特別編 - プロローグ -
地球とは異なる異世界、スピリッツエデン。
そしてとある人気のない荒野に立てらえた一つの宮殿、この世界に伝わる伝説存在、七罪竜を狩る為に作り上げた組織、罪狩猟団の本拠地である。
「この度、お呼び招かれ作戦担当させていただきます! チルでーーす! どうぞちるっと宜しくお願いしまぁーす!!」
宮殿内部、張り詰めたこの空気にとてもそぐわない程の陽気な明るい声、桃色の髪にやや幼い言動の目立つ一人の女性。
「ハハハ、チルちゃん久々だね。君のそういう明るい所、僕は好きだよ」
「お褒めに預かり光栄です♪ でーもー、チルはみんなに好かれるキャラでありたいので、幾らルディア様でも告白はちょっとNGって言うか」
チルと呼ばれるその女性も罪狩猟団の一員、なのだがルディアに対しても全く臆するどころか自分のペースでの会話を続け、その様子にルディアは面白そうに笑っているが、同席している帝騎幹部であるディストの目は全く笑っておらず。
「チル? 貴方、ルディア様の前で……余程
「ひぇっ! 先輩勘弁してくださいよ、今回私、大収穫上げたんですから少しぐらい調子に乗らしてもらってもいいじゃないですか!!」
笑っていないその目で言葉に圧力掛けるディスト、それに少しだけ涙目を浮かべて怯えるような素振りを見せる。
「まぁまぁ、ディストも部下に優しくね。彼女の言う通り、今回はチルちゃんの大手柄なんだから」
「ハッ、分かっております」
ルディアからの言葉に従いつつも、それでもまだ物言いたそうにチルを一瞥し、その視線に肩をびくつかせる。
「これ以上はディスト先輩が怖いので真面目モードでお話ししますね」
先程迄空気を換えるように、物静かな様子で彼女は続ける。
「まずは改めて報告。私ら技術部門はスピリットエデンと地球、そして……今回それ以外の存在を突き留め、そしてその世界に接続できる装置の開発に成功しました」
チルから発せられる衝撃的な一言、ルディアはその言葉に興味深そうに耳を傾けている。
「以前手に入れたライダースピリット、それを元にあらゆる次元を調査し、今回その世界の存在を探知出来た訳です」
今回の罪狩猟団の目的、それは前にシャドウとの一件で手に入れたライダースピリット、今度はそれを組織内に流通させる為、より強力なライダースピリットの確保に動いていたのだった。
「シャドウ君から奪った分だけじゃ正直全然足りないし、彼が使ってたオーマジオウと言い、もっと強力なライダースピリットだって存在する筈! そしてそれは地球とここだけじゃなく、別の異世界に存在するんじゃないかって思ってたけど、本当に実在してたとはね。お手柄だよ!」
元々地球とスピリッツエデンの世界移動を可能とさせる技術を開発したのはヘルではあるが、その技術を組織内に流用させたのは他でもないチルであった。
先程までの言動からはとても想像できないが、異世界を調査するものとして彼女は、元科学者であるヘルに近いか、それ以上の知識と経験がある。
「さて勿論ライダースピリットの確保に動き出したいんだけど、生憎組織の最優先は七罪竜には変わりない」
「はい」
「そして今は大事な時期だ、生憎大掛かりな人員は割けないし、幹部である帝騎を派遣するわけにも行かない。それは分かるよね?」
「勿論です」
「だからまずは君にその世界に赴いて調査を任せる」
「ハッ! お任せください!」
「任せる」というルディアの言葉に対し、片膝を突きながら答える、そしてその後少し間をおいて、彼女は顔を上げて立ち上がると。
「ではちるっと頑張ってきますね! どうかチルちゃんの吉報をお待ちください♪」
また最初の時の様な軽快な調子でその場を後にして立ち去って行き、その様子にルディアは可笑しそうにケラケラと笑っているが、ディストは。
「(失敗したら拷問確定ね)」
「!?」
歪んだような不敵な笑みを零し、離れた場所でチルは何か寒気を感じるように一瞬肩を震わせる。
「ディスト、落ち着いて。今回の作戦は彼女に全部任せよう」
「彼女一人で無事成功するでしょうか?」
「それは分からない。そもそも何もかもが不明だから調査を任せたんだしね」
作戦を彼女に一任してることに不安を感じているディスト、今回の作戦が容易でない事は当然ルディアも把握しているが。
「まぁでも面白くなるのは、確かさ」
口角を上げながら呟き、思惑を抱えながら組織は動き出す。
そんなスピリッツエデンでの出来事から数日後。
***
地球でも、スピリッツエデンとも異なる異世界のとある場所で。
『ヘイ! この程度かい?』
殺風景な荒野のど真ん中で対立するように立つ男女、一人は黒髪に髑髏の眼帯が目立つ男性、その男性を追い詰めるかのように言葉を掛けるもう一人は、金髪に派手めな黒コートと、胸元に掛かる雷を模したペンダントが特徴的な女性。
「こ、この俺がテメェみたいな女に!!」
「女相手で油断してたとでもいう気かい? まっ、この程度じゃ仮に本気出した所で知れてるだろうけど」
「ぐっ!!」
「さぁ、ギドラ! やっちゃいなッ!!」
地響きの様に大地を揺らしながら響く足音、そして女性の背後から歩み寄る巨影、三つ首に金色に輝く体を持つギドラと呼ばれし龍のようなスピリット。
その龍の姿に男性は恐怖し、怯む様に後ずさるが三つ首の内の一頭は大きく口を開き、そして男性に雷撃を打ち込み、足元に撃ち込まれた攻撃に巻き起こる爆風。
「ぎゃああああああああッ!!!」
その一撃に男の最後のライフが砕け、叫びと共に大きく吹き飛ばされ、金色の龍は三つ首とも天に向かって咆哮を上げると、満足したようにギドラと呼ばれたスピリットはカードとなって女性の手に収まる。
「お疲れ様、ギドラ」
デッキとこの世界でバトルする上で必要なBパットと呼ばれるツールを終い、優しげな表情で手に収まった自分の相棒であるそのカードにキスをしながら、労いの言葉を掛けるが一方で倒れる男性に視線を向けると、先程迄の優しげな表情を一変させる。
「ハァァァ~……名のある賞金首っつーから期待してたのに見掛け倒しじゃねぇかよ! そこそこ有名ならちったぁアタイを楽しませてみろってんだ!」
深く長い溜息を零しながら、倒れる男性を尻目に不満げな言葉を吐き捨てる女性。彼女に倒された男性は、この世界ではお尋ね者として手配されており、賞金が書けられるほどの実力者なのだが、そんな人物を相手取ったというのに彼女はまるで退屈そうだった。
『あらあら、どうやら私の他に先客がいたみたいね』
「!」
人気もないその場所に現れる第三者、掛けられる言葉と同時に感じる気配に咄嗟に振り替えると、そこには美しい程の容姿に長い黒髪の女性が立っていた。
「何だアンタ? アンタもこの男の賞金を狙ってんのかい?」
「賞金と言うよりかは、その男個人にお願いしたい事があったんだけどね」
「あぁん?」
黒髪の女性は倒れて気を失う男性にしゃがみ込み、ツンツンと突きながら全く反応を返せないその姿に「駄目そうね」とガッカリした様な一言。
「折角こんな所まで足を運んだのに当人がこれってホント残念。ポンコツオワコン、ちゃんちゃんって感じ」
「ポンコツのオワ……何だって?」
女性の語彙に若干戸惑うようなリアクションだが、その女性は指摘されても全く気にする事がないように金髪の人物を見る。
「最近名のある賞金首を狩りまくり、傭兵や用心棒としても名高い賞金稼ぎがいるって事を耳にしたけど、もしかして貴方なのかしら?」
「あぁ~アタイ、自分の噂話は疎いから知らねぇけど多分あってんじゃねぇの?」
「フフ、確か名前はイカヅチだったかしら? どんな大男なのかと思ってたけど、随分可愛いい顔ね」
「アタイより上の美人さんから言われちゃ、誉め言葉に聞こえないんだけどな」
自分の名前を知るその女性にイカヅチは警戒を覚えるが、対して女性は「そう警戒しないで」と敵対意思がない事を示すように両手を出して丸腰であることをアピールして見せる。
「まずは自己紹介ね、私の名はイバラ」
「イバラ、ねぇ。アンタの名と顔は手配書リストでも見覚えはないけど、そんな極悪人に頼み事しようとしてる所を見ると、真っ当な輩じゃなそうだね」
「まぁ否定はしないわ。ちょっと秘密の仕事を依頼したかった訳だしね、けどその男以上に強そうだし、良かったら貴方にその仕事を依頼してもいいかしら?」
「へぇ~、どんな仕事よ?」
「まず実力者である事は必須条件、報酬はその賞金首以上の額でどうかしら?」
次の瞬間、一瞬気配を消す様に何時の間にかイカヅチに近付いて肩に手を回して、そっと耳元で囁く。
「勿論あなたの働き次第で、ね」
「!」
反射的にイバラを振り払う様に腕を振り、イバラは軽く振る荒れた腕を避ける。
「あらら、ちょっとした冗談じゃない。まっ、それはそれとして、引き受けてくれるのかしら?」
「……まぁ、内容次第な」
「素直じゃないわね。いいわ、詳細については追々説明してあげる」
此処では説明できないのか、付いてきてと言わんばかりにその場から歩き出す女性に対し、イカヅチもまたその女性に後に続くように歩き出すのだった。
どうも皆さま、ブラストです!
特別編、急な展開にやや困惑してる方もいらっしゃると思いますが発表いたします。
今回、まず「バトルスピリッツ コラボストーリーズ」を書いていらっしゃるバナナさんとのコラボが決定しましたーーーッ!!!
そしてその今回の話は、コラボ本編に繋がる序章編!!
バナナさんの世界からオリジナルキャラを出す許可を頂き、それが今回登場したイカヅチでございます!!!
そしてウチの世界からもコラボで登場する新キャラのチル!!
さりげなくスピリッツエデンと異世界を繋ぐ機会を流通させるとかすごいこと言ってますが、本編にも絡んでくるんでしょうか(笑)
イカヅチとチル、二人のモチーフについてはまた別の機会で語れたらと思います!コラボに向けて、どんな展開になるのか、そしてチルとイカヅチの二人がどう本編に絡んでくるのか是非見ていただければと思います。
コラボ回本編に向けて、全力執筆いたしますのでどうぞご期待ください!