特別編 - プロローグ -
「暇だ」
『暇だな』
この日、自宅でつまらなさそうに言葉を吐く烈我、それに合わせて相槌を打つ様に同じ言葉を吐く恐竜、七罪竜の一体であるバジュラ。
彼等が今日に限ってこんなセリフを吐くのは至極単純。本当に今日という今日は予定が何もないからである。
「今日はいつも行ってるショップは休み。星七とミナトはそれぞれ用事があるらしいし、光黄は……絵瑠と出掛けるって言ってたしな」
『るみかの奴も遊びに行くって言って今日一日出かけっぱなしだ。マジで何もなさすぎてイライラしてくるぜ』
「まぁ確かに退屈なのは嫌だよなー。なんか面白い事があればいいけど」
『おっ、そう言えばよ』
何かを思い出したように声を上げるバジュラ。
『この間、ライトの野郎に異世界でいいリゾート地を見つけたって抜かしやがってよ』
「リゾート地?」
『あぁ、まぁその時どうも本来の目的地と間違った場所に行ってテンヤワンヤしたらしいがそれについてはよう分からん』
「そんな話よく覚えてたな」
『別にリゾート自体はいいんだが、ライトが偉く天狗になって語るのが鼻についたから覚えてんだよ』
「はは、で? そのリゾート地がどうしたって?」
『あぁ、話を聞いた後、試しに俺もライトが世界探ったていうその痕跡を辿ってな。そして無事探し出すことができたぜ』
「ホントに!?」
『おぉ、丁度暇を持て余してるところだからな。退屈しのぎにそこに行ってみねぇか?』
「退屈しのぎに……でもお前と二人きりかよ?」
『文句言ってんじゃねぇよ! じゃあテメェは他にマシな退屈しのぎの案が出せんのか?』
「うっ、そりゃ無理だけど」
『なら決まりだ! なぁに少なくとも家でじっとしてるよりはよっぽど有意義だろうぜ』
突拍子もないバジュラからの提案、それに少なからず不安を感じる烈我だがバジュラにしてみれば、多少の不安など意にも介せず、とにかく暇を潰したいので烈我の気持ちなど知ったこっちゃない。
『まぁそれに物は考えようだぜ?』
「はい?」
『言うなればそこへは下調べだと思えばいい。良さそうな場所ならお前の想い人を誘える、今度は前の海と違って二人きりでそこを満喫できるだろうよ』
「!!」
『誰とは言わねぇがな』
揶揄う様に口角を上げるバジュラだが、その言葉に真っ先に頭に思い浮かぶのは烈我にとって一人しかいない。
「こ、光黄と二人きり……!!」
『おい好き勝手妄想するのはいいがよ、誘うのは下見を済ませてからだろ? そこがライトの言ってたようないいリゾート地かどうか不明なんだからよ』
「探って来たんだろ? 見て来たんじゃないのか?」
『ライトの痕跡を辿ってその世界の入り口を見つけただけだ。まだ調べちゃいない、だから今からそこへ遊びに行くんだよ!!』
「遊びって堂々と言いやがった」
包み隠さないバジュラの発言に若干呆れつつも、暇を持て余してるのは烈我も同じ。それに面白くないと言えば嘘になるので、「まぁいいか」とバジュラの言葉に首を縦に振る。
「いいぜ、案内してくれよ。バジュラ」
『ハッ、光黄と楽しめるリゾート地って聞いた途端に目の色変えやがって』
「ち、ちげぇよ!! そんなんじゃねぇし!」
また揶揄うような笑みを見せるバジュラに、烈我は顔を赤くして恥ずかしさから否定。
『ハハッハ、別に構いやしねぇよ。俺は退屈って言うストレスを晴らせればそれでいいからよ!』
「ホント自分勝手な奴!」
『るせぇ、行くときまりゃグズグズする暇はねぇ! さっさと行こうぜッ!』
「はいはい、分かったよ!」
善は急げ、未知であるその場所に向けてバジュラと烈我はまだ見ぬその世界へ向かう事を決意するのだった。
***
舞台は変わり、異世界スピリッツエデン。その人気のない無人の荒野に立てられた異質な宮殿。七罪竜を狙う組織、罪狩猟団の本拠地であり、その宮殿内部の玉座の間にて、並び立つ組織の幹部。
帝騎と呼ばれるディスト、ガイト、ミコ、ドレイクの4名。彼ら四名とも片膝を突き、その彼等を見下ろすは玉座に腰掛ける一人の男、組織の狩猟であるルディア。
何かを企んでいるのか、ヴァンを除く組織幹部、帝騎とその首領が揃うだけで場に重苦しいまでの空気が流れる……。
「はいはい、ちるちるちるる~ん! ご注目!! それではチルの本日の作戦発表しちゃいますよ!!」
筈だった。
普段の空気とは打って変わって、組織内に響く陽気な声。帝騎の面々が集まる重苦しい筈の空気に似合わない程、明るいチルにただ一人ルディアも面白そうに笑う。
「ははは、相変わらずチルちゃんは元気が良いね」
「お褒めに預かり光栄ですちる!」
チルと意気投合する様子のルディア、端から見ている帝騎面々はというと、ドレイクとガイトは興味がない様に聞く気半分な様子で耳を傾けてた様子。
一方でチルの言葉遣いに快く思ってないディストは、笑みを浮かべながらもその眼は決して笑っておらず、その様子を隣でミコはあたふたとしながら見ている。
「チル、貴方前回失敗しておきながら……また拷問がされたいのかしら?」
「イヤイヤイヤ拷問ならもう充分凝りましたよ!! それにチル、まだ負けた訳じゃないですし!」
依然異世界に出向いた際に行われた作戦、その時のバトルはほぼイカヅチと部下に任せ、戦った光黄達にまだチルの実力は披露してはいない。とはいえ、デッキを忘れるというカードバトラーにとって致命的なミスを犯している訳だが。
「まぁ今回の作戦で、バッチリ前回の名誉も挽回して見せるのでご安心を! 天才美少女のチルに問題はありませんよ!」
「(ドレイク、あやつは何故こうもフラグを建てておるのじゃ?)」
「(知らん、ただ馬鹿なだけだろ)」
チルの言動に心配そうにドレイクに耳打ちするが、返ってきたのは相変わらずの辛辣な言葉。
「ドレイク先輩とミコ先輩、聞こえてますよ~?」
「オイ、どうでもいいがよ? それだけ自身があるって事はその作戦、余程の大物狙いって事か?」
ガイトからの指摘、チルはその通りだと言わんばかりに口角を上げる。
「勿論。新たな異世界、そしてそこにある強力なカードの反応を掴んでいます!」
「へぇ、詳細は分かってるのかい?」
「まだ調査中なので詳細については何とも。でも、必ずや組織の力に成ると思ってます!」
「その根拠は?」
「勘ですね。最もチルの勘は100%的中しますけど!」
「成程ね、他の者の手は必要そうかい?」」
「いえ、帝騎の皆さんはお忙しいでしょうし、それに前の一件で下っ端の数揃えた所で意味ないって事、学習したので」
「そう、なら期待してるよ、頑張ってね。チルちゃん」
「お任せください! 必ずルディア様のご期待にちるっと答えて見せますね♪」
ルディアからの言葉、それにまるで重圧を感じていないかのように笑顔で二つ返事を返すと、作戦会議を終え全員その場から解散していき、チルも作戦の為、その場を後にするが、ふと彼女は口元を緩ませ。
「(何てね、調査中……そんな事言いつつホントは今回の狙いが何かとっくにその調べはついてるんですけど)」
人目がつかないその場で独り企むように笑みを浮かべるチル、先程までルディアに見せていた満面の笑みとは違い、まるで小悪魔の様な、そんな笑みだった。
「(今回の狙いは創界神、しかも通常とは比べ物にならないぐらい強力な反応!!)」
まだ調査中、その言葉自体は嘘という訳ではないがそれでも今回の企みの詳細について話す気等最初から彼女にはない。
「(組織の為にって言いましたけど、正確には他の誰でもないチルの為ですけどね! 創界神程の強力なカード、帝騎以外には持ち合わせがないですからね)」
何故なら彼女の目的は自分の為の野心に他ならないからである。
「(上手くすれば私も帝騎への昇進も夢じゃない。散々ディスト先輩にこき使われる日々も卒業です!)」
口元に手を添え、「シシシッ!」と物企む笑みを浮かべながら彼女は本拠地を後にして目的地へと向かうが、その場から彼女の姿が見えなくなると共にディストが物陰から顔を出す。
「……やはりチルの奴、何か企んでいるみたいね」
まだチルの目的が何であるか、その全容は分かってはいないが、それでもチルの態度から何か裏がある事をディストだけが察していたらしく、そして指を鳴らすと彼女の背後に部下らしき男性がその場に現れる。
「お呼びですか? ディスト様」
「えぇ、チルの動向を探りなさい。彼女の目的、それが判明次第直ぐに連絡を寄越して」
「畏まりました。お任せを!」
チルを尾行するように男性もその場を後にしていき、一人その場に残るディストはチル以上に歪んだ笑みを浮かべ。
「さぁてチル、貴方の目的が何であれ裏切り、もしくは失敗したら前以上の
釘を刺すかのような小声の一言を残し、彼女もまたその場を後にしていく。
そして組織を出て暫く、荒野の真ん中。烈我達が向かった場所と丁度その座標に辿り着くと、チルは懐から端末を取り出し、装置のボタンを押すと空間の扉が開かれ始める。
「さて、それじゃちるっとお仕事こなしちゃいましょうか♪」
まるで臆する事無く、むしろ自身の企みの為に胸を弾ませるように笑みを浮かべて彼女は開いたその空間に飛び込んで行く。
そしてその場から彼女の姿が消え、チルの後を付けていた男性はその光景を確認すると、自分も後を追うべく空間に飛び込もうとするが。
『ハイ、ボンジュール!』
「!?」
突然背後から肩を叩かれ、フランス語混じりで交わされる挨拶。それに悪寒を感じながらも咄嗟に振り替えると。
「き、貴様は!!」
「どうも。もしかしてまた……ルディアの作戦かい?」
「な、何故貴様がここにいる!? ルディア様から粛清された筈の貴様が!!」
震える男性の目に前に居た人物、それは元帝騎であり、現在は怪盗として暗躍するその人物の名は────。
「シャドウ!!!」
「オヌール、下っ端にまで僕の名前を知っていただけてるとは」
「ど、どうやってここの場所を!?」
「愚問だね。僕は怪盗だよ? 情報に関しては幅広く手に入れてる。情報仕入れに関しては事欠かないよ」
「ぐっ!」
「それと覚えておくと言い。怪盗は強欲であり、負けず嫌いなんだ。一度やられたからこそ、その相手を一泡吹かしたい、その為の情報なら何が何でも手に入れる!」
「!!!」
咄嗟にデッキを構える男性、その意味を理解したようにシャドウもOKと返事を返す。
「やる気なら受けて立つよ? けど相手になるのかい?」
「ほざけ、ルディア様に負けた分際で粋がるな!」
「フフ、粋がっているのはどっちか試してみますか?」
「望む所だ! この怪盗崩れが!! 直ぐに潰してやるよ!!」
意気込むようにデッキを構え、そしてコールと共にバトルフィールドへと立つ2人。だが、その闘いに長期の時間を要することは無かった。
「それじゃあ、ボンヌニュイ!」
「う、うあああああああッ──!!」
シャドウの場にはクリケッツとケツアール、そして後方には十を超える程の分身スピリットの大軍。その全てが男のライフ目掛けて一斉に飛び掛り、5つのライフを一瞬で全て砕き、決着。
バトルを終えて元の場所へ帰還し、男はその場に突っ伏し、倒れた拍子にその場に落ちる端末。
「さて、それではお宝を狙いに行くとしましょうか!」
その端末を拾い上げ、手慣れた様に端末を操作してチルの時と同様に空間の扉を開き、シャドウは迷う事無くその空間へと飛び込んでいく。
***
空間の先に広がる無人島のような光景、そしてその場に降り立ったのは三名。烈我、チル、シャドウ。当然まだ三名とも来たばかりで、彼等は自分の他に先客、もしくは後客がいる事等想定していないが。
『ほぉ……招かねざる来訪者か』
高台から三人の様子が見えているのか、そう言葉を零す一人の人物、紫色の長めの髪に貴族のようなジャケットを羽織るその人物は三人の姿をそれぞれ見下ろし。
「いやはや、人目を阻んで暇潰しに出歩いてみたが、その甲斐は報われそうだ」
まるで品定めをするかのような視線を向けながら、その人物は腕を翳すと、まるで呼び出すかのようにその腕にはワインの注がれたグラスが置かれ、嗜む様にそのワインを一口。
「さて、来訪者。彼等は我を楽しませてくれるかどうか。このワインと同じ良い物である事を願うよ」
そう捨て台詞を残し、その場から振り返って静かに歩き出すのだった。
どうもブラストです。
依然より言っておりました、Lobrisさんの書く「バトルスピリッツ Over the Rainbow」とのコラボ、本日その始まりとなるプロローグでございます!!
三回目となるコラボ回!
今回は、依然置き物さんとバナナさんとのコラボ回で登場したシャドウと、チルの二人が参戦!!!
異世界へ向かう三人、好奇心、野心、欲望をはらむ三名がどうストーリーを動かして行くのか、そしてそんな彼らを見つめる怪しげな影!!!
分かる方はいらっしゃいますでしょうか笑
今回はプロローグなので短めに区切ってますが、
本編はさらにボリュームを上げて書いていきますので、是非ともご期待ください!!
そしてもう一つ以前開催しておりました、
第1回キャラ人気投票! その結果を本日発表したいと思います。
ホントは昨日予定でしたが、間に合わずにすみません汗
参加いただいた方本当にありがとうございます!
12名の方にご参加いただき票数は24票頂いております!
まずは下から順に発表していきます!!
第6位、同率票につき7名!
黄空光黄:1票
式音絵瑠:1票
ヘル:1票
ドレイク:1票
シャドウ:1票
イカヅチ:1票
シュオン:1票
エヴォル:1票
それぞれ色んなキャラに投票いただきました。
第4位、同率票につき2名。
天上烈我:2票
バジュラ:2票
まさかの主人公タッグが4位!!
このタッグが同率なのはすっごくエモいと思いました!!
そしてここからベスト3の発表!!
第3位、票数3票……(ドラムロール)
七罪竜より、キラー!
キラー「ハッ!! 高順位なのは当然だろうがッ! まぁ、この俺様が一位じゃないってのが癪だが、これも結果だ。我慢してやるよ」
続けて第2位、票数4票!!
ギガリーグより、火竜エンザ!!!
エンザ「おぉ、まさか俺に票が来るとはな。ありがてぇこった。票入れてくれた奴、サンキューな!」
実は7Guiltなどでもゲストと登場させておりました。
しかしまさかここまでエンザが人気だとは予想外でした(笑)
エンザ「あぁ!?」
すみません何でもないです。それでは続けて第1位!!
第1位は、票数:5票!
私の書くバトスピ作品の初代主人公!!!!
若槻和人ォォォーーーッ!!!
和人「よっしゃああああ! 俺が一位! ホントに光栄だぜ!!」
作者「和人さん、今の気持ちを一言!」
和人「えっ!? いや気の利いた事言えねぇんだけど……でもそうだな、皆に票入れてもらえて俺すっごく誇らしい! だから本当にありがとう、これしかないな」
作者「もう気の利いたことを!」
和人「だから言えねぇつってんだろうがッ!!!!」
以上、結果発表でした。
第1位はまさかの和人。初代主人公というカリスマはやはり強い(笑)
ホントに今回参加していただいた誠にありがとうございます!!
いつかまた第2回も企画したいと思ってます!
そして次回はもっと多くの人に参加してもらえるよう、今後も全力で更新していくので、これからもよろしくお願いします!