バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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特別編 PART-Ⅰ【激闘! 赤き龍騎士】

『光黄様! 明日旅行しましょッ!!』

「は?」

 

まだ朝早い時間、俺は相棒であるライトから寝言のような一言を聞かされる。

 

『モノローグ酷くないですか!! というか私は光黄様の執事ですよ!』

「お前のような執事は雇ってない」

『うぅっ、つれない……でもそこがいいんですけども!』

「一々うるさい」

 

溜息混じりに突っ込む。大体はいつものような調子だが、それでも何故急に突拍子もない提案をするのか、その事に少しだけ疑問が浮かぶ。

 

「大体どうして急にそんな事?」

『それについてはまぁ話せば長くなるんですけども!』

 

コホンと咳払いしつつ、ドヤ顔を浮かべながら得意げに話し始める。

 

『まず私達、七罪竜はスピリットエデンとこの世界を自由に行き来できるのは知ってますよね?』

「あぁ。確かそう言ってたな」

『はい、実際に世界を渡る方法なんですがまぁ色々割愛しますが、簡潔に言うと異世界同士をつなぐ空間の座標、それを見つけ出して世界移動を可能にしてるようなものです』

「空間の座標?」

『そうですね、例えばこの世界とスピリッツエデンの世界間を繋ぐ空間が無数に存在します、私達七罪竜はそれを見つけ出す事、そしてそれを使って世界移動できる能力があります。

ちなみにヘルが作った機械は、我々が開いた空間の座標を記録し、それをどこからでも呼び出せるような仕組みです』

「……成程大体分かった。けど、どうして急にそんな話を?」

『よくぞ聞いてくれました!』

 

ふふーんと自慢げに鼻を鳴らしながら。

 

『で、私は考えた訳ですよ! スピリッツエデンの座標には、この地球だけではなく! 未知の世界を繋ぐ座標が存在するのではないかと! ドヤッ!』

「ドヤ顔はいいから。それで見つかったのか?」

『勿論です! そうでなければ話しませんともッ!」

 

コホン、ともったいぶる様にもう一度咳払いしながら得意げに話し始める。

 

『私が見つけた世界、そこで見たのは人気のない無人島、透き通るような青い海に自然豊かな森の樹木! まさに南国のリゾート地のような場所でした!!』

「本当に?」

 

俄かには信じられないような話だが、それでもライトは嘘ではないことを強調しながらなおも続けて行く。

 

『勿論この地球ではなく、異世界での光景でしたので現地調査を行いましたが、危険な生物や過酷な環境ではない事はバッチリ確認致しました!』

「おぉ」

『褒めてください! これも執事としてのスキルですとも!!』

「嫌、確かにすごいと思うけど、けどやっぱりうちで執事は雇ってない」

『頑なにッ!?』

 

変わらず塩対応気味な言葉に肩を落とすライト、だがそんな対応を返しつつ光黄にも少なからずライトの話には興味をそそられていた。

 

「……旅行、か」

『やっぱり光黄様も興味あります? ありますよね!!』

「立ち直り早ぎるだろ」

 

数秒前まで落ち込んでいた表情はどこへやら、興味を示す様な彼女の一言にライトは即座に目の色を変えて喰い付く。

 

『(あぁ、南国の楽園、光黄様と楽しく過ごせるなんて私舞い上がりそうです♪ そして青い海と言えば!!)』

 

期待を込めるかのように、妄想に胸を膨らませ。

 

『光黄様の水着姿が見たい!!』

「大声で何言ってんだ、お前」

『ハッ! 私、今何を?』

「思いっきり口に出してたぞ、水着なんて絶対着ないからな」

『えー、そんな事言わずにッ!! 折角の海ですよ!』

「却下」

 

取り付くシマもないかの如く、そっぽを向くがそれでもライトは涙目を浮かべつつも必死に食い下がる。

 

『お願いしますよ、可憐で可愛くて綺麗で素敵な光黄様の水着姿、是非!』

 

大袈裟な程褒めまくるライトに恥ずかしいように顔を赤くして一瞬間を置くが、それでも頑として「諦めろ!」と一蹴。

 

『むぅぅっ~……そこまで言うのでしたら無理矢理にはできませんけど、でも水着は別として旅行には行きましょうよ、一応調査したとはいえ未知の異世界であまり大人数では目立つので駄目ですがもう一名ぐらいなら旅行に誘ってみて』

「!」

 

ライトからの言葉、それを聞いた瞬間、即座に一人の人物が真っ先に頭に浮かぶ。

 

「な、なぁライト」

『はい、何でしょうか?』

「よかったら、烈我も誘って──」

 

そこまで言い掛けてふとライトに視線を向けると、何故かとても不機嫌そうに表情を歪ませるライト。

 

『あの人誘うんですか~……』

 

もはや嫌そうな態度を露骨に表して呟くライト。

 

『私は嫌ですよ、バジュラも一緒に来ると騒がしくなりますし、何より光黄様にいつもベッタリですし、私は絶対あの人を認めませんからね!』

 

自分の事を棚上げするかのような言葉を吐きつつ、まるで烈我には敵意を向けるかのような様子。

ちなみに彼女自身は烈我に対しての心情、それをまだライトには話していない。言えばとても面倒な事になる、何となくそんな予感を彼女は感じていた、だからこそあえてライトには伏せたままだった。

 

「烈我とは一番長い付き合いだし、今後も一緒に戦うんだ。そう邪険にしないでやってくれ」

『……むぅっ、まぁ光黄様がそう言うのなら』

 

渋々ながらも返事を返し、そして彼女は少しだけ胸を躍らせながら携帯電話を手に、早速烈我宛に電話を掛けるが。

 

『はい、もしもし光黄ちゃん?』

「る、るみかさん!?」

 

予想に反して電話に応答したのは、烈我ではなく姉のるみかの声。

 

 

『あ、あの……烈我は?』

「あ~~……(烈我)なら」

 

るみかの視線の先には袋に詰めた氷水を額に当て、顔を真っ赤にしてベッドに横たわる烈我の姿が。

 

『ったく、俺の相棒が風邪とは情けねぇな』

「ゲホッゲホッ、ざけんな!! 元はと言えばお前が昨日、冷房ガンガンに冷やしすぎるからだろうが!」

『クソ程暑かったんだから仕方ねぇだろうがッ! それに寝相悪いのか知らんが、腹出して寝てるからだよッ!!』

「うるせぇ! 寝相なんか簡単に直せねぇって……ハァ~~クションッ!」

 

ギャアギャアとバジュラを口論を繰り広げる烈我、そんな二人の喧嘩声は携帯を通して光黄達からも聞こえていた。

 

『ごめんねー、聞いてる通り烈我の奴、生憎風邪みたいで』

「烈我、大丈夫なんですか?」

『平気平気、バジュラ君と元気に喧嘩してるぐらいだもん。暫くしたらケロっと回復してるって』

「そうですか」

 

特に問題ないというるみかからの言葉に、少し安心を覚える。

 

『折角電話してもらったのにごめんね。もしかして何か用事?』

「いえ、特に大したことじゃ。烈我には安静にしてろって伝えてください」

『……分かった。その、間が悪い弟でごめんね』

「!」

 

電話越しとはいえ、光黄の声に何となくの事情を察したかのようにるみかからの言葉、若干動揺させられながらも、すぐに気持ちを切り替え「大丈夫です」と心配を掛けまいと返事を返し、電話を切る。

 

そして電話を終え、るみかは烈我達を見ながら。

 

「さて二人共いい加減にね。烈我はそんな調子だと益々熱上がるよ?」

「はーい。ところで姉ちゃん。さっきの電話誰から?」

「何でもないよ。まぁ一つ言うならさ」

「『?』」

「アンタ、今日はツイてなかったね」

「はい?」

 

今電話相手の名を出さないのは姉としてせめてもの優しさ。「とにかく安静にしろ」と無理矢理に寝かされるが、結局この翌日、携帯の着信履歴から死ぬ程後悔するのはまた別の話。

 

 

『よっしゃぁーッ!!』

 

一方で光黄達はと言うと、電話の内容を聴いていたのかライトは喜ぶ様に飛び回っていた。

 

『いやぁ~これで光黄様と私の仲を邪魔する奴はいません! でもしかし、風邪とは意外でしたね。何とかは風邪を引かないって言うのに。ね、光黄様?』

 

上機嫌気味に尋ねるライトだったが、一方で光黄は正反対な様子で少し表情を暗くさせ、その様子を不思議に思う。

 

『光黄様? どうかしました?』

「嫌、別に」

 

素っ気無い返事をライトに返す。実際の所、そこまで表情に出してないだけで、彼女の心情はかなり深い程気落ちしていた。

 

「(どうせなら、彼奴と二人でって……思ってたのにな)」

 

彼女の今の心境は消沈しており、ライトからの旅行の提案にももはやあまり気乗りできなくなっているというのが正直な所だった。

 

「なぁライト、俺……」

 

ライトには悪いが今回は断ろう、そんな考えが頭に浮かんでしまうが。

 

『いやー、それにしても旅行ホント楽しみです! 前々から準備してた甲斐があった物ですよ!』

 

嬉々とした様子のライトに思わず駆けようとした言葉が止まる。

 

「準備?」

『えぇ、光黄様もずっと罪狩猟団とかいう組織と戦うことになってからというものずっと気を張りつめたまま……なので偶には光黄様の気が休める機会を設けられないかなと思って、毎夜毎夜ずっと独自調査しまして、その甲斐あって、旅行先の異世界をどうにか見つけられまして!』

「!」

 

そう言えばここ最近ライトが寝不足気味でどこかぼっーとしてる様子だった。恐らくずっと頑張ってくれていたのだろう。自分を気遣ってくれるために、無理をしていてくれていたのかと思うと少し居た堪れないような気持ちになってしまう。

 

「別にそこまで気遣わなくてよかったのに」

『いえ、光黄様に思う存分満喫してほしいと思うのは執事として当然の務めです!』

「だからお前のような執事は雇ってないと……けど」

 

彼女にとっては自分を気遣ってくれている事が素直に嬉しかった。

 

「旅行の件、よかったら絵瑠も誘ってみようか」

『いいですねソレ! いやぁ~……楽しみです!』

「……あぁ、俺もだよ」

 

何だかんだライトともそれなりに長い付き合い。色々振り回される事はあれど、それでも変わらずに自分に好意を向けてくれたり、こうして自分を気遣う為に頑張ってくれているのは本当に嬉しい。だからこそ今回その好意を無下にはできず、偶には甘えてみよう。そう思う彼女だった。

 

「ライト、本当にありがとう」

 

ライトの頭に手を置きながら、感謝を笑顔で伝え、ライトもその言葉に嬉しそうに尻尾を振りながら笑顔を向ける。

 

 

 

***

 

 

 

────翌日、スピリッツエデンにて。

 

 

「まさか私まで誘ってもらえるとは」

『いえいえ! こちらこそ絵瑠さんのような美しい人に来てもらえて本当に嬉しいです! 絵瑠様に満喫してもらう為、異世界リゾート地の百や二百! 調べる事等簡単ですよ』

 

前言撤回、軽薄な様に絵瑠に対し愛想を振舞うライトの姿に、昨日言った自分の言葉を取り下げた。

 

『にしても、まさか貴方まで来るのは意外でしたよ。シュオン』

 

絵瑠の後ろに視線を向け、視線の先よりこちらに歩み寄るのはライトと同じ七罪竜の一体であるシュオン。

 

『一人だと美味い物に在りつけないんでな』

『すっかり貴方、美食家になりましたね。というか向こうにあるのはフルーツと生物ぐらいですよ?』

 

「あぁ問題ない、料理なら私も少しできるし」

『さっすが絵瑠様! 美しいだけでなく料理の腕とは一流とは!』

「まあ私は美味しい物を食べたくて、自分で料理も覚えたからな!」

 

胸を張りながら自慢げに話す絵瑠、対してシュオンは二人の会話に耳を傾けつつも、あまり興味がなさそうに会話に加わろうとはしていない。

 

「シュオンだっけ、お前も世界移動できるんだよな?」

『あぁ、だが今回行く場所の座標など俺は全く知らんぞ? 大体座標探すのにも多少なり体力を使うんだ、今回は全部彼奴に任せるさ』

「!」

 

光黄からの質問にシュオンは少し面倒そうに答えるが、シュオンに対しライトは得意げだった。

 

『フフフ、そう簡単に見つかるものではありませんからね! 苦労しましたとも!!』

 

自信満々に語るライトだがシュオンからの言葉に自分が思っていた以上に負担をかけてしまったのではないかと、少し不安を感じてしまうが。

 

『光黄様、そんな顔しないでください。私が望んで行った事なんです! だから今回の旅行で光黄様達が楽しんでくれる事、それだけが私の報酬です』

「ライト、ありがとう」

『いえ、では参りましょうか!』

 

意気揚々とした様子で全員定位置につき、そしてライトは座標を手探りで座標を掴む様に。

 

『えっと、確かこの辺りですね!』

 

座標を掴み、その座標を元に空間の道を開いていく。

 

「!」

『それでは行きましょう! 皆さんついてきてください!!』

 

開かれた空間に飲み込まれるように中に入り込むと空間の穴は消え、そして眩い程の強い光に光黄達の視界は真っ白となる。

 

 

 

***

 

 

 

「う、う~ん?」

「ここって?」

 

暫くしてようやく光に目が慣れ、辺りを見間渡す光黄と絵瑠、だが二人の目の前に広がる光景は最初にライトが口にした自然広がる島ではなく、近代都市の様に立て並ぶ建造物の光景。

 

「ライト、お前が言ってた所と随分印象が違うが?」

「そうだな。大自然と言うかその逆、何か近未来で寧ろ自然要素皆無って感じだぞ」

 

一瞬自分たちの住む町の一つかと思うが今目の前に広がる街々は、自分達が住む世界の都市以上に発展しているのが分かる。中でも一番目立つのは自分達のすぐ目の前にある巨大な鉄塔。

 

ともかく事前に聞いていた内容と食い違う光景に益々疑問が浮かぶが。

 

「ライト?」

『…………』

 

光黄からの言葉に対しても何故か無言のまま、その様子を不審に思うが、唯一シュオンだけはライトの様子に何かを察し。

 

『(まさか、此奴……!)』

 

何かを察したその直後。

 

『貴様等、そこ動くなッ!!』

「「!!?」」

 

突然の声に動揺する中、辺りを取り囲む兵士のような集団。

 

『貴様ら見ない顔だが、一体此処へ何用だ?』

「何用って、私達も何が何だか!」

「ライト、どういう事だ? 無人島じゃなかったのか!?」

 

今の状況に何一つ理解できず、すぐにライトに事情の説明を求めるが光黄の問いに対し、ライトは汗を垂らし、震える様な様子で。

 

『……光黄様、座標……間違えたみたいです』

「「!?」」

 

今のこの状況についてはライトでさえも把握していなかったのだ。もはやこの場の誰一人として今の自分達の状況が分からずお手上げだった。

 

『至急、エレン様の元へ連行しろ!!』

 

隊長格の様な男性が叫ぶ。何一つ分からない今のこの状況では下手な抵抗さえもできず、止む無く兵士達に捕縛され、光黄と絵瑠の二人はそのまま連行されてしまう。

 

 

 

***

 

 

 

「……一体、ここって」

 

連れて来られた場所、訳が分からず必死に状況を把握しようと辺りを見渡す絵瑠、光黄も同じように冷静に周りの状況を探ろうとするが。

 

『侵入者と言うのはお前達か』

「「!!」」

 

兵士達は左右に並び立って敬礼し、兵士達の中央を歩く男性。ただ歩いているその風貌だけで、兵士達の態度以上にかなり位の高い役職である事は初対面である光黄と絵瑠の二人に容易に伝わった。

 

「さて話の流れは大体兵士より聞いておる。怪しい者が城内に侵入しておるとな」

 

「わ、私達は──」

「!」

 

弁明しようとした瞬間、エレンの表情が険しくなり、そんな表情の変化を察して光黄はすぐに絵瑠に手を突き出して静止させる。

一先ず今は下手に口を挟まない方がいいと判断しての事だろう。

 

「最近ユキカイ町で無法者が暴れていたという報告もあった、故にこのオウドウ都でもその事件を踏まえ警戒態勢を敷いていたのだが、そんな折にお前達が現れた」

「!!」

 

 

光黄達には関係のない話だが、会話の内容を察するにどうやら時期が悪いという事だけは確かだ。

 

「さて貴様等は何者か、聞けば他に奇妙な生物がいたと聞く。下手な隠し立てはするなよ?」

「「!!」」

 

エレンの言葉に光黄も絵瑠もそれぞれカードを取り出すと、それぞれシュオンとライトは実体化し、それぞれ光黄と絵瑠を守るように2体は前へ出て、エレンの前へと姿を見せる2体に兵士達は警戒する様に構える。

 

「それがそうか、確かに初めて見るスピリットのようだな」

 

『ここ、何処かの国のようですが、この国は偉く女性に乱暴なのですかね?』

『面倒だ。何なら全員喰らってやるぞ?』

 

「シュオンやめろ!」

「ライトもだ!」

 

『ですが!』

「いいから、とにかく落ち着け」

 

光黄達の指示に素直に従うようにライトもシュオンも構えを解き、その様子にエレンは静かに二人を見下ろす。

 

「ふむ、では余計な問答は不要だな。率直に聞くぞ、娘……お前達はこの国にとって害を為す者か?」

 

ただ静かに問いかけるエレン、だがその言葉以上にエレンから感じる王としての威圧、その迫力に飲まれ絵瑠は言葉を失いかけるが、光黄は静かにエレンを見ながら。

 

「結論から言います。まず俺達はこの世界の者じゃありません。違う異世界、そこからここに来てしまいました」

「ほお」

 

第一声目からの光黄の言葉に兵士達はざわざわと動揺の声が上がるがエレンだけは興味深そうな表情を浮かべながら「続けよ」と催促。

 

「俺達は偶然この世界に来てしまっただけです。信じて貰えないかもしれないけど、この世界に害を与えるような事はしません、それだけは誓って言えます」

「……」

 

光黄をじっと見つめるエレン、重圧さえ感じる程の視線に彼女もまた少しも臆さずに目を外さず、二人の様子にライトや絵瑠達もハラハラするように気が気でないのだが。

 

「フッ」

 

暫くしてエレンは笑みを零したかと思うと。

 

「確かに俄には信じられない話だと思うが、いいだろう」

 

光黄に対して笑みを向けながら、続けていく。

 

「物怖じず気高いその目、気に入った。エレン・オメガの名の元にお前達の話が信じるに値すると保証しよう!」

「「!!」」

 

どうやら誤解が解けた様子でほっとするように絵瑠達は一息を零す。

 

「手荒な真似をしてすまなかったな。兵士達の無礼を許せ」

 

無事誤解が解けたようで兵士達は一斉に構えを解き、人払いするように兵士達を退席させ、エレンの言葉に二人は一礼して返す。

 

「時に異世界より来たと言ったな。よければお前達の事情を詳しく聞かせてくれないか?」

「俺で話せる事でよければ」

 

元々この世界に来た経緯以外に自分達の世界の事、ライト達、七罪竜の事等話せる範囲で語り、その話に終始興味深そうに聞き入っている。

 

「成程、お前達の事情は分かった。帰る目処は付いているのか?」

『ええ、一応』

 

この世界とスピリッツエデンの座標はライトが記憶している。元々間違えてこの世界に来てしまったとはいえ、今度は間違えないという絶対の自信がある。

 

「そうか、しかしこの世界にお前達が来たのも何かの縁かもしれないな」

「と言うと?」

「それについて、今度は余の話を聞いてくれるか」

「「?」」

 

 

 

***

 

 

 

「いやー、久々に来たな。オウドウ都!」

「ええ、まさかまた呼ばれるとはね」

「むえ〜……」

 

オウドウ都へ足を踏み入れる男女と1匹、一人は灰色の髪に無邪気な子供の様に大きな声で語る少年、もう1人はムエと言う名前のペットのような犬を抱き抱えた赤茶色の髪型の少女。

 

「まさかまた俺の挑戦権剥奪とか言われないよな? そうなったら俺も流石に怒る」

「私は特に詳しい事は聞いてないけど、まあアスラの事だし言われかねないわね」

「おいおい! エール、そりゃないぜ!」

 

少年の名はアスラ、そして少女の名はエール。二人共にこのオウドウ都で三王であるエレンと一悶着を起こした経験があるが、ここではその話については割愛しよう。

 

今度は一体どんな要件なのか、少し不安を感じながらも二人は城へと入っていく。

 

 

「来たかエール、それと……コモンの少年」

「どうも、エールのお兄さん、お久しぶりです!

「不敬だぞ!」

「うぇ!? 挨拶しただけで!?」

 

強い眼差しで睨み、そんな様子にアスラは自分がエレンに嫌われているのではと思うが、エレンのアスラに対する強い物言いはアスラが妹であるエールと近しい存在であるが故の嫉妬であるからであった。

しかしそんな事はアスラは勿論、エール本人も気付いてはいない。

 

「あの、お兄様……今日私達を呼んだ理由って?」

「あぁ、実はなマリーナ海街という場所を知ってるか?」

「それって、確か最近話題になってる観光地ですよね?」

 

マリーナ海街、それはここ最近建てられた街で海が見えるビーチや観光施設も充実しており、旅行スポットとして人気の場所だった。

 

「実はその街の創設者から、オメガ家宛に2名分の招待状が届いててな」

「招待状?! 人手が多くて、観光客が制限されてる程なのに!?」

 

まだ建てられて間もないが、それでも観光やリゾート地としては有名であまりに訪れる人が多い為、町民以外は招待した者のみを招くように制限を設ける程。

 

「名のあるオメガ家の者が来れば益々街の宣伝に繋がるとの事だ、だが余は生憎このオウドウ都を安易に離れる訳には行かない……しかし折角の招待を無下にも出来ない」

「それで、私に……」

 

同じオメガ家であるエールが行くのならば問題は無いという認識なのだろう。そして、2名の招待ということでエールは期待に胸を踊らせるようにアスラを見る。

 

「2名……そ、それじゃあアスラ!」

 

誘う相手は当然決まってるようにアスラを見るが、「待て!」とその視線を中断させるようにエレンは言い放ち。

 

「エール、お前はもう1名にその男を選ぶつもりなのだろうが、オメガ家の同行者に生半可な者を選ぶ訳には行かない」

「なっ!? 俺が半端者って言うんですか!!」

 

エレンからの言葉に文句があるようにアスラは突っかかるが、コホンと咳払いしながら。

 

 

「お前の功績は耳にしている。しかしお前以上の実力者がいれば、当然その者を同行者に選ぶ」

「俺以上!?」

 

笑って言うエレン、彼の言葉の後に前へと出る二人、光黄と絵瑠だった。

 

「え? 誰?」

「お兄様、その人達は? 見慣れない格好だけど」

 

「うむ、この娘等は余が実力者と見込んだカードバトラーだ」

「「!?」」

 

エレンの言葉に驚きを隠せないように驚く二人、一方で絵瑠と光黄は互いに顔を見合せながら。

 

「「(何でこんな事に……)」」

 

 

────遡る事、アスラ達が来る少し前。

 

 

「一つ聞くが、お前達バトルの腕に自信はあるか?」

「「?」」

 

突拍子もないエレンからの質問に疑問符が浮かぶ。

 

『勿論ですとも! 光黄様も絵瑠様も綺麗で可愛いだけでなくバトルの実力も超一流ですとも!!』

「ら、ライト」

 

勝手に回答するライトに対してエレンは笑いながら。

 

「良い! そこまで自信があれば安心だ。実はお前達二人のどちらかにある男とバトルして欲しくてな」

「バトル?」

「実はとある観光地へ2名分の招待が来てるのだが、余はこの国を簡単に離れられん。だから余の妹に代わりに観光して羽を伸ばしてもらおうと思ってる」

「妹さん、ですか」

 

絵瑠の言葉に頷き、エレンは少し表情を強ばらせる。

 

「問題はもう1人だ。妹と旅してるアスラというコモンの者がいるが、恐らく妹はその者を選ぶに決まっている」

「はあ、それが問題に?」

「大ありだ!! 余の大事な妹に妙に馴れ馴れしい男!! あんな者と旅行地へ行かす等断じて認めない! 本来なら余が妹と共に赴きたいのに!」

 

エレンの口振りに妹に大して相当溺愛が強い事を瞬時に察する。

 

「しかし同行させるには実力者であることが望ましい。そしてあの者が実力者である事は事実、無理矢理引き剥がそうにも強引な手は妹に快く思われん。だからお前達にそいつと戦い、あの男以上の実力者である事を示して欲しい!」

「……」

 

『どうします? 光黄様?』

「どうって」

『可愛い妹様を何処の誰かも分からない男には任せられない、このお兄様の気持ち、私は凄く分かりますとも!』

 

エレンからの頼む要件は一先ず理解し、ライトも共感するような気持ちを語るが光黄としては正直気乗りしなかった。

 

「俺はあまり……何だか結局その妹に恨まれそうだ」

「まあまあ、光黄。この人も困ってそうだし、何より妹さんが心配に思ってのことだろう」

「絵瑠……お前まで」

「バトルなら私が引き受けるぞ、こんなに強く頼まれたら断れないし」

 

『お人好しだな』

 

バトルを引き受ける事を了承する絵瑠、その様子にシュオンは呆れるように呟くが特にバトルを行うこと自体には否定はせず、そんな経緯からバトルする事となった。

 

 

「むえー!」

「わっ!」

 

「あっ、ちょっとムエ!!」

 

鳴き声を上げて突然エールから離れて光黄へ駆け寄って胸へ飛び込むと、咄嗟にムエを受け止め、そのまま抱き抱える。

 

「い、犬?」

「ごめん、どうやらムエ、貴方の事気に入っちゃったみたいね」

「むえー!!」

「「(か、可愛い)」」

 

鳴きながら愛らしいムエの姿に光黄もエールも思わず表情を緩ませる。

 

『ちょっと!! 光黄様にベッタリめちゃくちゃ狡い!!』

「きゃっ、な、何!?」

 

ムエに嫉妬するように飛び出るライト、突如現れたその姿にエールは驚くように声を上げる。

 

『これはこれは美しいお嬢様、驚かせて申し訳ない。私、光黄様の執事をしてるライトと申します、どうぞお見知り置きを』

『馬鹿が、安易に姿を見せる奴がいるか』

 

何時ものようにエールに対して取り出した花束を差し出し、そんなライトにシュオンは呆れるように顔を出す。

 

「ら、ライト? スピリットなのかしら?」

「まあ。こんな執事は雇ってませんけど」

 

ライト達の姿にエールもアスラも驚きつつも興味を引かれ。

 

「その者達は七罪竜と呼ばれる未知のスピリット、それを操る程の実力者だ」

「七罪竜?」

「腕前は直接確かめればいい、実力がお前以上であると判断出来れば、同行者は彼女等に任せる。エールも異存はないな?」

「……分かりました」

 

最もなエレンからの提案に反論はできず、エールはアスラへ視線を向ける。

 

「いい? アスラ! やるからには必ず勝ちなさいよ!」

「?……やるのは俺なのに何でお前がそんなに気張ってんだ?」

「う、うるさい!! アンタは頂点王を目指すんでしょ! だったら何処の誰かも分からない相手に負けてもいいの!!」

 

鬼気迫るエールの迫力に「お、おお」と押され気味に相槌を返す。エールとしては是が非でもアスラに勝って欲しい所だが、そんな想いに未だアスラは気付いておらず。

 

「まあとにかく! 七罪竜! そんな相手と戦えるなんて楽しみだぜ!! やるからには当然勝ちたい!!」

「決まりのようだな」

 

バトルの同意を受け取ると、絵瑠とシュオンは前へと出る。

 

「えっと、式音絵瑠だ。よろしくだぞ」

「おお! 俺の名はアスラ!こっちこそよろしくな!」

 

 

***

 

 

一度表へと出て対面するアスラと絵瑠の二人。エレンからBパッドを受け取り、興味深そうにそれ眺める。

 

「この世界のバトルに必要な物だ。それではよろしく頼むぞ」

「はい、やるからには勝つつもりでやる!!」

 

「シュオン!」と名を呼ぶとその言葉に返事を返しながらシュオンはカードの姿となって、絵瑠のデッキに収まる。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉ!! 凄えッ!!」

「では全力で行く! 手加減はしないぞ!」

「あぁ、俺だって手加減なしの全力だぜ!!」

 

互いに気合いは十分、そしてデッキ構え向かい合い、そして叫ぶ。

 

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!」」

 

光黄やエール達に見守られる中、高らかに宣言すると共に二人のバトルがいよいよ幕を開ける。

 

 

 

────第1ターン、アスラside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚

 

アスラの先行から試合が開始され、互いに手札を引き、そしてリザーブにはコアが出現し、試合開始の準備は整うのだが、その直前、絵瑠は何かに気付いたように。

 

「……おい、ソウルコアは?」

 

アスラのリザーブに出現したコアは4つの内、通常コアのみでソウルコアは一つも含まれてはおらず、当然それが疑問に浮かぶ。

 

「あー、いや……俺ソウルコア使えねーんすよ」

「使えない? 使わないじゃなくて?」

 

もはや現代のバトルスピリッツに置いて、ソウルコアの使用は馴染みのあるルールとして定着し、『あって普通』と言うのが今の認識。

この世界でも本来それは同じ、基本この世界の住人であれば誰でもソウルコアを出現させることができ、それは異世界から来た絵瑠にとっても容易だった。ただ一人、目の前のアスラと言う例外を除いて。

 

「その男は、生まれついてソウルコアを使用できないコモンだ。気にせずバトルを続けてくれ」

 

バトルする二人に対し、エレンの声が響く。アスラは「コモンは関係ねぇじゃないですかあああッ!!」と声を大に反論している。

 

「え~っと、ともかく私は手加減されてるって訳ではないのだな?」

「当たり前だろ!! アンタ強そうだし、手加減なんかしない!! そして勝つのはこの俺だああああッ!!!」

 

自信に溢れた様に叫ぶアスラ、大きな声量にバトル見ているエールは「相変わらず煩い」とやや呆れ気味に呟くが、隣にいる光黄とバトルしている絵瑠の二人はそんなアスラの姿を何処かの誰かさんと重ね合わせていた。

 

「(……面白そうな奴なのは確かだな!)」

 

目の前のアスラに対し、絵瑠は興味深そうに笑う。

 

「よし! だったら受けて立つ!! 私だって負ける気はしないからな!」

「おっ! いいじゃん、だったら俺もアンタ以上の全力を見せてやる! スタートステップ!!」

 

開始されていくバトル、手札のカードを見ながら早速バトルを開始して行く。

 

「まずはネクサス、ミラーワールドを配置するぜ!」

「!!」

 

アスラがそのカードを配置した瞬間、周りの背景が反転するように鏡映の光景を映して行く。

 

「ミラーワールド、見た事無いカードだな」

 

ライダースピリットのカードは絵瑠達の世界ではあまり馴染みない。当然と言えば当然の反応、であれば警戒する様に構えるのは必然。

 

「俺はこれでターンエンドだ!!」

 

 

────第2ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「よし、私のターン! クリスタニードルとダークネスワイバーンを召喚、召喚時効果で1枚ドロー!」

 

クリスタニードルともう一体、出現したるは骸を兜の如く取り付けた頭部を持つダークネスワイバーン。鳴き声を上げて召喚時効果によりカードを呼び込むと、手札を増やして行く。

 

「アタックステップ! ダークネスワイバーン、行けッ!」

「ライフで! ……ッ!!」

 

先手を取ったのは絵瑠、バリアに取り付いてダークネスワイバーンは両翼をバリアに打ち付け、ライフを破壊する。

 

「ターンエンド」

「ぐぅっ! やるな、けど俺だってまだまだこれからだぜ!!」

 

 

────第3ターン、アスラside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]5枚。

[Field]ミラーワールドLv.1(0)。

 

「メインステップッ!! ミラーワールドをLv.2に、さらにシャムシーザともう一体! 来い俺の相棒、仮面ライダー龍騎をLv.2で召喚するぜ!!」

 

一体は小型動物のようなシャムシーザ、そして次に姿を見せたのは炎を顕す赤と鋼鉄を示す白銀の鎧を身に纏う戦士──仮面ライダー龍騎の出現である。

 

「ライダー、また見た事のないスピリットだな」

「俺の自慢の相棒だぜ!! けど、ライダースピリットってそんな珍しい?」

「えっと、それは」

 

確かにこの世界でもライダースピリットは貴重な存在には違いない。だがライダーはこの世界で三大スピリットの1体として数えられる程に大きい存在であり、多くの人間がその事を周知しており、寧ろ知らない事の方が珍しい、だからこそ無知な様子の絵瑠達に疑問が浮かび、エールもまた気になっているように表情を変えるが。

 

「まぁ今そんな事気にしたって仕方ねぇよな! それよりバトル続けるぜ!!」

「お、おぉ」

 

気を取り直す様にバトルを再開し、そして「召喚時効果!」と龍騎の能力発動を宣言。

 

「デッキの上から3枚オープンし、その中にある「仮面」と「戦騎」を持つカードと「ベント」を含むカードを手札に加える!!」

 

オープンされたのは「仮面ライダー龍騎[2]」、「ソードベント」、「ミラーワールド」の3枚。

 

「よっしゃぁッ!! 龍騎[2]を俺の手札に加える!」

「!」

「行くぜ行くぜ行くぜッ! アタックステップッ!!!」

 

気合十分に意気込みを込めながらステップ開始の宣言、龍騎は指示を受ける前から「しゃぁっ!」と自分自身に喝を入れるように拳を構える。

 

「仮面ライダー龍騎でアタック! そして俺の「仮面」と「戦騎」を持つスピリットがアタックした事で、ミラーワールドのLv.2効果を発揮! 俺のデッキから1枚オープン!」

 

ミラーワールドはまるで鏡を振動させるかのような不協和音を響かせ始め、それに思わず絵瑠は耳を塞ぐが、効果によってデッキからカードが一枚オープンされる。

 

「ぐっ! 一体これは……!!」

「ミラーワールドの効果! オープンしたカードが「ベント」を含むマジックカードなら俺はノーコストで使用できる!!」

 

デッキからカードがオープンされると同タイミングで、龍騎もまたベルトに装着したカードデッキから1枚のカードを引き抜いて表向きにカードを見せると、そのカードは「ストライクベント」。

 

「よっしゃああああああッ!!! ストライクベント発動だぜッ!!」

 

歓喜するアスラ、そして龍騎はストライクベントのカードを左腕に纏うドラグバイザーと呼ばれる武器にベントインさせる。

 

≪STRIKE・VENT≫

 

ドラグバイザーより響く電子音と共に絵瑠、ドラグバイザーはその形状を変形させ、龍の口を模すかのようなドラグクローへと変化すると同時に、天空より舞い降りる赤き龍の姿、ミラーワールドと呼ばれる世界にて龍騎と契約したモンスター、ドラグレッダーがフィールドへ姿を現す。

 

”グオオオオオオオォォォォォォンッ!!”

 

雄叫びを上げて絵瑠のスピリット達を見下ろすと、口を大きく開き炎を込めて行き、龍騎もまた狙いを定めるようにドラグクローを構える。

 

「ストライクベントの効果でBP8000以下の相手を破壊! 対象はクリスタニードルだ!」

 

ドラグレッダーとドラグクローによる火球がクリスタニードル目掛けて撃ち込まれ、咄嗟に防御姿勢を取る様に身を丸めるが、防げる訳もなく直撃を受け大爆発を起こす。

 

「さらに俺の場に「仮面」と「戦騎」を持つ龍騎がいるので、追加効果で1枚ドローだぜ!」

「だがこっちも相手によってクリスタニードルが破壊された時効果発動! 相手ネクサス一つを破壊! ミラーワールドを破壊するぞ!」

 

破壊されてもタダでは転ばない、爆風よりクリスタニードルの亡霊が怨念のようにフィールドに留まり、そのままネクサスを破壊しようと飛び掛かる。

 

だが次の瞬間、ドラグレッダーがいきなり飛び出したかと思うと、迫るクリスタニードルの霊をそのまま一飲みに喰らう。

 

「!?」

「無駄だぜ、ミラーワールドは俺の場に龍騎がいる時、相手の効果受けない! 破壊もされないぜッ!!」

「ぐぅっ! 手強い! 思った以上に厄介だな!!」

「へへっ、まだまだ俺の攻撃は終わってないぜ! 龍騎行っけぇーーッ!!!!」

 

そのままドラグレッダーの上に跨り、ドラッグレッダーはそのまま展開されるバリアを一直線に突進し、ライフを破壊する。

 

「ぐあっ!!」

「シャムシーザーも行けぇええええッ!!!」

 

ドラグレッダーは一先ず役目を終えたように、再び天へと上りフィールドから姿を消すが安心する暇はない。今度はシャムシーザがバリアに向かって飛び掛かり、体当たりをぶちかましてライフを破壊する。

 

「うぐッ!!」

「ターンエンド!!」

 

 

────第4ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

[Field]ダークネスワイバーンLv1(1)BP3000。

 

「私のターン! ウロドラを召喚。さらにネクサスにはネクサスだ! 私はNo.32 アイランドルートとシヴァの破壊神殿を2枚配置!」

 

クリスタニードルよりもさらに小さい、幼龍のような見た目のウロドラ。そしてミラーワールドに対抗するかのように絵瑠の場に配置されていく2枚のネクサス。

 

「アイランドルートの効果でデッキから1枚ドロー……!」

 

デッキから引く1枚、そのカードを手に絵瑠の表情に笑みが浮かぶ。

 

「うん?」

「フフフ、どうやら今度は私の番みたいだな! それでは行くぞ!」

 

引いたそのカードを構えながら彼女は強く叫ぶ。

 

「抗う事の出来ない死への呪縛、今こそ絶望のカウントダウンを下す! 召喚、辰の十二神皇ウロヴォリアス!!」

 

不足コスト確保によりウロドラはその場から消滅すると同時に天より降り注ぐ黒き稲妻、閃光による落雷は大地を穿ち、衝撃によって龍皇がその目を覚ます。地面に爪を突き立て、闇の中に眼光を光らせながらフィールドに姿を現し咆哮。

 

「な、なんかやばそうなのが出てきた!!?」

「召喚時効果で【封印】! ソウルコアを私のライフに!!」

「ソウルコアをライフ!? んな贅沢な!!」

「そんなに!?」

 

使用コストや煌臨等様々な用途で使用されるソウルコアだが、個人でまだ一度もソウルコアを使用した事のないアスラにとってはそれをライフに映す【封印】の効果は思いもつかない発想。逆に絵瑠にとってはそんなアスラの反応はとても新鮮に感じていた。

 

「とにかく! バトル続行!! ダークネスワイバーンとウロヴォリアスでアタック!」

「どっちもライフだ!」

 

意趣返しするかのように今度は絵瑠がアスラに向かってフルアタック、最初にダークネスワイバーンが翼をバリアに叩きつけ、そしてヒットアンダウェイの如く攻撃の後直ぐに上空に飛び上がると、入れ違いのように今度ウロヴォリアスがアスラへと迫り、そして腕を振り上げ、強烈な一撃をアスラへと振り下ろす。

 

「ぐああああああッ!!!」

 

ライフを2つ失い、残るライフも2。

 

「ターンエンド!」

「よし、反撃だぜ!!!」

 

攻撃を耐え凌ぎ、此処から逆転に意気込むアスラ、しかし。

 

「ここからが絵瑠の独壇場だな」

「え?」

 

さらりと呟く光黄の一言、それに不思議そうに首を傾げるエールだが。

 

 

────第5ターン、アスラside。

 

「スタートステップ!」

「この瞬間、ウロヴォリアスの効果発揮!! 【呪縛】!」

「!!?」

 

ウロヴォリアスは突然咆哮すると共に胸の宝玉を輝かせると、光は紫炎の龍を形成し、それは龍騎とシャムシーザーの二体を拘束する。

 

「な、何いいいぃぃぃッ!?」

 

自分のターン中だと言うのに目の前の光景に驚きを隠せない。

 

「ウロヴォリアスは相手の各ステップの開始時に相手スピリット、リザーブのコアをトラッシュに置く事ができる! まずはスタートステップ、シャムシーザーのコアを除去!」

 

紫炎の龍はそのままシャムシーザーを締め上げ、コアを失い消滅。

 

「シャムシーザー!!」

「まだまだ! コアステップで次は龍騎のコアを除去だ!」

 

紫炎の龍は徐々に深く締め上げ、龍騎のコアを奪い残るコアは一つ。

 

「ドローステップ! 龍騎! 討ち取る!!」

 

何もできないまま龍騎はそのまま紫炎の龍に力を奪われ、フィールドから消滅。

 

「クッソオオオオオオオオッ!! 俺の龍騎があああああッ!!」

 

何もできないまま龍騎がやられた事は相当悔しい事には違いない、けどすぐに立ち直るように絵瑠を見ながら。

 

「お前、すっごい強いな!! 俺、すっごいワクワクして来たぜ!!」

「えっ? ワクワクするってお前、滅茶苦茶ピンチなのだぞ?」

「嫌そりゃそうだけど、けどこんな戦い方する奴初めてだから、こんなに強い相手と戦えてることに俺今ピンチ以上に楽しくて仕方ねぇ!!」

「か、変わった奴だな」

 

形勢的には絵瑠が優勢というのに、全く臆する事のないアスラの熱意に何故か少し絵瑠が押されてしまうような反応、それを見ているエールたちは若干呆れ気味だった。

 

「はぁー、あのバカスラったら相手も困惑してるじゃない!」

「アイツ、いつもあんな調子なのか?」

 

ふと気になる様にエールに質問を投げる光黄、それに対し上手く言葉を取り繕うと間を置くが、やはり何も思いつかなかったように黙って頷く。

 

「恥ずかしい限りだけどね。声は無駄に大きいし、馬鹿で無鉄砲……けど!」

 

辛辣な言葉とは裏腹に何か期待を込めるような目をアスラへ向けて彼女は。

 

「どんなに不利な状況でも絶対最後まで勝負を諦めない。何をしでかすか分からない、それがアスラって奴よ」

「成程、益々アイツとそっくりだな」

「アイツって?」

「!……あぁ悪い、俺にも少し似たような知り合いがいて、つい」

「ふーん、誰の事かは知らないけどアスラと似たような奴なら貴方も苦労してるんじゃない?」

「……まぁそんなところだよ」

 

エールの言葉に苦笑しつつ、それでもお互いに笑いながらバトルの行方を気になるように引き続き見守る。

 

 

[Reserve]6個、[Trash]1個。

[Hand]7枚。

[Field]ミラーワールドLv.2(2)。

 

「俺はドラゴンヘッドを2体、さらにゴラドン(Rv)とシャムシーザーを召喚!」

「何もなければアタックステップで【呪縛】の効果、シャムシーザーからコア1個をトラッシュに!」

 

再びウロヴォリアスの放つ紫炎の龍がシャムシーザーとドラゴンヘッドの二体を束縛し、コアを取り除かれた事でシャムシーザはレベルダウンし力を失い、依然ブロッカーとして残るウロヴォリアスがさながら巨大な壁の如く立ち塞がる。

 

「ターンエンド」

「ならエンドステップ! 今度はドラゴンヘッドのコア1個を除去だ!」

 

今度はドラゴンヘッドのコアが除去されるが2体ともコアを多めに置いておいた為、このターンで消滅させられる事はないだろう。しかし依然アスラの不利な状況は変わらない。

 

 

────第6ターン、絵瑠side。

 

絵瑠のターン、ドローステップ時にシヴァの破壊神殿の効果で手札を1枚裏向きで起き、2枚ドローされる。

 

[Reserve]6個。

[Hand]3枚。(手元)1枚。

[Field]辰の十二神皇ウロヴォリアスLv.1(1)BP11000、ダークネスワイバーンLv.1(1)BP3000、No.32アイランドルートLv.1(0)、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)。

 

「私のターン、バーストセット! そして闇に生まれし龍王、紅蓮の炎を身に宿し、赤き深紅でその身を染めろ! 深紅の龍王ウロヴォリアススカーレット、召喚ッ! Lv.2!」

 

紫と赤を混ぜ合わせたかのような火柱が吹き上がると、豪火の中央に蠢く影、炎の中で雄叫びを上げ、その声量のみで炎を吹き消すと威風堂々たる姿をフィールドへと晒す。

 

「同じスピリット!? 嫌、違う!」

 

並び立つウロヴォリアスとウロヴォリアススカーレット、二体の龍王は共鳴するように今一度咆哮を上げ、咆哮による衝撃が大地に亀裂を走らせる。

 

「ウロヴォリアスと、スカーレット。相手にとって不足なし!!」

「私もだ! 全力を出し尽くすぞ!! アタックステップ!」

 

アタックステップと開始時、スカーレットは眼光を赤く輝かせるとシャムシーザーの足元から突如吹き上げる火柱、炎の中でシャムシーザーは破壊。

 

「えっ!!?」

「ウロヴォリアススカーレットの効果! 私の各ステップ開始時でBP5000以下の相手を破壊できる! スカーレットには固有名詞の効果を持たないが、名付けるなら、『炎縛』と言った所か!」

「炎縛……かっこいいけど、コア除去に破壊、えげつなさすぎかよぉッ!」

「勝負は勝負だからな! 容赦はしないぞ!! 行け、ウロヴォリアスッ!」

 

翼を大きく広げて羽ばたくと、そのままアスラへと迫る紫の龍皇。それに対し、アスラにバーストを一瞬見るが。

 

「(まだ、このバーストは使えねぇ)」

 

発動条件の満たしていないのか、それともまた別の理由か。今は迫り来るウロヴォリアスに必死な様にドラゴンヘッドにブロック指示を送る。

 

「ウロヴォリアス返り討ちだ!」

「タダではやられない!! フラッシュでストライクベント! 効果でBP8000以下の相手を破壊だ!」

「2枚目!?」

 

再び天より顔を出すドラグレッダー、その姿にダークネスワイバーンは自分が標的になってることに気付くと慌てふためく様に飛んで逃げ去ろうとするが、ドラグレッダーは即座に火球を放ち、逃げる間もなく炎に焼かれ破壊される。

 

「けどそれじゃあ私の二体のウロヴォリアスは止められないぞ!」

 

迎え撃とうと飛び出すドラゴンヘッドだが、ウロヴォリアスは軽く尻尾を叩きつけドラゴンヘッドを打ち落とし、破壊。

 

「!……相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動!」

「!」

「仮面ライダー龍騎[2]ッ!! バースト効果で最もBPの低い相手スピリットを破壊する! 斬り裂けぇッ!! バーニングセイバアアアアアァァァッ!!!」

 

天に潜んでいたのはドラグレッダーだけではない、機を覗っていたようにドラグレッダーから飛び降りてウロヴォリアスへ急降下していくと、その手にはソードが握られ、落下の速度と炎を加えた渾身の斬撃をウロヴォリアスへと刻み、ウロヴォリアスはその場に叩き伏せられ、大爆発を起こす。

 

「ウロヴォリアス!?」

「見たか!! これが第二の龍騎の力だぜ!!」

「ぐッ! ウロヴォリアスが……けど、まだ私だって負けない!!」

 

攻め手に欠け、このターンで勝負を決め切る事はできない。しかしエンドステップ開始と同時にウロヴォリアススカーレットは再び唸りを上げると、今度は仮面ライダー龍騎[2]を炎縛させ、火柱が龍騎を飲み込む。

 

「ぐッ!!」

「スカーレットの効果、エンドステップでBP5000以下を破壊! 勝負はまだまだこれからだ!」

「やっぱ強ぇ、油断する隙もねぇ。けど!! 俺は負けない!」

 

キースピリットである片割れを失った事に怯まされはしたものの、絵瑠もスカーレットは逆にさらに闘志を燃やす様に吼え上げ、そんな彼女たちに負けない程アスラもまた同様に闘志を滾らせる。

 

 

────第7ターン、アスラside。

 

[Reserve]10個。

[Hand]4枚。

[Field]ミラーワールドLv.1(0)。

 

「【呪縛】がなけりゃもう怖いもんはねぇッ! ゴラドン(Rv)とドラゴンヘッドを召喚し、マジックでコールオブロスト! 効果で第一の龍騎を手札に戻す!」

 

再び手札に戻りし、自分の相棒カードを手に取り仕掛けるように龍騎をもう一度フィールドに呼び戻す。

 

「もう一度仮面ライダー龍騎を召喚、召喚時効果でデッキの上から3枚オープン!」

 

再びオープンされる三枚、それは「烈光閃刃」、「アドベントドロー」、そして3枚目が開かれ、そのカードは。

 

「来たぜ! 仮面ライダー龍騎サバイブ! こいつとアドベントドローを俺の手札に!!」

「サバイブ!?」

「あぁ、これで一気に決めるぜ! 来い! 俺のキースピリット!! 龍騎サバイブをLv.2で召喚ッ! 不足コストはゴラドンから!」

 

消滅するゴラドンと入れ違うように再び出現するもう1体の龍騎、そして現れると同時に龍騎に再びカードデッキから一枚のカードを抜き、そのカードは燃え盛る紅蓮の炎が描かれた一枚のカード。

 

≪SURVIVE≫

 

ドラグバイザーはドラグバイザーツヴァイへと形状変化し、龍の口を開きカードを喰らわせるかのようにツヴァイにカードをベントイン。

その直後に龍騎の足元へ立ち込める炎、そして炎は龍騎の隠すように一瞬覆い重なると、ガラスが砕けるような音と共に、燃え盛る炎の中で龍騎は、サバイブフォームへと姿を変える。

 

「さぁ決めるぜ! 仮面ライダー龍騎サバイブフォームでアタックッ!!」

「どんな能力があるのかは知らないが、BPは私のスカーレットの方が上だぞ!」

 

絵瑠の言う通り龍騎のBPは11000、それに対しスカーレットのBPは17000と力の差は歴然。真っ向から迫る龍騎サバイブに対し、スカーレットは真っ向から迎え撃つ様に先制し、火炎放射を吐き付けるが龍騎サバイブは飛び上がってそれを回避。

 

「俺と龍騎は絶対に負けねぇッ!! フラッシュタイミングでソードベント! コスト確保でドラゴンヘッドを消滅!!」

 

また絵瑠にとっては見覚えのないカード、だがそれこそアスラにとって今の状況を打破する起死回生の一手。

 

「ソードベントは自分のスピリットのBPを+5000! さらに俺の場に龍騎がいれば、相手スピリットのコア2個をリザーブに送る!!」

「しまった、ウロヴォリアスのコアは!!」

「ジャスト2個ッ!! スカーレット、討ち取るぜええええぇぇぇぇッ!!!」

 

空中の飛び上がる龍騎サバイブに向かい、スカーレットは再び火炎放射を吐き付けるが、龍騎サバイブはドラグバイザーツヴァイの角をホーンのように展開し、そして突き出たホーンを突き出し、炎の中を突き進みながら、壁の如く放たれた炎を突き破りそして構えると、一気にドラグバイザーツヴァイを振り下ろし、スカーレットは絶叫を上げながら爆発四散する。

 

「そ、そんな!!」

「行くぜ、龍騎サバイブのメインアタック!」

「ら、ライフだ!!」

 

爆風の中を降り立ち、再び駆け出すとそのまま展開されたバリアを刃で一閃、バリアが崩壊すると共に絵瑠のライフが砕かれる。

 

「ぐッ!!」

「龍騎サバイブLv.2、3の効果! 俺の「仮面」を持つスピリットのバトル終了時、相手ライフを破壊だあああッ!!」

 

≪SHOOT・VENT≫

 

追い討ちをかけるかの如く、カードをベントインさせドラグレッダーもまたドラグランザーへと進化を遂げ、そして龍騎と並び絵瑠に向かって火炎弾と撃ち放ち、ライフをさらに破壊する。

 

「うああああああッ!!」

 

ライフを破壊し思わず吹っ飛ばされ、残る絵瑠のライフは2。

そしてアスラの場にはまだ、「仮面」の系統を持つ龍騎が残っている。

 

「龍騎でアタックすれば、サバイブの効果でライフを破壊! この勝負、俺の勝ちだぜ!!」

 

勝利の一手を掛けるかの如く、龍騎のカードに手を置くが、まだ絵瑠も踏み留まる様に衝撃を耐えきると、強く目を見開く。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 封臨禍斬ッ!! 効果で相手はこのターン、スピリットでアタックさせる場合、そのスピリットのコアをボイドに送らなければ攻撃はできない!」

「何いいいいぃぃぃぃッ!?」

 

龍騎の足元に漂う紫の瘴気、下手に身動きが取れず戸惑う様に動けなくなってしまう。

 

「お前の龍騎に乗っているコアは1個! アタックした瞬間消滅だ!」

「ぐッ!! ターンエンド!」

 

アタックした瞬間に消滅してしまうのであれば龍騎の攻撃は届かず、勝負を決める事もできない、今はそう宣言するしかなかった。

 

 

「あと一歩、足りなかったな」

「えぇ。けど、アスラと絵瑠のライフはこれで同点。しかもアスラにはブロッカーもいる、次を凌げば!!」

 

「甘いな、エール」

「お兄様!?」

 

バトルの行方を見守る光黄とエールだが、二人の会話にこれまでバトルの行方を静観したエレンが初めて口を挟む。

 

「あの娘にはまだ奥の手がある。このバトル、そう容易に決着するものではないぞ」

「!」

 

確信がある訳ではない、しかしそれに近い程の予感があった。エールはふと隣の光黄に視線を向け、彼女の表情から見てもエレンの言葉に益々信憑性を感じさせた。

 

 

────第8ターン、絵瑠side。

 

再びシヴァの破壊神殿の効果で手札1枚を裏向きに手元に伏せ、2枚のカードを引き、そのカードに絵瑠の目の色が変わる。

 

[Reserve]11個。

[Hand]4枚。(手元)2枚。

[Field]No.32 アイランドルートLv.1(0)、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)。

 

『俺の出番のようだな!』

「!」

 

突拍子もない声、その声の主は当然シュオンであり絵瑠の隣に現れ、彼が来た理由は勿論シュオンのカードが絵瑠の手札に加えられた事を指し示していた。

 

「あのカード確か」

 

バトルする際、目の前でカードとなったシュオン。絵瑠達にライダースピリットが未知な様に、アスラにとっても七罪竜であるシュオンの存在は未知数。警戒する様に構えるが、一方で絵瑠は。

 

「シュオン!? お前勝手に!」

『状況から見て俺が必要な筈だ、違うか?』

「た、確かにそうだけど……正直お前を扱うのはまだちょっと怖い」

 

彼女には過去に一度シュオンに体を乗っ取られた経緯がある。今は一緒に過ごしているとはいえ、若干それに抵抗があるのか、彼女は率直な本心に打ち明ける。

 

『言った筈だ、お前の欲望はもう俺を満たす程大きくはない。それにこんな場所だ、下手な真似はしない。まぁ……信頼しなくても別にいいがな』

「待て待て! 別に私はお前を信頼してない訳じゃない! 扱い使いこなせるか自信がなかっただけだ!!」

『!』

 

彼女にとって心配の種はシュオンの力を扱い切れるかどうかという事、信頼されてないという事に対しては否定する絵瑠の言葉にシュオンも一瞬表情を変える。

 

『ふん、ならばどうする?』

「折角お前からの提案だ! だから一緒に戦ってくれ、シュオン!」

『……あぁ、好きに使え。俺を扱えるのはお前だけだ』

 

シュオンからの言葉に絵瑠は口角を上げると、そのままシュオンのカードを構える。

 

「決して潰えぬ常闇の影、全て無に帰す暴食の闇で何もかも喰らい尽くせッ!!! 召喚、闇影夜龍エルドラシュオン!!」

 

シュオンは体に纏う瘴気で自身の身を隠す様に広げていき、そして次第に闇が晴れて行くと、そこに映るは黒い体表に爪と牙を掲げる黒龍、その姿こそシュオンの真の姿。

 

「Lv.3で召喚完了! 頼りにさせてもらうぞ、シュオン!」

『あぁ、ライダースピリット……喰らい甲斐がありそうだからなッ!』

 

「エルドラシュオン、一体どんな力なんだ?」

 

圧倒的な威圧感を放つシュオン、その姿を初めて目にするアスラだが、初めて見るスピリットとはいえ、シュオンが唯のスピリットでない事は直観的に感じ取っていた。

 

「……私はこれでターンエンドだ」

「えっ! 何もしねぇのか!!?」

 

警戒するアスラだったが予想に反してまさかのターンエンド宣言。まさかまたウロヴォリアスのような効果なのでは、と一瞬身構えるが、アスラにターンが移ってもシュオンに動く気配はなかった。

 

 

────第9ターン、アスラside。

 

[Reserve]8個。

[Hand]2枚。

[Field]仮面ライダー龍騎サバイブLv.2(2)BP11000、仮面ライダー龍騎Lv.1(1)、ミラーワールドLv.1(0)。

 

「俺のターン、龍騎サバイブをLv.3、もう一体の龍騎とミラーワールドをLv.2にアップ!」

 

未知の存在であるシュオン、だがシュオンのBPは15000。龍騎サバイブの効果で倒せない相手ではない。そのまま勢い付く様に場を整え、攻める準備は万端。

 

「行くぜ!! アタックステップッ!!!」

 

そうアスラが力強くステップ開始の宣言をした、その瞬間。

 

「相手のアタックステップ開始時にシュオンの効果! 【闇影(シャドー)】発動!!」

「このタイミングで!?」

 

シュオンは咆哮を上げ、ブレスの様に闇の瘴気を吐き付け、その闇はアスラの場にいる二体の龍騎を飲み込む。

 

「な、何だこれえええええええぇぇぇぇぇッ!!?」

 

目の前の光景に訳が分からないように驚くアスラ、それに対し絵瑠は得意げに笑って見せる。

 

「見たか! エルドラシュオンの効果! 相手のアタックステップ時、相手スピリット全てを裏向きにし、【闇影】の効果を受けたスピリットでアタックを行う場合、裏向きのカードをランダムに選び、そのカードでアタックを行わさせる! それがシュオンの効果だ!」

「俺のスピリットは龍騎サバイブと龍騎だけ、つまりアタックするならこの二体からどっちかをランダムに選んで攻撃するしかねぇって事かよ」

「あぁ、さぁどうする?」

「そんなの、此処で立ち止まってられねぇし行くしかねぇだろ! 俺はアタックするぜ!!」

 

ランダムに対象を指定し攻撃指示に闇を飛び出すスピリット、それは龍騎サバイブではなく第一の龍騎の姿だった。

 

「ぐっ! サバイブじゃねぇか。けど「仮面」、「戦騎」を持つ龍騎がアタックした事でミラーワールドの──」

『無駄だ!』

「!?」

 

発動宣言しようとするアスラの声を中断させるように口を挟むシュオン。

 

『お前のミラーワールドの効果はあくまでアタックした時(・・・)、だろ?」

「何ッ!?」

『【闇影】の効果で影からフィールドに戻ったスピリットはアタックした後の状態として扱われる。アタックと同時に即時発揮する効果は全て無効だ!」

「そ、そんな!?」

『そして俺の力はこれだけじゃない!』

 

「龍騎の攻撃はエルドラシュオンでブロック!」

 

突っ込む龍騎を強襲するように飛び掛かると、そのまま黒爪での一閃で龍騎の装甲を斬り裂き、破壊する。

 

「ッ!!」

「さらにエルドラシュオンのバトル時で【闇殺(アサシン)】発揮!」

「今度は何なんだ!?」

「【闇殺】の効果、それはバトルで相手スピリットだけを破壊した時、相手の場にある裏向きカードをトラッシュに送る!」

「裏向きをトラッシュって、まさか!!」

「あぁ、龍騎サバイブも倒させてもらうぞッ!!!」

 

闇の中に残されるのは龍騎サバイブただ一騎のみ、そしてシュオンは息に闇の中へ飛び込んで行き、黒爪を振り下ろして闇を振り払い、目の前にいる龍騎サバイブを捕える。

 

『取ったァッ!!!』

 

止めを刺そうと龍騎サバイブの首目掛けて黒爪を突き出す。

 

 

 

 

『そこまで!!』

 

突如フィールドに響くエレンの声、シュオンの爪が龍騎へと突き立てらえるその直前、呼び止められるようにシュオンの手が止まる。

 

「「?」」

 

呼び止めるエレンの声に当然二人も訳が分からない様子だが、シュオンと龍騎も矛を収めるようにと互いの武器を下ろし、バトルはそこで中断となってアスラと絵瑠は元の場所へと戻って行く。

 

「何なんですか!! 折角いい所だったのに!!!」

 

帰還して早々バトルを中断された事へエレンに対しアスラ猛抗議。絵瑠もまたどこか釈然としない様子だった。

 

「えぇい! コモンの分際で馴れ馴れしい!! これはあくまであの娘達の実力を測るバトル、そう申したであろう!」

「でもあんな中途半端な形で終らせるなんて……!!」

「龍騎サバイブを失えばお前の勝ちの目は薄い! カウンターも見抜けたなかったみたいだしな」

「!!」

 

第7ターンで使用した封臨禍斬、そのフラッシュ効果は疲労状態の相手を破壊する効果、そのフラッシュ効果を使用しなかったのはシュオンを使ってのカウンターを考慮した上なのだろう。

アスラはそれに気付いてはいなかったが、エレンはその事を的確に見抜いており、三王の地位と名は決して伊達ではない。

 

「で、でも! 勝負は最後まで分からないっすよ!」

「実力を測るだけなのだから最後まで勝負をする必要はない、寧ろキースピリットが破壊される前に止めてやった事を感謝せよ」

「そ、それは!!」

 

エレンの言葉に反論する事を失う様に口籠るアスラだが、エレンはそれに構う事無く妹であるエールへ視線を向ける。

 

「エールよ、お主も見たであろうこの娘たちの実力、確かに分かった筈だ。お前の同行者はあのコモンではなく、その娘達に任せる。異論ないな?」

「……はい、分かりました。エレンお兄様」

 

バトルの実力を判断した上で同行者を誰か決める、元々そういう成り行きで始まったバトル。そしてバトルの結果を見る限りエールもまた反論する言葉は出なかった。

 

『結局は私達の勝利ということですか、しかしシュオン……貴方の能力初見殺しにも程がありませんか?』

『知らん、俺は指示に従っただけだ』

 

バトル結果にライトはシュオンに大人気なさを感じるように呟くが当のシュオンはまるで悪びれるつもりはない。

 

「うむ、さてそれではエールの同行者だが……お主に行ってもらおうか」

「俺、ですか?」

 

そして同行者にエレンが指名したのは光黄であり、確認するように尋ねる彼女の言葉にエレンは静かに首を縦に振る。

 

「あの、私は?」

「お前達は客人だ。バトルをしてくれた礼もある、エールが戻るまでこの城で寛いでもらって構わない。この国自慢の料理もご馳走しよう」

「ご馳走!?」

 

エレンの言葉に絵瑠の目の色が変わる。どうやら彼女に不服の様子はなかった。そして一方でアスラはエールに駆け寄りながら。

 

「あー、エールなんかごめんな。折角の機会だったし、俺もお前と行きたかったんだけど」

「私と……って!!」

 

アスラからの何気ない一言、多分本人は意識していないがそれでも彼女はその一言が嬉しいように思わず顔を赤くさせてしまう。

 

「あれ、エールお前顔赤くね?」

「ち、近いのよ! このバカスラアアアァァァァッ!!」

「えぇぇ!? 何でええええぇぇぇぇッ!?」

 

赤面しながら彼女はアスラを引っ叩き、訳が分からない様に混乱するばっかりだった。

 

『あのー、エール様ってもしかして』

「多分」

『むぇぇぇー……』

 

何となく二人の様子に何かを察するライト、光黄と彼女に抱き抱えられるムエもまるで肯定するような鳴き声を上げる。

 

「コホン! とにかく!! エールの護衛は任したぞ!」

「あのお兄様、俺はどうすればいいんですかね?」

「えぇいコモンの分際で余をお兄様呼びはやめろッ!! 癪だが是非もない。貴様も適当にこの城に泊まっていろ! さっきのバトルの再戦でも何でも好き勝手してるがよい!」

「あざああああああっす!! さすがお兄様!!!」

「やめろと言うに! 貴様次言ったら、前言撤回だからな!」

 

業腹な様子だが、それでもエールの手前無下には扱えず、アスラもこの城に泊める事に了承するしかなかった。

 

「エール! 一緒に行けないのは残念だけど観光らしいし、俺の分まで楽しんで来いよ!!」

「え、えぇ。まっ、気が向いたらお土産の一つでも持って帰ってあげるわよ」

「おっ!! サンキュー、楽しみにしてるぜ!」

 

笑顔を向けるアスラに彼女も少しだけ表情を緩ませるが、振り返って光黄の方を見る。

 

「まぁ護衛としてみたいだけど、ムエも貴方に懐いてるみたいだし宜しくね」

『えぇ、宜しくお願いします! このライト、執事として美しいお嬢様方の身は必ず守りますとも!』

「え、えっとよろしくね」

 

「お、おいライト!!」

 

煽てるようなライトに若干照れながらもライトに挨拶を返すが、一方でまだはっきり同行するかどうか答えを出していない光黄、勝手に返事をするライトを一喝するが。

 

「光黄っていうのね。私はエール・オメガ。短い間だけど宜しくね」

「!!」

 

素直に手を差し出し笑顔を向けるエール、そんな申し出に対し今更断る選択肢を言い出すのも気が引けてしまう。観念するように少し溜息を零しながら彼女は差し出された手を掴む。

 

「黄空光黄、だ。エールさんでいい?」

「さん付けは不要よ、私も光黄で呼ばせてもらうわ」

「そうか。なら宜しくエール、護衛として同行させてもらう」

「えぇ、頼りにさせてもらうわ」

 

にこやかに挨拶を交わす二人、二人の向かう先はマリーナ海街。果たして二人が向かうその場所で何が彼女達を出迎えるのか、そして彼女達に、何が、待ち構えているのか。それはまだ誰にも分からない。

 

 

 

***

 

 

 

「まさか、我々に存在を気付く方がいらっしゃるとは」

「ふふふ、ウチの情報収集能力を舐めないでください! あらゆるトレンドに敏感なのがチルちゃんなのですから!」

 

舞台は変わりどこかの廃墟のような砦の前、そこで不敵な笑みを零すチルと彼女の前にはシルクハットを付けた一見紳士の様な男性。

 

「ちょっと、彼らの情報を掴んだのは私でしょ」

「あー、マチア先輩今大事なお話し中」

 

そんな彼らの会話に横槍を入れる人物、チルよりも紫味が掛かった桃色の髪が特徴的な女性、マチア。そんな二人の会話にウィルは特に気にする様子無いが、二人の会話に少し距離を置く。

 

「アンタとは先輩後輩じゃなくて昔の馴染みってだけでしょ。それに仮に私が先輩だとして……知り合いってだけで罪狩猟団から逃げてる私に依頼してくるわ、挙句人の手柄を自分の物にするはホント大した根性の後輩だよ」

「ぶー、いいじゃないですか! マチア先輩の事は組織に話せないし、それにチルちゃんは可愛い後輩キャラとして売ってますけど、お歳頃としてカッコつけてもみたいんです!」

「はいはい、いいから彼らの情報掴んだ分の報酬宜しくね」

「えー、私とマチア先輩の仲なのにお金取るんですか?」

「親しき中にもって奴、じゃなきゃ割に合わない。ほら、とっとと払いな」

「ちゃんと後で振り込んどきおきますってば」

「それならいいけど、絶対ルディアには私の事喋らないでね」

「分かってますよ。上司よりも女の友情を大切にするそれがチルちゃんです! それよりヴァンさんとはどうなんですか? チルでよければ幾らでも相談乗りますよ」

「恋の一つも知らない後輩がアタシにアドバイス何て百年早い!」

「百年経ったら恋愛なんて尚更できないと思うんですけど」

 

そんなやり取りを交わしつつ、チルは機械を取り出して起動させると、空間を開き、「じゃあ後は頑張りなよ」とマチアは最後に言葉をチルに送り、空間へ飛び込んで先にスピリッツエデンへ帰還する。

 

「お話は終わりました?」

 

空間が閉じた同タイミングで声を掛けるシルクハットを被る紳士のような見た目の男性。

 

「あれ~、もしかしてチル達の女性同士のプライベートな会話聞いちゃいましたー?」

「お戯れを。耳は塞いでおりましたので」

「そうですか、まぁあの人は組織とは関係ないので特に詮索は無用ですよ」

「疑わなくても本当に会話は聞いてませんよ。それより、早速行きましょうか?」

「はい、ライダーハンターズのアジト、見るのが楽しみです」

 

不敵な笑みと共に笑って衝撃な言葉を口にするチル、そして男性に連れられたその先は廃墟のような砦の中へと入って行き、砦の中に待ち受ける三名の人物。

 

一人はどこか退屈そうに欠伸を零す筋肉質な大男、オロチ。

もう一人はオロチの肩に手を置き、凭れ掛かりながら興味深そうにこちらに視線を向ける絶世の美女と例えるべき美貌の女性、イバラ。

最後に退屈どころか端から興味がない様にイバラとは正反対に、少しの視線を向けようとせず、クールで物静かな印象の青年、トゥエンティ。

 

そんな一癖も二癖もある彼らをまとめるのはシルクハットを被る紳士的な男性、ウィル。

 

「さて、内緒のお話! 始めましょうか、ライダーハンターズの皆々様!」

 

チルの言葉にウィルは面白そうに頷く。果たして彼らの狙いは何なのか、それは波乱を呼び込む序章として、今幕を上げようとしていた。

 

 




どうも!ブラストです!!
この度、バナナさんと「バトルスピリッツ コラボストーリーズ」とのコラボ回!その第1話、ようやく書きあげました!!!

第1話はアスラと絵瑠のバトル!!
バトル結果は途中までという中途半端な結果になって申し訳ない。
エレンお兄様もちょっとキャラ崩壊させてないか不安なところでもあります(›´ω`‹ )

至らぬ点ございましたらすぐに修正しますのでどうぞご指摘ください(›´ω`‹ )←
第2話、次回も全力で書いていきますのでどうぞよろしくお願いします!
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