あるいはこんなありふれ職業   作:壬生咲夜

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いくつもの感想、ありがとうございます。



未来の僕と天之河君と ④

トータス三日目の朝。

二度目の気絶から目覚めた僕は訓練前の朝食を取りに食堂に向かい

 

「今日も一日頑張ろうな南雲(今)!」

 

爽やかな笑みを浮かべつつ、被害者仲間(同族)を見る目を浮かべる天之河君の顔面を殴って席に座る。

男子からの射殺さんばかりの視線と女性陣からのクズを視るような視線に胃をキリキリさせながらご飯を食べる。

 

正直、何を食べて、どんな味がしてたのかなんてわからなかったよ。

食後も胃がキリキリして訓練にならなさそうだったから、医療室に寄って処方してもらった薬を飲んでから訓練所に向かうと――

 

 

悪魔の様な笑みを浮かべる未来の僕に土下座する檜山君の姿があった。

 

え、何があったの?

 

 

――話は少し前に遡る――

 

ハジメ以外のクラスメイトは案内に従って訓練室に向かう。

中に入るとメルド団長と未来の天之河何やら話し込んでいるようだ。

 

とりあえず、話が終わるのを待っているとふと、一人足りないことに気づいた。

クラスの何人かがどこだろうとあたりを見渡すと、壁際で訓練室に似合わない高価な椅子に偉そうな姿勢で座る未来の南雲の姿があった。

しかも従者っぽい人を隣に添えて、これまた高級そうな扇で風を仰いでもらっている。

 

皆が唖然としていると、自殺志望者(檜山)が未来の南雲へと噛みついた。

それは異世界に来る前から苛めてた相手が異世界に来ても弱者だった。なら、未来になってもそれは変わらないだろうと判断の上での行動だったのだろう。

 

「おうおう、未来の南雲さんよ。随分と偉そうな態度だが何様のつもりだ?」

「……………」

「ビビッて声も出ねぇ~ってか変わらずダッセぇ~な~」

「……………」

「っおい聞いてんのかこの中二やr――「ああ! 誰かと思えば檜山じゃねえいか! 惚れた女が振り向いてくれない&他の男に話しかけてるのが気に食わなくて集団で苛めて惚れた娘の好感度を下げてた檜山じゃないか!!」―うぇぇぇえええ!?!?|」

 

まさかの精神攻撃にたじろぐ檜山。

 

「な、なにいってんだこのヲタやr-」

「実は生徒手帳に惚れた女の写真を忍ばせている檜山じゃないか!」

「ちょ、ま、なんd-」

「自宅の机の引出しに惚れた女に似たグラビア雑誌を隠している檜山じゃないか!!」

「う、ううううそいってんじゃー」

トータス(こっち)に来る前に兄貴のツ〇ヤカードで借りた〇Vの延滞料金がヤバイことになってた檜山じゃないか!」

「ち、ちが、出鱈目w―」

「事故に見せかけて邪魔な男を崖から突き落として殺そうとしたり、惚れた女が手に入らないなら自分の手で殺して傀儡人形(ゾンビモドキ)にしてもらって身体だけでも自分のものにしてまで叶えたかったのがお手て繋いで遊園地デートの檜山君じゃないか! で? 俺に何か用か?」

 

「サーセンシタァァアア」

 

これ以上、未来と現在の黒歴史の暴露を恐れてか檜山が土下座で謝罪した。

 

―――

――

 

そ、そんなことがあったんだ。

 

「全く、人の弱みにつけこむなんて最低だぞ(いいぞ、もっとやれ)!!」

 

本音を隠しきれてないよ未来の天之河君。

 

いったい、未来で何があってあんなにも変わったんだろう?

トータス(こっち)に来る前までの天之河君とはまるで別人みたい。

 

 

そんな事を考えていると、話し終えたメルド団長から訓練を始める声がかかった。

 

これから戦争に向けての訓練が始まる。

気を引き締めようとした僕らに待ったの声をかける人がいた。

 

「よろしいですかなメルド団長」

「む? 訓練場(こんな場所)にどうされましたかイシュタル殿」

「未来のお二方のお話を聞きたいとエヒト神様からの信託がおりました」

「む、それは…」

「ええ、これは大変名誉ある事です。さ、未来のお二方、こちらへ。エヒト神様がお待ちです」

 

何やら雲行きが怪しくなってきた。

僕たちを呼び出した際には現れなかったエヒト神が今になって姿を現し、かつ未来の二人に会いたいだって?

それにイシュタルさんやその周りに人達も何かおかしい。

 

「断る。話が聞きたけりゃてめぇが来い。そう伝えとけ」

「それは困りましたね。エヒト神様は特定の場所にしか降臨できず、また大変多忙なお方なのです。どうか、来てくださりませんか?」

「ハッ、ヤダね。ずっと部屋に引きこもって見物してるなよ(ニートしてんじゃねぇよ)クソジジイ」

「っ~…では、未来の天之河様だけでも…」

「すみません、イシュタルさん。南雲(未来)の口はちょっと悪すぎるけど、俺も概ね同意見です」

 

「……そうですかそうですか。では、お二人ともエヒト神様からのお言葉に逆らう。そう認識されてもよろしいのですね?」

 

「ああ!」

「だったら何だってんだ」

 

「力ずくで従ってもらうだけです」

 

イシュタルさんの合図にそばにいた神官や二階席、柱に隠れていた人たちが一斉に未来の僕らに武器を向け、さらには―

 

「ん?」

「あん?」

 

光の束の様なものが未来の僕らを拘束した。

 

「っイシュタル殿!! これは――「エヒト神様のお言葉は絶対です」――っ!!!」

 

唖然とした。

危ない人だとは思っていたけれど、まさかここまで大胆に出るとは思いもしなかった。

二人を助けなきゃ。

でも、身体が震えて動かない。

 

「さ、行きますぞ」

 

そう言って踵を返すイシュタルさん

 

恐怖に震える僕たちだったけど、ふとどこからか笑い声が聞こえてきた。

いや、そんなこと考えるまでもない。

未来の僕らからだ。

 

「……気でも狂いましたか?」

「いや~まさかこの程度で(魔王)を拘束できると思っているとはな」

「ああ、この程度なら異世界に行く度によくあることだから慣れっこさ」

 

そう言うと、あっさりと光の帯を砕く未来の二人。

 

「ば、バカな!? 世界最高峰の拘束術をあっさりと…」

 

「さてと、手荒な真似をしてくれたんだ。覚悟はできてんだろうな?」

「っ!? ええい、何をしているのです。あのエヒト神様に逆らう愚か者共に鉄槌を下すのです!!」

 

イシュタルさんの叫びに呆然としてた神官や隠れてた人たちが魔法陣を展開する。

 

それらを見てもなお、未来の二人は落ち着いた態度を―ヤレヤレといった態度を崩さない。

 

「さぁ、今度こそエヒト神様の元へお連れしますぞ!!」

 

魔法が二人に放たれる。

その数は優に100超えている。

 

「二人とも逃げろっ!!!」

 

メルド団長の叫び声もむなしく着弾する数々の魔法。

着弾した魔法により砂煙が舞っていて、二人がどうなったのかはわからないけど無事とは思えない。

 

 

やがて、砂煙が晴れてきたころ

 

「「……ところでだ」」

 

ふと、声が聞こえた。

 

 

「いつから俺が未来の南雲だと思っていた?」

「いつから俺が未来の天之河だと思っていた?」

 

 

え?

 

 

砂煙が晴れた場所。

そこには二人の男性が居た。

 

でも、彼は未来の僕らじゃない。

 

 

彼らは黒衣を纏っていた。

 

 

指ぬきグローブを着用し、

 

 

室内なのにサングラスをかけ、

 

鏡合わせのように心惹かれるポーズ(決めポーズ)を取っていた。

 

 

「だ、誰だだ貴様!!!」

 

「フッ、聞かれたからには答えよう」(サングラスくいっ入りま~す)

 

「我こそは魔王の右腕にしてウサミミ暗殺集団元帥!」(クルっとターン入りま~す)

 

「「疾牙影爪のコウスケ・(遠藤)・アビスゲート!!」」(決めポーズ入りま~す)

 

 

 

唖然とした。

そして

 

「ゴホォッ!!!???」

 

遠藤君が吐血した。

 

 

「っどうやらまだお仲間が居たようですねですが―「既に貴様らは我が術中に嵌っている」――なんですと?」

 

 

“闇魔法 荒ぶる魂のポーズ”

 

『胸の内に秘める荒ぶる魂を開放せよ!

 さすればその姿に見惚れし者を封じ、闇へと誘うであろう』

 

 

……え? なに、その説明文になってない説明は? 意味が解らない!!

というかこれって僕たちも巻き込まれてない!? さっきから全く身体が動かないんですけど!!

心惹かれる格好(痛々しいポーズ)を強制的に見させれてるんですけど!?

 

ん? まって、Way ちょっとおかしい……。

さっきから僕はあの心惹かれる格好(痛々しいポーズ)を何て……っほら可笑しい!!

 

これじゃまるで…

 

《や、久しぶりだね僕!!》

 

出てくるなぁあ!!!! 封印されしBoKuuuuUUUUUUU!!!

 

《酷いな~せっかく久しぶりに僕を呼んでくれた言うのに》

 

呼んでない! 呼んでないからね!!

だから大人しく封印され、この言動もおかしいぃぃいい!!!!???

 

「っ魅了魔法ですか。これほど強力な物は聞いたこともありませんが、恐らくこれには相当な代償が必要なハズです」

「フッ、その通りだそれ相応な代償(主に羞恥心)が必要だ」

「それに見たところあなたが少しも動いていないところから、体制を崩したら解除されるのでは?」

「……だとしたら?」

「外の控えている兵を呼び出すだけです」

「……何か勘違いしてないか教皇殿」

「なんですと?」

 

「「私は一人ではない」」

 

 

え、うん。確かに目の前に二人居るから一人じゃないよね?

 

 

「私はここにも居る」(柱の陰から決めポーズで登場しま~す)

 

ふぁっ!?

 

「ここにも私が居る」(クラスメイトの中心で髪をふぁさっとしま~す)

 

「そして私はここにも居る」(兵団の中心で片目隠しのポーズ入りま~す)

 

次から次へと現れては、隙間なく僕たちに心惹かれる格好(痛々しいポーズ)を見せつける遠藤君(未来)と

 

 

「ゲフッ、ガッ、ゴホッ」

 

次々現れるたびに心なしか遠藤君(今)の顔が死んでいってる気がする。

いっそのこと意識を手放して倒れたいだろうけど、魅了&拘束で一歩も動けないから吐血するしかできない。

まさに生き地獄だね!!

 

かくいう僕も余裕なんてないんだけど!!!

 

 

《フフ、隠さなくたっていいんだよ。ほら、見てごらんよアビスゲート卿を》

 

《格好いいだろう?》

 

《心惹かれるだろう?》

 

《思わず真似したくなっちゃうだろう?》

 

《いいんだよ?》

 

 

《さぁ、僕も胸の内に秘める荒ぶる魂を開放するんだ》

 

 

やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!

 

『南雲ハジメは混乱している』

 

 

「フッ、ご覧の通り私は複数に分裂でき、その数は千は容易い。そしてその分身たちは城の至る所に配置し全てを魅了している。この意味が分かるかね?」

 

単純に考えたら援軍を期待しても無駄って意味だろうけど、それってつまり―――

 

 

「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!?????」

 

自分の知らないところで千を超える未来の自分が心惹かれる格好(痛々しいポーズ)を取っていることに気づいた遠藤君(今)のSAN値が限界を超えたみたい。

 

 

「っ根競べということですかな?」

「…先ほども言ったが、”私は一人ではない”」

「?」

「私が魔王より仰せ使ったのは貴君らの、いや城内全ての“足止めだ”」

「っまさか!?」

「フッ、気づいたところで遅い。我が役目はたった今果たされた」

 

その言葉と共に、何もない筈の空間から突如扉が現れた。

重々しい扉が開き、中から出てきたのは

 

「足止めご苦労だ遠藤」

「おかげでスムーズにラスボスを捕まえられたよ」

 

未来の僕と天之河君。

そして彼らに抱えられ、簀巻きされてる半泣きの幼女(・・)

 

 

「「「さて、お仕置きを始めようか」」」

 

彼らの職業は“勇者”、“暗殺者”、“錬成師”らしいけど

僕らの目には“ヤクザ”、“悪魔”、“魔王”のようにしか見えなかった。

 




【オマケ】
①いつから居ましたか?
「フッ、私は魔王の右腕にしてその影。魔王の居るところに私は居る!!」

※召喚されたときから居たけど、未来の二人以外から認識されなかっただけです。

②入れ替わったタイミング
「フッ、私がいつから入れ替わっていたかだと? それは秘密だ」
「しいて言うならば、我らが魔王殿が自ら黒歴史を語るかな?」

③荒ぶる魂のポーズ
ぶっちゃけ、かっこいいポーズの闇版
その姿を見て一瞬でも見惚れたり、意識をそがれたりしたら魅了&動きの制限をかけられる。
集中力(羞恥心)が切れると解除される。
原点と違い、特定の人間に対し精神汚染(厨二病)が付与される

【あとがき】
プロットの段階からちゃんと居たのに、投稿したあとに居なくなっていることに気づいた。 さすがアビィ、作者もやられたぜ!
なのでタイトルもわざと空白を作ってました。

おそらく、次回でラスト。
あとはつらつらと思い付きを投稿できたらなと思います。

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