バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第20話【禁断解放 ハイドカード降臨】

「あれ? 光黄?」

「! 烈我……戻ってたのか」

 

スピリッツエデンから戻ってきた烈我達、帰り道を歩く中、同じく帰宅しようとしていた光黄と偶然出くわしていた。

 

「ヘルさんの所へ行ってたんだよな。暴食の七罪竜……彼奴について何か情報はあったか?」

「いいや、ヘルさんも何も知らないってさ。そっちは?」

「とりあえず絵瑠と話してみたが、多分問題はないと思う。今のところはだが」

「そっか」

 

現状について進展はないが、絵瑠とシュオンについて特に問題無しと言う光黄からの言葉に烈我達は安心するように一息。

 

「あっ、そう言えば! ヘルさんからハイドカードについて言ってましたね」

「ハイドカード、それは?」

 

星七の言葉に初耳である光黄は首を傾げるが、自慢げにミナトは前に出たかと思うと。

 

「詳しい話は烈我達じゃ務まらねぇだろうし、俺が語るぜ! 光黄ちゃんがいいなら、二人きりでも」

「結構だ」

 

肩に手を掛けようとしたミナトの手を振り払い、そしてライトと烈我は睨み付けるようにミナトの前に立ち、二人に圧倒される様に「悪かったって」と降参するように両手を上げる。

 

『ったく油断も隙もありませんね!』

「全くだぜ……それはそうと思い出したんだけど」

 

何かに気付いたように烈我は声を上げると。

 

「お前と絵瑠って結局どういう関係なんだ?」

「!!」

 

「あぁ、そう言えば俺も気にはなってたな」

「僕も、事情は知りませんしね」

 

烈我と光黄の二人は絵瑠からミナトとの関係について少なからず聞いてはいるが、それが全てではない。なぜ彼女がミナトに対して、あそこまで怒りを抱いているのか、その本質的な答えについては未だ分かってはいなかった。

 

『そういや俺も聞いてみてぇな! 怒りの理由、教えてもらおうか!!』

「俺もだ、観念しろミナト!!」

 

「げぇっ、キラー助けてくれよ!」

『面倒事ならごめんだ、俺様には興味ねぇ事だしな!』

「お前……!」

 

全く無関心なキラー、そして詰め寄る烈我達に対して追い詰められ、逃げ場を失い。

 

「あぁー分かった分かった。全部話すから、勘弁してくれ!!」

 

根負けしたように折れ、「それじゃあ」と話を始める様に、烈我達もその話に聞き入る。

 

 

 

***

 

 

 

────スピリッツエデン、廃墟地区にて。

 

舞台はスピリッツエデンへと変わり、ヴァンと対峙するルディアの姿。何故、首領である彼がここにいるのか、疑問を上げればキリがない程。

 

「マチアを離せよ! アイツは組織と関係ねぇだろ!!」

「関係ない事は無いね、彼女は情報屋として組織に必要な存在なんだから」

「何?」

「それが一方的に連絡が取れなくなったからね。どうにか彼女を捕まえられないかと苦心したんだよ。だから逆の立場になって考えてさ、マチアちゃんならうちの組織の事も詳しいと思ったから、ウチの組織で一番手薄な所に現れるんじゃないかと思って、そこに網を張った訳さ」

「!!」

 

自分達の考えを読まれていたのか、情報の正確さが裏目に出てしまったのか、それに思わず歯噛みする。

 

「それと僕から言わしてもらうと、何故君がマチアちゃんといるのかそれが疑問なんだけどね!」

「!!」

 

まだルディアにはマチアと繋がりがある事も、組織を脱退する旨も伝えてはいない。当然の疑問と言えば当然だ。

 

「まぁいいや、理由は問わない。先に帰還しておいてくれるかな」

「……その命令は聞けねぇな」

「?」

「聞こえなかったか? 命令は拒否させてもらう! ついでに言うなら俺は組織を辞めさせてもらうぞ!」

 

「ヴァン、貴様……ルディア様に向かって!」

 

ルディアに対するヴァンの発言、それが聞き捨てならないように声を上げるが、ルディアは腕を上げて、ディストを制止させる。

 

「ヴァン君、君がエヴォルグラウンドの為に組織を利用するつもりだったのは知ってる。だから僕もそれに協力を惜しまないつもりだったんだけど不満だったのかな?」

「何を抜け抜けと!! 俺を利用するつもりだったのはテメェの方だろうが! 七罪竜はテメェ等組織にとって必要な物、俺がエヴォルを取り戻せば、今度はお前等が俺からエヴォルを奪うつもりだった筈だ!」

「はは、まぁそこについてのコメントは控えさせてもらうよ。けど君との契約はこうだったよね、「君がエヴォルを取り戻す為に組織は協力し、君もその為に組織の帝騎として尽くす」、と。その契約を破棄にしたのは君の方って事でいいよね?」

 

静かに威圧を込めるように視線をヴァンへと送り、その視線にとてつもないプレッシャーを感じるが、ヴァンも決して怯む事無く、デッキを構える。

 

「この世界で絶対なのは契約じゃなくてバトルの実力だろ? 構えろよ、ルディア! テメェをぶっ倒して、堂々と組織脱退の表明にしてやる!!」

「ふーん、随分自信があるみたいだね」

 

ヴァンの挑戦に対し、ルディアは少しも表情を崩さずに笑うと。

 

「いいよ、その挑戦受けてあげる」

「ハハッ!! そうでなきゃなッ!!!」

 

ヴァンはキューブを取り出すと、そのまま自身とルディアの足元に投げ入れると、バトルフィールドへの舞台が展開され始める。

 

「下剋上だ、初めてテメェと会った時、俺はお前に無様に負けた。今日その借りを返す!」

「楽しみだね! それなら君の今の実力、見せてもらうよ!!」

 

互いにデッキを構え、そして叫ぶ。

 

「「ゲートオープン、界放ッ!!」」

 

合図と共にバトルフィールドへと舞台を移す二人、その場に残されるディストとマチアの前に二人のバトルの光景がモニターの様に映し出される。

 

「(ヴァン、必ず……勝って!)」

 

 

 

────第1ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]4個

[Hand]5枚。

 

「まずは俺から! 創界神アレス、配置だ!」

 

後方に浮かぶ仁王立ちの体勢からこちらを見下ろす影、軍神と謳われるアレスの姿が幻影のように出現する。

 

「配置時の効果で神託、3枚のカードを落とす」

 

破棄されたカードは「神速の勇者ソニックワスプ」、「ゴッドシーカー天騎士オールリィチ」、「蟻炎の騎士団長インビクタ」の3枚。

 

「対象3枚につき、コア3個をアレスに追加。俺はこれでターン終了」

 

 

────第2ターン、ルディアside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「僕のターンだね。それじゃあまずはこいつ、ゴッドシーカーコルハーブルを召喚するよ」

 

ダイヤモンドが砕けると共に現れたのは鋼の翼を広げるスピリット、地面に降り立ち何かを呼び込むかのように鳴き声を上げる。

 

「召喚時効果で僕のデッキの上から4枚オープン、その中に「創界神クリシュナ」と系統「天渡」か「化神」、又は「インディーダ」を持つ白のカードを手札に加えられる」

 

オープンされる四枚のカード、「白晶防壁」、「凍れる火山」、「クリシュナーガイクサト」、「創界神クリシュナ」の4枚。

 

「当たりだね。クリシュナを手札に加えて、早速場に配置するよ」

 

ヴァンと同様、ルディアの場にも配置される創界神、クリシュナもまた出現と同時に神託の効果を発揮させると、捲られたカードは「アルテミックシールド」、「甲龍戦艦エンタープライズ」、「クリシュナーガバーヴァン」の3枚。

 

「神託対象2枚でコア2個を追加、さらにアルテミックシールドは白の効果でトラッシュに置かれたのなら、ボイドからコア1個をクリシュナの上に置き、アルテミックシールド自体は自分の手札に戻せる!」

「チッ、厄介なマジックを手札に加えやがる」

「まぁね。僕はこれでターン終了だ」

 

 

────第3ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

[Field]創界神アレス。

 

「メインステップ、アビスシャークを召喚! フラッシュ効果使用するぜ!」

「!」

 

アビスシャークはフィールドに広がる大地の中に飛び込み、背鰭のみを残してまるで地面を海辺の様に潜り込んで突き進むと、そのままコルハーブルを囲い込む様に周囲を泳ぎ回り、その動きに翻弄されるコルハーブル。

そしてアビスシャークは背鰭ごと深く潜り込んで完全に姿を隠すと、次の瞬間、コルハーブルの真下から飛び出し、その牙を突き立てると、鋼鉄の体を誇るコルハーブルの体を意図も容易く噛み砕き、破壊する。

 

「へぇー、そう言えば君のデッキ……青のカードも採用してるんだっけ?」

「相性が良けりゃ取り入れる。当然の事だろ? アビスシャークはフラッシュ効果で疲労させればコスト4以下を破壊。さらに緑シンボルがあれば追加の【連鎖】でボイドからコア1個を俺のリザーブに置く。これでターン終了だ」

 

 

────第4ターン、ルディアside。

 

[Reserve]6個。

[Hand]6枚。

[Field]創界神クリシュナLv.1

 

「さて今度は僕の番だね! メインステップ。出ておいで、白き鋼を持つ神の現身、神撃甲龍ジャガンナート、召喚」

 

平然とフィールドに呼び出す一枚、それはクリシュナの化神であるスピリット──ジャガンナート、ルディアの後方へと降り立ち、そのままゆっくりフィールドへと降り立ちながら咆哮をフィールド一帯に轟かせる。

 

「(ぐっ! ルディアの野郎、いきなりだと!?)」 

「召喚によりクリシュナにコア1個を神託、早速アタックステップだよ! ジャガンナートでアタック!! アタック時【界放:3】の効果! まずはアビスシャークを手札に戻す」

 

四つん這いの体勢から翼を大きく広げて上半身を起こすと、そのまま広げた翼を羽ばたかせ、凍て付く鋼鉄の羽が巻き起こす風は吹雪となってアビスシャークへと襲い掛かり、そのまま手札へと吹き飛ばす。

 

「さらにクリシュナのコア3個をジャガンナートの上に置く事でこのバトルの間、相手の手札3枚につき、シンボルを一つを追加し、このスピリットはブロックされない!」

 

クリシュナは自らの力を授ける様にコア3個をジャガンナートに移すと、コアが増えた事で自動的にレベルアップし、高まる力を顕すように吼え立てる。

 

「ジャガンナートのLv.2、3の効果。ターンに1回自身かインディーダを持つ創界神の上に置ける。効果でクリシュナにコアを追加。そしてメインのアタック!」

「ライフで受けてやるよ!!」

 

ジャガンナートは展開されたバリアに牙を突き立てると、冷気を帯びたその牙はバリアを凍らせ、凍り付いて硬度を失ったバリアをそのまま噛み砕いて粉砕する。

 

「がはぁっ!!」

「フフ、アレスの【神技】は使わなくてよかったのかい?」

「テメェ……余裕ぶりやがって……大きなお世話なんだよ!!」

「そうかい。それは失礼、それじゃあ僕はこれでターンエンド」

 

余裕を見せるかの如く笑った表情でコールするルディアだが、その表情にヴァンは苛立つ様に歯噛みしながら次の自身のターンを迎え、力を籠める様にカード引く。

 

 

────第5ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]9個。

[Hand]6枚。

[Field]創界神アレスLv.2

 

「俺のターン、天騎士ナミテントウを召喚! アレスに神託し、さらに召喚時効果で系統「殻人」を持つ自分自身にコアを追加、さらにデッキの上から4枚オープン! その中に「殻人」を神託条件とする創界神を俺の手札に加えられる」

 

オープンされたカードは「斬騎士ラグマンティス」、「ワイルドライド」、「ストームアタック」、「英雄獣の爪牙」の為、対象のカードは含まれてはいないが。

 

英雄獣の爪牙(ヒーローズクローズ)は緑の効果でオープンされたのなら俺の手札に加えられる! 残ったカードはデッキの下に戻す! さらにアレスの甲殻神殿を配置、配置時の効果でリザーブにコアを追加、「殻人」を持つナミテントウがいる為、さらにボイドからコアをナミテントウに追加!!」

「一気に3コアブースト、仕掛けて来る気だね?」

「当然だ、一気に追い込んでやるよ! 海の怪物!! 異魔神ブレイヴ、海魔神! 召喚ッ!!」

 

フィールドに広がる海面と共に逆巻く激流、激流の中を突き破り、姿を現すか海魔神。

 

「海魔神の召喚時効果発揮、「異合」と「殻人」を持つスピリットを一体ずつノーコストで召喚できる!」

 

1体目は当然先程手札に戻されたアビスシャーク、そしてもう一枚は。

 

「緑の旋風で敵を平伏させろ! 王の前に跪かねぇ奴はその鋭き矛で刺し穿てッ! 蜂王フォンニード!!」

 

旋風巻き起こる竜巻の中に迸る稲妻、そして眼光を輝かせながら竜巻内部をその矛で引き裂くと、槍の切っ先を掲げながら出現するフォンニード。

 

「召喚時効果発揮、ボイドからコア3個を──」

「待った!」

「!!」

 

意気揚々と効果を宣言しようとした矢先、コールにストップを掛けるルディア。

 

「君の召喚時効果発揮の前に、こちらの効果を処理させてもらうよ! 【ゼロカウンター】発動!!」

「!!?」

 

時を止められたかのようにフォンニード達の動きが制止されたかと思うと、フィールドに浮かび上がる一枚のカード。

 

「光速三段突き、このカードが持つ【ゼロカウンター】は相手がノーコストでスピリットを召喚した場合に即時発揮される。その効果は相手のステップの強制終了させ、さらにジャガンナートから2コア支払うことで、光速三段突きは僕の手札に戻る」

「んだとっ!?」

 

メインステップを終了させられ、強制的にアタックステップに移行させられるが、海魔神ともブレイヴする事ができておらず、二体のBPはジャガンナートのBPを下回っており、ジャガンナートはそのまま威圧するように二体に向かって吠え立てる。

 

「ステップを強制移行された場合、発動前の召喚時効果はなかった物として扱われる。コアブーストは失敗のようだね」

「ふざけた真似をッ!!」

「怒るのはいいけどまだ君のターンは続いてるよ、どうする?」

「ぐっ!! ……ターンエンドだァッ!!」

 

声と表情に怒りを込めてルディアを強く睨みながら、どうする事も出来ず、ターンを終える。

 

 

────第6ターン、ルディアside。

 

[Reserve]8個。

[Hand]6枚。

[Field]神撃甲龍ジャガンナートLv.1(2)BP6000、創界神クリシュナLv.2

 

「まずはクリシュナーガサトラェを召喚、召喚時効果で相手の手札と手元にあるカード3枚につきボイドからコア1個をこのスピリットに置ける」

 

今ヴァンの手札は丁度3枚の為、コア1個がサトラェに追加され、それに伴いレベルも上昇する。

 

「Lv.2のクリシュナーガサトラェは【重装甲:赤/青】を持つ。これで君のアビスシャークの効果も受けないよ」

「抜かりねぇ野郎だ」

「続けるよ、さらにクリシュナーガリグガンナを召喚! 召喚事効果発揮、相手スピリット1体をデッキの下に戻す」

 

今までより一際大きなダイヤモンドが出現し、ダイヤを砕いて現れたのは砲台を取り付けた鋼の龍、クリシュナーガリグガンナ。

出現するや否や砲台の照準をフォンニードへと向けると、即座に砲撃し、直撃を受けたフォンニードは吹き飛ばされデッキボトムへと送られる。

 

「フォンニード!!」

「まだだよ! さらにジャガンナートのコア1個を使い、光速三段突きを使用! 効果で海魔神をデッキの下へ!」

 

今度は飛び出す光の刃が海魔神を貫き、フォンニードの後を追うかのようにまたデッキのボトムへと送られてしまう。

 

「キースピリット諸共呆気なかったね。悪いけど、このまま一気に決めて行くよ! アタックステップ!! ジャガンナート行け!」

 

感傷に浸る間もなく突撃するジャガンナート、アタック時効果によりテントウとアビスシャークの二体を吹き飛ばし、さらにクリシュナのコア3個がジャガンナートへと移り、Lv.2へと再び上昇する。

 

「ジャガンナートのLv.2、Lv.3の効果でコア2個をクリシュナに追加、そして君の手札は5枚、ジャガンナートはダブルシンボルとなりブロックもされないよ?」

「させるか、アレスの【神技】発揮! コア3個をボイドに送り、疲労状態の相手スピリットを手札に戻す! ジャガンナート失せろ!」

 

構えていた腕を解き、そのまま片腕をジャガンナートへと突き出すと、突如フィールドに巻き起こる暴風、その風は巨大なジャガンナートの体をいとも簡単に浮かせると、そのままジャガンナートを吹き飛ばし、ルディアの手札へと戻してしまう。

 

「今度は使うと思ってたよ、そうしないと君に後はないからね」

「ほざけ! まだ俺のフラッシュは終わってねぇぞ! さらに英雄獣の爪牙を使用! 効果でサトラェとリグガンナの二体を疲労!」

 

地面に項垂れるサトラェとリグガンナ。クリシュナの【神技】を発揮させればどちらか1体を回復することはできるが、それでもまだヴァンのライフは3つ。全て破壊する事までは叶わない。

 

「仕方ないね。僕はこれでターンエンドだ」

 

 

***

 

「ヴァン……!」

 

一方でディストに拘束されながらも、ヴァンの名を静かに呟きながらモニターに映るバトルの状況を見守っていた。

 

「フン、無駄な抵抗よ。どんなに悪足搔きをしたところで、ヴァン如きがルディア様に敵う訳ないじゃない」

 

ルディアの勝利に絶対的な信頼を置くディストだが、彼女の言葉に対し、マチアは静かに口角を上げたかと思うと。

 

「偉い自信だけど、アンタがルディアの実力を信頼してるように、ヴァンもルディアの実力がどれ程の物かなんて理解してる筈だよ」

「何?」

「理解してなお、ヴァンは反逆する事を選んだ。何故か分かる? 勝てるって自信があるからだよ!!」

「何を馬鹿な、ルディア様が負ける訳……!!」

「アタシの言う事が嘘かどうかはすぐにわかるよ。何せ、バトルはこれからなんだから!!」

「!!」

 

 

***

 

 

────第7ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]13個。

[Hand]5枚。

[Field]アレスの甲殻神殿Lv.1(0)、創界神アレスLv.1

 

「……ようやく来たか」

 

このターン引いた1枚、そのカードに一層目を輝かせながらメインステップを迎えて行く。

 

「アビスシャークをLv.2で再召喚、そしてアビスシャークのフラッシュ効果、疲労させ、【連鎖】の効果でさらにコアブーストだ!」

 

前のターンに引き続いてのコアブースト。リザーブに集まるコアを一瞥し、そして手札を構える。

 

「ルディア、俺はよ……テメェと初めて戦った時、テメェに勝てる未来が微塵も浮かばなかった」

 

過去を振り返り、それを悔しがるように歯を喰いしばるが、「だが」と言葉を強く言い放つと。

 

「今は違ぇ。エヴォルの力がなくとも、今の俺なら自信を持って言える!」

「何をかな?」

 

依然笑った表情のルディアに対し、ヴァンは大きく息を吸いながら。

 

「テメェに勝てるって事をだよ!! テメェをぶっ倒して俺は自由に生きる! テメェとの縁は今日できっぱり断ち切ってやるよォッ!!!」

 

ヴァンの叫びに一気に空気が張り詰め、それは何かが来る前触れ。

 

「見せてやるよ! 手に入れた禁断の力、そして俺の力をなァッ!!」

「!!」

「闘い求める繚乱の刃! 轟牙を誇るその刃で、有象無象を錆へと帰せろッ!! 召喚、剣双鬼刃・我王牙(ガオウガ)ァッ!!!」

 

禁断の力にして、最凶を誇るハイドカード、満を持してそのカードを解き放つ。

 

空を暗雲が包み、地響きと共に、大地を突き破り巻き起こる竜巻の旋風、それはフォンニードやアレスが巻き起こしたものとは比べようもない程、遥かに巨大な災害の塊。

強大な竜巻は遥かな天へと昇り、道のように繋がると、旋風のロードから地上へと舞い降りる悪鬼羅刹、二刀の強大な大剣を背負う般若のような面を付けたスピリット────それこそがハイドカードの一体である、我王牙の姿である。

 

「成程、これが君の手に入れた力か!」

 

 

瘴気の息を吐き、障害となる(ルディア)を見据えると、鞘に納めた大剣を引き抜き、そして力を誇示するかのように両手に握った刃をその場で一気に振り下ろし、振り下ろす刃から生じるその風圧だけで暗雲に包まれた空は両断され、裂けた空より射し込む日差しが我王牙を照らす。

照らされたその姿を眺めながら、ルディアはまるで喚起してるかのように声を上げる。

 

「ハハハ、素晴らしいよ! これが君の手に入れた新たな力か!!! もっとその力を見せてくれ!」

「ハッタリのつもりか! 言われなくとも、存分に見せてやるよ! 我王牙の召喚時効果発揮!」

 

剣の切っ先をアビスシャークへと向けると、アビスシャークに光が灯る。

 

「自分のスピリット1体を指定し、そのスピリットのレベルが1つ上になるようにボイドからコアを指定したスピリットの上に置く。よってアビスシャークにコア7個を追加し、Lv.3にアップ!」

「一気に7コアブーストか、驚きだね!」

「いつまで余裕ぶっこいてるつもりだ! 俺はこの我王牙で、テメェの首を獲るぞ!」

 

未だルディアは底知れず笑った表情をヴァンへと向けるが、ヴァンはそれに怯む事無く強気に自分のバトルを続けて行く。

 

「アビスシャークからコア3個を我王牙に映してLv.2にアップ! 代わりにアビスシャークはレベルダウン。アタックはなし、これでターンを終了させるぜ」

「(アタックは仕掛けて来ないんだねぇ)」

 

何かを狙うようなヴァンの構え、ルディアも何かを察しているのか、少しだけ目を見開くが、以前笑った表情は崩してはいない。

 

 

────第8ターン、ルディアside。

 

[Reserve]12個。

[Hand]5枚。

[Field]クリシュナーガリグガンナLv.1(1)BP5000、クリシュナーガサトラェLv.2(2)BP5000、創界神クリシュナLv.2

 

「僕のターン、リグガンナをLv.2にして、さらにジャガンナートをLv.3で再召喚!」

 

再びフィールドへと舞い戻るジャガンナート、鋼の体を誇る龍達は一斉に吠え上げ、その咆哮は我王牙に決して怯まないという意思表示のようにも見えた。

 

「このターン、君がどう凌ぐのか、見せてもらうよ?」

「来やがれッ! ルディアッ!!」

 

攻撃を前に威嚇する様に吼えるジャガンナートだが、我王牙は真っ向から受けて立つように二刀の刃を打ち鳴らしながら、自らを扱う主人からの出陣(ブロック)の指示を決して聞き逃さぬよう精神を研ぎ澄ませる。

 

「アタックステップ! ジャガンナート、行けぇッ!! アタック時効果発揮!! アビスシャークと我王牙の2体を手札に戻させてもらうよ!」

 

ジャガンナートは再び起き上がって翼を広げると、羽搏きによって巻き起こる猛吹雪が二体のスピリットへと襲い掛かるが。

 

「……効かねぇよ」

「!!」

 

我王牙とアビスシャークの前に聳える大樹がまるで身代わりの様に、吹き荒れる猛吹雪を受け止めていた。

 

「我王牙の効果、このスピリットが相手の効果の対象となった時、フィールドのコア3個をトラッシュに送る事で、その効果を無効にする!! アビスシャークも含めて守らせてもらうぜ!」

「凄まじい効果だね、けど僕のジャガンナートも決してハイドカードに引けは取らないよ?」

「!」

「【界放:3】の効果でクリシュナからコア3個をジャガンナートに追加し、相手の手札3枚につきシンボルを追加、さらにブロックもされない! そしてさらにLv.2、3の効果でクリシュナにコア2個を追加!」

 

アンブロッカブル効果を持つジャガンナートなら我王牙にも止める事はできない。残りヴァンのライフは3つ、追い詰める様にジャンナートは一気に進撃して行く。

 

「フラッシュタイミング! 鋸騎士ミラビリスの効果発動! 自分の場に創界神がある時、このカードをコスト4として召喚できる! 来な、ミラビリス!!」

 

エメラルドが出現と同時に砕けると、鋸状の刃を掲げるスピリット、ミラビリスが現れ、我王牙と並んで立つ。

 

「手札を減らして、ジャガンナートのシンボルを減らす作戦かい?」

「そんな小手先で終らせねぇ、ブロックされない効果が何だってんだ。フラッシュタイミングでレッドウォールを使う!! このターン、ブロックされない効果を持つスピリットをブロックできる!」

「!」

「これでブロックできるだろ! 我王牙、止めろッ!!」

 

二刀の刃を交差させてジャガンナートの突進を真っ向から受け止める。

 

「ジャガンナートはLv.3でBP16000、ブロックした所で勝てなきゃそれまでだね?」

「愚問だ。俺は言った筈だぞ? テメェに勝つって。二度も言わせてんじゃねぇよ!!」

 

一刀の剣でジャガンナートを止めつつ、もう片方の剣の切っ先を何故か味方であるミラビリスへと向け、ミラビリスは味方である筈の我王牙の体勢に一瞬訳が分からない様に首を傾げるが。

 

「我王牙のバトル時効果発動! ミラビリスを破壊!」

「!!」

 

アビスシャークの時の様な恩恵ではない、構えた刃を突き出し、そのままミラビリスを貫き、ミラビリスは絶叫を上げる間もなく刃に体を預ける様に絶命、そして貫いた刃はまるでミラビリスから力を抜き取るかのように光を灯し始める。

 

「我王牙のバトル時効果、相手スピリットのバトル時! 自分のスピリット1体を破壊する事で、このスピリットに破壊したスピリットのBPを加算できる!」

「ミラビリスのBPは7000、つまり!」

「あぁ、我王牙にそのBPを加算して合計は17000! 我王牙、仕留めろッ!!」

 

ヴァンの言葉に我王牙は眼光を輝かせると、そのままジャガンナートの顎を蹴り飛ばし、ジャガンナートの体が仰向けに浮き上がる。すぐさまジャガンナートは態勢を立て直し、再び正面を見るが、そこに我王牙の姿はない。

 

忽然と消えた敵の姿にジャガンナートは辺りを見渡すが、次の瞬間、大きな影と共に、風を切る音が響いたかと思うと。

 

 

その影はジャガンナートの鋼の如き体を貫いて地面へ深々と刺さり、痛みと衝撃が己の身へ襲いかかる。直ぐに飛んで来たであろうそれを確認すると、その正体は我王牙の握っていた大剣。

まるで釘を刺されたかのように固定され、ジャガンナートは体を動かすことができず、唯一動く目線を剣が飛んできたであろう真上の方角へと向けるが。

 

視線の先に映ったのは太陽を背にもう片方の大剣を握りしめる鬼──我王牙の姿。そのまま落下すると共に身動きの取れないジャガンナートに向けて、振り下ろす大剣の一撃を叩き込み、衝撃に尻尾が一瞬大きく浮き上がるが、それ以降ピクリとも動かくなり、ジャガンナートはその場から消滅し、我王牙は地面に刺さったもう片方の剣を引き抜きながら次の獲物を待つかの如く、ルディア達にその鬼のような視線を向ける。

 

「これが我王牙の力だ! バトル終了時、我王牙は回復する!」

「素晴らしい力だ、これでターンエンドするよ」

 

 

────第9ターン、ヴァンside。

 

[Reserve]12個

[Hand]2枚。

[Field]剣双鬼人・我王牙Lv.2(4)BP10000、アビスシャークLv.2(2)BP5000、創界神アレスLv.1、アレスの甲殻神殿Lv.1(0)

 

「マジック! バグズリバースを使用! 手札にある殻人を持つスピリットを破棄することで同じ枚数をドローする事ができる!」

 

ヴァンの手札に残る一枚はジャガンナートによってバウンスされたナミテントウのカード、マジックの条件は当然満たしている。ルディアの手札は4枚、それと同じく手札を補充。

ルディアのライフはまだ5つ全て健在だが、バグズリバースによって引いたカードを確認しながら、ヴァンは勝利を確信する。

 

「これでテメェを仕留める準備は全て整った! これで終らせてやるよ、ルディアッ!! まずは甲殻剣士ラミニフェンサーを召喚! さらに!!」

「!!」

「軍神によって生まれし神の化神、堅殻の鎧で全てを跳ね除け、斬刃の一撃を刻め!! 殻神騎士ナイトオブグラディウス、召喚!」

 

瞬間、アレスは天に向けて腕を掲げ、それに導かれる様に空より飛来する1体のスピリット──アレスの化神にして、最強の騎士、グラディウスが出陣する。

 

「アタックステップ!!」

 

アレスが指揮を取るように腕を翳し、構えるグラディウスと共に、ラミニフェンサーもその隣に立ち、同時に構えをとる。

 

「アレスの【神域】の効果! 俺のアタックステップ中、殻人を持つスピリットは2体同時にアタックする事ができる!」

「二体同時、その為に殻人を持つスピリットを並べた訳か」

「気付いてももう遅ぇ! ラミニフェンサー、ナイトオブグラディウスで同時アタック!! さらにナイトオブグラディウスの【界放:2】の効果発揮! サトラェとリグガンナの2体を重疲労させる!!」

 

刃に光を纏わせ、斬撃波として撃ち込むと、斬撃波の直撃を受け、リグガンナとサトラェはその場に倒れ伏し、起き上がるどころか、動く事すらままならない。

 

「さらにアレスのコア2個をナイトオブグラディウスに置く事で重疲労させたスピリット1体につき、相手のライフ1つを破壊だ!」

 

もう一刀の刃による斬撃波を今度はルディアへと飛ばすと、展開されるバリアを破壊し、ライフを二つ破壊する。

 

「おっ! これは効くねぇ!!」

 

衝撃に対し、少しも動じていないのか笑って感想を口にし、その様子を見ているマチアはぞっとする物を感じさせられるが、バトルしているヴァンにとってはもはや構う事ではない。

 

「コアが追加された事でナイトオブグラディウスのLv.2、そしてLv.2のアタック時効果、お前はバースト発動できず、さらにアタックしている全てのスピリットをBP+15000!!」

 

ラミニフェンサーの現在のBPは21000、ナイトオブグラディウスはBP26000と破格の数値に上昇し、そのまま2体は一気にルディアへと迫って行く。

 

「アレスの同時アタック、確か片方のブロックは可能なんだよね?」

「テメェのスピリットは全ては重疲労状態、一度回復させた程度じゃブロックは不可能だ」

「クリシュナの効果は【神技】だけじゃないよ! フラッシュ、クリシュナのコア2個をボイドに置き、【転神(グランテーゼ)】発動! このターン、クリシュナをスピリットとして扱う!」

 

ルディアの後方に出現していたクリシュナの幻影が消失したかと思うと、今度は実際にスピリットとしてフィールドに実体化し、その行方に立ち塞がる。

 

「【転神】したクリシュナは創界神以外を対象とした効果は一切受けず、また創界神以外によって破壊される事もない! 無敵のスピリットさ」

「無敵、だと?」

 

ルディアの言葉に対し、ヴァンは口角を上げて見せると。

 

「片腹痛ぇんだよ!! テメェに一切の選択はねぇッ!! フラッシュタイミング、アビスシャークを疲労、【連鎖】の効果でコア1個を追加」

 

この土壇場で発動されるアビスシャークの効果、それによりリザーブにコアが追加される。

 

「増えたコアをコストにさらにフラッシュ! マジック、ゴッドブレイクッ!!」

「!!!」

「デッキから1枚ドローし、さらに系統「起幻」を持たない創界神を破壊!! 消え失せろクリシュナァッ!!!」

 

空より降り注ぐ神の鉄槌、激しい爆風を起こし、爆炎の中でクリシュナは悲鳴を上げながら消滅し、そして爆炎の中をラミニフェンサーとグラディウスの二体は突き破って前進していく。

 

 

「そ、そんな!! ルディア様」

「行け! 行け!! ヴァン!!!」

 

一気に決着を決めようとするヴァンの姿に動揺するディストと、対照的に声を上げて鼓舞するマチア。

 

 

「まだ僕の手には防御札があるって事、忘れてるんじゃない? フラッシュタイミングで、アルテミックシールドを使用! 効果でアタックステップを終わらせる!」

「忘れてるのはテメェの方だ、「仕留める準備は整った」、俺はそう言ったよな?」

「!!」

 

アルテミックシールド、その発動を予期していたようにヴァンもまたカードを構える。

 

「手札の歴戦騎士ドルクエヴィデンスの効果、相手のフラッシュ効果発動時、創界神アレスを疲労させる事でその効果を無効化し、さらにドルクエヴィデンスをノーコスト召喚!!」

 

発動するアルテミックシールドのカードを粉砕し、フィールドへと降り立つドルクエヴィデンス。防御を砕き、止めを刺すべくラミニフェンサーとグラディウスは飛び上がり、ルディアへと刃を振りかざす。

 

「(勝ったッ!!)」

 

そう確信するヴァン、だがルディアは不敵に微笑んだかと思うと。

 

「フラッシュタイミング!」

「!」

「マジック、アルテミックシールド!!」

「二枚目だと!!?」

「さすがにドルクエヴィデンスはもうないよね? いや、あったとしてもアレスが疲労してるならもう意味ないけどね。アタックはどちらもライフで受けるよ」

 

そのまま二体の斬撃がバリアを斬り裂き、ルディアのライフが2つ砕け散るが、まだライフは1つ残っており、そしてアルテミックシールドにより展開される障壁がルディアへの行手を遮断してしまう。

 

「これで君のターンは終わりだね」

「ぐ、おのれぇぇぇぇッ!!!」

 

血が滲む程に拳を握りしめるが、まだ勝負が決まった訳ではない。腹立だしさを感じながらもターンエンドをコール。

 

「(次だ、次で絶対奴の首を獲る!)」

「もしかして、次で僕を倒す。そう考えてる?」

「あぁ?」

 

ヴァンの考えを見通すように笑って声を掛けるルディア。

 

「確かに僕は次のターンで確実に君に倒されるだろうね。防御札も尽きた事だしね」

「まだ余裕ぶる気か!!」

「さぁどうだろうねぇ」

 

 

────第10ターン、ルディアside。

 

[Reserve]19個

[Hand]3枚。

[Field](疲労状態)クリシュナーガリグガンナLv.2(2)BP10000、(疲労状態)クリシュナーガサトラェLv.2(2)BP5000。

 

「ねぇヴァン、一つだけ教えてあげるよ」

「あぁ?」

「僕が君を組織に迎えた理由、それは君が必ずハイドカードを見つけてくれると思ったからさ!!」

「なっ!?」

 

我王牙を指差しながら、その言葉に思わずヴァンとマチアの二人に動揺するように一瞬言葉を失う。

 

「な、何を言って!!」

「フフ、だって君とマチアちゃんが繋がってる事は初めから分かってたからね。君の性格上、僕に叛乱する為に七罪竜に代わる力を求める筈、だから必ずハイドカードを手に入れてくれると信じていた!」

「ま、待て……俺はマチアからハイドカードの所在を聞いただけだ。テメェは前までマチアと取引してたんだろうが!! だったら何でマチアから直接情報を聞かなかったんだ!」

「あれ、案外ヴァン君って、鈍感なんだね」

「何?」

 

揶揄う様な笑みを向け、ルディアはさらに続けて行く。

 

「マチアちゃんが最も協力したい相手は僕よりも君さ。彼女は利益よりももっと大事に思う相手がいる……だから君に協力しているんだ!」

「!!」

「そしてハイドカードを僕らに漏らせば、必ず君の障害になってしまう。だからハイドカードの情報は僕ら組織に対しては伏せていたのさ、例え無理矢理捕まえて拷問されたって口を割らなかっただろうね」

「……まれ」

「そして君にその態度を隠していたのもあくまで組織に繋がりをばれないようにするため。まっ、結局徒労に終わった訳だけど」

「黙れ」

「結論から言わしてもらおうか、君は帝騎として……組織の為に、嫌、僕の為に、思い通りに動いてくれた!」

「黙れ! 黙れ!! 黙れええええぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

ルディアの言葉を掻き消すように力の限り叫ぶ。

 

「テメェは死んでも許さねぇ!! 必ずここでぶっ倒す!!!」

「残念だけど、それは無理だよ」

「!!」

「だって、君は僕に勝てない、その事実は覆らないからね!!」

「何を言って……!!」

 

目を見開いて静かに手札の一枚を構えると、瞬間、空気が凍り付いたかのように変わる。

 

「!?」

「じゃぁ、終わらせてくれる?」

『承知、しました』

「!!!」

 

何処からか聞こえる突然の声、そして突如フィールド全体を包み込む極寒の冷気、全てを凍らせる程の白い銀世界がフィールドへと広がり、白色に包まれる視界の中に輝く眼光。

 

「こいつは……ッ!!?」

 

 

***

 

 

「えっと絵瑠について語る前に、俺についての事情を語りたいんだけどな」

 

舞台はスピリッツエデンから元の世界へと変わり、帰り道を歩く烈我達4人。道中ミナトが語る絵瑠との経緯についての事情を聞いていた。

 

「まず言っても信じねぇと思うけど、俺こう見えても人間不信だったんだよ」

「「「!?」」」

 

開幕一番に語るミナトの言葉に、信じられないというように烈我達三人は驚きの表情を見せる。

 

「お前が、嘘だろ!?」

「はは、そう思うだろ。まぁ俺にも色々あったんだよ」

 

「何があったんだ?」

 

疑問に対して尋ねる光黄に対し、ミナトは苦笑いしながら自分の過去について語る。

 

「昔の事で、まだ烈我と知り合う前、この街に来る前の事だけどよ、親友と呼べる奴が一人いたんだ。親友って言っても共通の趣味に語ったり、よく連んで付き合いが長いってぐらいだけど」

「それで?」

「そいつはバトスピやっててさ。俺も興味を持って、そいつからバトスピについて教えてもらって、カードを買い揃えてそいつと何度もバトルして遊んでた。

けどそいつ、かなり強くてさ、何度も負けて来る日も来る日も挑んだけど俺は全然勝てなかった」

 

勝てなかったと言いつつもその表情は昔を振り返って楽しんでいたように笑っていた。

 

「そんなある日だよ、俺等の街で大規模な大会が行われた。俺はそれに結果を残したくて何度もデッキ調整して、戦いに臨んだんだ。

 

 

─────数年前、当時の大会にて。

 

 

『決まったぁーーッ!! 優勝は牙威ミナト選手ッ!!」

 

MCの声に観客全員は大歓声を上げ、ミナトはその歓声に対して誇らしげに手を振って返してくれる。

 

「はは、あの子可愛い! 後でデートに誘ってみようかな。なぁガイト! お前もそう思わね!」

 

当時の親友、ガイトと呼ぶ人物に対し、笑って声を掛けるがガイトはまるで無反応の様に黙り込んだままだった。

 

「オイオイ、ノリ悪ぃなぁ。まぁいいや、ともかくいい勝負だったぜ」

 

ガイトに対し手を差し伸べるが、次の瞬間、ガイトは静かに立ち上がると。

 

 

"パァンッ!"

 

差し伸べたミナトの手を振り払い、乾いた音がその場に響く。

 

「な、何すんだよガイト!」

「るせぇよ、マグレ勝ちがそんなに嬉しいのか?」

「はぁ? いきなりどうしたんだよ!」

「うるせぇよ! よりによってこんなデカい大会で……!! これじゃあいい晒し者じゃねぇか!!」

「何言ってやがんだよ、ちょっとは落ち着け!」

「触んじゃねぇ! テメェはいい気なもんだろうよ、マグレで優勝してそれでチヤホヤされんだからな!!」

 

声を荒げて罵るガイトの姿は、もはや自分の知る親友の姿ではなかった。

 

「マグレマグレって、俺だって努力はしてきたんだ。いくらお前でもそんな言い方はねぇだろ?」

「黙れつってんだろ、そもそも俺がお前にバトスピを教えたのは、俺の引き立て役にさせるつもりだったからだ!」

「!!?」

 

信じられないような一言、さらにガイトは続ける。

 

「なのにテメェばっかり、誰も俺を見てくれねぇ。テメェは俺にとってもう邪魔でしかねぇんだよ!! テメェなんかもう、友達でも何でもねぇよ!!」

「オイ、待てよガイト!!」

 

そのまま会場から走り去るガイト、それが彼を見た最後の姿だった。

 

 

 

 

「それ以来、俺はガイトと会ってねぇ。彼奴に言われた一言一言が信じられなくて怖くて会いにも行けなかった」

「……それで、どうなったんだ?」

 

烈我の言葉に対し、溜息を零しながら。

 

「その後、ガイトは居なくなった。噂じゃどこかに引っ越したらしいが、詳しい事は何も。何も言わずに去った事で周囲は原因が俺にあるんじゃないかと噂して、俺はすぐに孤立した」

「!!」

「だから俺はそんな環境から逃げたくて街を出てここに来た。まあ可愛い女の子見掛たら、よく声はかけるけど!」

 

気丈に振舞う様に冗談交じりの様に笑うが、烈我達はそれが空元気であることを見抜くように表情を変えず、その様子に観念したのか俯いて話を続ける。

 

「まぁ人との交流は最低限取ってはいたけど、正直その一件があって以来、あくまで誰かとは広く浅く付き合う様にしてた。何を考えてるか分からない、だから人付き合いなんてその場その場でいいと俺は考えてた」

「じゃあ絵瑠とはどういうきっかけで?」

「本当に偶然見掛けただけなのさ、まぁいつもの調子で軽く絵瑠にもナンパ紛いな事しちまってな」

「お前、相変わらず……!」

「生憎性分なんですよ! まぁけど、本当に反省したいのはその後だけどな」

「その後?」

「あぁ、絵瑠からの返答は「考えさせてくれ」だった。他の娘だったらいつもその場で決断してくれてるんだけど、絵瑠だけは何故か軽弾みな俺の言葉を真剣に考えてくれててさ……こういうのもあれだけど、それが嬉しかったんだ」

「そんな事が」

「それから絵瑠から返事をしたいって言われて、待ち合わせにすることになったんだけど」

 

 

────当時、とあるレストランにて。

 

待ち合わせの場所に先に来ているミナトの姿、席に座って絵瑠が来るのを待っている彼だったが。

 

「(……果たして、OKしてくれんのかな。もし、OKされたとしたら、俺は……!)」

『ミナト!』

 

深く考え込むミナトに声を掛ける人物、それは絵瑠とは違うまた別の女性の姿だった。

 

「! お前、何で!?」

「何でって、遊びに誘ってくれたのはミナトの方じゃん」

 

その女性に対してミナトも面識があった、彼女は絵瑠と知り合う前に声を掛けていた女性の一人だった。

 

「嫌、お前……前に誘った時断っただろ?」

「そうなんだけど、予定が変更になったからさ。空いちゃって暇になったからね!」

「そんなこと急に言わないでくれ、悪いけど帰って──」

 

そう言い掛けた矢先、視線の先に絵瑠の姿があった。

 

「絵瑠!? 嫌、これは!!」

「……ミナト、悪いがお前からの話は聞かなかった事にする」

「ちょ、待ってくれ! 絵瑠!!」

 

振り返ってその場を立ち去ろうとする絵瑠に対し、ミナトは呼び止めるように手を掴むが、その手を振り払い、ミナトの頬を叩く。

 

「ッ!!」

 

頬を抑えつつ前を向くと、そこには前を向き涙目にこちらを睨む絵瑠の姿があり、叩かれて赤くなった頬の痛みより、必死に何かを訴える様な絵瑠の表情に傷みを感じる様な気がした。

 

「絵瑠、話を聞いてくれねぇか」

「必要ない。もうお前と会う事もない」

「絵瑠! 頼むから待ってくれ!!」

「……金輪際さようならだ!」

「絵瑠ッ!!」

 

それ以降言葉を交わす事無く、絵瑠はその場を走り去ってしまう。

 

 

「その時ばかりは本気でいい加減に人付き合いしてた自分を呪ったよ。あれ以来、絵瑠は未だに俺の事を許さねぇ気だしな」

「……ミナト」

何とも言い難いように烈我と星七は言葉を失うが。

 

「その割には、反省しない様にナンパ癖が治ってない様だけどな」

「うっ、光黄ちゃんは相変わらず厳しいねぇ」

 

『そうですね。光黄様だけでなく、るみか様やマチア様にも同じような態度とってましたね』

「お前が言うな、お前が」

 

ライトに対し突っ込みを入れる光黄だが、一方でミナトは「反省してます」と頭を掻きながら。

 

「まぁ治らない性分ていうのが半分、もう半分は自棄になってるところ、かな。絵瑠からの答えは正直諦めちまってるし。けど答えを別にして、あいつに嫌な思いさせた事……それだけはどうしても、一言謝りたいんだ」

「「「!!」」」

 

そう言ったミナトの表情に対し、その言葉が嘘ではない事は真剣な表情から痛い程伝わっていた。

 

「まっ、事情を聞けて良かったぜ。そう言う事なら、俺もできる限り協力するぜ」

『烈我、お前相変わらずお人良しだな』

「はは、ミナト風に言うならこれが俺の性分、なんてな。光黄も協力してくれるだろ?」

「お、俺は……!」

 

期待するような烈我の眼差しに観念するように溜息を吐き、「分かったよ」と言葉を返す。

 

「僕もできる事があれば協力させてください」

『そうじゃな、儂も知恵を貸すぐらいならまぁできるかもしれんわい』

 

「はは、ありがとな。嬉しいぜ」

「おぉ!! 誓って言うぜ、俺達は絶対お前を裏切らねぇ!」

「……何言ってんだか、別にお前等なら疑いはしねぇよ」

「んだよ、少しは俺だってカッコつけたかったのに!」

「お前には百年早ぇよ!」

 

揶揄うように烈我に言いながら、既に日暮れ近く、また明日と、一人行く先の違うミナトは烈我達と一旦分かれるが。

 

「なぁキラー」

『ん?』

「さっきの話、お前は聞いててどう思った? 幻滅したか?」

 

後ろに寄り添うキラーに対して投げかける質問、その質問に対してキラーは。

 

『別に、俺には関係のない事だ。ただ一つ、俺を扱えるのはお前だけ、その事実だけあればいい』

「意味分からないんだが、要するに興味無しって事か?」

『あぁ、そうだな。けど』

「?」

『興味はなくとも聞いてやるだけ聞いてやる。語りたいなら好きなだけ語れ、俺は同情したりもせん、勿論……お前を幻滅したりする事もな』

「!」

 

そのまま先を歩こうとするキラーだが、「なあ」と呼び止める様にまた声を掛け。

 

「それならもう一つだけ聞くだけ聞いてくれるか」

『何だ?』

「俺さ、烈我みたいになりたかった。俺は人の顔色覗って、平気で嘘をつくこともあるけど、あいつはそんな事ない、人を疑わず、馬鹿正直に誰かを信じて自分の気持ちを真っ直ぐ伝えられる、そんな馬鹿に俺はなりたかった。だから俺は烈我と友達になった。あいつみたいになれたら、絵瑠は」

『……ミナト、お前』

「はは、ただの戯言さ。聞き流してくれよ!」

 

いつものようにチャラけた様な態度で言いながら歩こうとするが、それに対してキラーは。

 

『必要ないだろ』

「?」

『お前はお前だ、誰かになる必要はない、お前は俺様を扱えるただ一人の人間、牙威ミナトだ。それでいい筈だ』

「キラー……はは、ありがとな」

『俺様のも唯の戯言だ。礼は必要ねえ』

 

『行くぞ』と再び前を歩くキラーにミナトも普段通りに軽く返事を返しながら、また歩き出した。

 

 

***

 

「がああああああッ!!!!!」

 

舞台は再びスピリッツエデンへ、既に決着したようにバトルフィールドから元の場所へと戻る二人、衝撃によってヴァンは吹き飛ばされ、壁に大きく叩きつけられる。

 

「ヴァンッ!!」

「ぐっ、うぐぁッ!!」

 

マチアの呼びかけに対し、ヴァンは呻きを上げるが、壁に手を掛けて必死に立ち上がる。だがバトルによるダメージは相当なのか、満身創痍でフラフラの状態だった。

 

「やれやれ、ハイドカードの力は凄かったけど、まだまだ未熟だね」

「て、テメェ……!」

「さて、ヴァン君役目を果たしてくれてありがとう。組織の為にハイドカード、十分利用させてもらうよ!」

 

ルディアの手には我王牙のカードがあり、そのカードにヴァンは必死に手を伸ばす。

 

「か、返せ……それは……俺、の……!」

 

視界が真っ暗に染まり意識を失うととうとうヴァンはその場に倒れ伏してしまう。

 

「ヴァン……ッ!!」

 

倒れるヴァンを必死に呼びかけ、ディストを振り払い彼の元へ駆け寄ろうとするが、ディストは彼女の首に手刀による一撃を加えると、意識をシャットダウンさせられるようにマチアもまたその場に倒れ込んでしまう。

 

「ディスト、ハイドカードを」

「はい、ルディア様」

 

倒れるマチアの懐を弄り、残るハイドカードを全て奪い取るとカードをルディアへと差し出す。

 

「これで次の計画に移れるねぇ」

「ルディア様、その前にこの二人は如何します? ヴァンは処分するとして、この情報屋の方は拷問し、情報を吐かせた方がいいかと思います。この二人と繋がってる者がまだいるかもしれませんし!」

 

ディストはまだ自分達の敵と成り得る存在いる事を直感していた。当然その相手はドレイクの事に他ならない。

 

「嫌々、処分だの拷問だのディストは物騒すぎるよ」

「ですが!!」

「必要ないよ。とりあえずマチアちゃんは捕まえるけど、拷問は必要ない。ハイドカードと言う力さえあれば、充分なんだから」

 

「そして」と、倒れるヴァンの方へ歩み寄りながら。

 

「ヴァン君、色々君に対して言ったけど、君を使い捨てるつもりはないよ。まだまだ君にも帝騎として、尽くしてもらわなきゃね!」

 

倒れるヴァンへの一言、そしてルディアは笑い声を上げ、その表情と笑う声は狂気に満ちたものではなく、どこまでも純粋無垢な少年の様。だが、だからこそ圧倒的な恐怖とルディアの絶対的な力をディストは感じ取っていた。

 

 

 




今回第20話公開です!
ヴァンとルディアのバトル!!

ついにハイドカードである1体! 我王牙の降臨!!
そのスペックをチェック&チェック!←


【剣双鬼刃・我王牙】8(3)緑、スピリット/森羅・神将。
Lv.1(1)BP6000、Lv.2(4)BP10000。
Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』
自分のスピリット一体を指定し、そのスピリットのLvが一つ上になるようボイドからコアをそのスピリットの上に置く。
Lv.1、Lv.2『このスピリットのバトル時』
相手スピリットとのバトル中、自分のスピリット1体を指定し、そのスピリットを破壊できる。この効果発揮後、破壊したスピリットのBPをこのスピリットに加え、バトル終了時、このスピリットは回復する。
Lv.2
このスピリットが相手の効果の対象となった時、フィールドのコア3個をトラッシュに置く事で、その効果を無効にする。


過去作にてバトルスピリッツ激震の勇者でも猛威を振るった一枚!!
今回のバトルに大暴れでした! そして対するルディアのデッキは甲竜軸、第S他カードを見る限りがちですねあれは(笑)


そして最後に出したカードは!!

ちょっと中途半端になってしまいましたが、まだカードは未公開という事で今回は途中でバトルパートは区切らせていただきました。
申し訳ないです、でもどうか今後の展開をご期待いただければ幸いです!


そして次回は一体どうなるのか!是非とも次回もまたよろしくお願いします。
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