バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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特別編【異世界バトル!?スピリッツワールド 後編】

舞台を変え、エトに連れられた場所でデッキを構える両者。

 

「まずはこの世界でのバトルを教えておいてやる」

 

ソウルコアを手に持ち、翳す。

 

「バトルアーマー、オン!」

 

掛け声と共に、ソウルコアの光が全身に集うと、それは鎧となって体に装着され、文字通りの戦闘装甲(バトルアーマー)をその身に纏う。

 

「格好いい!! 何それ、どうやんの!?」

「烈我さん、落ち着いてください。ともかくこれを使って、さっきと同じ要領で行ってください」

「えっと、確かさっきの通りだよな? バトルアーマー、オン!」

 

エトからソウルコアを受け取り、見様見真似でキキと同じ言葉をコールし、赤い装甲を身に纏う。

 

「へぇー、これがバトルアーマーか。やっぱ俺達の世界やスピリッツエデンでのバトルとも違うんだな。けどすっごくテンション上がるぜ!」

「浮かれるな、いいから始めるぞ」

「そうだった、そうだった」

 

互いに準備は万全、あとは開始のコールを宣言するのみ。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

宣言共にバトルフィールドが展開され、バトルはキキの先行で幕を開ける。

 

 

────第1ターン、キキside。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「行くぞ、ガトーブレパスを召喚! ターンエンド」

 

 

────第2ターン、烈我side。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「俺のターン、バーストセット! さらにライトブレイドラ、レイニードルをどちらもLv.2で召喚!」

 

フィールドに展開されるバーストし、準備を進めるとそのままアタックステップ。

 

「アタックだ! ライトブレイドラ、レイニードル!」

「ライフで受ける!」

 

ライトブレイドラによる突進、レイニードルは竜巻をそれぞれバリアに撃ち放つとキキのライフを2つ、一気に削っていく。

 

「ぐっ!」

「ターンエンドだ」

 

 

────第3ターン、キキside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]5枚。

[Field]ガトーブレパスLv.1(1)。

 

「まずは俺もバーストセット! さらに!」

「!」

「眩い光を纏いし、俊敏な獣! 子の十二神皇マウチュー、Lv.3で召喚!!」

 

この世界では伝説に言い伝えられし十二神皇の一体、どこからかスポットライトを浴びながら、舞うようにフィールドへと降り立ち、マウチューがその姿を現す。

 

「召喚時効果、【封印】!」

 

出現して早々マウチューは帽子に手を置きながら、もう片手で指を鳴らすと、ソウルコアの赤い輝きがライフへと灯る。

 

「マウチュー、早速キースピリットかよ」

「続けるぞ、アタックステップ! まずはガトーブレパスでアタックだ!!」

「ライフだ!!」

 

ブロッカーはなく、攻撃を止める術はない。鳴き声を上げながら、そのまま展開されたバリアに角を突き刺す。

 

「がぁッ!!」

「【聖命】発揮、俺のライフを一つ回復する!」

 

ガトーブレパスは光を纏い始めると、呼応するように失ったライフに再び光が戻る。封印と合わせて、削られたライフは元通りだが、黄色デッキの戦い方は烈我にとっては充分熟知している。

 

「やられっぱなしじゃねぇぜ! ライフ減少時でバースト! 秘剣二天一龍!  BP5000スピリットを2体破壊だ!」

「ほぉ」

 

発動されるバースト、カードがオープンすると同時に二刀の斬撃がガトーブレパスとマウチューの二体へと迫り、マウチューは手に持った杖を盾のように回し始めるが、斬撃はそのまま二体に直撃し、巻き起こる爆発。

 

「BP5000以下のスピリット2体を破壊し、1枚ドロー。さらにコストを支払いメイン効果、デッキから2枚ドロー! 不足コストはレイニードルから確保」

 

レベルが下がった事でレイニードルは項垂れるものの、得られるアドバンテージとして上々。

 

「黄色デッキなら何度も戦ってる! 当然対策もばっちりだぜ! 折角のキースピリット出してもらったのに、悪いな」

「……気にするな。この程度、マウチューにとってどうという事は無い」

「何!?」

 

軽く鼻で笑いながら余裕な様子での一言。その言葉の意味はすぐに分かった。立ち込める爆風を次の瞬間、杖の一振りで簡単に吹き払ったかと思うと、そこにはまるで何事もなかったように平然としている様子のマウチューの姿があった。

 

「マウチューのLv.2、Lv.3の効果。系統「十冠」、「神皇」を持つスピリットは相手の効果で破壊された時、疲労状態で残る」

「スピリットの効果じゃ倒せねぇって事か。曲者だな」

「さっき黄色デッキの相手は慣れてると聞いたが、どこまでやれるのかもっと見せてもらおうか。俺はこれでターンエンド」

 

 

────第4ターン、烈我side。

 

[Reserve]2個。

[Hand]6枚。

[Field]ライトブレイドラLv.2(3)BP2000、レイニードルLv.2(2)BP3000。

 

「バーストセット。さらにレイニードルをもう一体、Lv.2で召喚! アタックステップ! レイニードル行けッ!」

 

攻撃指示に再びレイニードルは突っ込むと、そのままバリアに勢いよく激突し、ライフを砕く。

 

「ぐッ! ライフ減少時でバースト発動! 妖雷スパーク! 相手スピリットをBP-5000し、0になったスピリットを破壊だ!

「!!」

 

フィールドに残ったライトブレイドラとレイニードルに打ち込まれる雷撃、直撃を受けた二体は力尽き、爆発四散する。

 

「さらにフラッシュ効果、マウチューをBP+2000し、手札を増やす」

「さっきのお返しって訳かよ!!」

「あぁ、これでお前にアタッカーはいない。ターンエンドだろ?」

「……ッ! あぁ、ターンエンドだ」

 

 

────第5ターン、キキside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

[Filed]子の十二神皇マウチューLv.3(3)BP5000。

 

「まずは賢獣スピンクスを召喚!」

 

下半身が馬、上半身がハーピィーのような姿を持つスピリット、スピンクス。出現と同時に自身の効果を発揮させる様にその眼光を輝かせる。

 

「召喚時効果、トラッシュの妖雷スパークを手札に戻す。そしてバーストセット!」

「!」

「アタックだ、スピンクス!」

「ライフだ!」

 

翼を羽ばたかせて飛び上がると同時に一気に烈我に向けて急降下して迫り、バリアに取り付くとそのまま自身の体重を乗せるように足先の爪をバリアに突き刺し、破壊する。

 

「ぐっ! ライフ減少時でバースト発動! 絶甲氷盾!! ボイドからコアを追加し、フラッシュ効果! ボイドからコア1個を追加して、ターン強制終了!」

「……なら俺はこれでターン終了だ」

 

 

────第6ターン、烈我side。

 

[Resereve]7個。

[Hand]5枚。

[Field]レイニードルLv.2(2)。

 

「創界神アポローンを配置! 神託で3枚カードをトラッシュに!」

 

カードは上から「グランドロー」、「堕ちる煌星」、「ライトブレイドラ」の3枚。

 

「神託対象は無しか。だったら煌星の使徒テティスを召喚、対象スピリットが召喚されたことでコア1個をアポローンに追加、さらにレイニードルをLv.1にして、オリン円錐山をLv.2で配置」

 

盤面を立て直すようにスピリットを展開し、続くアタックステップ。

 

「…………」

「どうする? 攻めてくるか?」

「いや、アタックはしない。ターンエンドだ」

「だろうな」

 

烈我が攻撃してこない事を確信したような言葉、だが実際その通りだった。現在彼女に伏せられたバースト、そのカードはスピンクスの効果で戻した妖雷スパークの可能性が遥かに高い。

 

「(折角立て直したのに、妖雷スパークを使われたらまたスピリットが破壊される。今は守りを固めるしかねぇ)」

 

 

────第7ターン、キキside。

 

自分のターンを迎え、一枚のカードを引く。だが引いた瞬間、彼女の眼の色が変わる。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

[Field]堅獣スピンクスLv.1(1)BP4000、子の十二神皇マウチューLv.1(3)BP5000。

 

「轟け! 我が魂の叫び!! 戦いの嵐を呼び起こせ!!! 召喚ッ! 猿の十二神皇ハヌマーリン!」

 

黒雲が立ち込め、雲を突き破ってフィールドに降り注ぐ巨大な隕石。そして、隕石に向けて落雷が隕石に打ち込まれると、砕け散った隕石の中より姿を現すスピリット、ハヌマリーン。

 

「二体目の十二神皇!?」

 

フィールドに集うハヌマーリンとマウチュー、並び立つ二体の十二神皇の迫力には思わず圧倒されてしまう。二体は攻撃の時を待ち遠しいように吠え上げるが。

 

「ターンエンド」

「!?」

「聞こえなかったか、ターン終了だ」

 

目を瞑りながら冷静な様子でターンエンドをコールする彼女の意図はまるで読めず、警戒が強くなる。だが幾ら考えた所で、バトルが進む訳ではない。

 

 

────第8ターン、烈我side。

 

「相手がどう動こうが関係ねぇ! 俺は俺のバトルをするだけだ! Lv.2のオリン円錐山の効果で、ドローステップに引く枚数を2枚にする!」

「!」

 

[Reserve]5個。

[Hand]4枚。

[Field]レイニードルLv.1(1)BP1000、煌星の使徒テティスLv.1(1)BP3000、オリン円錐山Lv.2(3)、創界神アポローンLv.1。

 

「オリン円錐山をLv.1にダウン。レイニードルをLv.3に、煌星の使徒テティスをLv.2にそれぞれアップ。さらにライトブレイドラをLv.2で召喚し、ターンエンドだ」

 

現在烈我の場にハヌマーリンとマウチューのBPを超えるスピリットはない。このままアタックしても返り討ちに会う事は目に見えている。今はまだ、ターンエンドを宣言するしか手はない。

 

 

────第9ターン、キキside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

[Field]猿の十二神皇ハヌマーリンLv.1(1)BP10000、子の十二神皇マウチューLv.3(3)BP5000、堅獣スピンクスLv.1(1)BP4000。

 

「ハヌマーリンをLv.3にアップ、まだ行くぞ!」

「(来るッ!?)」

 

さらに手札の一枚に手を掛け、高らかに叫ぶ。

 

「来たれッ! 天地を揺るがす魔神の力! 召喚ッ! 異魔神ブレイヴ! 天魔神ッ!!」

 

両手に集う光は円を描き、円盤のように光をフィールドに向けて投げ、円はそれぞれ魔法陣を描き、二つの魔法陣が重なった瞬間、転送されるように現れる異魔神ブレイヴ、天魔神。

 

「キースピリットに、異魔神ブレイヴ!?」

「天魔神、ハヌマーリンとマウチューに合体だ!」

 

両腕を翳してハヌマーリンとマウチューに波動を撃ち込んで、己とリンクさせ、力が上昇したようにハヌマーリンとマウチューは再度咆哮を上げ、その咆哮は先程とは比べ物にはならず、大気でさえも震えている程だった。

 

「このターンで終わらせる! 覚悟はいいなッ!」

「おぉ、いつでも来い!」

 

烈我の言葉に彼女は少しだけ口元を緩ませながら、「アタックステップ!」と宣言。

 

「アタックだ! まずはマウチューでアタック! さらに天魔神の追撃ッ! テティスのBPを-4000!」

 

天魔神から撃ち込まれる光の波動、その波動はハヌマーリン達の時のような力を上昇させるものではなく、寧ろその逆、波動を喰らい、テティスは力を失ったようにその場に項垂れる。

 

「そしてハヌマーリンLv.3、封印時効果発揮! お前のLv.1、Lv.2のスピリットじゃブロックできない!」

 

ハヌマーリンは両腕を翳し、自身の波動をそのままテティスに向けて撃ち込むと、Lv.2のテティスは体が痺れたようにその場から動かなくなってしまう。

 

「ハヌマーリンの効果は知ってる! レイニードル、ブロックだ!」

 

迫るマウチューを迎撃するようにレイニードルは飛び出し、大きく口を開いてマウチューに竜巻を撃ち込むが、マウチューは体を回転させ、竜巻をそのまま受け流すと、反撃と言わんばかりに杖を構え、杖の先より電撃を撃ち放ち、直撃を受けレイニードルは爆発四散し、破壊される。

 

「まだだ! ハヌマーリンでアタック!! 天魔神の追撃!!」

 

天魔神はもう片方の手をテティスに向けると、再度波動を撃ち込み、直撃を受ける。

 

「BP6000以下のスピリットを破壊し、この効果で破壊した場合お前のネクサスも破壊だ!」

「ぐッ!!」

 

テティスの体を突き抜け、波動はさらに後方のオリン円錐山に直撃し、テティスは力尽きて破壊され、オリン円錐山もその場から消滅してしまう。

 

「驚くのはまだ早い! ハヌマーリンの効果で、俺は手札のアクセルを持つカードをノーコストで使える!! フラッシュ、アクセル! 効果により、俺の黄色のスピリット全てにシンボル一つを追加!」

「!!」

「さらにハヌマーリンの効果で猿道士オンコットをノーコストで召喚!」

 

不足コスト確保のため、マウチューはLv.2にダウンし肩を落とすものの、その隣に杖を立て、その上に跨るスピリット、オンコットが現れる。

 

「まだだ! さらにフラッシュ! アクセルでオンコット! 効果でさらにすべてのスピリットに黄色のシンボルを追加!!」

 

これ以上の召喚は意味がないように、ハヌマーリンの効果による召喚は行わず、使用したオンコットのカードは手元に置かれるが、この時点で既に攻撃しているハヌマーリンのシンボルの合計は4つ。それを受ければ、烈我の敗北は必須だ。

 

「攻撃を受ける訳には行かねぇ! フラッシュで白晶防壁ッ! 効果でハヌマーリンを手札に戻し、さらにソウルコアを支払うことで俺のライフはこのターン、1しか減らない!」

 

発動する白晶防壁、効果により巨大な竜巻がハヌマーリンへと迫る。

 

「させるか! 相手がマジックを使用したことで、このアクセルの効果を使用できる!」

「!?」

「アクセルで加速揆鳥エアイレイザー! 効果により、相手のマジックカード無効にする!」

 

エアイレイザーが発動すると同時に緑の風を纏いし竜巻が発生すると、それはハヌマーリンへ迫る竜巻とぶつかり合い、二つの竜巻は相殺されて消えてしまう。

 

「なっ!!?」

「これで防ぐ術は無くなったな!! 行け、ハヌマーリンッ!」

 

手に持つ杖に雷を纏わせ、そのまま烈我へと迫って行く。

 

「負けっかよッ!! フラッシュでサンダーテンペスト! 効果でデッキから1枚ドローし、さらに相手のBP7000以下の相手スピリットを破壊だ! 対象はスピンクスだ!」

 

天より降り注ぐ落雷の雨、それはスピンクスへと降り注ぎ、防ぐ術はなく、破壊されてしまう。

 

「無駄だ! ハヌマーリンのアタックは止められない!」

「分かってるさ、だからこのドローに掛けるんだよッ!」

「!」

「(頼む、来てくれ!! 起死回生のカード!!!)」

 

強く念じる様に目を瞑り、力を込めてカードをドロー。数秒の間にお互いに固唾を飲むが、烈我は引いたカードにゆっくりと目を開く。

 

「来たーッ!! フラッシュ、デルタバリア!!! 不足コストはライトブレイドラから確保しLv.1にダウン!」

「何ッ!?」

「効果により、コスト4以上のアタックじゃ、俺のライフは0にならない!!」

 

たかが一枚のドロー、だがそれでも本当に起死回生の一枚を引き当てた烈我には思わずキキも驚きを隠せなかった。そのまま継続されるハヌマーリンのアタックは、雷を纏わせた杖を大きく振りかぶり、そのまま展開されたバリア目掛けて、一気に振り下ろし、ライフを削る。

 

「がああああッ!!」

 

ライフが一度に3つまとめて破壊されるが、それでもデルタバリアの効果によって今なお残り一つライフは輝き続け、痛みに表情を歪ませながらも、それでもまだ耐えている事に笑って見せた。

 

「運のいい奴」

「へっ、運も実力の内! 始める前に言ったろ、やるからには勝つって!」

 

凌いだ所で絶体絶命な状況には変わりない。にも関わらずまだ逆転の可能性を信じるかのように笑う烈我に対し、彼女は何を思うか、相手を仕留めそこなったにも関わらず、悔しい気持ちはあれど、それ以上に。

 

「俺のライフはまだ5つ! ここからどうやって逆転するつもりだ?」

「さぁな、けど! 攻めて攻めるだけだぜ!」

「それなら、攻めきれる物ならやってみろ!」

 

そう言った彼女の表情にも自然と笑顔が浮かんでいた。自覚してるのかしていないのか、今はただ彼女も純粋にバトルを楽しんでいた。

 

 

────第10ターン、烈我side。

 

[Reserve]12個。

[Hand]2枚。

[Field]ライトブレイドラLv.1(1)BP1000、創界神アポローンLv.1

 

「行くぜ! 輝龍皇ヘリオスドラゴンをLv.3で召喚!!」

 

天より響く雷鳴、黒き空から大きな雷が堕ち、眩い光が辺り全体を照らし、光が晴れた瞬間、フィールドに出現するヘリオスドラゴン。

 

「アポローンに神託。ヘリオスドラゴンでアタックだ!!」

「ライフで受ける!」

 

ヘリオスドラゴンはバリアに向けて口を開き、雷撃を放つとそのままバリアは破壊されライフが砕ける。

 

「ッ!! ライフ減少時でバースト発動! 妖雷スパーク! 効果で相手スピリット2体をBP-5000!」

 

予測通り伏せられていたのはスピンクスの効果で戻した妖雷スパーク。再びバーストで放たれる雷が、ライトブレイドラとヘリオスドラゴンの二体へ直撃し、ヘリオスドラゴンのBPは8000の為、破壊は免れるがライトブレイドラは破壊されてしまう。

 

「フラッシュ効果で、ハヌマーリンをBP+2000し、さらにデッキから1枚ドロー!」

「こっちだって終わらねぇ! ヘリオスドラゴンのバトル終了時効果!」

「!」

「デッキの上からこのスピリットのレベルと同じ枚数デッキからオープン! その中にあるコスト7以下のスピリットを全て召喚できる!」

「また運任せの効果か」

「勝つためなら運でも何でも使い切るだけだ! ヘリオスドラゴン!!」

 

ヘリオスドラゴンを信じる様に名前を呼ぶ。そしてヘリオスドラゴンは天を仰ぎながら吠えると、デッキよりオープンされる3枚のカード。一枚目は「創界神アポローン」の為、対象ではない。続く二枚目は「龍星の射手リュキオース」、そして3枚目は「煌星龍王メビウスドラゴン」。

 

「来たぜ俺のキースピリット!!」

「!」

「まずはお前から! こいつを前に絶対はねぇ! 鉄壁の壁だろうが無敵の相手だろうが一撃必中必殺の矢を叩き込めッ! 龍星の射手リュキオース、Lv.3で召喚ッ!」

 

フィールドから吹き上げる火柱、出現とともに火柱は左右に展開したかと思うと、奥から白獣に跨り、駆け抜ける龍──リュキオース。

 

「もう一体! 星を照らす程に炎を滾らせろッ! 星の王足る龍! 召喚ッ! 煌星龍王メビウスドラゴン、Lv.3!!」

 

空を割いてフィールドへ降り注ぐ流星、その流星に向かって、地面より噴き上げる火柱が流星へ撃ち込まれ、衝撃に爆発を起こすが、爆風の中、炎を吸収する竜の影、そして爆風を振り払って、龍王──メビウスドラゴンはフィールドへと降り立つ。

 

「この土壇場で二体のドラゴンを一気に!?」

「これが俺の全力だ! 召喚により、アポローンにコアを追加。さらにリュキオースの【超祈願(スーパーブースト)】でアポローンにさらにコア3個を追加! これでLv.2だ!」

「ぐっ!!」

「まだだぜ、リュキオースの龍射撃発揮! 効果でBP20000以下のスピリット、マウチューを破壊だ!」

 

リュキオースは矢に炎を灯し、マウチューに狙いを定めて、そのまま矢を放つと、弾丸の如く放たれた矢はマウチューを正確に貫き、破壊する。

 

「無駄だ! マウチューは自身の効果でフィールドに残る! 忘れたか!」

「忘れてなんかない、それに俺のキースピリットの効果は決して無駄でもないさ!」

「何!?」

「アポローンのLv.2、【神域(グランフィールド)】の効果! 系統「星竜」を持つ自分のスピリットが、相手スピリットを破壊した時、相手のライフのコア1個を破壊する!」

「!!?」

 

爆風を振り払い、平然と現れるマウチューだが、遥か向こう側でアポローンもリュキオースと同じく、矢を構えたかと思うと、その標的を今度はキキへと定めて矢を射抜くと、展開されたバリアを直撃し、ライフを砕く。

 

「うあッ!!」

「まだまだ! 今度はメビウスドラゴンでアタック! アタック時効果でオンコットを破壊!!」

 

刃に炎を込め、そのまま炎を斬撃波としてオンコットへ飛ばし、斬撃を受けて破壊されてしまう。マウチューの効果で疲労状態でフィールドに生還するが、破壊されたことには変わりない。またアポローンの効果によって矢が撃ち放たれ、キキのライフが砕かれる。

 

「うぐッ!!」

「メビウスドラゴンの効果はまだあるぜ! Lv.2、Lv.3のアタック時、ソウルコアを使用する事無く、煌臨する事ができる! 手札から太陽神星龍アポロヴルムに煌臨ッ!」

 

メビウスドラゴンが光に包まれ、光の中でその身を変化させると、光が晴れ、姿を現したのは太陽の名を持つ龍、アポロヴルム。

 

「メビウスドラゴンに煌臨した場合、煌臨元となったメビウスドラゴンは再度召喚できる! Lv.2で再召喚し、煌臨と召喚で、アポローンにそれぞれコアを追加! 続けてアポローンのフラッシュ効果、アポローンのコア2個をボイドに送り、オンコットを破壊! デッキから1枚ドローだ」

 

再び出現するメビウスドラゴン、それと入れ違いになるようにヘリオスドラゴンは不足コスト確保の為、消滅。そして続くアポローンによる炎の矢に射貫かれるオンコットだが、マウチューの効果によって再び舞い戻る。

 

「マウチューの効果を逆手に取ってる訳か」

「あぁ、さらにアポロヴルムのメインアタックだ!」

「調子に乗るな! フラッシュでアクセル! オンコット!」

「このタイミングで!?」

「このターン、黄色のスピリット全てにシンボル一つを追加。だがそれが狙いじゃない、ハヌマーリンの効果でオンコットをそのままノーコスト召喚だ!」

 

迫るアポロヴルムの目の前に颯爽と現れるオンコット、敵の姿にアポロヴルムは威嚇するように大きく吠えるが、オンコットは決して引く様子はない。

 

「ブロックだ! オンコット! さらにフラッシュ! フルーツチェンジ!」

「!!」

「バトルしている互いのBPを入れ替える!」

 

オンコットのBPは3000、対するアポロヴルムは6000、その差がマジックにより逆転。バトルでは、オンコットは杖より雷撃を、アポロヴルムは火炎放射を吐きつけ、攻撃は互いに相殺されて打ち消され、なおも迫るアポロブルムを迎撃するようにオンコットも杖に跨り飛び出していく。

迫るオンコットに対し、振り払おうと腕を突き出すが、オンコットは振りかざすアポロヴルムの腕を飛び越え、そのまま頭上へ上がると、跨る杖を手に持ち換え、落下する勢いを付け、アポロヴルムの顔面に杖を叩きつけ、地面に叩き伏せられてアポロヴルムはその場で大爆発を起こし、破壊される。

 

「くっ!!」

「どうだ!」

「まだまだ! 行け、リュキオース! Lv.3のアタック時で龍射撃発動! マウチューを破壊だ!!」

 

自身が跨る白虎を土台に、飛び上がるとそのまま再びマウチューを狙い撃つように矢を放ち、マウチューを射抜く。フィールドには残るものの、再びアポローンによってキキのライフが破壊され、さらにメインのアタックは継続しており、リュキオースが離れてなお、白虎はそのままキキ目掛けて突っ込んで行く。

 

「ライフだ!」

 

バリアに牙を突き立て、さらにリュキオースはそのまま白虎へ飛び乗ると同時に、矢をそのままバリアに突き刺し、牙と矢に貫かれ、ライフが砕かれる。

 

「これで残るライフは1つ! 行けぇッ!! メビウスドラゴン!! アタック時効果でマウチューをもう一度破壊だ!」

 

駆け出し、そのまま剣に炎を込めると、マウチューを切り裂き破壊する。

 

「アポローンの効果! 最後のライフを破壊だ!!」

 

狙いを定め、残るライフを撃ち抜くべくアポローンの矢が放たれる。

 

「まだだ!! 猿道士オンコットの効果、手元に置かれたこのカードを破棄する事で、俺のライフは効果によって削られない!!」

 

アポローンが射貫く矢に対し、オンコットのカードを投げると、そのカードは盾のように展開され、アポローンが射た矢を弾き返す。

 

「やるなッ!」

「まだ俺のフラッシュだ、さらにマジック! イエローリカバー! ハヌマーリンを回復! そしてブロックしろッ! ハヌマーリン!!」

 

イエローリカバーの効果で再び力を滾らせると、ハヌマーリンは杖を持ち雷を纏わせて、そのままメビウスドラゴンへ杖を振り翳し、メビウスドラゴンも真っ向から炎を纏わせた剣で受け止め、鍔競り合うその衝撃に、フィールドが大きく揺れる。

 

「天魔神と合体し、さらに妖雷スパークの効果も合わせ、ハヌマーリンのBPは21000! 勝負合ったな!」

「負けるかよ! 俺もフラッシュだ! マジック、ソウルオーラ! 効果でソウルコアが乗っているメビウスドラゴンにBP+6000!」

 

メビウスドラゴンのBPは17000まで上昇するがそれでもまだハヌマーリンには及ばない。鍔競り合う両者だが、ハヌマーリンはメビウスドラゴンの腹部を蹴り飛ばし、後方へ突き飛ばすと、そのまま幾つもの腕を翳して、腕にはそれぞれ光と雷を集わせ、無数の光弾と雷撃をメビウスドラゴンに撃ち放つ。

 

「その程度じゃ、ハヌマーリンは倒せない! それで終わりか!!」

「終わらせてたまるかよ!! まだまだ俺は強くなりてぇ、だからその為にも負けていられねぇんだ!!!」

 

手札に残る一枚、カードを持ち、その手に力を込めて。

 

「最後の一枚、フラッシュ! ソウルオーラだ!!」

「2枚目だと!?」

「リュキオースから確保し、効果発動! メビウスドラゴンにさらにBP+6000!!」

「!!?」

 

そのBPは23000、完全にハヌマーリンのBPを上回り、メビウスドラゴンは剣に纏わせた炎をさらに大きく燃え上がらせると、そのまま巨大な炎の刀となったそれを勢いよく振り下ろし、無数の光弾と雷撃をその一振りで全て掻き消す。

その光景に一瞬怯みながら、ハヌマーリンは雷を纏わせた杖を構え、メビウスドラゴンへ迫ると切り掛るように杖を振り下ろし、メビウスドラゴンもまた炎を纏った刃を振り下ろし、互いに切り合っていく。

二度、三度と得物を打ち付けるが、互いに痺れを切らしたのか、お互いに渾身の力を込めて、そのまま得物を振り下ろし、鍔競り合いながら両者さらに力を籠める様に吼え立てる。

 

「うおおおおおおッ!!! 行けッ! メビウスドラゴンッ!!」

「!!」

 

メビウスドラゴンは足を地面に凹ませる程、さらに強く力を籠めて地面を踏み締め、ハヌマーリン以上に咆哮を上げると、少しずつハヌマーリンは押されるように後退し始め、そして一気に刃を振り切ると、杖の先をそのまま切り落とし、再度刃を振り上げて得物を失ったハヌマーリンに一刀。

炎の斬撃に、ハヌマーリンはその場で倒れ伏し、大爆発を起こす。

 

「ハヌマーリンッ!!」

「これで終わりだ! アポローンの効果発揮!」

「ぐっ!!」

「最後のライフを破壊だ!!」

 

メビウスドラゴンはアポローンが放った矢を掴んだかと思うと、炎の矢と刃をそのままバリアへと突き立てる。

 

「うぐッ!!……ッ!……俺が、負けるッ!?」 

 

状況を受け入れがたいように痛みに耐えつつ、驚きを隠せなかった。だがそれでも、ふと烈我の表情が視界に映ったかと思うと、また口元を緩ませる。

 

「(嫌、俺の完敗だな……久々に、いい勝負ができた)」

 

笑って自分の敗北を受け入れると、ライフに灯ったソウルコアを砕かれ、バトルは決着となる。

 

 

***

 

「やった! 俺の勝ちだ!! って、喜んでる場合じゃなかった、結果は?」

 

バトルの勝利に喜ぶ烈我だが、勝敗よりも重要なことがある。自分が帰る手段について成功したのかどうか不安が過るが、次の瞬間、空へ向けて光が放たれたかと思うと、天へと上った光は今度は地上へと落ちると、その光の先、まるで扉のように空間の穴があった。

 

「あれって!?」

「どうやら……成功、したみたいだな」

「!」

 

振り返った先にキキの姿があるが、かなり傷ついており、今にも倒れそうな程ボロボロの状態だった。

 

「おい、キキ!? どうしたんだよ!?」

「煩い……俺の事は、構うな。いいから、早く……行……け」

「キキ!!?」

 

意識を失い倒れる彼女を咄嗟に受け止め、突然の事態に訳が分からず混乱してしまうが、状況を見ていたエトは直ぐにその場に駆け寄っていく。

 

「エト! これって!」

「いいから彼女を診せてください。直ぐに治療します」

 

キキを横に寝かせると、そのまま両手を向け、傷を癒す様に光を彼女に当てる。何が起こったのか分からない烈我にとっては困惑を隠せなかった。

 

「一体何がどうなって、説明してくれよ」

「はい、実は烈我さんを元の世界に返す為のエネルギー、それにはバトルによって失なったライフのエネルギーを必要としています」

「ライフの?」

「はい、そして最もエネルギーを集めるのに、ソウルコアの力が必要不可欠です」

「封印を利用したって事?」

 

烈我の問いにエトはゆっくり首を縦に振る。

 

「ですが、ソウルコアはこの世界では魂の源です。それを破壊されれば文字通り、命を失う程、ダメージが大きいんです」

「命を!? 嘘、だろ!?」

 

一瞬何を言われなかったのか分からなかった。嘘とも疑いたくなった。だが傷ついたキキの様子に嘘ではない事はすぐに理解できた。

 

「なんで、何でそんなこと黙ってたんだよ!!」

「それは」

「元の世界には帰りたい。けど、その為にキキをこんな目に合わせるつもりはなかった! 他に方法はなかったのかよ!!」

「……残念ながら、ありません」

「!」

 

俯きながら話すエトの表情に、思わず言葉を失った。

 

「彼女も覚悟の上でした。勿論、私も彼女を止めようとしましたが……!」

 

バトルする前、キキに対してエトが言い掛けようとした時だろう。だが、その時のキキの表情に圧され、言葉を飲み込んでしまっていた。

 

「何で俺の為にそこまで……!」

「あなたが彼女を気遣ってくれてるように、彼女もあなたを想っています。理由なんてない、ただ貴方の力になりたかった。それだけなんです」

「…………」

「さぁ、烈我さん。あの空間に飛び込めば元の世界に帰れます。いつ閉じるかは分かりません、だから早く!」

「けど、俺は……!」

 

唯一つ元に世界に帰る手段、時間も限られており、どうするべきか決断を迫られる。悩みながらも、決断するしかなかった。

 

 

***

 

 

「う、うぅ……!」

「!、よかった! やっと目を覚ましましたか」

「エ、ト」

 

暫くして漸く目を覚ますと目の前にはエトの姿があり、目を覚ました彼女の様子にエトは安心したように胸を撫で下ろす。

 

「無事な様で安心しました。でもまだ無理は禁物ですよ」

「あぁ、礼を言う。あいつは、無事帰れたか」

 

体を起き上がらせ、空間の穴にどうやら目的を果たせた事に彼女も安心したように一息つく。

 

「あの、実は、その」

「?」

 

そんなキキに対し、言い難そうに口籠らせるエト。そのままどこか別の所へ視線を向ける彼女の様子を不思議に思いながらも、エトの視線の先に同じく視線を向けるが。

 

「!!!」

 

視線の先の光景に思わず絶句した。彼女の視線の先には、目を瞑りその場で寝ている烈我の姿が。

 

「う〜ん……キキ!? 目が覚めたのか!!」

 

目を覚ましたキキと視線があった瞬間、すぐに飛び起きる烈我だが、すぐさま彼女は怒りを隠さないように血相を変え、烈我の胸倉を掴む。

 

「何でお前がここにいる!! 元の世界に何でとっとと帰らなかった!!!」

「ご、ごめん。だって!」

「言い訳するな! 折角元の世界までのルートが開いてるのに!! もし閉じて帰れなかったらどうするつもりだ!」

「キキ、その辺にしてあげてください」

 

二人の間に割って入るエト、諭す様な言葉に少しだけ感情を落ち着かせ、胸倉を掴む手を放す。

 

「私も彼に早く帰るように言ったんです。ですが」

 

決断を迫れた時、烈我の下した決断は一つだった。

 

 

「俺は元の世界には帰らない」

「え!?」

「こんな苦しい思いをしてくれた相手に何もせず、見捨ててそのまま帰るなんて俺は絶対できない!!」

「ですが、方法はこれしか」

「だったら帰らねぇ。もし、空間が閉じても、俺はもうバトルはしない。ずっと帰れなくてもいい、たとえこの世界で野垂れ死ぬことになろうが俺は絶対帰らない!!」

 

 

烈我の下した決断は、キキを見捨てて帰らないという事。真剣な表情で強い意志を示す烈我にエトは何も言い返す事ができず、今に至る訳だった。

 

「本当にこの馬鹿! 元の世界に帰らないなんてふざけてる!!」

 

少し落ち着いたとは言え、まだ烈我を許せないように一喝。その言葉にただただ下を向きながら聞くしかなかった。

 

「……ごめん」

「ごめんで済むか! 俺とのバトルを無駄にするつもりだったのか!」

「本当に悪いと思ってる。けど、どうでも俺、あのまま帰るなんて絶対できなかった」

「……何でそこまで。お前の大切な人に、俺が似ているからか?」

「そんなんじゃない!!」

 

キキの言葉に対し、顔を上げて強く否定した。

 

「異世界から来た俺に対して、力になってくれたからさ。この世界に来て、一人で正直滅茶苦茶怖くて心細かった。それなのに、見ず知らずの筈の俺の為に、色々してくれて、命を失うような目にあってまで助けてくれようとしたのに……それを見捨てたまま帰るなんて俺には、死にたくなるぐらい胸を抉られるんだよ!」

「お前……」

「ただの自己満足って自覚してる。けど俺は!」

「もういい」

 

続きを言おうとする烈我の口元に手を添え、思わず続きの言葉を飲み込んでしまう。

 

「お前って、本当に大馬鹿だな」

「……そんな何度も言わなくったって」

「大馬鹿だよ、馬鹿で御節介で、けど……面白い奴だよ」

「え?」

 

今の彼女に怒りはなく、落ち着くように一息付き、そして一言。

 

「……ありがとう。烈我」

「!」

「ほら、とっとと元の世界に帰れ、俺も無事なんだし、ここに残る理由はないだろ?」

「お、おぉ」

 

それなりに時間は経過し空間の穴は少し小さくなっている。閉じてないうちに空間の前へと歩み寄り、見送るようにキキとエトは並び立っている。

 

「なぁ烈我、お前ここに来る前に言ってくれたこと、覚えてるか?」

「?」

「「俺の力に成らせてくれ」、正直そんな事言ってくれる奴はいなくて、驚いた」

「何か改めて言われると恥ずかしいな」

「そうか、けど俺はそう言ってくれて嬉しかったけどな」

「!!」

「でもやっぱりそれは俺の問題だ。誰かの手を借りる事じゃない、いつか絶対、自分自身で解決して見せるさ」

 

明るくそう言った彼女の表情に、不安は微塵もなく、烈我も安心するように、「あぁ」と返事を返した。

 

「ところでお前、光黄っていう相手に勝ったら告白するって言ってたな」

「な、何で今それ言うんだよ!」

「別に。ただ、俺とのバトルに勝ったんだ、それなのに俺には何も言ってくれないのかなって、思ってさ」

「!?」

 

エトは何かを察したように驚いた様子で、キキの言葉の意味に烈我は最初分からない様子だったが、数秒を間を置き考え込むが、途端に何かに気付いたように。

 

「キキ、それって!!」

「ただの冗談だ、それとこれは礼だ」

 

烈我に手渡す一枚のカード。

 

「これは?」

「この間ソウルスポットで手に入れたカードだ。使いこなすならお前の方がいいと思ってな。それよりほら、とにかく行け!」

「お、おい!!」

 

表情を隠す様に俯いたまま、烈我の背中を勢いよく突き飛ばす。

 

「ちょ、キキ!?」

 

押されながらも咄嗟に振り返り、最後に映るキキの表情、その顔色は何だか赤く見えたような気がした。そしてそのまま光の中へ消え、視界が真っ白に染まり、空間の穴はその場から消失してしまう。

 

「言ってしまわれましたね」

「あぁ、ようやく面倒事が片付いた。お前にも苦労を掛けたな」

「いえ、お力に成れてよかったです」

「それはそうと、結局あいつがこの世界に来た理由は分からないままだったな」

「この世界に、来た理由ですか」

「何か分かるか?」

「……あくまで私の想像ですが、もしかしたらキキ、あなたの為にかもしれませんよ」

「俺の?」

 

意味が分からないようにハテナを頭に浮かべるキキに対し、エトは静かに笑いながら続ける。

 

「だって、あんなに楽しそうにバトルした姿は初めて見ましたよ? ずっと邪神王の件があってから思い詰めていた表情が嘘のように」

「俺は別に」

「ふふ、いいじゃないですか。同じ仲間として、これからはもっと私の事も頼ってください」

「……あぁ、そうだな」

 

観念するように笑いながら、差し伸べられたエトの手を掴むと、最後にもう一度、消えた空間の穴へ視線を向ける。

 

「(もしお前がこの世界にもう一度来る事があれば、その時はまた相手してやる。負けたままじゃ、勇者一族の名折れだからな)」

 

笑いながらそんな事を想う彼女だった。

  

 

***

 

 

『烈我! 烈我!!」

「う、う~ん」

 

また聞き覚えのある声が聞こえる、目を開けると。

 

「えっと、キキ?」

「何寝ぼけてる、こんなところで寝て風邪引いても知らないぞ?」

「!!?」

 

目の前にはキキ、ではなく光黄の姿があり、辺りの光景はスピリッツワールドではなく、いつもと変わらない自分の部屋と机の上に広げられたカードだった。

 

「ゆ、夢?」

「バジュラから聞いた。デッキ構築しようとしてたら寝落ちしたらしいな」

「え、それじゃあ俺、ずっと寝てて?」

「あぁ。るみかさんに起こしに来てくれて言われて来てみれば、この有様だ。ついでにバジュラなら先にライトと行ってる」

「…………全部、あれは夢だったのかよ」

「一人でさっきから何を言ってる? 早く支度しないと遅刻するぞ。俺はそこまで面倒見ないからな」

「あ、あぁごめん。迷惑かけた」

 

目を擦りながら今までの事は全て夢だったのか分からず不思議な感覚だった、混乱する中、ふと机に広げたカードを前に、我に帰ったように慌てて片付ける。

 

「光黄、もしかして、このデッキ見た?」

「心配しなくても、人の構築を覗き見るような真似はしない。ただそんなに心配するなら片付けはきちんとな」

「本当ごめん。すぐ準備するから、先行ってて」

「分かった。けどあんまり遅いと知らないからな」

 

一旦その場にする光黄を見送ると、すぐに机のカードを片付けていく。

 

「ふぅー、ミナトからもらったカード、見られなくてよかった。それにしても、あれは本当に夢だったのかな……ん?」

 

カードを片付ける中、ふとデッキ構築してる際には見覚えのないカードがあった。だが、そのカードは間違いなく、あの時キキから手渡された一枚、「魔界幻龍ジークフリードネクロ」のカード。

 

「……そっか、やっぱり夢じゃなかったんだ」

 

安心するように一言。スピリッツワールドでの体験は、夢か現実か、それを証明する者は誰もいない。けれど、烈我本人は実際に起きた出来事だと実感していた。その実感があれば、烈我にとっては十分だった。




特別編後編! バトルパート、ようやく書ききれました!
始めに言っときます! 今回の特別編、書いたこと、一切後悔はないです!←

前回の話でも書きましたが、今回の話については
昨日佐倉さんが誕生日ってことで、ふと思いついたまま想像を暴走させて、今回の話を書ききった次第です、はい←

あとはキャラクター創界神を自然な感じで出すにあたり、特別回を設けたかったのも理由の一つですかね。なんにせよキキベーレシア、バトスピのアニメの中で特に好きなキャラなので今回の話は書いてて楽しい限りでした(←反省の色なし)


まぁでも実はこの話、本編とつながってたり、つながってなかったり←ドッチ


ジークフリードネクロ、本編でも書いてみたいですね。
出るのかどうかはこうご期待という事で何卒( ;∀;)

特別編は今回で完結ですが、機会があればまたやってみたいですね。アニメならガレットとかもコラボ回作ってみたり、あとは他のバトスピ作者様ともコラボ回やってみたいです!
まぁただの願望ですので、お気になさらず。


本編の更新、引き続き頑張りますのでよろしくお願いします!
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