廃墟の砦の中に並び立つライダーハンターズの4人、そしてその前には罪狩猟団からの命を受けたチル。
「おいウィル、この小娘は何なんだ? 俺は何も聞いてねぇぞ!!」
「あら、私は聞いてるわよ? 異世界から来た組織のメンバー、そうウィルからね」
「あぁん? 何でテメェだけ知ってんだ? さてはトゥエンティ、お前も知ってたのか!?」
幹部であるイバラとオロチ、そしてもう一人、ライダーハンターズのメンバーであるトゥエンティに視線を向ける。
「下らん。そんな事に興味はない」
「ケッ、相変わらずつまんねぇ奴だね」
向けられた視線を返す事無く、目を瞑って視線を伏せるトゥエンティ。
「はいはい、二人共喧嘩はなしなし、仲良くニコニコにこっとちゃんでいましょーね?」
彼女独特の語彙、だが一触即発な空気を和ませる為、この場において彼女の言葉は最適だった。ひとまずトゥエンティに対してイラついた心を落ち着かせる。
「フンッ」
「ハッ!」
しかしまだ気に入らない様にトゥエンティからそっぽを向け、トゥエンティもまた鼻で一蹴。
「やれやれお客様がいるというのに。チルさんでしたよね? 騒がしくて申し訳ない」
「あーいいんですよ、騒がしいのはうちの組織も同じだし。ってゆーか、波乱万丈的な。やっぱりどこの組織も同じなんですね」
「同じ、か……どうかは分かりませんがとりあえず否定はしません。まぁとにかく今回は、そちらとの組織間での取引のお話、という事で?」
「はいそうです! 詳しいお話については上と話ししてもらっていいです?」
「上?」
「少しお待ちくださいね。ちるっと準備しますから♪」
どこからともなく懐からモニターを取り付けた電子媒体を取り出すと、スイッチを起動させ始める。
「あー、あー、ルディア様ルディア様、こちら超絶可愛い開発部門担当のチル! 応答願いまーす!」
機械を手に呼び掛けると、モニターの画面にルディアの姿が映り始める。
『やぁチルちゃん。連絡待ってたよ? 何か進展あったかい?』
「はい、実はちるちるしかじかで!」
お気楽ともいえる様な無邪気な声、同様にルディアも興味深そうにチルからの報告に耳を傾けている。
「さてあんまりはしゃぎすぎると
『いいよ。それじゃあ代わってもらえる?』
マチアの事を除いて事の経緯をルディアへ話すと、モニターの画面をウィル達に向け、ライダーハンターズの面々に画面の向こうから軽く挨拶するようにルディアは手を振り、その姿にイバラは「中々のイケメン君じゃない」と口元を緩ませている。
『まずは挨拶だね。僕の名はルディア、チル君が所属する罪狩猟団、その首領を務めさせてもらってるよ』
「これはご丁寧に。私の名はウィルと申します。どうぞお見知りおきを」
互いに紳士的な笑顔を浮かべるが、両者の心の奥にあるその心情はとても計り知れた物ではない、様子を端で見ているチルからは画面越しという壁以上の隔たりがあるように思えてならない。
「それで、今回あなた方の目的は?」
『単刀直入に言うよ、この世界に存在するライダースピリット。僕らはそれが欲しい』
「ほぅ?」
ライダースピリット、それはこの世界では貴重な物。それを欲する彼らの目的に真っ先にトゥエンティは目の色を変えるが、ウィルは落ち着けと言わんばかりに手を上げてそれを制止させる。
『ライダースピリットは強力なカード、その反応を探知して僕らはこの世界に辿り着いた。それを手に入れる為に!』
「それはそれは、異世界よりわざわざご足労を、ですが」
少しだけ表情を険しくさせながら、にこやかに笑うルディアの表情に視線を向ける。
「こちらの世界でもライダースピリットは貴重だ、そう簡単に渡す訳には行きません」
『分かってるよ、タダとは言わない。協力してくれるなら、僕等も君らに手を貸す。こっちの組織は人手はある方だからね』
「手を貸す、具体的には?」
『さぁね、それは君の依頼次第。けど、確実に満足のいく結果は出して見せる、そう伝えておくよ』
「そうですね、何せチルもいる事ですし! どんな仕事もちるっとこなして見せますよ!」
ルディアに同意するようにウィンクを向けて陽気に語るチル、その様子にウィルも笑って見せた。
「いいでしょう。そう言う事なら一つお任せしたい仕事があります。イバラ、例の彼女をここへ」
「はいはい、出てきていいわよ?」
誰かを招くように一言、イバラからの招待に顔を見せるもう一人の人物。
「紹介するわね、彼女は今回の作戦を見越して私が雇った用心棒、名前は──」
「イカヅチ、それがアタイの名だ」
イバラが紹介するよりも先に、自分自身の名前を語りながらチルの前へと出る。
「アンタが異世界からっていう可笑しな奴等か。まぁ何でもいいけどな」
「いきなりのご挨拶ですね。ライダーハンターズの人って皆こんな感じなのですか?」
「いえ、先程イバラさんが仰ったように用心棒として組織で雇った方、いわば外部の人間です」
『外部?』
「まぁ率直に言いますよ、あなた方の組織と比べて私共の組織は少数精鋭、とまぁ聞こえはいいですが言ってしまえば人手不足なのは否めません」
人手不足、その悩みに頭を抱えるような素振りを見せながら再びチルとルディア達を見る。
「一つ提案があります、今回は我々はライダースピリットが存在するという情報を持っており、その場所の制圧を狙っています」
『へぇー、それで?』
「イカヅチにも協力してもらう一環で雇っておりますが、まだ他の人材の手配には至れていません」
『成程。足りない人手はウチから、という訳?』
「えぇ、手を貸していただければ手に入れたライダースピリットの幾つかを渡しても構いません。また今後のパートナーとしての契約もできればと。如何ですか?」
ウィルからの提案、言葉に対しルディアは笑ったまま首を縦に振って見せた。
『いいよ、僕から要件は以上だ。じゃあチルちゃん、後は君に任せるね』
「お任せください! ちるっとやり遂げますよ!」
『期待してるよ、僕もだけじゃなくディストもね』
「うぇ~、はい分かりました」
ディストの名に少しだけ怪訝そうな顔色を浮かべる。
「(この人、本当笑顔で軽く人の釘差しに来るんだよね)」
そんなルディアの性格に若干苦手意識があるのか、少しだけ笑顔を引きつらせるチル。最後にルディアは「よろしく」とだけ端的に要件を伝え終えると通信を切る。
「それではチルさん、宜しくお願いしますね。イカヅチさんもチルさんをサポートの程、宜しくお願いします」
「あいよ。よーするにアタイはこの女のお守りをすりゃいいって事ね」
「お守って言い方は引っ掛かりますけど、まぁ宜しくお願いしますね♪」
「ハッ、業腹だけどしゃあーない。引き受けた仕事をきっちりこなすのはアタイも同じだからな」
罪狩猟団とライダーハンターズ、異世界を交えた組織間での取引、その密約間での取引が彼女達を通して行われようとしていた。
***
「イカヅチさーん! ちょっと休憩しませんか?」
「あぁ? 何言ってやがる、まだ目的地まで大分距離あんだろうが」
組織間でのやり取りから数時間後、人目から離れた無人地帯を歩く二人、歩いて暫く駄々をこねるようにチルがその場で叫ぶ。
「どうせ急ぐ理由ないですし、ゆっくり行きましょうよ」
「ったく、お前ちゃんと仕事意識持ってんのかよ?」
「あーそれよく言われますね」
「言われちゃ駄目だろう、ったく何でアタイがこんな奴と……タダでさえ気に喰わない仕事だっつうのに」
小さく仕事に対する不満を漏らすイカヅチ、チルのお守りという事もあるが、それ以上に彼女はこの仕事に対して不満を持つ最大の理由があった。
『イカヅチ、いいかしら?』
「あぁ?」
遡る事ライダーハンターズのアジトを去る少し前、今回の作戦についてチルと協力するその裏でイバラに呼び出されていた。
「今回の作戦について改めて内容を伝えておくわ」
「改めて? 内容は所詮護衛だろ?」
「いいえ、よく聞きなさい。今回あなたの仕事は護衛なんかじゃない、裏切りよ」
「!?」
イバラから伝えられる衝撃的な言葉、だがまだその言葉の本質を理解しきれないかのように彼女に動揺する表情が浮かぶ。
「おい待て、今回の作戦、あのチルって奴との組織と取引する為のもんじゃねぇのか!?」
「いいえ、ライダースピリットはこの世界において重要な物。それを異世界側に横流しするなんてやはりどう考えても納得はできない。私達幹部にとってもね」
「まさか自分の都合だけで彼奴を裏切ろうって事か?」
「まさか。一応ウィルも事情については知ってる。分かった上で黙認してるのよ」
「……」
「本当はイケメン君を裏切りたくはないんだけどね」と言葉を続けていくイバラ。
「けど全てが嘘って訳じゃない、今回の狙ってる標的の内容と場所は本当だし、人手不足って言うのも本当。けれど、やはりライダースピリットは渡す訳には行かない」
「つまり?」
「ライダースピリットの確保が完了すれば後はそれを奪って帰還なさい。どれだけ向こうの人手があろうが、烏合の集如きあなた一人で蹴散らすのは訳ないでしょう?」
「偉く信用されてるみたいじゃねぇか。働き次第って言ったのはそういう訳かよ?」
「まっ、そう言う事。期待してるわよ? イカヅチ」
秘密裏に行われていたイバラとのやり取り、そして思惑を胸に、今の状況に至る。
「(ったく、金の為とは言え嫌な仕事を引き受けちまった。裏切りだの汚い陰謀策略だらけ。だから組織とかそういう長いものに巻かれたくねぇんだ)」
チルとの行動を共にする道中、イバラとの経緯を思い返しながら軽く舌打ち、その様子にチルも気付いた様子で。
「イカヅチさーん、どうしたんですか? ぼぅーとしちゃって、仕事なんですから真面目にやってくれます?」
「真面目云々お前に言われたくねぇよ。やる気が無ぇのはお前の方だろうが……んな奴が何で態々異世界来てまでこんな仕事してんだか」
「こんな仕事って、そんなの生きてく上でそうするしかなかったんですもん。チルは我が身可愛い子ちゃんですからね、自分の為にも命令はこなしますよ」
「ふーん、頭お花畑そうに見えてテメェも案外苦労人なんだな」
「ヤダ、随分なご挨拶。そういうイカヅチさんこそ、何でこの仕事受けてるんです?」
「んなもん決まってる。アタイにも生活があるからだよ、だからこの仕事もこなさなきゃならねぇ」
例えその仕事が気に入らなくとも、小さい声でそんな思いを呟きながら続く道中に二人は目的地に向け再び歩き出す。
***
「見えて来たわね、あれがマリーナ海街ね」
海辺の見えるその街に向かう馬車、客席から見御乗り出して見える景色に胸を弾ませて喜々とした笑顔を向けるエールとその様子を涼し気な表情で傍観する光黄の女性二人組。
「マリーナ海街、色々話題になってたし、実の所一度行ってみたいとは思ってたけどね」
『私としても光栄です! まさかこの地のリゾート地にエール様のような美しい女性と旅できるとは!!』
「あー、ごめん。私グイグイ来られるのはちょっと」
『何と!?』
相変わらず女性に対しアプローチするかのようなライトだが、遠慮しがちに距離を置かれ、分かりやすくショックを受けるように肩を落とす。
『うむむ、光黄様と同じくクールな所! ですがそれが凄く魅力的ですとも!』
「ライトお前は引っ込め、話が進まないだろ!」
軽くライトを押し退け、少しだけ申し訳なさそうにエールに表情を向ける。
「その、折角の旅行……邪魔してしまって申し訳ない」
「えっ!? どうして光黄が謝るのよ!」
「……だって、有名なリゾート地。まだ会って間もない俺なんかより、本当は他に行きたい相手がいたんじゃないのか?」
「わ、私は別に……!!」
『えっ! エールさん、相手って──』
『むぇぇぇーーッ!!』
『ちょ、何するんですか! このわんわん!!』
驚く様に首を突っ込もうとするライトだが、ムエは「引っ込め!」と言わんばかりにライトの上に圧し掛かって体表でライトの目を耳を塞ぐ。
そしてエールは質問する彼女の他に聞く相手が誰もいない事を確認すると少しだけ表情を赤くしながら光黄を見る。
「……まぁ正直に言えば一人だけ、一緒に行ってあげてもいい奴がいないでも、ないっていうか」
まだ少しだけ恥ずかしそうに誤魔化すような口振り、けど彼女の様子から何となくその相手が誰か、その相手は恐らく絵瑠と戦ったあのアスラという少年だろう、何となくそんな予想が直感的に頭に浮かぶ。
「誰かは聞かないけど……けど、そんな相手がいるのに、俺が割り込んだみたいで何て言ったらいいのか」
「もう今更そんな事気にしないでよ。お兄様に提示された条件とは言え、私がいいって言ったんだから!」
「!」
罪悪感を感じる彼女だったが、逆に負い目を感じている事自体に叱咤するように強く言い放つエール。
「今回が駄目ならまた次の機会で誘うわよ、今度は私自身の言葉でアイツをね」
「そうか」
「それに私ね、こうして女の子同士で出掛ける機会なんてなかったから今は今で、とてもワクワクしてるのよ」
「!」
元々オウドウ都から滅多に外出する機会がなく、旅行自体もアスラと共に行動し、歳の近い同性とこうして旅行に行く事等ほぼ初めての経験。目を輝かせながら語る彼女に嘘偽りがない事はすぐに察せた。
「だから私はこの旅行をいい思い出にしたいと思ってる。だから光黄も、この旅行を満喫してほしいの」
「……そう言ってもらえるなら」
エールの言葉に罪悪感を感じていた光黄の気持ちも晴れる様な気がした。彼女に言葉に光黄も頷きながら笑って返事を返す。
「それはそうと、私にそんな事を聞くって事はもしかして貴方も似たような相手がいるの?」
「なっ、俺は別に! そんな奴なんて!」
立場が逆転したように、先程のエールの如く今度は光黄が顔を赤くして口籠らせ、半ば冗談半分で聞いたつもりだったが、それが図星である事を彼女はすぐに確信した。
「へぇー、そうなんだ。どんな相手なの?」
「だ、だから俺はそんな相手!!」
「私にも聞いといて隠さないでよ! まだ時間あるし、よかったら聞かせて!」
「うっ!」
エールに質問した手前、自分だけ隠すなという言葉に反論する言葉を失ってしまう。隣のライトを見るが、まだムエに抑えられ、盗み聞きされる心配はなさそうだ。
『こ、光黄様ーー! いい加減このわんわん引き剥がしてくれませんか!!』
「ムエだったよな。悪いけど、もう少しそのままでいてくれるか?」
『むぇぇっ!』
光黄からの言葉にムエは「任せて!」と誇らしげに返事を返す。
『光黄様ぁーーっ!!』
ライトの叫びは虚しくそのまま放置され、目的地までの道中、二人は互いの想い人について心配を掛けさせられたり、色々振り回された事等、文句を言いたい事から自分自身がどう思っているのか、そんな事について道中語り合う二人だった。
***
「ようやく着いたわね!」
「ここか、確かにリゾート地って言うだけの事はあるな」
数時間後、目的地に辿り着く二人。海見える町の風景を楽しむように見渡す二人。
「ねぇ光黄、まずはどこから回る?」
「俺に聞かれても、何が有名とかはよく分からないし」
エールから地図を受け取りながらも向かいたい場所の目途はついておらず、エール自身もここに旅行来る事さえ急だった為、具体的なプランは全く立ててはおらず、行先に迷う二人だが。
『おや? エールちゃん?』
「「!?」」
そんな二人に声を掛ける人物、直ぐに二人は声の方角に振り替えると、そこにいる橙色のロングヘアーが特徴的な一人の女性。
「し、シイナ様!?」
エールの顔なじみだろうか、見知った顔の様にエールは彼女に駆け寄る。
「おや、そっちの子は? 見ない顔だけど」
「あぁ、紹介します。彼女は光黄さん、私の護衛という名目で同行してもらってます」
「へぇー、護衛か。私の名はシイナ・メザ。よろしくね」
「はい、こちらこそ」
光黄に対して友好的な態度を示すよう手を差し伸べ、その手を取って握手を交わす二人。
「あのシイナ様、どうしてここに?」
「ちょっとプライベートでね、まぁ観光さ」
「相変わらず自由な人ですね」、とエールから率直な感想。それに対して「まぁね」と頭の後ろに手を置きながら笑って答える。
「二人も観光に?」
「はい、お兄様宛に二名分の招待があったそうなんですけど、忙しいみたいで出席できず、かと言って断るのも忍びないって事で急遽私が」
「あぁ、それは残念。エレンの奴、本当は来れたら来たかっただろうに」
「えっ?」
「あぁ、何でもない。こっちの話」
エレンがエールに対して過保護な事を知ってか知らずか意味深なように呟きつつ、「ところで」と話題を変える様に。
「アスラは元気にしてるかい?」
「あぁ、はい。むしろ有り余ってる程ですけど」
「あはは、そりゃ相変わらずな様で何より。でも、折角の旅行、アスラと行ければよかったのにね」
「!!……そ、そうですね」
急な話題を出された事に頬を赤く染め、シイナはそれに対し揶揄うように笑みを浮かべる。
「ふふ。相変わらずエールちゃんは可愛いね」
「か、揶揄わないでください!」
「冗談冗談。けどまぁ仲良いのはいい事だよ、君もそういう相手いるんじゃないの?」
「俺はまぁいますけど、別にそういうのじゃ」
「ん? 私まだ他に何にも言ってないよ?」
「!!」
鎌を掛けたように悪戯っぽい笑顔を向けるシイナに光黄もまた顔を赤くさせられてしまうが。
「まぁ悪戯はこの辺にしといて。それより二人は今来たところなの?」
「はい、私達丁度さっき此処に着いたところで、シイナ様は?」
「私は3日程前にここに来てね。今日でそろそろ帰ろうかなって」
折角ならばシイナも含めて旅行を満喫したかったのだが、タイミングが合わずシイナの言葉に、「そうですか」と少し残念そうに返事を返す。
「ごめんね、本当は案内してあげたいんだけど、私も色々立て込んでて」
「いえ、シイナ様もお忙しいですもんね」
彼女は頂点王と呼ばれるこの世界においてはバトルにおいて一番の実力を顕す称号を持つ彼女、そして頂点王という立場にある彼女は和やかな雰囲気からは想像できないがかなり多忙な身である。
呼び止める訳にもいかず、シイナもまた名残惜しくはあるがあまりこれ以上此処に長居はできない。
「そうだ、折角だから一番の観光スポット教えてあげる」
「本当ですか?」
「うん、ちょっと地図借りるね」
エールから地図を受け取り、受け取った地図に軽く印をつける。
「ここの観光スポットで隠れた名所に一つ、いわゆる穴場スポットだね」
「この場所って、洞窟ですか?」
「タダの洞窟じゃないよ? この場所には祠があってね、その場所でお祈りするとある願いが叶うって有名なんだよ?」
「ある願い?」
「そ、恋愛成就のね」
「「!!」」
「君達に是非お勧めのスポットだと思うけどなぁ?」
シイナからの一言にそれぞれエールと光黄の二人も直観的に想い人を連想してしまい、それに恥ずかしくなったのか二人とも顔を伏せながらその表情をまた赤く染める。
「あははは、とにかく旅行楽しんでくれたまえ。私はこれで失礼するよ。アスラに宜しくね」
「あぁ、はい、シイナ様こそお元気で」
「うん。それと光黄ちゃんだっけ? 君もエールちゃんと一緒に楽しんでね」
「はい、ありがとうございます」
二人に手を振りながらその場を後にするシイナ。そして一方で光黄とエールは互いにシイナから御勧めされた場所を見ながら。
「あ、あの……他に行く所もない訳だし、行って見る?」
「……あぁ。他にないなら仕方ないな」
やや言い訳がましく仕方がないからという理由でその場所に向かう二人。どこかもどかしいそんな二人を見ながらムエは、何とも言い難いように目を瞑りながら『むぇぇ』と鳴き声を上げる。
『ところでいつまで私を押さえてんですかね! いい加減離れてくれません!! 美しい女性がいる気がしたのに何も挨拶できなかったじゃないですか!』
『
慌ててライトから離れるムエ、そんなやり取りに二人も可笑しそうに笑いながら、シイナから指定された海岸沿いの洞窟へ向け歩き出す。
***
「って、何コレ!?」
その場所に到着するなり、エールは思わず声を荒げた。洞窟の前のその場所は閉鎖されており、周囲には他の誰も近づけない様に警備のような人間が何人も立っていた。
「封鎖してるみたいだし、何かあったみたいだな」
その場所に向かう事を諦める光黄だが、一人エールは疑問を持つ様に。
「可笑しい。周りの状況を見る限り、事故とかは起きてなさそうだしどうも怪しいわね」
「考えすぎでは? 少し前からこうなってたとか」
「いや、シイナ様がお勧めしてくれた場所なのに前から封鎖されてたって事はまずありえないわ。少し様子を覗ってみましょ?」
シイナを信頼しているエールにとって、どうも封鎖されたこの場所に違和感を拭えず、調査の為その場に近付いていく。
『ん? お嬢ちゃん達、生憎ここ立ち入り禁止だよ?』
警備の男がエールたちに気付いたように声を変える。
「立ち入り禁止って、いつからなの?」
「えっと、一週間ぐらい前かな。ともかくこの辺は危ないから」
警備の男にさらに疑問が強くなる。シイナは少なくとも三日前からここに来ており、もし一週間も前から閉鎖されていたのなら彼女も当然それに気付く。
「危ないって具体的には何が?」
「えっと、そんな事言われても……ん?」
説明し辛そうに口籠る警備の男だが、ふとエールの隣にいる光黄の表情を見て、何かに気付いた様子で。
「お、お前!! 確か七罪竜の!」
「何で七罪竜って言葉を!?」
何かを知ってるような口振り、そしてライトはすぐさまその場で実体化して姿を見せ、ライトの姿に男が反応すると予想が確信へと変わる。
『私の存在を知ってるって事は、罪狩猟団って事で間違いなさそうですね』
「罪狩猟団? それって一体?」
「詳しくは説明できないけどライト達を狙ってる組織、一言で言えば悪人だ」
「!!」
光黄からの言葉にエールも警戒する様に構え、警備の男の誤魔化しきれないと踏むと、そのままデッキを構え始める。
「バレちゃあしょうがねぇ! こうなったら実力行使だ!」
『光黄様! エール様!』
「分かってる」
「えぇ、バトルならいくらでも受けて立つわ!!」
周囲に警備も集まる様にエールと光黄に対し、組織の下っ端達はデッキを構え、二人も迎え撃つ様にBパッドを向け、そして試合開始を告げる宣言と共にバトルを始めて行く。
光黄達がバトルを始めるその一方、先に洞窟の先へと進む二人の人物、チルとイカヅチの二人であり、探知器を手に反応を探りながら先へ進むが、ふとチルの持っていた端末に通信が入る。
『チル様! チル様!!』
「はいはーい、こちら可愛い天才美少女、要件どうぞ?」
『そちらに侵入者が二人!』
「侵入者? それを阻む為に貴方達を連れて来たんでしょうか! それでもチル親衛隊メンバーですか!!」
『し、親衛隊!? 我々はルディア様の命令で……ってそうではなく! 侵入者二名ともかなりの実力者で、我々ではとても阻めず、現在そちらに向かっておりまして!!』
「ほぉ、何者です? その二人?」
『一人は組織の重要ターゲット、七罪竜所持者の小娘。もう一人も含めて今画像を転送します!』
端末に送られる侵入者の画像、その画像にイカヅチも隣から端末の画面を覗き込む。
「ん? そいつ確かエックスの」
「イカヅチさんの知り合いです?」
「知り合いじゃねぇ。ただ名前が有名って事だ、この世界じゃな」
「へぇー、って事はかなりの実力者って事ですかね」
「噂通りなら多分。もう一人の女は何者だ?」
「七罪竜、ウチの組織が最も重要視して求める七体の龍、それに選ばれた所持者です」
「強いのか?」
「まぁウチの組織が手を焼く程には」
チルからの言葉に「それは楽しみだ」と不敵に笑って見せるイカヅチ、そしてそのすぐ後に、その場に姿を見せる光黄とエールの二人。
「見つけた! お前らこんな所で何をしてる!!」
「そうよ、ここに占拠紛いな事して! タダで済むと思ってんの!!」
チルとイカヅチを見ながら警戒する様に構える二人、イカヅチ達も二人に気付くように振り返る。
『初めまして、麗しき女性方、あなた方の様な美しい方になるべく争いはしたくありません。何が狙いかは存じませんが、大人しく手を引いてくれませんか? そしてできれば一緒にここで観光などを』
「ライト、お前こんな時まで言ってる場合か」
「
こんな状況でもいつものライトの様子に光黄とムエからの突っ込み。一方で、ライトからの言葉にチルは少し嬉しそうにはしゃいだ様子。
「あは、イカヅチさん聞きました? あの七罪竜見る目あると思いません!!」
「お前も言ってる場合じゃねぇだろ、それより!」
相手を見定めるように光黄とエールを二人に視線を向ける。
「七罪竜所持者、そしてエックスのオメガ家の奴か」
「アンタ、一体何が目的なの?」
「アタイ達の目的はこの地に眠るとされるライダースピリットの確保。だから余計な邪魔が入らない様、この場所を一時占拠させてもらってる!」
「ライダースピリット!?」
「ちょ、イカヅチさん!? 何勝手に目的バラして!!」
「ハッ、勝てば問題ねぇだろうが。お前はとっとと先行ってろ!」
「もう全く! じゃあお任せしますからね!!」
イカヅチの発言に怒りを覚えるように頬を膨らませるが、ひとまず言われた通り先に奥へと進み、二人も直ぐに「待て!」と呼び止めるように声を上げながら追いかけようとするが、その行く手をイカヅチが立ち塞ぐ。
「おっと、この先に行きたきゃアタイを倒してからにするんだな」
「ぐっ、アンタも仲間の一人なのね」
「まぁ契約上な。要はタダの仕事だよ」
「仕事、だと?」
「あぁ。生活の為の資金稼ぎ、けどまぁそんなのは所詮二の次だ」
目に力を込めて二人を睨みながら、デッキを取り出す。
「アタイが一番に求めるのは強い相手! そしてアンタ等は充分楽しましてくれる相手だとアタイの勘が言ってんだ」
「!!」
「バトルしな。アタイに勝ったら道でも何でも譲ってるよ!!」
ここまで来た以上二人とも今更引き返す選択肢はない。当然受けて立つ様に二人もデッキを構える。
「二人まとめてかかってきな!! 1vs2のレイドバトルと行こうじゃねぇか!」
「レイドバトル?」
イカヅチからの言葉に馴染みがない様に疑問符を浮かべる光黄だが、エールは「分かったわ」と先に返事を返す。
「!」
「ごめん、生憎詳しく説明してる間はない。けどあなたの力を貸してほしい、一緒に戦って」
「……分かってる、俺もアイツ等を黙って見過ごす訳には行かないからな。ライト!」
光黄からの言葉にライトはカードの姿に戻ると、ライトのカードをデッキに咥えて、両者ともBパッドを構える。
「はは、話の早い奴は嫌いじゃないぜ! それじゃあ早速やろうか!」
「えぇ、行くわよ!」
「「「ゲートオープン、界放ッ!!」」」
暗闇広がるの洞窟の中、繰り広げられるレイドバトル。
ルールに乗っ取り、イカヅチの初期手札は4枚。光黄とエールの二人は互いに2枚ずつカードを手札に加え、バトルを開始させていく。
───第1ターン、光黄&エールside。
[Reserve]4個。
[Hand](光黄)3枚、(エール)3枚。
「最初は私から行かせてもらうわよ! アグモンを召喚!」
ルビーが砕けると姿を見せたのは小さな二足歩行の恐竜、アグモン。勇ましく鳴き声を上げながら両手を構える。
「アグモンの召喚時効果、デッキから2枚のカードをオープン! その中に「成熟期」、「完全体」を持つスピリットがいれば手札に加えるわ!」
アグモンは吠えながらその召喚時効果を発揮。オープンされたカードは、「グレイモン」と、「アドベントドロー」の2枚。
「グレイモンを手札に、これでターンエンド」
────第2ターン、イカヅチside。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
「アタイのターン! まずはネクサス、破壊された城をLv.2で配置!」
イカヅチの場に現れる崩れた城のような砦。まずは場の状況を整えたという所だろう。
「さらにバーストをセット。アタイもこれでターン終了!」
────第3ターン、光黄&エールside。
[Reserve]4個。
[Hand](光黄)4枚、(エール)4枚。
[Field]アグモンLv.1(1)BP2000。
「次は俺だ、ガトーブレパス召喚!」
アグモンのすぐ隣に出現するガトーブレパス、イカヅチの場にブロッカーと成るスピリットはなく、早くも攻める準備としては万全だ。
「アタックステップ! ガトーブレパス、行け!」
「ライフで受けてやんよ!」
先手を奪ったのは光黄達、ガトーブレパスの角がイカヅチのライフへ突き立てられ、ライフが破壊される。
「ッぐぅ!!」
「ガトーブレパス、【聖命】発揮! 相手ライフを減らしたことで俺達のライフ1つを回復!」
聖命によって持たされる光がライフに新たな輝きを灯し、光黄達のライフは6となる。
「ライフ回復、ならアタイも同じことをするまでさ! ライフ減少時でバースト発動、絶甲氷盾!」
「「!!」」
「この効果でアタイのライフは1つ回復、さぁまだ来るかい?」
まだアグモンは攻撃可能、だがイカヅチの態度を見るからに明らかに攻撃を誘ってる様子だった。だからこそ、迂闊な攻撃は二人とっても危うい選択。
「ターンエンド」
「ふふ、そうかい。ならアタイの番だね
────第4ターン、イカヅチside。
「アタイのターン、ネクサス破壊された城のLv.2効果発揮。ドローステップで引く枚数を1枚多くするよ」
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
[Field]破壊された城Lv.2(2)。
「アタイのターン、バーストセットして破壊された城をLv.1にダウン。そしてアルマジトカゲをLv.1で召喚、さらにマジック! リカバードコアを使うよ!」
「白のマジック!?」
「効果でボイドからコア1個を私のライフと、アルマジトカゲに追加。これでアンタらのライフと並んだよ!」
「くっ!」
「さらに増えたコアを使って、破壊された城をまたLv.2に戻す! これでターン終了」
────第5ターン、光黄&エールside。
[Reserve]4個。
[Hand](光黄)4枚、(エール)5枚。
[Field]ガトーブレパスLv.1(1)BP1000、アグモンLv.1(1)BP3000。
「私から行くわよ! アグモン[2]を召喚! さらにもう一体のアグモンをLv.2にアップしてアタックステップ!」
アタックステップ開始と同時にアグモンは鳴き声を上げると、アグモンの体が光に包まれ始める。
「アグモンの【進化:赤】! アグモンを手札に戻して、2番目のグレイモンに進化!」
光り輝くアグモンの体一回り巨大に変化し始めると、黒い兜のような頭角を携え、グレイモンの姿へと変化を遂げる。
「グレイモンの召喚時効果! 相手ネクサス一つ破壊し一枚ドロー!」
既に崩れかけた城を完全に破壊するべくグレイモンは火炎放射を吐き付け、炎を浴びたネクサスは大爆発を起こす。
「これで厄介なドローネクサスは消えたわ!」
「嫌、まだだ!」
「えっ!?」
唯一人光黄だけはまだ油断ならないように声を上げ、それを肯定するようにイカヅチは口元を緩ませる。
「あぁそうさ、破壊された城が相手によって破壊されたときその効果を発揮! 相手のBP10000以下の相手を破壊するよ!」
「!!」
爆風に飛び散った残骸がガトーブレパスへと降り注ぎ、その直撃を受け、破壊されてしまう。
「なっ!!」
「破壊されてもタダじゃ終わらない! やられたら倍返し、それがアタイのモットーだよ!!」
「ま、まだよ! グレイモンでアタックさせる!」
「アルマジトカゲ、ブロック!」
アルマジトカゲは自身の身を回転させ始め、そのままグレイモンに突っ込むがグレイモンは突っ込むアルマジトカゲを両腕で受け止め、回転を無理矢理止めると、そのまま掴んで地面に叩きつけ破壊する。
「OK! それも狙い通りだぜ、相手によるスピリット破壊でバースト発動! 大龍城本丸!! バースト効果でBP10000以下のグレイモンを破壊!」
「!?」
イカヅチの場に配置される新たなネクサス、龍の城を模したネクサスが建てられ始めて出現した瞬間、グレイモンの足元から炎が吹き上げ、その身を焼き焦がされ破壊されてしまう。
「そんな、グレイモン!!」
「大龍城はLv.2で配置。さぁ、続けるかい?」
「た、ターンエンド」
このターンもライフを削る事は叶わず、以前余裕で自分のペースを保つイカヅチに二人とも彼女の実力を犇々と感じていた。
「(ネクサスやスピリットも囮にして、まんまと嵌められた。油断ならないな)」
「こ、光黄ごめん。私が先走ったばかりに」
「嫌、俺も警戒が足りなかった。けど、挽回するつもりなら謝る暇はない」
どんな状況でも決して後ろ向きな考えを見せない光黄、それに逆に励まされる様にエールも口角を上げる。
「そうね! これぐらいで負けてられない! 見てなさい、挽回して見せるから!」
「頼もしいな、ならお言葉通り頼らせてもらう」
「えぇ、そっちこそ頼りにしてるからね!」
「ハハ、その意気だよアンタ等、この程度で怖気づいてちゃ話にならないからね!」
────第6ターン、イカヅチside。
再びイカヅチのターン、大龍城は破壊された城と同様の効果を持つ為、再びドローステップで2枚のカードを手札に加える。
[Reserve]7個。
[Hand]4枚。
[Field]大龍城本丸Lv.1(2)。
「アタイのターン! ライトブレイドラ、荒武者リンドウを連続召喚! さらにマジックでジュライドロー! アタイの場に赤のシンボルが合計4つあれば3枚ドロー可能!」
ライトブレイドラとリンドウでそれぞれ一つずつ、そして大龍城は赤のダブルシンボルの為その条件をクリア。3枚のカードを一気に手札に加える。
「まだだぜ! 大龍城本丸をLv.1に、焔龍の城塞都市を配置!」 さぁアタックステップ! リンドウ、行きなッ!!」
リンドウは前脚を上げ、翼を広げて大きく空へ飛び出すと、そのままエール達へ飛び掛かって行く。
「アグモン、ブロックお願い!」
リンドウを迎撃するべく火球を連続で放っていくが、甲冑を纏うリンドウには通じない。そのままアグモンに狙いを定めて急降下すると、振りかざした爪でアグモンを斬り裂き、破壊する。
「ぐっ!」
「アタックステップ中で相手を破壊した時、城塞都市の効果で1枚ドロー、さぁ次だ! ライトブレイドラ、行って来い!!」
「ライフ!」
今度はライトブレイドラによる突進がバリアに炸裂すると、そのまま光黄達のライフが破壊される。
「「ぐぅッ!!」」
「ターン終了!」
────第7ターン、光黄&エールside。
[Reserve]8個。
[Hand]](光黄)5枚、(エール)4枚。
[Field]なし。
「俺のターン、クダギツネを召喚し、バーストセット!」
「私はネクサス、勇気の紋章を配置、メインステップはこれで終わりよ」
まだ攻め手は揃わないのか、二人ともに顔を見回せながらその後のアタックは行わず、「ターンエンド」の宣言。
────第8ターン、イカヅチside。
[Reserve]8個。
[Hand]4枚
[Field]荒武者リンドウLv.1(1)BP5000、ライトブレイドラLv.1(0)、大龍城本丸Lv.1(2)、焔龍の城塞都市Lv.1(0)。
「アタイのターン! バーストセット、さらに大龍城本丸をライトブレイドラLv.2、そして荒武者リンドウをLv.3にアップ!」
「来るか!」
「あぁ行くぜ、アタックステップだ! リンドウ、まずはお前からだ!」
雄叫びを上げて果敢に突っ込むと、そのまま再び両爪でバリアを引き裂くべく腕を振り上げる。
「クダギツネでブロック!」
攻撃を止めるべくクダギツネが飛び掛かって行くが、虫を払うかのような動作でリンドウは軽くクダギツネを叩き落とし、破壊されるが。
「相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動! 光の覇王ルナアークカグヤ! 効果でボイドからコア1個をライフに追加!」
「ッ!」
「さらにこのスピリットをバースト召喚! 月夜を照らす月光の乙女、召喚ッ! 光の覇王ルナアークカグヤ!」
黄金の光でフィールドを照らしながら舞い降りるスピリット、ルナアークカグヤ。
「ここで高BPのスピリット、やるねぇ。アタイはこれでエンドだ」
────第9ターン、光黄&エールside。
[Reserve]7個。
[Hand]](光黄)4枚、(エール)4枚。
[Field]光の覇王ルナアークカグヤLv.2(2)BP9000、勇気の紋章Lv.1(0)。
「俺はルナアークカグヤをLv.3にアップ! さらにバーストセット!」
「私も続くわよ! ロクケラトプス、さらにグレイモンを召喚!」
互いにフィールドを整え、準備は万端。一気にアタックステップを開始させ、三体のスピリット達は戦闘態勢を取り始める。
「まずは俺から! ルナアークカグヤ、行けッ!」
翼を広げて空を舞いながら一気にイカヅチへと急降下。
「ルナアークカグヤのフラッシュ効果発揮! 俺のデッキの上から3枚のカードを除外して相手スピリットをこのターン、BP1000に変更!」
「なっ!?」
ルナアークカグヤは腕を翳して閃光弾をリンドウに向けて撃ち込み、攻撃を受けたリンドウはそのBPを大きく削り取られ、力を失いその場に項垂れる。
「ライフで受けるぜ!」
続くメインアタック、広げた翼より羽を銃弾の如く撃ち出してバリアに炸裂させ、ライフを破壊する。
「があっ!!」
「今だ、エール!」
「えぇ! グレイモンでさらにアタック! アタック時効果発揮、相手のBP5000以下の相手スピリットを破壊! 勿論対象はリンドウよ!」
「(ッ! この為にリンドウのBPを下げてきたのか!!)」
グレイモンは地面に項垂れるリンドウに向けて一気に火炎放射を吐き付けると、逃げる気力もなく炎の直撃を受けてリンドウは破壊され、爆風の中をグレイモンはさらに突き進んでいく。
「破壊した事で1枚ドロー! ライフをもう一つ貰うわ!」
「成程。申し分のねぇタッグだ、中々に歯応えがありやがる、けどなぁッ!」
目を見開いて、バーストカードを手に掛けて行く。
「相手によるスピリット破壊後でバースト! 幻影氷結晶!」
「!?」
「このバースト発動時に破壊されたリンドウをアタイの手札に戻す! さらにコストを支払い、グレイモンを指定! そいつのアタックじゃ、アタイのライフは削られねぇッ!!」
グレイモンがイカヅチに向けて腕を振り上げるが、展開されたバリアをさらに覆い被せる様に氷の膜が展開され始めると、それは振り下ろしたグレイモンの攻撃を弾き返してしまう。
「くッ!!」
「中々いい攻撃だったぜ、けどここまでだろ?」
まだロクケラトプスで攻めることは可能だが、イカヅチの場にもブロッカーは残っている。歯噛みしながらも大人しくターンエンドを宣言。
────第10ターン、イカヅチside。
[Reserve]9個
[Hand]6枚
[Field]ライトブレイドラLv.1(1)、大龍城本丸Lv.1(2)、焔龍の城塞都市Lv.1(0)。
大龍城の効果によってこのターン2枚のカードを手札に加えるイカヅチ、そして手札を見ながらイカヅチの表情が一瞬切り替わる。
「ようやく来てくれたか。待ってたぜ、アタイの相棒!」
「相棒!?」
「おぉ、直ぐに拝ませてやるぜ! けどその前にまずは大龍城本丸をLv.1に、そして手札に戻したリンドウをLv.2で再召喚!」
再びフィールドに出現するリンドウ、そして準備を整え終えた様に意気揚々と笑いながら手札を構え、相棒と呼ぶそのカードを前に二人は身構える。
「天下の轟雷振り翳せッ! 雷天雷神となりし金色の龍王! キングギドラ[1991]を召喚だぁッ!!」
空を包む黒雲、フィールドに所構わず降り注ぐ落雷、激しい稲光と轟音を響かせ始めると、雷によって空が一瞬光り輝くと、輝く雲の中に映る龍の影。
そして一際巨大な落雷がフィールドへ降り落ち、眩い閃光に光黄達は視界を覆う様に腕を構え、暫くして光に目が慣れ始めるが、視界が晴れた瞬間、二人の目に映ったのは黄金の体表に三つ首を持つ龍王、キングギドラの姿だった。
”ギャアアアアアオオオオオォォォォォッ!!!”
三つ首の龍はそれぞれ咆哮を轟かせながらそれぞれ別の標的を睨み付ける。
「召喚時効果発揮! このスピリットはBP7000以下のスピリットを三体破壊!」
「!?」
「しかもそれだけじゃねぇ、ライトブレイドラは【強化】を持ち、さらにリンドウのLv.2、Lv.3効果、このスピリットにソウルコアが置かれていればさらにBP破壊上限を5000加算! つまりお前等のスピリットは全部ギドラの標的だ!」
「「!!」」
リンドウとライトブレイドラの二体はキングギドラの力を高めるかの如く鳴き声を上げ、そして三つ首より放たれる雷撃がグレイモン、ロクケラトプス、ルナアークカグヤの三体に直撃。
「私達のスピリットが……!!」
「……全滅!」
爆炎が建ち込め黒煙が上がるが、キングギドラは再び強く咆哮を上げると、その咆哮は爆風を一気に掻き消して視界を晴らし、無防備となったエールと光黄を睨む。
「「!!」」
「さぁこっからが本番だ! もっともっと、アタイとギドラを楽しませてくれよ!!」
圧倒的な自身の存在を示すように今一度ギドラは吼える。彼女の言葉通り、勝負はここからが本番、イカヅチを相手に勝機あるのか。
今はただ、圧倒的脅威として迫ろうとするキングギドラの姿を二人は息を呑んで見据えるしかなかった。
どうもブラストです!
遅くなって申し訳ない! 今回ようやくバナナさんとのコラボ回!
その第2話を書き上げました
エールと光黄の二人、書いてて楽しかったです!
そして彼女達とバトルするイカヅチ!
その相棒であるキングギドラがついに降臨! 果たしてバトルの行方はどうなるのか!
余談ですが、今回バトルについては最初タッグバトルを採用しようかなと思ったのですが、バナナさんの作品にレイドバトルという面白そうなルールがあったので是非それを採用させてもらいました!!
バナナさんの作品でも通常バトルも含め、レイドバトル等の熱いバトルもありますので、ぜひご覧ください!!!
コラボ回は三部完結なので、次回で最終回!
果たして物語はどうなるのか、是非とも次回もよろしくお願いします!