「えっと、天上烈我って言います。よろしくお願いします」
「ライマンだ、よろしく」
「ヌーって言います。よろしくですね」
「そして麻呂がこの事務所所長のマサノ・オットーである!」
烈我に対して最初に挨拶を返したのは強面な第一印象を受ける男性、ライマン。次に目元まで掛かった長い髪が特徴的な女性のヌー。最後にまげと膨よかな体が目立つ男性、マサノ。そしてここはマサノが管理し、またライマンやヌーの所属するチーム"スリーアロウズ"の事務所。アラタもまたこのチームに所属し、チームメイト達に挨拶を交わす烈我。一体なぜこんな状況にあるかと言うと時間を遡る事数時間前。
***
「まずは君の名前を聞かせてくれるかな?」
「天上烈我です。さっきはありがとうございました」
「いや構わないよ。折角勇気を振り絞って事件を解決してくれた人が補導されてしまうのは忍びないからね」
「あはは、まぁ別に大したことは……!」
「だそうですって。では僕達はこれで失礼」
「はい!?」
「いやいやいやアラタ君。ちょっと待って待って! そんな簡単に切り上げようとしないで!!」
照れ臭さに素直に言葉を受け入れなかった烈我に対してさっさと帰りたいオーラ全開のアラタにジークフリード仮面としては困り顔。
「俺マジでアンタに何かした?」
「えーだから初対面ですって」
「初対面なら尚更あり得ねぇよな!?」
いつになく的確な烈我のツッコミ、当然と言えば当然の反応だ。
「まぁまぁともかく! 話を戻そうか!! さっきの……あの生き物は一体!?」
「えっと、それって!?」
『俺のことを呼んだか?』
「「!」」
突然懐から一枚のカードが飛び出したかと思うと、その場に実体化するバジュラ。突如として現れこの世界の者にとっては未知の存在であるその姿にジークフリード仮面は一瞬驚いたような声を上げる。
「お、おい! バジュラ! お前勝手に!?」
『あっ、さっきのトカゲ男がいるぐらいだから別に俺みたいなのが出てきても問題ないだろ、それにそいつ』
「?」
じっとアラタの方に視線を向けるバジュラ、視線の意味が分からないようにキョトンとしている彼だが暫くしてバジュラは視線を外し。
『何でもねえ。まあ驚かせて悪かったな』
「え、えっと……確認だけどスピリット化の影響で小さくなったとかではないよね?」
『オイ、俺をあんなもんと一緒にすんじゃねえ! 派手仮面野郎!』
「それは失礼……って派手仮面って私の事かい!!?」
「こらバジュラ!」
この世界のチャンピオンに対してあまりに無礼なバジュラに咄嗟に叱咤するがバジュラは意にも介さず知らんぷり。
「あの……その……信じてもらえないかもしれないけど、俺この世界とは別の世界から来たんです」
「別の世界? 違う町とか国とかじゃなくて」
「はい、文字通り生まれた世界が違います」
「それはまたどういう事だい?」
バジュラの姿を見られた以上隠し通せず高を括るしかないと判断したのか、少々口籠りながらも自分自身の事、そしてバジュラ達七罪竜についてやこの世界に来た敬意を話して行く。
***
「成程、つまり言って見れば武者修行の為にここに来たって訳か」
「突拍子もない話なんで信じてもらえるか分かんないですけど」
「嫌、信じよう」
「えっ!!?」
自分でも受け入れられるかどうか懸案していたにも関わらず、そんな烈我の思いとは裏腹にジークフリード仮面はいともあっさりと納得。
その反応には発言した側である筈の烈我が逆に驚く程だった。
「あの……俺が言うのも変なんですけど受け入れるの早すぎませんか?」
「確かに不思議な話だけど、君は嘘を言ってる感じがしなくてね。目を見れば分かるさ」
「それに」とジークフリード仮面は言葉を付け足しながら。
「僕を知らないって言うのも君が異世界とやらから来たのなら納得だ。それなら全然不思議じゃない」
「えっ……あはい」
一瞬ジークフリード仮面の言葉に戸惑いながらも失言が出そうになる前に直ぐに頷く烈我。彼にとって、自分の認知度は余程重要な事らしい。
「ひょっとしてアラタ君も彼等と同じ──」
「いえ、僕はこの世界の生まれですね」
「あ、そう」
即答するアラタに覇気のない声で返事を返すジークフリード仮面。本来ならアラタも元はこの世界の者では無い。彼にもまた本来自分の生まれた世界が存在するが烈我と違い、彼は転生者でありこの世界で新たに生まれ変わった存在。
その点ではこの世界の生まれというのはある意味嘘ではない。但しその事実を周知しているのはアラタ本人のみであるが。
「まあそれはともかくとして、烈我君。君が来た目的は武者修行、だったよね」
「はい」
「だったらどうだろう? 是非明日君にうってつけのステージがあるんだけど」
「ステージ?」
「実は明日のイベントを予定しててね。是非君のようなカードバトラーに一つバトルを頼みたいんだ」
「俺に、ですか?」
唐突なジークフリード仮面からの誘いに思わず要件を聞き返してしまう烈我。
「あぁ。実力も申し分ないし、差し支えなければ是非お願いしたいんだがどうだろうか?」
「!、はい!! 是非俺の方からお願いします!」
元々バトルで腕を磨く為に異世界へ足を運んだのだからジークフリード仮面の提案は願ってもない事。断る理由などある筈がない。
「それは良かった。で、相手の方なんだが」
チラッとアラタの方へ視線を向け、向けられた視線に対してアラタは。
「アラタ君、是非君に」
「ハイ。丁重にお断りします」
「何で!?」
「だって言ったじゃないですか、ノーギャラじゃやりませんって」
頑なに拒むアラタに対し、軽く溜息を吐きながら。
「ハァー、分かったよ。それなら報酬は私の方で支払うよ。観客を喜ばしてくれればそれに見合う分を──」
「分かりました。じゃあやります」
「即答!!?」
百八十度掌を返すアラタに再び声を大にして突っ込んでしまうジークフリード仮面。そんな二人に思わず苦笑いしながら眺めるが、それに対してバジュラは少しだけ苛立ちながら。
『オイ、お前が相手するんじゃねぇのかよ?』
「……うん、ごめんね。君達のようなバトラーなら私もぜひお手合わせ願いたいんだけど生憎私は本番のイベントが控えててね」
『ケッ、要するに俺等は前座かよ』
「そう言われると私も心苦しんだけど」
「でも」と少しだけ口角を上げてもう一度アラタの方へ視線を向けながら続けて行く。
「アラタ君は今結構注目されてるカードバトラーだよ。実力は私が保証する! きっといい勝負になると思うよ。君にとっても、勿論アラタ君にとっても」
「?」
その発言に対しやや不思議そうな顔を浮かべながらも、やると引き受けたからには後は戦うのみだ。
「はい、では烈我さんでしたっけ? ではよろしくお願いしますね」
「お、おぉ。こちらこそよろしく頼むぜ!」
礼を交わしながらも既に明日のイベントのバトルに向けて烈我の闘志は高ぶっている。対照的にアラタは冷静な様子だが、そんな彼にバジュラはじっと何かを感じているかのように見つめ。
『……少なくともテメェはさっきのトカゲ男よりはマシなんだろうな?』
「まぁ僕強いですし。それにトカゲって、思いっきりブーメランですよ?」
『あァ? やんのかコラ!!』
「バジュラ止めろって!!」
『フン、テメェから妙な気配がするんだがどうにも釈然としねぇなァ』
「えー、別に関係なくないですか? もしかしてこれ恐喝されてます?」
「だぁー、もうバジュラ止めろって! 本当に御免!!」
転生者であるアラタはこの世界では特異点のような存在。恐らくバジュラはそれを本能的に感じ取っているのだろう。それを知る由もない烈我、一先ずバジュラを強引に引き剥がし平謝りでアラタに頭を下げる。
「まあ別にいいですよー。ヤンキーのあしらい方は慣れてるんで」
『ヤンキーって俺の事か?』
「他に居ないでしょ」
『あァ?』
「ストップストップ! 喧嘩しない、喧嘩しない」
ジークフリード仮面からの仲裁でようやく口論を止める1匹と1人。『フン!』とそっぽを向けるバジュラに対し「やれやれ」と言わんばかりの態度を示すアラタ。止めなければ何時までもこの調子だった事だろう。
「バジュラ君で良かったかな? 気持ちは分かるけどどうか堪えて。その怒りはどうせなら明日のバトルでね」
『フン、端からそのつもりだ。明日のバトル、覚悟しとけよ!』
「はい。まぁその言葉、そのままお返ししましょうかね」
「やれやれ。所で烈我君達はこの後行く当てはあるのかい?」
「いえ、全く」
初めて来た世界なのだから当然宛などある筈もない。即答する烈我に対し、「それなら」といい案があるように。
「今日はもう暗いし、今晩はアラタ君達の事務所でお世話になるといい。アラタ君も別に構わないだろう?」
「まぁ僕は別に」
「なら決まりだ。烈我君達も大丈夫かい?」
「はい。宜しくお願いします!」
***
こうした経緯から現在事務所で今晩お世話になる事となった烈我達。
「それにしても明日のバトル楽しみですね。私御二方共応援してますね」
「応援されても結局勝つのは1人なので、僕だけ応援してくれてもいいですよ」
「え、えぇ……。」
アラタの言葉に対しての返答に困り果てたように困惑するヌーさん。
「よし、じゃあ俺は烈我だっけ? お前を応援するわ」
「え? 俺ですか!?」
「あれー? ライマンさん。僕チームメイト何ですけど」
「たまにはお前にも鼻を明かされて欲しいんだよ」
「照れ隠しって奴ですか」
「黙れ」
睨むようなライマンの視線にも全く動じないアラタ。流石バジュラと真っ向から張り合って見せるだけのことはあると逆に感心するぐらいであった。
「ところで、バジュラ? でしたっけ? 随分大人しいですが」
「あぁ、嫌……アラタ達はともかくあんまり事情を知らない人たちにもバジュラも見せても混乱するだけかなって」
「ふーん、そういう物なんですね。まぁ僕には関係ないですけど」
「だろうな」
「二人して何の話をしておるのかの?」
「「いえ何でもないです!」」
バジュラのことについては明日のバトルで嫌でも皆に伝わる事になるが、突拍子に喋る恐竜を気軽に紹介する訳にもいかない。この場ではバジュラの事は内密にすると決め、マサノからの質問に咄嗟にシラを切る事にした二人。
「?……まぁともかく、明日のイベントしっかりやってもらう為にも今日は存分に寛いでくれ」
「お世話になりまーす。アラタ、明日のバトル負けねえからな!!」
「まあ僕はギャラさえ貰えるなら結果は……まあやるからには勝ちたいですけど」
「だったら素直にそう言えばいいだろ!」
またライマンからの力強くツッコまれながらも、今日は明日のバトルに胸を膨らませつつ、本番に備え今夜はスリーアロウズの元、眠りに着く烈我達であった。
***
『会場にお集まりの皆様、今日は誠にこの会場に足をお運びいただきありがとうございます!! 本日はスペシャルイベント!! 我らがチャンピオンにしてヒーロー! ジークフリード仮面のエキシビジョンマッチだァッ!!!』
翌日、市街地のど真ん中に立てられた巨大なドーム、そして会場中央でマイクを手に声高らかに叫ぶMCと、その声に感化されるように沸き立つ観客達。会場に訪れた観客の中には既にライマンやヌーさん達、さらにはスリーアロウズ以外にも様々なチームの顔ぶれが見え、単なる観客としてか、それとも何れ戦うべきライバルの視察の為か、思惑は違えど全員が共通する目的はジークフリード仮面のバトルを見る為だが。
『さてまずは第一にその前哨戦! 今回バトルするのは、何とジークフリード仮面ご自身が指名したカードバトラー達によるバトルッ!!! それでは早速、入場していただきましょう!!!』
MCがそう言ったと共に中央のステージに続く左右に分かれた通路の入り口が開き、それぞれの入り口から入場するのはアラタと、そして烈我の姿。
アラタはともかくこの世界の部外者である烈我はジークフリード仮面やライマン達を除く誰からも認知はされていない。見慣れないカードバトラーの姿に観客達は不思議そうな顔色を浮かべている。
「(……勢いで参戦したはいいけど、やっぱ場違い感凄いよな)」
『(ケッ、今更怖気づいてんのか?)』
「(んな訳……ッ!)」
『(なら堂々としてろ。キラーの言葉を借りるなら、俺達の力を見せつけるいい機会だろ? それにこんな大舞台であの野郎ぶっ倒せるなら願ってもねえ!)』
脳裏に響くバジュラの声、緊張の二文字はバジュラにある訳はなく今は憤怒の七罪竜として頭にあるのは己の怒りをぶつける事だけである。
そして舞台へと上がる二人、その二人の前にチャンピオンである当イベントの大本命、ジークフリード仮面は前へと出て司会からマイクを受け取る。
『カードバトラー諸君! 先程紹介にも会った通りこの二人は私自らが今回のイベントを盛り上げる適任者として指名致しました! 彼等のことを知らない人達もいる事でしょう。ですがどうか安心してください。今から行われる彼等のバトル、決して一瞬も目が離せない物であると断言致します! 以上です!』
強く言い切って見せるジークフリード仮面の言葉に観客阿知波一声に歓喜の声を上げ、マイクを司会に返すと、通常の声のボリュームで「頑張ってね」と二人にエールを送る。
「あのもしかしなくても、僕達ハードル上げられました?」
「ごめんね。でもきっと君達ならそう確信できるからさ」
「やれやれ。まぁその分のギャラも期待していいんですよね?」
「君は本当に……まぁその話はバトルが終わってからね。烈我君も大丈夫そうかい?」
「はい! ここまで来たらやるだけです! 当然負ける気も微塵もないです!!」
「それなら良かった」とジークフリード仮面は笑顔で一旦ステージから降り、これから行われんとするバトルを前に二人は静かにデッキを構える。
「行くぜアラタ! 勝つのは俺だ!!」
「やる前の勝利宣言はフラグですよ? 分かってます?」
「あぁ、もういいだろ別に!! とにかく全力でな!」
「はいはい」
戦う前からアラタの言動に調子を狂わされながらも戦う準備は万端。司会もそれを確認し終えるといよいよ試合の幕を上げて行く。
『両者準備はOKなら、お互いにコールを!!』
「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」
世界共通してバトル開始を宣言する合言葉、宣言をトリガーとして今バトルの幕が上げられた。
────第1ターン、アラタside。
[Reserve]4個。
[Hand]5枚。
「僕のターンですね。じゃあ新しき世界を配置します」
「! いきなり転醒ネクサスか!」
開始直後にフィールドに配置される七色の山、その効果を知っているように反応しする烈我。
「これでターン終了します」
────第2ターン、烈我side。
[Reserve]5個。
[Hand]5個。
「俺のターン! バーストセット、さらにライトブレイドラとレイニードルを召喚! ライトブレイドラはLv.2だ!」
現れる二体の小型スピリット、序盤の展開としては妥当な戦略。
「アタックステップ! 先手は貰うぜ!! まずはレイニードルでアタック!」
先陣を切るように長い体躯をうねらせながら突っ込むレイニードル。
「さらにフラッシュ! ライトブレイドラを煌星の第三使徒テティスに煌臨!!」
レイニードルが突っ込む傍らでライトブレイドラの身体が輝き、その体が一回り大きく変化し始めたかと思うと、青銅の鎧を身に纏うテティスへと進化を遂げて行く。
「煌臨時の効果でデッキから1枚ドロー! さらにレイニードルのメインアタック!」
レイニードルはそのままアラタへ突っ込むと、口を開けバリアに向かって竜巻を撃ち放ちライフを破壊。
「うう~ん、やっぱりネクサススタートだとどうしてもライフを奪われるの覚悟しなきゃですね。まぁ別にいいですけど」
ライフによるダメージが無いのもあってか、涼しい顔で気にしてない様に言い捨てるアラタだが。
「まだ俺のターンだ! テティスでアタック!! アタック時効果、煌臨時と同じく1枚ドロー、さらに煌臨中のアタック時でもう一枚ドロー!」
「ほう、最初の煌臨と合わせて三枚ドローですか。たいしたものですね」
「?」
眼鏡をクイッと上げる様な動作をしながら意味深な台詞。眼鏡を別に掛けていないのに。
「もしかして伝わってないですか? このネタが分からないなんてどうやら世代じゃないみたいです。やっぱ仲良く出来そうにないですね」
「えっ、何かごめん」
「まぁこのネタ通じる人この世界に居ないんですけど」
「オイ!」
思わず突っ込んでしまいながらもゴホンと咳払いしながら切り替えると再びバトルに意識を戻して。
「テティスのメインアタック!」
「ライフで受けます」
テティスの拳が二つ目のライフを砕き、これでライフ差は烈我がリード。ターンエンドし、続くはアラタのターン。
────第3ターン、アラタside。
[Reserve]7個。
[Hand]5枚。
[Field]新しき世界Lv.1(0)。
「ではメインステップ、パイオニアシルバーオールをLv.2で召喚。新しき世界の効果で起幻を持つスピリットを召喚する時、このネクサスは全色として扱える為、2コストで召喚!」
当たらに呼び出されたのは亀のような見た目のスピリット。
「召喚時効果でデッキから3枚オープン。その中にある対象のカードを手札に」
対象に開かれた三枚、その中に含まれているのは。
「白の世界あり。このカードは起幻を持つカードなので手札に加えます!」
「また厄介なネクサスを……!」
「コアはあるので、当然手札に加えた白の世界は早速配置しますね」
新しき世界の隣に出現する白銀の近代都市を思もわせる白の世界。場合によっては新しき世界よりも厄介な存在に成り得るカードに苦虫を噛み潰したように表情を険しくさせる。
「アタックはしません。これでターンエンド」
────第4ターン、烈我side。
[Reserve]2個。
[Hand]5枚。
[Field]レイニードルLv.1(1)BP1000、煌星の第五使徒テティスLv.2(3)BP5000。
「俺のターン、創界神アポローンを配置! 配置時の効果で神託だ!!」
神託によって落とされたカードは「龍星の射手リュキオース」、「アドベントドロー」、「魔界幻龍ジークフリードネクロ」の3枚。
「神託対象2枚でコア2個追加! さらにテティスをレベルダウンして月桂竜ダプネドラゴンを召喚! 召喚によりアポローンに神託!」
翼を広げ舞い降りるダプネドラゴン、これで烈我のフィールドには合計で3体のスピリットが場に揃う。
「これで頭数は整った。アタックステップ! ダプネドラゴンでアタック! アタック時効果、【小界放】発揮!」
アポローンは腕を翳し自身のコアをダプネドラゴンへと託すと、炎を纏いながらダプネドラゴンは突っ込んで行く。
「【小界放】の効果でアポローンのコア1個をトラッシュに送る事で、アポローンの【神技】を発揮することができる! よって、パイオニアシルバーオールを破壊だ!」
アポローンはさらに矢を構えて、そのままシルバーオールに向けて射ると、炎の矢に体を貫かれ爆散。そして破壊によってドローが可能となり、さらに一枚手札へと加わる。
「メインアタック!」
「ライフで受けます」
ブロッカーを失いダプネドラゴンを止められず、そのままバリアに勢いよく突進しアラタのライフが砕かれるが、ライフを失った瞬間、場にある白の世界は白銀の光を増し始め。
「!」
「白の世界の効果、自分のライフ減少時相手のスピリットを手札に、対象はテティスです」
白銀の輝きに照らされたテティスはフィールドから姿を消し、烈我の手札へと送還。
「ッ!? 俺のスピリットが……!」
「さてどうします? まだ続けます?」
「……ターンエンド」
ライフを削り切るには後一手足りず、冷静に考慮した上での判断。そのまま終了のコールを宣言しターンはアラタへと移る。
────第5ターン、アラタside。
[Reserve]9個。
[Hand]6枚。
[Field]新しき世界Lv.1(0)、白の世界Lv.1(0)。
「さて僕もそろそろ攻めさせてもらいますよ。時と空間を司る六色のドラゴン! 時空龍クロノドラゴンをLv.2で召喚!」
白銀と翠芽吹く世界の狭間に出現するは空間乱れる時の乱流、乱流の中を掻き分けて姿を現すは時空の名を冠する龍──クロノドラゴン。
「! これがアラタのキースピリットか!!」
「まぁそんな所です。行きますよ? クロノドラゴン、アタックしてください! アタック時効果で一枚ドロー!」
力強く構えながら咆哮を上げると、腕に付けた刃を振り被りながら一気に烈我へと迫って行く。
「ライフで受ける!」
烈我へと接近すると刃を振り下ろしバリアを両断。烈我のライフを破壊され衝撃に備えるが、痛みやダメージはない。
「……何かこうしてライフで受けてんのに何も感じないって随分新鮮な感じすんな」
『(オイ、烈我? 痛みは俺が肩代わりしてるって忘れんなよ?)』
「あっ、そう言えばそうだったな」
『(忘れてたんかお前ッ!!)』
「続けて大丈夫です?」
「あっ、大丈夫です!」
頭の中に響くバジュラの声と揉めつつもまだアラタのターンは継続中。烈我からの返事に「じゃあ続けますよ」とゲームを再開していく。
「相手のライフ減少時で新しき世界の効果! 【転醒】!」
「!」
「現れろ、風雅龍エレアラグーン!」
新しき世界のカードが弾け飛び、カードに描かれた新しき世界がドラゴンへと変化すると、眩い光を放ちながら新しき世界は龍の姿、エレアラクーンへと転醒。
「転醒時効果、このスピリットにボイドからコア2個を追加します!」
「ッ!」
エレアラクーンは優雅に空を舞いながら鳴き声を上げ、自身の力によってコアが齎されて行く。
「エレアラグーンでさらにアタック!」
「これ以上やらせるか!! フラッシュタイミングでリミテッドバリアを使用だぜ!」
「!」
「エレアラグーンのアタックはそのままライフで受ける!」
突っ込むようにバリアへと突進を繰り出すエレアラクーンだが、リミテッドバリアによって、より強固となったバリアを砕く事は叶わず、そのまま攻撃は弾かれてしまう。
「ターンエンド」
────第6ターン、烈我side。
[Reserve]7個。
[Hand]6枚。
[Field]月桂竜ダプネドラゴンLv.1(1)、レイニードルLv.1(1)、創界神アポローンLv.1
「俺のターン! ネクサス、オリン円錐山を配置!!」
アポローンの隣に聳える赤き山、オリン円錐山。
「このネクサスがある間、俺の赤のスピリット全ては相手の効果で手札、又はデッキは戻らねぇ!」
「へぇ、白の世界の対策って訳ですか?」
「当然!! さらにもう一枚だ! 行くぜバジュラ!」
『(ハッ、漸くかよッ!!)』
頭の中に響くバジュラの声と共に、カードを構えてそして叫ぶ。
「罪を背負いし怒りの竜! 憤怒の炎、烈火で地獄さえも焼き尽くせ! 爆我炎龍バジュラブレイズ、Lv.2で召喚ッ!!!」
フィールドへと呼び出されるバジュラ、空は一瞬に暁に染まり、雲を突き破り降り注ぐ流星群。大地を抉りながらステージを作り上げるかのように中央の大地を残すと、ステージ上に一際巨大な火球が激突し巻き起こる大爆発、そして灼熱の爆炎より姿を見せる龍の姿。
『ウオオオオオオォォォォォ────ッ!! さぁ、暴れんぞ!! 俺の怒り全て出し尽くすまでなッ!!!』
鬼気迫るバジュラの怒号、両拳を打ち鳴らしながらアラタを眼前に捉える。
「このターンで決めるぜ! バジュラブレイズでアタック!!」
『ウラァッ!! 決めてやんぜッ!!』
今アラタの残りライフは2つ。攻撃が決まれば追い込まれることは明白。だがそう簡単に追い詰められる程、相手の実力は生半可の物では決してない。
「フラッシュタイミング、マジックでピュアエリクサー(Rv)を使用します」
「!!」
「効果で自分のスピリット、全て回復です」
十字架によって齎される光にクロノドラゴンとエレアラクーンは再び起き上がり二体は突っ込むバジュラに対し構えを取る。
『ハッ、迎え撃つ気か? テメェ等が俺の相手になるかよッ!!』
「いえ、相手は別に用意してますよ」
「『!?』」
別の相手、アラタの言葉に不信感を覚えるバジュラと烈我だが、彼の発言の意味はすぐに理解する事となる。
「自分のスピリットが回復した事で白の世界の転醒!」
「転醒! このタイミングで!?」
「人が生み出した機械は人知を超え、神となる! 無慈悲な鉄の拳で全てを砕け! 転醒後スピリット、白き機神!」
機械都市とも言うべき白の世界から轟音が響き始めると、機械都市は体を形成するように変形していき人型のロボットへと変貌を遂げ、白銀の眼光を輝かせる。
「白き機神! 転醒完了!」
「これが転醒後の姿……けど、まだバジュラの攻撃は継続中だ!!」
「そのアタックは、白き機神でブロックさせます!」
目の前に立ち塞がる機械の巨人、だがそれを前に立ち止まるバジュラではない。構う事無く猪突猛進に突っ切って行く。
『テメェ如きに俺が止められるかァ!!』
「それはどうですかね、白き機神ブロック時効果、相手のスピリット一体を手札に!」
『ハッ、さっきの烈我の説明聞いてなかったのか? 赤のスピリットは手札にもデッキにも戻らねぇ。当然俺自身もなッ!!!』
BP勝負になれば当然バジュラが圧倒的有利、そのまま白き機神を討ち沈めるべく拳を振り被るが、白き機神は片腕を構え突き出された拳を正面から受け止め。
「あっ、補足なんですけど白き機神のバウンス効果は防げないですよ?」
「なッ!?」
「よってバトル中のバジュラブレイズはそのまま手札に戻っていただきます」
『ッ!!!』
組み合う中、突如として白き機神の身体に電撃が迸り始め、電撃は組み合うバジュラにも流れ始めるとその体を痺れさせられ、隙を突くように即座に腕を離すと同時にバジュラなや懇親の力を込めて殴り飛ばすと吹き飛ばすようにバジュラを手札へと突き返してしまう。
『(この俺が、何も出来ねえまま戻されただと!!?)』
「バジュラッ!?」
白き機神の効果は完全に想定外だったように表情を険しくさせるが、烈我とは対照的に涼しい顔色で「まだ続けますか?」と一言。
「……ターンエンド」
「まっ、そりゃそうですよね」
今アタックしても残りのスピリットでは回復したエレアラクーンとクロノドラゴンに返り討ちに合うのは目に見えている以上、そうする他にない。
────第7ターン、アラタside。
[Reserve]8個
[Hand]5枚。
[Field]時空龍クロノドラゴンLv.2(3)BP5000、風雅龍エレアラグーンLv.1(1)BP3000、白き機神Lv.1(1)BP6000。
「クロノドラゴン、エレアラグーンをそれぞれLv.3にアップ。さらにバーストセットします」
「(バースト!?)」
「ではこれでアタックステップ!」
「あぁ、来るなら来い!!」
「では遠慮なく。白き機神でアタック! アタック時効果でダプネドラゴンを手札に!」
もう一度腕を掲げ、ビームをダプネドラゴンに向けて放ち、直撃を受け身体を麻痺させながら手札へと送り返される。
「そしてメインアタックです!」
「ライフで受ける!!」
鋼の剛腕をバリアに叩き付けると、バリアを木端微塵に砕きライフを破壊するが、アラタの攻撃はそれだけに留まらない。
「相手のライフ減少時、クロノドラゴンの転醒発揮!」
「ッ!! また転醒!」
「これが真打ちですよ。時空の龍は転醒し、龍皇となる! 時空龍皇クロノバースドラグーン!」
身を固める様に蹲ったかと思うと、七色の光を灯し輝きを放ちながら、クロノドラゴンの身体が一際巨大に変化していき、後部に歯車が装着され転醒を果たしたクロノドラゴン、否、クロノバースドラグーンは力を誇示して見せるかの如く周囲を吹き飛ばす程の咆哮を上げる。
「クロノバースドラグーンの転醒時効果、このスピリットを回復させ、さらに起幻を持たない相手の創界神を破壊!」
「ッ!!」
「創界神アポローン、破壊します!」
咆哮を上げながら眼前のアポローンを視界に捉えると、翼を広げ装着させた歯車が回転し始めていくとエネルギーを溜め込むように翼は輝き、もう一度クロノバースドラグーンが合図の如く吠えると、溜め込んだエネルギーを解き放ち、アポローンへと撃ち込むと、エネルギーの粒子に飲まれアポローンは破壊される。
「ぐッ! これが、アラタのキースピリット!」
「えぇ。そしてこれがクロノバースドラグーンの攻撃です! クロノバースドラグーン、アタック!」
攻撃開始の合図にクロノバースドラグーンは再度吠えながら胸のコアを輝かせる。
「僕はクロノバースドラグーンが転醒した事で僕のカウントは合計3、よってクロノバースドラグーンのLv.2、Lv.3のアタック時効果を起動します!相手はバースト効果を発揮出来ず、さらに自分のカウントが3以上なら相手のライフ2個をリザーブに!」
「なッ!!」
クロノバースドラグーンの胸のコアから放たれる光線がバリアを貫き、そのままライフを一気に破壊する。
『(グゥッ!! 野郎……結構な一撃くれやがってッ!!)』
無論攻撃を肩代わりするのはバジュラだがその威力はこれまで以上。
「おい、大丈夫かよバジュラ!」
『(あァ、問題ねえよ。いいからお前は守る事に集中しろ。次のターンで必ず倍にして返してやらァ!!)』
「はは、その調子なら心配は要らなそうだな」
バジュラにとって蓄積されるのはダメージよりも攻撃を受けたことによる怒りだろう。心配は杞憂なようにバトルに集中し直す。
「最後のライフ、取らせはしねえ! フラッシュタイミングでリミテッドバリア!」
「2枚目、ですか!?」
「アタックはライフで受ける。けど、コスト4以上のスピリットのアタックじゃライフは削られない!」
前のターン同様にバリアの層が何重にも覆い重なり、クロノバースドラグーンは腕を構え、爪で引き裂こうと構えた振り下ろすが何重にも強化されたバリアは攻撃を弾き返しビクともしない。
「残念。決めきれませんでした。仕方ないのでこれでターンエンドです」
────第8ターン、烈我side。
[Reserve]12個。
[Hand]7枚。
[Field]レイニードルLv.1(1)、オリン円錐山Lv.1(0)。
「俺のターン、ライトブレイドラを召喚、そして星竜を召喚した事でコスト4として扱い、太陽皇ヘリオスフィアドラゴンを召喚!」
連続して現れる二体のドラゴン、だが真打は彼らでは無い。
「さらにもう一度来い! 爆我炎龍バジュラブレイズッ! Lv.3で再召喚!」
フィールドから噴き上がる火柱、柱の中央から炎を掻き消しながら飛び出し戦場へと帰還するバジュラ、ただしその形相は先程以上に怒りを募らせた表情。
『今度こそ、ぶっ潰させてもらうぞオオオッ!!!』
怒りの咆哮を荒げるバジュラ、七罪竜にして憤怒の罪を持つバジュラにとってこれまでダメージを受けさせられオマケにようやく巡ってきた絶好の攻撃に対してもお預けを喰らわされた事は屈辱という他ない。必ず借りを返す、と言わんばかりに募る怒りの炎を燃え滾らせていく。
「アタックステップ! ヘリオスフィアの効果、アタックステップ開始時にトラッシュのコアをヘリオスフィアに移動させ、この効果でヘリオスフィアにコアが5個以上置かれた時、相手のBP10000以下の相手スピリットを破壊! 対象は白き機神!!」
トラッシュのコアは5つ、それが置かれた事で効果を起動するとヘリオスフィアは白機神に向けて火炎放射を吐き付けると、炎に飲まれ白き機神は爆散。
「白き機神の効果使います。【根源回帰】!」
「!!」
「コストを支払う事で転醒前の状態、白の世界を配置!」
時が遡るかのように爆風を吹き払い、白の世界が再びフィールドに出現。だがこれぐらいで立ち止まるつもりは烈我もバジュラも毛頭ない。
「このまま行くぜ! バジュラブレイズでアタックッ!! さらにバジュラの効果、【
「!」
「このスピリットをBP+5000し、さらに手札1枚を破棄する事で相手は必ずブロックしてもらうぜ!」
「ならエレアラクーンでブロックです」
拳に炎を込め全速力でフィールドを駆け抜けていくバジュラ。エレアラクーンは鳴き声を上げながら空に飛び上がると、バジュラに狙いを定めて上空から強襲。真っ向からバジュラへと激突する。
「自分のスピリットがブロックした事で、再び白の世界を転醒!!」
「ッ!!」
白の世界が輝き始めると、白銀の都市は巨大な駆動音を鳴らしながら白き機神の姿へと変形。
『ハッ、また出やがったか! すぐにでもぶっ潰してぇとこだが、今は……此奴だ!!』
視線をエレアラクーンに戻し、エレアラクーンを掴んで引き剥がすと炎を纏わせた拳をエレアラクーンに叩きつけ、上空に体を浮かび上がらせるとバジュラはそのまま飛び上がり、反転して尻尾をエレアラクーンの頭上に叩き込むと、地面に叩き伏せられ爆発四散する。
『さァ次だ!!』
「あぁ、バジュラの効果! BPを比べ相手のスピリット、又はアルティメットだけを破壊した時、バジュラは回復!! もう一度アタックだッ!! 手札を捨てて、【火力推進】の効果! 今度も強制ブロックしてもらうぜ!!」
再び荒々しく吠えながらアラタへと突っ込むバジュラ、だが目の前に立ち塞がるのは白き機神。
「強制ブロック効果、それなら当然白の機神でブロックさせるまでです」
白の機神の効果は絶対。手札に戻すバウンス効果は本来オリン円錐山で無効化出来るが、白の機神の前では防御不能。まともにバトルすれば前回の二の舞になる事は必須。
「当然そう来るよな、だから俺も同じ手は喰わねえぜ!!」
「!」
自信に満ちた表情で言い放ちながら手札に構える1枚。
「フラッシュタイミング! 煌臨ッ!!」
「!?」
「豪快無頼の破壊皇ッ! 破壊の矛で全部ぶち砕けッ!! 破壊龍皇ジークフリードルドラをヘリオスフィアドラゴンに煌臨ッ!」
紫電がヘリオスフィアの赤い身体を黒く染めて行き、一回り巨大な体に黄金の鎧を携えて生まれ変わると、ジークフリードルドラと煌臨し、巨大な咆哮を轟かせる。
「煌臨時効果発揮! 相手スピリット5体のコア3個をリザーブへ! さらにこの効果でコアが0になったスピリットの効果は発揮されない!」
「!!」
ルドラは吠えながら手に構えた矛を天に向かって勢いよく投げ付け、矛は雷雲の中へと消えた瞬間、空より巨大な雷となって降り注ぎ、白き機神とクロノバースドラグーンへと直撃。クロノバースドラグーン上のコアは4個の為、消滅は免れるが白の機神はそうではない。コアを全て取り除かれ、さらにルドラの効果で【根源回帰】も行う事が出来ず、為す術のない白き機神は力尽き、大爆発を起こす。
「これで白き機神を倒したッ!! さらにバジュラのメインアタックだ!!」
「クロノバースドラグーンでブロック!」
ブロックを強制される以上、ライフで受ける選択肢はない。迎え撃つべくバジュラに狙いを定めると、胸のコアを輝かせ再びエネルギーを溜め込んだ粒子砲をバジュラに向けて撃ち出していく。
『しゃらくせぇんだよッ!!』
攻撃に対しバジュラは炎を込めた拳を地面に撃ち込むと、地面から炎の壁が噴出し、粒子砲は炎の壁に激突し大爆発を起こす。巨大な爆風の中、クロノバースドラグーンは標的を仕留めたと判断したのか、腕を下げて戦闘態勢を解くが。
『何処見てやがるッ!!』
「!」
上空からの言葉にアラタとクロノバースの視線が同時に上に向き、視線の先には爆風に乗って大きく飛び上がったバジュラの姿。クロノバースは再び迎撃すべく翼を広げると、無数の光弾をバジュラに向けて放つ一斉射撃。
だが攻撃に対しバジュラは回避する気など一切なく、体を丸めて回転し始めたかと思うと、炎を全身に纏ってさながら火炎車の如く光弾を突き破りながら真っ直ぐクロノバースへと直進し、そのままクロノバースへとぶち当たり、府飛ばされクロノバースは大爆発を起こす。
「よっしゃぁッ!! キースピリット、倒したぜ!!」
「成程、結構やりますね」
「そっちこそな。それでこそ修行の甲斐があるってもんだぜ!!」
「そうですか。けど、まだ僕も負けた訳ではないですよ?」
互いに実力を認めるように笑いながらもまだバトルは終わってない。不敵に笑いながら一枚のカードに手を掛ける。
「相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動! 幻影氷結晶ッ!」
「!!」
「効果でこのバースト発動時に破壊されたスピリット、転醒前のクロノドラゴンを手札に戻し、さらにコストを支払事でフラッシュ効果! レイニードルを指定し、このターンそのスピリットのアタックじゃ僕のライフは減りません!」
雪の結晶が集まりそれはクロノドラゴンのカードとなってアラタの手札へと戻り、立て続けにマジックによる効果でレイニードルに白い光が灯されたかと思うと、効果によりライフを削る力を失ってしまう。
「流石だぜ。だったらこっちも最後まで一切手加減はなしだ! 【火力推進】の効果でバジュラは回復!」
「!」
「もう一度バジュラブレイズでアタック! そしてこのターン3回以上アタックした事でバジュラの【
「また知らない効果……!」
「デッキから一枚ドローし、このスピリットは回復!」
「!……って事は?」
「もうバジュラは止まらねぇって事だ!!」
バジュラの拳の炎が全身に燃え広がり、さらに昂ぶるように荒々しく吠え上がる。
『シャアアアッ! 止めれるもんなら、止めて見やがれぇぇぇッ!』
再びアラタへと突っ込むバジュラ、もうアラタの場にブロッカーと成り得るスピリットはなく、ライフを削り取るべく紅蓮の拳を振り上げて行く。
「だったら止めるまでです。フラッシュタイミング! ソウルコアをコストにしてリミテッドバリア!!」
「!」
「効果でコスト4以上のアタックではライフは減らない。さらにソウルコアをコストに支払った事で相手のネクサス一つを手札に戻す。オリン円錐山です!」
勢いよく振り被ったバジュラの拳はリミテッドバリアによって弾かれ、さらにはオリン円錐山は場から消失し、烈我の手札へと戻されてしまう。
『チッ、此処まで来てまた防がれたか!』
コスト4以上のアタックではライフを削れない、その効果範囲はバジュラだけでなくジークフリードルドラにも及ぶ。以下にバジュラがこのターン何度殴ろうともスピリットによる直接攻撃である以上、アラタのライフを削る事は不可能。
「ならライトブレイドラでアタックだ!」
「ライフで受けます!」
ライトブレイドラのコストは0、リミテッドバリアの効果範囲外であり、リミテッドバリアによる防壁を擦り抜け展開されたバリアに体当たりしライフを破壊。残るライフは1つだが。
「これでもうライフを削り切れるスピリットはないですよね?」
「!」
まだ烈我の場にはコスト1のレイニードルが残るが、幻影氷結晶の効果により今のレイニードルにライフを破壊する力はない。
「まさかここまで狙ってたのか……!」
「さぁ、それで? どうしますか?」
「……これ以上は何もできない。ターンエンドだ」
────第9ターン、アラタside。
[Reserve]14個。
[Hand]5枚。
[Field]なし。
「メインステップ! 再び時空龍クロノドラゴン、召喚!」
フィールドに舞い戻りし時空龍クロノドラゴン。剣を携え振り翳しながら雄叫びを上げる。
「さてお互いライフは1。先に言いますが僕の手札に防御札はないので、このターンで決め切れなかったら負けですね。まっ、このターン決め切るつもりなんですけどね」
「へぇー、言ってくれるな。言っとくけどこっちのブロッカーは三体、そう簡単に最後のライフを渡すつもりはないぜ?」
「いいえ、最後のライフ絶対に貰いますよ。何せこのターンでチェックメイトですから」
「!?」
意味深な発言と共に、「アタックステップ!」と声高らかに宣言し、クロノドラゴンは即座に戦闘態勢へと切り替わる。
「クロノドラゴンでアタック! アタック時効果で一枚ドローし、このスピリットのアタック時、相手はバースト効果を発揮できない」
烈我の場にバーストは伏せられていない。だがアラタにとって本命の効果はこの先にある。
「さらにフラッシュ貰いますよ? マジック、ドリームハンド! コスト3以下の相手スピリット全てを手札に! レイニードルとライトブレイドラの二体を手札に戻します!」
突風のように吹雪が吹き荒れ、オリン円錐山の無い今為す術なくレイニードルとライトブレイドラは吹き飛ばされ烈我の手札へと戻るがまだブロッカーは健在。
「まだ防げる! バジュラでブロックだッ!」
『おぉよ、もう一度ぶっ飛ばすッ!!』
転醒前の姿とはいえ、再び激突する時空龍と爆我炎龍。最初に仕掛けたのはクロノドラゴン。携えた剣を真っ直ぐバジュラへと突き出すが、即座に迎撃するように拳で剣を弾き上げ、空いた片方の腕を構えて右ストレートをクロノドラゴンへと叩き込み、咄嗟に片腕で防御姿勢を取って受けようとするがバジュラの拳は防御もお構い無しにクロノドラゴンを遥か後方までぶっ飛ばし、壁に激突し耐え切れずにクロノドラゴンは爆散。だが、それを待っていたようにアラタは。
「決まりました。これで僕の勝ちです」
「『!?』」
「クロノドラゴンが場を離れる時、転醒!」
「!……そういう事か」
全てを察した様子の烈我、それを肯定して見せるかの如く笑いながらアラタはバトルを続けていき、爆風の中でクロノバースは虹色の光を纏いながらクロノバースドラグーンの姿へと転醒。
「それじゃあ決めますね。クロノバースドラグーンでアタック! アタック時効果!!」
「ッ!!」
「僕のカウントは4、クロノバースドラグーンの効果、相手ライフ二つをリザーブに! 最後のライフを破壊します!」
ブロッカーが残っていようがいまいがもはや関係ない。最後の一撃を下すべくクロノバースドラグーンは胸のコアを輝かせながらエネルギーを溜め込み、一方で烈我は手札にチラリと視線を向けるが。
「(手札には白晶防壁、破棄すればライフを減らす効果を−1出来るけど」
クロノバースドラグーンのライフを破壊する効果は合計で二つ。白晶防壁一枚だけでは結果は変わらない。
「(これは……俺の負けだな)」
「ゲームセット、ですよね?」
「あぁ、お前の勝ちだぜ」
最後に笑ってそう言うと、クロノバースドラグーンは烈我に向けて光線を撃ち放ち、展開されたバリアに直撃し残る最後のライフを破壊する。
***
『決着!! 息をつかせぬ大迫力のバトル!! この激闘を制したのはアラタ選手!!!』
バトルを終え、熱に当てられたのか興奮気味のMCの台詞と共に巻き起こる大歓声、会場中が熱気に当てられる中、バトルを誰よりも近くで見ていたチャンピオン、もといジークフリード仮面は二人の前へと出てMCからマイクを受け取ると。
「まずは二人とも最高のバトルをありがとう。見たことの無いスピリットに息をつかせぬ攻防、ここにいる観客達、そして私自身も含め全員心が踊った。私もこの後のバトルが早くやりたくなってしまったよ。でもまずは素晴らしいバトルをしてくれた二人に惜しみない拍手を!」
観客中から送られる祝福と拍手、若干照れ臭さを感じる烈我とは対照的に慣れたように落ち着いた様子で手を振るアラタ。
「さて、本当に二人ともありがとう。そして約束しよう! 私も次のバトルで二人に負けないぐらい手に汗握る最高のバトルをする事を!!」
次のバトルが控えてるチャンピオンだが、プレッシャーを感じるどころかより自らのハードルを上げる様な発言に観客全員の熱気が最高潮にまで達する。
一体どんなバトルを繰り広げるのか、烈我達も心を躍らせながら観戦室へと戻りこれから始まるチャンピオンのバトルを見届けるのであった。
***
「いやぁ~、二人共ありがとう。お陰でイベントも大成功ですっごく盛り上がったよ」
無事イベントを終えて会場を後にした三人。アラタ達の後に行われたジークフリード仮面のバトルは観客達の期待にバッチリ応える物であり、イベントの大盛況ぶりジークフリード仮面も満足していた。
「いえ、こちらこそバトルもできたしとても楽しかったです」
「えぇ。力になれたら幸いです。僕の懐も潤うので」
「ほんとに君はちゃっかりしてるねぇ」
「貰える物はキッチリ貰いますから」
現金なアラタにやれやれと溜息を付きながら烈我の方に視線を向け。
「さてどうだろう。今回の君の修行、私達は貢献できたかな?」
「はい! それはもう。お陰で俺、強くなれた気がします!」
「そうか、それなら良かった」
お互いに満足のいく結果に笑みを浮かべ、そして。
「それじゃあ、もう行くんですか?」
「……あぁ、あんまり長居すると皆に心配かけちまうだろうし」
アラタに対し名残惜しそうな様子の烈我、隣でバジュラはまだ負けたことが悔しい様に「負けたままで帰るのは癪だがな」と立ち去る前の捨て台詞を吐く。
『いいか、もっと腕上げていつか必ずテメェに借りを返すからな。覚えとけ!』
「その台詞、すっごく小物臭しますよ?」
『あぁん!!?』
「はいはい、これ以上面倒事は御免だってのッ!」
烈我からの仲裁に口論を止め、まだ言い足りないように舌打つバジュラ。だが、内心ではアラタの実力を認めているのは烈我にも伝わっていた。
『ハッ、まぁいい。いつか必ずリベンジするからな』
「まぁリベンジしたいのは俺も同じ。いつかまたバトルしようぜ!」
「まぁ僕がまた今度暇の時にでも」
「やれやれ。君は最後の最後まで……まっ、次は是非とも私ともバトルして欲しいな」
「はい! またいつか!!」
必ずまたバトルする、そう約束を交わし二人に見送られながらバジュラと共に元の世界へと烈我達は帰還して行くのだった。
***
元の世界に戻り、「帰って来たぜー!」と羽を伸ばす様に背伸びしながら戻ってきたことを実感する烈我。
「さて、早く帰ろうか。結局一日向こうで過ごしてたから姉ちゃんや光黄も心配するだろうし」
『おい、烈我。言っとくがお前今回で修業もう終わった気になってんじゃねぇだろうな?』
「!」
帰って早々釘を指すようなバジュラの言葉、それに対し烈我は「んな訳ねぇだろ!」と笑って見せ。
「アラタやまだまだ異世界にも俺の知らない強い奴がどんどんいる。もっともっと腕を磨いて強くなる!! 強くなって!」
『強くなって?』
「光黄に告白だぜ!!」
『テメェやっぱそれかよ!!!』
バジュラに突っ込まれるが理由はどうあれ自分の実力はまだまだ。それは十分理解しており、アラタや他のライバル達、そして最も超えたいのは自分の想い人。必ず強くなると決意する烈我であったが、彼等を超えるのはまだまだ先の話。
ー
皆さま大変お久しぶりです。ブラストです。
この度、ようやく……ようやく!!おぞーにさんの書く「バトルスピリッツ スリーアロウズ」とのコラボ回、その後編を書き上げる事が出来ました!!!!
まずはおぞーにさん今回のコラボしていただき誠にありがとうございます。そして誠に大遅刻して申し訳ありませんでした!!!!
言い訳の余地なくさぼりさぼりにさぼり倒してました。
申し訳ありません。m( ;ω;)m←
スリーアロウズの主人公であるアラタ君と本作主人公の烈我とのバトルでした。
アラタ君について思いっきり私がスリーアロウズ読んで感じたままに書かせていただいており、キャラ崩壊等についてお叱りがあればこの腹を切る所存であります。
今回コラボ先であるスリーアロウズの本編については是非下記リンクさせていただきます。くれぐれもどうか私のコラボ作品だけでアラタ君の認知する事だけはない様に(土下座)
https://syosetu.org/novel/250461/
次回からは本編通常通り更新させていただきます。
今後とも宜しくお願いします。