バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第3話【色欲の雷竜】

 

人の気配もない無人の荒野、岩壁の並ぶ崖の上に不自然に聳え建てられた王宮。その王宮内にて、薄暗い通路にコツンと足音を立てながら歩く人影、帝騎の一人であるドレイクであった。

 

『ドレイク!』

「!」

 

真正面から自分を呼ぶ声、その声の主は金髪にまだ幼い容姿の少女。その少女はドレイクの名を何度も繰り返し呼びながらそのまま、ドレイクに飛びついて行く。

 

「お帰りなのじゃ! 無事帰還してくれて、妾は嬉しく思うぞ!」

 

心底嬉しそうにドレイクに抱き着き頬擦りするが、めんどくさそうに舌打ちながらその少女の襟首を掴んで自分から引き剥がす。

 

「とっとと離れろミコ。一々気安いんだよ、テメェは!」

 

鬱陶しそうに言葉を吐き捨てるが、ミコと呼ばれた少女は全く気にする様子はなく、むしろドレイクの様子に「相変わらずなようで何よりじゃ」と安心を覚えていた。

 

「ともかく妾はお主が帰還してくれて嬉しいのじゃ」

「別にお前の為じゃねぇ、ボスから帰還命令が出たから戻っただけだ」

「釣れないのぉ。妾もお主も帝騎の一人、もっと仲良くしてほしいのじゃ」

 

何気ない一言、だがそれは間違いなくミコも帝騎として、組織の幹部である以上、それ相応の実力を持つ事の証明であり、ドレイクもまたその少女が帝騎である事について否定する様子は一切なかった。

 

「帝騎同士だからこそ仲良くするなんてできねぇだろ。組織内じゃ手柄の奪い合いや権力争いなんてザラ。どいつもこいつも信用ならねぇ、ここはそういう奴らの集まりだ」

「わ、妾は手柄とかそんなのどうでもいいんじゃ! それにボスはともかく、他の幹部連中も嫌いじゃがお主は、ドレイクだけは特別なのじゃ!」

「うるせぇ、どうでもいい。それよりボスと他の帝騎達は?」

「帝騎連中もボスも奥の部屋で多分お待ちじゃ! 早速行くのじゃ!!」

 

ドレイクの腕を掴んで、奥の間へ入っていく二名。道の先には玉座と、幾つか見下ろすための高台が設けられており、玉座にまだ人影はなく、ドレイクがボスと呼ぶ人物の姿は不在のようだった。

 

「おい、ボスはいるんじゃなかったのか?」

「あ、あれ? おかしいのぅ。ちらっといる様な気がしたんじゃが」

 

ミコを一瞥するドレイクに対し、逆にミコはわざとらしく視線を外して気まずそうに答える。

 

『おいおい、作戦の失敗者がノコノコ戻ってきやがったか』

『全く嘆かわしいです。あのお方に誠心誠意を尽くす事が私達帝騎としての務めなのに』

 

頭上の高台からそれぞれ男女の声が響く。ドレイク達からは影になっていてその人物の姿は見えないが、ドレイク達に対する口振りから見て彼らも恐らくは帝騎の一員なのだろう。

 

「第一、ドレイク。お前失敗してその後の対策もなしか、少なくとも相手が分かってるなら部下に監視させるなり、その後の行動部隊を組織するぐらいできただろう」

「言葉を返すが、部隊を編成する前に帰還命令が出たんだ。それこそ、バジュラについて対策する暇もなくな」

「あぁ? それがいい訳になるとでも────」

『そこまでだよ』

「「!!」」

 

険悪した言い争いの中、奥から聞こえる声にドレイクと相手の男も直ぐに口を紡ぐ。声の先より歩み寄る白髪の男、組織の首魁であるルディアが姿を見せた途端、ドレイクとミコ、高台に位置する男女もその場で片膝をつく。

 

「やぁ皆、元気そうで何より。全員じゃないみたいだけどとりあえず集まってくれてありがとう」

 

笑いながら語るルディア。声だけ聞けば一見優しそうな青年の声だった。だが、言葉以上に何かを感じ取っているのか全員片膝をついたまま微動だにしない。

 

「さっき君達の会話が聞こえてたけど、あんまりドレイクを苛めちゃ駄目だよ、帰還命令は確かに僕がドレイクに指示したことだからね」

 

バツが悪そうにドレイクと言い争っていた男は口元を歪めるが、とても言い返せる相手でないことは重々承知していた。

 

「ルディア様、バジュラブレイズについては今後如何致しましょう?」

 

一方で女性の方は男性と違い冷静に今後の意向を見据えて質問するが、ルディアは考えるように手を突きながらも「まぁいいんじゃない」と笑顔で一言。

 

「今後バジュラについては動向の監視。捕えようにも持ち主の子にはドレイクも手古摺ったみたいだし下っ端じゃ相手にならないだろうね」

「ではどうするおつもりで?」

「バジュラについては今後、帝騎の皆に一任する。バジュラブレイズの情報については戦ったドレイクから皆に情報共有しといてね」

「ハッ!」

 

「それともう一つ」と、最後に笑っていた表情から薄ら目を開けて、ドレイクを一瞥。

 

「ドレイク、君達に一任するとは言ったけど、また失敗したら、その時は……怒るからね」

「!」

 

低く冷たい声で発せられた言葉、自分を見下ろしなら呟くルディアの言葉。まるで刺されたような殺気を感じ取りながら、額から冷や汗が流れるのを感じた。

 

「……肝に銘じておきます」

 

ドレイクと同じようにすぐ後ろでミコも片膝をつきながらも内心は気が気でならない。戦慄した空気に誰も口出しができないまま数秒の間が流れるが、静寂を破るようにルディアはまた笑顔を向けながら口を開く。

 

「さて話は変わるけど、バジュラブレイズとは別に新たな七罪竜の反応が出た」

「「!!!」」」

「まだ目覚めたばかりで恐らく誰の手にも渡っていない。確保するだけになるだろうからもう既に捕獲の人員を向かわせてる」

「では我々は?」

「まだ見つかっていない七罪竜の捜索を優先。バジュラブレイズの確保よりも優先事項はそれだからよろしくね」

 

「話は以上」と要件を切り上げると、ルディアは玉座から立ち上がって奥に消えて行き、高台の男女の二人もそれぞれその場から立ち去り、無人となった場に残るミコとドレイク。

 

「ドレイク、大丈夫か?」

「気遣うな。馴れ合いなら結構だ」

 

立ち上がり、ドレイクもまた立ち去ろうと来た方角へ振り返るが、「待って!」とドレイクの手を掴んで呼び止める。

 

「これからどうするつもりなのじゃ?」

「決まってる、俺はバジュラブレイズを捕える」

 

敗北という失態、脳裏に焼き付く記憶を思い返しながら歯を食い縛り、ミコの手を振り払う。

 

「あんな餓鬼に負けるつもりは二度とねぇ! あの餓鬼は俺の獲物だ、誰にも渡さねぇ、バジュラブレイズを捕えるのはこの俺だ!」

 

強く言い放ってその場から立ち去り、ミコはただ心配そうにその後姿を見送るしかできなかった。

 

 

***

 

 

「スピリッツエデン! これが!?」

 

一方でヘルによって異世界へ連れて来られたバジュラと烈我。見慣れない周囲の光景にただただ呆気に取られるばかりだった。

 

「こ、ここがバジュラたちの作った世界なのかよ?」

 

バジュラ達を始めとする七罪竜が作り上げたとされる世界。改めてバジュラという存在について再認識させられるが、当のバジュラ本人はまるで興味がないように、誇る訳でもなく、その場を眺めるだけ。

 

「どうしたんだよバジュラ、お前がこの世界の創造主だろ? もう少し自慢げにしてもいいんじゃねぇか」

『作った世界……俺は確かにお前らが生まれる前からこの世界に住んではいる。けどなぁ、ヘルが言うようなこの世界を作り出したって記憶が俺にはまるでねぇ』

「記憶がないって、そんなこと忘れるもんなのか?」

『テメェらが生まれる前つったろ、人類その物が誕生する前から。十や百の世界じゃねぇ、何万何億も前の話だ。テメェら人間にとっちゃ壮大かもしれねぇがこっちにとってはどうでもいい。そんな記憶如きが今更残ってる訳ねぇだろ』

 

バジュラとの会話に幾つか疑問が浮かぶ、咄嗟にヘルに顔を見て烈我の様子を察するように、感じる疑問について代弁する。

 

「バジュラはこの調子だけど、確かにこの世界自体は何億年も前から存在してる。既にこの世界に住んでる人達もいるが、あくまで先住民はバジュラ達。経緯は知らないが、基本的に地球からここに移り住んできた人達にすぎない」

「……移り住んだってさっきのあの穴みたいな奴?」

「あぁ。あれは一種のワープゲートさ、地球とスピリッツエデンを繋ぐための。とはいえ、それもあくまでここ数年でできた技術。スピリッツエデンと地球を繋ぐ空間には強大なエネルギーが必要だったり、色々条件が必要だったけど。バジュラ達には難なく空間の出入りができる。ワープゲートの装置もバジュラの協力があってようやく作成できた」

「その装置ってドレイク達も?」

「あぁ、組織の連中にもこの技術は復旧されてる。バトルフィールドの技術もワープゲートを作る際の副産物として出来た技術だ」

 

ヘルの話をただ聞き入っている烈我だったが、あまりにスケールが大きすぎるのか話の内容に呆然とするしかなかった。

 

「まぁいきなりこんな話をされても困るよねぇ。ただ君はバジュラに選ばれた。故にもう巻き込まれてしまったんだ。だからこそ君にこの状況を理解してほしかった」

 

バジュラを狙う組織の事、そしてバジュラ達が生み出したとするこの世界についてまだ整理がつかないもののそれでも、今自分が置かれてる状況については最低限理解出来た。

 

「さて念の為確認するよ、これから先、君は様々な騒動に巻き込まれる。それでもバジュラと一緒に居続けるかい? 今しか取り返しはつかないよ」

『ケッ、俺が認めた人間なんだ。そんな事させるか!』

「バジュラ、今は黙っててくれないか。大変な目になるのはお前以上にこの子なんだから」

 

忠告するようなヘルの言葉、確かに彼の言う通り今しかもう取り返しはつかないだろう。だが、それでも烈我の答えは決まっている。

 

「戦いますよ、俺。組織のボスに一発ぶっ飛ばしてやらねぇと気がすまねぇ。それにバジュラが俺を認めてくれてるなら案外悪い気はしないですしね」

『ハッ、言うじゃねぇか。なら精々お互いに利用し利用されの関係でやっていこうじゃねぇか』

「そこは仲間とか普通の言い方出来ねぇのかよ?」

『無理だな、そういう性分だ』

「はは、けど逆にお前のそういう所が信用できるな」

 

バジュラは遠慮なく烈我の肩に乗りながら、二人の様子にヘルも少しだけおかしそうに笑う。

 

「さて話は纏まったみたいだね。では君を一旦元の世界に送り返さないと、また何かあったらいつでもおじさんを頼ってね」

 

懐から先程ワープゲートを発生させた装置と、もう一つバトルフィールドを作り出した時のキューブを烈我に手渡す。

 

「一応この世界と地球を出入りする際はその装置を使ってくれ、それとそのキューブはバトルフィールドを作り出せる。バジュラ達のカードはなるべく人目に触れさせたくないからね、やむを得ない場合にそれを使ってくれ」

「色々ありがとうございます。でも何で俺にここまでしてくれるんですか?」

「…………まあ強いて言うなら、大人しての責任感、かな」

「?」

 

ヘルに対して疑問が残るが、本人は「また機会があれば話す」とはぐらかされ、それ以上については聞けなかった。

 

「それと気を付けてね。罪狩猟団の基地はこの世界のどこかにある。一応奴らの動向はこっちでもばれないように探ってる。おじさんもできる限り君に力を貸すよ」

「はい、ありがとうございます」

 

「じゃあね」と一言。ワープ装置使い、一旦ヘルと別れ烈我達は元の世界へと戻って行き、開いた空間の中へ姿を消す。

 

 

***

 

 

「うーん、ここって……!」

 

次に視界を開いた瞬間、目の前にはいつもの光景、自分の自宅が映り、元の世界に無事帰還できたことを確信する。

 

「戻ってきたんだ」

『あぁそうだな。まっ、今日は疲れた、帰ってとっとと寝ようぜ』

「おいおい、お前勝手に家に入んなよ! お前の姿見たらびっくりするに決まってんだから!」

『一人暮らしじゃねぇのかよお前』

「そんな事一言も言ってないし、第一お前の世話する事になるなんて思ってもなかった。というか、お前何食うの?」

『人間が食う物なら全部食える』

「肉食恐竜みたいな見た目しといて、雑食かよ」

『黙れ、食に選り好みする劣等種と比べるな!』

「はいはい、まぁとにかく家族に見つからないように────」

 

言いかけた瞬間、ガチャッと玄関の扉が開いたかと思うと、そこから顔を出すの金髪のロングの髪型が特徴的な一人の女性。

 

「さっきから外で何を喋ってるの? 誰か来てるの?」

「ね、姉ちゃん!?」

 

冷や汗を覚えながら姉ちゃんと呼ぶ人物、その人物はふと烈我の隣にいるバジュラの姿に気付くと。

 

「あんた、それって」

「い、嫌、姉ちゃん。こここれには事情が」

 

 

***

 

 

『アッハハハハハ! こんなに労わってくれるとは、気前のいい人間だな』

「うんうん、バジュラ君、一杯食べて大きくなってね」

『これは仮の姿だ! ほんとの俺はとっくに巨大だ!』

「へぇー、ますます面白いね。ぜひ見てみたいね」

『他に人がいねぇ場所ならいくらでも見せてやるよ』

 

先程までの緊迫した空気から一転、姉はバジュラを招き入れ、何故かあっという間に打ち解けていた。

 

「ね、姉ちゃん。あの驚いたり、怒ったりしねぇの?」

 

恐る恐る烈我の質問に、「何で?」と不思議そうに逆に尋ねる。

 

「別に怒ってないよ。まぁ驚きはしたけどね」

「いや普通こんな未知の生命体見たら絶叫レベルで驚くだろ。黙って家に上げようとしてた俺が言うのもなんだけど、何で呑気に家上げて一緒に飯が食えるんだよ」

「私はUMAとかツチノコとか宇宙人とか信じてるからさ、バジュラ君みたいに、喋る生命体がいたって、不思議には思わんよ」

「いやいやそういうレベルじゃないだろ!! 寛容すぎんだろ!!!」

 

自分の姉ながら若干心配になる程、突っ込む烈我だがバジュラは面白そうに高笑い。

 

『ハハッハ、ほんとに気に入ったぜ! 名前を教えてくれ、覚えておきたい!』

「私? 天上るみか。まぁこれから一緒に暮らすなら是非ともよろしくね」

『おぉ、世話になるぜ』

 

ぶっきら棒な性格の姉と無礼講なバジュラと完全に意気投合し、バジュラを見られた時の心配が消えたとはいえ、完全にこれからの行く末に不安を覚えていた。

 

「あっ、それよりだいぶ前に光黄ちゃんが来てたよ。アンタの帰りが遅いから心配してくれてたみたい」

「光黄が! やべ、すぐに謝りに行かないと!!」

「来たのはだいぶ前だっての。もう遅いし、今更行っても向こうに迷惑だから明日にしな!」

「えー、でもよぉ!!」

「ともかく今日は暗いからまた明日。さぁ、アンタはとにかくこの寛容な姉に飲み物の一つでも注ぐんだ!」

「寛容とか自分で言ってりゃ世話ねぇよ。このダメ姉」

 

文句を言いつつ、先程の姉の言い分も最もで、とにかく光黄と会って話をするにも明日の方が良いだろう、言われるがままその日は姉とバジュラにこき使われる烈我だった。

 

 

***

 

 

一方で日も落ち始め、薄暗い帰路を歩く少女、光黄の姿。烈我と同じく、色々あったのは彼女も同じであり、疲れたように溜息を吐き捨てながら、自宅に向かう。

 

「(烈我の奴、隠し事なんて今まで無かった癖に)」

 

最後に烈我と会った際、何かを隠そうとする烈我にいまだ不信感を拭えていなかった。明日また詳しいことを聞かなければと思う彼女だが、そこへ。

 

『そこの可愛いお嬢さん! 少しお時間いいですか?』

「!」

 

突然の声、咄嗟に周囲を見渡すが辺りに人影はない。謎の声に不気味さを感じ、背筋が震えるのを感じながら慌ててその場を走り去ろうとするが、ふと一枚のカードが目の前に舞い落ちる。

 

「バトスピカード?」

 

両手でカードを受け止め、そのカードには「雷光天龍ライトボルディグス」と書かれた見覚えのないカードだった。

 

「何だこのカード……ッ!!」

 

初めて見るカードを不思議に思いながら手に取った瞬間、突然輝き出したかと思うと、そのカードは翼竜のような生物の姿へと変化する。

 

『初めまして、可憐で素敵なお嬢様。私、色欲を司りしライトボルディグスと申します。名前は省略して、ライトとお呼びください、どうぞお見知りおきを!』

「!!?」

 

その生物の姿に驚いたように声を上げて、咄嗟に手を放してライトから慌てて距離を置く。

 

「な、何だお前!? 生き物、なのか!?」

『おっと、驚かせて申し訳ありません。ですが、どうか落ち着いて話を聞いてくださいませんか?』

「は、話って?」

 

「コホン」と咳払いしながらどこからか薔薇の花束を取り出すと、それを光黄に差し出す。

 

「は?」

『まずはご挨拶。美しきあなたにこれを』

「こ、こんなの受け取れるか! ふざけてるのか!!」

『滅相もない。私はあなたとお付き合いを……ではなく、お仕えしたいが為に参りました!』

 

若干本音が見え隠れするライトと名乗る竜に、何となく警戒心が薄れるがそれでも、得体のしれないライトに対する不信感は拭えない。

 

「お仕えしたいって、何でまた」

『失礼ながら、お嬢様が私のパートナーとして相応しいと感じ選ばせていただきました』

「俺を選んだ? それって!」

 

『見つけたぞ!!』

「『!!』」

 

また新たな声、瞬間、突如空間の扉が開いたかと思うと、そこから鎧姿に身を包む男の姿。

 

「見つけたぞ! 七罪竜の一体! 大人しく捕まってもらうぞ!」

『うげぇ、男はむさくて嫌いです。人違い、いえ、龍違いではないんですか?』

「黙れ、俺は罪狩猟団の捕獲部隊隊長のプロト! ルディア様の命により、貴様を捕える!」

『人の都合も聞かず一方的。とても紳士の態度とは思えないですよ』

「関係あるか! お前を必ず捕える、無理やりにでもな!!」

『やれやれ、お嬢様このような状況に巻き込んで申し訳ありません。ですがどうか、今しばし、手を貸していただけないでしょうか?』

「!」

 

ライトの声に対し驚きつつ、先程プロトと名乗った男が現れた時、あの空間が開くような登場に、脳裏に蘇るのはルディアと戦った時の記憶。

 

「何だ、邪魔する気か? 小娘如き引っ込んでろ!」

「何?」

 

馬鹿にするようなプロトと名乗る男の言葉、それに火が付いたように前に出るとデッキを構える。

 

「お前らみたいな連中には借りがある! さっきの無礼な言葉も含めて、借りを返させてもらうぞ!」

『やる気になってくれましたか! では早速私をデッキに!』

「不要だ、これは俺の問題。自分の実力だけでこいつを叩き伏せる!」

『そ、そんな! ですが!!』

 

光黄の答えは頑として変わらないが、プロトは鼻で笑いながら光黄を見下し、七罪竜すら使用しないただのカードバトラー相手に負ける訳がないと、自信ではなく確信を持っていた。

 

「ハッ、小娘如きが偉そうに。俺を舐めるとどうなるか! 泣いたって許さねぇぞ!」

 

プロトもデッキを構えると、キューブを取り出し、それを足元に投げる。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

舞台をバトルフィールドへ移し、ライトは光黄の傍に寄り添って戦況を見守り、バトルは光黄の先行で幕を開ける。

 

 

────第1ターン、光黄side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、創界神ラーを配置、配置時の効果で神託!」

 

光黄の後方に配置されるのは仮面を身に着け、エジプトの神の名を持つラー。配置されると同時に神託により、「ガトーブレパス」、「シンフォニックバースト」、「ルナアークカグヤ」の3枚がトラッシュに送られる。

 

「ラーの神託に条件を満たすカードは2枚、コア2個をラーの上に置く。ターンエンドだ」

 

 

────第2ターン、プロトside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「メインステップ、スプレッドトータスを召喚!」

 

白のダイヤモンドが砕け、飛び出したるは硬い機械仕掛けの甲羅と砲門を携えたスピリット、スプレットトータス。

 

「召喚時効果でボイドからコア1個をこのスピリットに置く。そしてそのコアを使い、ラクーンガードを召喚! アタックステップだ、ラクーンガードとスプレットトータスでそれぞれアタック!」

 

早速の攻撃指示、ラクーンガードは一気に飛び出し首元の刃を展開し、刃を回転させながら飛び掛かり、スプレットトータスはその場で砲門を構え、照準を光黄へと向けて即座に発射。ラクーンガードの突進と砲撃による一撃がそれぞれバリアへ直撃、ライフを破壊される。

 

「うぐっ!!」

「ターンエンドだ」

 

一気に二つライフが砕ける衝撃、痛みに思わず片膝をつき、ライトは心配そうに慌てて光黄に寄り添う。

 

『お、お嬢様大丈夫でございますか?』

「ぐっ、大丈夫だ。これぐらい構うな」

 

すぐに立ち上がる光黄だが今ライトは心配する気持ちを押さえられない、光黄を心配しつつも対戦相手であるプロトに対し、強く睨みつける。

 

『全く貴様! 女性に対してこんな目に合わせるとは紳士として恥ずかしくないのか!』

「何言ってやがる? 勝負を挑んだのはそこの小娘自身だ。だが見た所、ここでのバトルは初めてらしいなぁ」

「……嫌、この場所でのバトルは二度目だ」

「何?」

「もうこの痛みには慣れた。俺に対する心配や気遣いならもう無用だ」

「潔いな。ならば次はお前のターンだ」

「言われるまでもない!」

 

 

────第3ターン、光黄side。

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

 

「ガトーブレパス2体をそれぞれLv.2で召喚! さらにバーストセット! アタックだ、ガトーブレパス!」

「!」

 

鳴き声を上げながらフィールドを駆け出し、ブロッカーのいないプロトは当然「ライフで受ける」と宣言し、ガトーブレパスは自身の角をバリアに突き刺し、破壊する。

 

「フッ、この程度の攻撃、どうという事はない!」

「そうか、ならこれならどうだ? 【聖命】発揮!」

「ムッ!」

 

ガトーブレパスに光が集うとその光に連動するように、消えたライフに再び光が灯り始める。

 

「ガトーブレパスが相手のライフを削ったとき、俺のライフを回復!」

「ぐっ、小癪な!!」

「まだ行くぞ、二体目のガトーブレパスでアタック!」

「ライフで受ける!」

 

二体目のガトーブレパスも同様に角を叩きつけてライフを破壊し、【聖命】の効果が再び発揮されると、先程と同じ要領で光黄のライフに光が灯る。

 

『【聖命】でライフは再び5つに元通り! 流石です!! お嬢様』

「えぇい! ライフを回復した所でいい気になるな!! 少々厄介だが、いくらでも手の打ち様はある!」

 

 

────第4ターン、プロトside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

[Field]スプレッドトータスLv.1(1)、ラクーンガードLv.1(1)。

 

「出でよ! 機巧武者シラヌイ! ソウルコアを乗せ、Lv.2で召喚だッ!」

 

一際巨大なダイヤモンド、その周囲に吹雪が吹き荒れ始めるとエネルギーを収束するように取込み、ダイヤモンドが砕けると炎をも通さぬ鋼の装甲と大きな日本刀を携えた絡繰り武者、シラヌイが出現する。

 

「機巧武者シラヌイでアタック!」

「ライフだ!」

 

大太刀を抜き取り、展開されたライフを一太刀一閃。バリアを両断し、回復したライフをすぐさま削り取る。

 

「ぐっ! ライフ減少時でバースト発動ッ!!」

「!」

「妖雷スパーク、その効果でスピリット2体をBP-5000、BP0になったスピリット破壊だ!」

 

バーストから放たれる雷、その雷はスプレットトータスとラクーンガードの二体へ直撃し、ラクーンガードはBP0となり破壊される。

 

「コストを支払いフラッシュ効果。ガトーブレパス一体をBP+2000し、デッキから1枚ドローし、手札を増やす!」

「おのれ、またしても小細工を! だが生憎スプレットトータスのBPはまだ残ってる! そのままスプレットトータスでアタック!」

「ライフで受ける!」

 

脱力し項垂れながらもまだその身は健在。再び砲門を構え、バリアに向けて砲撃し、さらにライフを破壊する。

 

「ッ!!」

「ターンエンド」

 

 

────第5ターン、光黄side。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

 

「俺のターン、ガトーブレパス2体をLv.3にアップ。さらにラーの【神技】を発揮!」

 

ラーが手を翳すと同時に新たにオープンされる3枚のカード、「妖雷スパーク」、「イエローリカバー」、「賢獣スピンクス」。

 

「コスト合計8まで「想獣」を持つスピリットカードを好きなだけ手札に加える。よってスピンクスを手札に加え、そのまま此奴を召喚だ」

 

今度は下半身は馬のような体に上半身はハーピーで構成された幻獣のスピリット、スピンクス。出現と同時に眼光を輝かせ、その効果を発揮する。

 

「ラーに神託。そしてスピンクスの召喚時効果、トラッシュにあるシンフォニックバーストを手札に戻す」

「チッ、防御マジックを回収されたか!」

 

手札を揃え、守りは万全。だが一方で攻めるとなる、相手のシラヌイを前に攻めるに攻められない状況だった。

 

「どうした、来ないのか? まぁこちらにはシラヌイがいる。ソウルコアの力があれば疲労状態でブロックし続けられる。生半可な攻撃は一切通しはしないぞ!」

「……ターンエンドだ」

 

 

────第6ターン、プロトside。

 

[Reserve]9個。

[Hand]4枚。

[Field]機巧武者シラヌイLv.2(2)BP8000、スプレットトータスLv.2(2)BP6000。

 

「如何に守りを固めても攻めなければ勝利はない! 守りに関してもこちらは抜かりなく、攻めに関してはお前よりも断然上! スプレットトータスをLv.3にアップ、アタックステップ! シラヌイ、アタックだ!」

「スピンクスでブロック!」

 

ブロック指示にスピンクスは立ち塞がってシラヌイに駆け出し、シラヌイは腰元の大太刀を握りしめ、即座に切り捨てようとするが、スピンクスは翼を広げて飛び上がり、紙一重で太刀による一閃を回避。

 

「フラッシュ! マジック、フルーツチェンジ!」

「何ッ!!?」

「効果によりバトルしている互いのBPを入れ替える! 反撃だ! スピンクス!」

 

バトル中のスピンクスのBPは4000、対するシラヌイはBP8000。そのBPがそっくりそのまま入れ替わると、スピンクスは急降下しシラヌイに強襲。太刀を構えて受けきろうとするも、勢いに押され、思わず太刀を弾き飛ばされ、無防備となったシラヌイに対し、スピンクスは翼を大きく広げ、自身の羽を閃光の如くシラヌイへ撃ち放ち、無数の羽に体を貫かれ、爆発四散する。

 

「ぐっ! またしても小細工をッ! ならばスプレットトータスでアタックだッ!!」

 

プロトの指示にスプレットトータスは何かを察しているのか、先程までと違いその場で砲門を構えるのではなく、四足歩行でそのまま光黄へと直接駆け出していく。

 

「シラヌイを倒したぐらいでいい気になるなよ! フラッシュタイミング!」

「!」

 

シラヌイを失ってもまだプロトには奥の手がある。それが自身の切り札であるように高らかに叫ぶ。

 

「悠久不滅となりし白洋の獣! 神聖機獣ライトニングケリュネイヤーに煌臨ッ!!」

 

スプレットトータスの体は全身から蒸気を噴き上げ、煙にその身が包まれたかと思うと、白い煙にうっすらと映る影は徐々に膨れ上がり、頭身の砲台は巨大な角へと変貌し、煙を吹き飛ばし、スプレットトータスからライトニングケリュネイヤーへと変貌したその姿を現す。

 

「見たか、これが俺のキースピリットだ! さぁこのアタックはどうする!」

「ガトーブレパスでブロックだ!」

「ならばフラッシュ! ライニングケリュネイヤーの効果! このスピリットはお互いのアタックステップ時、ターンに1度回復だ!」

 

ガトーブレパスとライトニングケリュネイヤーは互いに真っ向から突っ込み、互いの角を打ち付け合うが、体格差は圧倒的、自身の角を絡ませ、ガトーブレパスを軽々と持ち上げると、そのまま空へと突き上げ、浮かび上がったガトーブレパスを今度は角を振り下ろし、地面へと叩き落して破壊する。

 

「ライトニングケリュネイヤーで再アタック!」

「ライフだ!」

 

角を突き刺してバリアを破壊し、衝撃にライフが砕かれ、残るライフは2。着々と追い詰めていることに余裕を持つように笑みを浮かべながら、「ターンエンド」とコール。

 

 

────第7ターン、光黄side。

 

[Reserve]8個。

[Field]賢獣スピンクスLv.1(1)BP4000、ガトーブレパスLv.3(3)BP3000。

 

『お嬢様、まだまだこれからです! バンバン反撃と致しましょうッ!』

 

隣で精一杯エールを送るライトだが、光黄は全く表情を崩すことなく次のカードをドロー。そして引いたカードを見た瞬間、光黄の目付きが変わる。

 

[Hand]6枚。

 

「まずはバーストセット。ガトーブレパスをLv.1にダウンし、そして手札にあるこのスピリットの効果、召喚する場合、フィールドだけでなくトラッシュのシンボルも軽減シンボルとして扱う」

「!?」

 

特殊な召喚方法、これから呼び出すそのスピリットのカードの名を彼女は叫ぶ。

 

「煌き羽ばたく堕天の龍よ! 地に堕ちしその身を再び天へと羽ばたき降臨せよッ! 堕天神龍ヴィーナルシファー、Lv.3で召喚ッ!!」

 

空を覆う黒雲、雷鳴が響き渡る中、唯一黒雲から差し込む光、その光よりゆっくり地へと舞い降りる龍の姿、龍の降臨を祝福するかのように降り注ぐ雷と雷鳴。そして龍、否、ヴィーナルシファーは鳴り止まぬ雷鳴を掻き消すほど強大な咆哮を上げ、黒雲をも吹き飛ばす。

 

『これがお嬢様のキースピリットなのですね。お嬢様と同じく美しいスピリットでございます!』

「バトル中だ、世辞は不要」

 

ライトに構わず、「続けるぞ!」とさらにもう一枚のカードを構える。

 

「来たれッ! 奇跡を齎す魔神! 踊れ、勝利の舞を! 異魔神ブレイヴ、魔神姫、召喚ッ!!」

 

呼び出されたのは半実体の体に着物を纏った様な見た目、魔神姫の姿である。

 

「魔神姫、スピンクスとヴィーナルシファーに合体!」

 

ヴィーナルシファーには左腕を、スピンクスには右腕をそれぞれ翳すと、二体の体に波動を撃ち込み、自分自身へリンクさせると、半透明だった魔神姫の体は完全に実体化する。

 

「来るか!」

「あぁ、だがその前にマジック! セカンドサイト、不足コスト確保でガトーブレパスは消滅」

 

セカンドサイトの効果はデッキの上から3枚オープンし、その順番を好きなように入れ替える効果。3枚のカードを見ながら、その順番を入れ替え、再びデッキの上に戻す。

 

「また小細工をするつもりか!」

「小細工かどうか、今思い知らせるまでだ! アタックステップ、ヴィーナルシファーでアタック!」

 

ヴィーナルシファーは吠えながら、プロトへと迫っていき、攻撃と同時にその身は黄色のオーラを纏い始める。

 

「ヴィーナルシファーの合体アタック時の効果発揮! 手札のスピリットカードを破棄する事でデッキの上からマジックカードが出るまで破棄、マジックカードが破棄された場合、そのフラッシュ効果を使用できる!」

「マジックカード、まさか貴様その為に……!」

 

セカンドサイトの効果でデッキの順番は把握している、手札からクダギツネを破棄し、デッキの一番上から破棄されたカードはマジックカードである「神閃月下」、その効果が直ちに発揮される。

 

「神閃月下発動!」

 

起動されるマジック、カードから放たれる雷撃にライトニングケリュネイヤーに直撃し、電流にビリビリと震えながらその場で固まってしまう。

 

「ら、ライトニングケリュネイヤーのフラッシュ効果! 回復だ!!」

「無駄だ! 神閃月下の効果はこのターン、黄色以外のスピリット、アルティメットはアタックとブロックが出来ない!」

「何だと!!?」

「さらに魔神姫の追撃! アタックしたスピリットと同じ色のマジックカードをトラッシュから手札に戻す。俺が指定するのは、イエローリカバー!」

 

魔神姫が手を翳すと、その手にはトラッシュに送られた筈のイエローリカバーのカードが浮かび出したと思うと、そのまま転送されるように光黄の手札へと回収される。

 

『さすがお嬢様! 完璧なプレイング! 勝利はもらいましたね』

「おい、フラグを立てるな」

 

ライトの言葉に呆れる様に突っ込む光黄、そして案の定、ライトの言葉の性か知らずか、「フラシュタイミング!」と叫ぶプロト。

 

「マジック! アルテミックシールド!! これでお前のアタックステップを終わらせる!!」

 

ヴィーナルシファーのアタック自体は止める術はなく、展開されたライフに両腕の爪を振り下ろし、バリアを引き裂きライフを破壊する。

だが残りライフはまだ一つ残っており、先程の自分の発言に冷や汗を覚えながら、ゆっくり後ろを振り返るライトだが、光黄は目を瞑り深くため息を零す。

 

『お、お嬢様もしかして私の性でございますでしょうか?』

「かもな」

 

さらっと光黄の一言にかなりショックを受け、肩落とすライト。だが一方で光黄はあくまに冷静にターンを終え、次の相手の攻撃に備える。

 

 

────第8ターン、プロトside。

 

[Reserve]10個。

[Hand]3枚。

[Field]ライトニングケリュネイヤーLv.2(2)BP7000。

 

「フン、まさかここまでやるとはな。だが所詮は小娘、この程度恐れるに足らず!」

「何だと?」

 

プロトの見下したような言葉に、声を低く言い放ち、その声に怒りが込められていることにライトはすぐさま感じ取っていた。

 

「分からないか、お前如きじゃ勝てないと言っている。このターンで一気に決めてやる! メインステップでライトニングケリュネイヤーをLv.3にアップし、そのままアタックだ!」

 

眼光を輝かせながら真っ直ぐ駆け出すライトニングケリュネイヤー。

 

「フラッシュでマジック!イエローリカバー、不足コストはヴィーナルシファーから確保し、Lv.2にダウン、ヴィーナルシファーを回復!」

「ならばこちらもフラッシュ効果でライトニングケリュネイヤーは回復」

「ヴィーナルシファーでブロック!」

 

さらに速度を上げて突っ込むライトニングケリュネイヤーにヴィーナルシファーが立ち塞がり、巨大な角を両手で掴み、真っ向から受け止める。

 

「フッ! やはりそう来るか。お前の狙いは分かってる、伏せているバーストはスピンクスの効果で戻したシンフォニックバースト。それを発動させてアタックステップを終わらせるつもりだろうが、そうはさせんぞ! フラッシュ、バーストブレイクだ! 効果により相手のバーストを破棄!! 不足コスト確保でライトニングケリュネイヤーをLv.2にダウン!」

『ま、不味い!!』

 

バーストブレイクにより吹き飛ばされるバースト、あたふたと慌てるライトと勝利を確信するプロト、だが唯一光黄だけは表情を崩さず、静かに口元を緩ませる。

 

「うん?」

『えっ!?』

 

吹き飛ばれたバースト、そのカードはシンフォニックバーストではなく、妖雷スパークのカード。

 

「生憎だったな、俺のバーストはシンフォニックバーストじゃない! ヴィーナルシファー、返り討ちにしろ!!」

 

ライトニングケリュネイヤーに対し、角を握りしめたまま翼を羽ばたかせ、巨大なその体を持ち上げて見せたかと思うと、高度を上昇させ、天に上り切った所でその手を放すと、真っ逆様に地面へと落ちるライトニングケリュネイヤー。

そして地面へ落ちる標的を見下ろしながら、両腕を掲げると空に再び黒雲が立ち込め、大きく吠えると標的に落雷を撃ち放ち、何度も落雷の直撃を浴びながら、墜落し、地面へと激突したライトニングケリュネイヤーは大爆発を起こして破壊される。

 

「ぐぅッ!! 何度も何度も小賢しい手を!! だが、ライトニングケリュネイヤーの破壊は狙い通りだ、ライトケリュネイヤーは相手によってフィールドを離れる場合、手札の系統「機獣」を持つスピリットを2コスト支払って召喚だ!」

「!」

「王者の威光知らしめし、孤高の機獣! 黒皇機獣ダークネスグリフォン、召喚だッ!!」

 

ヴィーナルシファーが起こした黒雲から現れる巨大なダイヤモンド、そのダイヤモンドに向けて落雷を落ちると、衝撃にダイヤモンドは砕け、眼光を輝かせながら姿を見せし黒皇、ダークネスグリフォン。

 

「召喚時効果により、お前のスピリット2体を手札に戻す。ヴィーナルシファーとスピンクスの二体を手札だ!」

 

氷のブレスを吐き付け、ヴィーナルシファーとスピンクスの二体は踏ん張ろうと抵抗するも、耐えきれずに吹き飛ばされ、光黄の手札へと戻される。

 

「これでお前にブロッカーはない! ダークネスグリフォンでアタックだ!」

「フラッシュ! シンフォニックバースト!!」

 

継続中のバトルが終了した場合、自分のライフが2以下ならアタックステップを強制終了させるマジック。ダークネスグリフォンは翼に備えたガトリング砲をバリアに向けて乱射し、銃撃にライフを破壊されながらも、バトルが終了すると共に虹色の音符のようなものがフィールドに飛び出し始める。

 

「これで、お前のアタックステップは終了だ」

「……まぁいい、お前ライフは残り一つ。どの道次で決める、ターンエンドだ」

 

 

────第9ターン、光黄side。

 

[Reserve]14個。

[Hand]4枚。

[Field]魔神姫Lv.1(0)BP4000。

 

「貴様、確か俺にこう言ったな? 所詮小娘、お前如きじゃ勝てないと」

「あぁ、それが何だ?」

「俺はお前みたいに他人を見下す奴が嫌いだ、俺は誰よりも強くなってそれを認めさせる、その事を目標に生きてきた。だからこそ、このターン、お前は俺の全力で倒す!!」

「笑わせる、今更お前に何ができる!」

「生憎だが、もう勝利の布石なら仕込み済みだ」

「何?」

 

引っ掛かるような光黄の言葉、その瞬間、脳裏に浮かび上がる記憶。

 

「(奴は前のターン、自分のデッキの上を入れ替えてた。一枚は神閃月下、じゃあ次のカードは?)」

 

気づいた様子のプロトにもう言葉は不要だった。今度は光黄も自分の勝ちを確信したように笑って見せる。

 

「再び黄金の翼を広げて舞い踊れ、ヴィーナルシファーをLv.3で召喚! さらにもう一体、翼神王グリフィオールを召喚!」

「!!」

「召喚時効果発揮、トラッシュにある黄色のマジックカード全てを俺の手札に戻す!」

 

トラッシュにあるマジックカードは全部で6枚。不足していた手札が一気に増え、慌てながらも即座にバーストを発動させる。

 

「ぐっ! 相手の召喚時効果発揮後でバースト! バースト効果により、グリフィオールをデッキの1番下に送る!」

 

開かれるバーストから吹き荒れる猛吹雪、その吹雪にグリフィオールは吹き飛ばされ、デッキのボトムに送られる。

 

「さらにバースト効果発揮後、このスピリットを召喚する! ネメアーレオSVL-00、Lv.3だ!!」

 

獅子の如く吠えフィールドに君臨する百獣の王、ネメアーレオ。見た目のみならず、そのBP20000。獅子の名を持つに相応しい威圧感を放つが、それに怯む光黄ではない。

 

「無駄だ、俺のやる事は変わらない! マジック、魂のリフレインを発動!」

「今度は何をする気だ!!」

「マジックの効果により、デッキから1枚ドロー。そして手札のカード1枚をデッキの上に戻す」

「デッキの上、まさかまた……!!」

「続けるぞ、魔神姫をヴィーナルシファーに右合体(ライトブレイヴ)。そしてアタックだ!!」

 

前のターンとは合体位置を入れ替えてのアタック。そのアタック時効果により、手札のスピンクスを破棄すると、再びヴィーナルシファーはオーラを纏い、その効果にデッキの上を破棄、トップに捲られたカードはマジックによって仕込まれた「神閃月下」のカード。

 

「マジックの効果により、お前は黄色以外のスピリットとアルティメットじゃブロックはできない!」

 

再びマジックによって放たれる雷撃、三体のスピリット達へと直撃し、直撃を受けた三体は電流に体が痺れ行動する事ができない。

 

「ぐっ! またしても!!」

「まだだ、フラッシュタイミング、妖雷スパークを発動! 効果でヴィーナルシファーをBP+2000し1枚ドロー。さらに魔神姫の追撃ッ!!」

「!」

 

魔神姫は右腕をダークネスグリフォンに構えて、再び雷撃をダークネスグリフォーンへと撃ち込むと、直撃を受けその場から消滅してしまう。

 

「何ぃッ!?」

「魔神姫の追撃の効果は、合体アタック時にマジックカードを使用したとき、相手スピリットのコア2個をリザーブに置く。コア2個しかないダークネスグリフォンは消滅だ。さぁ、まだまだ行くぞ! フラッシュでバーストスナップ、不足コストはヴィーナルシファーから確保し、効果発揮、このターン、ライトニングケリュネイヤーはアタックとブロックができず、効果も全て失う!」

「効果を全て!? それじゃつまり!!」

「魔神姫の追撃!!」

 

再び雷撃を撃ち放ち、今度はライトニングケリュネイヤーへ直撃するとコアを全て失い、バーストスナップによって効果も失っている為、自身の効果は発揮されず、為す術なく消滅。

 

「さらにフラッシュだ! フルーツチェンジ!」

 

効果自体はヴィーナルシファーとバトルしているスピリットがいない為、不発に終わるが、魔神姫は再び追撃の効果によって、電撃をネメアーレオに打ち込んでコアを取り除き、Lvを強制的に下げられた事で脱力したように項垂れる。

 

「フラッシュ! 妖雷スパーク! 効果でBP+2000し1枚ドロー! もう一枚でイエロリカバー! 回復しろ、ヴィーナルシファーッ!!」

 

二度のマジック使用、それに合わせて魔神姫も連続で電撃をネメアーレオに撃ち込むと、残るコア全てを取り除かれ消滅させられてしまう。

 

「そ、そんな!!」

「これが俺の力だ! 行けッ、ヴィーナルシファーッ!!」

「こ、こんなの嘘だ……うわあああああああッ!!!」

 

バリアに迫ると零距離で電撃を撃ち放ち、バリアを破壊。最後のライフが砕け、決着となる。

 

 

***

 

 

「こ、こんな筈では! 覚えてろ!」

 

捨て台詞を吐き捨てながら、ワープゲートを開くと即座に飛び込み姿を消すプロト。一方でバトルが終わり、光黄の勝利に『おめでとうございます!』とまるで自分の事のように喜ぶ。

 

『見事な勝利でしたお嬢様、華麗で美しい見事な勝利です!』

「……その、お嬢様ってやめてくれ。俺の名は黄空光黄。だから名前で呼んでくれ」

『なるほど素敵なお名前です! では光黄様とお呼びさせていただきます』

 

相変わらず丁寧な口調で喋るライトに照れ恥ずかしさを感じながらも、今はそれに構ってる場合ではない。何が起きてるのか、間違いなくライトはその手掛かりに違いない。

 

「それでさっき俺を選んだと言っていたが、どういう意味だ?」

『はい、まずは改めて名乗りましょう。私の名は「雷光天龍ライトボルディクス」、色欲を司る七罪竜が一体でございます』

「七罪竜、それって、集めれば願いが叶うっていうものか?」

 

ルディアと会った際の会話の記憶が少しずつ脳裏に蘇る。光黄の言葉にライトは『その通りです』と頷く。

 

『もしや我々について既にご存知でしたか?』

「それだけ聞く機会があったからな。ただそれ以外の事は知らない、それで、俺を選んだ理由については?」

『美しい女性に仕えたい……っていえいえ!! そうではなくてですね!!』

 

ふと零した本音に冷めた目で見る光黄、「違うんです! 違うんです! あくまでそれは理由の一つなんです」と涙目ながらライトは弁明しながら、嫌、正確には弁明にすらなっていないが、必死に話を聞いてほしいと懇願するライトに呆れながらに「続けろ」と催促する。

 

『まぁ勿論パートナーとなる相手ですから、良好な関係を築ける相手も理由の一つですが、何より重視したいのは私達を扱うに足る実力があるかどうかでございます』

「実力か」

『えぇ、元々実力的にも光黄様の事は申し分ないと思っておりましたが、先のバトルでもう文句の付け様はありません! 是非とも、私のパートナーとなってください! 必ずやこのライトボルディグス、あなたのさらなる力となって見せます!』

 

頭を下げて頼み込むライトだが、一つ光黄には思う所があるのか、一つだけと、質問を付け加える。

 

「バジュラブレイズ、この名前に心当たりは?」

『何故、あなたがその名前を!?』

 

あの時、烈我が見ていた一枚のカード。そのカードの名を思い返しながら尋ねた質問にライトは驚いたように声を上げた。

 

「知ってるんだな」

『……まぁ奴も同じ七罪竜ですよ。だけど何故、バジュラの事まで知ってるんです?』

「名前だけ聞く機会があったんだ。けどこれでようやく分かった」

 

頭にハテナを浮かべながら疑問に思うライト。だが光黄はライトとの会話から確信していた。あの時、烈我が手にしていたバジュラブレイズのカード。ライトと同じ七罪竜のカードを持ってるという事は間違いなく、彼も自分と同じ状況に巻き込まれているという事だろう。

 

『あの、光黄様。それでどうでしょうか? 私をパートナーと認めてくれるでしょうか?』

「……正直得体が知れない奴とあんまり関わりは持ちたくない」

『そ、そんな!』

 

涙目になりながら落ち込むライトだが、その様子に少し悪戯っぽく笑う。

 

「けど俺の実力を認めてたって言ってくれたのは嬉しかった。それと、最初に……可愛い、て言ってくれた事」

『そ、それでは!!』

「う、煩いな。あぁ別にいいよ、これからよろしくな」

 

照れ臭そうに言う光黄に、ライトは嬉しそうに光黄の周囲を飛び回る。

 

『これからよろしくお願いします! 光黄様! それよりさっきの照れ顔もすっごく可愛かったです!』

「ば、馬鹿! しつこく何度も言うな! さっきの言葉は取り消しだ!」

『そ、そんな光黄様! お願いです!! 謝りますから許して!!』

 

運命へと巻き込まれし新たな少女──黄空光黄。

彼女と同じ運命に巻き込まれた烈我にとって、まだそれを知る由もない。




第3話、如何でしたでしょうか!
今回はヒロイン回でした!!!

正直烈我よりもヒロインの光黄の方が書いてて楽しい←ォィ
モチーフについてはツイッターでも言ってますが、たぶん分かるかと

そう、あのバトスピ界の最強最可愛ヒロインです(*'ω'*)←

ちなみに今回はライトを使用してのバトルはおあずけにしました。
ですが、次回は書く予定!! もう先に、次回のサブタイトルもばらしちゃいましょうかねぇ。





次回、第4話!!!
【爆我炎龍VS雷光天龍】!

どうぞ、次回もよろしくお願いします!!!
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