バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第15話【ドレイクの覚悟! 恐竜覇者顕現!!】

決勝を終え、表彰式の準備の為に暫く観客や選手たちは待機状態。烈我もまた一人、退屈そうに控室で待っているが、そこへコンコンとドアをノックする音が響いたかと思うと、ドアが開きミナトや星七、それにバジュラ達の姿があるが、ドアを開けて烈我を見た瞬間、全員思わずぎょっとしたように驚きの表情を浮かべた。

 

「烈我……お前それ、どうしたんだよ」

 

そう言ったミナトの視線に写ったのは頬を真っ赤に腫れ上がらせた烈我の姿があった。

 

「あの、何があったんですか?」

「……実はさ」

 

気不味そうに尋ねる星七に対し、溜息混じりに事の顛末を語るが。

 

 

***

 

 

「そりゃお前が悪いな」

「俺が!!?」

 

事情を聞いた後、開口一番に言い切るミナト、立場が逆転したように今度は烈我が驚いたように声を荒げる。

 

「何で俺が!! 俺が何したって言うんだよ!!!」

「しいて言うなら何もしてないのが悪い」

「はぁ!!?」

 

「エヴォル、理由分かる?」

『さぁな。ただ無闇に関わらない方がいいのは確かじゃ』

 

事情を知ってるミナトにとって、光黄の怒る理由は大体察しがついているが、烈我には知る由もない。星七も分かっていない様にエヴォルに尋ねるが、首を振りながら答える。

 

『ともかく相当の怒りみたいだな、日頃の行いに問題がなかったか胸に手当てて考えてみろ』

『そうですとも!! いつも光黄様にべたべたして、いい気味です!』

「あぁ? お前等にんな事言われる筋合いねぇよ!!」

 

バジュラとライトに対して強く言い返し、ライトもまた『何ですか!』と張り合うように睨み返しいつもの様なやり取りを避わすが、そこへまたコンコンとドアを叩く音。

音にライトと烈我も言い争いを止めたかと思うと、ドアを開け姿を見せたのはマチアだった。

 

「お前……!」

「どうも、決勝では随分楽しませてもらったね」

 

既にマチアは七罪竜の事は周知済、バジュラ達も特に隠れる様子はなく、そんなバジュラ達にも挨拶を交わす様に手を振る。

 

「やぁやぁ初めまして、マチアちゃん。挨拶するのは初めましてかな」

「ミナト、お前相変わらずかよ」

 

『美しきお嬢様、失礼をしてすみません。私、光黄様の執事をしておりますライト申します。どうかご挨拶代わりにこれを』

 

ミナトに負けず劣らずライトもマチアに対してアピール。バラの花束を差し出され、「どうも」とやや困惑しながらに受け取る。

 

『おい色欲、テメェの相棒に言い付けんぞ?』

『ちょ、それは卑怯でしょうが!!』

「二人共そんな事してる場合か!!」

 

いい加減にしろ、と言わんばかりにバジュラとライトを叱咤。二人が静かになると同時にマチアに向き直る。

 

「何しに来たんだよ?」

「アンタに聞きたい事があってね。光黄がまだ戻ってきてないから何か知らない?」

「!? 光黄に何かあったのかよ!!」

 

マチアの言葉に烈我の表情は途端に変わる。既に光黄と別れてから時間もそれなりに経つ、それなのに戻っていないと言うのは当然気が気でならない。

 

「それが分からないから、こうしてアンタに聞きに来てるんでしょ」

 

最もらしいマチアの言い分。だが烈我にとっては光黄に何かあったのではと不安で仕方なく、その不安を振り払うかのようにすぐさま部屋を飛び出し、走り出していく。

 

『光黄様が……!』

『おいライト、俺等も烈我と一緒に探すぞ。ついて来い』

『何で私がお前と?』

『言ってる場合か、テメェも相棒が心配なんだろ?』

『それはそうですが』

『だったら四の五の言わずに来るんだよ!』

『全く、これで貸しを作った気にならないでくださいね!!』

 

ライトとバジュラも烈我の後に続いて部屋を飛び出し、星七とミナトも「俺達も!」と顔を見合わせる。

 

「ちょっと、アタシは」

「折角来てもらってごめんね。けど光黄ちゃんは仲間だし、俺等も心配なのよ。また今度ゆっくりお話でもね」

 

星七とミナトの二人もその場から立ち去り、一人残るマチアは茫然と彼らの様子を眺めながら。

 

「仲間、か」

 

何かを想うかのように呟くと、そのままマチアもまたその場から立ち去る。

 

 

***

 

 

「クソッ、見つからねぇ」

『もっとよく探してください!』

「分かってるよ!!」

 

苛立ち混じりにライトに返事を返しながら会場内を隈なく走り回るが、一向に見つかる気配はない。数時間走りっぱなしで駆け続け、さすがに息も限界、その場で膝に手を置き、息を整える為に立ち止まる。

 

「おーい! 烈我」

「!」

 

烈我達とは逆方向から走る寄るミナト達、同じように光黄を探してくれているミナト達からの朗報を期待するも、それに応えられない様に首を振って返事を返す。

 

「……どこ行ったんだよ、光黄の奴」

 

小さく呟く声とは裏腹に不安が募る大きな感情、それを表す様に拳を強く握りしめる。

 

「烈我、一旦スタッフに聞いてみましょうよ」

 

星七の指差す方向にはスタッフらしき女性の姿、闇雲に探しても到底見つかる訳がない。手掛かりになれば願いを込めてとスタッフに駆け寄って行き、その女性も烈我達に気付いた様子で。

 

「おや、皆様どうされました?」

「あの、光黄……大会出場選手の黄空光黄、見ませんでしたか?」

 

藁にも縋る思いで尋ねる。

 

「光黄さんですね。お見掛けしましたよ」

「!……ホントに!?」

「えぇ、彼女なら──」

 

安堵するような烈我達の表情、それを見ながら彼女は言葉を続けて行く。

 

「彼女なら、こちらで身柄を預かってます」

「えっ?」

 

まるで希望を裏切るかのような一言、一瞬言われた事の意味が分からず、呆気に取られたように漠然とした。

 

「な、何を言って?」

「言った通りです。光黄さんの身柄はこちらで預かってます、無論人質として」

「「!!」」

 

衝撃的な言葉、当然動揺を隠せる筈もなく、そんな烈我達の表情に女性はまるで楽しむかの様に歪んだ笑みを見せる。

 

「その動揺しきった表情いいわね、それでこそ攫った甲斐もあるってもの」

「お前、一体!」

「そう言えば挨拶が初めてだったわね。私の名はディスト、罪狩猟団、帝騎が一人ディスト。それが私の名よ」

「!?」

 

帝騎の一人、それは完全に烈我達の敵である言葉を指しての意味。歪んだ笑みを浮かべる彼女に対し、烈我達も完全に敵対する様に敵意を込めて睨む。

 

「光黄をどこにやった?」

「第一の質問がそれかしら?」

「うるせぇ!! いいから光黄を返せッ!!!」

「彼女は人質と言った筈よ? 人質を用意した意味、それが分からない程お馬鹿さんじゃないでしょう」

「ッ!!」

 

歯噛みしながら堪える様子の烈我に、ディストと名乗る彼女は言葉の意味を理解したと取ると、そのまま続きの言葉を口にしていく。

 

「私の要求は分かってると思うけど当然七罪竜。バジュラブレイズ、ライトボルディグス、キラーバイザーク、エヴォルグランド、あなたたちの持つ七罪竜全てを引き渡しなさい。断れば当然、光黄って子の安全は保障しないわよ?」

「!!」

 

素直に要求を呑める訳はない、しかしその反論を抑え込む様に釘を刺す彼女の言葉に、烈我達は飲み込むしかなかった。

 

「引き渡しの場所は会場外の第1区画、詳しい場所はここに記しておくわ」

 

地図を烈我に渡し、次に時間を決める様に時計に視線を向けると。

 

「そうね表彰式が始まるまでがタイムリミットにしようかしら」

「!!」

「表彰式は1時間弱、だから大体30分以内かしら。それまでに指定の場所での引き渡しに応じないなら、勿論」

 

邪悪な笑みを浮かべ、最後にその場を立ち去ろうとするが誰かに気付いたように足を止める。

 

「おやおや、こんな所で盗み聞きかしら? ドレイクさん」

 

笑いながらそう言った彼女の視線の先に居たのは紛れもなくドレイクだった、一部始終を見ていたのか、ディストの姿にドレイクの表情は苛立った様子。

 

「おい、テメェが何でこんなところに居やがる」

「あら、同じ質問は私も貴方に対して言えるわよ。どうしてこんな所で呑気に大会に参加してるのかしら? それも、敵である此奴等と仲良くチームなんか組んで」

「そいつと仲良くした記憶なんか一秒たりともねぇよ!」

「ふふっ、まぁシラを切るならそれでもいいわ。貴方の目的がどうあれ私には私の目的がある、その為に態々この大会に潜入したんだから」

「!」

「まぁ精々手柄が欲しいなら貴方は他の獲物を狙う事ね」

 

そう言い残してその場を立ち去り、残ったドレイクに烈我達は視線を向ける。

 

「ドレイク、貴方もやっぱりあのディストって人と同じだったんですね」

 

真っ先にドレイクに問いかけたのは星七、まだドレイクについて詳しく知っている訳ではないが、それでも準決勝を争い、烈我のパートナーである彼が悪い人ではないと思う気持ちが少しずつ芽生えていた。にも関わらずそれを裏切られたような気分だった。

 

「俺と奴が共謀してるとでも?」

「今はまだかもしれませんね。けど、ディストって奴の作戦自体にはいつ協力してもいいって思ってるんじゃないですか?」

「何?」

「だって、あなたもディストも共通して七罪竜が狙いの組織。協同にしろ、そうじゃないにしろ、どの道、組織としての目的は果たせる。ならその方が都合がいいじゃないんですか」

「…………じゃぁ、そうだったとしたら、どうするよ?」

「こいつ!!」

 

開き直ったようなドレイクの態度に星七も強い敵意を込め、ライト達もドレイクに対し構えるが。

 

「やめろッ!!」

 

そんな二人の対立を真っ先に止めたのは烈我だった。烈我の様子に星七もミナトも少しだけ驚いた様子だったが、烈我は黙ってドレイクに視線を向ける。

 

「ドレイク、下手な嘘つくなよ」

「あぁ?」

「お前はそんな真似しないだろ、俺はそう信じてる」

「信じる、だと?」

 

疑う星七達とは正反対な態度の烈我、だが安易に信じるといったその言葉にドレイクは気に入らないように舌打つ。

 

「テメェは俺の何を知ってる? この大会中で組んだってだけだろうが!」

「あぁ、だから俺にとってはそれで充分なんだよ」

「はぁ?」

「敵としても味方としてもこいつと戦ってそのバトルをずっと見てきた、こいつが卑怯な手を使った事は一度だってない、真っ直ぐ正面から戦って来た! だから自信を持って言うぜ、お前はあいつみたいに卑怯な事は絶対にしない!」

「根拠もねぇ癖に。テメェは……!!」

 

烈我の言葉にとうとう我慢できなくなったのか、そのまま胸倉を掴みながら怒りを込めたように睨んで、声を荒げる。

 

「好き勝手虫のいい事ばかり言いやがって!! 信じるだの何だのうぜぇんだよ!! 俺を信じてその次は何だ! アイツの情報を渡せとでもいう気か!!」

「……」

「俺は前からテメェの舐め切った態度が許せねぇんだよ!! 俺が欲しいのは力、バジュラブレイズ!! 俺が求めるのはそれだけなんだよ!!!」

 

それもドレイクの本心には違いない、それは烈我にも分かってる。だがそれでもなお、真っ直ぐ見るその表情を変えず、その目にドレイクは静かに胸倉を掴む手を下ろす。

 

「……ドレイク、虫の言い話だと思う。けど、どうしても光黄の手掛かりが欲しい、アイツを助けたい! 例え敵だとしても、お前しか、お前だから頼りたいんだ!」

 

敵同士という立場はもはや関係ない。

 

「だから、頼む……! ドレイク!!」

 

知ってる事を話してくれと必死に懇願するようにドレイクに訴えかけるがそれでもドレイクは。

 

「失せろ、テメェに話す事はねぇ」

「ドレイク!」

 

「もういい、烈我」

「ミナト!」

「こんな所でグダグダしてる暇はねぇ。勿論お前が此奴を信じようが信じまいが、説得する暇はねぇ」

「!!」

 

冷静なミナトの言葉、時間は限られる今これ以上話は無用な様に「行くぞ」とだけ告げてその場を後にし、星七も直ぐ続き、烈我も後を追うとするがまだドレイクが気掛かりなように視線を向けつつ、やむを得ずその場を後にし、その場にドレイクは一人残るが。

 

「……マチア、いるんだろ?」

 

何時から見ていたのか、ドレイクの言葉に対し背後の物陰から静かにマチアはその姿を見せる。

 

「察しがいいね。まぁ気付いて当然か」

「うるせぇ、それよりテメェ何時から見てた?」

「さぁ、何時からだろうね」

 

質問をはぐらかすように笑うが、先程から感情を荒げすぎたのか、さすがにこれ以上怒る余力はなく、呆れたように溜息を零す。

 

「もういい。それより聞かせろ。お前ディストに情報を渡したのか?」

「いいや、渡してない。恐らくアイツは自力で情報を掴んだ、烈我の七罪竜を狙ってね」

「……そうか」

「ドレイク、分かってるけど私達の目的は別にあるよ」

「分かってる」

「目的はこの大会の優勝したその先、もう優勝自体は果たしてる」

「分かってるつってんだろうが!」

 

念を押すようなマチアの言葉をうっとおしそうに返事を返すが、そんなドレイクに対し、少しだけ笑うと。

 

「分かってないよ」

「あぁ?」

「第一目的は果たしてる。だからこの先には支障はほぼないよ。仮にアンタがどう動いたとしてもね」

「!」

「アンタの好きに動きなよ。アタシは別にアンタを止めたりしない」

「……何でテメェと言い、アイツと言い、知った風な口利きやがんだ。イラつくんだよ、テメェ等のそういう所が!!」

 

先程の烈我の言葉や今のマチアの態度に対し、拳を握りしめながらも。

 

「…………マチア、一つ聞かせろ」

「どうする気?」

「ただの野暮用だ。いいからとっとと教えろ!」

「やれやれ、何が聞きたい?」

 

呆れたような溜息混じりだが、それでもドレイクから聞かれる質問に対して彼女は即答し、それを聞き終えるとドレイクもその場を後にしていく。

 

「本当にアンタも素直じゃないね」

 

行動の意図を分かり切っているのか、ドレイクの後姿にそう言葉を送り、彼女もその場から立ち去って行く。

 

 

***

 

 

「やっと来たわね」

 

ディストの指定した場所に現れる烈我達の姿に、最初から待っていたであろうディストも顔を見せる。

 

「光黄はどこだよ?」

「先に貴方達の持つ七罪竜を引き渡す事ね」

「ふざけんな! 光黄を返せ!!」

「それはできない相談よ」

 

「んだと!?」

「落ち着け、烈我」

 

何食わぬ顔で平然と言ってのけるディスト、そんな彼女の態度に今にも掴み掛からんとするが、寸での所でそれをミナトが止める。

 

「どういう意味か、説明してもらってもいいかな、お姉様?」

「フフ、君みたいな物分かりのいい子がいるなら助かるわね。いいわ、教えてあげる、黄空光黄、あの子はこの場にはいない。別の場所で彼女は隔離させてもらってる」

「!!」

「勿論、居場所を教えるのも開放するのもバジュラ達を受け取った後にさせてもらうわ」

 

「それじゃあ光黄を解放する確約にはなんねぇだろうが!」

 

烈我の怒りも最もだが、その怒りディストにしてみれば知った事ではない。

 

「こっちとしてもあの子を素直に開放する訳には行かないのよ。意思を持つバジュラ達、あの子を解放した途端に逃げ出されたんじゃ溜まった物じゃないわ」

「そっちだって、バジュラ達を引き渡して光黄を返す保証はねぇだろ」

「信じる信じないはそっちの勝手にすればいいわ。あの子がどうなってもいいのならね」

「ぐっ!!」

 

烈我達の心情を完全に読み切っているような一言、それに対して返す言葉はなかった。

 

「……バジュラ達を渡せば、光黄の居場所を教えてくれるんだろうな」

「えぇ、約束するわ」

 

不敵に笑うディストの言葉は到底信用しきれる物ではない、だが今は唯ディストに従う以外に他ない。

 

『……初めてです。綺麗な美人なのに、全然気乗りできないのは』

『俺は元からだ。だからあの組織は嫌いなんだよ』

 

ディストに対し嫌悪するようなライトとバジュラだが、それでも烈我達の意思を汲み取る上で抵抗する意思を見せる訳には行かなかった。

 

「バジュラ、ライト、ごめん」

『分かってます。光黄様の為ですから』

『あぁ、その代わり烈我。捕まっても、後で必ず助けに来い』

 

「エヴォル、今だけは」

『分かってる。そう悲しそうな顔をするな、直ぐにお主等が迎えに来てくれることを信じてる』

 

「キラー、お前もいいか?」

『俺様には関係ない事なんだがな。まぁ、上に立つ者として、下の者を見捨てる訳にも行かねぇか』

 

バジュラとライト、そしてエヴォルとキラーもカードの状態に変わると、4枚のカードを代表して烈我が持ち、それをディストに渡すべく歩み寄って行くが。

 

 

「そうよ、イイ子ね」

 

ディストは黙って手を差し出し、それに歯噛みをしながらもカードをディストへ渡そうと手を伸ばしていく。

 

 

 

『馬鹿共が、揃いも揃って阿保正直に従ってんじゃねぇよ』

「「!!」」

 

あと一歩、ディストへ歩み寄る直前に彼の足を呼び止める様な言葉、聞き覚えのある声にその場の全員が声の方角に視線を向けると、そこにはドレイクの姿があった。

 

「ドレイク!!」

「ドレイク、アンタが何故ここに……!!」

 

何かに気付いた様なディストの反応、それに烈我達も気付くと、ドレイクと彼に担がれる光黄の姿があった。

 

「『光黄(様)!!!』」

 

光黄の姿にカードの状態だったバジュラ達は一斉に元の姿に戻ると、真っ先にライトと烈我はドレイクと光黄の元へ駆け付け、ドレイクは黙って担いでいた光黄を烈我に引き渡す。

 

「ドレイク、お前!」

「勘違いすんな、俺は俺の獲物を横取りされたくなかっただけだ」

 

その獲物と見定めるは当然バジュラであり、バジュラの姿を一瞥した後、次にディストへと睨むような視線を向ける。

 

「貴方が何故ここに? いえ、そもそもどうして人質の居場所を!?」

「俺は聞いただけだ、この近くでできる人の寄りそうもなく、あまり知られていない無人の建物があるかどうかだ」

「聞いた? ひょっとしてあの女か……!!」

 

心当たりがあるとすれば当然情報に長けたマチアによるリークだろう。舌打つ様なディストに対し、ドレイクは口角を上げて見せる。

 

「休憩がてらに立ち寄って行って見ればそこの女が一人、邪魔だったんでここに運んできた訳だ」

「白々しい……!! 一体どういうつもりなの!! 折角の人質を!!」

「人質だと? んな汚ぇ真似を平然としていい道理がある訳ねぇだろ。帝騎としての誇りはどこにやった!!」

「帝騎としての誇り? 帝騎だからこそ、どんな手を使ってでも目的を達する覚悟がいるのよ!!」

 

対立するように言い争う両者だが、一方で光黄が解放された事で、もう躊躇う必要はなく烈我はそのままデッキを構えディストを睨む。

 

「お前! よくも光黄を!!」

 

怒りに燃える様にそのまま挑み掛からんとするが、それに対しドレイクは手を突き出して烈我が飛び出すのを防ぐ。

 

「!」

「お前は引っ込んでろ、これは俺の問題だ」

「ふざけんな!! 俺だって黙ってられねぇよ!!」

「いいからテメェはその女についてろ、まだ意識だって戻ってねぇ筈だ」

「け、けど!」

「黙って引け、これは俺のケジメでもあるんだよ。邪魔すんじゃねぇ」

「!!」

 

強い意志を込めたような目に烈我は言い返せず、ディストと協力するのではと疑っていた星七も同じく言葉を失った。

 

「バトルしろ、ディスト」

「本気なの? それもちっぽけなプライドの為に!!」

「ちっぽけなのはテメェの汚ぇやり口だ。俺の獲物を奪う奴は誰であろうと容赦しねぇ」

「容赦はしないのはこちらの台詞よ、邪魔をした報いを受けさせてあげる!!」

 

両者デッキを取り出し、そのままドレイクは手に持つキューブを足元に投げ込む。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!!」」

 

宣言と共に、二人の姿はバトルフィールドへと転送される。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

バトルフィールドに立つディストとドレイクの二人。

 

「おいディスト、一つだけ聞かせろ」

「?」

「もしあいつ等が要求を素直に従ったとして、お前……あの女を解放したか?」

「何言ってんだか、そんなの当然」

 

ドレイクの質問に対し、数秒間を置いた後に彼女は笑う様に口元を緩ませる。

 

「当然…………する訳ないじゃない!」

 

笑いながら語る衝撃的な発言、怒りと動揺の反応を見せる烈我達だが、彼女と向き合うドレイクはあくまで冷淡に「やはりな」と、彼女の考えは初めから分かったような口振りで言葉を吐き捨てる

 

「貴方だって分かってるわよね? 散々ルディア様の邪魔をしてくれた連中。このまま全員捕まえて二度と邪魔できないようにするのが一番得策。それがルディア様の為なのよ」

「相変わらずだ。テメェの下種なやり方……反吐が出るんだよ」

 

見下したような冷たい言葉、その目には心底彼女に対して嫌悪感を抱き、そんなドレイクにディストもまた気に入らない様に表情を歪める。

 

「偉そうに言わないで貰えるかしら? 貴方も所詮同じ穴の狢の癖に」

「黙れ! テメェと一緒にすんじゃねぇ。こんな汚い真似しなきゃ戦えねぇ弱い奴と俺を、一緒にすんじゃねぇよッ!!」

 

ディストの言葉を切り捨てるように声を荒げるが、そんなドレイクの言葉を聞き流すように軽く鼻で笑う。

 

「汚いだの綺麗だの言ってる余裕はないのよ。以前言わなかったかしら? あのお方、ルディア様に誠心誠意尽くす事が私達、帝騎の務め。尽くす為の手段は選ばない!」

 

狂気に近い忠誠心、それは彼女の表情だけで烈我達にもはっきりと伝わった。だからこそ彼女でにとって今回自分の計画を邪魔立てしたドレイクの行動については当然許せる物ではない。

 

「その手段を邪魔する奴は誰であろうと許さない。このバトルはいわばアンタの粛清よ」

「ほざけ。ボスならいざ知らず、テメェ如きに負けるかよ!」

 

互いにデッキからカードを手に取ってバトルへ意識を切り替え、試合はディストからの先行。

 

 

 

 

────第1ターン、ディストside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「私のターン、キャメロットポーン、キャメロットナイトをそれぞれLv.1で召喚し、さらにバーストセット。これでターンエンド」

 

 

────第2ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「こっちもバーストセット。骸竜ゾンサウルとロクケラトプスをLv.1で召喚、アタックステップ! ゾンサウル、喰らえ!」

「キャメロットナイト、止めて」

 

骸竜の名の通り化石の様な姿を持つゾンサウルは生身を持つロクケラトプスと同等以上の咆哮を上げ、大地を掛けて突っ込み阻もうと前進するキャメロットナイトをいとも簡単に踏み潰す。 

 

「相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動! フレイムバースト!」

「!!」

「効果でBP3000以下のスピリットを全て破壊」

 

灼熱の炎が即座にフィールド全域に燃え広がると、炎はゾンサウル、ロクケラトプス、キャメロットポーンの全てを巻き込み、炎に飲まれたスピリット達は一斉に爆発を起こす。

 

「これで終らないわよ? キャメロットナイトの【不死】の効果、トラッシュからキャメロットナイトを再召喚!」

 

残り火に集う紫の瘴気、塊となって膨れ上がったかと思うとキャメロットナイトが再び瘴気を振り払って冥府より蘇り、ケタケタとまるで笑っているかのように奇怪な声を上げる。

 

「いきなりスピリット、全滅したみたいね」

「まだ序盤だ、この程度で勝ち誇んじゃねぇよ」

「へぇー、ならもっと足搔いてみてよ!」

 

 

────第3ターン、ディストside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]3枚。

[Field]キャメロットナイトLv.1(1)BP1000。

 

「私のターン、十式戦鬼死鬼若丸を召喚し、アタックステップ! 十式戦鬼死鬼若丸でアタック!」

 

その宣言と同時に腰元の脇差を引き抜き、地面に突き刺すと力を蓄える様にディストのライフの一つを己に取り込む。

 

「死鬼若丸の効果、ライフ1つをこのスピリットに置くことでコスト3以下の「妖怪」、または「魔影」を持つスピリットをノーコストで召喚。蘇らせるのはキャメロットポーン!」

 

再びフィールドに蘇るキャメロットポーン、死鬼若丸の攻撃はなおも止まらず、そのまま刃でバリアを切り裂き、ライフを砕く。

 

「ッ! ライフ減少時でバースト発動だ!」

「!」

「大凶龍ギガノマガツカミ、Lv.2で来い!」

 

突如地面から伸びる巨大な手、その手は蘇ったばかりのキャメロットポーンを鷲掴みにすると、大地を突き破り、キャメロットポーンを掴む手以上に巨大な体躯を誇るスピリット、ギガノマガツカミが姿を見せる。

 

「バースト効果、BP17000以下のキャメロットポーンを消し飛ばせッ!」

 

手を放してキャメロットポーンを放り投げると、そのままもう片手に掴んだ大刀を振り下ろして両断、キャメロットポーンを破壊する。

 

「やるわね。けどこちらも相手によるスピリット破壊後でバースト発動させる!」

「!」

「バースト、双光気弾。効果でデッキから2枚ドロー」

 

やられてもただでは起きない。二枚のカードを手札に加えながら笑って見せる。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 

────第4ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]3枚。

[Field]大凶龍ギガノマガツカミLv.2(3)BP20000。

 

「俺のターン、恐竜同盟ステゴラールを召喚! さらにマジック、ダイノパワー、効果で俺の地竜全てをBP+3000」

「お得意の戦法ね、私のスピリットを破壊しに来るつもりかしら?」

「当然、根絶やしだ!! アタックステップ、ギガノマガツカミ、ステゴラール殺れッ!!」

 

攻撃の宣言と同時に駆け出す二体、ステゴラールはアタック時の効果で1枚カードをドローし、ダイノパワーの効果でキャメロットナイトに指定アタック。尻尾から繰り出す一撃を叩きつけて破壊する。

 

「次だ、ギガノマガツカミで死鬼若丸に指定アタック!」

 

死鬼若丸の前へと壁の如く巨大な体が迫り、自身の体格以上の大刀を振り下ろすと、その一撃によって押し潰され破壊される。

 

「エンドステップ、ダイノパワーを俺の手札に戻す」

 

 

────第5ターン、ディストside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

[Field]なし。

 

「バーストセット。さらにストロゥパペット、キャメロットポーンを召喚しマジック、キラーテレスコープを使うわ」

「!」

「マジックの効果で私のスピリットは疲労状態の相手スピリットをアタックできるようになる。貴方のダイノパワーと同じよ」

「それだけか?」

「いいえ、もう一枚使わせてもらうわ。さらにマジックでベリアルドロー!」

「また小細工か」

「私の手札はもうないの。だからできる手は小細工でも何でも使う、目的の為なら手段は選ばないのよ。組織としても、バトルにしてもね!」

「御託はいい、さっさと来な!」

「言われなくても! アタックステップ、キャメロットポーンでギガノマガツカミに指定アタック!」

 

槍を掲げてギガノマガツカミに特攻を仕掛けるが、力の差は歴然。向かってくるキャメロットポーンをいとも簡単に踏み潰し破壊する。

だが、破壊されたとてただでは転ばない。

 

「ベリアルドローの効果でデッキから2枚ドロー、さらにキャメロットポーンが破棄された事で、キャメロットナイトを【不死】の効果で再召喚!」

 

再び奇怪な笑い声を上げて冥府より舞い戻るキャメロットナイト。

 

「今度はキャメロットナイトでギガノマガツカミに指定アタック!」

「無駄だ! 返り討ちにしてやれッ!」

 

飛び掛かるキャメロットナイトだが、ギガノマガツカミは巨大な腕でハエの様に叩き落とし、地面に叩きつけられ破壊される。

 

「ベリアルドローの効果で2枚ドロー、さらに自分の魔影を持つスピリットが破壊された時、手札のこのスピリットを召喚できる!」

「!!」

「冥府の亡霊を糧に生きる月光の鬼、月魂鬼神スメラギンガ、召喚!!」

 

月下の光を浴びながら姿を現す鬼神──スメラギンガ。鞘に納めた剣を月の光に照らすように掲げて唸りを上げる。

 

「ストロゥパペットでギガノマガツカミに指定アタック!」

 

ストロゥパペットはギガノマガツカミに向かって行くが結果は同じ。簡単にストロゥパペットを踏みつぶして破壊し、その破壊をトリガーにして2枚のカードをドローし、キャメロットナイトは【不死】の効果で舞い戻る。

 

「これだけ手札を稼げればもう充分、スメラギンガ! ステゴラールに指定アタック!!」

 

手札を十分に補強した事で満足したのか、反撃に転じてスメラギンガはステゴラールへ迫ると、そのまま剣でステゴラールを引き裂いて、破壊。

 

「まだよ! キャメロットナイトでアタック!」

「ライフだ!」

 

槍をバリアに突き刺し、ライフを奪って行き、衝撃に顔を歪める。

 

「があッ!!」

「フフフ、苦痛に満ちたその表情、堪らないわ」

「この変態サディストが」

「何とでも言うがいいわ、このバトルは貴方への粛清! その痛みと苦痛を持って、自分の行動が愚かだったと後悔させるためのね!! ターンエンド」

 

 

────第6ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]4枚。

[Field]大凶龍ギガノマガツカミLv.2(3)BP20000。

 

「テメェの悪趣味に付き合うつもりはねぇんだよ! 創界神スサノオを配置だ」

 

配置時効果により3枚のカードをトラッシュに送られ、送られたカードは「冥界の処刑人カルノ」、「ブラックウォーグレイモン」、「暴双恐竜スーパーディラノス」の3枚。全て神託対象となる為、スサノオにコア3個が追加される。

 

「マジックでグランドロー! デッキから2枚ドローし、スサノオのコア2個をボイドに送って追加で1枚ドロー、さらにダイノパワーを使う」

 

そのままアタックステップ開始と同時にギガノマガツカミは吠え立て、その狙いは当然相手の主力であるスメラギンガ。そのまま指定アタックすると共に、大刀を振り下ろし、剣でその一撃を受け止めるが強大な力を防ぎ切れず、そのままギガノマガツカミは大きく吠えると、受け止めた剣ごとスメラギンガを斬り裂き、破壊。

そしてエンドステップでもう一度ダイノパワーを手札に戻し、ターンを終える。

 

 

***

 

 

────第7ターン、ディストside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]6枚。

[Field]キャメロットナイトLv.1(1)BP1000。

 

「十式戦鬼断蔵を召喚! メインステップ時の効果発動! ライフのコア1個をこのスピリットに移す事でこのターンの間、黄色のシンボル2つをこのスピリットに追加できる。そして最大軽減で死鬼若丸、続けて闇騎士ランスロット(Rv)を召喚!」

 

手札に物を言わせてのスピリットの展開、さらに出現したランスロットは眼光を輝かせ、剣の切っ先をギガノマガツカミへ向ける。

 

「ランスロットの召喚時効果、疲労状態の相手スピリットを破壊できる! ギガノマガツカミ、逝きなさい」

 

ランスロットの引き起こす紫の瘴気がギガノマガツカミを飲み込み、そのまま闇の中で消滅させられる。

 

「チィッ!」

「アタックステップ! ランスロットでアタック!」

 

ランスロットが繰り出す突き、それは中心を真っ直ぐ捕え、そのまま刺し貫いてバリアを破壊する。

 

「次よ、キャメロットナイトでアタック!」

「調子に乗るんじゃねぇよ! フラッシュでマジック、火炎之咆哮ッ!!」

「!!」

「効果でBP3000以下の相手スピリット全てを破壊! さらにソウルコアをコストにする事で、BP10000以下の相手スピリットを破壊、テメェのスピリット共をまとめて破壊だ!!」

 

空が赤く染まったかと思うと、赤き空から降り注ぐは雨ではなく炎の霰、その炎はディストのスピリット達を一気に焼き尽くし、ランスロットだけは抗う様に剣で炎を斬り払うが、一際巨大な炎が流星の如く降り注ぎ、それはランスロットを貫くと、その身を焼き焦がし破壊する。

 

「それで勝ったつもりかしら? 相手によって魔影を持つスピリットが破壊された時、手札からスメラギンガを召喚!」

「2体目だと!?」

 

無人となったはずのフィールドに集う瘴気、焦土と化したフィールドの炎を剣の一閃で掻き消すと、スメラギンガは再び大地に降り立つ。

 

「スメラギンガはLv.3、これでターンエンド」

「(攻撃して来ないのか?)」

 

このままアタックを続けてもライフを削り切れる訳ではないが、それ以上に攻撃をしなかったのには何か意図があるのだろう、不気味さを感じる彼女の笑みに、ドレイクはそう思えてならなかった。

 

 

────第8ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]11個。

[Hand]5枚。

[Field]創界神スサノオLv.1

 

「俺のターン、マジックでエクスキャベーションを使用、トラッシュにある系統「地竜」を持つカードを3枚まで俺の手札に戻す、戻れブラックウォーグレイモン、ステゴラール、そしてスーパーディラノス!」

「(キースピリットを回収してきたか)」

「さらに回収したステゴラールをLv.2で召喚し、さらにバーストセット」

 

またギガノマガツカミであろうか、バーストを伏せさらに紫のコア除去を警戒してる為かステゴラールにはレベル維持分以上に、全てのコアを乗せ、そのままアタックステップを宣言。

 

「ステゴラールでアタック、アタック時BP+3000し1枚ドローだ!」

「その程度のBPアップじゃ、スメラギンガは倒せないよ!!」

 

壁の様に立ち塞がるスメラギンガ、そのBPは18000。ディストの言う通り、このままでは返り討ちに合うのは必須。だが、勿論ドレイクも承知の上。

 

「勝ち札は俺の手に来てんだよ、ステゴラールの効果発動! 手札1枚を捨てる事で、俺はソウルコアを支払わずに煌臨する事ができる!! 手札のダイノパワーを破棄し、俺はステゴラールをアクロカントレックスに煌臨!!」

 

ステゴラールの体がより大きく、巨大なアクロカントレックスへの姿へ変化を遂げる。

 

「煌臨時効果発揮! 相手のBP10000以上のスピリット、スメラギンガを破壊だッ!!」

 

炎を込めた牙を大地へと突き立てると、地面を伝い炎は火柱となってスメラギンガの足元より噴き上げ、炎に焼かれたスメラギンガは大爆発を起こす。

 

「まだだッ!! アクロカントレックスをさらに煌臨!! 敵を砕け! 壊せ!! ぶっ潰せ!!! 本能のままに蹂躙し尽くせッ!!!! 暴双恐龍スーパーディラノスッ!」

 

今一度アクロカントレックスを包み込む炎、それはその身をさらに巨大で強大な姿へと変化させると、炎を振り払ってスーパーディラノスは一気に飛び出すと、そのままディストへと剛腕を振り下ろす。

 

「ライフで受ける」

 

売り下ろした剛腕はそのままバリアを抉り取る様に砕き、ライフを破壊する。

 

「うあっ!!!」

「バトル終了時、スーパーディラノスは煌臨元一枚につき、相手ライフを1つ砕く。煌臨元のカードは2枚、これで終わりだ!!」

 

止めを刺そうとスーパーディラノスは二双の口に炎を蓄え、一気に撃ち放とうとするがそれを制止させる様にディストは立ち上がって手を突き出す。

 

「まだよ、ライフ減少時でバースト発動! そのバースト効果でスーパーディラノスのコア3個をトラッシュに送る」

「!!」

 

コア3個がスーパーディラノスから取り除かれる。多めにコアを置いた事で消滅は免れるがレベルが下がった事でスーパーディラノスは力を失い、溜めていた炎は掻き消えてしまう。

 

「スーパーディラノスはLv.2以上を維持して初めて効果によるライフへのダメージを与えられる、Lv.1ならどうという事は無い」

「グッ!!」

「さらにバースト効果は続く、この効果発揮後にこのスピリットを召喚! 今見せてあげるわ、私の真のキースピリットの姿を!!」

 

バーストによって弾け飛ぶカードを手に取り、そして叫ぶ。

 

「闇に君臨せし伝説の覇王!! 円卓より語り継がれしその伝説、不滅の肉体を以って永久の物としろ!! 騎士の覇王ソーディアスアーサー、召喚!!」

 

黒雲のように広がる闇の空、暗闇より突如一転に差し込む如く光、その光の中より身に纏うローブの様な翼を大きく広げ、地面へ舞い降りると、鞘に納めた大剣を引き抜き、戦闘の意思を見せるように構える。

 

「ソーディアスアーサーだと!?」

「ふふっ。さぁ、もうこれで貴方に手はない筈よ?」

「ぐぅッ!! ダイノパワーを戻してエンドだ」

 

 

────第9ターン、ディストside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]3枚。

[Field]騎士の覇王ソーディアスアーサーLv.3(4)BP21000。

 

「メインステップは何もしない、このままアタックステップ」

「!!」

「ソーディアスアーサー、あの愚か者に断罪なさい!」

 

攻撃の指示と同時にソーディアスアーサーは翼を広げて飛び出すと、そのままスーパーディラノスへ向かって剣を振り下ろし、その一撃にスーパーディラノスは横転し、力尽きてその場から消滅。

 

「スーパーディラノス!!」

「ソーディアスアーサーのアタック時効果、疲労状態の相手スピリットを破壊する事で相手ライフ1つをボイドに置ける」

「!!」

「ライフを奪わせてもらうわよ」

 

ソーディアスアーサーはさらに腕をドレイクに向けると、ライフの一つが黒く染まり、そのまま向けた腕を一気に握りつぶすと連動するように黒く染まったライフは砕け散る。

 

「ぐああああッ!!!」

「ハハハハ、さぁこの攻撃はどうするの!!」

「うぐッ、1コストを支払う事でブラックウォーグレイモンを召喚、ブロックだ」

 

苦しそうに呻きを上げながらもまだ手は残る。BP8000以上の相手スピリットのアタックを条件としてブラックウォーグレイモンを呼び出すと、両腕を大剣による一撃を受け止めるが、ソーディアスアーサーはがら空きとなった腹部を蹴り上げ、攻撃に体勢を崩した瞬間、再度大剣を振るうと、その一閃を受け、ブラックウォーグレイモンは力尽き大爆発を起こす。

 

「苦し紛れね。まぁさっきのエクスキャベーションで回収してたから当然そう来るとは思ってたけど」

 

当然ディストもドレイクにまだ耐える手段があるのは承知の上だが、これでその手も失ってしまい、それに余裕を持つように笑いながらターンを終了。

 

 

────第10ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]12個。

[Hand]6枚。

[Field]創界神スサノオLv.1

 

「俺のターン、スサノオの轟天神殿を配置。さらにダイノロックガンを召喚、リザーブのコア全てをダイノロックガンに置き、バーストセット。これでターン終了だ」

「いよいよ万策尽きたみたいね。なら止めを刺してあげるわ」

 

勝ち誇ったように笑うディストに対し、ドレイクは言い返せずただ黙って、拳を握りしめながらターンを終了する。

 

 

────第11ターン、ディストside。

 

[Reserve]8個。

[Hand]4枚。

[Field]騎士の覇王ソーディアスアーサーLv.3(4)BP21000。

 

「キャメロットナイト、さらに闇騎士パーシヴァルを召喚。アタックステップ! ソーディアスアーサー行きなさい」

 

一気にスピリットの展開、このターンで完全にドレイクに止めを刺すべく、大地を駆け抜けながら大剣を振りかざしてドレイクへと迫る。

 

「相手によるアタック後でバースト発動、バースト効果でこのスピリットを召喚する!」

「!!」

「怪物と成り果ててなお気高き誇りを持って生きし獣の王! ホースオルフェノク疾走態をLv.3でバースト召喚ッ!!」

 

ドレイクの遥か後方より駆け抜け、フィールドへと参じる獣の姿を持つ怪物────ホースオルフェノク疾走態。

 

「召喚時効果、相手のBP10000以下のスピリット1体を破壊する、消えろ! キャメロットナイト!!」

 

手に掲げた剣を振り下ろすと、紫炎の炎を纏う斬撃波が撃ち放たれ、手に持った盾で身を防ごうと構えるが、自身の体以上に巨大な斬撃波は防ぎ切れずに破壊される。

 

「この効果で破壊した時、手札かトラッシュにあるコスト6以下の赤か紫のスピリットを召喚できる、俺が選ぶのは冥界の処刑人カルノ!」

 

大地に剣を突き立てその魂を呼び起こすと、地面より噴き上げる紫炎の炎によってカルノは蘇る。

 

「こいつにも召喚時効果がある、俺のトラッシュにあるコスト6以上の地竜を手札に戻す事でトラッシュにあるコア4個までをこのスピリットに置ける」

「コスト6以上の地竜、まさか!!」

「あぁ、スーパーディラノスを戻し、効果によってカルノをLv.3にアップ。さらにフラッシュ、ホースオルフェノクをスーパーディラノスに煌臨だぁッ!!」

 

手札にキースピリットを戻して、再びフィールドへ呼び出すとホースオルフェノクはスーパーディラノスへと進化し、迫って行くソーディアスアーサーに大きく咆哮を轟かせ、咆哮による風圧に思わずソーディアスアーサーも怯むように立ち止まってしまう。

 

「アタックはスーパーディラノスでブロックさせる!!」

「ッ!!!」

 

防御指示に二体は激突し、ソーディアスアーサーは両腕で大剣を握りしめて一気に振り下ろすが、スーパーディラノスも剣を両腕で掴み、さらに牙で剣に喰らい付いて、その一撃を受け止める。

BPはソーディアスアーサーが上回ってるが、それでもディストは知っている。ドレイクにある手札にあるカードの1枚を。

 

「フラッシュでダイノパワー! 効果でスーパーディラノスをさらにBP+3000!!」

「完全に私のキースピリットを、上回った!?」

 

スーパーディラノスは受け止める剣を牙で粉々に噛み砕き、得物を失ったソーディアスアーサーに対し、その顔面を掴むと、そのまま地面へと圧し潰す様に叩き付け、さらに両腕を合わせ、鈍器の如く両腕を振り下ろすと、その一撃に完全にソーディアスアーサーは沈み、その場で大爆発を起こす。

 

「おのれッ! ドレイク!!」

 

 

────第12ターン、ドレイクside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]3枚。

[Field]暴双恐竜スーパーディラノスLv.2(3)BP20000、冥界の処刑人カルノLv.3(4)BP17000、恐竜銃ダイノロックガンLv.1(1)BP15000。

 

「恐竜同盟本拠地を配置、さらにダイノロックガンをスーパーディラノスに合体させる!!」

 

ダイノロックガンを担ぎ上げると、合体スピリットとなり、今まで以上に強大な咆哮をフィールド一帯に響かせる。

 

「合体スピリットでアタック!! ダイノロックガンのフラッシュ効果、トラッシュにある「地竜」を持つスピリットを煌臨元に追加! ブラックウォーグレイモンを追加だ!!」

「まだよ! フラッシュでマジック、白晶防壁!!」

 

防御として最善となるマジック、バウンス効果はスサノオの轟天神殿によって無効化されるが、ソウルコアをコストに支払った事で追加効果が発揮される。

 

「私のライフはこのターン、1つしか減らない。アタックは勿論、例え貴方のキースピリットの能力でも私のライフを全て削り切る事は不可能よ!」

 

ここを耐えれば次は確実に決められる、そうディストには確信があった。だが、それでもドレイクは止まらない。

 

「このターンで決められないなら、次で決めるだけだ!」

「次ですって? 次に決めるのは私の方よ!!」

「いいや、テメェに次は渡さねぇよ」

「何!?」

「スーパーディラノスをさらに煌臨、王も神もあらゆる全てを超えて全てを統べる覇者となれ!! 恐竜覇者ダイノブライザーをスーパーディラノスに煌臨ッ!!!」

 

スーパーディラノスに集う巨大な炎の火柱、幾度も生まれ変わって行くその姿も遂に極地へと至り、赤い眼光を輝かせながら、火柱より姿を見せるのはまさしく絶対的王者と成り得るスピリット────ダイノブライザー。

 

「煌臨時効果でBP10000以下の相手スピリット全てを破壊!」

 

手に持つ偃月刀を振り翳すと、その一振りのみで一気にディストのフィールドより炎の渦が噴き上げ、その炎に飲まれたパーシヴァルは一気に破壊される。

 

「ぐっ! コスト6のパーシヴァルが破壊された時、1コストを支払うことでトラッシュから闇騎士ランスロットを召喚!!」

 

ランスロットは再びフィールドへ現れ、その召喚時効果を発揮されるが今度は恐竜同盟本拠地によってその効果を無効化されてしまう。

 

「まだ俺のフラッシュだ! 【連覇】の効果、煌臨元のカードを3枚破棄!!」

「!?」

 

溜めていた煌臨元のカードを全てトラッシュに送り、その代償として巨大な力を得る様にダイノブライザーはさらに吼え上げ、ディストへと突っ込んで行く。

 

「ぐっ! ランスロットでブロック!」

 

その指示にランスロットは迎撃するように剣による突き、ダイノブライザーも偃月刀による一閃を互いの相手へと繰り出す。

そして互いの一撃を撃ち終え、両者地面に直地した瞬間、ランスロットは剣は砕け散っており、そしてその身に大きな刀傷を刻み込まれ、その場で力尽きるように倒れ伏し爆発四散する。

 

「ターン終了だ」

「なら私のt──」

「違ぇよ」

 

ディストがターンを開始しようとした瞬間、ダイノブライザーはそれを許さないかのように得物を振り上げると、ディストの周囲より噴き上げる炎が壁の様に囲い込み、彼女の動きを封じてしまう。

 

「こ、これは!?」

「ダイノブライザーの連覇、その効果は自分のターンをもう一度行える」

「自分のターンをもう一度!!?」

「言った筈だ、テメェに次は渡さねぇと!」

「ドレイク、お前……!!」

 

エクストラターン、そのままメインステップは何も行う事無く、アタックステップへと移り、ダイノブライザーは静かにダイノロックガンのトリガーを引いて装填すると、その銃口をディストに突き付ける。

 

「な、何故よ。ドレイク!! 大人しく粛清を受けていればいいものを!! 本気で私を、私達罪狩猟団を裏切るつもり!!」

「テメェの様な奴が、俺に粛清なんざおこがましい」

「!!」

「俺はボス以外の誰にも負けるつもりはねぇ。烈我の野郎も勿論、テメェみたいな卑怯者のクソ野郎なら尚更なッ!!!」

「貴様ぁぁぁぁ!!」

「ダイノブライザー、決めろォッ!!!」

 

引き金を引き、轟音と共にその一撃を撃ち放つと、ディストのライフを2つまとめて一気に破壊する。

 

「うわあああああああああああああッ!!!」

 

叫びと共に吹き飛ぶディスト、そして勝利を収め、ダイノブライザー達は勝利への雄叫びを上げる。

 

 

***

 

 

「ぐぅ……ドレイク……貴方、こんな真似してタダで済むと!!」

「負け惜しみのつもりか、タダで済まねぇのはテメェだ。こんな汚い真似、ボスの顔に泥塗る事に他ならねぇだろ!」

 

倒れるディストに見下す様な言葉、だがドレイクの態度に益々ディストも腹立てる様に歯を喰いしばりながら、ゆっくりと倒れる体を起こして行く。

 

「ルディア様の顔に泥を塗るですって? あの人に誠心誠意尽くす気もない貴方が勝手な事を言わないでくれる!」

「!」

「帝騎の身でありながら、どいつもこいつも!! 元から我欲で動くヴァンは勿論、アンタもミコも、それにガイトも! 誰一人あのお方の為に尽くそうとしてないじゃない!! 自分勝手な欲望に動く奴等ばかり!!」

 

「(ガイト?)」

 

ドレイクに訴えかける様なディストの言葉だが、彼女が口にした名前にミナトは聞き覚えがある様に反応を見せるが、一方でディストはその場から立ち上がると、強く睨み合う様にドレイクと向き合う。

 

「私は、あのお方に命を捧げても仕える! そう決めてるの!! なのに貴方何かに────!!」

 

恨みを強く籠めたかのような目、そしてそれをドレイクにぶつけるように声を荒げるがその瞬間、ドクンと何かが彼女の中で脈打つ。

 

『余興はその辺にしておけ』

「「「!!!」」」

 

突然の声、それはまるでテレパシーかのように頭に直接響うように語り掛け、その声に対しディストは苦しむかのように胸を押さえつけてその場に蹲る。

 

「ま、待って!! まだ────!!」

『無理だ、これ以上は付き合い切れん。契約破棄だ』

 

契約破棄、そう告げると共に彼女の足元に映る影はまるで蠢く様にその形を変えると、その影は一気に上空へ飛び出して行く。

 

「これって!!?」

 

飛び出した影は、小さな体に全身は黒き鱗で覆われ、その体にどす黒く渦巻く瘴気を体の一部の如く纏わせる龍の姿、それを一目見た瞬間、バジュラ達と同じ七罪竜の一体であるとすぐに直感した。

そしてそれを裏付ける様にバジュラ達もその龍の姿に対し、その名を口にする。

 

『テメェ、シュオン!!』

 

バジュラが口にしたシュオンという名、シュオンに対し他の七罪竜達は因縁があるかのようにその龍を強く睨むが。

 

『どういう事です? さっきまで此奴の反応をまるで感じなかったのに!!』

『あぁ、儂もじゃ。此奴の禍々しい気配に気付かない訳ない筈なんじゃがの』

『大方此奴の能力か何かだろ、最もそんな能力があったのは初耳だがな!』

 

バジュラの言葉を肯定するように、『当然だ』と言葉を吐き捨てる。

 

『俺はずっと力を蓄え続け数年前よりも強く生まれ変わっている、嫌、生まれ戻っている言うべきか』

『生まれ戻る? 何言ってやがるテメェ』

『今の俺は貴様等みたいな劣等種とは次元も存在も何もかもが違う、そういう事だ』

 

『劣等種だと?』

 

見下すようなシュオンの発言、それが最も癪に障ったのはキラー。バジュラを押し退け、シュオンに対し強く殺意を込め、先程よりも一層、強く睨む。

 

『テメェ如きが、俺様を見下す気か、あァ!?』

『キラーか。傲慢さは貴様の専売特許だったな』

『ほざけ三下、俺の気が収まる内に、すぐ前言撤回しなァッ!』

『……フン、笑わせるな』

 

今すぐにでも喰らい掛からんとするばかりの殺気、だがそんな殺気を前にしてなおシュオンはまるで意には介さない。

 

『俺が口にするは常に確信だ。そしてキラー、貴様が口にする傲慢は……只の虚勢だ』

『テメェ。今すぐ噛み砕かれてぇのかァッ!!』

「キラー、待て!!」

 

見下されたその態度に殺意を抑え切れず、ミナトの静止も振り切り、そのまま一気に牙を剥いてシュオンに飛び掛かって行くが、刹那、シュオンの体に渦巻く黒い瘴気は一気に周囲に広がり始め、それは自身と自身に向かうキラーを完全に黒い瘴気の中に覆い隠してしまう。

 

『野郎、どこに!?』

『こっちだ!!』

『!』

 

闇の中で完全に得物を見失い、辺りを見回す中、突然声が聞こえると同時に背後からシュオンは爪を振り下ろし、それはキラーの体を切りつける。

 

『ガァッ!!』

「キラー!!」

 

そのまま地に落ちるキラーを間一髪、ミナトが受け止める。苦痛に顔を歪めてはいるもののキラーの傷は浅く、それに安堵するように一息つく。

 

『シュオン、テメェ……!!』

『わざわざ手心を加えてやったんだ、その辺で引いておけ』

『手心、だと?』

『あぁこれ以上貴様に付き合うつもりはない、俺の要件は!」

 

完全に興味を失せたようにキラーから視線を外し、そのままディストに視線向け、ディストもまたシュオンに対し。

 

「どうして、貴方迄私を裏切るの?」

『裏切る? 元々貴様との契約は俺に極上の欲望を喰らわせ、その見返りとして俺の力を貴様らに差し出す事。だがそれが叶なわないなら契約を切る、唯それだけの事だ』

「待ってよ!! 此奴等さえ捕えれば私の欲望は叶うの! あのお方にはあなたの力が必要なの!」

『残念だが、食い損ねた欲望に興味はない』

 

全容を掴めない二人の会話、烈我やドレイクにも話の内容はまるで理解できていないが、既に日も沈み始め、「待って!」と叫ぶディストの言葉も気にも留めず、そのまま光の届かない闇に向かって飛び立ち、その姿を眩ませた。

 

「……おい、ディスト。これはどういう事だ? 今のは七罪竜だろ、そんな事報告に上がってなかったぞ!!」

「黙りなさい!!」

 

シュオンがその場から飛び去ってすぐにドレイクはディストに対し、疑問を問いただすが答える気はないように声を荒げる。

 

「報告なら戻ってすぐルディア様に説明するわよ。けど、貴方だって唯で済むと思わないでよね!!!」

「おい、待て!」

 

その場を走り去って行くディスト、黙って見過ごせる訳がなく烈我は後を追い駆けようとするが、ドレイクは黙ったまま烈我の前に手を突き出し、行く手を阻む。

 

「ドレイク!!」

「……俺等の組織の問題だ、お前が首突っ込むんじゃねぇ」

「でも──!」

 

反論しようとするが。

 

「……ん。く、ぅ」

「光黄!?」

『光黄様!!』

 

瞼を開いて小さく声を吐き出す光黄に、烈我とライトの二人は即座に駆け寄り、その様子を一目確認すると、ドレイクは静かに振り返る。

 

「その女が無事なら充分だろ」

 

「先に会場に戻ってるぞ」と、そのままドレイクはその場を後にしていき、ディストやシュオン、それにドレイクと言い、色々気掛かりはあるものの今は光黄が優先。

 

「烈我、ここって」

「もう大丈夫。お前が無事で本当によかった」

「……そうか。俺、お前に迷惑かけたみたいだな」

 

ディストと接触した時の事をうっすら思い返し、心配する烈我達に対し、申し訳ない気持ちで一杯だったが、そんな彼女の謝罪に対し、「気にすんなよ」と笑って返事を返す。

 

『光黄様!! 私、光黄様に何かあったらと思ってずっと』

「ライト、お前にも心配かけて悪かった」

『いえ謝るのは私の方です、私……執事なのに、光黄様の身一つ守れず』

 

今にも泣きそうなライトに対し、呆れるように溜息を零すが。

 

「ライト、何度も言うが俺はお前のような執事は雇ってない」

『うぅっ!』

 

その一言に落ち込むように肩を落とすライトだが、彼女はライトの頭の上に静かに手を置いて、言葉を続けて行く。

 

「執事だからとか責任を感じるのはやめてくれ、心配してくれて本当にありがとう」

『こ、光黄様ーーッ!!』

「お、おいこら!」

 

優しくライトの頭を撫で、そんな光黄にライトは感激するように大泣きしながら彼女に飛びついていく。

 

「……」

『烈我、今回だけは我慢しな』

「そうだぜ。さすがにあの空気じゃ割って入る訳にもいかねぇしな」

「俺は何も言ってないだろうが!!」

 

嫉妬する烈我の気持ちを察してかバジュラとミナトはそれぞれ肩に手を置くが、余計なお世話と言わんばかりに怒鳴る。

 

「まぁまぁ、それより光黄ちゃんも無事だった訳だし、とりあえず俺等も会場に戻ろうぜ」

「表彰式もまだですしね」

 

星七の言葉に、「そうだった」と烈我も思い出したように声を上げ、彼等もまたその場を後に、会場へと戻って行った。

 

 

***

 

『さぁ皆様長らくお待たせいたしました!! 改めて紹介いたしましょう、今回の優勝は烈我&ドレイクチーム!! 本当におめでとうございます!』

 

会場に戻りすぐさま執り行われる表彰式、表彰台には1位から3位までが設けられ、3位入賞である星七にミナト、2位入賞の光黄とマチアの4名は讃えるように烈我達に拍手を送る。

そして1位として入賞を収めた烈我達チーム、MCから受け渡されるトロフィーを受け取る烈我の横で、ドレイクは興味ない様に腕を組んでそっぽを向け優勝しても相変わらずな様子だった。

 

『それでは優勝者に記念の超レアカード!!』

「!」

 

掲げる一枚のカード、超レアカードと聞いて興味を惹かれるように烈我は目を輝かせるが、『もう一つ』とまだあるかのような言葉。

 

『長い間この地に受け継がれてきた6つの宝玉、長く歴史が続き、美術品として非常に価値の高くこちらも優勝記念として進呈いたします!』

 

宝石のように綺麗な宝玉、ルビー、パール、サファイア、エメラルド、アメジスト、ダイモンド。各色のスピリットのシンボルを表す宝石は鮮やかに光り輝く。

だが美術的価値は高いように思えるが、カードバトラーである烈我にとってはあまり興味が持てなかったが、だがそれとは正反対にドレイクは興味を指し示すに視線を真っ直ぐ宝玉へ向ける。

 

『なおカードと宝玉はそれぞれ1セットずつ。お好きな方を選んで御取りください』

「……烈我。カードはテメェにくれてやる。その代わり宝玉は貰ってくぞ」

「!」

 

カードバトラーにとって美術品は無縁な物に思える、それでもあえてそれを欲するドレイクに烈我も何かを察する。

 

「もしかして、お前の狙いは最初からあれだったのか」

「だとしたら何だ?」

「あれを手に入れて、何をする気だ」

「答える義理はねぇ。腕ずくでもテメェから奪い取るぞ」

 

険悪した雰囲気が漂い、間違いなくドレイクの目は本気であり烈我も構える様にドレイクを見るが、数秒間を置いた後、烈我は静かに笑うと構えを解く。

 

「いいぜ、それがお前の狙いだったなら譲る」

「……どういうつもりだ?」

「光黄も助けてもらった借りもあるし、こっちが引くのが筋だと思ってさ」

「偉く素直だが、後悔しても知らないぞ」

「多分後悔なんてしないさ。あの宝玉使って何する気かは知らないけど、お前は絶対、あのディストとかいう奴みたいな卑怯な事はしないだろ」

「根拠もねぇ癖に勝手な事を、何度も言うが俺達は敵同士だぞ?」

「敵同士、でもだよ。次は戦う事になったとしても、お前みたいに真っ直ぐ正々堂々挑んでくれる奴なら、俺はいつでも受けて立つ!」

 

深く考えているのかいないのか、にこやかに笑う烈我に対しドレイクはじっと見定める様に見るが、暫くして鼻で笑い飛ばしながら烈我から視線を外して宝玉を受け取り、烈我はもう一つの景品であるカードを代わりに受け取る。

 

『大会は以上で終了です! 最後にこの大会で熱いバトルを見せてくれた全てのカードバトラーに感謝を申し上げます!!!』

 

会場中から鳴り止まない声援と拍手、一方で大会を終えてドレイクは先に上がる様に出口に向けて歩き出す。

 

「さてアタシもこの辺で切り上げるよ。アンタとタッグを組めて結構楽しかったよ」

「……結局、お前は敵か味方か。最後まで分からなかったな」

「アタシはできれば敵対したくはないけどね」

「俺もだ、敵なら厄介だなと思うのは確かだ」

「お互い様にね。まぁ、今度会う機会があったらいろいろ情報提供してあげる、色々サービスするしね」

 

どこまでも喰えない態度で「それじゃあ」とドレイクに続くように彼女も後にし、その後姿を気にしつつ、烈我の方へ歩み寄って行く。

 

「烈我、あの宝玉……渡してよかったのか?」

 

一部始終を見ていたように声を掛け、その言葉に烈我も少し頭を掻くが、すぐに落ち着いた表情を向ける。

 

「まぁ狙いは分かんなかったけど、あいつなら構わないかなって」

「いつかまたあいつと戦う事になるんだぞ?」

「そうなんだけどさ、俺……あいつの事、別に嫌いじゃないし」

 

率直過ぎる言葉に呆れるように溜息をつくが、それでも、それが烈我らしい答えだとすぐに納得した。

 

「じゃあ精々戦う時が来たら今よりもっと強くなる事だな。確か俺に対しても言ったな、自分の力で俺に勝つって! なら早くそれが実現できるようにしてみろ」

「おぉ、任せとけ!! これからもっともっともっと!! 強くなってやるぜッ!!!」

 

期待するような光黄の言葉、それに烈我も想いを強く籠め、叫ぶ様に全力で答えるのだった。




第15話いかがでしたでしょうか。
これにてタッグバトル編は完結です!!

バトルでは今回、帝騎同士の激突。
敵組織の幹部同士のバトルは書いてて、とても楽しかったです。

烈我達がそうであるように、ディストやドレイク等敵再度にもそれぞれ譲れないものがあり、それが何であるかは今後ぜひ書いていきたいです。


そして今回の最後にはついに5体目の七罪竜の影!!!
今回バトルを書くことはありませんでしたが、果たしてどのような力を持つのか、ご期待いただきたく思います!!

それでは次回もよろしくお願いします!

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