「そうか、光黄君にミナト君。君達がライトとキラーに選ばれた子か」
スピリッツエデンにて、光黄達に挨拶を交わすヘル。ミナトがキラーを手に入れた後、事情の説明の為、烈我は二人に今回の騒動について必要最低限の説明し、詳細についてはヘルから二人に事情説明するよう依頼していた。
予めバジュラがヘルとのコンタクトを取ってくれていたお陰で合流場所等は問題なく、改めて異世界の存在について始めこそ驚いていたものの、バジュラ達の事と言い、一度キラー達にこの世界に連れられ、不可思議な出来事続きの彼等にとって、受け入れるのは案外早かった。
「烈我君から聞いてると思うけど、おじさんも一応関係者って事で、これから宜しくね」
「はぁ……。」
「どうも」
光黄もミナトもどう返していいのか、戸惑いながらも素っ気無く返事を返し、挨拶を終えると話題を切り返す様にキラーの方を見たかと思うと。
「キラー! この間俺と会った時、転送装置幾つか持っていっただろ!! この前烈我君から、事の事情を聞いた時は冷や汗掻いたぞ!!」
あの時、烈我を始めとするカードバトラー達を連れて来たキラー。その方法については装置をヘルからくすねたらしく、それで合点が付いた。
『俺様のやる事為す事に文句言うんじゃねぇ。持ち主選びに必要なことだ』
「ミナト君含めた16名を自分の縄張りに連れてくるって、普通に拉致だろ!」
『人間の問題なんざ知るか、関係ない人間はちゃんと元の場所に返してやった、それで問題ないだろ!』
幸いあの時の事は夜遅い出来事という事もあって、ミナト以外に連れて来られたカードバトラー達は記憶が曖昧だったり、夢でも見ていたんだと自己解決で処理され騒ぎになる事はなかった。
「ったく。騒ぎになってないからよかったものの、あまり関係ない人達を巻き込んだりするのはやめろよ」
『これっきりだ。俺様を手に入れるという名誉はとっくに此奴の物だからな』
「はは、反省してる様子全くねぇな、まぁ光栄だけど」
キラーの言葉に愛想笑いで返すミナト。その様子にやれやれと言わんばかりに頭を抱える。
「ミナト君だっけ、君も大変だろ? パートナーになって苦労してないかい?」
「平気っす。数日此奴と過ごして大分慣れました」
「そうか。まぁ君自身がそう言ってくれるな安心だけどね。それよりキラー、転送装置まだ持ってるんだろ? 光黄君とミナト君にも渡してあげてくれ」
言われるがまま転送装置を光黄とミナトに投げ、二人ともそれを受け取る。
「元の世界とこのスピリッツエデンを繋ぐ交通手段だ。一応私はこの世界に在留してるから、何かあったらいつでも頼ってくれ」
「異世界への交通手段。今更驚きはしません。けど」
「けど?」
「唯一気になるのはキラー達を奪いに来た連中もこの世界と向こうの世界の出入りは自由にできてる事、つまり同じ機械を奴等も持ってるって事ですか?」
「「!」」
ミナトの質問に烈我達も顔色を変える。質問に対し、ヘルはゆっくり首を縦に振る。
「確か烈我君には少し話したよね、罪狩猟団の連中とはバジュラと会った道中で知れたと」
「はい、聞きました」
「実はバジュラ達を調べる上で、もう一人共同で研究していたものがいるんだけどね、どうやらその共同で作業してくれてた物が組織に通じていた」
「!!」
「そして研究してた技術を組織内に流用された。恥ずかしい話、おじさんはまんまと利用された訳だよ」
「…………」
「この際本音を言わせてもらうと、七罪竜を手に入れた君達を手助けしたいと思ってるのは、何も善心っていうだけじゃない。利用された者の責任として、何か出来る事をやらないと。そう思ってる」
ミナトの質問に答えるヘルだが、それとは別に光黄も「もう一ついいですか」とまだ気掛かりが残っているのか、質問を投げかける。
「あなたは七罪竜、全て知ってるんですか?」
「嫌、七罪竜について全て把握してる訳じゃない。その中で面識があるのはキラーとバジュラだけ。実際ライトとは、今回会うのが初めてだよ」
『まぁ綺麗な女性ならともかく、男に興味はないですからね』
「やれやれ初対面なのに手厳しそうだ」
苦笑いした様子のヘルだが、光黄にとってはまだ気掛かりが解けていないのか。
「ヘルさん。七罪竜は全て手にした者に願いを叶える、ライトからそう聞いてます。もし願いを叶えるのが本当だとして、ヘルさんはそれを信じますか?」
「願い……そうだね」
考え込むように沈黙し、数秒程間を置き。
「どんな願いでも叶えられるのか、そのときどんなことが起こるのか研究者としてそういう探究心はある。けど、それよりも正直怖いって気持ちの方が勝ってるかな」
「怖い?」
「あぁ、何が起こるか分からない、願いを叶えられると言ってもそれには代償が必要なのか、バジュラ達に追及しても知らぬ存ぜぬ。分からない事が多すぎて、それが怖いのさ」
「恐怖、ですか」
「君達が願いを叶える事を信じようが信じまいが、その為にどうするのか、それについては構いやしない。君たちが選ぶ道ならおじさんはそれを尊重しようと思ってる。第一おじさんは七罪竜に選ばれた訳じゃない、だからそれについて口を挟むのは野暮だからね」
「ただ」と付け足しながら、なおも続けて行く。
「罪狩猟団、奴らは違う。目的は不明だが強引に七罪竜を手に入れようとする彼らの目的は決して、ろくでもない事。そんな予感がずっと頭から離れないのさ」
ヘルの言葉に一同納得するように頷く。一旦会話についてはそこで切り上げ、罪狩猟団についても新しい情報はないらしく、「また何かあればおいで」とヘルに見送られ、烈我達は元の世界へと戻って行った。
***
「成程ね、七罪竜にそれを狙う組織、随分面倒事に巻き込まれてたんだな」
「他人事みたいに言いやがって、分かってんのかよ? お前もそれに巻き込まれてんだぜ?」
ヘルと別れ、キラーのカードを見ながら呑気な様子のミナトに一喝。
「そうだな。少し前までどっかの誰かさんは俺にも相談せず一人で抱え込もうとしてたからな
「こ、光黄! だからそれは謝ってるじゃんか!!」
「はは、烈我も光黄にゃ叶わねぇな」
「笑い事じゃねぇ! 俺が言いたのは、今後大変なのはお前も同じだってことだ!」
「はいはい、でもそんな今すぐ構えろって訳でもないだろ?」
「そりゃそうだけど」
「だったら辛気臭い話でもしてないで、明日は久々に気分転換でもどうだ? 丁度ショップバトルもあるらしいからよ」
「おっ、いいじゃん! 光黄も参加するだろ」
「……まっ、俺は別にいいが」
「よっしゃぁ! 絶対負けねぇからな」
明日に向けてより一層意気込む烈我だが、ミナトは軽く烈我に肩組んだかと思うと。
「(烈我、じゃあ明日の大会、さっさと勝って告白決めてきな)」
「!!」
「(じゃねぇと、俺が奪っちまうぜ?)」
「テメェ!! まだ諦めてなかったのか!!」
まるで掴み掛るような勢いの烈我に、「冗談冗談」と降参するように両手を上げる。
「二人とも何の話だ?」
「別に。ただ俺なりに烈我に頑張れって話だ」
「?」
「とにかく! 俺は絶対明日の大会で勝つ!! 誰が相手だろうとな!」
烈我達の会話について疑問の残る光黄だが、誤魔化す様に話題を変え意気込みを語る。
「見てろよ! 明日こそ、お前に勝ってやるぜ!! そしたら──!」
「はいはい、勝てたらな。まっ、楽しみにしてる!」
「おぉ! 最強のデッキ作って、目にもの見せてやるぜ!!」
***
──翌日、ショップバトル当日。
「…………」
「目にもの見せられたみたいだな」
「……うるせぇ」
観客席で落ち込むように項垂れる烈我の肩を叩くミナト。初戦で光黄と対戦となっていたが結果は言うまでもなく烈我の完敗だった。
「ところで何でお前はエントリーしてないんだよ! 言い出しっぺの癖に!」
「大会があるって提案しただけで、参加するとは一言も言ってないぜ。それに、此奴等のお目付け役だしな」
そう言ったミナトの腕の中から顔出すキラー達。
『ケッ、何で俺様が一々隠れなきゃならねぇんだ! しかも此奴等と!!』
『文句言うなクソ鮫! 俺等の存在を無闇に知られる訳には行かないだろうが!』
『まぁそれならカード化してればいい話なんですけど、暇だとか何とか言って、ほんと揃いも揃って大人しくできない連中ですね』
『『テメェも一緒だろうが!!』』
「あー、お前等充分騒がしいよ。もちっと大人しく」
貌を見合わせるなり揃いも揃って睨み合うバジュラにキラーやライト。何となくお目付け役という理由で大会に参加できない理由が分かるような気がした。
「何か、バジュラ達の面倒見てもらってて悪いな」
「やめろよ改まって。別に構わねぇさ、それにあいつもいるだろうから大会で争うのはどうかと思ってな」
「あいつ?」
誰の事なのか不思議に思うが、一方でバトルで歓声が聞こえたかと思うと、早くも決勝となり、一人は当然光黄、そしてもう一人は紫髪の少女。
『ミナトさん! 誰ですか、あの可愛いお人は! 是非とも紹介してください!!』
「お前光黄のパートナーの癖にんなこと言ってていいのかよ?」
『コホン、それはそれこれはこれ。可愛い人とは交流を多く持ちたい。それだけです』
「成程、まぁその意見には同感だね」
ミナトとライトの会話に若干冷めた物を感じつつ、バジュラとキラーも口を揃えて『色欲魔が』と小声で言い放つ。
「ライトじゃねぇけど、どんな奴なのか知ってるなら教えてくれ」
「そういや面識なかったけか、あの娘の名前は
「ずっと争ってるって、そんなの俺知らないぜ!?」
「お前、マジで光黄ちゃん以外に興味ねぇのな。覚えておいた方がいいぜ? 実力はお前より上だし、何より、可愛い」
「結局そこかい!!」
観客席での烈我の様子は気にする事無く、間もなく始まる決勝を前にすでにステージに上がり準備を整える光黄、対戦する絵瑠も同じようにステージへと上がる。
「久々だな、光黄! ここ最近見なかったけど、やはり来ると思っていた!」
「相変わらずどっかの誰かさんと似たノリだな。正直勘弁してほしい」
「なっ! 私をお前の彼氏と一緒にするな!!」
「だからあいつは別に彼氏じゃないと何度言わせれば」
頭を抱えて溜め息をつきながらも、気を取り直すようにバトルに集中する。
「まぁそれはそれとして、強い相手と手合わせしたかったんだ。お前と戦えるのはいい機会だ」
「私とお前の戦績は9勝9敗、これに勝てば10勝目だ!」
『両者準備はいいか! それではゲートオープン!!』
「「界放ッ!」」
***
バトルは終盤、簡易的なバトルフィールドで行われる二人のバトルはモニター上に映され、光黄のライフは残り2に対し、絵瑠のライフは1。ライフ差は光黄が勝っているが、彼女の場にスピリットはなく、対して絵瑠の場には龍魔神とブレイヴしたウロヴォリアスとウロヴォリアススカーレットの2体、そして現在は絵瑠のターン。
「どうやら今回は私に運が向いているようだな! 自慢のキースピリットで決めてやる! アタックステップ、行け! ウロヴォリアス!!」
「フラッシュタイミングで、パニックヴォイスを使用だ!」
「お得意のマジックか! その効果って確か!!」
「あぁ、この効果はアタックに対して、俺のスピリットではなくバトルしていない相手スピリットでブロックを行える。対象はウロヴォリアススカーレットだ!」
「!!!」
攻撃合図に翼を広げて飛び立つウロヴォリアスだが、飛び立つ際に長い尻尾がスカーレットの顔面に当たる。まるで文句を言うように吠えるスカーレットだが、一切振り返る様子はなく、それにより苛立ったのか、軽く火炎放射を背後からウロヴォリアスに浴びせる。
「あぁ!! 馬鹿、お前達やめろッ!!」
火炎放射を浴び、スカーレットに対して怒りに文字通り火が付き、引き返してそのままスカーレットに強襲し、仰向けにスカーレットは倒され、攻撃に対してスカーレットもまた完全にウロヴォリアスを敵と定めたのか、絵瑠の言葉を無視して、二体は組み合うと互いに互いの身に牙を突き立てて噛み付き合う。
「さらにフラッシュ、マジックで拾ったカードは弱い。お前のウロヴォリアスのBPを+1000だ!」
「なっ!? ウロヴォリアスをスカーレットと同じBPに引き上げた!?」
バトルでは互いに牙を放つと同時に、スカーレットは獄炎を、ウロヴォリアスは破壊光線を零距離で互いの相手に撃ち合うと、その場で巻き起こる大爆発。
爆風に一瞬視界を塞ぎ、爆風が晴れた頃、目を開き、映ったのは龍魔神しか残っていない無人のフィールド。
「うわああ!! 私のキースピリットがぁッ!!」
「俺のターンだな。ヴィーナルシファーを召喚、そのままアタックだ!」
「ッ!!」
最後のライフ目掛けて、ヴィーナルシファーは雷撃を撃ち放つ。
『決着ぅーッ!! 優勝は黄空光黄さんです!』
「やったな、光黄! 流石だぜ」
「あぁ、相変わらず手強かった。見習ってほしいものだ、誰とは言わないが」
「うっ、確かにあの絵瑠って奴は強かった。多分俺よりも。けど、俺だって負けてらんねぇ! もっともっと強くなるからな!」
「そうあってくれなきゃ遣り甲斐がなくてつまらない」
「相変わらず厳しいぜ。けど、もっともっと強いデッキ組んでやるからな!」
「……ところでミナトは?」
「えっ! さっきまで一緒に!?」
光黄の問いに咄嗟に辺りを見回すがミナトの姿はない。
「うぅ、何で負けたんだ。今日のデッキはいつもより完璧に構築して」
「よかったら使うかい、お嬢さん」
バトル後、落ち込むように肩を落とす絵瑠に差し伸べられたハンカチ、
「ありが…………ッ!!!」
顔を見上げた瞬間、彼女の目の前にいたのはミナトの姿。お礼を言おうとした言葉を飲み込み、ミナト自身は気楽な様子で「久しぶり」と声を駆ける。
「何が久しぶりだ!! 私はお前の顔なんか見たくないんだ!」
「まだあの時のこと怒ってんのかよ、いい加減機嫌直してくれって」
「ふざけるな! 私は絶対許さないからな!!」
受け取ったハンカチをそのままミナトに投げ返して、その場から走り去り、その様子は烈我達も遠くから見えており、「何やってんだあいつ」と一言。
『ミナトさん、あんな可愛いお嬢様に一体何やったんですか?』
「別に。他人のプライベートに首突っ込むもんじゃねぇよ、色欲君」
烈我達の視線に気づいているのか、遠くからこちらを見る烈我達に手を振りながら、そこへ合流し、気分転換も済んだのか大会も終え、談笑を交えながらその場から立ち去る烈我達。他のカードバトラー達も大会を終え次々に帰宅を始めているが、まだ一人会場に残る人影。
「あの人達強かったな。僕もあんな風に戦えたらな」
小さく一言。大会本戦では見なかった顔だが、観戦だけで満足しているのかバトルの余韻に浸るように呟き、自分のデッキを取り出し、そしてにらめっこするかのようにデッキをじっと見つめる。
「さて僕ももっと強くなれるよう、樹龍様に特訓してもらわなきゃ!」
少年もその場から立ち上がると会場を後にし、走り去っていく。彼が先程口にした樹龍の言葉、それが意味する物は果たして。
第7話、今回はバトルはほぼほぼ少なめ。
雑談回という事でまとめました。
そろそろキャラも増えてきたのでキャラ紹介編もまとめたく思います。
ところで話は変わりますが、ついに昨日はサーガブレイヴ最終回でしたね!
3話じゃ完結しないと思ってましたが、まさかの新しいバトスピアニメの発表!
赫盟のガレット、果たしてどんなストーリーなのか!新しいキャラビジュアルは!!
いろんな情報が目白押しすぎて、目が離せないです。
ぶっちゃけた話、ガンダムコラボが決まった時点でバトスピももうすぐ終わりなのかと囁かれてましたが、少なくとも夏ごろまでバトスピが継続することが確定したので安心です。バトスピは永遠のコンテンツであってほしいと願うばかり。
アニメも決まって、小説のモチベも上がってます!
そして今回のラストで、樹龍という名前に触れましたが果たしてその正体は!!
次回もよろしくお願いします!