「牙威ミナト、だったな。お前がそんなに怒りを露にするのは初めてだな」
「知ったような口聞くなよ、俺の事についてはどうせ絵瑠の記憶を辿ってんだろ? 寄生虫みたいによぉ!」
「ふふっ、言ってくれる、その強気な態度はキラー譲りか?」
「ぐぅっ……ミナト……!」
「烈我、お前はそこで休んでな。絵瑠は俺が助ける」
「けど、あいつは……!!」
「心配すんなよ、今日の俺は絶対負ける気はなんてねぇさ」
『キラー』
『バジュラ、テメェもだ。そこでゆっくり見てろ、俺様があの野郎を噛み裂くところをな!』
以前の屈辱もあってか、その目をギラつかせる程鋭い殺意を絵瑠に、否、絵瑠に取り付いてるシュオンを見据えて睨む。
「話は聞いてた。お前が絵瑠に取り付いてたのは確か欲望を狙ってるって事だったよな」
「あぁ」
「なら改めて聞かせてもらおうか、欲望を喰らった後、絵瑠はどうする気だ? 嫌、どうなっちまうんだ?」
以前ミナトもまたシュオンを睨み付けたまま、苛立ち気味に尋ねるが、それに対し絵瑠を通して、シュオンは笑いながら。
「欲望を喰らった者の先など、何もないさ」
「!」
「欲望はな、叶えて終る訳でない。欲望を叶えればその欲望への執着、もしくは新しくより大きな欲望を作る為の糧」
「……難しい話はいらねぇ、要するに欲望を喰らわれた絵瑠はどうなるんだよ?」
「無だよ。欲望を喰らえば、この女にもう何も未練は残らない。何かに怒り、羨み、求める、そんな事は一切無くなる無の感情。それが果てだ」
「「!!」」
シュオンの言葉に烈我とミナトも動揺するように顔色を変え、烈我は倒れながらもふざけるな、と怒るように言葉を吐こうとするが、その言葉出るよりも先にミナトは前へ出る。
「……一つ聞かせろよ、絵瑠の欲望が何なのかお前は知ってんのか?」
「無論だ。この女の内にある最も強い欲望、簡潔に言えば強欲に嫉妬、それに……憤怒か」
シュオンの言葉の意味がまるで分かっていないような烈我だが、ミナトだけは冷静にシュオンの言葉を冷静に聞き入り、シュオンも言葉を続けて行く。
「他者への嫉妬、自分に近しい存在、そいつと同じ強さを手に入れたい。そして……もう一つ、他者が持ち得て己が持ち得ないもの。それが欲しいらしい」
軽く視線を烈我に向けるが、視線を向けられた本人はまだその意味が分からない様に一瞬首を傾げる。
「おい、結局どういう意m──」
「烈我、それ以上は聞かなくていいさ」
「ミナト?」
疑問が残る烈我を他所にミナトはそのままデッキを構えながらシュオンを睨む。
「とっとと俺とバトルしろ。お前が何を望んでようが、絵瑠を巻き込むんじゃねぇよ」
「ふん、巻き込むな、か。随分この女を心配してるようだが、生憎この女はお前に対してそうではないらしい」
「!」
「さっき言った強欲と嫉妬は関連する一つの欲望だった。だが、それとは別に強い憤怒への欲望、つまり……お前に対する怒りだ」
「お前さっきから何訳の分からない事を!! ミナトに対してって、そんな事!!」
「嫌、別にいいぜ」
烈我はシュオンの言葉を否定しようとするが、それを真っ先に止めたのはミナト本人だった。
「絵瑠が俺に対して怒りを持ってるのは重々承知だ。胸に手を当てても、痛い程心当たりがあるからな」
その心当たりに対し、申し訳なさそうに一瞬絵瑠の表情を見る。
「お前が俺に対して怒りを持つのはいい、俺を殴って気が済むのなら観念してやるよ」
「ほぉ?」
「だけどな、それは……その怒りは、絵瑠自身の物だ! 俺をぶっ飛ばしたきゃ絵瑠本人の意思でやらせろよ!! テメェが好き勝手に横槍入れてんじゃねぇ!!!」
いつものような軽い口調で笑うミナトの姿ではなかった。本気で怒りを覚える様に眉間に皺を寄せて声を荒げ、烈我自身もめったに見ないミナトの様子にそれ以上言葉が出なかった。
「今度は俺とバトルしろよ? 負けたら当然絵瑠から出ていきな」
「……さっきまでのバトルも見ておきながら勝てる気でいると?」
ミナトに視線を向けて、その表情を見て微笑すると。
「フッ、いいだろう。どの道お前も得物だ」
『得物? そいつぁテメェの事だろう? 俺に噛み裂かれるなァッ!!』
「好きなだけ吠えろ、前と同じく今にその傲慢な口も効けなくしてやる」
『ほざきやがれッ!』
強気にシュオンに言い放ちながらカードの状態へと切り替わると、キラーのカードをそのままデッキへ加える。
「とっとと始めようぜ! 俺もキラーもここまでやる気になるのは珍しいんだぜ? だから思う存分、俺達で、テメェをぶっ飛ばしてやるよ!」
「バジュラといいキラーといい、そしてその人間と言い……愚かすぎて笑えるよ!」
見下した態度を見せつつも、ミナトの挑戦を受ける様に絵瑠を通してデッキを構える。
「そこまで望むなら始めるぞ、手早くな」
「手早くすましたいのは俺も同じだよ。サクッと勝たしてもらうぜ!」
キューブを足元に投げ入れ、周囲の空間が二人を包む。
「「ゲートオープン界放ッ!!」」
開始を告げる合図と共に、バトルの幕が開かれる。
────第1ターン、ミナトside。
[Reserve]4個。
[Hand]5枚。
「ネクサス、No.36バーチャスアイランドを配置だ」
先行はミナトから。サポート支援として呼び出されるネクサス、聳える様にミナトの背後にバーチャスアイランドが出現する。
「バーストをセット、ターンエンドだ」
────第2ターン、絵瑠side。
[Reserve]5個。
[Hand]5枚。
「戊の四騎龍レッドライダーを召喚」
静かなコールと共に呼びされしは赤の翼竜に跨りし騎龍というべきスピリット、レッドライダー。どうどうと跨る翼竜の手綱を引きながら合図の時を待つ。
「召喚時効果で1枚ドローし、アタックステップ! レッドライダー、先手を奪って来い!」
速攻を仕掛けるつもりなのか、即座に攻撃指示を出すとそのままレッドライダーは手綱を握って一気に駆け込み、そのままバリアに突進し、ライフを破壊。
だがライフを失ってもなお、ミナトは逆に笑って見せた。
「ライフ減少時でバーストだ! 駆け抜けし王者のロード! 障害壊して突き進め! 千獣の王者ドスダイモス! 召喚!!」
先手を取らせる事こそミナトの狙い、その召喚口上を口にするとフィールドに響く轟音。その正体は壁を突き破ってフィールドを駆ける獣の王者、ドスダイモス。
「ドスダイモスの効果! こいつは出現した瞬間からお互いに手札を4枚以上にできない。3枚以下になるよう、破棄してもらおうか!」
「!」
今絵瑠の手札は5枚、ドスダイモスが眼光を輝かせた瞬間、絵瑠の手札から2枚のカードが弾き飛ばされ、トラッシュに送ったカードは「龍魔神」と「シヴァカタストロフィー」
「悪いな、折角手札増やしてたのによ」
「つまらん小細工を」
「小細工で済むかどうか、今に分かるさ」
「何?」
────第3ターン、ミナトside。
「俺のターン、ドローステップでカード1枚ドロー。手札が4枚になった事で、ドスダイモスの効果、ディアマントチャージを破棄」
ドスダイモスの効果は絵瑠だけでなく、ミナト自身にも影響する為、手札の1枚を破棄するが、それもまた狙いな様にバーチャンスアイランドに再び光が灯る。
「バーチャスアイランドはお互いの効果で自分の手札を破棄した時、コア1個をこのネクサスに置く。よってコアブースト!」
[Reserve]4個。
[Hand]3枚。
[Field]千獣の王者ドスダイモスLv.1(1)BP8000、No.36バーチャスアイランドLv.1(1)。
「ドスダイモスとバーチャスアイランドにそれぞれコア2個を追加し、レベルアップ。そのままアタックステップだ!」
アタックステップ開始時、バーチャスアイランドにソウルコアが置かれている事でその効果発揮、全てのスピリットは最高レベルとなり、ドスダイモスはさらにレベルを上昇させ、そのBPは今や20000。
「ドスダイモスでアタックだ!」
剛腕を地面へと叩きつけながらフィールドを爆走するドスダイモス、そしてその目の前にいるレッドライダーを邪魔だと言わんばかりにその剛腕で振り払うと、弾かれたレッドライダーはその場で四散してしまう。
「ドスダイモスはアタック時効果で最もコストの高い相手スピリットを破壊する! そしてメインアタック!」
「ライフで受ける!」
頭部の角をバリアへ突き刺す様に突進、バリアを粉砕しライフを削り返す。
「ぐっ!」
「ターンエンド」
────第4ターン、絵瑠side。
[Reserve]7個。
[Hand]3枚。
[Field]なし。
このターンもドローステップで4枚になった瞬間、カードの破棄を余儀なくされ、「死神壬龍ジェットザリッパー」を破棄するが、気を取り直す様にメインステップを続けて行く。
「メインステップ! ムトゥードラゴンを召喚、召喚時効果発揮で手札1枚を裏向きで手元に置く事でデッキから1枚ドロー。こうすればドスダイモスの影響の外だろう?」
「確かにな。けど甘いぜ? そっちが召喚時効果を持つスピリットを召喚した事でトラッシュにあるディアマントチャージの効果を発揮! このマジックは相手の召喚時効果を持つスピリットが召喚されたなら手札に戻せる!」
「!」
「そして手札が増えた事でドスダイモスの効果、回収したディアマントチャージをもう一度トラッシュへ送る」
「……成程、そういう事か」
バーチャスアイランドに目を向けて察するように呟き、絵瑠に対し、ミナトも笑いながら「ご明察」と返していく。
「バーチャスアイランドの効果で再びこのネクサスにコアを追加だ!」
「連続してコアブーストか、少々厄介だな」
「言ったろ? 小細工で済むかどうかは今に分かると!」
「減らず口を、バーストセット。これでターンエンド」
────第5ターン、ミナトside。
このターンも再び、ドスダイモスとバーチャスアイランドとのコンボで「俊星流れるコロッセオ」を捨てると、再びコアブースト。
[Reserve]1個。
[Hand]3枚。
[Field]千獣の王者ドスダイモスLv.2(3)BP12000、No.36バーチャスアイランドLv.2(5)。
「ドスダイモスとバーチャスアイランドをLv.1にダウン。そして行くぜ! 俺のキースピリット!!」
コアは充分、早くも勝負に出る様にカードを構える。
「三つ首の獣、本能のままに叫び! 敵を威圧する咆哮を! 勝利への雄叫びを上げろッ!! 戌の十二神皇グリードッグ、召喚ッ! Lv.2!」
煉獄の門が地面より飛び出すと、門はゆっくりと開かれ、その先には鎖に繋がれし獣の姿。咆哮を上げながら自身を拘束するその鎖を引き千切ると、煉獄の門を突き出し、グリードッグがフィールドへと現れる。
「アタックステップだ! グリードッグ、行けッ!」
「ッ!」
「アタック時効果で【封印】、ソウルコアを俺のライフに置き、さらに【強奪】の効果も発揮だ!」
相手のマジックカードを奪い取る効果、そのまま絵瑠の手札を強制的に開くと、オープンされたカードは「白晶防壁」と「光翼之太刀」。
「白晶防壁を貰うぜ! 折角だからその効果も使わせてもらう! ムトゥードラゴンを手札だ!」
オープンされたカードに飛び掛かり、そのまま咥え取ると即座にそのカードを噛み砕き力を発揮するようにブレスの様に竜巻をムトゥードラゴンへ吐き付けると、巻き起こる暴風にムトゥードラゴンは吹き飛ばされ絵瑠の手札へと戻って行く。
「グリードッグのメインアタックだぜ!」
「ライフで受ける!」
グリードッグによる牙がバリアへと喰らい付いて行く。
「続け、ドスダイモス!」
「それもライフで受ける」
グリードッグは牙を離し、その直後に間髪入れずにドスダイモスによる剛腕がバリアを粉砕し、ライフを二つ一気に削られていくが。
「ライフ減少時でバースト発動! 魔竜デスラー!! このカードをバースト召喚し、召喚時による効果でデッキから2枚ドロー!」
「!?」
グリードッグによる攻撃を受けてなお、全く平気な様子でバーストを発動させると、アメジストが砕けると共に二刀の剣を握りしめ、人型に近い姿を持つデスラーが現れる。
「(下手に手札を増やせばドスダイモスの効果を受ける筈、どういうつもりだ?)」
デスラーの効果を発揮した事で今の彼女の手札は3枚、次のターンを迎えればまたもドスダイモスの効果で破棄を余儀なくされるが。
────第6ターン、絵瑠side。
「ドローステップ、手札が4枚になる為、辰の十二神皇ウロヴォリアスを破棄」
「キースピリットを捨てただと!?」
「解せないか? だがすぐに分かるさ」
[Reserve]9個。
[Hand]3枚、(手元)1枚。
[Field]魔竜デスラーLv.1(1)BP5000。
「メインステップ、アクセルでブラックライダーを使用! トラッシュにある死竜を持つカード1体を召喚できる!」
「ぐっ! それが狙いだったか」
烈我の時にも見せた戦い方、当然何を呼び出す気なのかすぐに察するが、既に手遅れである様に絵瑠は不敵な笑みを浮かべる。
「抗う事の出来ない死への呪縛、今こそ絶望のカウントダウンを下す! 召喚、辰の十二神皇、ウロヴォリアス!!」
天は裂く黒い稲妻、その閃光による落雷は大地を砕いて眠れる龍皇を呼び覚ますかのように、亀裂の走る大地より伸びる腕、地面に爪を突き立てながらウロヴォリアスがフィールドへと出現する。
「召喚時の効果によりこちらも【封印】!」
ウロヴォリアスもまたグリードッグと同じ十二神皇であると同時に、同じ【封印】の効果を持つ一体。リザーブのソウルコアをライフへ移し、赤い光を灯す。
「ふふふ、さぁ反撃と行こうか! ウロヴォリアスとデスラーでそれぞれアタック!」
「どっちもライフだ」
デスラーの剣とウロヴォリアスの爪が同時に振るわれ、それぞれバリアを斬り裂くと衝撃と共にミナトのライフを砕く。
「がぁっ……!」
「おい、その程度で音を上げてる暇はないぞ? ウロヴォリアスの真骨頂はこれからなんだからな」
「!!」
「ターン終了、さぁお前のターンだ!!」
────第7ターン、ミナトside。
「俺のターン」
「ウロヴォリアス、封印時の効果! 【呪縛】!」
「!!」
ミナトがターン開始を宣言した瞬間、絵瑠もまたウロヴォリアスによるその効果を宣言すると、ウロヴォリアスの胸の宝玉は眩く輝き出すと、紫炎によって形成された竜が飛び出し、それはドスダイモスとグリードッグを拘束するように締め付ける。
「ウロヴォリアスの【呪縛】は相手の各ステップ毎にコア1個をトラッシュに送る。まずはスタートステップ! ドスダイモスのコアを除去!」
そのまま紫炎の龍はドスダイモスの体を一気に絞めつけると、コアを取り除かれドスダイモスはフィールドから消滅。
「ッ!!」
「次だ、コアステップ! グリードッグからコアを除去!!」
ウロヴォリアスの【呪縛】は一度発動を開始すればそれを止める事は容易ではない。コアが取り除かれ、残るグリードッグのコアは1個。
「グリードッグ!!」
「折角のキースピリットもここまでだな。ドローステップ!!」
グリードッグに残っていた最後のコアもトラッシュに送られ、グリードッグもまた儚くフィールドから散ってしまう。
「俺の、スピリットが……!」
「呆気ない。メインステップ迄進めるのなら、リザーブのコア1つを貰うぞ!」
「!」
ウロヴォリアスの【呪縛】は相手リザーブにも効果を及ぼす。紫炎の龍が今度はミナトへと飛び掛かるとそのままリザーブのコアに喰らい付き、トラッシュへと送る。
[Reserve]11個、[Trash]1個。
[Hand]4枚。
[Field]No.36バーチャスアイランドLv.1(0)。
「俺のターン、バーチャスアイランドにリザーブのコア全てを追加」
ウロヴォリアスの【呪縛】はフィールド全域に及ぶ訳ではない。ネクサスにコアを置いておけば、効果の及ばない唯一の安全地帯とも言えるが、ネクサスしか場にない状況では何もできる事はない。
「……ターンエンド」
「何もできない、か」
「ぐっ!」
下手にスピリットを召喚すれば当然【呪縛】の脅威に晒される。核心に触れる様な絵瑠に対し、舌打ちながらもターン終了するしかない。
────第8ターン、絵瑠side。
[Reserve]8個。
[Hand]3枚、(手元)1枚、戊の四騎龍ブラックライダー。
[Field]辰の十二神皇ウロヴォリアスLv.1(1)BP11000、魔竜デスラーLv.1(1)BP5000。
「ウロヴォリアスとデスラーの2体をLv.2に、さらに手元からムリダンガムドラゴン、Lv.2で召喚ッ!」
「(ドスダイモスで削られた手札を増やしに来たか!)」
予め手元に伏せておいたのはいつでも体勢を立て直す為の布石、しかしそれだけではなく今絵瑠の場に居るのは3体のスピリット、残るミナトのライフもまた残り3つ。
「これで終わりか。やはりキラーと同じく威勢がいいのは口だけだったな!」
「ッ!!」
「アタックステップ! ムリダンガムドラゴンでアタック!! アタック時効果で手札2枚を裏向きで手元に置き、そうする事で3枚ドロー!」
アタック時で一気に手札を補充し体勢を立て直しつつ、ムリダンガムはミナトをさらに追い詰めるように牙を剥き出しに飛び掛かって行く。
「……へっ、狙い通り!」
先程まで俯き下を見ていた表情を一変、顔を上げてこんな状況でもなお不敵に笑って見せるミナト、追い詰められていたように見せていたのはあくまで彼の演技にすぎない。
「フラッシュタイミング! スプラッシュザッパーだ!」
「!?」
「効果でコスト7以下のスピリット3体を破壊! ウロヴォリアス、並びにデスラーとムリダンガムドラゴンも破壊だぜ!!!」
水の斬撃が無数に放たれ、辺り構わずに周囲を斬り飛ばす斬撃波はまさに五月雨、突っ込もうとしていたムリダンガム、さらにはその後方にいるウロヴォリアスとデスラーもその斬撃波のあまりの多さに避ける事は叶わず、直撃を受けてそれぞれ地面へ倒れ破壊されてしまう。
「これでお前のスピリットは0! 不意打ちみたいで悪かったな、けど絵瑠だったらこんな演技、簡単に見抜いてたぜ!」
絵瑠の場に残るスピリットはもはや一体もいない、形勢逆転した事で今度はミナトが勝ち誇る様に笑うが。
「それでもう勝ったつもりか?」
「何っ!?」
瞬間、突然ミナトのライフが黒く染まったかと思うと、そのままライフの一つが弾け飛び、そのライフはボイドへと送られる。
「なっ!?」
「ウロヴォリアスLv.2、Lv.3の効果、「神皇」、「十冠」を持つ自分のスピリットが破壊された時、相手ライフ1つをボイドに送る! 油断したのはそっちのほうだったな」
不意の衝撃はそれ程に答えたのか、失ったライフの個所を押さえつけるが、それでもなお笑った表情を崩さず、まるで平気だと言わんばかりだった。
「関係、ねぇよ……お前のスピリットを一掃してターンを凌げたのなら、ライフを失う分の対価以上だからな!!」
「どこまでも前向き、嫌、お気楽というべきか」
「何とでも言え! 次は俺のターンだ!!」
────第9ターン、ミナトside
[Reserve]13個。
[Hand]4枚。
[Field]No.36バーチャスアイランドLv.1(0)。
「行くぜ!」
「!」
手札の一枚、それを構えた瞬間空気が変わる。何が来るのか、それはすぐさま絵瑠も直観した。
「神をも恐れぬ大胆不敵の傲慢な王よ! 牙を研いでその傲慢な野望を実現させろッ! 海牙龍王キラーバイザーク、召喚だぁッ!!」
傲慢を司りし海龍の名を叫ぶと、フィールドが一気に海水に浸り、海辺となったフィールドに蠢く影、そして影は一気に海面を突き破る様に跳び上がり、その姿を魅せ付けると、海となったフィールドを荒れ狂わす程の咆哮を響かせる。
『ハッハァッ!! 俺様の番だな!! テメェを喰い殺すぜ! シュオンッ!!!』
海面へと着水すると、戦闘の意思を示す様に牙と殺気を全開に剥き出すキラー、だがその強い殺気と眼光を前にしても依然絵瑠は表情を崩さない。
「キラー、頼む。絵瑠の目を覚まさせてやってくれ」
『任せろ、俺様にできねぇ事はねぇんだよ!』
一瞬視線を合わせるキラーとミナト、すぐにまた二人共正面に視線を向けると、一気にアタックステップを開始する。
「キラーバイザークでアタックだ!」
深く潜水するとそのまま海面のフィールドを突き進み、弾丸の如きスピードで一気に絵瑠のすぐ足元まで接近すると共に海面を飛び出す。
「ライフで受ける!」
展開されたバリアを即座に噛み裂き、バリアに風穴を開けてまた海面に飛び込むと同時に、ライフが砕かれる。
「ッ!!」
「まだだ、キラーバイザークのLv.3の効果、バトル終了時! キラーを回復させて【
【潜水】の効果はフィールドから一度その身を潜める効果、海面により深く潜ると、キラーの影さえも海面から見えなくなってしまう。
「ターン終了、さぁここからは狩るか狩られるかだぜ!」
────第10ターン、絵瑠side。
[Reserve]12個。
[Hand]5枚、(手元)2枚、戊の四騎龍ブラックライダー。
[Field]なし。
「クリスタニードル、さらにムトゥードラゴンを再召喚、召喚時効果で手札1枚を裏向きに置き、1枚ドロー!」
「召喚時効果を持つスピリットだな? だったら俺もトラッシュにあるディアマントチャージを手札に戻す」
絵瑠はデッキから、ミナトはトラッシュからそれぞれカードを手札に加え取る。
「さて、そちらの真打が出たのなら今度はこちらの番だな」
キラーとミナトに対して笑みを向け、それに何かを直感しながら思わず身構える。
「来るか!」
「あぁ、今見せてやる。決して潰えぬ常闇の影、全て無に帰す暴食の闇で何もかも喰い尽くせッ!!! 召喚、闇影夜龍エルドラシュオン!」
絵瑠から飛び出すシュオン、黒い瘴気を吐き付けながら辺りを闇に覆い、不足コスト確保の為、クリスタニードルは闇の中に沈むように消滅、と同時に闇が一気に晴れ、ミナトの視界に映るは闇を象徴した黒き体を持つ、エルドラシュオン。
『狩るか狩られるかと言ったな? 無論、狩る側は俺だ。どう足搔いてもかられるのはお前達の方だ!』
「それは随分な自信なこった」
『自信じゃない、確信だ』
「そうかい、だったら俺も確信してる。俺とキラーは、必ず勝つ! 勝って絵瑠を助けるってことをな!」
『それなら足搔いてみろ、無駄となるがな』
強気に豪語して見せるシュオン、それがただの虚勢でない事はキラーは勿論、一度烈我達とのバトルを目にしているミナトにとっても承知の上だ。
だがそれでもミナトもまたシュオンに対して勝つと言った言葉は嘘ではない。根拠はなくとも、勝つつもりである以上、決して引かず、次の自分のターンを迎えて行く。
────第11ターン、ミナトside。
[Reserve]10個
[Hand]5枚。
[Field]No.36バーチャスアイランドLv.1(0)、(潜水状態)海牙龍皇キラーバイザークLv.3(4)BP16000。
「メインステップ、キラー! 一度浮上しろ」
再び海面から姿を見せるキラー。【潜水】の効果発揮中の場合、キラーの上にあるコアは使用できず、さらにフィールドに存在しないものとして扱われる為、そのシンボルもフィールドにある物としてカウントされない、であればキラーをフィールドに呼び戻す理由は明白、新たなスピリットを呼び出す為。
「激流の海で敵を流し、刺し貫く槍と化せ! 三叉神海獣トリアイナをLv.2で召喚!」
海よりさらに巻き起こる激流、その激流を引き裂いて海面の上をまるで平面の様に降り立つ神獣、トリアイナ。
「召喚時効果発揮! 相手のコスト3以下のスピリットと最もコストの高いスピリットを破壊!!」
「ッ!」
「キラーと違って無防備だぜッ!」
トリアイナは吠えながら体を起こし上げるとその場で勢いよく海水に前足を叩きつけると、衝撃により天へと渦巻く激流を起こし、もう一度トリアイナが吼えると、空へと打ち上がった激流は天を折り返す様にムトゥードラゴンとエルドラシュオンへ降り注ぎ、激流が2体を飲み込む。
────だが。
「!?」
「ムトゥードラゴンの効果、死竜を持つスピリットをフィールドを離れる場合、手元にある裏向きカードを1枚除外する事でフィールドに残せる。「シヴァの破壊神殿」と「アイランドルート」を除外」
衝撃に打ち上げられた水飛沫が雨の様に注ぐが、ムトゥードラゴンもシュオンもまるで平然とした様子で雨に浸っており、なおも健在だった。
「それで、終わりか?」
「ぐっ! やっぱそう簡単には行かねぇか。キラーの【潜水】を発動! もう一度、海に潜れ、キラー!」
「それ以上手がないならアタックステップだな、こちらも【
相手のアタックステップ開始と同時に発動するシュオンの効果、ブレスを吐き付け、どす黒い瘴気がミナトのスピリット達を飲み込もうとするが、キラーだけは先んじて闇に飲まれるよりも早く海面へ潜ってそれを避け、トリアイナだけが闇の中に包み込まれる。
『これで今お前の場にはトリアイナだけか。だが攻撃する場合、アタックで即時発揮されるトリアイナのデッキ破棄効果は無効となる事を忘れるなよ?』
「ちッ、厄介だな」
烈我の時とは違い、今隠されているのがトリアイナだけなら攻撃対象がランダムになる事は無いが、アタック時効果を封じられればトリアイナの力も半減しているも同然。
「(デッキ破壊は通じない。それにまだ絵瑠の場にはブロッカーも2体でライフは2。キラーとトリアイナで攻めても、決め手に欠けるか)」
迂闊には攻められない、冷静にフィールドの状況を見ながらターンエンドを宣言すると、闇は晴れて行き、トリアイナの姿が再び視界に映る。
────第12ターン、絵瑠side。
[Reserve]11個。
[Hand]4枚、(手元)1枚、戊の四騎龍ブラックライダー。
[Filed]闇影夜龍エルドラシュオンLv.1(1)BP9000、ムトゥードラゴンLv.1(1)BP1000。
「召喚、水晶龍アメジストドラゴン!」
出現するはその名の通り体全体が透き通る水晶のように体を持つ龍。
「アメジストドラゴンの効果! 手札かトラッシュにある異魔神ブレイヴをノーコストで召喚する事で2枚ドロー!」
「ッ!! トラッシュからだと!?」
今彼女のトラッシュにあるのは、ドスダイモスの効果で破棄した龍魔神のカード。
「混沌に巣食う暗闇の魔神、闇より再び甦れ! 龍魔神、召喚だ!」
地の底より再び舞い戻る龍魔神、天を仰ぎながらその雄叫びを上げる。
「エルドラシュオンをLv.3にアップ、さらに龍魔神、エルドラシュオンとアメジストドラゴンに合体させる」
アメジストドラゴンには左腕を、シュオンには右腕を翳して波動を撃ち出し、己とリンクさせると、力を増幅するように咆哮を上げる。
「アタックステップだ! アメジストドラゴンでアタック、龍魔神の追撃だ!」
龍魔神は左腕を構え、光弾を作り出すとそれをトリアイナに撃ち放ち、直撃を受けたトリアイナは疲労してしまう。
「これで今お前の場にブロッカーはいない、キラーを呼び戻すか?」
「キラーを引き摺り出そうって肚かよ!」
その通りだと言わんばかりに微笑一つで返事を返す絵瑠、今キラーをフィールドに呼び戻せばブロックし攻撃を防ぐ事はできる。だが、止めた所で次のシュオンの攻撃は止められない。
「(キラーを引き摺り出して、その上で次の龍魔神の追撃でキラーを破壊するつもりか)」
「今のアメジストドラゴンはダブルシンボル! ブロックするのか? それとも、このまま終わるか?」
「……そのどっちでもねぇよ」
思い通りにはならないようにミナトもまた笑って見せながら手札を構える。
「フラッシュタイミングでブリザードウォール! 不足コストはトリアイナから確保だ!」
レベルダウンに項垂れるトリアイナだが、それと引き換えに突如発生する猛吹雪。攻撃に突っ込むアメジストドラゴンも吹雪を前に立ち止まるが、まだその目は標的を捕え続け、僅かに映るミナトの影を決して逃がさず、再び突っ込み口を大きく開いて、展開されたバリアに紫電を込めた光線を吐きつけて破壊する。
「ぐぁっ……!!」
衝撃にライフが砕ける。だがダブルシンボルによるアメジストドラゴンの攻撃が決まったにも関わらず、まだミナトのライフには2つの内、一つが消失したのみで、以前ライフはまだ尽きてはいない。
「ハハッ、ブリザードウォールは、ブロックされなかった相手スピリットの攻撃じゃライフは1までしか削られない。その攻撃はソウルコアで受けさせてもらったぜ?」
「ほぉ、まだ粘るか」
「そりゃぁ……勝つまで、粘り続けるに決まってんだろ!」
痛みを堪えてなおもまだ強気な様子で言い返し、そんなミナトの様子に関心を覚えながらも、冷静にターンを終える。
────第13ターン、ミナトside。
[Reserve]8個。
[Hand]4枚。
[Field]三叉神海獣トリアイナLv.2(4)BP12000、(潜水状態)海牙龍王キラーバイザークLv.3(4)BP16000、No.36バーチャスアイランドLv.1(0)。
「俺のターン、ホオジロタイガーを召喚するぜ!!」
海面を勢いよく飛び出すは鮫と獣の両方の姿を合わせ持つ獣、ホオジロタイガー、猛虎の如く咆哮を上げて、相手のスピリット達を睨む。
「さらにトリアイナをレベルダウンさせて、代わりにバーチャスアイランドにソウルコアを追加し、レベル2にアップ! ネクサスにソウルコアが置かれていれば、アタックステップ中で俺のスピリット全ては最高レベルになる。お前の【闇影】の効果も関係ねぇ!」
ネクサスの効果はシュオンによって影響される事は無い。フィールドにいるシュオンに対し、負けてられないように言い放つが、シュオンにとってどうという事は無く。
『そうか、ならば来てみるがいいさ』
「あぁ、言われなくてもな! アタックステップだ!!」
『だったらこの瞬間、もう一度俺の効果発揮させる! 【闇影】!!』
再びシュオンが吐き付ける闇に今度はホオジロタイガーとトリアイナの二体が取り込まれるが、それでもミナトは怯まない。
「構わねぇ! 俺はアタックを続行させる!!」
その指示に対し、【闇影】の効果によって攻撃を行うスピリットがランダムに選ばれ、そして闇の中から飛び出したのはトリアイナ。
『残念、ホオジロタイガーであればまだ勝ちの目はあったな』
ネクサスの効果で最高レベルと言えど、トリアイナのBPは12000。シュオンのBPには遠く差がある。
「まだだぜ、この瞬間だ! キラー、浮上しろ!!」
トリアイナが突っ込んで間もなくキラーは勢いよく海面からの浮上、未だホオジロタイガーは闇の中に取り残されるが、キラーは闇の外へ一気に飛び出す。
「【闇影】はアタックステップ開始時に発動する効果、ならアタックステップ中でフィールドに出たキラーはその効果を受けねぇよな!」
「それがどうした! トリアイナの攻撃はエルドラシュオンでブロック!」
『失せろ、海獣!』
突っ込むトリアイナを引き裂こうと、シュオンは一気に飛び掛かりその爪を振り下ろす。
「フラッシュタイミング! バトルキャンセル!!」
だが、シュオンの爪がトリアイナに振り下ろされる瞬間、寸での所でシュオンの動きがピタリと止まる。
『!?』
「バトルキャンセルは今行っているバトルをBPを比べずに終了させる。不足コストでバーチャスアイランドのレベルは下げさせてもらったけどな」
今までと打って変わり、突然の黄色マジックの発動には流石のシュオンも動揺を隠せなかった。
「驚いたかよ、光黄ちゃんを参考に使おうと持ってたマジック。お前とのバトル前に使えると思って、デッキに入れておいたのさ」
『……小癪』
「何だっていい、勝つ為なら俺は何だってやるぜ! まっ、こいつは烈我の受け売りだけどな! キラーバイザークでアタックッ!!」
バトルが強制終了された事で、トリアイナとシュオンは互いに疲労状態となってその場に項垂れ、その瞬間を見逃さないようにシュオン達の間を一気にキラーは通り抜けて行く。
『逃がすものか!!』
「こちらもフラッシュだ、手元から光翼之太刀を使用!! 効果でこのターン、エルドラシュオンをBP+3000、さらに疲労ブロッカーにして、ブロックだ!」
再びその場から起き上がると同時に、龍魔神に合図の様な視線を送り、龍魔神はそれに頷きながら両腕を翳すと、まるで転送されるかのようにキラーの目の前にシュオンの姿が現れる。
『来たかよ、シュオン!』
『キラー、貴様には悪いがもう一度屈辱を味わってもらうぞ?』
『抜かせッ!』
黒爪を振り下ろすシュオンの攻撃に対し、キラーも大きく海面を飛び出すと、振り下ろされるその腕に喰らい付き、攻撃を受け止める。
『ッ! 離せ!!』
『チィッ!』
腕に噛み付かれてもなお怯まずに直ぐにキラーを振り払い、そのまま反転すると尻尾の一撃をキラーに叩きつけ、さらに宙高く打ち上げる。
『がぁ……ッ!!』
「キラー!!」
「まずい、このままじゃ……!」
『あぁ、キラーが破壊されちまう』
絶体絶命な状況、バトルの光景を目に烈我とバジュラも思わず息を呑む。
『浅墓だったな、【闇影】を警戒するまでは良かったが、防御マジックの存在が抜けてるぞ!!』
今のシュオンのBPは22000、勝負を決めるべく、再度黒爪をキラーへと向けるが、そんな状況でなお、ミナトは笑みを浮かべ。
「忠告どうも、けど忘れちゃなんかねぇぜ!」
『!?』
「ここまで全部狙い通りさ、お前がさっきキラーを誘き出そうとしたように、俺もこのターン! お前を誘い出したかったのさ!!」
『何だと!?』
「フラッシュで煌臨! トリアイナをグリードッグパイレートへッ!」
起死回生の一手、バトルを終えその場に凭れこむトリアイナの周囲に突如として渦巻く海流、そしてトリアイナを飲み込んだかと思うと、水の中にその身を、三つ首を持つグリードッグ、否、海賊の名を持つグリードッグパイレートへと生まれ変わらせる。
『このタイミングで、煌臨だと!?』
「あぁ、ここから先は賭けさ! グリードッグパイレート、煌臨時効果を発揮!! 相手の手札を確認し、相手のマジックかアクセルを使用できる!」
『!?』
十二神皇であるグリードッグと少し姿は異なるが、それでもその名と効果は本家を受け継いでいる。再び絵瑠の手札を強制的に開くと、開かれた手札のカードは「深紅の龍皇ウロヴォリアススカーレット」、「蛇僧侶ハリム」、「エイリアンドラゴン」、「創界神シヴァ」、そして「シヴァカタストロフィー」。
『なっ!?』
「シヴァカタストロフィーのカード、貰うぜ!! そして効果を使い、エルドラシュオンのコアを1個にする!!」
グリードッグパイレートはシヴァカタストロフィーのカードに飛び掛かりそれを奪い取ると同時にカードを噛み砕いてその効果を発動、効果によってバトルしているシュオンはレベルを強制ダウンさせられる。
『ッ!!』
力が抜けてガクンと体制が崩れる、止めを指そうと振り下ろした爪は空振りに終わり、キラーは瞬間、眼光を輝かせて体を回転させると、そのまま尻尾を一撃をシュオンの頭上に叩き込み、海面へと叩き落す。
『借りを返してやるぜシュオン! 何万倍にもしてなァッ!!!』
『おのれぇぇぇぇええええッ!!!』
キラーもシュオンを追うように海面へ向けて落下し、シュオンは激昂しながら迎え撃つ様に両爪に黒い光を灯し、それを連続で振り翳し、振り下ろした一撃一撃を斬撃波として撃ち放つ。
だが、キラーも同様に背鰭に光を纏わせると、刃の如く放たれた斬撃波を斬り払って行き、さらに急降下するスピードを上げると、その牙をシュオンへ向け、そして一気にシュオンの体を噛み裂く。
『こ、この俺が!! お前に……嫌、ただの得物にぃぃぃぃッ!!!』
絶叫を上げるシュオン、そしてキラーが海面へ着水すると同時にシュオンは空中で爆発四散し、シュオンが破壊された事で絵瑠の体が揺らぐ。
「ッ!!」
「キラーのバトル終了時、回復状態にして【潜水】! そして今度はホオジロタイガーでアタック!」
「ム、ムトゥードラゴンでブロック!」
キラーが再び海中へ潜ると同時に今度はホオジロタイガーが突っ切り、絵瑠は頭を抱えながらも、まだシュオンの洗脳は消えていないのか、バトルを続行させる様にムトゥードラゴンに指示を出す。
「フラッシュ! もう一度キラーバイザークをフィールドに! キラー!!」
続くバトルでは阻もうとするムトゥードラゴンにホオジロタイガーは一気に飛び掛かると、喰らい付いて、その牙でムトゥードラゴンの体を噛み砕き、破壊する。
「キラーバイザークでさらにアタック!」
再びその指示にキラーは一気に絵瑠へと突っ込む。
『おいミナト、アタックするって事はこのまま決め切る算段はあるのか?』
進撃しつつミナトに視線を送りながら尋ねるキラー、その問いに対しミナトはまたいつもと同じように笑いながら。
「当然だろ!! フラッシュタイミング、爆砕轟神衝! 不足コストはキラー自身から確保して効果発揮! キラーをレベルアップさせ、さらに回復だ!!」
残る切り札となるマジック、発動するマジックの効果がキラーに光を纏わせ回復状態となり、それにキラーは大きく笑う。
『ハハハハ!! それでこそだ! それでこそ俺様のパートナーだぜ、ミナトォッ!』
「あぁ、仕上げと行こうぜ、キラー!!」
そのまま海面を飛び出して展開されるバリアへ突っ込む姿はまさに魚雷、勢いよく突進し絵瑠のライフを砕く。
「うぁっ!!」
「絵瑠、今目を覚まさせてやる! キラーバイザークでラストアタック!!」
一撃目で突進、だがまだ勢いが余る様に宙へと上がると、そのまま追撃を掛けるかの如く、その場で体制を変え、牙を向けて一気に絵瑠へと向かう。
『さぁ、フィニッシュだァッ!!』
牙による最後の一撃が絵瑠のライフを砕き、バトルに決着を付ける。
***
『ぐぁッ!!』
バトルを終え、元の場所へと戻り、絵瑠に取り付いていたシュオンは分離するように離れ地面に倒れ伏し、一方でシュオンから解放された絵瑠は琴切れたようにその場に膝を突くような体制で座り込んでしまう。
「絵瑠!!」
咄嗟に絵瑠の傍に駆け寄るミナトと烈我、幸い怪我はなく呼びかけるようなミナト達の言葉にすぐに目を開ける。
「ミナト……烈我……私」
まだ朦朧としているのか少しだけぼうっとした様子だったが、辺りを見回しながらふとシュオンの姿が映る。
『さてミナト、この野郎どうしてくれようか!』
『そうだな。欲望を喰らう、此奴の能力は危険すぎる』
『ッ!』
シュオンを囲うバジュラとキラーに対し、シュオンはバトルで受けたダメージのせいで暫く立ち上がれそうにない。
「……なぁ、二人共、あれって」
「い、嫌、あれは別に何でもないんだ」
「そうだぜ、驚いたかもしれないけどあいつ等は」
七罪竜の存在を知らない絵瑠、なんとかごまかせないかと言葉を探す様にあたふたとする二人だったが。
「……無理に気遣わなくていい。あれが何なのか、大体わかった」
「「えっ?」」
「あの黒龍に取り付かれてた間も私の意識は少なからずあった。操られてるのに意識があるのは不思議な感覚だったけど」
驚く二人を他所にそのままキラー達の間に割って入ると、何を想うのか倒れるシュオンの体を両手に乗せる。
『女!?』
「おい、絵瑠……お前何して!」
「別に、お前等こそ。此奴をどうするつもりなんだ?」
絵瑠の言葉に対し、二人共まだ深く決めていないように顔を見合わせるが。
「どうするって言われても危険な存在だ。このままにはできねぇ、だから管理するしかねぇよ」
冷静に状況を見据えた上で最もらしいミナトの言葉。だがその返答に対し、「それなら」と絵瑠は口を開くと。
「シュオンだっけ。こいつは私の方で預からせてくれ」
「『!?』」
絵瑠のその一言にその場の全員、シュオンも同じく動揺を隠せなかった。
『おい、お前! 散々そいつに操られてたてたんだぞ!!』
「そうだぜ! また危険な目に合うかもしれないのに!」
烈我とバジュラの言葉に対し、申し訳なさそうに俯きながらも。
「そうだな。確かにお前の言う通り、大変な目に合った。けど、此奴が言っていた私の欲望、それを抱えてたのも事実だったからな」
「えっ?」
「私はな、前はこの辺りじゃ敵なんていない、私こそが最強だって調子に乗ってた。けど光黄に会って、初めて負けてライバルだと思って喰らい付いてきたけど最近は勝てなくなって、それがずっと辛かった」
「……」
「どうしても勝ちたい、彼奴に負けるたびにそう思う気持ちが強くなった。それに、私には親しい人間も少なかったからな、光黄達の周りにいるお前達の事も見ている度に羨ましくなってたんだ」
「(それがシュオンの言ってた嫉妬に関連する強欲か)」
絵瑠の言葉にミナトは合点を合わせつつ、烈我の共に引き続き耳を傾ける。
「彼奴のように強くなりたい。彼奴の様な仲間や友達が欲しい、そうやって嫉妬して、羨んで……そういう欲を抱え込む度に自分が惨めになる気がして苦しかった」
「……絵瑠」
「けど、シュオンに乗っ取られて、抱え込んだ欲望を代わりに口に出してくれた時、何だかスッキリした気持ちになれたよ。抱え込む必要がなくなったからな」
「ついでに」とミナトに睨むような視線を送り。
「お前に怒る気持ちも当然まだあるからな!」
「ありゃりゃ。それじゃ俺の事、殴る気?」
ぶん殴られてやるとまで言った手前、いつものように逃げだせはしない。しかし恐る恐る言葉を掛けながらも両手では防ぐように構えを取るが。
「……嫌、今回お前の世話になったのは事実だよ。殴りはしない」
「それじゃあ許してくれるのか?」
「それはまだ無理! それに烈我ならともかく、お前にはお礼だって言わないからな!」
「ハァ、手厳しいねぇ」
何時ものように殴り掛かるような様子はないが、それでもミナトからそっぽを向け、その様子にミナトは溜息をつき、二人に何があったのか烈我としては以前気になる所。
『女、どういうつもりだ? 俺に情けでも掛けるつもりか?』
「……さぁな。お前には怒りたい事もあるけど、それでも感謝したい気持ちも半分あるからな」
『感謝だと?』
「うん、正直お前の言った通り、私は光黄に勝ちたい。それを思ってたからもっと強い力が欲しかったんだ。だから操られたとはいえ、お前のような強い力を使えて楽しかったのも事実だ。それに、力を求めすぎたらどうなるかっていう教訓も得られたしな」
前向きなのか、先程までの事に恐怖を感じる気持ちはまるでなかった。その様子にシュオンは一瞬たじろぎながらも。
『分かっているのか! 俺は欲望を喰らう。もう一度お前に同じ事を実行するかもしれんぞ』
「それならもう一度、私に取り付いてみるか?」
『!』
試すかのような絵瑠の言葉、バジュラとキラーは当然見過ごさないように構えるが、一方でシュオンは絵瑠を静かに見つめながら。
『……自分で欲望を肯定したせいか、もうお前の欲望は小さい。喰らうに値せん』
「それじゃあ私と来てくれるか」
『どうせ俺を逃がすつもりもないんだろう、だったらお前でいい』
「そっか、それじゃあよろしくな! シュオン!」
微笑む絵瑠の表情に何を想うか、シュオンは黙ったまま目を瞑る。そんな様子に対し、烈我達はまだ動揺を隠せないが。
「ま、まぁひとまず一件落着なの、かな?」
「被害者である絵瑠自身が大丈夫だって言ってるなら、俺等もそうするしかねぇな。キラー達も同じだろう?」
『ハッ、俺様はあの野郎に思い知らせてやりたかった。それが叶えば、充分だ』
『俺はこのままどこかに行っちまったら、勝ち逃げされるみたいで腹立つって事だけ確かだ』
キラーとバジュラの言葉に二人共、それならと承諾するしかなかった。
式音絵瑠とシュオン、大いなる運命にまた一人と一匹が加わる事となった。
***
「どう? 片付いた?」
「とっくにな、テメェの方はどうだ?」
「見ての通り、だよ」
舞台は変わり再びスピリッツエデン、会話を交わすヴァンとマチア、そんな二人の足元には、彼ら挑んでいた筈の兵士達は全て倒れて伏していた。
「さぁてお目当てのお宝をもらうとしますか」
「あぁ、これでようやく手に入る」
胸を弾ませる様に砦の中へと入る二人、洞窟の様な暗闇の道を歩き、そして暫くして狭い細道から大広間のように広げた空間へと出る。
「ここかぁ!」
「うん、情報通り!」
目の前に広がる光景、それを前に二人は大きく口角を上げた。
二人の視線の先にあったのは、6つの巨大な石造、その石像の姿はかつて強大な力を誇る伝説に言い伝えられしスピリット達の姿。
────一つ、それは災厄を司りし死神。
────二つ、それは永久の輝きを持つ宝龍
────三つ、それは破壊の業火を司る炎龍。
────四つ、それは敵を畏怖の波に沈めし海帝。
────五つ、それは雷をその身に宿す孤高の獣。
────六つ、それは絶対的王者と君臨しせし森羅の王。
「ふふ、こうしてお目に掛けれたんだ。苦労して情報を掴んだ甲斐があったよ」
「あぁ、ついに見つけられたぜ!! 七罪竜に匹敵するとされる強大な力!!」
歓喜の表情で語るヴァン達、二人はそのスピリット達がどういう存在であるか、勿論それを知った上でこの地に足を運び、そして喜々とした表情を向けながら、そのスピリット達の呼称を口にする。
「死神デュアルベルガス、宝龍アブソドリューガ、獄炎龍バーニングドラゴン、海帝獣オルガウェーブ、剣双鬼刃・我王牙、逆雷狼フェンリルガルム、眠るのはもういいだろう? もう一度目覚めの時だ、テメェ等のその力、俺に寄越せッ!!!」
石像を前に宝玉を差し出すと、宝玉はより強う輝きを放ちながら宙へと浮かび上がると、まるで取り込むように石像の中へ宝玉はそれぞれ取り込まれて行く。
そして次の瞬間、宝玉を取り込んだ石像達眼光を輝かせると、表面の岩肌を弾き飛ばし、6体のスピリットは真の姿を現して行く。
”””グオオオオオォォォォォォォォッ!!!”””
強大な咆哮、地響きと共に砦に亀裂を走らせ、そして天井が崩落し、6体のスピリット達は火の光に照らされながら、カード状態へと戻り始め、そしてヴァンの手の中へと納まる。
「手に入れた! 手に入れたぞ!! 禁断とされる伝説の力、ハイドカードをなッ!!!」
先程の衝撃に砦は徐々に崩落し始めるが、二人は全く気にする事無い。ハイドカードと呼ぶスピリット以外の事等もはや今の彼等にはどうでもよかった。
「ハハハハハ!! これでもうエヴォルは必要ねぇ! ようやく俺は、誰にも縛られねぇ強さを手に入れたんだ!!」
悠々と出口へ向けて歩き出し、崩れ行く砦の中でヴァンの高笑いする声が辺りに響いた。
第18話公開!!
今回は久々のミナトとキラーによるバトルでした!!
【潜水】VS【闇影】、オリカ同士の激突は書いててとても楽しかったです。
5体目の七罪竜であるエルドラシュオン、そして絵瑠はシュオンと共にいる事を選び、二人は今後どう接していくのか、ご期待いただければ。
そして第18話、ラスト! ついにヴァン達が目覚めさせた禁断の力!
その正体はハイドカード!!
一体どのような力を持つのか!! え?聞き覚えがある?何のことやら(すっとぼけ
ちなみに今回で第1章は完結となります。
次回より新章!! 果たして今後烈我達の運命はどうなるのか!!
是非ともご期待ください! それでは次の章で、お会いしましょう!