バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第14話【決着のステージ】

現在両チーム残るライフは4。ここまでで主力となるスピリットを互いにかなり消耗しているが、勝負は未だ衰える気配はない。

 

────第9ターン、マチアside。

 

[Reserve]12個。

[Hand]5枚。

[Field]なし。

 

「メインステップ、ゴッドシーカー司書ドール♰レナ♰、Lv.2で召喚!」

 

魔導書を手に持つ少女のような姿のスピリット、レナは手に持つ魔導書をブツブツと読み上げると、その召喚時効果を発揮させる。

 

「デッキの上から3枚オープン、その中に「化神」を持つスピリットと「創界神ヘラ」があれば一枚ずつ手札に加える」

 

オープンされたカードは「鎧闘鬼ラショウ」、「魔界七将ベルゼビート」、そして「創界神ヘラ」のカード。

 

「来たね! 創界神ヘラを配置し、効果で神託!!」

 

開かれたカードは「式神オブザデッド」、「鬼神バサラ」、「龍面鬼ビランバ」の3枚。

 

「神託対象2枚で2コア追加、最後に魔界七将ベルドゴールを召喚、コアを神託、最後にバーストセットしてこれでアタシのターンはエンド」

 

アタックは仕掛ける様子はなくターン終了の宣言。あくまで堅実に場を整えたという所だろうか。

 

 

────第10ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]13個。

[Hand]6枚。

[Field]なし。

 

「俺のターン! バーストセット。さらにロクケラトプスをLv.3、アクロカントレックスをLv.2で召喚!」

 

マチアと同様、ドレイクも並べるようにスピリットを連続で展開していき、地竜達は場に現れ颯爽と咆哮を上げる。

 

「マジックでダイノパワー! 俺の地竜を全てBP+3000! アタックステップだ、ロクケラトプスでレナを指定アタック!」

 

唸りを上げながら、地面を蹴り上げて駆け出すロクケラトプス。その角でレナを突き刺し、そのまま宙に放り投げて消滅させる。

 

「ブロッカーを潰してくる気だね」

「ったりめぇだ。目の前の障害は全部叩き潰す! 次はアクロカントレックス! ベルドゴールを殺れッ!!」

 

尻尾を勢い良く地面へと叩きつけるとその反動を利用してベルドゴールの頭上へ飛び上がる。目の前まで迫るその姿に慌てた様に防御体制を取るが、構う事は無い。そのままベルドゴールを踏み潰し、踏み潰されて爆発四散し、破壊される。

 

「ターンエンド。エンドステップでダイノパワーは俺の手札に戻す」

 

 

────第11ターン、光黄side。

 

[Reserve]13個。

[Hand]2枚。

[Field]創界神ヘラLv.1。

 

前のターン、セカンドサイトでデッキの上から3枚のカードを確認している。一枚はディーバメドレー、そして次の一枚目は。

 

「王者の翼を広げろ! 翼神王グリフィオールをLv.2で召喚!」

 

遥か天空より雲を突っ切りフィールドへ飛来する一体の幻獣、グリフォンの様な姿を持つスピリット──グリフィオール。

 

「召喚時効果、俺のトラッシュにある黄色のマジックカード全てを手札に戻す!」

 

トラッシュにあるのは「イマジナリーゲート」、「セカンドサイト」、「「ディフェンスネビュラ」、「妖雷スパーク」、それらのカード全てを手札へと戻って行く。

 

「もう1枚、黄色の聖遺物を配置だ」

「ッ! さらに厄介なネクサスかよ」

「生憎Lv.2にはまだできないけどな」

 

軽く鼻で笑う様に言いながらも、すぐにまた集中するようにグリフィオールに視線を向けていく。

 

「アタックテップだ! グリフィオール、行け!」

 

再び翼を広げ、眼光を輝かせながら烈我達へと迫る。

 

「グリフィオールのLv.2、Lv.3の効果。このスピリットのアタック時、俺は手札のマジックカードをノーコストで使用できる!」

「!」

「フラッシュ! ディーバメドレー! 効果でアクロカントレックスをデッキボトムへ送る!」

 

具現化した音色が縄の様にアクロカントレックスを拘束すると、そのままフィールドから消えてしまい、自分のスピリットがやられる光景にドレイクは軽く舌打つが、グリフィオールはなおも止まらない。

 

「黄色の聖遺物の効果、俺のアタックステップでマジックを使用した時、デッキから1枚ドローできる! さらにフラッシュで妖雷スパーク! グリフィオールのBP+2000し一枚ドロー、黄色の聖遺物の効果で追加でドローだ!」

「一気に手札も増やしに来たか、どこまでも抜け目ねぇ」

「当然だ、『全力で勝たしてもらう』。そう思ってるのはお前だけじゃない、俺も同じだからな!」

「あぁ、それでこそ光黄だぜ! アタックはライフで受ける!!」

 

ブロックする術はなく、グリフィオールはバリアを引き裂き、ライフ破壊。残るライフ3つである事を確認すると、ターンエンドをコールする。

 

 

────第12ターン、烈我side。

 

[Reserve]12個。

[Hand]6枚。

[Field]ロクケラトプスLv.3(3)BP5000。

 

「俺のターン、スカルガルダ召喚! 召喚時効果で1枚ドロー!」

 

召喚時の効果によって1枚のカードをドロー。そのカードを視線を向けた瞬間、口角が上がる。それに対し何かが来た事を瞬時に直観させる。

 

「行くぜ! マジックでリターンスモーク! 効果でコスト4以下のスピリットをトラッシュからノーコストで召喚できる!」

 

烈我のトラッシュにあるコスト4以下のカードはシキツルと、もう一枚。

 

「ダークヴルムノヴァはブレイヴがあればそのコストを4に変更する! よってトラッシュからダークヴルムノヴァをLv.3で再召喚だぜッ!! 不足コストはロクケラトプスから確保!」

 

死者の魂を呼び戻すが如く、地の底より再び目覚めるダークヴルムノヴァ。咆哮を上げながら光黄達を睨む。

 

「(黄色の聖遺物はまだLv.1で光黄とマチアにブロッカーもない、ここで一気に決めてやる!)」

 

決意するようにアタックステップとコールする声に自然と力が入る。

 

「ダークヴルムノヴァでアタック! アタック時効果で翼神王を破壊だ!!」

 

黒炎のブレスをグリフィオールへ吐き付け破壊し、さらに勢い付く様にカードを構える。

 

「紫電と紅蓮を纏いし魔界の龍! 闘志に震える魂をもう一度呼び起こせッ! 魔界幻龍ジークフリードネクロ! ダークヴルムノヴァに煌臨ッ!!」

 

黒き炎がダークヴルムノヴァを身を包み、紫電を帯びながら炎を振り払うはジークの名を持つ紫龍──ジークフリードネクロ。

 

「煌臨時効果発揮だ! トラッシュのシキツルとダークヴルムレガリアをそれぞれ召喚するぜ、不足コスト確保でネクロをLv.2に!」

「(レガリア、妖華吸血爪を使った時にあらかじめ捨てておいたのか)」

 

フィールドに舞い戻るシキツルとレガリア、シキツルの召喚時で1枚ドローしつつ、一気に場に4体のスピリット達を揃え、狙いは当然残るライフ4つを全て討つ為。

 

「さぁネクロのメインアタックだ!」

 

手に持つ杖をバリアに叩きつけ、ライフを破壊するが衝撃に耐えながらも攻撃を受けた事は狙い通りであるかのようにマチアは笑って見せた。

 

「ライフ減少時でバースト発動! ラウンドテーブルナイツ(Rv)!! 効果でアンタと同じくコスト6以下のスピリットカードをトラッシュから召喚できる! この効果は、光黄に対して使うよ!」

「何!?」

 

驚く烈我とは正反対に予めマチアと示し合せていたのか、光黄は冷静にトラッシュにある自分のキースピリットカードを手に取る。

 

「フィールドに舞い戻れ! ヴィーナルシファーLv.3で召喚!」

 

大地に突き刺さる剣がヴィーナルシファーをフィールドへと舞い戻し、ネクロと睨み合いながら互いに互いを威嚇するように吼え立てる。

 

「まだだッ! ダークヴルムレガリアでアタック! ネクロの効果で「星竜」を持つレガリアのアタックは相手スピリット1体を破壊しなきゃブロックできないぜ!」

 

杖を掲げると紫炎の霊魂がヴィーナルシファーを束縛するように締め付け、ブロッカーが1体のみの状況では防ぐことはできない。

 

「(光黄の手札にはディフェンスネビュラが戻ってる。あのカードでネクロをLv.1にして効果無効、その上でブロックしてくる筈!)」

 

マジックを消費させる事が烈我の狙い、だがその考えは光黄にも見通されていたのか、笑みを浮かべたかと思うと。

 

「ライフで受ける!」

「!?」

 

レガリアの突進がライフを砕くがその選択が予想外だったのか動揺を隠せない。

 

「当てが外れたな。お前の狙いはお見通しだ」

「ぐっ!」

「お前の場に残るスピリットでネクロの恩恵を受ける系統のスピリットはない。無理にマジックを使う必要はないからな」

 

ヴィーナルシファーは自身を束縛する霊魂を振り払いながら戦闘の意思を示す様に強く吼える。これ以上攻めるのは得策ではない。冷静にターンエンドを宣言。

 

 

────第13ターン、マチアside。

 

[Reserve]11個。

[Hand]4枚。

[Filed]堕天神龍ヴィーナルシファーLv.3(5)BP10000、黄色の聖遺物Lv.1(0)、創界神ヘラLv.1

 

「アタシのターン、ヴィーナルシファーをLv.1にダウンさせるよ」

 

味方のスピリットのレベル下げてまで何かを準備するようにリザーブにコアを集め、光黄も了承しているように受け入れている。

 

「魂鬼を召喚。さらに行くよ! 闇の糸を操り操られし狂気の人形! 細く暗きその糸で世界を躍らせろッ! 鬼神女王ジェラシックドールをLv.3で召喚!」

 

暗き闇より這い出る狂気に満ちた人形型のスピリット────ジェラシックドール。

 

「召喚時効果、デッキの上から一枚破棄!」

 

マチア自身のデッキから一枚のカードが弾け飛び、ジュラシックドールはそのカードを糸を使い、まるで公開するかのように宙へと吊り上げる。

 

「創界神オシリス、カードのコストは2。よってスカルガルダとシキツルの合計コア2個をトラッシュに送る!」

 

「ぐっ! ブロッカーが!!」

「まだだ、相手の召喚時発揮後でバースト発動! 迅雷のエレクトロサウルス!」

 

バーストのトリガーを引かれ、発動の宣言を掛けたのはドレイク。弾け飛ぶカードを手に取り、エレクトロサウルスをフィールドへと呼び出す。

 

「バースト効果、黄色の聖遺物を破壊しろ!」

 

後方に聳える黄色の聖遺物に火球を放ち、炎の直撃のよって円状を起こしその場から消失。

 

「ナイス、ドレイク! これで厄介なネクサスが消えたぜ!」

「馬鹿が、この程度で浮かれてんじゃねぇ! 次来るぞ!!」

「!」

 

その通りと言わんばかりにマチアとジェラシックドールはまるで構う事がないように笑みを浮かべ、そのままアタックステップの宣言。

 

「ジェラシックドールでアタック! 効果で相手はスピリット1体を破壊してもらう!」

「チィッ、ロクケラトプスを選択だ」

 

上空に浮かび上がる五芒星の炎がロクケラトプスへと降り落ち、炎にその身を焼かれ場から消失。

 

「さらにジュラシックドールの効果はそれだけじゃない。【界放】の効果で、ヘラのコア2個をこのスピリットに置くことで追加効果! トラッシュにある紫のカードを手札に戻す!!」

 

まるでヘラから力を受け取るかの様にジェラシックドールへとコアが移り、さらに狂気の笑みを浮かべながら、フィールドに突如広がる闇の中に手を翳して糸を飛ばすと、闇の中より一枚のカードを吊り上げ、そのカードはマチアの手札へと加わる。

 

「アタシが加えたのは式神オブザデッド! そして早速このカードを使用させてもらうよ!」

「!!」

「フラッシュ効果でトラッシュにある系統「呪鬼」を持つスピリットを召喚できる。白く輝く全てを打ち壊せ、砕いたすべてを黒き闇にひっくり返せ! 召喚ッ! 鬼神バサラ!!」

 

召喚コストをジェラシックドールより確保すると、地面へ降り落ちる漆黒の大剣、その剣を中心として闇が沼のように広がり、闇の底より伸びる手が剣を掴んだかと思うと、そのまま這い出る様に現れるスピリット、マチアの二体目のキースピリットであるバサラ。

 

「バサラの召喚時効果発動! このスピリットのコア1個につき相手スピリットのコアを外す。バサラの上のコアはLv.2で2個。よってネクロのコア2個を取り除く!」

 

片手で担ぐその大剣を両手に持ち替え、力の限りその剣を振り下ろすと、紫の斬撃波となってネクロへと向かい、その直撃を受け場から消滅してしまう。

 

「ネクロッ!!」

「スピリットの心配をしてる間はないよ! ジェラシックドールの攻撃は継続中!」

「ライフで受ける!」

 

 

両腕を翳し、無数の糸をバリアへと叩きつけて行きライフを破壊する。

 

「「ッ!!!」」

「決めるのはこっちみたいだね。鬼神バサラでアタック! バサラの効果で紫のスピリットが疲労した時、相手スピリットのコア1個をリザーブに置く! よってエレクトロサウスのコア1個を取り除く!」

 

フィールドを駆け、エレクトロサウルスへその大剣を振り下ろすと、斬られたエレクトロサウルスのコアは取り除かれ場から消滅。

 

「アンタ等の残るライフは2、バサラはダブルシンボル! これで終わりかな!」

「ぐっ! 舐めんじゃねぇぞ、マチア! 相手のBP8000以上のスピリットのアタックでこのスピリットを召喚できる! 冥界の炎を持ちし黒龍! ブラックウォーグレイモン、召喚だッ!!」

「!」

 

黒き炎を身に纏う龍、影の如く現れフィールドへと飛び出す黒龍の姿、唸りを上げながらフィールドへと降り立ち、ブラックウォーグレイモンがその姿を見せる。

 

「召喚時効果発揮! 相手のBP12000以下のスピリットを破壊!! バサラ、消えろ!!」

 

両爪に黒炎を込め、迫るバサラにその爪を振り下ろすと、バサラの体を焼き焦がす様に、黒い爪痕を刻み込み、バサラはその場に倒れ伏して爆発四散を起こす。

 

「甘いよ? その程度でアタシが止まるとでも? こっちもフラッシュタイミング! デッドリィバランス!」

「何ッ!?」

「お互い相手スピリット1体を破壊、アタシが選ぶのはジェラシックドール!」

 

ジェラシックドールの体が紫炎に包まれる。だが自身の体が焼き尽くされているのにも関わらず、その狂気に満ちた笑顔はフィールドから消滅するその瞬間さえも崩れはしなかった。

 

「ジェラシックドールの破壊時でアタック時と同じ効果が使用できる! アンタ等のブラックウォーグレイモンとレガリア、まとめて破壊するよ!」

「!!」

「レガリアッ!!」

 

ジェラシックドールの怨念が二体を道連れにするかの如く、ブラックウォーグレイモンとレガリアの体をも紫炎が焼き尽くし、破壊してしまう。

 

「さらに破壊したジェラシックドールに創界神ヘラのコア2個を移す事で式神オブザデッドを手札に戻し、もう一度発動! 今一度甦れ、バサラ!!」

 

不足コスト確保の為、魂鬼はフィールドから消滅するがその対価として、再びフィールドへバサラは降臨し、その大剣を掲げる。

 

「なっ!?」

「決まりだね! バサラで再アタック!!」

 

残るライフを削るべく迫るバサラ、その光景にドレイクは動揺隠せず、手札を握るその手には少しだけ震えが見えた。

 

「(俺が、負ける!?)」

 

バサラに対して防ぐ術はもうない、その時点でドレイクは敗北を受け入れるしかなかった。だが、それでもまだ勝負は着いてはいない。

 

「フラッシュタイミング! シャドウエリクサー!! リザーブにあるコア1個を俺のライフに戻す!」

「!!」

「ライフで受けるぜ!!」

 

大剣をバリアへ振り下ろしての一刀両断、ライフを二つ一気に削り取るが、シャドウエリクサーの効果でライフはまだ一つ健在。

 

「お前……!」

「ドレイク、いい加減気づけよ。これはタッグバトルなんだって!」

「!」

「お前に打つ手がなかってもそれで終わりじゃない。俺の事だってちょっとは信用してくれよ、勝つ為に!」

「お前、まだ勝つ気でいるのか?」

「当たり前だろ。バトルするからには勝ちたい! それがバトスピ、だろ」

 

烈我達の様子に光黄は「相変わらずだな」と呟き、マチアもその光景を微笑むように笑いながらも、それ以上の攻め手はなくターンエンドをコール。

 

 

────第15ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]18個。

[Hand]4枚。

[Field]なし。

 

「(……俺の手札にスピリットはねぇ。このままじゃ、負けは確実だな)」

 

引いたカードはサンダーテンペスト、残るカードは「ダイノパワー」、「恐竜同盟本拠地」、「スサノヲの轟天神殿」の4枚。

 

「(ここからの逆転は難しい、下手に足搔いて見せるのは無様なだけだ)」

 

潔く諦めるべきだという思考が脳裏を過る、元々ドレイクとマチア達の目的はこの大会に優勝したその先にある。自分が負けたとしてもマチアが優勝すれば目的の第一段階は達成される、ならば無理して勝ちに拘る必要はない。

 

「(……そうだ。こんな大会、俺にとっては拘る理由はねぇ。目的さえ達成すればいい筈、いい筈なのに!)」

 

苛立ち気味に腕に力が入り拳を握り締める。

 

「おい烈我」

「?」

「もう一度聞くぞ、お前はまだ勝つ気があるか?」

「!」

 

初めて烈我に対し問いかける様なドレイクの言葉、それに驚きを感じながらもドレイクのその言葉に強く頷いた。

 

「……そうか」

 

頷く烈我に対し、ドレイクは静かに自分の手札を烈我に見せる。

 

「!!」

「俺の手札は見ての通りだ。勝ちたいのなら次の光黄って奴の攻撃は死ぬ気で防げ! 勝ちてぇんだろ! だったらテメェが防ぐって俺も信じてやるよ!!」

 

この大会で初めて烈我に対して信頼を預ける言葉、以前烈我は驚いたままだったが、それでもドレイクの意思を汲み取る様に「任せろ!」と強く言い切り、その返事に対し、ドレイクは静かにターンエンドを宣言。

 

 

────第15ターン、光黄side。

 

[Reserve]16個。

[Hand]7枚。

[Field]堕天神龍ヴィーナルシファーLv.1(1)BP6000、創界神ヘラ。

 

「俺のターン、バーストセット。さらにセカンドサイトを発動! 効果でデッキの上から3枚オープンし、順番を変更!」

 

3枚のカードを確認し、その順番を入れ替えていく。

 

「さらに行くぞ! 奇跡を齎す魔神! 踊れ、勝利の舞を! 異魔神ブレイヴ、魔神姫、召喚ッ!!」

 

呼び出された半実体の体に着物を纏う異魔神────魔神姫。

 

「来たな、光黄の十八番!」

「あぁ、フィニッシャーとして決めるには充分だろ! 魔神姫、ヴィーナルシファーと合体しろ!!」

 

魔姫姫が左腕を翳し、ヴィーナルシファーに波動を撃ち込んで己とリンクさせていく。

 

「アタックステップ! ヴィーナルシファー、行けッ!!」

 

翼を広げて天高く空へと舞い、そのまま烈我達へ襲い掛かるように急降下。

 

「魔神姫の追撃! トラッシュにあるディーバメドレーを手札に戻す!」

 

再び手札にディーバメドレーを戻し、次の一手を考えるように手札に視線を向ける。

 

「(さっきセカンドサイトで入れ替えたカード、ヴィーナルシファーの効果を使えば次に来るマジックカードは神閃月下。ブラックウォーグレイモンの時みたいにブロッカーを用意されても問題はない!)」

 

あらゆる状況への対策は万全。盤石の布陣だがそれでもまだ例我にも手があるように手札を構える。

 

「行くぜ! マジック、スケープゴート!! 効果でダークヴルムノヴァをトラッシュから再召喚!!」

 

三度フィールドへと蘇るダークヴルムノヴァ。

 

「またそいつか!!」

「ダークヴルムノヴァの効果! ブレイヴは強制分離させて破壊する!」

 

飛び掛かるヴィーナルシファーを避けて後方の魔神姫に狙いを定め両腕に紫電を纏わせると、その雷拳を魔神姫へと打ち付け、叩き潰す様に破壊し、次の獲物を見定める様にヴィーナルシファーを睨む。

 

「ヴィーナルシファーとダークヴルムノヴァ、どっちもBP10000! バトルしても相打ちだぜ!」

「何度もやられてたまるか! フラッシュ、ディーバメドレー!」

「!」

 

先程の魔神姫で手札に回収している為、当然といえば当然の一手。音符の輪がダークヴルムノヴァを拘束し、そのままデッキボトムへと送る。

 

「これでブロッカーはないな!」

「嫌ッ!! まだあるぜ!!」

「!」

「マジックでデモンズパペット! コスト6以下の呪鬼を持つ俺のスピリットをノーコストで召喚できる! ダークヴルムレガリアLv.3で再召喚!!」

「まだそんなカードを持ってたのか!」

「俺も、俺のスピリット達もお前に勝ちたい一心なんだ! 幾らでも対策なら用意してやる!! ヴィーナルシファーはレガリアでブロック」

 

今度はレガリアをフィールドへ呼び戻すとそのまま爪を構え、ヴィーナルシファーも同じく爪で互いに切り合って行くが、両者互角なようにそれぞれ後方へ弾かれ、弾かれると同時にレガリアは黒炎を、ヴィーナルシファーは雷撃を放って行き、炎と雷が相殺するようにぶつかり合うが、威力はレガリアに分があるのか、そのままヴィーナルシファーの雷を少しずつ上回って行く。

 

「レガリアはLv.3、BPは11000だぜ!」

「甘いな、フラッシュ! ディフェンスネビュラだ!!」

「!!」

 

奇襲を掛けるかのようなマジック、その効果によってレガリアはLv.1にまで力を減少させられ、黒炎のブレスは途端にその威力を失い、それを好機とばかりにヴィーナルシファーは眼光を輝かせると、そのまま雷撃は黒炎を打ち消してレガリアへと直撃。電撃に体が痺れ動けないレガリアへ一気に迫ると、止めを刺すかのように両爪を振るい、その一撃に力尽きその場で爆発四散する。

 

「悪い、レガリア。けど、これで攻撃は終わりだろ?」

「……確かに。これ以上、手はないか」

「防ぎ切ったぜ! 見たか光黄!!」

「あぁ、思った通りやっぱり強くなってる。ほんと……バトル馬鹿で、大した奴だよ」

 

光黄からの言葉に誇らしげに笑って見せる烈我、二人の様子にマチアも楽しむように笑う。

 

「やれやれ、アタシもいるってのに、光黄ばっかり。折角のタッグバトルなのにアタシには何も言わないなんて、何だか妬けちゃうな」

「フッ、妬けるとか思ってもない癖に。けど、気を引き締めろよ! 次の烈我のターン、凌ぎさえすれば確実に勝つのは俺達だ」

「凌ぎきれなかったら?」

「言わなくても分かるだろ?」

 

凌げなかった場合は敗北は必須。勿論それはマチア自身も分かっているが、あえてそれを光黄の口から聞く事で勝つ為にどうすればいいのか、その事を強く意識する。

 

「それじゃあアタシも精一杯守り切るしかないね」

「当たり前だ。俺のターン、エンドだ」

 

 

────第16ターン、烈我side。

 

[Reserve]19個。

[Hand]3枚。

[Field]なし。

 

烈我のターン、相手にブロッカーはなく残るライフ2。無防備でまさに絶好のチャンスだが、それでもそのチャンスを逃せば次はない事は勿論承知の上。

 

「絶対に勝つ! ソウルホースを召喚! さらにマジック、式神オブザデッド!」

「!」

「蘇らせるのは、ジークフリードネクロ! Lv.3で来い!!」

 

場に集うキースピリットの姿、ジークフリードネクロはフィールドに蘇ったことに喚起するかのような咆哮。

 

「トラッシュから何度も召喚。また持ち主同様にしつこいな」

「お生憎様! 俺は、俺達は何度もやられても絶対に勝つまでは諦めねぇ!! ネクロも同じだ。こいつも負けたままで引き下がるような奴じゃない、だから俺は、此奴を新しいキースピリットに選んだんだ!」

「バジュラが聞いたら嫉妬しそうな言葉だな」

「あいつにそんな可愛げはねぇよ」

 

光黄も烈我も心の底からただ今のバトルを楽しむように笑い合う。だが、談笑を交えながらもバトルも終盤、決着の時を迎えるように二人とも真剣な表情に戻る。

 

「これ以上の長話は不要だ! 来い!!」

「あぁ! アタックステップ! ソウルホース、行け!」

 

先にソウルホースに攻撃指示を送ると、鳴き声を上げながら光黄達へと迫って行くが。

 

「だからアタシもいるって事忘れないで! フラッシュでネクロリバース!」

「!」

「効果でゴッドシーカー♰レナ♰をトラッシュから再召喚するよ! 不足コストはヴィーナルシファーから確保し、Lv.2にダウンさせる」

 

フィールドに出現する人形型スピリットのレナ、ネクロリバースで呼び出されたスピリットは召喚時を発揮することはできないが、守る術としては十分。

 

「アタッカーは2体! 一体でも止めれば防ぎきれるよね!! レナでブロ──」

「テメェも俺がいる事忘れてんじゃねぇよ!」

 

宣言を中断させるかのようなドレイクの言葉、そのまま手札を突き出す様に構える。

 

「俺もフラッシュだ! マジック、サンダーテンペスト! 効果で7000以下の相手スピリットを破壊し、1枚ドロー!」

「ドレイク……やってくれるッ!!」

 

マジックにより放たれる轟炎、復活直後のレナへと降り掛かり、炎に飲まれてレナは破壊され、次の手を打つように一瞬手札を見るが、一目見てすぐに手札から視線を外す。

 

「ごめん、悪いけどもうアタシに手はないよ」

「……ライフで受ける」

 

マチアの言葉に対し、光黄もまた同様に打つ手はないのかそのままライフで受ける事を宣言すると、バリアに体当たりし光黄達もまた残りライフ1にまで追い詰められる。

 

「ライフ減少時バースト発動!」

「!」

 

だが打つ手はないと言ってもあくまで手札に限定した場合の話。伏せられていたそのバーストは、グリフィオールの効果で回収したイマジナリーゲート。

 

「バースト効果で黄色のスピリットカード1枚をノーコスト召喚できる! 創造より生まれし幻獣の王にして神の名を持つ大地の化身! 陸獣神ベヒモス、召喚!」

 

地震の如く揺れるフィールド、出現するその巨大な体はただ歩行するだけで大地に激しい振動を起こさせ、咆哮は地面だけでなく大気をも振るわせるその姿は彼女の言った通りまさに大地の化身、そのスピリットこそ、陸獣神ベヒモスの姿である。

 

「ここに来てベヒモス!?」

「ヴィーナルシファーの効果が使えず、破棄し損なったが今となっては好都合だ!」

 

巨大なベヒモスの姿は文字通り壁の如く立ち塞がる。

 

「ネクロの効果でブロックするには1体スピリットを破壊する必要はあるが、まだ俺にはヴィーナルシファーもいる、ブロックする事は可能だ!」

 

ヴィーナルシファーとベヒモスは並んで咆哮を上げ、ネクロも2体に負けじと吼えるが、ネクロだけではどう足搔いてもこのまま決める事はできない。ここまでかと烈我にも一瞬敗北を覚悟するように思考が過り、俯きかけるが、そんな彼の背中をドレイクは殴り飛ばす。

 

「痛ッ!?」

「何躊躇ってやがる! 散々勝つだの云々偉そうに言ってた奴がこれで終わる気か!」

「でも、ネクロだけじゃ!」

「構わねぇ、行け! 勝つんだろうが!!」

 

言い辛そうに歯を喰い縛るが、それでも烈我を強く睨み。

 

「勝つためには何でもするんだろうが!! だったら俺を、信じやがれッ!!」

 

予想だにしないドレイクの一言、だがその一言が何より嬉しかったのか目を輝かせながらその言葉に「あぁ!」と強く返事を返す。

 

「頼んだぜ!! ジークフリードネクロでアタック!!」

 

ネクロが操る紫炎の霊魂がヴィーナルシファーとベヒモスの身動きを封じるかのように拘束するが、ヴィーナルシファーを破壊さえすればベヒモスの拘束は解かれる。

 

「攻撃はベヒモスで────!」

「させるかよ、マジック! ジュラシックスピア!!」

「!?」

「ネクロをLv.1にし、フラッシュ効果!! シンボル2つ以上の相手スピリットを破壊! ベヒモス、消えろォッ!!!」

 

サンダーテンペストで引いた最後の一枚こそ、ジュラシックスピアのカード。マジックの発動と共に出現する炎の大剣、それは身動きの取れないベヒモスをまるで断罪するかの如く振り下ろされ、その炎の一撃はベヒモスを両断し、巨大な体は一気に大爆発を起こす。

 

「ベヒモス!?」

 

「もう俺にやれることはねぇ。後はテメェで決めろ!!」

「分かってる! ネクロ、行っけぇーーッ!!!」

 

爆風の中を突っ切り飛び出すネクロ、手に持つ杖も魔術書も全て投げ捨てて、拳を構えるとそのまま展開されたバリアにありったけの力を込めてその拳をバリアへと打ち付ける。

 

「(ドレイク、アンタはどう思ってるか知らないけどアタシはやっぱいいチームだと思うよ。他の誰でもない、アンタ等こそだから)」

 

衝撃を受けながらもドレイク達の様子にマチアは満足するように見ていた。そしてバトルに対して、心残りがないのは光黄も同じ、二人共に覚悟を決め、そしてネクロの拳がバリアを砕くと、残る最後のライフは破壊される。

 

「「うわあああああああッ!!!」」

 

 

***

 

 

『決着ぅーーッ!! 激闘の決勝戦を制し、今大会の優勝は烈我&ドレイクチームだぁッ!!!!』

 

これまでで一番大きな声援。ミナトや星七達だけでなくこれまで戦ってきた他のカードバトラー達も勝敗に関わらず決勝のバトルを繰り広げた彼らに対し、心の底から敬意を払う様に手を叩き、拍手を送る。

 

『よっしゃぁーーッ!! よくやったぜ烈我!!』

『グッ!! まさか光黄様とマチア様が負けるなんて!!!』

 

烈我の勝利をいの一番に喜んだのは観客席にいるバジュラだった、そして正反対に光黄達が敗れた事に対し、悔しがるライト。ライトにとっては自分の事以上に悔しいのか、目に涙が篭る。

 

『ですが、本当にいい勝負でした。光黄様、次こそ、次こそは!』

『まぁテメェの主人も強者だったよ、けど、烈我だって己の信念で最後まで喰らい付いて見せた。その結果だぜ!』

『フン、いい気にならないでくださいね! 次は絶対、私の力で光黄様に勝利をもたらして見せます!!!』

『あぁ、俺もテメェとはいつか絶対決着を付けてやるよ!!』

 

そのいつかは遠い未来か、近い日に起きる事かは分からない。それでも、その日が必ず来る事をライトもバジュラも確信していた。そしてその隣で星七やミナト、ヘルの3人も健闘を称える様に他の観客達に負けない程の拍手を送る。

 

「烈我君達本当に強くなったね。おじさんと初めて戦った頃よりは比較にならないぐらいにね」

「はい! 烈我、本当に強くなってる。僕も早く烈我とまた戦ってみたいです」

「また戦ってみたいか。そうだね、彼には期待してるし、今よりもっともっと強くなってほしい。そしたら!」

「ヘル、さん?」

「……嫌、こっちの話さ。気にしないで」

 

少しだけヘルの言葉に不信感を感じる星七だったが、またいつものように優しい笑顔を向けるヘルの表情にそれはすぐに杞憂だと思った。深く追及せず、話題を切り替えるようにミナトの方へ視線を向ける。

 

「ミナトはどうでした? 烈我達のバトル」

「あぁ、見てて楽しい最高のバトルだったさ」

「僕も同じです、けど光黄さんもあと一歩惜しかったですね」

「まぁどっちが勝ってもおかしくねぇバトルだったけどな。一番驚いたのはドレイクだ、まさかあいつが烈我と連携するなんて夢にも思わなかった」

「敵とはいえ、真っ向的な性格は烈我と一緒でしたね。何で烈我がドレイクを最後まで信用しようとしたのか、今なら分かる気がします」

「あのバトル馬鹿(烈我)がそこまで考えてるとは思わないけどな」

 

星奈も否定しづらいのか、苦笑いしながらミナトの言葉を聞き入っているが、すぐに「けど」とミナトは言葉を続けていく。

 

「互いに全力でのバトル、光黄ちゃん達も負けたとはいえ、悔いはねぇだろうさ。寧ろ光黄ちゃんに関しては悔いどころか」

「?」

 

何かを知ってるように意味深に口にするミナトの言葉、それにハテナを浮かべる星七だが、軽く笑いながら誤魔化す様に「何でもない」と付け足し、まだ二人の心境を理解してない星奈にとっては疑問が浮かぶのみだった。

 

 

***

 

 

『これより優勝賞品の授与と表情式に移ります。準備の為、会場の皆様しばらくお待ちください』

 

「ドレイク」

「!」

「大会中、色々あったけどこうして優勝できたし、一緒に戦ってくれたこと、礼を言うぜ」

「改まってなんだ気色わりぃ、こんな大会初めから俺一人で優勝はできた」

「相変わらず口悪ぃ奴」

 

ドレイクの態度に文句を言いたげに一瞬睨むが、落ち着くように一息つく。

 

「まぁでも確かにお前の力が無かったら優勝は無理だった。確かに俺達は敵同士かもしれないけど、こうして戦ってすっごく楽しかった。ドレイクも楽しかっただろ?」

「楽しい、だと? 俺が?」

 

マチアにも大会を楽しめと言われた、これまで戦ったバトルはドレイクが最初に言っていた生温いものでは決してない。今までのバトルが鮮明に脳裏に浮かぶ。ドレイクにとってもこれまでにない苛烈なバトルには違いない、だがそれでも烈我の言葉に対し、感情を押し殺す様に歯を喰いしばり。

 

「楽しいなんて俺は思っちゃいねぇんだよ!」

「ドレイク! お前まだそんな事言う気かよ!」

「うるせぇ! 俺はお前等みたいにお気楽じゃいられねぇ! お前みたいに、敵に対してもヘラヘラ笑顔を向けられるような甘ちゃんじゃいられねぇんだ!!」

「お前……!!」

 

声を荒げて強く言い放つドレイク、だがその言葉は烈我に対してではなく、まるで自分に対して戒めとして言い聞かせているかのようだった。

今までになく感情的に叫び、それが自分自身でも意外だったのか口元を押さえるような素振りを見せ、そのまま舌打つとその場から振り返り、ステージを後にしていく。

 

「おい待てよ、ドレイク!」

 

烈我も後を追う様に追い駆け、そんな様子を見ながらマチアは少しだけ悪戯気味に口角を上げて光黄に視線を向ける。

 

「烈我、行っちゃったけど追わないの?」

「な、何の話だ!!」

「話したいことがあるんでしょ、だったら早く追い駆けなよ。アタシは控室で大人しく待ってるからさ」

「余計なお世話だ!!」

 

見透かした様に気を利かすマチアに、怒り気味に言い放つものの、顔を赤くしている彼女の表情に、自分の考えが光黄にとって図星である事を確信するのに充分。

 

「ホラ、いいから早く!」

「う、うるさい!!」

 

自分の考えが読まれている事に腹正しさを感じ、マチアを一瞥しつつも、彼女もまた烈我の後を追い、その場を後にしていく。

 

「まっ、頑張りなよ」

 

そんな彼女の後姿に対して小さく呟きながら先に控室へと戻って行く。

 

 

***

 

 

「クソッ、ドレイクの奴どこ行ったんだよ」

 

ドレイクの後を追っていた烈我だったが、完全に見失ったように辺りを見回していた。そこへ後ろから「烈我!」と自分の名前を呼ぶ声、振り返るとそこには息を切らしながら自分を追い駆けてきていた光黄の姿があった。

 

「光黄!? どうしたんだよ! そんな慌てて!!」

「……その、お前がまた突っ走るから、つい」

「もしかして、また俺の心配してくれてたとか」

「ま、まぁそんな所だ」

 

本心は別なのだが、やはり恥ずかしいのか咄嗟に嘘をつくように烈我の言葉を肯定してしまう。

 

「それより烈我、優勝おめでとう」

「おぉ! 決勝、いい勝負だったぜ、お前にも勝てただなんて、今でも信じれない」

「……お前の力があってこそだ、自信をもって胸を張れ」

「サンキュー! お前にもそう言ってもらえるなら、なんか誇らしい気分になるな」

 

光黄からの言葉が心底嬉しい様に笑って見せる烈我、その様子に彼女はまた少しだけ顔を赤くしながら。

 

「……な、なぁ烈我。それより、俺に勝ったんだ。何か、言いたい事があるんじゃないのか?」

「言いたい事?」

「その……お前が、いつも言ってるアレだ」

 

恥ずかしいと思う気持ちが強くなり、それ以上はとても彼女の口からは言えない。一方で何かを問うような光黄に対し、少しだけ考え込むように間を置きつつ、何かを察したように思い出す。

 

「もしかして勝ったら告白するって事?」

「そ、そうだ。いつもみたいに言わないから珍しいと思ってな」

 

烈我からわざと視線を外しながら言い、今までになく顔が赤く染まり、とても烈我の目を見て話す事などできなかった。だが、烈我の返答は。

 

「あー、だって今回の大会についてはそれはできないと思ってさ」

「!?」

 

予想外な烈我の言葉、先程まで顔を赤く体温が熱くしていたにも関わらず、その一言を聞いた瞬間、一瞬で体温が下がるのを感じた。

 

「何で!?」

「いや、だって今回タッグバトルだったし、それにお前に勝てたのだって俺一人の力じゃない」

 

あくまでもドレイクがいたからこそ勝てた。謙遜ではない、カードバトラーとして自分の一人の実力では決して勝てないという事を自覚していた。

 

「これで自分自身の力で勝てたって過信して告白なんかしたらお前だって怒るだろ?」

「は?」

「だからもっと強くなって、今度こそ自分の力で勝って正面から堂々と告白してやるぜ!!!」

 

次の機会はとこれからの挑戦に燃える烈我だったが、一方で光黄はと言うと、わなわなと震えながら怒りを募らせるかの如く拳を握りしめ。

 

「光黄?」

「このバトル馬鹿ぁーーッ!!!」

「えっ!? 何怒っt」

 

弁明の余地はない、そのまま烈我にビンタを叩き入れ、乾いた音をその場一帯響かせ、一撃を受けた烈我は顔を腫らして目をまわしながらその場に倒れる。

 

「おろろ……!」

「お前なんかもう二度と知るか!!」

 

怒り気味に来た道を戻り、烈我に振り替えることなくその場を立ち去って行き、ノックアウトされた烈我の気が付くのは彼女の後ろ姿が見えなくなる頃だった。

 

「う、うぅっ……光黄の奴、素直に祝ってくれたかと思ったのに、やっぱ相当悔しかったのかよ」

 

彼なりに理由を考えど彼女が何に腹を立てていたのか、その心情は今の烈我には知る由もないのであった。

 

 

***

 

 

「(あの馬鹿! あの馬鹿!! あの馬鹿!!!)」

 

烈我と別れ、未だ苛立っているように感情を荒立たせ、それが行動にも表れる様に歩く足も自然と早くなるが、暫くして徐々に速度を落とし始めたかと思うと、人気のない場所で一人足を止める。

 

「(あの、馬鹿……)」

 

先程まで荒ぶるような感情は途端に消沈し、瞳に悲しみが篭る。

 

「(ようやく俺、待たなくていいと思ったのに)」

 

烈我の勝利を心の底から祝福し、烈我の勝利を本人と同じぐらい喜んでいたのはその時が来ると思っていたからだ。あくまでそれが全てという訳ではないがようやくその時が来ると心待ちにしていた彼女にとって、烈我の言葉はあまりにも堪えてしまった。

 

『大丈夫ですか?』

 

そんな彼女に声を掛ける人影、振り返った先にいたのはスタッフらしき一人の女性。先程まで取り乱していたせいで全く気付けていなかった。

 

「何でもないです。もしかしてもう表彰式の時間ですか?」

「いえ、時間はまだありますが相当お疲れみたいですね」

「別に平気です。何でもないですから」

 

そう言ってその場を後にしようとするが光黄が背を向けた瞬間、女性は何故か笑う様に一瞬口角を上げた。

 

「遠慮は無用ですよ」

「えっ?」

 

女性が言葉を口した後、何時の間にかその女性はすぐ背後に立ち、気付いた瞬間には既に間に合わず、そのまま女性は背後から片腕で光黄の首を絞め、もう片腕で口を押さえつける。

 

「ッッッ!!?」

「どうぞ、暫し眠っててください」

「(此奴……気配を全く感じなかった!?)」

 

最初に気配に気づかなかったのは感情の乱れによる物ではない。初めからその女性は自分自身の気配を断って近付いていた。

 

「ぐっ……ッ!!……お前、一体……!」

「あなたが気にする必要はありません、ただ用が済むまで眠ってくれればいいのですから。白雪の様なお姫様として、ね!!」

 

狂気な笑みを浮かべながら女性は腕にさらに力を籠め、息ができず意識が遠のいていく。

 

「(ァ……れ、つ……が……)」

 

意識を完全に失い、その場から崩れ落ちる光黄の体を支える様に受け止める女性。

 

「さぁ準備は整ったわ。全ては、ルディアの様の為に!」

 

不穏を示す言葉を口にし、そのまま光黄を抱き抱えて暗闇の中へと姿を消して行く。 




決勝戦後編、遂に決着です。
まさかダークヴルムノヴァを過労死させる羽目になるとは(笑)

今まで主人公のスピリットは赤が主体としてましたが、今回タッグバトル編という事で烈我に紫デッキを握らせましたが、やられてもやられても再びスピリットと共に立ち上がり、バトルに挑む戦い方は主人公らしいのではないかとちょっと慢心してます←

色々ありましたが、今回でタッグバトル編は完結です。
アニメでもあまり見る機会のなかったタッグバトルですが、小説で書くのは色々新鮮でとても楽しかったです。烈我と組んだドレイク、色々彼にも事情というものがある事を仄めかしてますが、ドレイクについてはまた別の話で取り上げれればと思ってます。


一方でストーリーは新たな不穏な影、今後の展開にも力を入れて行きますので是非とも次回もよろしくお願いします。



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