バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第一章 七罪竜
第1話【憤怒の火龍】


とある研究施設、その最深部で厳重に保管されている一つのカプセル。その中で眠る謎の影。それが一体何であるか、正確な詳細までは分からなくとも厳重な警備や施設を見る限りそれがこの施設内で最も最重要なものである事は確かだろう。

 

だが突如としてその施設内に爆音が轟く。

 

『侵入者だ!』

 

誰かの叫び声が聞こえる、と同時に研究施設内に鳴り響くサイレンと、辺りを照らす赤いランプ。施設全域が騒ぎになったと同時に、カプセル内に眠る影はその眼光を開き、眼前には研究員らしき男性二名が倒れており、さらにもう一名佇む一人の人物。

 

『よっ、助けに来たぜバジュラ』

『ようやく来たかよ、遅過ぎて待ちくたびれたぞ』

『助けて来てやった恩人への開口一番が文句かよ、おじさん泣いちゃうぞ?』

『るせぇ、テメェが来なくてもぶち壊せるわ。いい加減苛々してた所だしよ!』

『全く、憤怒の名は伊達じゃねぇな、伊達であって欲しかったけど』

『ごちゃごちゃ言うな、とっととずらかるぞ!』

 

次の瞬間、バジュラと呼ばれたそれは、ケースをぶち破ってその人物へ飛びこみ、飛びこんだそれを掴み取ると、何かを掴み取った筈の手には一枚のカードが握り締められており、そのまま男性は即座に走り去って行く。

 

「さぁいよいよこの時が来たぜ!」

 

 

***

 

 

“バトルスピリッツ”、現在全国で大人気のTCG。今まさにその大会の決勝戦が行われようとしており、一人はややチャラい印象を感じる茶髪の男性、もう一人は金髪の髪に凛といた雰囲気の女性。

 

「今日と言う今日こそ、俺はお前に勝つ! そしたら、俺と……!」

 

力強く女性を指差し、勝利に意気込む言葉を続けて言う。

 

「この勝負に勝ったら俺と付き合ってくれ!!」

 

まさかの告白の言葉、観客全員は男のその言葉に思わずずっこける。唯一対戦相手である女性だけは表情を全く変えず、少しだけ呆れた様な溜息を一息つく。

 

「お前のそれは聞き飽きた。いいからとっとと掛かって来い、どうせ勝つのは俺だ」

 

男勝りな口振り、男性に対して彼女もまた面識がある様子だが、勝負に関しては自信があるように強気に言い放つ。

 

「上等、対策はバッチリなんだ! 目にもの見せてやるぜ! 光黄!」

 

デッキを構える二人、そしてスタッフから掛けられる開始の合図。

 

『ゲートオープン!』

「「界放ッ!!!」」

 

 

*** 

 

 

『決着ぅッ! 本日のショップバトル優勝者は黄空光黄さんですッ!!』

 

高らかなコール。女性の方は当然と言ったように特に喜ぶ訳でもなくただ佇みながら歓声を聞いているが、一方で優勝を逃した男性は真っ白に燃え尽きたように、半笑いを浮かべながら項垂れている。

 

『よー、烈我お疲れ。また駄目だったの? 告白バトル?』

「!」

負けた側の男性の名を呼びながら声を掛ける一人の人物、その声に気が付き、顔を上げた瞬間、顔に思いっきり冷えたペットボトルを付けられる。

 

「冷って!! 何すんだよミナト!!」

「はは、ちったぁ気分転換になったろ?」

 

伊達眼鏡を目上に上げながら、悪戯気味に笑う男。ミナトと呼ばれその見た目は烈我よりもチャラけた印象を感じさせる。 

 

「それより今日で何連敗目だっけ?」

「…………100敗目」

 

恥ずかしそうに呟く烈我だが。その一言を聞いた瞬間にまた可笑しそうにミナトは高笑い。

 

「テメッ!! だから言いたくなかったんだよ!!!」

「悪ぃ悪ぃ、にしてもついに連敗記録三ケタまで更新したか、ホント懲りねぇな」

「るせぇ、俺はともかく絶対諦めねぇからな!」

「『バトルで勝ったら結婚してやる』だっけ、それ一体何年前の約束だよ」

「だからうるせぇッ! おちょくんのも大概にしろよ!」

 

ミナトの言う約束、それはまだ烈我が幼稚園だった頃までに遡る。

 

 

*** 

 

 

『なぁ、光黄の好きな人って誰?』

 

まだ幼く羞恥心もなく、率直な質問。一方で質問に対して彼女は考えるような仕草を見せる。

 

『好きな人? ……そうだね、私より強い人かな?』

『ならさ、もし俺が光黄より強い男になったらさ、俺と付き合ってくれる?』

『いいよ、烈ちゃんが私より強くなったら結婚でも何でもしてあげる!』 

 

勿論まだ物心つかない子供同士による何気ない約束。だが何気ない約束から早10年以上経っても、烈我にとっては大事な記憶として今でも覚えている。

 

「つってももうガキの頃だし、多分光黄は覚えてねぇんだろうな」

「まっ、約束を交わしたあの娘は今じゃ高嶺の花。知ってるか、あの娘、この前チャンピオンシップでも優勝決めたらしいぜ?」

「マジかよ、それ」

「だからいい加減バトルに勝ってあいつより強い男ってこと証明するのは諦めた方がいいと思うぜ? 正直お前じゃ荷が重そうな気がしてくるわ」

「……絶対諦めねぇよ」

「?」

「餓鬼の頃からずっと好きだったんだ、今さら諦めきれるか。それに単純にあいつとのバトルは楽しいってのもあるし、何よりあいつが拒否しねぇ限りは挑戦し続けるだけだ!」

 

そのまま挨拶してくると言い残して、その場を離れるがミナトは軽く手を振りながら後姿を見送り、そっと一言。

 

「(ホント馬鹿だねぇ……バトルに勝つとか、必要ねぇってのに)」

 

 

「よぉ光黄、優勝おめでとう」

「……烈我か。一応褒め言葉として受け取って置く」

「素直に受け取ってほしいんだけどな。まぁ昨日かなりデッキ構築も見直したし、自信もあったらから行けると思ってたんだけどな」

「あぁそうだな。少し危ない場面もかなりあった」

「んな事言って、軽く対応するから自信失くすぜ。けど、またデッキ構築して再挑戦する! だから、その時こそ、勝ったら……告白の言葉だけも聞いて貰えるか」

「バトルなら別にいいけど、告白ならもう何回も、それに烈我、俺はそもそも」

「よし決まりッ! そうと決まりゃ、とっとと帰って最強のデッキ組んでやるぜ!」

「お、おい! 待て烈g────!」

 

呼び止めようとする言葉も聞かずに走り去る烈我、あっという間に見えなくなるその姿に対して、彼女はまた溜息をつく。

 

「ホントに、あの馬鹿」

 

 

*** 

 

 

「さて光黄に勝つには……もっとBPの高いスピリットを採用すべきか、マジックやネクサスって言う手も」

 

帰り道。ぶつぶつと今後のデッキ構築について呟きながら歩くが、ふと彼の頭上にある木が少し揺れたかと思うと。

 

「さて、どうしたらもっと強くなれるもんか」

『へぇー、強くなりてぇなら俺を使ってみるか?』

「!」

何気ない独り言のつもりで呟いた言葉に返答する声、その声にピタリと足を止めて辺りを見渡すが、人影はなく、気のせいかと再び歩こうとするが、頭上の木から一枚のカードが落ちる。

 

「!」 

落ちてくるカードを反射的に手に取ると、そのカードは「バジュラブレイズ」と書かれたバトスピのカードだった。

 

「何だこれ? バジュラ? 見たことねぇカードだけど一体どこから?」

 

裏表を交互に見ながらカードを見るが、初めて見るカードに当然戸惑いを隠せない。どうするべきかと頭を掻きながら。

 

「しゃあねぇ、とりあえずさっきのショップに届けるか」

 

引き返そうと振り返った瞬間、『おい!』と呼び止める声。

 

「!」

『連れねぇじゃねぇか、折角俺の力を使わしてやろうかと言ってんだ。提案だけでも聞いてけっつうんだ』

 

先程気のせいかと聞き流した声、直ぐ近くで聞こえるその声の方角に視線を下ろし、まさかと思った瞬間、突如として手に持つカードが光輝いたかと思うとそのカードはまるで生物の様な姿へと変わる。

 

「!!」

『聞いて驚きな。俺こそは憤怒を司る一体、爆我炎龍バジュラブレイズだ!』

 

その見た目はカードのイラストの面影を残す小さな恐竜の様な姿、突然高らかに自らの名を語るそれを前に、数秒静寂した後、驚きをそのまま声に上げようとするが、バジュラと名乗るそれは手を突き出して烈我の口を塞ぐ。

 

「(む、むぐぅーーッ!!)」

『騒ぐんじゃねぇよ、危害を加えやしねぇ。唯黙って俺の話を聞け、いいな?』

「!!!」

一件ぬいぐるみのような見た目とは反して、自分を睨みながら放つその言葉の威圧感に気圧され、黙って首を縦に振る。

 

 

 

『よし、物分かりがいい奴は嫌いじゃない。順を追って話してやろう。俺の存在を』

 

 

 

***

 

 

「(あの馬鹿、さっさと一人で帰りやがって。少しは人の話ぐらい聞いて行けばいいのに)」

 

別の帰路を歩く光黄の姿。思い悩んだ様子で歩く彼女だが、突然”パリーン”とまるでガラスが割れた様な音を響かせながら、目の前の空間に穴が開く。

 

「!!?」

 

現実とは思えない光景、だが驚く間も無く穴の空いた空間から人影が飛び出したかと思うと、白髪の男性が目の前に立ち、それと同時に先程までの空間の穴はまるで最初からなかったかのように跡形も無く消える。

 

「い、今のは!!?」

「……あれ、ひょっとして君今の見ちゃった?」

 

にこやかに笑う表情とは別に、得体の知れない何かが感じ取れた。質問には答えず、警戒する様にその男を見るが、男は光黄の態度をまるで意に介せず、そのまま質問を続けていく。

 

「確認ついでにもう一つ聞きたいんだけど、君カードバトラーだよね? 良かったらこのカードについて見覚えがないか聞きたいんだけど?」

 

目聡く彼女の持っているデッキケースに気付くと、懐から取り出すメモの様な紙に「バジュラブレイズ」の名とイラストが描いてあり、間違いなくそれは烈我が今所持しているカードだった。

 

「このカードはそれはそれはすごいカードでね、現実性がないかもしれないけどこの力をすべて集めしときどんな願いも叶うって言う伝説もあるぐらいなんだ」

「そんなカード、見た事も聞いた事も無い。他を当たってもらえるか」

「う~~ん」

 

当然光黄にとっては知る由もない事。その返答に関して嘘はないが、白髪の男は困った様に顎に手を付けながらもデッキを取り出す。

 

「でも君には色々見られちゃったし、悪いんだけどバトルしてもらえるかい? さっきの言葉が嘘かどうかも確認するのも都合がいいしね」

「ひょっとして俺がバトルに負けたら俺を消す、つもりか?」

 

唯ならぬ男の気配に、恐る恐る聞くがそれに対して「そんな訳ないじゃん」と笑いながら言葉を返す。

 

「負けたら消すってこの世界ってそんな物騒なのかい? 別に命を取るとかそんなひどい事まではしないよ」

 

まるで冗談の様に捉えたのか彼女の言葉に対して笑う彼だが、けどと言葉を付け足す。

 

「負けたらの話を持ち出すって事は、自分が勝てる可能性がないって感じてる?」

「誰が……!」

 

挑発的な言葉に、即座にデッキを構え、それを待っていたかのように男もデッキを取り出す。

 

「じゃあ行くよ、この世界じゃ初めて見ると思うけどリアクションは控えてよ」

「何!?」

「それじゃあやろうか。ゲートオープン! 界放ッ!!」

 

 

***

 

 

「へぇー、願いを叶えるね」

『そうだ、俺と同じ力を持つカードが複数枚、それをすべて集めりゃどんな願いでも叶えられる!』

「情報としてはそれだけなの?」

『まぁな。それより俺からの質問だ。俺の力を手に入れてテメェには叶えたい願いがあるか?』

「願い……!」

『あるんだろう? ない訳がねぇ。何でも望みを言いな。どんな欲望でも聞きいれてやるよ』

「…………笑わずに聞いてくれるか?」

『良いだろう、言ってみろ』

 

他人に言う事に若干躊躇いを覚えつつ、それでもあえて願いを口にする。その願いを聞き入れた瞬間、バジュラは。

 

『ぎゃはははははははっはは、好きな子に、告白するために、力が、欲しいってか、ギャハハハハハハハハハハハハ!!!』

「て、テメェ! 笑わないつったろうが!!!」

『お、俺はてっきり大それた野望だと……プッ、ギャハハハハッハハ!! やっぱ駄目だ、笑っちまう!!!』

「テメェこの野郎!!!』

 

未知の相手に抱いていた恐怖はどこへやら、胸倉を掴んでやろうかと思う程怒りを覚えつつも、バジュラは笑い疲れたように一息つく。

 

「ったくどいつもこいつも俺の事笑いやがって」

『何だ拗ねてやがんのか。にしてもそんな願いを俺に言えるなんざ余程の大物か、馬鹿と見た。そんなテメエが俺は気に入ったぜ』

「はぁ? お前何言って」

『言葉通りさ、テメエのことが気に入った。だからテメエが何と言おうが俺はテメエの世話になるぜ!』

「はあ!!? ちょっと待て! 何堂々と厄介になろうとしてんだ!!! そんなもんOKするか!」

『固ぇ事はいいっこ無しだ。それより──!』

 

何かを感じったように、突然別の方角に視線を向けると、視線の方角の先に何かがあるのかただ黙って口角を上げる。

 

「どうしたんだよ? 急に」

『少し面白い気配がしてな。足を伸ばしてみるか! 付いてこい!』

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 

どこかへ向けて飛び出すバジュラの後を追い掛ける烈我。

 

 

***

 

 

「……うーん、そこそこ楽しめはしたかな」

 

背筋を伸ばしながら少し退屈そうに言い放つ白髪の男性、彼の足元には倒れている光黄の姿があった。

 

「ごめんね。命は奪わないとは言ったけど少し痛い目は見てもらったよ。軽く記憶がぶっ飛ぶくらいのね」

 

気を失っているのか男からの言葉に返答はないが、男の方はこれからどうするかまた悩む素振りを見せたかと思うと何かを思いついたように指を鳴らす。

 

「ドレイク、至急来てくれる?」

 

彼がそう言った瞬間、再び空間に穴が空いたかと思うと先程ドレイクと呼んでいた人物がその場に現れる。

 

「お呼びですか、ボス」

「やぁやぁ、来てくれてありがとう。早速だけどさ、逃げたバジュラの捜索の引き継ぎお願いしていい?」

「ハッ。お任せください」

 

忠誠心を見せるように片膝をついて答えるが、ふと男の足元に倒れている光黄の姿に気付く。

 

「その小娘は?」

「あぁ、ちょっとトラブってさ。軽くバトルして気を失ってるだけだと思うから、あとは適当に君の方で任せるよ」

「……分かりました」

 

後はよろしくと投げやり気味にドレイクが現れた空間の穴へ飛び込み、空間の穴ごとその場から姿を消し、一人残されたドレイクはその場から立ち上がって辺りを見渡す。

 

「(後始末なんざ、めんどくせぇ)」

 

ボソッと小言を吐き捨てつつ、一先ず光黄を運ぼうとするが。

 

「光黄!! テメッ! 何してやがる!!!」

「!」

 

声の方角に振り返ると、怒りを剥き出しにこちらを睨む烈我の姿、だが何よりもドレイクの目を引いたのは彼の隣にいるバジュラだった。

 

「ハッ! めんどくせぇ任務だと思ってたが、まさかこんなにも早くお目当てが見つかるとはな! バジュラ!」

『俺が目当てか、さてはお前、あいつらの仲間か』

 

バジュラの姿に口角を上げて笑うドレイクだが、一方で烈我にとってそんな事はどうでもいい。

 

「無視してんじゃねえぞテメェ! さっさと光黄から離れやがれ!!!」

「フンッ、別にこいつに用はねえ、いいからそいつを寄越せ、餓鬼」

「ざけんじゃねえ! とっとと離れろっつってんだよ!!!」

 

堪えきれんばかりの怒り。殺意にも似た怒りを込めて声を荒らげるが、バジュラは烈我の様子により一層口角を上げ、楽しそうに笑う。

 

『いい怒りだ! その怒り、合格、いやそれ以上だ!!! それでこそ、俺を扱うパートナーとして文句なしだ!』

 

そのまま突然カードの姿になったかと思うと、烈我の手に収まる。

 

「バジュラ!?」

「何ッ!」

 

突然のバジュラの行動に動揺を隠せない両者、だが。

 

『(簡潔に言うぜ、アイツにムカついてんだろ? だったら俺を使え、あんな奴、簡単にぶっ飛ばしてテメェの苛立ちをスッキリさせてやらあ!)』

 

到底理解しきれる状況ではないが、唯一分かっているのはバジュラの言う通り大切な人を傷付けられてどうしようもなく怒りを感じているという事だけ。確信を付くその一言にただ何も考えず、デッキを取り出して手に取るカードを加える。

 

『(そうだ、それでいい。俺の力を知らしめてやるよ!)』

「関係ねえ、俺はただアイツをぶっ飛ばしてえだけだ!」

「餓鬼が、テメェ如きにそのカードを扱えるか! 軽く遊んでやるぜ!」

 

懐からドレイクもまたデッキを取り出し、もう1つキューブのような物を取り出して足元に投げ捨てると、それはサークルを描いて烈我とドレイクの周囲を囲む。

 

「!?」

「バトルフィールド、文字通り戦場に案内してやる。さあコールしな!」

 

開始の合図を催促し、戸惑いながらも迷うことは無く、言われるがままコールの言葉を叫ぶ。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

視界を覆うほどの光、二人の姿がその場から消え去り、次に烈我が目を開けた瞬間、荒地のような光景が視界に広がった。

 

 

「な、何だこれ!? 一体ここは!!?」

「言っただろ、戦場に案内すると。バトルフィールド、スピリット共が実際に戦う為の舞台さ!」

「バトルフィールド!?」

「生憎馬鹿に長々と説明する気はねぇ、見て覚えな! 先行は俺から貰う!」

 

────第1ターン、ドレイクside

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、アシガルラプターをLv.2で召喚だ」

 

コアを乗せ、カードをフィールドに置いた瞬間、何かが近づく足音が響く。途端、ドレイクの背後から飛び出す影、その姿は間違いなく先程召喚されたアシガルラプターの姿に違いなかった。

 

「スピリットが、実体化した!?」

「あぁそうさ、ここはバトルフィールド、この場所でこそ、スピリット共は実際にここに実在し、そして戦うのさ!」

 

初めて見るその光景、当然驚きを隠せなかったがすぐに驚きは悦びに変わった。

 

「面白ぇじゃねえか! スピリットが実際に実体化するバトルフィールド、こんな所で戦えるなんてワクワクして来るぜ!」

「威勢だけは良い奴だ、そら次はお前の番だ」

「あぁ!」

 

────第2ターン、烈我side

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、ライトブレイドラ、吟遊詩竜オルフェスタードラゴンを召喚!」

 

一体は小さな羽をパタパタと羽ばたかす小型のライトブレイドラ、もう一体は手に竪琴を持ち、戦場に場違いな音色を響かせるオルフェスター。

 

「オルフェスターの召喚時効果! アシガルラプターを破壊だ!」

「ッ!」

 

竪琴を強く引くと音色は赤い熱風となって、アシガルラプターを襲い、熱風に吹き飛ばされ消滅する。

 

「アタックステップだ! オルフェスタードラゴン、ライトブレイドラでそれぞれアタック!」

「どちらもライフだ!」

 

ガラ空きとなった隙を見逃さず即座にフルアタック。ドレイクに突っ込む2体はそのまま展開されたバリアに体当たりし、衝撃がドレイクのライフを砕く。

 

「ぐッ!」

 

「ターンエンド」

 

 

──一一第3ターン、ドレイクside

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン。ネクサス、黄昏の暗黒銀河を配置。さらにバーストセットだ!」

 

ドレイクの背後に現れる銀河、否、ネクサスである黄昏の暗黒銀河を配置、さらに場に1枚のカード、バーストが伏せられ、当然烈我も警戒せざるを得ない。

 

「これでターンエンドだ」

 

 

────第4ターン、烈我side

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

[Filed]ライトブレイドラLv.1(1)、吟遊詩竜オルフェスタードラゴンLv.1(1)。

 

「俺のターン、ライトブレイドラをもう一体召喚。さらにオルフェスタードラゴンをLv.3にアップ!」

 

メインステップまでを終え、続くアタックステップ。場の状況はドレイクの残りライフは3、一方で烈我のスピリットも三体。

 

「(バーストは当然警戒しなきゃならねえけど、相手の場はガラ空きのまま。ならこれを見逃す訳には行かねえ!)」

 

決心したようにドレイクを睨むと、そのまま「ライトブレイドラでアタック!」と突撃させる。

 

「ライフで受ける」

 

再びバリアに体当たりし、ドレイクのライフを砕く。衝撃に後退りながらも伏せてあるバーストに手を掛ける。

 

「ライフ減少時でバースト発動だ!! 秘剣二天一龍! 効果でライトブレイドラを2体破壊だ!」

 

炎が二体の竜の形成し、炎の竜はライトブレイドラをそのまま飲み込むと破壊してしまう。

 

「ぐッ! ターンエンド!」

 

攻め手を失いこれ以上のアタックを繰り返しても決着はつけらず良策とは言えな

い。今はターンエンドするしかなかった。

 

 

────第5ターン、ドレイクside

 

[Reserve]9個。

[Hand]4枚。

 

「俺のターン、ムシャレックスをLv.3で召喚」

 

地面を突き破って飛び出すは甲冑を纏いし恐竜、ムシャレックス。頭部の刀を掲げ、咆哮を上げる。

 

「アタックステップ! ムシャレックスでアタック! Lv.3の此奴はアタック時で緑のシンボルを追加だ!」

「ダブルシンボルかよ! オルフェスタードラゴンでブロック!」

 

ライフで受けるわけにはいかないと判断したのかブロック指示に、オルフェスターは先程と同様竪琴を奏でて熱風を起こすと、ムシャレックスはそれを真正面から受け、一瞬足止めさせられてしまうも、徐々に一歩ずつ前進し、距離を詰める。

オルフェスターはさらに強く弦を弾くと、より熱風の威力を上げて、赤い熱風はムシャレックスを覆うように包み込む。

 

「フラッシュ! ムシャレックスを恐竜同盟鎧角のドレッドロサウルスに煌臨ッ!!」

「!?」

 

宣言と共に一枚のカードをムシャレックスに重ねると、熱風に包まれたムシャレックスの影は徐々にその形を変え、頭部の刀は二本の角へ、甲冑はより頑丈な鱗へと、そして熱風を吹き払い、ムシャレックスからドレッドロサウルスへと姿を変えて現れる。

 

「煌臨時の効果で1枚ドロー、そしてバトル継続だ。やれ!」

 

一瞬力を溜める様に構えたかと思うと、次の瞬間、ムシャレックスより強靭となった4本足による脚力で一気に飛び出す。その勢いはまさに弾丸、とっさに避けようとするもあまりのスピードに回避は間に合わず、二本の角から繰り出す槍の如き一閃はオルフェスターを貫き、破壊する。

 

「これでターンエンド」

 

 

────第6ターン、烈我side。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

 

「俺のターン。ライトブレイドラを再び召喚」

 

一旦場を整えなおす様にライトブレイドラを呼び出し、そして次の一手を考えつつドレッドロサウルスを一瞥。

 

「フッ、攻めるに攻めれねぇか?」

「あぁ?」

「分かってると思うが、疲労状態のドレッドロサウルスはどんなスピリットやブレイヴの効果も受けねえ。テメェに攻略できんのか?」

「……できるさ」

「!」

 

挑発的なドレイクの言葉、だがそれに対して烈我もまた自信満々な様子で口角を上げる。

 

「見せてやるぜ! 俺のキースピリット!! こいつを前に絶対はねぇ! 鉄壁の壁だろうが無敵の相手だろうが一撃必中必殺の矢を叩き込めッ! 龍星の射手リュキオース、召喚ッ!!」

 

フィールドから吹き上げる火柱、吹き上げる火柱はまるで何かを迎えるかのように左右に展開し、そして奥から白獣に跨って駆け抜ける龍、リュキオースの姿だった。

 

「召喚時効果! 龍射撃、発揮だッ!」

 

龍射撃、その効果はBP20000以下の相手を破壊するという単純な効果。リュキオースは手に持った弓に炎を纏わせ、ドレッドロサウルスに狙いを定めるが、ドレッドロサウルスは耐性の効果に絶対の自信があるのか、真っ向から受け止めようと構えて見せる。

 

「無駄だ! 龍射撃はどんな耐性持ってようが絶対に防げねえ!! 一撃にして必中、それが龍射撃だ!」

 

烈我の言葉通り、龍射撃はあらゆる防御を一切無視する破壊の矢、それはまさに必殺。構える矢に灯る炎は出力を増すように、赤から青い炎へと切り替わり、そのまま矢を撃ち放つと、その矢は固いドレッドロサウルスの外殻を一撃で貫き、貫かれたドレッドロサウルスは爆発四散する。

 

「見たか! これが俺のキースピリットの力だ!!」

 

絶対的防御力を誇る筈のドレッドロサウルスを打ち倒し、勝ち誇ったように笑う烈我だが、ドレイクは次に静かに宣言する。

 

「相手の召喚時効果発揮後、バースト発動だ」

「!」

 

ドレイクの言葉と共にバーストが開かれ、同時に出現するルビー。

 

「恐竜同盟、刃雷のエレクトロサウルス、此奴のバースト効果は相手ネクサスとBP10000以下の相手スピリット1体を破壊し、その後召喚だ」

「なっ!?」

 

ルビーが砕けると同時に飛び出す影、その影は一瞬でリュキオースに喰らい付き。影の正体であるエレクトロサウルスが姿を見せる。

 

「リュキオース!!」

「やれ、エレクトロ!」

 

残酷なまでに無慈悲な合図に、エレクトロサウルスは喰らい付くその牙に炎を灯して、牙を獲物の身により深く突き立てると、リュキオースは絶叫を上げながらも力尽き破壊される。

 

「この程度かよ、歯応えのねぇ」

「(嘘、だろ。俺のキースピリットが……こうも、簡単に……!)」

 

これまで自分が使ってきたキースピリット、だからこそバトルにおいて絶対的な自信を置いているが、それがいとも簡単に破壊されたことは当然動揺を隠せない。

 

『(あの男、この状況を完全に狙ってやがったな)』

 

一方でまだフィールドには出ていないがバジュラには現在までのバトルの様子が正確に見えており、これまでの状況を見ながら冷静に相手を分析していた。

 

『(あの挑発的な態度、あれはドレッドロサウルスの防御力を過信しての言葉じゃねえ。完全にこっちが仕掛けて来るのを待ってやがった。そしてまんまとこっちの手を読まれてた、嫌、むしろ相手の思い通りに誘導されたというべきか)』

 

バジュラの読みは事実的中していた。読み合いに関しては紛れもなくドレイクの方が上手である事は明白だった。

 

『(てっきり似た者同士の馬鹿だと思ってたんだが、此奴は中々喰えねぇ。だが、テメェもまだこんなもんじゃねぇだろ? 俺の出番は先なんだ、だからこそそう簡単にくたばるなよ? でないと俺の怒りは晴らせねぇ!)』

 

期待するように烈我に意識を向けているものの、当然烈我には知る由もない。バトルに戻り、現状況で打つ手はなく、そのままターンエンドするしかなかった。

 

 

────第7ターン、ドレイクside

 

[Reserve]8個。

[Hand]4枚。

[Field]恐竜同盟刃雷のエレクトロサウルスLv.2(2)BP7000。

 

「俺のターン、暴双龍ディラノス召喚!」

 

地面を突き破って飛び出す双頭の竜、ディラノス。

 

「ディラノスの効果、此奴は自身が場にいるかぎり、俺の地竜全てをBP+5000する」

「場にいる限りずっと……かなり面倒だぜ」

「フン、面倒だと? むしろ分かりやすくしてやった筈だぞ。俺とお前の力の差をな」

「あぁ? 何が言いたい?」

「つまりとっとと諦めろってことだ、餓鬼」

 

高圧的な態度だが、ドレイクの言葉に対し一瞬だけ目を瞑るが、それは決して威圧されたからではなく、むしろ何かを決心するように。強くドレイクを睨む。

 

「誰が諦めるか、俺は絶対許さない! 光黄を傷つけやがって! テメェをぶっ倒して、絶対誠心誠意謝らせるからな!

「はぁ? 何言ってるかわからねぇが要するに叩き潰されたいって事かよ?」

「違ぇ、俺が勝つって言ってんだ!」

「出来ねぇ事をほざくな! アタックステップ! ディラノス、エレクトロ、やれッ!!」

 

攻撃指示に対し、二頭の恐竜はほぼ同時展開されたシールドへと突っ込む。勢いに任せたまま突進し、衝撃が烈我へと伝わる前にバリアを砕き、遅れて伝わる衝撃に勢いよく吹っ飛ばされる。

 

「がぁッ!!」

「これでターンエンド。だいぶ苦しそうだな」

「るせぇ、まだ勝負は終わっちゃいねぇ!」

「まだ強がるか、だったら精々このターンで状況を変えてみることだな」

「ッ!」

 

 

────第8ターン、烈我side。

 

[Reserve]9個。

[Hand]3枚。

[Field]ライトブレイドラLv.1(1)BP1000。

 

「……バーストセット。ターンエンドだ」

「ハッ、やっぱり威勢だけ。もう碌な手立てもないか?」

「クッ!」

 

ドレイクの言う通り、今は打つ手立てはない。今の状況を見てもう先が見えたようにドレイクは鼻で笑う。

 

 

────第9ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]9個。

[Hand]3枚。

[Field]暴双龍ディラノス(2)BP10000、恐竜同盟刃雷のエレクトロサウルスLv.2(2)BP12000。

 

「俺のターン、暴双龍ディラノスをLv.1にダウン。黄昏の暗黒銀河はLv.2にアップ。終わらせるぞ、餓鬼」

「!」

「全てを喰らいし紅蓮の凶獣、漆黒の牙で食い散らせ! 闇龍ダークティラノザウラー、Lv.2で召喚だ!」

 

ディラノス以上に地面に大きく亀裂を走らせ、そのまま地面を突き破る巨大な影、ダークティラノザウラー。眼光を輝かせて咆哮を上げ、ディラノスとエレクトロサウルスも共鳴するように咆哮する。

 

「アタックステップ開始、そしてダークティラノザウラーと黄昏の暗黒銀河の効果でそれぞれBP+3000ずつ、合わせてBP+6000。加えてディラノスは常時地竜全てにBP+5000、合計11000、俺の場の地竜全てに加算だ!!」

「BP+11000!?」

 

圧倒的な力の差、それは目に見えて分かる。だからこそその状況を作り上げることがドレイクの狙いだった。

 

「テメェはこれで瞬殺だ、単純に力でぶっ潰してやるよ!!」

 

ダークティラノザウラーに視線を向け、手を振り下ろして合図。その意図を読み取るようにダークティラノザウラーは獲物に牙を向けて前進。

 

「アタック時効果だ! ライトブレイドラを破壊!」

 

一時停止した後に左足を大きく振り上げ、その場で足踏み。地面に大きく亀裂を走らせ、その亀裂はライトブレイドラの足元まで広がった瞬間、咆哮を上げ、まるで連動するかのように亀裂より噴き出す衝撃波がライトブレイドラを吹き飛ばし、破壊する。

 

「ッ! スピリット破壊でバースト発動! ライジングフレイム、効果で破壊されたライトブレイドラをノーコストでトラッシュから再召喚!」

「構うかッ! ダークティラノザウラー、そのまま噛み砕け!」

 

バーストの効果で再びフィールドに帰還するライトブレイドラだが、ダークティラノザウラーは一度倒した獲物に対して気にも留めず、そのまま烈我へと真っ直ぐ進み続ける。

 

「(今ブロックすれば、連鎖の効果でどの道ライフが削られる。ライフで受けるしかねぇッ!)」

 

ダークティラノザウラーが持つ連鎖は緑シンボルを条件に、アタック時のバトルで相手を破壊すればライフを破壊する効果。復活したライトブレイドラでブロックしようものなら当然破壊され、ライフを削られてしまう。

今はただ耐えるしかなく、ダークティラノザウラーは尻尾をまるで斧のように鋭くそして重い一撃を叩き込みライフを粉砕。

 

「がああッ!」

「続け、エレクトロサウルスでアタック!」

「ら、ライトブレイドラでブロック!」

 

エレクトロサウルスも後に続くように吠えながら勢いよく駆け出し、ライトブレイドラは阻もうと飛び掛かるが、エレクトロサウルスは大きく口を開けて飛び込んできたライトブレイドラをそのまま一飲み、破壊してしまう。

 

「まだだッ! 暴双龍ディラノスでさらにアタック!」

「ライフで受ける……ッ!!」

 

バリアに繰り出されるディラノスの一撃、衝撃に思わず吹っ飛ばされ、そのまま仰向けに倒れる。

 

「身の程知らずの餓鬼が、力の差が痛い程分かっただろ」

「…………うぐっ! ッ!」

 

倒れる烈我からは痛みによる呻きしかなく、その様子に少しだけ気が晴れたのか苛ついた表情を落ち着かせ、口角を上げる。

 

「最後の忠告だ、喋る元気があるならとっととサレンダーしろ、そして二度と俺達については関わるな」

「…………断ったら?」

「一々言わせるな、聞くまでもない」

 

答えを代弁するかのように一斉に吠えるダークティラノザウラー達。このまま打つ手がなければ確実に止めを刺されるだけだ。だが、それでも痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がる。

 

「……答えは決まってる。当然断る! 言ったよな、光黄を傷つけたテメェを許せねぇ、逆にぶっ潰されるのはテメェだ!」

「救いようのねぇ馬鹿が! だったら望み通り遠慮なく続けてやるよ! エンドステップ、黄昏の暗黒銀河の効果で地竜を持つスピリットを三体まで回復だ!」

 

ディラノス、エレクトロ、ダークティラノザウラーの三体は再び起き上がりそれぞれ烈我を睨みつけ、三体から放たれる威圧感は並のカードバトラーなら戦意喪失しかねない程だった。

 

「さぁテメェのターンだ。ラストターン、精々好きなだけ足搔くんだな!」

 

 

────第10ターン、烈我side

 

[Reserve]13個。

 

「俺のターン」

 

ドローステップ時、デッキに手を掛けるもののカードが思わず止まる。

 

「(怒りに任せてあぁは言ったが、この状況、どうすれば覆せる)」

 

逆転の一手を必死に試行錯誤するが、その一手は到底思いつかない。つく筈もない。何故ならそれはデッキを構築した烈我自身が一番わかっていた。

 

「(駄目だ、俺のデッキの中のカードじゃどう頑張っても逆転なんか出来ねぇ。ここまで、なのか)」

『ケッ、テメェの怒りはその程度か?』

「!」

 

諦めかけた瞬間、突然聞こえるバジュラの声。姿はなく一瞬聞き違いかとも思ったが、再度まるで直接頭に語りかける様にバジュラの声が烈我に響く。

 

「お前」

『許せねぇんだろ? あいつの事』

「……あぁ」

『負けたくねぇんだろ、この勝負』

「あぁ!」

『だったら俺を信じろ、テメェの怒りを晴らす為に、勝つ為に! 俺がテメェの怒りに! 力になってやる!!!』

 

今この場においてバジュラに対する疑念の感情は一切切り捨てて、ただ勝利という言葉だけを頼りにカード引く手に力を籠め、そしてドロー。

瞬間、ドレイクにも何かが来たことを察知したように悪寒が走る。

 

「まさか、テメェ……ッ!」

 

先程の自分と同じように口角を上げて笑う烈我に対し、予感は確信へと変わる。

 

「行くぜ、お前の力を信じるぞ! バジュラ!!」

『いいぜ、準備はできてる。俺の怒りは常に極限だぁッ!!』

 

荒ぶる声、その声ははっきりとドレイクの耳にも届いた。そして手に持ったバジュラブレイズのカードを掲げ、叫ぶ。

 

「罪を背負いし怒りの竜! 憤怒の炎、烈火で地獄さえも焼き尽くせ! 爆我炎龍バジュラブレイズ、召喚ッ!!」

 

大気が震え、空は一瞬にして暁色に切り替わったかと思うと、空より降り注ぐ無数の流星群、ある一帯を除いて流星は地面を抉り、まるでステージのような土台を作り上げると、土台の上に注ぐ巨大な火球、炎より眼光を輝かせてバジュラブレイズがその姿を見せる。

 

『グルアアアアアアァァァァァッ!!!』

 

ダークティラノザウラー達の比ではない。その雄叫びだけで、地面は砕け、ドレイクやスピリット達も吹き飛ばされそうな程の強風を巻き起こす。

 

「これが……バジュラブレイズ!」

 

鋼の鎧と兜を身に纏い、そして両手に炎を纏いし龍、バジュラブレイズ。場の空気を一変させるバジュラに思わず戦慄が走り、ドレイクも一瞬言葉を失った。だが烈我にとっては圧倒的な姿を前にしても怖れる感情はない。今彼にあるのは、ドレイクに対する怒りと、勝利への執念のみ。

 

「行くぜ! バジュラ!! アタックステップだ!」

『おぉ、とっとと暴れさせろ!』

「バジュラブレイズでアタック! アタック時効果、【火力推進(ヒートアップ)】発動!」

「!!」

 

拳に灯す炎は烈火となり、より熱く燃え上がる。

 

「手札を一枚捨てる事でこのスピリットにBP+5000、さらに相手は可能なら必ずブロックだ!」

「激突に似た効果か、エレクトロサウルスでブロックだ!」

 

ドレイクの指示と同時に地面を強く蹴り飛ばし、その牙をバジュラに向けて飛び掛かって行くが、バジュラブレイズはタイミングを合わせる様に拳を振り下ろし、飛び掛かるエレクトロサウルスに炎拳での一撃。

断末魔を上げる間もなく即座に爆発四散する。

 

「ちッ! けどこれで終わりだな!」

「まだバジュラブレイズの効果は終わってないぜ」

「!」

「バトルで相手だけを破壊すればこのスピリットは回復する! もう一度、バジュラブレイズでアタックッ! 【火力推進】発動ッ!」

「ぐッ! ディラノス、ブロックだ!」

 

二双はそれぞれを大きく口を開き、バジュラに向けて火炎放射を吐きつけるが、バジュラは微動だにせず真っ向からその火炎放射を受け止める。

 

『……生温ぃ』

 

ディラノスの炎を浴びてなお、まるで余裕そうに呟くバジュラ。

 

 

「馬鹿な!」

『ハッ! 憤怒の炎はこの程度じゃねぇぞ。身をもって教えてやるぜぇッ!!!』

 

バジュラも口を開き、そのまま業火を吐き付け、業火はディラノスの炎をいとも簡単に押し返し、その業火を受け、ディラノスは跡形もなく焼却され、破壊される。

 

「バトルに勝利すれば、バジュラは回復! さらにバジュラでアタック!」

「ッ!! けどテメェの手札は尽きてる。【火力推進】は使えねぇ上、俺のライフはまだ残り2つ、今度こそ終わりだ!」

「まだだッ! まだ終わらねぇッ! このターン、バジュラブレイズが3回以上アタックした場合使える! 【超爆火力(オーバーヒート)】をな!」

「あぁ!?」

 

拳に燃え盛る炎が全身に広がると、さらに爆音を響かせながら雄叫びを上げる。

 

「このターン、三回以上アタックしてるなら、このターンの間BP+5000、さらにデッキから一枚ドローし、バジュラブレイズは回復する!」

「何、だと!?」

 

全身に広がる炎に、だがその炎にバジュラは苦しむことはなく、むしろ受け入れてるように口角を上げて大きく笑う。

 

『もう俺は止まらねぇぞッ! 俺の怒りも、あいつの執念も果てはねぇ! 勝利の先まで掴み取ってやるよ!!』

「この、化け物が!! ダークティラノザウラー!」

 

ドレイクの叫びにダークティラノザウラーも吠えながら、バジュラの前に立ち塞がると、長い尻尾を斧のように振り下ろし、バジュラは体を反らして避ける。

尻尾の一撃は地面へと叩きつけられ、激しい土煙を巻き上げ、煙の中に両者の姿が消えるが、ダークティラノザウラーは獲物を見失うことなく、眼光を輝かせ、バジュラへと喰い掛かる。だが、その牙はバジュラへ届く直前、バジュラの炎拳が顎元を捉え、そのままアッパーで勢いよく上空に突き上げ、ダークティラノウラーの体が浮いた瞬間、その尻尾を両手で掴む。

 

『仕上げだぁッ!!』

 

吠え立てながら、そのままダークティラノザウラーの巨大な体を振り回し始め、そのまま勢いよくフルスイング、ドレイクの真横を掠めて、壁へ減り込む程に叩きつけられ、ダークティラノザウラーは爆発四散を起こす。

 

「俺の、スピリットが全滅だと?」

「まだだ! バジュラブレイズでアタック! 【超爆火力】発揮で、BP+5000して、ワンドロー! さらに回復だ!」

「!」

 

そのまま正拳突きでバリアを粉砕し、ライフを破壊し、突き飛ばされるような衝撃に思わずドレイクも壁際ギリギリまで交代させられる。

 

「うぐぁっ……俺が、こんな餓鬼にぃッ!!」

「これで最後だ! バジュラでアタック!!」

 

今度は両手を合わせ、そのまま鈍器のようにバリアへと振り下ろす。

 

『さぁ俺の怒りを味わいなッ!』

「ぐぅッ! クソがぁぁぁぁッ!!!」

 

鈍器のような一撃が最後のライフを粉砕し、勝負に決着をつける。

 

 

 

 

「光黄! 光黄!!」

「う、うぅ……っ、烈我……?」

 

うっすらと目を開けると、視界に映る烈我に安堵したように表情を柔らかくさせるが、少しして意識がはっきりすると、自分が今抱き抱えられている状況を把握した途端、顔を赤くして烈我を突き飛ばす。

 

「ち、近いんだよ! この馬鹿!」

「っ! ご、ごめん。心配だったからつい!」

 

突き飛ばされながらも、特に怪我もない光黄の様子に安心を覚えながら、一方でドレイクも痛みを堪えるように手で体を押さえながらもその場からゆっくり立ち上がる。

 

「あっ! テメェ、光黄をこんな目に合わせやがって! 謝れ!!」

 

ドレイクが起きてすぐ怒鳴る烈我だが、ドレイクとは面識がない光黄にとっては話の流れがまるで見えていなかった。

 

「烈我、俺のこんな目に合わせたって一体何の話だ?」

「はぁ? お前が倒れてたからてっきりこいつとバトルした性で」

「いや、俺はそいつとバトルなんかしていない。俺がバトルしたのは……ッ!」

「光黄!」

 

思い出そうとした瞬間、頭が痛むような感覚に思わず体が傾き、咄嗟に駆け寄ろうとするが「すぐに大丈夫だ」と、烈我を制止させる。

 

「詳しくは思い出せないけど、そいつじゃない事は確かだ」

「じゃ、じゃぁこいつは!」

「……その女をぶっ倒したのはうちのボスだよ。俺は後始末に来ただけだ」

「後始末だと!?」

 

悪びれもなく吐き捨てるドレイクの言葉に嫌悪感を覚えるが、咄嗟に光黄は左手を突き出して烈我を押さえる。

 

「お前らのボスの名前は?」

「黙れ、その質問に答える義理はねぇ。それともう一つ、今度は必ずバジュラを頂く!」

「テメェ! 負けた癖に!!」

 

光黄に対する返答に我慢できなくなったのか、押さえられながらもドレイクに対し言い放つが、その言葉は逆にドレイクにも火をつけたように、眉間に皺を寄せながら苛立つように表情を険しくさせる。

 

「ほざけッ! テメェ如きに負けるなんて様は今回限りだ! 次は本気でテメェをぶっ潰す!」

 

苛立ち気味に言葉を吐き捨てながら、軽く機械のようなスイッチを押すと、最初に現れた時と同様、空間に穴が開いたかと思うと呼び止める間もなくその場へ飛び込み、飛んだ込んだ瞬間、空間の穴も消失する。

 

「あいつ! 逃げやがった!!」

「もういい、烈我。あんまり関わるな」

「でも!!」

 

釈然としない状況に苛立たしさが収まらないものの、どうにかできる訳もなく、光黄の表情を射ながら少しだけ落ち着くように息を整え、平静を保つ。

 

「何だったんだよあいつ、それに……」

 

バジュラブレイズのカードを見ながら暫く考え込む。今は光黄がいる前だからか、先程のように実体化して飛び出す様子はないが、バトルで使ったあの時のバジュラの迫力は凄まじいものだった。

 

「(怒りに任せたとは言え、とんでもねぇカードだった。何か俺。とてつもないことに巻き込まれてるんじゃ)」

「烈我? 何だそのカード?」

「えっ!? 嫌、何でもねぇよ!!」

 

烈我の様子を不思議に思ったのか、ふと彼が見つめるカードを隣からのぞき込むと、見慣れないカードが視界に映り、尋ねる光黄にカードを慌てて隠す。

 

「それより俺、用事があるから!!」

「ま、待て! 烈我!! 色々聞きたいことが!」

「ごめん! ほんとに急いでんだ!! また今度!!!」

 

その場から一目散に走り去って駆けだす烈我、何かに巻き込まれてるかもしれない。バジュラの力を実際に体験し、そう予感していたが、すぐにその予感が確信に変わる日は近い。

少年の名は、天上烈我。今日この日この時を持って、運命へと巻き込まれし少年。




新年あけましておめでとうございます。

いかがでしたでしょうか。新年最初の投稿。
暫くギガリーグのモチベが続かず、心機一転で思い切って新作書いてみました。
ギガリーグよりもこっちのストーリーで書きたいキャラがたくさんいるので困る(笑)


また書き方も変えてバトルはコアや手札も事細かに書いてましたが、そのあたりもなるべく省略しました。あと今回は出しませんでしたがグランウォーカーとかも一応登場させるつもりではいます。書き方どうしようか( ;∀;)
またご指摘いただけると幸いです。

最後に今回登場させたオリカ、バジュラブレイズの効果テキスト公開。


爆我炎龍バジュラブレイズ、コスト7(3)、赤。
系統:古竜、罪竜。
Lv.1(1)BP7000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP12000。
Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』【火力推進】
このスピリットをBP+5000、さらに手札を一枚捨てる事で相手スピリットは可能なら必ずブロックし、バトルで相手スピリット/アルティメットだけを破壊したとき、このスピリットは回復する。
Lv.3『このスピリットのアタック時』【超爆火力】
このターン、このスピリットが3回以上アタックした場合、このターンの間このスピリットをBP+5000し、デッキから一枚ドロー。その後、このスピリットは回復する。

以上がバジュラブレイズの効果になります。
これからどうぞよろしくお願いします。
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