バトルスピリッツ 7 -Guilt-   作:ブラスト

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第23話【電光石火 雷速の逆雷狼】

月沈む暗い夜、ベッドの上で横たわる絵瑠、安らかな表情で彼女は就寝しており、同様にその傍で眠る七罪竜の一体、シュオン。

 

『■■様、どうか俺の願いを聞いてください』

 

場面が切り替わったように目の前に現れる人物。

 

『(……夢。嫌、正確には俺の記憶か)』

 

一瞬自分の体を見るが、その身は黒い鱗に覆われたシュオンの姿ではなく、記憶に残るかつての本来の自分の姿だった。

そして目の前に映る人物、「願い」という言葉にシュオンは即座に今見ている光景をかつて自分の記憶をもとにした夢の光景であることを理解していた。

 

『■■様! 俺を大金持ちにしてください!!』

『■■様、この僕を世界一有名にしてくれ!』

『■■様、どうか私の為の国を建ててくれませんか!!』

 

まるでテレビのチャンネルのように場面が切り替わる、だが所詮誰も彼もこぞって口にするのは己の為だけの欲望。

 

『(相変わらず、人の欲は醜い)』

 

七罪竜の中で唯一過去の記憶を持つシュオン、だが全てを覚えている訳ではなく、その記憶は断片的。

過去に願いを叶えてくれと頼み込む人間を前に当時の俺はどんな感情を抱いていたかそれは定かではない。しかし、記憶を振り返りながら今にして俺はその記憶に対して率直な感情が込み上げる。

 

人間の欲望はいつだって己の為だけ。金、名声、他人の為を思う願いはなく、時に誰かの幸せが他人の不幸になることもあり、他人を思う所か、他人を陥れる願いも幾つもあった。

 

別に願いの内容は人それぞれ、それは構わない。だからこれは単純な疑問だ、そこまでして、全てを尽くしてまで望んだ結果が結局それなのかと。

 

『(願いを叶える為だけに己を犠牲にする人間は何度も見てきた、そしてその苦労の末漸く願いを叶えても結局は自分の為だけ、悲しくて醜い……まぁ俺も似たようなものだがな)』

 

そんな事を想うシュオン、そして最後に一人また願いを叶えてもらおうと一人の人物が過去のシュオンの前に立つ。

 

『言え、お前の望みは何だ?』

 

テンプレートの様に決まった質問を投げる、そして自分の問いに対してその人物はゆっくりと口を開く。

 

「俺の願いは……」

 

 

 

***

 

 

 

『!』

 

振り返る最後の記憶、男が願いを口にする前にそこでシュオンは目が覚めた。

 

『……昔の記憶、そう言えば……あの男の願いを聞いてからの記憶がないな)』

 

元々記憶自体も断片的だったが、先程の夢にもあった過去の出来事。あの時の人物の願い以降の記憶がシュオンにはまるでない。恐らく自分が最後に聞き届けたであろうその願い、果たしてそれは何だったのか。

 

『まぁいい……どうせくだらない願いだ』

 

どうせ今まで聞いてきたであろう願いと同じ自分本意の我欲、そう切り捨てて、すぐに考えるのをやめ、ふと自分の隣で眠る絵瑠を見る。

 

今のシュオンにかつての力はない、そもそもなぜ力を失ったのか最も重要な記憶も欠けてしまっている。だが、だからこそかつての力を取り戻したい。そしてその為に醜いと蔑んでなお、その欲望喰らう以外に手段はなかった。

 

『(分かってる。俺も人間と同じ穴の貉、だからこそ)』

 

俺はどんな手を使っても力を取り戻す、己の為だけの願いだ。だから同じ穴の貉の欲望を糧にする事に躊躇などない。他人の不幸や、他人を蹴落としてまで掴もうとする欲望等幾ら喰らっても構いやしない、そうずっと考えていた。

 

『(なのにどうして、この女といると……欲望を喰らう気になれん)』

 

絵瑠と過ごす様になってから暫く経つがあれ以来、欲望を喰らってはいない。バジュラ達の監視の目もあるが、それ以上に、喰らう気になれない。何故だかそんな心境だった。

 

『(……俺は此奴の事、どう思ってるんだろうか)』

 

元々絵瑠は自分にとって都合のいい欲望の持ち主でしかなかった筈。なのに、その自身の欲望を受け入れ、そして自分とも向き合う事を選んだ。

 

人間は欲望に忠実で醜い生き物、それが自分の見解だった。なのにこの人間はどうだろう、自分の胸に秘めた欲望を知りながらそれを受け入れ、そしてその欲望を利用しようとした俺とも今は平然と付き合えている。怒りや嫌悪ではなく、友達のように接してくる。

前に絵瑠には欲望は小さくなり、もう喰らうに値しないと告げた。その言葉は半分嘘で、半分本当。

 

『(……絵瑠の欲望はまだ消えてはいない、喰らおうと思えば喰らう事はできる……此奴の欲望を喰らえば、俺は……!)』

「んくぅ」

『!』

 

絵瑠に腕を伸ばそうとするが、寝言のように声を上げる彼女に一瞬シュオンの手が止まる。

 

「シュオン……明日も……一緒に出掛けような」

 

目を瞑って夢でも見ているのだろうか、笑って言葉を呟く絵瑠に静かにシュオンは伸ばした手を引っ込める。

 

『(何で此奴は俺を信頼できるんだか……タダのお人良しなのか)』

 

元々自分の目的は過去の力を取り戻す事。その為なら他人の欲望を喰らう事に一切躊躇などしない、そのつもりだった。なのに絵瑠を前にすると、今まで抱く事のなかった躊躇いがどうしても込み上げる。

 

『(力さえ取り戻せればどんな手も構わないと思ってた。なのに……今はこうしてただ此奴とのんびり過ごすだけの毎日を過ごすとはな)』

 

過去の力を取り戻す、今まではその事だけに執着していた筈。なのにどうしても今はその目的を果たすために行動する気になれなかった。

 

『(……何故、俺がこの女を一々気にする必要がある。この人間をパートナーとして認めているからか? 馬鹿な、ただ今の俺を扱える適任が今のところこの女しかいないだけ。ただそれだけだ)』

 

冷静に落ち着く様に絵瑠を見るが、暫くして絵瑠の表情を前に考えるのが馬鹿らしくなったように目を瞑り、絵瑠の傍に寝転ぶ。

 

『(どうせ一時の気の迷い、何れこの迷いもハッキリさせてやる。だからせめてそれまでは……もう少し、お前を見守ってやる。人間)』

 

再び目を瞑り、シュオンは眠りへと着く。

 

 

 

***

 

 

舞台は変わり、罪狩猟団本拠地にて。

宮殿内部の地下にある地下の一室、部屋中に監禁を目的とした牢獄が幾つも設置され、檻の中には組織に敵対する侵入者を始め、これまで作戦に失敗した下っ端たちが閉じ込められているが、とある一つの檻に近付く人影。

 

「……アタシに何か用? まぁ何聞かれたって話す事は無いけど」

 

檻に近付く人影に向かって声を掛けたのは、捕えられ人質の身として監禁されているマチアの姿。そして人影はゆっくりと檻の前へと歩み寄り、マチアの前にその姿を見せる。

 

「あれ意外。アタシの拷問にはてっきりあのサディスト女が来るとばかり思ってたけど」

 

恐らくディストの事を指してだろう、だがマチアの予想に反して彼女の前に現れたのはディストと同じ帝騎の一人であるミコだった。

 

「ボスからはお前の監視を任せれたのじゃ、文句でもあるのか?」

「別に、ただ意外だと思っただけだよ。アタシの監視をするっていうのがアンタみたいな子だって」

「子供扱いするな! 妾はお主よりも歳上じゃぞ!!」

「えっ!?」

 

普通に驚いたのか思わず疑問がそのまま口に出るが、直ぐに気を取り直す様に咳払いし、「まぁそれはそれとして」と、冷静にミコを見る。

 

「アタシに何か用? それともアンタが私の拷問でもするの?」

「妾をディストと一緒にするな! それに妾の要件はそんなのじゃなく、ドレイクの事じゃ!」

「ドレイクの?」

 

ミコの質問に対してマチアの顔色も変わる。

 

「アタシに彼奴の事を売れって事?」

 

自分達との繋がりがバレているとすれば、当然その証拠を得ようとするのは必然だが。

 

「ふざけるな!! ドレイクは元々お主等と関係ない筈じゃ!!! もしお前やヴァンの勝手な発言でドレイクの身が危なくなるなら、妾は絶対許さない!!」

「!!?」

 

予想に反してミコの想いはマチアの考えとはまるで正反対、ドレイクの事を気遣うようなミコの態度にマチアも驚いた様子だった。

 

「アンタ、ドレイクとはどういう関係なの?」

「お前に話す義理はない。ともかくお主等のやり取りにドレイクを巻き込むな、妾の言いたいことはそれだけじゃ!!」

「巻き込むも何もドレイクは自ら望んでアタシ達と手を組んだ、強制はしてない。それはアンタも気付いてる筈でしょ?」

「!」

 

マチアの言葉に一瞬聞き入れたくないのか、歯を喰い縛りながらも。

 

「知らない! ともかくドレイクはお主達と関係ないのじゃ!! 妙な言いがかりにドレイクに何かあったら妾は絶対お主を許さないからなッ!!」

 

目に涙を込めながら必死にマチアに訴える様に声を荒げるミコ、そんな彼女の様子にマチアは。

 

「……フフッ」

「な、何が可笑しいのじゃ!!」

「ごめんごめん。何か他人事の気がしなくてさ。まるで自分の事見てるみたいって言うか」

「は? お主は何の話を」

「こっちの話。だから気にしないで」

 

監禁された状態だと言うのに、そんな事は微塵も意に介していない様に悪戯っぽく笑うマチア、人質とも思えない彼女の態度に調子を狂わされるようにミコは表情を歪める。

 

「ねぇ一つ聞かせてよ」

「?」

「貴方って、ドレイクの事が好きなの?」

「!!?」

 

率直なマチアからの質問、それに余程動揺したのか思わず壁際まで後退る程。

 

「ななな何でそんなこと聞くのじゃ!!」

「タダの興味。にしても分かりやすいね」

「わ、妾は別にドレイクの事……嫌いって訳じゃないがでもあくまで仲間として好きってだけで……!!」

 

あわてふためくようにテンパって答えながらも、「ただ」と少し落ち着く様に間を置いて、表情をしおらせたかと思うと。

 

「……ドレイクにはずっと守ってもらってばかりじゃ……だから、今度は妾がドレイクを守りたい。ただそれだけなのじゃ」

 

俯いて少しだけ暗く語る彼女、恐らく本心だろう。マチアの目から見て、彼女の言葉に嘘がない事はハッキリ理解できていた。

 

「……心配しなくても、アタシは特に何も話さないよ」

「!」

「情報屋としてやってるけど、手を組んだ相手を売る様な腐った真似は絶対しない。とは言ってもアタシがここに居るのは恐らく情報を聞き出す為じゃなく、違う用途で利用する為だろうけどさ」

「違う用途? それは?」

「そこまで話す必要はないでしょ。まぁ少なくともアンタとドレイクには関係ない事だよ、仮にそれがアタシの最も嫌な利用のされ方だとしてもね」

「どういう事じゃ?」

「だから話したくないって。それにこんな状況になっちゃ、もうアタシにできる事なんてないしね」

「…………」

 

マチアの態度に巫女は何かを想う所があるのか、暫くマチアを見つめたままゆっくりと口を開く。

 

「なぁお主、後悔……しとるか?」

「うん?」

「ヴァンと行動を共にした結果、こんな目にあって……それに後悔はしとるのか?」

 

ふとしたミコからの言葉、それに対しマチアは。

 

「そうだね、後悔してないって言えば嘘になるよ」

「!!」

「……強いて言えば、元々彼奴の役に立ちたくて動いた筈なのに、結果だけ見れば、こうして彼奴に迷惑をかける形で利用されているこの状況にね」

「彼奴って言うのはもしかして、ヴァン?」

 

ミコからの質問に彼女は静かに首を縦に振って続ける。

 

「でも……アタシはさ。ヴァンに着いて行くって、そう決意して行動を起こした事に後悔はないよ。まぁこんな結果になるなら、行動の仕方に後悔はあるけどね。例えアタシはどうなってもいい、そう覚悟してたつもりだったんだけど」

「覚悟……!」

 

「覚悟」という言葉にまたドレイクから言われた台詞が脳裏を過る。

 

「……妾からの質問は以上。要件はこれで終わりじゃ」

 

会話を切り上げた彼女の表情はまるで何かを決心したように、マチアから背を向けその場を後に歩き出して行く。

 

「何処に行く気?」

「……妾も帝騎の一人じゃ。だとすれば何の為に動くかは想像できるじゃろ?」

「……」

 

静かに答えてそのを後にしていく彼女の後姿をマチアはただ黙って見守る。

 

「(ドレイクはずっとアタシとヴァンが行動を起こそうとするそのギリギリまで何か思い悩んでた。その原因は恐らく……嫌、多分間違いなくあの子だろうね)」

 

ミコの後ろ姿にマチアもまた何かを察していた。だが、それでも彼女に声を掛けるべきかどうか、判断できないまま唯その後姿を見送る事しかできなかった。

 

「(多分あの子がいなければドレイクも覚悟が決まる。あの子はそれに気付いてるのかいないのか……そして、これから何をするつもりなのか。今のアタシには、それを見守る事しかできない)」

 

 

 

***

 

 

「いやー、今日は買い物に付き合ってもらって悪いな」

「別に。俺も暇してたから構わない」

 

この日は絵瑠と光黄の二人は珍しく買い物に出かけており、丁度買い物を終えた様に買い物袋を下げている。

 

「ところでそれ、誰かに贈り物か?」

「まぁな。この前彼奴に世話になったからそのお礼で────!」

 

笑顔で語る絵瑠だったが、そこまで言い掛けた時、ハッとしたように思わず口を閉じる。

 

「だ、だからと言って私は別に彼奴の事をまだ許した訳じゃ!」

「はいはい、誰の事かは聞かないでおくよ」

「うぅっ!」

 

口を滑らした発言から誰の事か光黄はすぐに理解しているものの気を利かせ、あえてその内容には触れないよう気遣う光黄だが、彼女にとっては墓穴を掘ってしまった事に顔を赤くせざるを得ない。

 

「……わ、私の事はともかく! お前こそ、烈我とはどうなのだ!」

「お、俺の話こそ今は関係ないだろ!!」

「だってあれから浮いた話聞かないし」

「か、関係ないだろ!! ともかくこの話はやめだッ!!」

 

光黄も絵瑠に調子を狂わされるように顔を赤くするが、それでも楽しそうに話す二人にライトとシュオンは少し距離を空けて見守っている。

 

『光黄様達楽しそうですね~、一体何を話してるやら』

『フン、俺は美味い物が食えると聞いて付いてきただけだ。それ以外はどうでもいい』

『相変わらずソレですか。最近アナタ、暴食というよりただの美食家になりましたよね?』

『余計なお世話だ色欲魔』

『ちょっとォ!? 私今日はまだ何もやってないですよ! 風評被害過ぎますよ!』

『「今日は」って言ってる時点で駄目なんだよ』

 

仲が良いのか悪いのか、ライトに対し冷淡な言葉を吐き捨てるが、一方で絵瑠が気になる様に視線を送り。

 

『なぁライト、少し聞いていいか』

『?』

『お前は相棒と呼べる存在、あの女と出会って、出会う前の自分と何か違いを感じたりしたか?』

『違いですか? ふむ、まぁ強いて言うなら光黄様のような素敵な女性に仕えられて、幸せになれたって事ですかね』

『お前に聞いた俺が馬鹿だった』

 

満面の笑みで語るライトにシュオンは頭を抱えるように呟く。

 

『何ですかその言い草は! 大体アナタはどうなんです? 絵瑠様と組むようになって変わったのでは? 食以外で』

『別に。まぁ……あの女に調子は狂わされるようにはなったがな』

『とか何とか言って、絵瑠様のような素敵な人といれて内心嬉しいとか思ってるんじゃないですか?』

『お前と一緒するな! 別にそういう訳ではない……そういう訳ではないが……!』

 

絵瑠に対して、やはり言葉にできないものを感じているのか視線を伏せる。

 

『ともかく何でもない。俺には全部些事。力を取り戻すこと以外に興味はない!』

『はいはい、また昔の話ですかね。私には昔の事なんて記憶にないし、どうでもいいですけど。過去より今ですから』

『…………』

 

ライトの言葉にシュオンはただ黙って耳を傾けそんなやり取りを交わす二体だったが。

 

『『!!』』

 

突然何かの気配を感じ取ったように反応を示すと、二体はすぐに絵瑠と光黄の傍に寄り添う。

 

「シュオン!?」

「ライト、どうした!?」

 

『嫌な気配です。光黄様、絵瑠様、構えてください!』

 

警戒するという事は恐らく敵の気配を察知したのだろう、そしてその警戒が間違いでない事を証明する様に二人の前に空間の穴が開き始め、その穴より現れる一人の少女。

 

「七罪竜の反応探知……結果通りじゃの!』

 

「「罪狩猟団!?」」 

 

咄嗟に構える光黄と絵瑠の二人、そんな二人を見ながらミコはゆっくりと口を開く。

 

「初めまして、じゃのぅ。妾の名はミコ。知っていると思うが、罪狩猟団のメンバーじゃ。そして妾はその帝騎を任されておる」

「帝騎……!」

 

その言葉が指す意味はかなりの実力者という事、そして自分達の前に現れたという事は当然狙いはライトとシュオン達、七罪竜。

 

「早速で悪いが要件は七罪竜の奪取! お主達には妾の相手になってもらうのじゃ!」

「「!!」」

「それで妾の最初の相手はどっちじゃ?」

 

ミコの言葉に我先にと光黄が名乗りを上げようとするが、絵瑠は手を突き出してそれを制止させる。

 

「絵瑠?」

「光黄、私にやらせてくれ」

「どうして?」

「この前は彼奴に、ミナトに助けられたからな。けど私もシュオンと、共にいる以上、戦う覚悟を決めなきゃならない! だから今度は私が戦いたいんだ!」

「……分かった。でも油断するなよ」

「あぁ。私とシュオンなら負けないさ」

 

「決まったようじゃの?」

「あぁ、お前の相手は私だ!」

 

両者をデッキを構え、フィールドを用意する為、ミコはキューブ上のデバイスを足元に投げ入れる。

 

「さっき覚悟と言ったな。生憎じゃが、覚悟があるのは妾も同じじゃ!」

「!……どんな覚悟があるかは知らないけど、絶対にシュオンは渡さない!」

「…………嫌、勝つ。勝って必ず七罪竜を奪い取る、それができなければ。妾の覚悟は認められないのじゃ」

「えっ?」

「……余計な話はここまで、さぁバトルじゃ!」

「あぁ、シュオン! 頼むぞ!!」

 

『フン、所詮俺頼みか。まぁ、期待には応えてやるよ!』

 

相変わらず憎まれ口を叩きながらもカードの姿となって絵瑠はそれをデッキへ加えると、互いに準備を整えていき、バトル開始の宣言をコールする。

 

「「ゲートオープンッ! 界放ッ!!」」

 

宣言と共に、二人の舞台はバトルフィールドへと移り、モニターのように光黄達にバトルの状況が映し出される。

 

『光黄様、私達は如何すれば?』

「絵瑠を信じて見守るしかない。ライト、お前は烈我達を呼んできてくれ」

『分かりました! お任せください!!』

 

すぐさま伝令を伝えるべく、その場から飛び去るライト、そして光黄は静かにバトルの行方を見守る。

 

 

────第1ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]4個。

[Hand]5枚。

 

「私のターン! 蛇僧侶ハリムを召喚、召喚時効果で1枚ドロー!」

 

手札を増やしての堅実なスタートを切って、ターンを終了。

 

 

────第2ターン、ミコside。

 

[Reserve]5個。

[Hand]5枚。

 

「妾のターン、手札からギュウキをマジックとして使用! 効果でハリムをBP-3000!」

「妖戒!? それに黄色使いか!」

 

開幕から変則的な一手、ギュウキが幻影の様に現れるとそのままハリムに取り付いて力を奪い取り、BPが0になった事で力尽き、その場に倒れ伏し消滅。

 

「ッ!?」

「これでターン終了じゃ」

「(黄色使い……光黄との相手で対策は充分。相手にとっても不足なしだ!)」

 

 

────第3ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]5個。

[Hand]6枚。

[Field]なし。

「だったらクリスタニードル2体をLv.2に召喚! アタックステップだ!」

 

堅実なプレイから一転、速攻を仕掛けるようにスピリットを並べると、アタックステップ開始と同時にクリスタニードルに攻撃指示を繰り出し、クリスタニードルは牙を向けながらミコへと迫る。

 

「フラッシュ! 手札からギュウキをマジックとして使用!」

「2枚目!?」

「これでクリスタニードルをBP-3000、破壊じゃ!」

 

クリスタニードルに放たれる眩い閃光、力を奪われて力尽きその場で消滅させられる。

 

「でもそれじゃ次の攻撃は防げないだろ! もう一体のクリスタニードルでアタック!」

 

絵瑠も負けっぱなしではない、残るクリスタニードルを突っ込ませ、流石に防ぐ術はないのかミコはその攻撃を受け入れるしかない。

 

「ライフじゃ……ッ!!」

 

クリスタニードルはそのままバリアに噛み付き衝撃に少々後退る。

 

「私はこれでターンエンド!」

 

 

────第4ターン、ミコside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]4枚。

[Field]なし。

 

「妾の番じゃ! カシャネコ召喚ッ!!」

 

軽快なステップを踏みながらフィールドを舞うものの怪───カシャネコ。

 

「召喚時効果発揮じゃ! 妾のトラッシュにある2体のギュウキを手札に戻す!」

「!!」

「さぁアタックステップじゃ! カシャネコで攻撃!!」

 

御旗を掲げながら前進し、フラッシュタイミングと同時にカードを構える。

 

「手札に戻したギュウキを再使用! これでもう一体のクリスタニードルも破壊じゃ!」

「ぐっ!!」

 

再びギュウキの効果によってクリスタニードルが標的となり破壊、そして絵瑠に向かってカシャネコは掲げた御旗をそのまま投げつけ、バリアに叩きつけられライフを砕く。

 

「ッぁ!!」

「ターンエンドじゃ」

 

 

 

────第5ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]7個

[Hand]5枚。

[Field]なし。

 

「私のターン! ゴッドシーカー舞踏龍ナタラージャを召喚! 召喚時効果発揮、デッキの上から3枚オープン!」

 

オープンされたカードは「破壊の創界神シヴァ」、「シヴァの破壊神殿」、「辰の十二神皇ウロヴォリアス」の3枚。

 

「!!」

「来たッ! シヴァとシヴァの破壊神殿を手札に加え、残ったウロヴォリアスはデッキの上に戻す」

 

一気に手札を増やすと共に、加えたばかりの2枚を早速構える。

 

「破壊の創界神シヴァを配置! 配置時の神託は行わずにシヴァの破壊神殿を続けて配置だ!」

「(次のターンで確実にウロヴォリアスを手札に加える気か!)」

 

絵瑠の場に配置されていくネクサス、そして後方にシヴァの影が幻影のように出現し、睨むような視線をミコへと向けるが、ミコもまたそれに怯まないように睨み返して見せる。

 

「来るなら来い! 妾はいつでも受けて立つぞ!!」

「……いや、ここはターンエンド」

 

まだミコの手札にはギュウキが一枚残っている。ナタラージャで攻めた所で返り討ちに合うのが落ち、そう判断したのだろう。

 

 

────第6ターン、ミコside。

 

[Reserve]7個。

[Hand]5枚。

[Field]カシャネコLv.1(1)BP3000。

 

「フン、次の自分のターンの準備をしたという事はつまり、裏を返せばこのターンは無防備という事。遠慮なく攻めさせてもらうぞ!」

「!!」

「さぁ行くぞ! 悪鬼羅刹の魑魅魍魎! 妖集いし百鬼夜行を率いる大将! 妖怪大将カシャネコイクサをLv.2で召喚じゃッ!!」

 

フィールドに差し込む一筋の光、その光から舞い降りるようにフィールドに現れるスピリット、全ての妖戒を束ねし総大将──カシャネコイクサ。

 

「バーストセットし、アタックステップ! カシャネコイクサでアタックじゃ!」

「ライフで受ける!」

 

腰に差した脇差を取り出すと、そのまま駆け出して絵瑠へと迫り、そのまま脇差をバリアに突き立てると、愛くるしい見た目には反して、バリアを通して通じる痛みと衝撃が絵瑠を襲い、バリアを破壊される。

 

「うあッ!!」

「ターンエンドじゃ!」

 

 

────第7ターン、絵瑠side。

 

「ぐっ!! 反撃だ! シヴァの破壊神殿の効果で手札の1枚を裏向きで手元に置き、デッキから2枚ドロー!!」

 

[Reserve]8個。

[Hand]5枚、(手元)1枚。

[Field]ゴッドシーカー舞踏龍ナタラージャLv.1(1)、破壊の創界神シヴァLv.1、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)。

 

「私のターン! まずはムリダンガムドラゴンをLv.2で召喚、召喚時効果発揮! 私の手札のカード2枚を手元に置き、その後手元のカード2枚につき相手スピリットのコア一つをリザーブに送る! カシャネコイクサからだ!」

「!」

 

ムリダンガムドラゴンは咆哮を荒げ、声圧にカシャネコイクサは吹き飛ばされそうになり踏み留まるもコア一つを削られ、レベルダウン。

 

「ッ!」

「これでカシャネコイクサのLv.2効果は使用できなくなった! ムリダンガムドラゴンの召喚により神託でコアをシヴァに追加、そして手元に置いた私のキースピリットを早速使用させてもらうぞ!!」

「キースピリット、手札に加わった奴か!」

「あぁ。抗う事の出来ない死への呪縛、今こそ絶望のカウントダウンを下す! 召喚、辰の十二神皇ウロヴォリアスッ!!」

 

天より降り注ぐ黒き稲妻、大地を裂いて裂け目から轟く龍の咆哮、腕を伸ばし地面に龍爪を突き立てながらフィールドへと姿を見せる十二神皇ウロヴォリアス。

 

「不足コスト確保でナタラージャは消滅させ、シヴァは神託でもう1コアを追加。そしてウロヴォリアスの召喚時効果! 【封印】! ソウルコアを私のライフに!」

 

失ったライフを補う様に赤い光が絵瑠のライフへと灯り、ウロヴォリアスとムリダンガムの二体は咆哮を上げる。

 

「アタックステップ! ムリダンガムドラゴンでアタック! アタック時効果で私の手札をさらに2枚手元置くことでデッキから3枚ドロー!」

「ライフじゃッ!」

 

ムリダンガムはその場で咆哮を轟かせると、体に埋め込まれた宝玉は輝き出したかと思うと、その光は光線となって飛び交い、展開されたバリアへ撃ち込まれ破壊する。

 

「痛ッ!!」

「これでターンエンド!」

 

 

────第8ターン、ミコside。

 

攻撃を終え、ターン終了を宣言する絵瑠、そしてターンがミコへと移った瞬間、ウロヴォリアスは狙ったように吼え始める。

 

「!!」

「相手ターン中、ウロヴォリアスは封印時の効果で【呪縛】発揮!」

 

ウロヴォリアスから放たれる紫炎の龍がカシャネコとカシャネコイクサの二体を締め上げる。

 

「ぐっ!」

「相手の各ステップでウロヴォリアスは相手スピリットのコアを除去できる! スタートステップ! まずはカシャネコからだ!」

 

ウロヴォリアスは眼光を輝かせると、紫炎の龍はカシャネコを締め上げるとコアを取り外すされ消滅してしまう。

 

「よし、次は!!」

 

ウロヴォリアスと共に標的をカシャネコイクサに視線を向けるが。

 

「させんのじゃ! 相手による自分のスピリット消滅時でバースト発動!!」

「!」

 

弾け飛ぶバーストカードを手にした瞬間、フィールドに降り注ぐ落雷の雨。

 

「!?」

「バーストは雷命刀ミカヅキ! このバースト効果によりこのターン、相手のスピリット、ネクサスの全てはその効果を失う!」

 

ミカヅキのカードを掲げ、降り注ぐ落雷がムリダンガムとウロヴォリアスの二体にも直撃し、ウロヴォリアスが雷に打たれた瞬間、カシャネコイクサを縛り上げていた紫炎の龍は消滅する。

 

「これでウロヴォリアスの【呪縛】は無効じゃ!!」

「くっ!」

「発動したミカヅキはそのままカシャネコイクサにブレイヴさせる!!」

 

ミカヅキを受け取りカシャネコイクサはまるでそれを自慢するかのように剣を振り回し、天へと掲げる。

 

[Reserve]8個。

[Hand]4枚。

[Field]妖戒大将カシャネコイクサ×雷命刀ミカヅキLv.(2)BP9000。

 

「妾のターン! カシャネコイクサをLv.2にアップ! 行くぞ!」

「!!」

「カシャネコイクサでアタック! アタック時効果発揮、妾の手札にあるバーストカードをセットする事でカシャネコイクサは回復!!」

「ウロヴォリアスで──」

「させん! カシャネコイクサの効果発動!! 妾の手札にある系統:「妖戒」を持つカード全てをマジックカードとして扱える!! 手札にある妖戒獣ヌエをマジックカードとして発動!」

 

ヌエの幻影がフィールドに出現したと同時にウロヴォリアスに雷撃を放ち、その攻撃を受け、ウロヴォリアスは体が痺れ動く事が出来なくなってしまう。

 

「ウロヴォリアス!?」

「カシャネコイクサの効果で扱ったマジックカードの効果で、相手スピリットを指定し、そのスピリットはアタックもブロックも不可能となる! さらにカシャネコイクサにソウルコアが置かれていれば、マジックとして扱ったカードをそのままノーコストで召喚できる! 妖戒獣ヌエをLv.3で召喚!」

 

カシャネコイクサはまるでエールを送る様に御旗を振るい始めると、幻影として出現したヌエの体がそのまま実体化し始め、フィールドに出現する。

 

「ウロヴォリアスはこれでブロック不可! 止める術はないのじゃ!!」

「……ライフで、受ける!」

 

ブレイヴした事でカシャネコイクサは今はダブルシンボル、そのままミカヅキで展開されたバリアを一刀し、ライフを破壊。

 

「うあああああッ!!」

「追撃じゃ! ヌエのLv.3効果発揮!! 「主君」、「家臣」を持つ自分のスピリットによって相手ライフを減らした時、ライフをさらに1つ破壊!」

 

ヌエは自身の体に電撃を纏い始めると、そのまま溜めた電気を放電させ、バリアへと撃ち込み、さらにライフを破壊される。

 

「ぐっ!」

「これでお主のライフは残り2! このまま止めじゃ!!

 

ミカヅキを構え、一気に絵瑠へと飛び掛かり迫るカシャネコイクサの攻撃に対してウロヴォリアスは行動する事ができない。

 

「終わりじゃ!!」

「いいや、私だって負けられない!」

「!」

「フラッシュ、手元からシヴァカタストロフィー!! 効果で相手スピリットとアルティメットのコア全てを1つのみする!」

 

ウロヴォリアスは体を痺れさせながらも腕を振り上げ、そのまま地面に叩きつけると、打ち付けた攻撃は紫の衝撃波となってフィールド全域へと広がって行き、ヌエとカシャネコイクサのコアを吹き飛ばす。

 

「さらに私の手元に裏向きカードが3枚以上あれば、コア1個のスピリットのアタックで私のライフは削られない!!」

「何じゃと!?」

 

カシャネコイクサはミカヅキを勢いよく振り下ろすが、その攻撃はバリアを破壊するまでには至らず、逆に攻撃を弾き返されてしまう。

 

「た、ターンエンドじゃ!」

 

 

────第9ターン、絵瑠side。

 

「私はもう一度、シヴァの破壊神殿の効果で手札を裏向きで手元に置き、デッキから2枚ドロー!」

 

[Reserve]8個。

[Hand]4枚。(手元)4枚。

[Field]ムリダンガムドラゴンLv.2(2)BP7000、辰の十二神皇ウロヴォリアスLv.1(1)BP11000、破壊の創界神シヴァLv.1、シヴァの破壊神殿Lv.1(0)。

 

「ムリダンガムドラゴンをLv.1に、これコアは充分! 行くぞ!!」

「(必要以上にコアを集めている……という事は、来るか!)」

 

構える手札の一枚、何が来るかは当然ミコも察している。だが相手が気づいていようがいまいが、構う事無く彼女はそのままそのカードを突き出す。

 

「決して潰えぬ常闇の影、全て無に帰す暴食の闇で何もかも喰らい尽くせッ!! 召喚、闇影夜龍エルドラシュオン!」

 

シュオンがフィールドへと現れると、その体に纏う瘴気を広げて身を包み、闇の中に赤く光る眼光を輝かせながら咆哮を上げる黒龍、エルドラシュオンの降臨である。

 

『とっとと終わらせるぞ! 命令しろ、絵瑠!』

「あぁ。任せるぞ、シュオン!!」

 

頼りにしているようにシュオンの言葉に笑って頷きながら、目の前のミコを見据え攻撃準備へと移って行く。

 

「アタックステップ! エルドラシュオンでアタック!! さらにフラッシュ、シヴァの【転神】の効果!」

「!」

「シヴァのコア2個をボイドに送り、このターン! シヴァはスピリットと扱う!!」

「ッ! ヌエでブロックじゃ!」」

 

攻撃を防ぐべく、迫るシュオンにヌエは飛び掛かって行くがシュオンは片手でヌエの体を掴むとそのまま宙に放り投げると、そのまま宙で身動きの取れないヌエを爪で斬り裂き、斬り裂かれたヌエは爆発四散。

これでもうミコの場にブロッカーはなく、絵瑠の場にはスピリット状態となったシヴァ含め3体、ミコのライフもまた残り3つ。フルアタックが決まれば勝負に片が付く。

 

「一気に決める! シヴァでアタック!」

「ライフで受ける!」

 

そのままシヴァは片腕を翳し始めると、展開されたバリアに紫の炎に包まれ、神話にも伝わるシヴァの炎はそのままバリアを焼き尽くし、破壊。

 

「ッ!!」

「ウロヴォリアスでさらにアタック!!」

「甘い! フラッシュで琵琶剣士ぼくぼく(Rv)を発動! ウロヴォリアスのBPを-5000するのじゃ」

「何ッ!?」

 

強襲するように発動されるマジック、否、正確にはマジックとして扱われるぼくぼくのカードがウロヴォリアスの力を削ぎ、減少したウロヴォリアスは少し肩を落とすが、それでもアタックは継続するように再び絵瑠へと進路を進めるが。

 

「この効果発動後、1コストを支払う事でぼくぼくを召喚! Lv.2じゃ!」

「!!」

「そのままブロックじゃ!」

 

ウロヴォリアスの目の前にまるで幽霊のように出現するぼくぼく、咄嗟に立ち止まって構えるウロヴォリアスだが、ぼくぼくと今のウロヴォリアス互いのBPは共に6000。警戒が遅れ、そのままぼくぼくは目の前まで迫ると同時に手に持った短剣をウロヴォリアスに突き刺し、それに悲鳴を上げながらもタダではやられないように、自らもぼくぼくに牙で喰らい付き、剣と牙が互いの身に突き立てられ二体は爆発四散してしまう。

 

「ウロヴォリアス!!」

「まだまだじゃ! さらに妾のスピリットが破壊された事でバースト! 双光気弾!!」

「!」

「デッキから2枚ドロー、その後コストを支払って相手ネクサスを破壊! シヴァの破壊神殿じゃ!!」

 

放たれる二つの火球がそのままシヴァの破壊神殿へ直撃し、神殿は炎上を起こしながら崩落し、フィールドから消滅。

 

「これでもうフルアタックしても妾のライフは削り切れん。ターンエンドするんじゃな」

「くッ! ターンエンド!」

 

悔しいが確かに今はこれ以上打つ手がない。ミコの言葉通り、ターンを明け渡すしかなかった。

 

 

────第10ターン、ミコside。

 

「!!」

 

迎えるミコのターン、ドローステップでカードを引いた瞬間、そのカードを目に、彼女の表情が変わる。

 

「!?」

『(……何か、来るか)』

 

ミコの表情の変化に絵瑠とシュオンも警戒心を抱く中。

 

 

『光黄様!!』

「!……来たか」

 

再び合流するライト、彼の後ろには烈我達の姿もあり、すぐさまその場に駆け寄る。

 

「こ、光黄!! ライトから事情は聞いたけど、状況は!?」

「見ての通り。バトルはまだ続いてる! けど」

 

烈我に状況を説明する光黄だが、不穏な空気が建ち込め、嫌な予感を感じる彼女。そして彼女だけでなく来たばかりの烈我達もそのタダならぬ気配を感じ取っていた。

 

『おい、ミナト』

「あぁ。嫌な空気だ.........この気配、あの時と同じだ」

 

キラーの言葉にミナトも同じ気持ちの様に答える。以前、ガイトと戦った際に感じた七罪竜とは異なる存在の気配、実際にオルガウェーブと戦った二人には烈我達以上に敏感になっており、それを感じ取っているという事が意味する答えは唯一つ。

 

[Reserve]11個。

[Hand]4枚。

[Field]妖怪大将カシャネコイクサ×雷命刀ミカヅキLv.1(1)BP9000。

 

「バトルを続ける! 覚悟は良いな!!」

「!!」

「疾風の獣、雷鳴の雄叫びを上げて獲物を狩りし雷獣! 逆雷狼フェンリルドガルムを召喚じゃッ!!」

 

激しくフィールドを照らす程降り注ぐ稲妻、無数の稲妻のシャワーは全てを照らし尽くし、落雷が注がれた地面に電流が迸るが、そんな稲妻の大地を平然と歩く一頭の狼、降り注ぐ落雷をまるで吸収するかのようにその身に浴びながら、雷鳴以上の雄叫びを上げるスピリット。

そのスピリットこそハイドカードの一体──フェンリルガルムの姿。

 

「フェンリルド、ガルム!? これって、前にミナトが戦ってた奴と同じ!?

「そうじゃ!! ボスやガイトが使っていたアブソドリューガ、オルガウェーブの同種、ハイドカードの一体じゃ!!」

 

圧倒的な存在感が放つ威圧とオーラを放ちながら、フェンリルドガルムはシュオンに対してもまるで得物を見る様な目を向け、そんな視線が気に入らないようにシュオンもフェンリルドガルムを殺意を込めて睨み返す。

 

「フェンリルドガルムの召喚時効果発揮! このスピリットは妾のトラッシュ、又は相手のトラッシュにあるマジックカードを指定し、その効果を発揮!」

「自分だけでなく相手のトラッシュだと!?」

「妾が選ぶのはお主のトラッシュにあるシヴァカタストロフィーじゃ!」

「!」

「その効果でお主のスピリット全てからコア1個だけになるようコアを取り除く!」

 

フェンリルドガルムの咆哮は上げると、天より紫雷を降り注がせ、シュオンとムリダンガムは共に落雷に打たれ、レベルダウンさせられる。

 

『がぁッ!?』

「シュオン!!」

 

予想外の攻撃に咄嗟に心配するように声を掛けるが、シュオンはすぐさま『構うな!』と強気に叫ぶ。

 

『一々俺に気遣うな! 俺を使って勝つ事だけを考えろ!』

「でも!!」

『二度言わせるな!』

 

絵瑠の心配を一蹴し、再びフェンリルドガルムを睨むが、フェンリルドガルムは狩人の目を向けたまま、静かに命令が下るその時をじっと待つ。

 

「雷命刀ミカヅキをカシャネコイクサから分離、そしてフェンリルドガルムに合体ッ!」

 

カシャネコイクサはミカヅキを天に投げ捨てると、そのままフェンリルドガルムが受け継ぐように飛び掛かって空中で刀を咥え取り、そのまま地面に降り立つとともに強大な力を証明するかの如く唸りを上げる。

 

”ワオオオオオォォォォォォンッ!”

 

「アタックステップじゃ!!」

「ならこの瞬間、シュオンの【闇影】の効果を発動!!」

 

絵瑠もこのまま引き下がる訳にはいかない、負けじとシュオンの効果を宣言すると、黒霧がカシャネコイクサとミカヅキと合体したフェンリルドガルムを飲み込む。

 

「闇影の効果! 相手スピリット全てを闇に隠し、アタックするならランダムに攻撃対象を選んでもらう!」

「これが暴食の七罪竜、エルドラシュオンの効果か」

 

闇の中に包まれた自分のスピリット達、想定通りシュオンの効果はやはり生半可な物ではない、しかし闇の中でもミコは静かに拳を握りしめる。

 

「……これぐらいが、何じゃ」

「?」

「妾はもう覚悟を決めたのじゃ! この程度の暗闇に怯んだりなどするものか!! 何があっても、妾は突き進むと決めたのじゃ!!」

「覚悟? それってどういう?」

「お主には関係のない話じゃ! 行くぞ、妾はアタックを続行!」

「!!」

 

攻撃を宣言すると、闇の中から先陣を切ったのはカシャネコイクサ。

 

「闇から出ればカシャネコイクサの効果を発揮できる! フラッシュで手札のギュウキを使用!! 正し、ギュウキ本来のマジック効果ではなく、カシャネコイクサで付与されたマジックの効果を使用! ムリダンガムを指定し、ムリダンガムをこのターンの間、ブロック不能にする!」

 

ギュウキの影がムリダンガムへと取り付き、束縛するように行動を封じ込めてしまう。

 

「これでブロックできるスピリットは1体もないの!」

「まだだ! マジック、光翼の太刀を発動! エルドラシュオンをBP+3000! さらにこのターン、疲労ブロッカーに!」

「!!」

「シュオンで攻撃はブロックだ!」

 

脇差を抜いて絵瑠へと飛び掛かるが、振り下ろす短刀の一撃がバリアへ振り下ろされるその直前、シュオンは腕を伸ばしてその一撃を受け止め、そのまま弾き返すと反撃と言わんばかりに両爪を振り下ろす。

 

黒爪の一撃はカシャネコイクサの短刀を細かく切り刻み、さらにそれのみに留まらずカシャネコイクサの甲冑にもシュオンの爪痕が刻まれ、衝撃が遅れる様に吹き飛ばされてカシャネコイクサは消滅。だが……。

 

「もし、エルドラシュオンがLv.3だとしたらこの時点で勝負は付いておったな」

「くッ!」

「だが【闇殺】の効果はLv.2以上でなければ発揮はできない! そして妾の場には合体スピリットが残るのみじゃ!」

 

闇の中に響く雷狼の雄叫び、その叫びに呼応するように天から降り落ちる落雷、その光と衝撃はシュオンの闇を一瞬にして掻き消し、そしてフェンリルドガルムは光刺す大地へ姿を見せる。

 

「さぁフェンリルドガルム! 狩り尽くせッ!!」

 

ミカヅキを掲げながらそのまま飛び出すと、疾風の如きスピードでフィールドを駆け出して行く。

 

「まだシュオンは疲労ブロッカーになってる! 攻撃はブロックできる! シュオン!!」

『言われるまでもないッ!』

 

そのまま突っ込むフェンリルドガルムを迎え撃つようにシュオンは飛び出し、高速で駆け巡る雷狼の姿をシュオンは決して逃がさないように視界に捕え、黒爪を突き出し、フェンリルドガルムは咥えたミカヅキを振り下ろしてその一撃を受け止める。

 

「今のシュオンは光翼の太刀の効果でBP12000! そっちのBPは10000! この勝負貰った!!」

「いいや、負けん! 負けられない!! 勝つのは妾じゃ!! お主とは覚悟が違うのじゃ!!! フラッシュタイミング! エンジェルボイスを発動じゃ!」

「なッ!!?」

「このバトルでの勝敗をBPではなくレベルを比べる! フェンリルドガルムはLv.2、そしてお主のエルドラシュオンはレベルは!」

「しまった! シヴァカタストロフィーの効果で今のシュオンのレベルは──!」

 

現在のシュオンはLv.1、この瞬間にバトルの結果は決まってしまった。

 

『ッ! おのれぇッ!!』

 

両爪を振るいフェンリルドガルムを弾き飛ばすシュオンだったが、フェンリルドガルムは再び吠え始めると帯電するように全身に電気を迸らせ始めると、次の瞬間、シュオンの目前から一瞬で姿を消してしまう。

 

『何ッ!?…………ッ!!』

 

驚く間もなくシュオンの体に走る衝撃、自分に体に光速で突進するフェンリルドガルムに思わずシュオンは突き飛ばされ、フィールドに倒されてしまう。

 

『(この俺が、捕えきれないだと!?)』

 

先程迄も相応のスピードでフィールドを駆けていたフェンリルドガルムだったが、今度はその比ではない。電気を纏って駆け抜けるその超スピードは正に電光石火の如し。光の速度で駆け巡るフェンリルドガルムは閃光となってシュオンへとぶつかっていき、あまりの速度に防ぐ事すら不可能。

 

『ぐぅッ! クソがぁッ!!』

 

一時身を隠すべく黒霧を放とうとするが、フェンリルドガルムは決して得物を逃さない。黒霧を放とうとした次の瞬間、フェンリルドガルムは一瞬でシュオンとの距離を詰め、ミカヅキの切っ先をシュオンへと向けていた。

 

『!!?』

「シュオン!!!!」

 

「フェンリルガルム! 狩れッ!」

 

冷酷なまでの指示にフェンリルドガルムはそのままミカヅキに電気を纏わせると、文字通りの雷刀となったその一撃をシュオンへと振り下ろす。

 

『ぐッ、がぁ……ッ!』

 

シュオンはその場に倒れ伏し、フェンリルドガルムの前に崩れ落ちる。

 

「そんな、シュオンッ!!!」

 

倒れたシュオンの姿を直ぐには受け入れられない様に思わず叫び声を上げるが、シュオンはその叫びに応える事はできない。

 

「バトルはこっちの勝利、でもこれからじゃ。ここからフェンリルドガルムは真の力を発揮する!」

「こ、今度は何を!?」

「フェンリルドガルム、Lv.2の効果!」

 

フェンリルドガルムは自身の電撃をシュオンへと撃ち込むと、衝撃に一瞬体を浮き上がらせ、そしてその後シュオンは再び目を開くが。

 

『グッ! ぐ、ぐぐッ!! グアアアアアアアァァァァァッ!!』

「シュオン!? い、一体これって!?」

「これがフェンリルドガルムの効果じゃ! バトルで相手を破壊すれば、このゲーム中! 破壊したスピリットを自分のスピリットとして扱う事ができる!」

「な、何だと!?」

「これこそがフェンリルドガルムの力、そして七罪竜もこのバトルに置いて、妾の手中じゃ!!」

 

フェンリルドガルムとエルドラシュオンの2体は互いに共鳴するかのように咆哮を上げ、まさにその光景は絶望という以外にない。

 

 

────第11ターン、絵瑠side。

 

[Reserve]11個。

[Hand]2枚。(手元)4枚。

[Field]ムリダンガムドラゴンLv.2(1)BP7000、破壊の創界神シヴァLv.1、

 

「(相手のスピリットをコントロールするカード、これがフェンリルドガルムの力……!)」

 

ただでさえ圧倒的なフェンリルドガルム、そして今はシュオンまでもが相手の支配下に置かれ、七罪竜とハイドカードを相手取るこの状況をどうにかしない事には勝ち目などない。

 

「私のターン、ダークネスワイバーンを召喚!」 

 

何とか今の状況を変えたい彼女、ダークネスワイバーンはその召喚時の効果でデッキから1枚カードをドロー。

 

「(頼む、来てくれ! 逆転のカード!!)」

 

願いを込める様にカードを引き、そしてそのカードを見る。

 

「(破壊神龍ヴァルドラム……このカードなら相手のスピリット全てを破壊してそのまま相手に止めを刺せる。けど、そうなったらシュオンは……!)」

 

『グッ、グガアアアアアアアッ!!!』

 

フェンリルドガルムの支配下に置かれ、抵抗する事が出来ずただ苦しむように声を荒げるシュオン。その様子に絵瑠も動揺隠せなかった。

 

「(シュオン、私は……!)」

「どうした? まだお主のターンじゃぞ?」

「ッ!!」

 

どうするべきか迷いだけが彼女の思考を巡る、しかし決断しなければならない。敵として眼光を向けるシュオンを前に、絵瑠は拳を握りしめながらバトルを続けて行く。

 

「ダークネスワイバーンと、ムリダンガムドラゴンをLv.2に、アタックステップ!」

「アタックステップ開始、宣言したな?」

「えっ?」

「さっきまでお主が使っていた効果じゃ、忘れてはおらんじゃろ!」

「ま、まさか!!?」

「そう、この瞬間! 妾の場にいるエルドラシュオンの【闇影】を発動! 闇に飲み込め、エルドラシュオンッ!!」

「!!!」

 

フェンリルドガルムは唯相手スピリットを自分のスピリットとして扱うだけではない、その効果をも完全に支配する事ができ、シュオンは苦しみながらも【闇影】を発動させ、絵瑠のスピリット達を闇の中へと飲み込んでしまう。

 

 

「そんな!!!」

『相手スピリットを完全に支配する効果、まさかシュオンの奴の効果までも発揮できるとはな』

 

底知れないフェンリルドガルムの効果に絵瑠と同様、烈我達も驚きを隠せずバジュラもまたフェンリルドガルムの効果に油断ならない物を感じ取っていた。

 

「さぁ今度はお主の番じゃな! 攻めるのか! 攻めないのか!」

「ッ!! 私は……!」

 

どの道何もしなければ敗北は避けられない。だとすれば当然攻める他ないのだが、それでも。

 

「(2分の1、ムリダンガムで攻撃できればそのままヴァルドラムの神煌臨に繋げられる、けどそしたらシュオンも……!)」

 

『……え、る……!』

 

フェンリルドガルムに操られながらもまだ少しだけ自我を保つ様に絵瑠に視線を向け、何想うのか。そしてシュオンの想いは絵瑠に届いているのか、全てが分からないまま、決断を下さねばならない。

 

「(私は……! 私は……!!)」

 

迷いが晴れない様に歯を喰いしばりながら決断するように彼女は前を向く。

 

「くッ! アタックだ!!」

 

迷いを構えたまま、彼女は攻撃指示を送ると、闇の中から飛び出すスピリットの影、だが飛び出したスピリットはダークネスワイバーン。

 

「!!?」

 

この結果は偶然か、それとも彼女の迷いが起こした結果か。この瞬間、勝敗は決した。

 

「アタックはエルドラシュオンでブロックじゃ!」

「!!」

 

『ぐぅッ!!……ッ!! グルアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

命令に抵抗できる力はもうシュオンにない、迫り来るダークネスワイバーンにシュオンは黒爪を地面に突き立て、そのまま振り上げると斬撃波となってダークネスワイバーンに襲い掛かり、一直線に飛来する攻撃に回避が間に合わずダークネスワイバーンは直撃を受けて破壊される。

 

「!」

「そして相手を破壊した時、エルドラシュオンの【闇殺】を発揮! 残るお前のスピリットを破壊じゃ!!」

 

そのまま翼を広げて、闇の中にシュオンは飛び込んでいくと、闇の中にいるムリダンガムを正確に捕え、そして闇の中でシュオンは黒爪を振り下ろして標的を斬り裂き、闇の中でムリダンガムドラゴンの断末魔が轟いたかと思うと、黒霧の中、爆炎が巻き起こる。

 

「た、ターン……エンド」

 

 

────第12ターン、ミコside。

 

「これで終わりじゃ! フェンリルドガルム、止めを刺すのじゃッ!!」

「!?」

 

絵瑠に打つ手はもうない。残るライフを目掛け、咥えたミカヅキを深々とバリアに突き刺してフェンリルドガルムはさらにその場から天高く飛び上がると、雷を身に纏い、自らが落雷の如く天から真っ逆様に絵瑠へと急降下。

雷を帯びたその身でバリアへ激突、絵瑠のライフを全て破壊する。

 

「うわああああああああああああああッ!!!」

 

『え、る……ッ!!』

 

勝敗に決着となり、衝撃に吹き飛ばされる絵瑠。シュオンもまた、バトルを終え、フェンリルドガルムの洗脳から解放されるが、力なくその場に倒れ伏し、フィールドにはフェンリルドガルムの雄叫びだけが響き渡る。

 

 

***

 

 

「絵瑠!!」

 

バトルを終え絵瑠の元へ、すぐさま烈我達は駆け寄るが。

 

「妾の勝ちじゃ」

「う、うぅっ……! しゅ、シュオン……!」

 

悠々とバトルを終えて烈我達の前に帰還するミコ達、だが絵瑠はバトルで受けた衝撃が余程大きいのか立ち上がれず、シュオンもまたその傍で気を失っているのか、眠ったように倒れている。

 

「約束じゃ。七罪竜は妾達、組織が頂く!」

「や、やめろ……!」

「!」

 

シュオンを奪おうとミコはシュオンの傍へ寄ろうとするが、絵瑠は咄嗟にミコの足を掴んで必死に止める。

 

「お、お主何を!?」

「シュオンは……私にとって、大切な……友達なんだ! 絶対、お前等なんかに渡すもんか!!」

「大切な……」

 

倒れながらも必死に訴える絵瑠の言葉、そんな彼女の言葉にミコはシュオンに伸ばそうとした手を取り下げてしまい、彼女の行動が意外だったのか、烈我達も一瞬驚くが。

 

『何をやってるのかしら? ミコ?』

「!」

 

突然の声と共に再び開く空間の裂け目、そこから姿を現したのは同じく帝騎の一人であるディストだった。

 

「あいつは確か……!」

『えぇ、光黄様を攫った方、ですよね』

 

烈我や光黄達にとっては忘れもしない因縁、実際の被害者である光黄以上に烈我とライトは怒りを込めるような視線をディストへ向ける。

 

「久々なのに随分なご挨拶ねぇ、まぁ余計な挨拶はいいわ。それよりミコ、目的の七罪竜を前にして何をやってるのかしら?」

「な、何故お主がここにおるのじゃ!?」

「ルディア様からの命令よ。貴方が作戦を遂行できているかどうかのお目付け役としてね」

「ボスからの?」

「そんな事より早く目的を果たしなさい、覚悟を見せるんでしょ?」

「わ、分かっておる! お主に言われなくとも!」

「それから、その女も捕えなさい」

「何!?」

「当然でしょ、歯向かう者は捕え、そして目的のために最大限に利用する。それぐらい非常な手を使ってこそ、帝騎としての覚悟よ」

「!!」

 

以前光黄を人質にして他の七罪竜を奪おうとしたように、今度は絵瑠を使ってまた同じ手段を行おうとしているのだろう、当然烈我達も黙って見過ごすわけにはいかない。

 

「ふざけんな! 絵瑠をどうするつもりだ!!」

「動かないで、手荒真似。する事になるわよ?」

「ぐッ!!」

 

咄嗟に声を荒げながら飛び出そうとするが、助けようにも立ち塞がるように前へ出るディストに迂闊に行動する事が出来なかった。

 

「ミコ、早くやりなさい。貴方の成果にするのよ」

「わ、妾は……!」

 

ディストの指示にミコも困惑を隠せない様子だが、

 

『……ま、て…!』

「「!!」」

 

先程迄倒れていた筈のシュオンの声、目を覚ました様に起き上がるとディスト達を止める様に声を振り絞る。

 

「お、お主まだ立てたのか?」

「流石七罪竜ね、けど限界の筈よ。今は大人しくしておきなさい」

 

『……黙れ、ディストォッ!』

「「!!」」

 

眼光を鋭くさせてディストを睨むシュオン、既に満身創痍の筈なのに彼女を睨み付けるその迫力は微塵も衰えを感じさせなかった。

 

『……大人しく俺は囚われてやる』

「しゅ、シュオン?」

『その代わり……その女に、絵瑠に……俺の持ち主に手を出すんじゃねぇ!』

 

精一杯の力を振り絞って声を荒げるシュオン、その姿はまるで追い詰められた獣の様。迫力を込めるシュオンのプレッシャーに、ミコもディストも思わず言葉を失う程だった。

 

『俺を捕えて煮るなり焼くなり好きにすればいい。だがな、絵瑠にまで手を出すって言うなら……俺はお前を徹底的に潰す! 暴食の七罪竜、その力を全てつぎ込んでもなッ!』

 

本気の殺意を込めての言葉、ディストは思わず一歩後退り、静かに息を呑む。

 

「え、えぇ。分かったわ、彼女は諦める……でも、貴方は来てもらうわよ! シュオン!!」

『好きにしろ』

 

そのままディストはその場から一歩引いて道を開け、烈我達は咄嗟に絵瑠へ駆け寄るが。

 

「シュオン!! お前……どうして!!」

『…………』

 

絵瑠の言葉にシュオンは暫く沈黙したままだったが、それでも振り返り絵瑠の表情を見据える。

 

『絵瑠、一度しか言わないぞ』

「?」

『散々迷惑をかけたというのに、お前は俺といる事を選んで……それからずっと俺を気遣い、色々と接してくれた。認めたくは……ないが、お前と過ごした日々は案外悪い気はしなかったよ。だからこれは、その礼を返す……それだけの、事だ』

「シュオンッ!!」

『これで互いに借りもない。綺麗さっぱり……お別れ、だ』

 

そこで力尽きる様にシュオンはカードの状態に戻り、そのカードはミコの手に収まる。

 

「!」

「……帰還するわよ、ミコ」

「あ、あぁ。分かったのじゃ」

 

「待て、お前等!!」

 

咄嗟に呼び止めようとする烈我の言葉にディストは笑みを浮かべながら。

 

「シュオンからの忠告だからね、その女は標的から外してあげる。けど、貴方達は別よ。七罪竜を持つ者は全員必ず狩る! だからいずれ、また貴方達の前に現れるわよ! その時は、私のハイドカードの力も見せてあげるわ」

 

宣戦布告とも取れる言葉を残しながら、彼女とミコは空間の穴へと飛び込み、今度は烈我達の言葉に足を止める事なくその姿を消す。

 

七罪竜の一体がついに組織の手へと落ち、それは絵瑠にとっては、あまりにも突然すぎる別れだった。

 




どうも皆さまブラストでございます。
更新長らくお待たせして申し訳ありません。

今回は帝騎、ミコの初バトル回!
彼女が今回利用したハイドカード、チェック&チェック!

・【逆雷狼フェンリルドガルム】6(2)黄色、スピリット/想獣・獣雷。
Lv,1(1)BP5000、Lv.2(2)BP6000。
Lv,1、Lv.2『このスピリットの召喚時』
自分、又は相手のトラッシュにあるマジックカード1枚を指定し、指定したマジックのメイン、又はフラッシュの効果をコストを支払わずに使用できる。この効果はターンに1回しか使えない。
Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』
このスピリットがBPを比べ、相手のスピリットだけを破壊した時、そのスピリット上のコアを持ち主のリザーブに戻し、その後そのスピリットをこのゲームの間、自分のスピリットとして使用する。この効果で使用しているスピリットが2体以上いる場合、このスピリットのアタック時効果は発揮されない。


相手のマジック利用、そして相手スピリットの完全コントロール効果。
BPが低いのがネックですが、それを補うマジック効果。

本編ではついにミコのバトル回、何デッキを握らせるかずっと悩んでましたがようやく妖戒に落ち着きました。押して本編ではついに捕えられたシュオン!

果たして今後物語はどのように動くのか、是非ともご期待ください!
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