって…だから、速瀬っちの解説が聞きたいんだよね。ごめんね?急に二人も見てもらう事になっちゃって。」
「それは構わないのですが…お二人共、カークランド様には質問なさらなかったのですか?この様な仕事は、私等より寧ろ彼の方が得意だと思うのですが。」
「ああ、えっと…ムズっちは、今日歯医者に行かなきゃいけないんだって。それで、速瀬っちにお願いしたってわけ。…ダメだった?」
「いえ、この日の為にスケジュールを空けておきましたので、問題ありません。それで、お二人共。具体的には、どの教科のどの分野が分からないのですか?」
「ふわぁ…全部ですぅ。」
「ちょっと、リタっち…全部って…それ、速瀬っちの負担ヤバくない?せめてもうちょっと絞ろうよ…」
「近藤様は?」
「え、ウチ!?ええっと…どうしよう…これもわかんないし…でも、これもテストで出されたら絶対ヤバいし…わぁあああああ、どうしよう!決められないよぉお…!ウチも、リタっちの事言えないや…」
「ふわぁ、近藤も全部ですかぁ?」
「…うん、全部お願い!ごめんね速瀬っち!」
「…畏まりました。」
ー数十分後ー
「…すごい、ホントに全部教えてもらっちゃったよ…」
「ふわぁ、これで寝ちゃった範囲は全部わかりましたぁ…速瀬、ありがとうございますぅ…」
「アンカーソン様。お言葉ですが、授業中に寝るのは如何なものかと思います。私もカークランド様も暇ではございませんので、出来るだけ授業を真面目に聞くようになさってください。」
「ふわぁ…善処しますぅ…」
「いや、リタっち。善処するって、善処しない人が言う台詞だからね?」
「ふわぁ…くぅ。」
「ほらぁ!言ったそばから寝てんじゃん!」
「近藤様。授業の解説は、如何でしたか?」
「うん、すごくわかりやすかったよ!!全教科こんなにわかりやすく説明してくれて…やっぱり速瀬っちはすごいね!!」
「お褒め戴きありがとうございます。では、もう18時ですので、私はこれにて失礼します。」
「うん、バイバイ速瀬っち!」
まさか、たった数週間でここまで皆様私を必要としてくださるとは思いませんでした。
人に必要とされる事…これ程喜ばしい事は有りません。
皆様の期待にお応え出来る様、もっと努力を重ねなくては…