「ヨクアルバトロサ、配置時の神託によりデッキから三枚オープン!」
引き続きバトルはシャドウのメインステップ、配置されフィールドに出現するヨクは自分の持ち主であるシャドウの言葉に反応を示す様に腕を掲げると、シャドウのデッキからオープンされるカード。
「オープンしたのは「風魔神」、「シェパードール」、「ウツボクイナ」の3枚、その内の系統「異魔神」「十冠」、「爪鳥」のそれぞれを対象にコア3個を追加、これでターン終了です」
全員第1ターンを終え、此処までで大きな動きはない。だが第1ターン目はいわば前準備、ともすればバトルの幕が上がるとすればまさにここからだ。
────第5ターン、烈我side。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
[Field]キジバトゥーラLv.1(1)、堕ちる煌星Lv.1(0)、創界神ホルスLv.1
「行くぜ俺のターン! レイニードルをLv.3、煌星の第五使徒テティスを召喚!」
フィールドに出現する蒼き青龍と、青銅の鎧に身を包む竜兵の二体。「頼んだぜ!」という烈我から掛けられる言葉に二体は答える様に鳴き声を上げる。
「アタックステップ! レイニードルと煌星の第五使徒テティスでそれぞれアタック!! テティスのアタック時効果で1枚ドロー!」
チルとシャドウ掛けて突っ込む二体、迫る二体にディオニュソスは笑みを浮かべながら自分達に突っ込むその二体を眺める。
「おやおや、早速熱烈な攻撃だ。どうする? 大人しく受けるかい?」
「冗談! チルは痛いの勘弁なんです! シャドウさん、何とかしてくださいッ!」
「…………はぁ~、まぁパートナからの頼みなら。セッコーキジ、ブロックを」
溜息をつきながらもセッコーキジに指示を送り、その指示に頷いて突っ込むレイニードルに背中に携えた鞘から剣を引き抜き、レイニードルに飛び掛かる。
しかしレイニードルは長い尾を突っ込むセッコーキジに叩きつけると、地面へ叩き落されて消滅。
「でも次は止められませんね。チル、歯を喰いしばっててください」
「ちょ、待ッ!!」
まだテティスの攻撃が残っており、チルの心の準備などお構いなしにそのままテティスは拳を叩きつけると、衝撃がシャドウとチルの二人を襲い、痛みを軽く受け流すシャドウだが。
「痛ったぁッい!! 美少女に何て真似するんですかッ!!」
衝撃に吹き飛ばされ、頬を膨らませながら怒るチルに思わず烈我やツバサも驚いたような表情を浮かべる。
「おやおや、これぐらいの覚悟もしていなかったのか?」
「ッ!! 味方サイドから煽らないでください! アンタ本当にチルの味方ですか?」
「味方だとも。ただ、我は君の痛みを受け持つ事はできないけどね」
「白々しい、出来たとしてもやらない癖にッ!!」
チルからのツッコみに対してディオニュソスは笑みを浮かべるだけで、否定しない所を見るとまさしくその通りなのだろう。一方でまだ序盤にも関わらず、この先が思いやられるようにシャドウは溜息を吐き捨てる。
「チル、茶番はそれぐらいに。次は君の番ですよ?」
「分かってますよ! この創界神が思ってた以上に煽ってきやがるだけなんです!!」
「ハハハ、それはすまない。もう少し控えるに心掛けるよ」
笑ってチルに言葉を掛けるディオニュソスだが、あくまでも「やめる」ではなく「控える」と口にし、しかも「心掛け」なので恐らく改善する気はないだろう。
バトル中においてもそんなディオニュソスの言動に、チルは益々怪訝そうな顔色を浮かべる。
「一体どうなってんだアレ」
状況を見かねて思わず烈我からの一言、「さぁ?」とツバサも回答に困る様に言葉を詰まらせるが、ホルスだけは唯一ディオニュソスに対して気に入らない様に眉間に皺を寄せながら。
「あぁいう奴なんだよ。誰だろうと関係ない、真実を口にしながら肝心な事は何も語らない。奴にとって言葉は人の心を操る毒、もはや物の怪の類だアレは」
「随分な挨拶じゃないか。少なくとも我はもう大戦を引き起こす程まで考えてはいないさ。ただ純粋に今を楽しみたいだけ、いい加減昔の事は水に流してくれないのかい?」
「どの口が……ッ! それに、そいつらと手を組んで口できる台詞かよッ!!」
最もなツッコミ、それは彼と今組んでいるチルでさえもしみじみ思う。
「流石のチルもドン引きの悪神ですね」
「酷いなぁァ……けど、それも含めて、君は我と組む事を了承したんだろ?」
「ッ! えぇ! えぇ!! 分かってますよ、了承の上ですよ!!!」
ここぞとばかりに口角を上げて微笑みながら尋ねるディオニュソスに、やや投げやり気味に声を荒げながらも、すぐにバトルに意識を切り替える。
────第6ターン、チルside。
[Reserve]10個。
[Hand]5枚。
[Field]白雲に茂る天翼樹Lv.1(0)、ヨクアルバトロサLv.1、創界神ディオニュソスLv.1
「さて、お二方には悪いですけど何しろ相棒がこれなので、さっきの借りとストレス含めて色々ぶつけさせてもらいますからねッ!」
「イヤイヤ、完全に八つ当たりじゃないですか!!」
「問答無用ッ! これが勝負の常だちるーんッ!! ってな訳で自慢の子を呼び出させてもらいますよ!」
何を呼び出すつもりなのか、警戒する二人に対してチルは自信満々に構えた手札をコールする。
「行きますよ! 唐突なサプライズDEATH! ちるっとお届け! 邪龍王カースドラゴン、Lv.2でいざ出ちゃってくださいッ!!」
フィールドの中央より開く冥府の扉、錆び付いたようなそのドアから重々しい重音を響かせながらその扉が開かれると、扉の向こう側より姿を見せる龍の骸を思わせる外観のスピリット。
だがその骸は紫の瘴気を零しながら口を開き、不協和音に近い咆哮を轟かせると、次に翼を広げて扉からフィールドへと飛び出し自身の存在を知らしめるように上空を舞う。
「無魔を持つカードの召喚でディオニュソスに神託! これが私のキースピリット! カースドラゴンのドラちゃんです!! さぁドラちゃん、是非やっちゃってください!」
陽気な声で下されるチルの言葉にカースドラゴンは再度咆哮を上げて、外骸の翼を羽ばたかせ、その羽ばたきによって巻き起こる紫の風。
レイニードルとテティスは風に煽られながらも吹き飛ばされまいと堪えて見せるが、カースドラゴンは眼光に光を灯してそのまま上空に飛び上がり、風に身動きの取れない二体に強襲。
外骸の翼を叩きつけて二体を吹っ飛ばし、破壊されてフィールドから消滅。
「!!」
「この効果で破壊したスピリット1体につきチルは1枚ドロー! よって2体破壊で2枚ドローですちるん!」
手札を補充し、してやったりと言わんばかりに笑みを浮かべるチル。フィールドに出現したカースドラゴンの姿にディオニュソスは面白そうに口角を上げて拍手を送るように手を叩く。
「素晴らしいね。これが君のキースピリットか。いやはや可愛い見た目の割りに随分と狂気に満ちたスピリットを使うんだね」
「……!」
その発言に対して、チルは視線を伏せる様に俯いたかと思うと振り返るカースドラゴンに何かの合図の様にハンドサインを見せ、それを見た瞬間カースドラゴンは足元のディオニュソスに噛み付く様に襲い掛かり、すぐさま避けるように後ろに飛び、先程迄ディオニュソスが位置していた地面にカースドラゴンは牙を突き立てる。
「おやおや、我は味方なんだけどこれはどういう事かな?」
「さぁ? ドラちゃんの気にでも触ったんじゃないですか?」
腕を広げて知らぬ存ぜぬというような態度を見せるチル、カースドラゴン自身は「文句あんのか?」と言わんばかりの視線をディオニュソスに向けている。
「やれやれ、こっちの娘も案外物騒だねぇ~」
「何の事か分かりかねまーす!」
ディオニュソス本人はまるで問題視していないように笑っているが、周りから見ればそれは余計に不穏な空気を感じさせ、シャドウはその様子に少し引き気味になるが、それはそれとしてまだチルのターン、「バトルを続けてください」と冷静に促す。
「はいはい、分かってますよ! それじゃあドラちゃん! アタック宜しくッ!! Lv.2のアタック時効果で相手スピリットのコア1個をリザーブに! その雉? 鳩? ともかくその鳥ちゃんのコアを除去しちゃいます!」
カースドラゴンの眼光がキジバトゥーラへと向けられ、邪龍王からの殺意を込めたその視線にキジバトゥーラは戦意喪失、気を失うようにその場に倒れて消滅してしまう。
「キジバトゥーラが!」
「これでブロッカーはいませんね! さてドラちゃん! さっきやられた分、お返ししてやってください!!」
「「ライフで受ける!」」
烈我とツバサは同時に宣言するとそのままカースドラゴンは両翼でバリアを引き裂く様に振り下ろして破壊、ライフが砕けると共に衝撃が二人を襲う。
「ぐぅッ!!」
「……ぅぅッ!」
一発目からいきなりXレア級のスピリットによる一撃に思わず痛みで体を震わせるが、直ぐにお互い立ち上がって正面を向き直る。
「ツバサ、大丈夫か?」
「……めっちゃギブアップしたいです」
「オイ、ツバサ!?」
気遣う烈我の言葉に対し、まさかの返事で思わず相棒であるホルスが真っ先に突っ込む。
一瞬冗談だよなと思う烈我だが、相棒から突っ込まれるという事は内心本気なのでは、と感じてしまう。
「ハァー、言って見ただけですよ。元々こっちの問題で烈我にも協力してもらってるんだから止める訳には行かない事ぐらい承知してますよ!」
「ハハ、まぁとにかく次のターン! 頼むぜ、ツバサ!」
「はい、善処はします!」
攻撃を終えたカースドラゴンはそのままチルの場に戻るなりそのまま地面に伏せ、疲労状態。ターンを終了し、続くツバサのターン。
────第7ターン、ツバサside。
[Reserve]8個。
[Hand]7枚。
[Field]堕ちる煌星Lv.1(0)、創界神ホルスLv.1。
「メインステップ! 天空若鳥ハルアクティを召喚! 召喚時効果でボイドからコア1個をこのスピリットに置き、さらに対象スピリットの召喚でホルスにコアを追加」
「おっ、ハルアクティ。お前のその姿を見るのは何とも新鮮だな」
ホルスの目の前に飛ぶのはまだ子供のように若々しい紅の翼を広げる一羽、それは自身の化神であるホル=アクティがまだ化神になる前、つまり成長前の姿という訳である。
「まだ行くよ! さらにもう一体、天空勇士ジェトイーグルを召喚! アルティメットの召喚時効果、ボイドからコア1個を子のアルティメットに追加し、さらにもう一つ、ボイドからコア1個をスピリットに追加。対象はハルアクティ!」
一騎にコアを追加し、準備は万端だと言わんばかりに翼を羽ばたかせいつでも飛び出す気満々のジェトイーグルとハルアクティ。
まだ化神になる成長前の姿というのに、その闘争本能は成長前からまるで変わらない。
「アタックステップ! ハルアクティでアタック!! アタック時効果、【小界放】発揮ッ!」
「よしっ! 受け取れッ!!」
果敢に飛び出すハルアクティに餞別の如く、自身に乗っていたコアを一つハルアクティへ託すように投げ、投げられたコアを受け取るとハルアクティは大きく鳴き声を上げてその効果を発揮する。
「ホルスのコア1個をトラッシュに送ることで、ホルスの【神技】を発揮! 効果でデッキから3枚オープン!」
オープンしたのは「ウツボクイナ」、「天空翠凰ファラニクス」、「天空勇士ジェトイーグル」。
「この中にある爪鳥を持つカード1枚を1コスト支払って召喚できる! よって、二体目のジェトイーグルを召喚!
召喚時効果でボイドからコア1個をジェトイーグルに置き、さらにもう1コアをハルアクティに追加!」
ファラニクスは召喚時でボイドからコア1個を追加し、さらに相手ライフが4以下の時、相手手札を破棄できる能力を持つがタッグバトルという性質上、通常よりもライフが多く、その効果を使うにはどうしても少し手間がかかる。
だからこそジェトイーグルを出している方が無難だと判断したのだろう。
「シュペール! メルヴェイユッ!! まさか一気に5コアもブーストするとはやるね!」
一方で大量のコアブーストを仕掛けるツバサにシャドウは関心を覚えながらフランス語混じりに祝福を送っている。
しかしそれはあくまでバトルの余裕からなのか「どうも」と言葉を返しつつシャドウに対し油断ならないものを感じてしまうが。
「ちょっと、ちょっと! シャドウさん! また来てますよ!? どうするつもりですか!!?」
「チル、これぐらいで一々動揺しないでください、まだ取るに足りませんよ」
「またそういう余裕かまして! 第一慢心キャラは一人で充分なんですよ!」
チルからはそんなシャドウに態度に不満かのように掛けられる言葉。ディオニュソスは「誰の事かな?」と先程チルの態度の意趣返しのように知らん振り。
「流石に私とアレを一緒にしないでください。心外です!」
「だったら、何とかしてもらえます? 手ならあるんでしょ?」
「……」
自分の手を知っているかのようなチルの様子、それに対して少しだけ悩むように考えながらもすぐに「仕方ないですね」と一息零しながら。
「本当はもう少し温存するつもりでしたが、それ程言うなら出し惜しみしてる訳には行きませんね」
「ツバサ、気を付けろ! 何か来る!!」
口元を緩ませてのシャドウの発言に何かを直観するように烈我は叫ぶが、その言葉にツバサが反応するよりも早く、「遅い!」とシャドウは手札を構える。
「さて、こちらも行きますよ! ヨクアルバトロサの【
「!?」
シャドウの言葉と共にヨクは構える様に腕を振り下ろすと、フィールド中央に突如として巻き起こる緑の旋風。
「い、一体何が!?」
「ヨクアルバトロサの神技、それはこの創界神上のコア3個をボイドに送ることで、系統「爪鳥」を持つカードを1コスト支払う事で召喚できる!」
「1コストだけって!?」
「えぇ。そして今見せてあげますよ、私のとっておきのキースピリットの姿を!」
「何ッ!?」
チルに続いてシャドウもまたキースピリットであるそのカードを構え、そして高らかにコールを宣言する。
「深紅に輝く欲望の翼! 尽き果てぬその欲、今こそ掌握せよッ! アンクグリード態を、1コスト支払って召喚ッ!!」
宣言と共に、ヨクが作り出した旋風の中に赤く影、次の瞬間その旋風を赤き翼が吹き払い、羽を周囲に散らしながらグリードと呼ばれし欲望の怪物──アンクがその姿を現す。
「これが私のキースピリット、アンクです! 中々にトレビアンなスピリットでしょう?」
自慢のキースピリットを声高らかに語るシャドウ。紫と青の二色を持つスピリットだが、紅蓮の翼を広げて空を舞うその姿は爪鳥として相違ない。
「アンクの召喚時効果発揮! 相手コスト合計8になるようスピリット、アルティメットを破壊!」
「!!」
ハル=アクティを飛び越え、片腕に炎を灯すとそのままジェトイーグル達に向けて火球を撃ち出し、直撃を受けてその身を焼かれ、破壊されてしまう。
「この効果で相手スピリットかアルティメットを破壊したのならデッキから2枚ドロー! さらにハル=アクティを!」
「させない!! フラッシュ、英雄獣の爪牙を発動!」
「ムッ!」
二体のジェトイーグルを始末し、そのまま振り返ってハル=アクティに標的に捕え、再び腕に炎を灯すが、ハル=アクティに腕を翳した瞬間、緑の風がアンクへと襲い掛かる。
「効果によってアンクを重疲労! これでハル=アクティはブロックされないですよ!!」
「あー、そう言えば手札に加えていましたね。これは失念」
してやられたという風に口にしながらも、口調はどこか落ち着いており、まだまだ余裕が感じられる。
しかしマジックによりアンクは片膝を突かされ、ハル=アクティの行く手を阻む障害はない。好機と捕え、そのままハル=アクティは迷うことなく突っ込むと展開されたバリアに激突。
「ッ!!」
「痛ぁっ!!! ちょっとシャドウさん、ドヤっておきながら止められてないじゃないですか!!」
「ノープロブレム、まだライフは残り6。大した事じゃありませんよ」
「何フラグ臭いこと言ってんですか!! そんな事言ってたら負けちゃいますよ!」
「貴方って意外と臆病なんですね」
「堅実って言ってください。慢心王が二人もいるんですから慎重になるくらいがちょうどいいんです!」
「我は王じゃなくて神なんだけどね」
「私も怪盗ですからね」
「やかましいですよ!」
「なぁ、アイツ等って本当に敵なのか?」
チル達の様子にホルスから出る率直な疑問、まるでコントの様なやり取りを交わす彼女等は確かにとても敵とは思えない。
「えっと、多分」
「烈我、そこは自信もって」
かくいう烈我も自信を失いようにどこか曖昧に返事を返す。というのも、チルの事はこの場では初対面であり、シャドウも元帝騎という立場上、位置付けが難しい。
しかし、そんな烈我にツバサからの突っ込み。忘れてはならないのが負ければホルスを奪われるという事だ。気を取り直す様に集中し、次はシャドウへとターンが移る。
────第8ターン、シャドウside。
[Reserve]10個。
[Hand]4枚。
[Field]邪龍王カースドラゴンLv.1(1)、(疲労状態)アンクグリード態Lv.1(1)、白雲に茂る天翼樹Lv.1(0)、ヨクアルバトロサLv.1、創界神ディオニュソスLv.1
「私のターン! アンクグリード態をLv.3にアップ」
「レベルアップした所でこのターン、アンクは動けないよ!」
「果たしてそうでしょうか?」
「えっ!?」
意味深な言葉を口にしながら、直ぐにその意味を説明をするように手札の一枚に手を掛ける。
「風魔アマツバを召喚、そして召喚時効果発揮! その召喚時効果は自分のコスト5以下のスピリットを回復、ですが!」
もったいぶるような口振りで、口元を緩ませると。
「ソウルコアをこのスピリットのコストに使用した場合は代わりに自分のスピリット1体を回復。当然対象はキースピリット、アンクを指定!」
疲労状態から回復し、再び立ち上がるアンク。視線を烈我とツバサへと向けて攻撃準備を整えていくシャドウ。
「アマツバの召喚によりヨクにコア1個を神託。さらにもう一体、気高き白き神速の騎士! 瞬間到来せよッ! 乙の白騎士アルパインビットを召喚!」
上空より飛来したるは幻想種の如しグリフォンに跨りし白き騎士──アルパインピット。
己が身だけでなく跨るグリフォンにもまた西洋のような鎧が身に着けられ、戦場に駆ける騎士の姿として何より相応しい。
「アルパインピット召喚により再び欲に神託。そして最後にバーストセット! 行きますよ? まずはアルパインビットでアタック!」
場に出て早々攻撃の一番手に指名され、意気揚々と飛び出すアルパインピット、その攻撃により効果を発揮するようにグリフォンが鳴き声を上げる。
「アルパインビットの効果、【神速】を持つスピリットのアタックにより、トラッシュにあるコアを緑のスピリットかリザーブに戻す。よってトラッシュのコア3個をリザーブに!」
「ライフだ!!」
アルパインピットから繰り出される一突きの槍が展開されたバリアを貫き、破壊される。
「「ぐッ!!」」
「まだですよ、アンクでさらに追撃! そして今度はアンクによるアタック時効果を発揮です!」
「!」
アンクは再び腕を構えるが、腕に灯るのは先程のような赤い炎ではなく紫に染まった紫炎の火。
「私のリザーブにあるソウルコア以外のコアをライフに移動させ、その後私のライフが4以上なら相手スピリットかアルティメット1体のコア2個を除去!」
先程アルパインピットから攻撃を優先したのはアンクの効果を最大限に利用する為。そしてアンクの効果によって再び失ったライフに光が灯り、シャドウ達の合計ライフは7。
アンクの効果の発動条件は充分満たしている。
「ハル=アクティからコアを除去! よって消滅させます!!」
「ハル=アクティッ!」
アンクにより放たれる紫の炎がハル=アクティへと放たれ、炎は体を蝕むように燃え広がり、そのま消滅。
そして感傷に浸る間もなく、アンクは再び翼を広げてツバサ達へと迫る。
「ライフ!!」
ブロッカーもない状況他に選択肢はない。そのままアンクは片腕に炎を灯し抉る様にその腕でバリアを切り裂くと、引き裂かれたバリアが砕けると共に再び衝撃がツバサ達を襲う。
「「ぐああああッ!!」」
「これでそちらのライフは残り5、ライフ差も逆転ですね! ターンエンド」
「おぉっ! シャドウさん中々やるじゃないですか! この天才美少女が褒めてあげてもいいですよ!」
「そうだね、中々君も面白いじゃないか。評価するなら、我も同じだよ」
「……ターンエンド」
調子のいいチルとディオニュソスにそろそろ突っ込む気も起きないのか、溜息混じりにターンエンドの言葉を繰り返す。
未だ彼らの調子にはどこかペースを崩されるが、それでもその腕前は油断できない事だけは確かだ。
────第9ターン、烈我side。
[Reserve]17個。
[Hand]5枚。
[Field]堕ちる煌星Lv.1(0)、創界神ホルスLv.1
「俺のターン! バーストセット! そしてライトブレイドラ召喚、さらに創界神アポローン配置だぜ!」
烈我の場にも配置される創界神のカード、フィールドに出現するアポローンのカードにホルスとディオニュソスも少なからず反応を見せる。
「オリン、の創界神か」
「ホルスとも関係あったりするの?」
「いいや、特には。それにあのアポローンは俺達の知ってるアポローンとはまた違う存在だからな」
烈我達の持つ創界神はホルスやディオニュソスと違って話したりする事は無く、意識はあるだろうがその存在はホルス達とは根本的に異なっているのだろう。
「ディオニュソスさん、貴方はアポローンと面識があったりします?」
「どうだろうねぇ? まぁここで語るのは野暮だと思うからコメントは控えるよ」
「散々チル達の事煽っておきながら、何を今更!!」
また口論を始めようとするチルとディオニュソスだが今は烈我のターン、「続けるぞ!!」と念押しするように叫び、バトルに戻る。
「アポローン配置により神託の効果発揮!」
デッキからトラッシュに送られる3枚のカード、それは「煌星龍ガンマレイバーストドラゴン」、「煌星竜コメットヴルム」、「太陽皇ヘリオスフィアドラゴン」の3枚。
「3枚神託対象ッ! よって3コアをアポローンに追加し、さらにマジックでアドベントドロー! 効果でデッキから2枚ドロー、さらに三枚オープンして【煌臨】を持つカードがあれば手札に!」
オープンされたカードは「レイニードル」、「白晶防壁」、「太陽神星龍アポロヴルム」。
「来た! 此処から一気に行くぜ!! ライトブレイドラを太陽神星龍アポロヴルムに煌臨! 煌臨によってアポローンにコア追加だぜ!」
アドベントドローによってアポロヴルムを手札に加えると、即座にライトブレイドラに煌臨。
本来アポロヴルムの煌臨条件にはコスト3以上の星竜という指定があるが、堕ちる煌星の効果によってその煌臨条件は「星竜」へと変更される。
「ライトブレイドラからアポロヴルムにって、そんなのありですちる!?」
「出来てるんだからありなんだろうねぇ」
たじろぐチルに相変わらずディオニュソスは笑いながら余裕の言葉、その様子に警戒を覚える烈我だが。
「烈我、アイツについては気にすんな! 折角の攻め時、遠慮は必要ない」
「!!」
ホルスからの激励、ツバサもまたホルスの言葉を肯定するように烈我に視線を向けながら頷いて見せると、激励の言葉に「しゃぁッ!」と気合を入れなおす。
「アタックステップ行くぜ!! 行けぇッ! アポロヴルム!!」
猛々しく咆哮を上げ、アポロヴルムは一気に前進。
「アポロヴルムの【界放】の効果発揮! アポローンのコア2個をこのスピリットに置く事で回復!」
アポローンは自身の化神であるアポ炉ヴルムにコアを託し、コアを受け取ると同時に眼光を輝かせて再び回復状態となる。
「さらにアタック時効果で相手の最もBP高いスピリットを破壊! アンクを指定だ!!」
アポロヴルムは自身の体に携えた無数の剣を一度分離させるとそれを収束させて炎を纏わせ、巨大な炎の大剣としてそれを握り締めると、アンクに向けて炎刃一閃。
炎の剣が怪物を斬り裂き、斬り裂かれたアンクは爆発四散するとともに自身の体を形成しているメダルが爆風と共に弾け飛ぶが、銀色のメダルに紛れて赤く輝くコアが6枚程飛び出すと、飛び出したそのメダルをディオニュソスは手を差し出してキャッチする。
「あれは?」
「フフフ、さて君のキースピリット、やられてしまったね。でも、このままでは終わらないんだろう?」
「貴方には何でもお見通しですか。本当にどこまでも喰えない」
見透かした様なその発言にシャドウから愚痴の様な一言が零れるが、気を取り直すようにフィールドの状況を見定め、そして。
「相手によるスピリット破壊後でバースト発動! 幻影氷結晶、バースト効果により破壊されたアンクを私の手札に舞い戻します!」
「!」
「さらに私のフラッシュ、生還者コウロコーを【神速】召喚!」
「何ッ!?」
緑のシンボルが出現と同時に砕けると、颯爽とフィールドに現れる一羽のスピリット、コウロコー。
「コウロコー、このスピリットがいればお互いのデッキは破棄されず、さらにこのスピリットは相手の効果で破壊されません」
「破壊されない、アポローンの効果に対抗するつもりか?」
「フフ、そんなちっぽけな対策な訳ないじゃないですか! 今目にもの見せてやりますよ! コスト3以上の爪鳥を持つスピリットの召喚によりヨクにコア1個神託! これでヨクのコアは再び3個!」
「ま、まさか……!!」
「えぇ。行きますよ! ヨクの【神技】発揮! 手札にある爪鳥を持つスピリットカードを召喚! 再び欲望の翼を広げろ!! アンクッ!!!」
幻影氷結晶により舞い戻ったそのキースピリットをフィールドへと呼び戻すと、爆風に飛び散ったはずのメダルが一箇所に再び集い始め、ディオニュソスはそのメダルの中心に手に持った赤のメダルを投げ入れると、そのメダルは集合体となって再びアンクの体を構成し始めると、眼光を輝かせ今一度フィールドに舞い戻る。
「そ、そんな!?」
「召喚時の効果、忘れてはないですよね? コスト合計8まで相手スピリットを破壊、よってアポロヴルムを破壊します!!」
「ッ!!」
アンクは両腕にそれぞれ炎を灯すと、それを重ね合わせてより巨大な炎の塊を作り出すと、そのままアポロヴルムへと撃ち出し、巨大な火球を真っ向からアポロヴルムは受け止めるが、あまりに巨大な質量にアポロヴルムは受け切れず、そのまま炎に飲まれて力尽き、大爆発を起こす。
「アポロヴルムが、こんな簡単に……!」
目の前の光景が一瞬信じられない様に思わず絶句する烈我達、まんまとカウンターをしてやられたのだから無理もない。
「以前言いましたよね? バトルも怪盗もあらゆるケースを想定してこそ一流だと。此処までの展開も全て想定内ですよ!」
「ぐッ!!」
以前の対戦、あれを機に今のシャドウには烈我がどんな手を打って来るか、もはやそれを完全に理解していた。だからこそその対策も十二分に対応できる。
「チルだけでなく、今回私も本気なんですよ! だからどう足搔いても君達に勝ち目はない、そう宣言させていただきますよ!!」
「ッ!!」
爆風の中を佇むアンクの姿に、シャドウは自分達の勝利を確信しているように勝利宣言に近い言葉を口にする。
状況は確かに絶体絶命、次々の過酷な状況を前に二人はどう対応するのか、バトルは最終局面へと進んで行く。
どうも! 更新長らくお待たせいたしました!!
バトルスピリッツ Over the Rainbowとのコラボ編第2話でございます!!
バトル状況は中盤、チルとシャドウのキースピリット登場!!
カースドラゴンとアンクの二枚。どちらも割と古いカードですが、効果はそれなりに協力だと思います。
劇中の通り、アンクは「爪鳥」を持つスピリットなので、ヨクと合わせての採用は断然ありかと!!←
カースドラゴンも召喚で確実に疲労状態の相手スピリット二体も破壊できるので、さらにドロー効果もあり強力なスピリット!!
毛工事分のデッキでも愛用してますので、馴染み深さを感じてます。
そして今の所、今回のポジションであるディオニュソス、ほんと良いキャラしてると書いててしみじみ思います。でもまだバトルでは存分な活躍させられてないのが何とも残念。後半バトルでは是非とも活躍させたいであります!!
今回は中盤までで、次回が後半戦。
一応次回でコラボ編完結予定なので、是非とも書き上げられるよう頑張ります!!!
次回もよろしくお願いします。